説明

発振器

【課題】ホット端子に対するプローブピンの当接確実性の向上を図ると共に、半田引き付け量を制限することのできる発振器を提供する。
【解決手段】振動子12と、IC38を備えるベース基板30とを半田ボール42を介して上下に接続した発振器10であって、振動子12の下面には、半田ボール42との接続用に形成された接続用金属膜22とホット端子18とが設けられ、前記ホット端子18は振動片26と電気的に導通し、接続用金属膜22よりも面積が大きく、ホット端子18の形成領域には、導電性を有する金属膜と、前記金属膜よりも半田ぬれ性の低い撥液部20が形成され、撥液部20は、接続用金属膜の面積と同じ、または実用上概ね同じ面積となる実装部18aを囲うように配置され、少なくとも一部において、実装部18aの金属膜と実装部18aの外側に位置する金属膜18bとの導電性が確保されるように形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器に係り、特に発振部となる振動子と、振動子による発振を制御する発振回路を搭載したベース基板とを半田ボールを介して積層する構造とした発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
実装面積の小型化の要請により、振動子と発振回路を搭載したベース基板とを半田ボールを介して積層する構造とした発振器は種々提案されており、例えば特許文献1に開示されているような発振器が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている発振器は、ベース基板に形成された端子(パターン)上に半田を塗布すると共に半田ボールを配置し、半田ボール上に半田を塗布すると共に振動子を配置することにより構成されるといった基本構成を有するものである。このような構成の発振器では、ベース基板に形成された端子上に半田ボールを配置する際の位置決め性が問題視されることとなり、特許文献2に開示されているような構成を有する発振器が提案されている。
【0004】
特許文献2に開示されている発振器は、ベース基板の端子の周囲に、樹脂などの絶縁性部材により土手を形成し、この土手により半田ボールの位置決めを成すこととしている。
このような技術によりベース基板側の位置決めが可能となると、半田ボールに対して振動子を搭載した際に生ずる回転方向のずれが問題視される。このような問題に対して、半田ボールに対する振動子のセルフアライメント性の向上を図る技術が、特許文献3、4に開示されている。
【0005】
特許文献3に開示されている技術は、ベース基板上に形成された端子、および振動子の下面に形成された端子の双方に、半田ボールの位置決めを成す凹部を形成するというものである。また、特許文献4に開示されている技術は、振動子搭載時に生ずる振動子の回転方向に着目し、振動子の下面に形成する接続用の金属膜の形状により半田の流れ方向を規制することで、振動子の水平方向の回転を抑制し、セルフアライメント性を向上させることを特徴としたものである。ホット端子と異なり、実質的な接続先の無い接続用金属膜は、形状形成の自由度が高く、その面積だけホット端子と同一とすれば、振動子を実装した際の半田の濡れ広がり状態も略同一となり、振動子を実装した際に傾きが生ずる虞も無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−185254号公報
【特許文献2】特開2004−180012号公報
【特許文献3】特開2002−368373号公報
【特許文献4】特開2008−104095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発振器の小型化が進む近年、振動子の振動特性を検査する際にホット端子に当接されるプローブピンの当接確実性が課題とされ、振動子の下面に形成されるホット端子の占有面積の拡大化が望まれている。こうした実状の中、実際にホット端子の占有面積を拡大すると、次のような問題が生ずることが明らかとなった。
【0008】
すなわち、ホット端子を形成する金属膜の方が、半田ボールのコアよりも濡れ性が高くなることがあり、リフロー工程などの半田溶融工程が多発すると、接続用の半田がホット端子側に引き付けられ、電気的、機械的な接続状態が不十分となってしまうというものである。
【0009】
本発明では、このような問題を解決し、ホット端子に対するプローブピンの当接確実性の向上を図ると共に、半田引き付け量を制限し、半田ボールと振動子の電気的、機械的接続状態の安定性を図ることのできる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]振動子と、発振回路を備えるベース基板とを半田ボールを介して上下に接続した発振器であって、前記振動子の下面には、前記半田ボールとの接続用に形成された接続用金属膜とホット端子とが設けられ、前記ホット端子は振動片と電気的に導通し、前記接続用金属膜よりも面積が大きく、前記ホット端子の形成領域には、導電性を有する金属膜と、前記金属膜よりも半田ぬれ性の低い撥液部が形成され、前記撥液部は、前記接続用金属膜の面積と同じ、または実用上概ね同じ面積となる実装部を囲うように配置され、少なくとも一部において、前記実装部の金属膜と前記実装部の外側に位置する金属膜との導電性が確保されるように形成されることを特徴とする発振器。
【0011】
このような特徴を有する発振器によれば、ホット端子の占有面積を広くすることができるため、ホット端子に対するプローブピンの当接確実性を向上させることができる。また、撥液部により実装部の面積を制限することとしたため、ホット端子に対する半田引き付け量を制限することができ、半田ボールと振動子の電気的、機械的接続状態の安定性を図ることができる。
【0012】
[適用例2]適用例1に記載の発振器であって、前記撥液部は、前記実装部を囲うように設けられた複数の領域から成ることを特徴とする発振器。
撥液部を複数の領域により構成することにより、設計上の自由度が飛躍的に拡大化される。
【0013】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の発振器であって、前記ホット端子は、少なくとも表面金属層と下地金属層とを積層して構成され、前記導電性を有する金属膜を前記表面金属層が担い、前記撥液部を前記下地金属層が担うことを特徴とする発振器。
このような構成とした場合、下地金属層も導電性を有することとなる。このため、実装部を撥液部により完全に囲った場合であっても、実装部と撥液部の外に位置する金属膜との導電性を確保することができる。
【0014】
[適用例4]適用例1または適用例2に記載の発振器であって、前記振動子の下面はセラミックスにより構成され、前記撥液部は前記セラミックスが露出することにより構成されることを特徴とする発振器。
このような構成とした場合、金属膜を積層構造とする場合であっても、下地金属層と表面金属層との間で、スクリーン形状を変える必要が無く、生産性を下げる虞が無い。
【0015】
[適用例5]適用例1乃至適用例4のいずれか1例に記載の発振器であって、前記実装部の形状を概ね円形とし、前記実装部の直径をL1、前記半田ボールの直径をL2とした場合、L2<L1≦1.3×L2の関係を満たすことを特徴とする発振器。
このような構成とすることにより、実装部による半田引き付け量が好適な値となり、振動子の搭載に際してはセルフアライメント効果も奏することが可能となる。
【0016】
[適用例6]適用例1乃至適用例4のいずれか1例に記載の発振器であって、前記接続用金属膜の平面形状を円形とし、前記接続用金属膜の直径をL3、前記半田ボールの直径をL2とした場合、L2<L3≦1.3×L2の関係を満たすことを特徴とする発振器。
このような構成とすることにより、接続用金属膜による半田引き付け量が好適な値となり、振動子の搭載に際してはセルフアライメント効果も奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る発振器の構成を示す図である。
【図2】半田ボールの構成を示す断面図である。
【図3】半田ボールの使用形態を示す発振器の部分拡大図である。
【図4】振動子の振動特性検査に用いるプローブの先端形状に関する工夫を説明するための図である。
【図5】ホット端子を積層構造とする場合における下地層と表面層との関係を示す図である。
【図6】実装部を囲う撥液部の配置密度を、放射状に増やした場合におけるホット端子の構成を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る発振器における振動子の下面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の発振器に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1を参照して、本発明の発振器に係る第1の実施形態について説明する。なお、図1において図1(A)は発振器の正面断面を示す図であり、図1(B)は同図(A)におけるA−A断面における構成を示す図であり、図1(C)は同図(A)におけるB−B断面における構成を示す図である。
【0019】
本実施形態に係る発振器10は、振動子12とベース基板30、および振動子12とベース基板30を接続する半田ボール42を基本として構成される。
振動子12は、パッケージベース14と蓋体24、および振動片26を有する。実施形態に係るパッケージベース14は、詳細を後述する振動片26を収容するための凹陥部を有する枡状に形成された容器である。パッケージベース14には、凹陥部の底となる底面に振動片26を実装するための実装端子16、下面に外部実装を成すホット端子18と接続用金属膜22がそれぞれ設けられる。なお、実装端子16とホット端子18は、1対1となるように、電気的に接続されている。
【0020】
本実施形態では、ホット端子18は、その面積が接続用金属膜22よりも大きくなるように形成している(図1(B)参照)。このような形態とすることで、ホット端子18に対する検査用プローブの当接確実性を向上させることができる。また、接続用金属膜22は、詳細を後述する半田ボール42との接合に必要十分な面積とすることができ、接続用金属膜22が半田を必要以上に引き付け、半田ボール42と接続用金属膜22との間における電気的、機械的接続が不十分となることを避けることができる。
【0021】
ホット端子18は、矩形の一部を切欠くように、略鉤状の平面形状を有する。このような平面形状を有することで、詳細を後述するIC38の実装に用いるワイヤー44の引き回しが高くなった場合であっても、ワイヤー44とホット端子18とが接触し、短絡を生じさせるといった事態を効果的に回避することができる。
【0022】
また、ホット端子18の外形線により囲われているホット端子形成領域には、導電性を有する金属膜と、この金属膜よりも濡れ性の低い撥液部20が形成されている。撥液部20は、所定領域を囲繞するように、複数の領域を間欠的に並べて配置される。ここで、間欠的に配置された撥液部20を仮想的に結んで形成される領域は、接続用金属膜22の面積と同じ、または実用上概ね同じ面積となるようにする。撥液部20によって囲われた領域を、半田ボール42が接続される実装部18aとした場合、間欠的に配置された撥液部20の隙間は半田が流れ難くなるため、ホット端子18における半田の濡れ広がりによる過度な半田の引き付けを抑制し、半田ボール42とホット端子18との間における電気的、機械的接続が不十分となることを避けることができる。
【0023】
また、撥液部20は間欠的に設けられているため、実装部18aと撥液部20の外側に位置する金属膜18bとは導電性が確保され、プローブの当接確実性も確保することができる。ここで、撥液部20の配置間隔は、隣接配置される撥液部20間の距離の中間点をyとした場合に、yに生ずるせん断応力τ(Pa)と、金属膜と溶融した半田の界面に作用する応力P(Pa)との関係が、τ<Pの関係を満たすように定めると良い。
【0024】
以下、τとPとの関係についての説明を行う。
半田溶融時の表面張力をT(N/m)とした場合に、表面張力により金属膜との界面に働く力W(N)は、半田と金属膜との界面長さLとの積であるから、
【数1】

となる。ここで、流出する半田における界面部分の表面積をA(m)とする。応力は、単位面積あたりに働く力であることより、界面に働く力W(N)を表面積A(m)で割ると、界面に作用する応力P(Pa)とすることができる。
【数2】

【0025】
ここで、ニュートンの粘性の法則では、固体壁(本実施形態における撥液部)からyだけ離れた断面上のせん断応力τは、
【数3】

で表すことができる。なお、数式3において、μは流体(溶融した半田の粘度(Pa・s))、dyは固体壁からyだけ離れた箇所を基点とした微小距離、duは、固体壁から微小距離dy離れる間に進む流体の速度を示す。数式2と数式3より、隣接配置される撥液部20間の距離の中間点をyとした場合におけるせん断応力τ(Pa)と界面に作用する応力P(Pa)との関係が、τ<Pの関係を満たすことで、半田が実装部18aから漏れ出すことを防ぐことができる。よって、撥液部20の配置間隔は、τ<Pの関係を満たすようにすると良い。
【0026】
本実施形態では、パッケージベース14の構成材料をセラミックスとしている。セラミックスは、溶融半田に対する撥液性を有するため、ホット端子形成領域において、金属膜の間欠部からパッケージベース14を露出させることにより、撥液部20を構成することができる。
【0027】
接続用金属膜22は、振動子12と、詳細を後述するベース基板30とを、半田ボール42を介して接続(接合)する際のバランス確保、並びに機械的強度確保のために設けられた金属膜であり、半田接続のための濡れ性を有する。接続用金属膜22の平面形状を円形とし、その直径をL3とした場合、半田ボール42の直径L2との関係において、数式4の関係を満たすようにすることが望ましい。
【数4】

【0028】
このような関係を満たすことにより、汎用される半田ボール42に被覆されている半田量との関係において、接続用金属膜22側に引き付けられる半田量が適度に制限され、接続部に理想的なフィレットを形成することができる。また、接続用金属膜22の平面形状を円形とすることで、セルフアライメントが働き、振動子12搭載時の回転抑制と位置決め効果を奏することができるからである。このことより、接続用金属膜22と略同じ面積で構成されるホット端子18の実装部18aの平面形状も円形とすることで、同様な効果を奏することができる。
【0029】
この場合、平面形状を円形とした実装部18aの直径をL1とし、半田ボール42の直径をL2とした時に、
【数5】

の関係を満たすようにすれば良い。
【0030】
振動子12を構成する蓋体24は、詳細を後述する振動片26を実装するパッケージベース14の凹陥部を覆い、振動片実装空間を気密に封止する役割を担う部材である。よって蓋体24は、凹陥部の開口形状よりも大きな平板であれば良く、パッケージベース14をセラミックスとした場合、パッケージベース14と先膨張係数の近い金属、またはソーダガラスなどにより構成すると良い。リフロー時などの加熱時に膨張量の違いによって接合部などにクラックや歪みが生ずることを防ぐためである。なお蓋体24は、パッケージベース14に対して図示しないシームリングや、低融点ガラスなどの接合部材を介して接合すれば良い。
【0031】
振動片26は、実装端子16を介して入力される外部からの信号を受けて振動を励起させる部材であれば良い。本実施形態では振動片26として、圧電部材、特に水晶により構成される振動片26を一例として挙げることとする。圧電部材として水晶を採用して構成される振動片26は多岐に亙り、例えばATカットやBTカットといったカット角で切り出された水晶基板により構成される振動片は、厚み滑り振動を主振動として励起する。また、+2°Xカットと呼ばれるカット角で切り出された水晶基板により構成される振動片は、屈曲振動を主振動として励起する。なお、本実施形態では、水晶基板により構成される振動片を例に挙げて説明するが、これを他の構成による振動片に置換した場合であっても、発明の実施に影響を与えるものでは無い。
【0032】
振動片26は、図示しない励振電極と引出電極、および入出力電極を備え、引出電極とパッケージベース14に形成された実装端子16とが、導電性接着剤28を介して接続されることで、励振電極とホット端子18との電気的接続が図られる。
【0033】
ベース基板30は、一方の主面に、発振回路を構成するIC38と、IC38を実装するための複数の実装端子32、および振動子12との接続を図るための接続用パターン34を有し、他方の主面に、発振器10を電子機器等のマザー基板(不図示)に実装するための外部実装端子36を有する。ベース基板30は、エポキシ系樹脂やセラミックスなどの絶縁部材により構成すれば良い。本実施形態では、IC38とベース基板30に形成された実装端子32とはワイヤボンディングにより電気的に接続する。IC38と接続される実装端子32のうちのいずれか2つの端子は、振動子12と電気的に接続される端子とされ、接続用パターン34と電気的に接続されている。また、少なくとも他の2つの端子は、IC38に対する電気信号の入出力を行うための端子であり、外部実装端子36と電気的に接続されている。
【0034】
半田ボール42は、振動子12とベース基板30とを電気的、機械的に接続する接続部材である。半田ボール42は図2に示すように、金属や樹脂により構成されるコア42aの周囲に半田42bを被覆することで構成される。コア42aは図3に発振器10の部分拡大図を示すように、振動子12とベース基板30との間の距離を確保するためのスペーサーとしての役割を担うため、外周に被覆する半田よりも融点の高い物質とする。また、コア42aを金属(例えば銅)により構成すれば、コア42a自体も導電性部材としての役割を担うことができる。
【0035】
このような構成要素を基本として構成される本実施形態に係る発振器10は、半田ボール42(詳細には、半田ボール42のコア42a)をスペーサーとして形成される振動子12とベース基板30との間の空隙に、樹脂などの絶縁性部材から成るモールド材46が設けられる。このような構成とすることで、ワイヤー44の保護や接続部分における短絡、半田42bの酸化等の抑制を図ることができる。
【0036】
このような構成の発振器10は、振動子12の製造を行った後、振動子12の振動特性の検査を行う。この際、上述したようにホット端子18の面積を広くすることで、検査に用いるプローブの当接確実性を向上させることができる。ここで、プローブの当接確実性を向上させる観点からアプローチした場合、プローブ先端の形状に工夫を凝らすこともできる。例えば、従来プローブの先端形状が、図4(A)に断面形状を示すスピア型や、図4(B)に断面形状を示す平面型であるとした場合、次のような問題により、当接確実性が低下する可能性がある。例えば、先端形状をスピア型とした場合、検査時の接触箇所が撥液部20となってしまった場合に、導通をとることができず、接触不良となってしまう。また、先端形状を平面型とした場合には、先端にゴミなどが付着した場合、それが微小なものであったとしても、ホット端子18に対しては接触不良を生じさせることとなる。このような問題を回避するために、プローブの先端形状を平面型としつつ、平面部に中刳りを設けたもの(図4(C)参照)や、スピア型を複数並列に設けたもの(図4(D)参照)とすることができる。プローブの先端形状をこのようなものとすることによれば、接触箇所やゴミの影響による当接不良を防ぐことが可能となる。
【0037】
振動特性の検査を終えた振動子12は、IC38が実装されたベース基板30と、半田ボール42を介して上下、すなわち積層方向に接続される。半田ボール42はまず、シート状のベース基板に形成された接続用パターン34に塗布された半田上に配置される。次に、半田ボール42の上頂部に接続用の半田が塗布され、半田ボール42上に振動子12が搭載される。その後、シート状のベース基板と振動子12との間にモールド材46が充填され、モールド材46が硬化した後に個片に切断されることで発振器10が完成する。
【0038】
このようにして形成される本実施形態に係る発振器10によれば、振動子12におけるホット端子18に対するプローブの当接確実性の向上を図ると共に、半田引き付け量を制限し、半田ボール42と振動子12の電気的、機械的接続状態の安定性を図ることができる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、振動子12を構成するパッケージベース14として枡形のものを採用し、蓋体24として平板状のものを採用する旨記載した。しかしながら本実施形態に係る振動子12は、パッケージベース14として平板状のものを採用し、蓋体24として凹陥部を有するキャップ状のものを採用しても良い。また、IC38の実装形態としてワイヤボンディングを採用する旨記載したが、これをフリップチップボンディングとしても良い。さらに、実施形態では、IC38に発振回路を搭載する旨記載したが、IC38には、発振回路に加え、電圧制御回路や、温度補償回路を搭載しても良い。また、半田ボール42として、コア42aの構成部材に銅を採用する旨記載したが、これを金や銀、あるいは錫などとしても良い。
【0040】
また、ホット端子18を構成する金属膜は実質上、ベース基板に対する吸着性の関係から、図5に示すように、複数の金属材料を積層して構成されることとなる。なお、図5において、図5(A)はホット端子18を構成する下地層19の形態を示す図であり、図5(B)はパッケージベース14上に形成された下地層19の上に表面層19aを形成した形態を示す図であり、図5(C)はホット端子18の断面構成を示す図である。
【0041】
この場合において、下地層(下地金属層)19をパッケージベース14を構成するセラミックスへの吸着性が良好なタングステンやモリブデンとし、表面層(表面金属層)19aを半田に対する濡れ性の良好な金とすると良い。そして、タングステンやモリブデンは金に比べて、酸化物形成の自由エネルギーが高く、半田に対する濡れ性が悪いため、表面層19aに設けた間欠部から露出させた下地層19により撥液部を構成するようにしても良い。また、下地層19を第1下地層、第2下地層とする場合には、第1下地層をタングステンやモリブデン、第2下地層をニッケルとすることができる。
【0042】
また、実施形態では、撥液部20の配置間隔により、半田の濡れ広がりを抑制する旨記載した。しかしながら、半田の濡れ広がりを撥液部20の密度により抑制するようにしても良い。この場合、ホット端子18において図6に示すように、実装部18aの中心から遠ざかるに従って、撥液部20の配置密度を増加させるようにすると良い。撥液部20をこのように配置することで、半田ボール42が接続される中心である実装部18aの中心から周辺に向けて、放射状に濡れ性が低下することとなる。これにより、半田が所定の範囲以上に濡れ広がることが無くなり、ホット端子18に対して過度に半田が引き付けられてしまう事態を避けることができる。
【0043】
次に、本発明の発振器に係る第2の実施形態について、図7を参照して説明する。なお、本実施形態に係る発振器の殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係る発振器10と同様である。よって、図7には、本実施形態に係る発振器と第1の実施形態に係る発振器10との相違点であるホット端子の形状が明確となるように、振動子における底面の形態を示すこととする。
【0044】
本実施形態に係る発振器では、ホット端子18に設ける撥液部20の形態を、C字型のスリットとし、少なくとも1箇所で、実装部18aと撥液部20の外側に位置する金属膜18bとを電気的に接続する形態とした。なお、実装部18aと外側に位置する金属膜18bとの接続部は、半田の流出を抑制する効果を奏することのできる程度の幅とすれば良い。このような形態とした場合であっても、上記第1の実施形態に係る発振器10と同様な効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0045】
10………発振器、12………振動子、14………パッケージベース、16………実装端子、18………ホット端子、20………撥液部、22………接続用金属膜、24………蓋体、26………振動片、28………導電性接着剤、30………ベース基板、32………実装端子、34………接続用パターン、36………外部実装端子、38………IC、42………半田ボール、44………ワイヤー、46………モールド材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、発振回路を備えるベース基板とを半田ボールを介して上下に接続した発振器であって、
前記振動子の下面には、前記半田ボールとの接続用に形成された接続用金属膜とホット端子とが設けられ、
前記ホット端子は振動片と電気的に導通し、前記接続用金属膜よりも面積が大きく、
前記ホット端子の形成領域には、導電性を有する金属膜と、前記金属膜よりも半田ぬれ性の低い撥液部が形成され、
前記撥液部は、前記接続用金属膜の面積と同じ、または実用上概ね同じ面積となる実装部を囲うように配置され、少なくとも一部において、前記実装部の金属膜と前記実装部の外側に位置する金属膜との導電性が確保されるように形成されることを特徴とする発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の発振器であって、
前記撥液部は、前記実装部を囲うように設けられた複数の領域から成ることを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発振器であって、
前記ホット端子は、少なくとも表面金属層と下地金属層とを積層して構成され、
前記導電性を有する金属膜を前記表面金属層が担い、
前記撥液部を前記下地金属層が担うことを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の発振器であって、
前記振動子の下面はセラミックスにより構成され、
前記撥液部は前記セラミックスが露出することにより構成されることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発振器であって、
前記実装部の形状を概ね円形とし、前記実装部の直径をL1、前記半田ボールの直径をL2とした場合、
L2<L1≦1.3×L2
の関係を満たすことを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の発振器であって、
前記接続用金属膜の平面形状を円形とし、前記接続用金属膜の直径をL3、前記半田ボールの直径をL2とした場合、
L2<L3≦1.3×L2
の関係を満たすことを特徴とする発振器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−223487(P2011−223487A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92893(P2010−92893)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】