説明

発振器

【課題】内蔵するICチップの内容を外部から設定し、書き換えることで回路定数や回路方式あるいは分周数を実装機器の仕様に合せて切り換え可能とした融通性の高い発振器を提供する。
【解決手段】内蔵するICチップ3に発振回路と共に複数の回路定数や回路方式の回路、あるいは複数の分周数の分周回路を備えると共に、該ICチップに不揮発メモリの領域、あるいは分周回路領域を設け、発振器の回路定数や回路方式を当該不揮発メモリに外部から書き込んだデータで切り換える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路に係り、特に外部から回路定数や回路方式あるいは分周数を設定あるいは切り換えることで種々の実装機器に対応可能とした発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
IC化された発振器では、回路形式が同じでも、実装する対象(実装機器)の仕様に最適化した周波数、出力回路の仕様、信号形式等を設定した回路定数を有するICチップ(単にICとも称する)が用いられる。また、発振器には、その基本周波数を生成する振動子を用いる形式が多く用いられる。振動子として水晶振動子が一般的である。
【0003】
水晶振動子が生成する基本周波数に関しては、その振動子としての製造が容易な周波数範囲が存在する。この基本周波数をそのまま実装機器に出力することもあるが、多くの場合は逓倍回路や分周回路を用いて所望の周波数を出力するようにしている。分周回路を用いる場合、1/2、1/4、1/8、・・などの固有の分周数をもつ分周回路を有するICを使用している。
【0004】
なお、一個のICに複数仕様に対応した発振特性を備えた回路素子と切り換えスイッチを有するバッファ回路を設け、スイッチをPROMで切り換えるようにした発振器は特許文献1に開示されている。また、発振周波数を変更する回路素子を複数個用意しておき、不揮発メモリに格納された値で上記回路素子を選択するものは特許文献2に開示がある。
【特許文献1】特開2007−259052号公報
【特許文献2】特開2007−208584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1、特許文献2の何れも、振動素子、発振回路、分周回路、出力回路、およびPROM等の制御素子とICチップ化に関しては何も開示がない。この種の発振器は、その小型化が主要な命題であることから、構成部材の低減が小型化に直結する。
【0006】
製造する側からみた場合、実装機器の仕様の違いによって要求される回路定数や出力回路方式、あるいは分周数ごとに異なる多種のICを用意しておくことは製造プロセスが複雑となり、製品管理も煩雑で顧客の要請に迅速に対応するための管理も困難である。
【0007】
本発明の目的は、内蔵するICの内容を外部から設定又は書き換えることで回路定数や回路方式あるいは分周数を実装機器の仕様に合せて切り換え可能とした融通性の高い発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、内蔵するICに発振回路と共に複数の回路定数や回路方式の回路、あるいは複数の分周数の分周回路を備えると共に、該ICに不揮発メモリの領域、あるいは分周回路領域を設け、発振器の回路定数や回路方式を当該不揮発メモリに外部から書き込んだデータで切り換える構成とした。なお、ICに設ける複数の領域は、物理的な区画のみを意味するものではなく、動作上で機能的に区別されることの意味も含む。以下、本発明による発振器の代表的構成を記述する。
【0009】
本発明にかかる発振器は、表面の内側に一個の振動子と一個のICチップを収納し、外面側に実装機器と電気的に接続する複数の端子を設けた絶縁筐体と、該絶縁筐体の内側を外部雰囲気から隔離する封止蓋体を有する。そして、前記ICチップは、前記振動子の振動信号に基づいて所定周波数の信号を発振する発振回路を形成した発振回路領域と、出力回路領域と、書き換え可能な不揮発メモリ領域とを有する。
【0010】
前記発振回路領域に形成される発振回路は、複数種の発振周波数に対応した複数の発振回路定数と該複数の発振回路定数を選択的に切り換える発振回路定数切り換え手段を備え、前記出力回路領域に形成される出力回路は、複数種の実装機器の仕様に対応した複数の回路方式に対応した複数の出力回路と該複数の回路方式の出力回路を切り換える出力回路切り換え手段を備える。
【0011】
そして、前記書き換え可能な不揮発メモリ領域に形成される不揮発メモリには、前記発振回路定数切り換え手段と前記出力回路切り換え手段のそれぞれを選択する選択データを格納しており、前記絶縁筐体の外面に、前記不揮発メモリに格納する前記選択データを外部から書き換える選択データ書き換え端子を備える。
【0012】
また、本発明にかかる発振器は、前記ICチップに前記振動子の振動信号に基づいて所定周波数の信号を発振する発振回路を形成した発振回路領域と、該発振回路領域で発振された周波数を所定の分周数で分周する分周回路を形成した分周回路領域と、出力回路領域と、書き換え可能な不揮発メモリ領域とを有する。
【0013】
前記分周回路は、前記発振回路の出力周波数を異なる分周数で分周する複数の分周回路定数と、該複数の分周出力を前記出力回路に切り換えて入力する分周出力切り換え手段を有し、前記出力回路領域に形成される出力回路は、複数種の実装機器の仕様に対応した複数の回路方式に対応した複数の出力回路と、該複数の回路方式の出力回路を切り換える出力回路切り換え手段を備え、前記書き換え可能な不揮発メモリ領域に形成される不揮発メモリには、前記分周出力切り換え手段と前記回路方式切り換え手段のそれぞれを選択するデータを外部から書き換えるデータ書き換え手段を備える。
【0014】
さらに、本発明にかかる発振器は、前記ICチップに前記振動子の振動信号に基づいて所定周波数の信号を発振する発振回路を形成した発振回路領域と、該発振回路領域で発振された周波数を所定の分周数で分周する分周回路を形成した分周回路領域と、出力回路領域と、書き換え可能な不揮発メモリ領域とを有する。
【0015】
前記発振回路領域に形成される発振回路は、複数種の発振周波数に対応した複数の発振回路定数と該複数の発振回路定数を選択的に切り換える発振回路定数切り換え手段を備え、前記分周回路は、前記発振回路の出力周波数を異なる分周数で分周する複数の分周回路定数と、該複数の分周出力を前記出力回路に切り換えて入力する分周出力切り換え手段を有し、前記出力回路領域に形成される出力回路は、複数種の実装機器の仕様に対応した複数の回路方式に対応した複数の出力回路と該複数の回路方式の出力回路を切り換える出力回路切り換え手段を備える。
【0016】
前記書き換え可能な不揮発メモリ領域に形成される不揮発メモリには、前記発振回路定数切り換え手段と前記分周出力切り換え手段と前記出力回路切り換え手段のそれぞれを選択する選択データを格納しており、前記絶縁筐体の外面に、前記不揮発メモリに格納する前記選択データを外部から書き換える選択データ書き換え端子を備える。
【発明の効果】
【0017】
実装対象となる機器(実装機器)の周波数や仕様(具体的には、CMOS、LVDSなど)によって定数を変更する必要のある回路素子について、一個のIC内部に複数個用意しておき、外部から書きこみができるPROMに代表される不揮発性メモリに格納されたデータ内容によって選択する。これにより、一種類のICを備えた一個の発振器を複数の周波数範囲、あるいは複数の仕様の発振器として使用できる。また、異なる回路方式が必要な仕様の実装機器に対しても該一種類のICに複数の分周回路や複数の出力回路を内蔵させ、不揮発性メモリに格納されたデータ内容によってこれらのうちから最適な回路を選択する。これにより、異なる回路方式ごとにICを用意しておく必要がない。
【0018】
さらに、一個のICに複数の分周回路(ある所の分周段)を用意しておき、不揮発性メモリに格納されたデータ内容によって所望の分周数を選択する構成としたことで、1種類のICを備えた一個の発振器で複数の周波数範囲の発振器として使用できる。これにより、ICの種類を削減し、製品管理を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態につき、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明にかかる発振器の構成例を模式的に説明する断面透視図である。図1において、符号1は絶縁筐体であり、本実施例では電子部品に多用されるセラミックス材料で構成される。この絶縁筐体1の内部に基本周波数を生成する振動子2が収容される。本実施例では、振動子2に水晶振動子を用いている。水晶振動子2は、水晶片の両面に電極が形成されており、電極を絶縁筐体1の内側の一辺に設けた段差に設けた配線パターン(図示せず)に導電性固定材6で当該配線パターンに導電的に固定する。
【0021】
また、絶縁筐体1の内部には一個のICチップ3が収容されている。ICチップ3の端子は絶縁筐体1の底面に設けた配線パターンに金線等の配線材で接続される。配線パターンから絶縁筐体1を貫通するスルーホールTHを通して外部実装機器に接続するための実装端子7に導電接続されている。水晶振動子2やICチップ3が収容された絶縁筐体1の開放部は、金属板からなる封止蓋体4で内部が真空に、又は不活性ガスを封入して外部雰囲気と遮断される。封止蓋体4はコバール(鉄―ニッケル―コバルト合金)を好適とする鉄系金属板である。コバールは常温で熱膨張率が小さいため、この種の電子部品の封止に用いられる金属材である。封止蓋体4と絶縁筐体1は封着剤5および溶接で密封固着される。なお、これら水晶振動子2、ICチップ3の配置や配線、材料等は、絶縁筐体1の構造も含めて図示したものに限られるものではない。
【0022】
図2は、図1の矢印A方向からみた本発明にかかる発振器の上面図である。図2に示されたように、本実施例の発振器はその平面形状が矩形状をなす。そして、実装端子7は絶縁筐体1の背面から長辺側の外側面まで延びている。水晶振動子2、ICチップ3の配置やサイズは図示のものに限定されるものではない。
【0023】
図3は、図1の矢印B方向からみた本発明にかかる発振器の背面図である。また、図4は、図2の矢印C方向からみた本発明にかかる発振器の長辺側側面図である。本実施例の発振器では、図3に示されたように、実装端子7は6つ(7a、7b、7c、7d、7e、7f)有しており、それぞれが背面から外側面に回り込んだ形状で設けられている。実装端子7は、所謂面実装端子である。なお、実装端子7aに形成した切り欠き7xは実装方向を確認するための指標である。
【0024】
ICチップ3には発振回路、出力回路、不揮発メモリとしてのPROM等(以下、PROM)が収容されている。そして、さらに分周回路を収容することもできる。図4において、PROMの格納データを外部から設定あるいは書き換えるための設定端子8が筐体1の長辺側の実装端子7の間に設けてある。必要に応じて、あるいは冗長手段として反対側の長辺側に、又は短辺側に設定端子8を設けることができる。上記の「冗長手段として」とは、書き換え装置のプローブを何れの側から接触させてもよいようにすることを意味する。
【0025】
図5は、図4のX―X’線に沿って矢印Y―Y’方向みた部分断面図である。設定端子8は実装端子7の間に設けられ、絶縁筐体1の側壁を貫通するスルーホール8aを通して内部の中継端子8bに接続している。中継端子8bには図示しないIC実装基板等を介してICチップの不揮発性メモリ(PROM)の設定あるいは書き換え端子パッドに繋がっている。この辺りの細かな構造は任意に設計できる事項であり、図示の構成に限定されない。設定端子8は絶縁筐体1の側壁に設けた凹部の底部に設置されており、書き換え装置の出力端子(プローブ)の受け入れを確実にしてある。
【0026】
図6は、図2の矢印D方向からみた発振器の短辺側外側面図である。図6に示したように、設定端子8は発振器の短辺側外側に形成することもできる。この設定端子8の構造も図5で説明したものと同様である。なお、設定端子8は、発振器の短辺側外側に形成する場合も、また長辺側に設ける場合であっても、必ずしも2個に限るものではなく、3個以上、又は接地端子を発振器本体の接地端子と共用して1個のみとすることもできる。
【0027】
図7と図8は、本発明の実施例1の理解を容易にするための従来技術を説明する発振器の回路構成図である。水晶振動子を用いた発振器は、水晶振動子と発振回路を形成したICチップをパッケージに収容して構成される。周波数や仕様が異なる発振器を構成する場合、その周波数や仕様に最適化したICを使用している。
【0028】
図7は、振動周波数がF1の水晶振動子11と、発振周波数f1の発振回路52と実装機器の仕様に合わせた出力信号(出力仕様A)にして発振出力を出力端子18に出力する出力回路17を形成したIC10で構成されている。水晶振動子11の振動出力は端子39、40からICチップ10に入力する。図7の発振回路52は、インバータアンプ13に抵抗素子12および15、容量14および16で構成された、所謂コルビッツ型の発振器である。
【0029】
図8は、振動周波数がF2の水晶振動子21と、発振周波数f2の発振回路52と実装機器の仕様に合わせた出力信号(出力仕様B)にして発振出力を出力端子18に出力する出力回路27を形成したIC20で構成されている。水晶振動子21の振動出力は端子39、40からICチップ20に入力する。図8の発振回路52は、インバータアンプ23に抵抗素子22および25、容量24および26で構成された、所謂コルビッツ型の発振器である。
【0030】
従来、周波数や仕様が異なる発振器を要求されることに応需するためには、図7や図8に示したような発振器を多数種用意しておく必要があった。本発明では、複数種類の周波数や仕様に適した回路定数や回路方式を切り換えられる発振回路定数切り換え手段(以下、実施例2以降も含めて、単に切り換え回路と称する)と、その切り換えを指定する不揮発性メモリをICチップに内蔵させることで、一個の発振器で多種の周波数や仕様に対応させるものである。
【0031】
なお、不揮発性メモリにはPROMが用いられるが、他の同様なメモリで、外部から切り換えを指定するデータの設定と書き換えが可能なものであれば、このようなメモリに限るものではない。また、振動子は水晶振動子以外の振動素子も使用でき、発振器もコルビッツ型に限るものではない。
【実施例2】
【0032】
図9は、本発明にかかる発振器の実施例1を説明する発振器の回路構成図である。実施例1の発振器も、図7、図8と同様に水晶振動子を用いた発振器は、水晶振動子と発振回路を形成したICチップをパッケージに収容して構成される。水晶振動子11(21)は便宜上、それぞれ図7と図8で説明したものの何れかに相当するものとして示す。実施例1は、発振器52として前記した図7と図8の回路を並列に配置し、切り換えスイッチ32、33、34、35a、35bで両回路を切り換え可能に構成されている。
【0033】
ICチップ3には、図7と図8で説明した出力回路17と出力回路27に相当する出力回路が並列に形成されている。これらの出力回路17と出力回路27は出力回路切り換え手段である切り換えスイッチ(以下、実施例2以降も含めて、単に切り換えスイッチと称する)36で選択的に出力端子18に接続される。そして、ICチップ3には、切り換えスイッチ32、33、34、35a、35bおよび切り換えスイッチ36の切り換えを指定するデータを格納した不揮発性メモリであるPROM31が形成されている。ICチップは、PROM31に設定しあるいは書き換えるための切り換えデータの設定入力端子37、38を有している。端子38は接地端子である。
【0034】
この構成において、顧客から要求された所要の周波数や仕様の発振器を提供する場合、PROM31に対応するデータを外部から端子37、38を介して書き込む。この書き込みには既知のPROM書き込み装置を使用する。書き込まれたデータにより、切り換えスイッチ32、33、34、35a、35bおよび切り換えスイッチ36が所定仕様の回路側に切り換えられる。
【0035】
なお、PROMには最も需要の多い仕様や回路方式を選択するデータを書き込んで設定しておき、これとは異なる仕様や回路方式の発振器が要求された場合に、それに応じたデータを書き込むようにすれば、出荷管理の効率化を図ることができる。
【0036】
本実施例により、一種類のICを備えた一個の発振器を複数の周波数範囲、あるいは複数の仕様の発振器として使用できる。また、異なる回路方式が必要な仕様の実装機器に対しても該一種類のICに複数の出力回路を内蔵させ、不揮発性メモリに格納されたデータ内容によって最適な回路を選択することで、異なる回路方式ごとにICを用意する必要がなく、発振器の周波数および仕様設定の自由度が増し、製品管理、出荷管理の効率向上を図ることができる。
【0037】
図10と図11は、本発明の実施例2の理解を容易にするための従来技術を説明する発振器の回路構成図である。前記の従来例と同様に、水晶振動子を用いた発振器は、水晶振動子と発振回路を形成したICチップをパッケージに収容して構成される。周波数や分周数、あるいは仕様が異なる発振器を構成する場合、その周波数や仕様に最適化したICを使用している。
【0038】
図10は振動周波数がF1の水晶振動子11と、発振周波数f1の発振回路52と、分周数がnの分周回路53、分周した出力(周波数f10)を実装機器の仕様に合わせた出力信号(出力仕様C)にして発振出力を出力端子18に出力する出力回路17を形成したIC10で構成されている。水晶振動子11の振動出力は端子39、40からICチップ10に入力する。図7の発振回路52は、インバータアンプ13に抵抗素子12および15、容量14および16で構成された、所謂コルビッツ型の発振器である。
【0039】
図11は、振動周波数がF2の水晶振動子21と、発振周波数f2の発振回路52と、分周数がm(m≠n)の分周回路54、分周した出力(周波数f20)を実装機器の仕様に合わせた出力信号(出力仕様D)にして発振出力を出力端子18に出力する出力回路27を形成したIC20で構成されている。水晶振動子21の振動出力は端子39、40からICチップ20に入力する。図11の発振回路52は、インバータアンプ23に抵抗素子22および25、容量24および26で構成された、所謂コルビッツ型の発振器である。
【0040】
図12は、本発明にかかる発振器の実施例2を説明する発振器の回路構成図である。実施例2の発振器も、図10、図11と同様の水晶振動子を用い、水晶振動子11または21と発振回路52を形成したICチップ3をパッケージに収容して構成される。水晶振動子11(21)は便宜上、それぞれ図10と図11で説明したものの何れかに相当するものとして示す。実施例2は、発振器52として前記した図10と図11の発振回路を並列に配置し、切り換えスイッチ32、33、34、35a、35bで両回路を切り換え可能に構成されている。
【0041】
ICチップ3には、図10と図11で説明した分周回路53、54に相当する分周回路を並列に接続し、また、図10と図11で説明した出力回路17と出力回路27に相当する出力回路が並列に形成されている。これらの分周回路53、54と出力回路17と出力回路27を切りかえスイッチ36a、36b、36cで切り換え可能にされている。
【0042】
そして、さらに、ICチップ3には、切り換えスイッチ32、33、34、35a、35bおよび切り換えスイッチ36a、36b、36cの切り換えを指定するデータを格納した不揮発性メモリであるPROM31が形成されている。ICチップは、PROM31に設定しあるいは書き換えるための切り換えデータの設定入力端子37、38を有している。端子38は接地端子である。
【0043】
この構成において、実施例1での説明と同じように、顧客から要求された所要の周波数や仕様の発振器を提供する場合、PROM31に対応するデータを外部から端子37、38を介して書き込む。この書き込みには既知のPROM書き込み装置を使用する。書き込まれたデータにより、切り換えスイッチ32、33、34、35a、35bおよび切り換えスイッチ36a、36b、36cが所定仕様の回路側に切り換えられる。
【0044】
なお、PROM31には最も需要の多い仕様や回路方式を選択するデータを書き込んで設定しておき、これとは異なる仕様や回路方式の発振器が要求された場合に、それに応じたデータを書き込むようにすれば、出荷管理の効率化を図ることができることは実施例1と同じである。
【0045】
本実施例により、一種類のICを備えた一個の発振器を複数の周波数範囲、あるいは複数の仕様の発振器として使用できる。また、異なる回路方式が必要な仕様の実装機器に対しても該一種類のICに複数の分周回路と複数の出力回路を内蔵させ、不揮発性メモリに格納されたデータ内容によって要求に合った最適な回路を選択することで、異なる回路方式ごとにICを用意する必要がなく、発振器の周波数および仕様設定の自由度が増し、製品管理、出荷管理の効率向上を図ることができる。
【実施例3】
【0046】
図13は、本発明にかかる発振器の実施例3を説明する発振器の回路構成図である。実施例3は、実施例2において、発振回路52の出力を分周回路をバイパスして、出力回路17または出力回路27に直接印加するルートと切り換えスイッチ36dを設けたものである。切り換えスイッチ36dを出力回路17または出力回路27側に接続した場合には、分周回路53、54を選択する分周回路切り換え手段である切り換えスイッチ(以下、単に切り換えスィッチ)36aは中立にしておくのが望ましい。
【0047】
実施例3によれば、実施例1のように、発振回路52の発振信号を分周せずに出力回路17または27を通して出力端子18に接続できるため、発振器の周波数および仕様設定の自由度がさらに増す。
【0048】
図14は、本発明の発振器に内蔵するICチップの回路形成領域を説明する模式図である。このICチップ3には、PROM領域310、発振回路領域320、分周回路領域330、出力回路領域340を有する。なお、実施例1に使用するものでは、分周回路領域330を設ける必要はない。
【0049】
本発明は、以上説明した実施例に限定されるものではなく、実施例2または3において、分周回路を複数設けることに代えて、一つの分周回路の分周数のみを外部書き換え可能な不揮発性メモリに格納したデータで変更する構成とすることもでき、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明にかかる発振器の構成例を模式的に説明する断面透視図である。
【図2】図1の矢印A方向からみた本発明にかかる発振器の上面図である。
【図3】図1の矢印B方向からみた本発明にかかる発振器の背面図である。
【図4】図2の矢印C方向からみた本発明にかかる発振器の長辺側側面図である。
【図5】図4のX―X’線に沿って矢印Y―Y’方向みた部分断面図である。
【図6】図2の矢印D方向からみた発振器の短辺側側面図である。
【図7】本発明の実施例1の理解を容易にするための従来技術を説明する発振器の回路構成図である。
【図8】本発明の実施例1の理解を容易にするための従来技術を説明する発振器の他の回路構成図である。
【図9】本発明にかかる発振器の実施例1を説明する発振器の回路構成図である。
【図10】本発明の実施例2の理解を容易にするための従来技術を説明する発振器の回路構成図である。
【図11】本発明の実施例2の理解を容易にするための従来技術を説明する発振器の他の回路構成図である。
【図12】本発明にかかる発振器の実施例2を説明する発振器の回路構成図である。
【図13】本発明にかかる発振器の実施例3を説明する発振器の回路構成図である。
【図14】本発明の発振器に内蔵するICチップの回路形成領域を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・絶縁筐体
2・・・振動子
3,10,20,・・・ICチップ
4・・・封止蓋体
5・・・封着剤
6・・・導電性固定材
7・・・実装端子
8・・・設定端子
11,21・・・水晶振動子
12,15,22,25・・・抵抗素子
13,23・・・インバータアンプ
14,16,24,26・・・容量
17,27・・・出力回路
18・・・出力端子
31・・・外部書き換え可能な不揮発性メモリ
37,38・・・書き換え(設定)端子
53,54・・・分周回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の内側に一個の振動子と一個のICチップを収納し、外面側に実装機器と電気的に接続する複数の端子を設けた絶縁筐体と、該絶縁筐体の内側を外部雰囲気から隔離する封止蓋体を有する発振器であって、
前記ICチップは、前記振動子の振動信号に基づいて所定周波数の信号を発振する発振回路を形成した発振回路領域と、出力回路領域と、書き換え可能な不揮発メモリ領域とを有し、
前記発振回路領域に形成される発振回路は、複数種の発振周波数に対応した複数の発振回路定数と該複数の発振回路定数を選択的に切り換える発振回路定数切り換え手段を備え、
前記出力回路領域に形成される出力回路は、複数種の実装機器の仕様に対応した複数の回路方式に対応した複数の出力回路と該複数の回路方式の出力回路を切り換える出力回路切り換え手段を備え、
前記書き換え可能な不揮発メモリ領域に形成される不揮発メモリには、前記発振回路定数切り換え手段と前記出力回路切り換え手段のそれぞれを選択する選択データを格納しており、
前記絶縁筐体の外面に、前記不揮発メモリに格納する前記選択データを外部から書き換える選択データ書き換え端子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項2】
請求項1において、
前記振動子は水晶振動子であることを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1において、
前記不揮発メモリはプログラマブルメモリであることを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1において、
前記選択データ書き換え端子は、前記絶縁筐体の外背面に備えたことを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項1において、
前記選択データ書き換え端子は、前記絶縁筐体の外側面に備えたことを特徴とする発振器。
【請求項6】
表面の内側に一個の振動子と一個のICチップを収納し、外面側に実装機器と電気的に接続する複数の端子を設けた絶縁筐体と、該絶縁筐体の内側を外部雰囲気から隔離する封止蓋体を有する発振器であって、
前記ICチップは、前記振動子の振動信号に基づいて所定周波数の信号を発振する発振回路を形成した発振回路領域と、該発振回路領域で発振された周波数を所定の分周数で分周する分周回路を形成した分周回路領域と、出力回路領域と、書き換え可能な不揮発メモリ領域とを有し、
前記分周回路は、前記発振回路の出力周波数を異なる分周数で分周する複数の分周回路定数と、該複数の分周出力を前記出力回路に切り換えて入力する分周出力切り換え手段を有し、
前記出力回路領域に形成される出力回路は、複数種の実装機器の仕様に対応した複数の回路方式に対応した複数の出力回路と、該複数の回路方式の出力回路を切り換える出力回路切り換え手段を備え、
前記書き換え可能な不揮発メモリ領域に形成される不揮発メモリには、前記分周出力切り換え手段と前記回路方式切り換え手段のそれぞれを選択するデータを外部から書き換えるデータ書き換え手段を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項6において、
前記振動子は水晶振動子であることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項6において、
前記不揮発メモリはプログラマブルメモリであることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項6において、
前記選択データ書き換え端子は、前記絶縁筐体の外背面に備えたことを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項6において、
前記選択データ書き換え端子は、前記絶縁筐体の外側面に備えたことを特徴とする発振器。
【請求項11】
表面の内側に一個の振動子と一個のICチップを収納し、外面側に実装機器と電気的に接続する複数の端子を設けた絶縁筐体と、該絶縁筐体の内側を外部雰囲気から隔離する封止蓋体を有する発振器であって、
前記ICチップは、前記振動子の振動信号に基づいて所定周波数の信号を発振する発振回路を形成した発振回路領域と、該発振回路領域で発振された周波数を所定の分周数で分周する分周回路を形成した分周回路領域と、出力回路領域と、書き換え可能な不揮発メモリ領域とを有し、
前記発振回路領域に形成される発振回路は、複数種の発振周波数に対応した複数の発振回路定数と該複数の発振回路定数を選択的に切り換える発振回路定数切り換え手段を備え、
前記分周回路は、前記発振回路の出力周波数を異なる分周数で分周する複数の分周回路定数と、該複数の分周出力を前記出力回路に切り換えて入力する分周出力切り換え手段を有し、
前記出力回路領域に形成される出力回路は、複数種の実装機器の仕様に対応した複数の回路方式に対応した複数の出力回路と該複数の回路方式の出力回路を切り換える出力回路切り換え手段を備え、
前記書き換え可能な不揮発メモリ領域に形成される不揮発メモリには、前記発振回路定数切り換え手段と前記分周出力切り換え手段と前記出力回路切り換え手段のそれぞれを選択する選択データを格納しており、
前記絶縁筐体の外面に、前記不揮発メモリに格納する前記選択データを外部から書き換える選択データ書き換え端子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項12】
請求項11において、
前記振動子は水晶振動子であることを特徴とする発振器。
【請求項13】
請求項11において、
前記不揮発メモリはプログラマブルメモリであることを特徴とする発振器。
【請求項14】
請求項11において、
前記選択データ書き換え端子は、前記絶縁筐体の外背面に備えたことを特徴とする発振器。
【請求項15】
請求項11において、
前記選択データ書き換え端子は、前記絶縁筐体の外側面に備えたことを特徴とする発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−16513(P2010−16513A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173018(P2008−173018)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】