説明

発振器モジュール

【課題】水晶振動子に基づいた周波数温度特性を安定にして周波数偏差規格を満足する発振器モジュールの提供。
【解決手段】外底面に実装端子7を有する表面実装水晶発振器9Aを含む電子部品が回路基板10に搭載され、前記回路基板10は前記電子部品の実装端子7の接続される回路端子11a及び配線路11bを除いて全面的にアース電極11cが形成された発振器モジュール8において、前記表面実装水晶発振器9Aは凹状とした金属カバー12によって覆われ、前記金属カバー12の開口端面は前記アース電極11cに電気的に接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも水晶片とICチップとを収容した表面実装水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)を回路基板に搭載した発振器モジュールを技術分野とし、特に外部からの熱風による周波数変化を防止した発振器モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装発振器は小型・軽量であることから、周波数や時間の基準源として各種の電子装置に内蔵される。このようなものの一つに、特に水晶振動子の周波数温度特性による周波数変化を補償した温度補償型があり、他の電子部品とともに回路基板に配置されて発振器モジュールを形成する。
【0003】
(従来技術の一例)
第4図及び第5図は一従来例を説明する図で、第4図は表面実装発振器の断面図、第5図(a)は発振器モジュールの断面図、同図(b)は回路基板の一部平面図である。
【0004】
表面実装発振器はセラミックからなる凹状とした容器本体1の内底面に、ICチップ2の回路機能面に露出したIC端子をバンプ3を用いた超音波熱圧着によって固着する(フリップチップボンディング)。ICチップ2は少なくとも発振回路を有し、ここでは温度補償機構を有する。そして、図示しない励振電極から引出電極の延出した水晶片4の一端部両側を内壁段部に導電性接着剤5によって固着し、金属カバー6を被せて密閉封入する。
【0005】
容器本体1の外底面にはICチップ2の各IC端子と電気的に接続する電源、出力、アース、及び制御端子(Vc)等の実装端子7を有する。そして、ここでは温度補償機構を有する温度補償型とするので、第6図に示した水晶振動子(ATカット)に基づく周波数温度特性を補償して、規定の温度範囲内で発振周波数を一定(安定)にする。
【0006】
発振器モジュール8は表面実装発振器9A及びこれ以外の電子部品9を回路基板10に、例えば半田リフローによって搭載される。回路基板10は例えばガラスエポキシ基板に例えば銅箔からなる回路パターン11を設けてなる。回路パターン11は回路端子11a、配線路11b及びアース電極11cからなり、回路端子11aは表面実装発振器9Aを含む電子部品9の実装端子7と半田リフローによって接続する。
【0007】
配線路11bは各回路端子11aから延出して他の電子部品の回路端子に接続する。アース電極11cはこれらを除いて回路基板10に全面的に形成される。そして、これらの発振器モジュール8とした回路基板10は単独であるいは他の回路基板とともに電子装置に組み込まれる。
【特許文献1】特開2007−251787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の発振器モジュールは用途によって例えば空冷とするファンからの熱風にさらされ、表面実装発振器は時折瞬時にして温度変化を大きくする。これにより、発振周波数は周波数温度特性による周波数変化以上に変化し、周波数偏差規格を満足しなくなる。この場合、表面実装発振器を温度補償型としても、温度補償機構は温度変化に追従せず、前述と同様に周波数偏差規格を満足しなくなる問題があった。
【0009】
(発明の目的)
本発明は水晶振動子に基づいた周波数温度特性を安定にして周波数偏差規格を満足する発振器モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、外底面に実装端子を有する表面実装水晶発振器を含む電子部品が回路基板に搭載され、前記回路基板は前記電子部品の実装端子の接続される回路端子及び配線路を除いて全面的にアース電極が形成された発振器モジュールにおいて、前記表面実装水晶発振器は凹状とした金属カバーによって覆われ、前記金属カバーの開口端面は前記アース電極に電気的に接続した構成とする。
【発明の効果】
【0011】
このような構成であれば、表面実装発振器を覆う金属カバーは回路基板のアース電極に電気的に接続して熱的に結合する。したがって、例えばファンからの熱風は金属カバーによって遮蔽され、表面実装発振器への直接的な伝熱を避けられる。そして、熱風によって金属カバーに生じた熱は回路基板のアース電極を経て放熱される。これらから、熱風によっての表面実装発振器の急激な温度上昇を抑制するので、周波数温度特性が安定して周波数偏差規格を満足する。
【0012】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、前記表面実装水晶発振器は水晶片とICチップとを容器本体に収容して少なくとも前記水晶片を密閉封入してなり、前記ICチップは発振回路とともに温度補償機構を有する。この場合、前述のように熱風による急激な温度上昇を抑制して周波数温度特性が安定するので、温度補償機構による温度補償を確実にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1図(a)は本発明の一実施形態を説明する発振器モジュールの一部断面図、同図(b)は回路基板の一部平面図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0014】
発振器モジュールは前述したように表面実装水晶発振器9Aを含む電子部品を回路基板10に搭載してなる。表面実装発振器9Aは、外底面に実装端子7を有する容器本体1の内底面に発振回路及び温度補償機構を有するICチップ2を固着する。そして、図示しない引出電極の延出した水晶片4の一端部両側を内壁段部に固着し、金属カバー5を被せて密閉封入する。
【0015】
回路基板10は、これも前述同様にガラスエポキシからなり、各電子部品の実装端子7が接続する回路端子11a、回路端子11aから延出した配線路11b、及びこれらを除く全面的なアース電極11cからなる回路パターンを有する。
【0016】
そして、ここでは、表面実装発振器9Aは金属カバー12によって覆われる。金属カバー12は凹状として開口端面が回路基板10のアース電極11cに電気的に接続する。例えば各電子部品を回路基板10に搭載する際、金属カバー12はこれらと同時に半田リフローによって接続する。なお、金属カバー12は配線路11bとの電気的接続を防止する切欠部13を開口端面の枠壁に有する(第2図)。
【0017】
このような構成であれば、効果の欄でも説明するように、表面実装発振器を覆う金属カバー12は回路基板10のアース電極11cに電気的に接続して熱的に結合する。したがって、例えばファンからの熱風は金属カバー12によって遮蔽され、表面実装発振器9Aへの直接的な伝熱を避けられる。そして、熱風によって金属カバー12に生じた熱は回路基板10のアース電極11cを経て放熱される。
【0018】
これらから、熱風によっての表面実装発振器9aの急激な温度上昇を抑制するので、周波数温度特性が安定する。そして、温度補償型とした場合でも、温度補償機構による温度補償を確実にする。したがって、周波数偏差規格を確実に満足できる。
【0019】
(他の事項)
上記実施形態では、表面実装発振器と接続する回路基板10の配線路11bは同一面上にしたことにより、金属カバー12には短絡を防止する切欠部を設けたが、第3図に示したようにしてもよい。すなわち、アース電極11cと接続する回路端子11c′を除く回路端子11は例えば貫通電極(ビアホール)14によって積層面や裏面に延出してもよい。このようにすれば、金属カバー12には切欠部13を設けることなく、開口端面の全てを半田リフローによって封止し、熱風の侵入を防止できる。
【0020】
また、表面実装発振器9Aは両主面に凹部を有する容器本体として一主面の凹部に水晶片4を密閉封入し、他主面の凹部にICチップ2を収容したものでもよく、必要に応じた形態にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を説明する発振器モジュールの一部断面図、同図(b)は回路基板の一部平面図である。
【図2】本発明の一実施形態を説明する発振器モジュールの一部側面図である。
【図3】本発明の他の例を説明する回路基板の一部平面図である。
【図4】一従来例を説明する表面実装発振器の断面図である。
【図5】一従来例を説明する発振器モジュールの断面図、同図(b)は回路基板の一部平面図である。
【図6】一従来例を説明する水晶振動子に基づいた周波数温度特性である。
【符号の説明】
【0022】
1 容器本体、2 ICチップ、3 バンプ、4 水晶片、5 導電性接着剤、6、12 金属カバー、7 実装端子、8 発振器モジュール、9A 表面実装発振器、10 回路基板、11 回路パターン、13 切欠部、14 貫通電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外底面に実装端子を有する表面実装水晶発振器を含む電子部品が回路基板に搭載され、前記回路基板は前記電子部品の実装端子の接続される回路端子及び配線路を除いて全面的にアース電極が形成された発振器モジュールにおいて、
前記表面実装水晶発振器は凹状とした金属カバーによって覆われ、前記金属カバーの開口端面は前記アース電極に電気的に接続したことを特徴とする発振器モジュール。
【請求項2】
請求項1において、前記表面実装水晶発振器は水晶片とICチップとを容器本体に収容して少なくとも前記水晶片を密閉封入してなり、前記ICチップは発振回路とともに温度補償機構を有する発振器モジュール。

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−136127(P2010−136127A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310420(P2008−310420)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】