説明

発泡ゴムの製造方法及びその製造装置

【課題】レーザプリンタ、複写機、各種端末機をはじめとするOA機器などに好適に用いることができる発泡ゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】予め成形されたゴム層31に密着させて発泡ゴム層32を成形する発泡ゴムの製造方法において、型7内にゴム層31をセットし、その状態で固体状の未発泡ゴム材料srを加熱すると共に加圧して型7内に注入し、注入した未発泡ゴム材料rを加硫し、発泡させて発泡ゴム層32を成形すると共に、ゴム層31に接着する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ゴムの製造方法及びその製造装置に係り、特に、金型などの型を用いて発泡ゴムを製造する方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ゴムの成形方法としては、一般的に型成形と押出し成形などの方法がある。特に、レーザプリンタ、複写機、各種端末機をはじめとするOA機器などの給紙部に用いられるゴムローラ(ピックアップローラ、フィードローラ、リタードローラなど)においては、発泡ゴムからなる発泡ゴム層を備えた発泡ゴムローラが用いられている。この発泡ゴムローラ(スポンジゴムローラ)の製造方法においては、型成形として材料の型入れ方式によって異なるが、例えば、事前にある程度の形を作製して予備成形した後に加圧して流動させる圧縮成形、ポッド内のゴム生地を注入・加圧して製品形状に成形するトランスファー成形、スクリューなどによりゴム材料を金型に注入して発泡させる射出成形などがある。
【0003】
また、押出し成形は、押出し機を用いて一定断面形状の成型品を連続的に押出して成形する方法である。発泡ゴムの製造では、型成形と押出し成形のどちらの製造方法でも実施されている。
【0004】
一方、給紙部に用いられるゴムローラとしては、発泡ゴムからなる内層(発泡ゴム層)と外層ゴムを接着し、発泡ゴムのみからなるゴムローラよりも耐久性を向上させ、摩擦係数を安定させた2層構造のゴムローラがある。
【0005】
この2層構造のゴムローラを製造する方法には、前記方法で作製した発泡ゴムからなる発泡ゴム層に、外層ゴムからなるゴム層を接着して被覆する方法、発泡材料として液状のゴム材料を用いてスプレー塗装や含浸などを行う方法、あるいは、先に作製した外層ゴムの内部に液状のゴム材料(ウレタンなど)を注入して前記の成形方法で発泡させる方法がある。
【0006】
例えば、図8(a)〜図8(e)に示すように、円筒状金型81の内面に高耐熱性樹脂の被膜82を形成し、次いで、円筒状金型81内にローラ基材83を挿入し、ローラ基材83と被膜82との間に液状の発泡性ゴム材料84を注入した後、加硫発泡を行って被膜82と発泡ゴム層とを接着させることにより2層構造のゴムローラ85を製造している。
【0007】
【特許文献1】特開2000−108223号公報
【特許文献2】特開2007−85451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の接着方法では、発泡ゴム層(スポンジ層)とその外層のゴム層などの被着材に対し、適正な接着力を有する接着剤を選定しなかった場合や、使用環境および使用条件(使用時に掛かる負荷)に対し、適正な接着力を維持できる接着剤を選定しなかった場合、スポンジ層と外層のゴム層との剥離が生じてしまう。また、接着工程による製造コストが高くなるなどの問題がある。
【0009】
また、前記の接着方法では、外層のゴム材料やスポンジ層のゴム材料が液状のものなどに限定されてしまう。固体のものを使用する場合においても、いったん液状化したものを使用する必要がある。
【0010】
一般的なゴム材料は、固体状のものが主流であり、液状材料となるとウレタンやシリコーンまたはラテックス系(ゴムの微粒子が水中に分散した溶液)に材料が限定されてしまう。ウレタンおよびシリコーン材料は、用紙との摩擦係数(摩擦係数=F/W(摩擦力F、荷重W)給紙用のゴムローラと媒体(紙など)の接触部分に掛かるもの)が低いため使用条件が制限される。また、ラテックス系では、NR(天然ゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)などが一般的に使用されているが、水分蒸発やゴム粒子の沈殿など貯蔵安定性が低いため扱いにくく、作業性が悪くなる。
【0011】
固体のものを液状化するには有機溶剤などに溶解させる必要があり、溶解工程や濃度管理などの作業を必要とするため、コストアップ、あるいは環境への影響も懸念される。
【0012】
外層のゴム層を先に作製し、固体ゴムを圧縮成形させて発泡ゴム層を形成する場合、材料を予備成形し、加硫時には、ガス抜きなどを実施しなければならない。
【0013】
また、給紙用のゴムローラにおいて、外層のゴム層の内側を発泡ゴム層とすることによって、発泡ゴムでないソリッド層(1層の固体ローラ)よりも低荷重で変形するため、容易にニップ幅(給紙用のゴムローラに一定の荷重で媒体を接触させたとき、給紙用のゴムローラが変形して媒体と接触する長さ)を確保することができるが、外層のゴム層との接着性も低く、発泡ゴム層の寸法精度が劣るため、安定したニップ幅を確保するのが困難である。
【0014】
スキャナや複写機などに用いる給紙用のゴムローラは、装置の高速高耐久化への対応や厚さや表面の異なる紙媒体を安定して給紙、分離するために、より低荷重で安定したニップ幅と摩擦係数を保つことが要求される。
【0015】
そこで、本発明の目的は、レーザプリンタ、複写機、各種端末機をはじめとするOA機器などに好適に用いることができる発泡ゴムの製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、発泡ゴムからなる発泡ゴム層を備え、安定したニップ幅と摩擦係数を有するゴムローラを低コストで製造するための方法、およびその製造方法によって得られるゴムローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は前記目的を達成するために、予め成形されたゴム層に密着させて発泡ゴム層を成形する発泡ゴムの製造方法において、型内に前記ゴム層をセットし、その状態で固体状の未発泡ゴム材料を加熱すると共に加圧して前記型内に注入し、注入した未発泡ゴム材料を加硫し、発泡させて前記発泡ゴム層を成形すると共に、前記ゴム層に接着する発泡ゴムの製造方法である。
【0018】
また、前記型に隣接させて固体状の未発泡ゴム材料を配置する予備室を設け、その予備室と連通させて前記型内に前記発泡ゴム層を成形するための成形室を形成し、その成形室に予め筒状に成形された前記ゴム層をセットし、前記予備室に前記固体状の未発泡ゴム材料を配置し、その固体状の未発泡ゴム材料を前記予備室で加熱すると共に加圧して液状にし、これを前記成形室のゴム層内側に注入し、注入した未発泡ゴム材料を加硫し、発泡させて筒状の発泡ゴム層を成形すると共に、前記ゴム層に接着してもよい。
【0019】
さらに、前記未発泡ゴム材料を加硫する前に、余剰の未発泡ゴム材料を前記成形室から逃がしてもよい。
【0020】
本発明の発泡ゴムの製造装置は、予め成形されたゴム層に密着させて発泡ゴム層を成形する発泡ゴムの製造装置において、固体状の未発泡ゴム材料を配置して加熱すると共に加圧して液状にするための予備室と、その予備室と連通されると共に、前記ゴム層がセットされてその内側に液状の未発泡ゴム材料が注入され、注入された未発泡ゴム材料を加硫し、発泡させて前記発泡ゴム層を成形すると共に、前記ゴム層に接着するための成形室とを備えるものである。
【0021】
また、前記予備室が形成されたポッドと、そのポッド上に重ねられて固体状の未発泡ゴム材料を加圧するシリンダーと、前記ポッドが上方に重ねられて前記成形室が形成された筒状の中金型と、その中金型の上下にそれぞれ重ねられる筒状の上金型と筒状の下金型とをさらに備えてもよい。
【0022】
上金型と下金型に、これらを上下に貫通して余剰の未発泡ゴムを逃がす逃がし孔をそれぞれ形成してもよい。
【0023】
前記逃がし孔は、発泡ゴム層の発泡度に応じて孔数・孔径・孔形状が設定されるとよい。
【0024】
さらに、上金型と下金型に、余剰の未発泡ゴムを金型外部へ逃がす逃がし溝をそれぞれ形成してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、レーザプリンタ、複写機、各種端末機をはじめとするOA機器などに好適な発泡ゴムを製造することができる。特に、本発明によれば、発泡加硫時に一定の圧力が掛かり、スキン層(加硫後の接着力がない薄い層)形成前にゴム層と発泡ゴム層が接着するため、接着剤を使用しなくても適正な接着力を得ることが可能であり、発泡ゴムからなる発泡ゴム層を備え、安定したニップ幅と摩擦係数を有する2層構造のゴムを簡単に製造でき、例えば2層構造からなる給紙用のゴムローラとして適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0027】
まず、本発明の好適な実施形態である発泡ゴムの製造方法に用いる発泡ゴムの製造装置を、図1(a)および図1(b)、図2を用いて説明する。本実施形態では、発泡ゴムからなる円筒状の発泡ゴム層(内層ゴム、スポンジゴム、あるいは内層スポンジ)の外側にゴム層(外層ゴム層)を設けた2層構造のゴムを製造する例で説明する。
【0028】
図1(a)は、本発明の好適な実施形態である発泡ゴムの製造方法に用いる発泡ゴムの製造装置の外観図、図1(b)はその部分断面図であり、図2は図1に示した発泡ゴムの製造装置の分解部分断面図である。
【0029】
図1(a)および図1(b)、図2に示すように、本実施形態に係る発泡ゴムの製造装置1(以下、製造装置1)は、発泡ゴム層を成形すると共に、予め成形されたゴム層に接着して2層構造のゴムを製造するための装置である。
【0030】
製造装置1は、固体状の未発泡ゴム材料を液状にして型に注入するための注入部2と、その注入部2に着脱自在に設けられる型としての金型(モールド金型)7とからなる。
【0031】
本実施形態では、これら注入部2と金型7とを耐熱性、剛性が高い金属で形成した。注入部2と金型7に用いる金属としては、機械構造用炭素鋼、アルミニウム合金、一般構造用圧延鋼材、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度鋼、ニッケルモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、ジェラルミン鋼がある。これら以外にも銅合金が使用可能である。これら金属の表面には、耐食性を向上させるためにメッキ処理を施しておくとよい。
【0032】
注入部2は、発泡ゴム層の材質となる固体状の未発泡ゴム材料を配置(収容)して加熱すると共に加圧して液状にするための予備室(予備成形室)3を備える。この注入部2は、内部に予備室3が形成されたポッド4と、そのポッド4上に重ねられて固体状の未発泡ゴム材料を加圧するシリンダー5とからなる。
【0033】
固体状の未発泡ゴム材料のゴム主成分としては、EPDMの他、全てのゴム材料(NR、SBR、BR、NBR、IIR(ブチルゴム)、Q(シリコーンゴム)、CR、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン)、ACM(アクリルゴム)、ECO(エピクロルヒドリンゴム)、U(ウレタンゴム)、T(多硫化ゴム)、CM(塩素化ポリエチレン))が使用可能である。本実施形態に係る固体状の未発泡ゴム材料は、これらいずれかのゴム主成分に、発泡剤、発泡助剤などを混練りしてコンパウンドとしたものである。
【0034】
ポッド4は、下部中心に液体状の未発泡ゴム材料が流れるポッド側ゴム流路4fが形成され、そのポッド側ゴム流路4f上方の周囲を覆うようにポッド側壁4wが形成されて略円筒状に形成される。これらポッド側ゴム流路4fの上方とポッド側壁4wとで予備室3が区画形成される。ポッド4の下部には下方に突出した凸部6が形成され、ポッド4が後述する上金型7uに着脱自在に設けられる。
【0035】
シリンダー5は、先端部(図1(b)、図2では下側)5dが予備室3と嵌合され、先端部5dより大径の後端部(フランジ部)5uがポッド側壁4w上に重ねられるように略円柱状に形成され、ポッド4に着脱自在に設けられる。
【0036】
金型7は成形室8を備える。成形室8は、予備室3と連通されると共に、ゴム層がセットされてその内側に液状の未発泡ゴム材料が注入され、注入した未発泡ゴム材料を加硫し、発泡させて発泡ゴム層を成形すると共に、ゴム層に接着するためのものである。
【0037】
金型7は、ポッド4が上金型7uを介して上方に重ねられて成形室8が形成された筒状の中金型7mと、その中金型7mの上に重ねられる筒状の上金型7uと、中金型7mの下に重ねられる下金型7dとで構成される。
【0038】
上金型7uは、中心にポッド側ゴム流路4fと連通する型側ゴム流路7fが形成され、その型側ゴム流路7fの周囲を覆うように上金型側壁9が形成される。上金型側壁9には、上方が開放され、上金型側壁9を径方向に貫通し、余剰の未発泡ゴム材料を金型7の外部へ逃がす逃がし溝10uが、所定の間隔をおいて複数個形成される。これら型側ゴム流路7fと上金型側壁9とで、余剰の未発泡ゴム材料を型側ゴム流路7fから逃がし溝10uまで導くと共に、上金型7uをポッド4に着脱自在に設けるための凹部11が区画形成される。上金型7uの下部には、中金型7mの上部と嵌合して中金型7mに着脱自在に設けるためのメス型の嵌合部12fが形成される。
【0039】
上金型7uの型側ゴム流路7fの周囲には、上金型7uを上下に貫通して未発泡ゴム材料を成形室8から凹部11へ逃がす上側逃がし孔13uが、所定の間隔をおいて複数個形成される。この上側逃がし孔13uは、発泡ゴム層の発泡度に応じて孔数・孔径・孔形状が設定される。
【0040】
中金型7mは、中央部に略円柱状に形成された成形室8と、その上部周囲に形成され、嵌合部12fと嵌合して中金型7mに着脱自在に設けるためのオス型の嵌合部14muと、成形室8の下部周囲に形成され、下金型7dの上部と嵌合して下金型7dに着脱自在に設けるためのオス型の嵌合部14mdが形成される。
【0041】
下金型7dは、その上部周縁部に嵌合部14mdと嵌合して中金型7mに着脱自在に設けるためのメス型嵌合部としての下金型上側壁15が形成され、下金型7dの下部周縁部に下金型下側壁16が形成される。
【0042】
下金型下側壁16には、下方が開放され、下金型下側壁16を径方向に貫通して余剰の未発泡ゴム材料を金型7の外部へ逃がす逃がし溝10dが、所定の間隔をおいて複数個形成される。この逃がし溝10dは、下金型7dの裏面の中心部から下金型下側壁16まで放射状に(後述する図6(b)では左右上下の4方向へ)形成される。前述した逃がし溝10uも、上金型7uの表面の中心部から上金型側壁9まで放射状に(後述する図6(a)では左右上下の4方向へ)形成される。
【0043】
これら逃がし溝10u、10dの深さは、余剰の未発泡ゴム材料が金型7内に溜まらずに流れて金型7の外部へ逃がせるように、1mm以上、好ましくは10mm以上20mm未満にするとよい。
【0044】
下金型7dの中央部上には、成形室8と同じ高さの略円筒状に形成されたモールドピン17が上方に起立させて設けられる。モールドピン17の外径は、ポッド側ゴム流路4fや型側ゴム流路7fよりも大径であり、成形室8よりも小径である。モールドピン17の内径は、発泡ゴム層に挿通する心材の外径と同じである。また、モールドピン17の外周面は、上側逃がし孔13uよりも内側に位置する。
【0045】
さらにモールドピン17には、ポッド側ゴム流路4f、型側ゴム流路7fを通してモールドピン17の内部に流れ込んだ未発泡ゴム材料を成形室8内に供給するための供給孔18が複数個形成される。
【0046】
モールドピン17は、下金型7dと一体に形成されるようにしてもよいし、別体に形成されるようにしてもよい。モールドピン17の材質は下金型7dと同じである。
【0047】
下金型7dのモールドピン17の周囲となる位置には、下金型7dを上下に貫通して未発泡ゴム材料を成形室8から金型7の外部へ逃がす下側逃がし孔13dが、所定の間隔をおいて上側逃がし孔13uの軸上に複数個形成される。この下側逃がし孔13dも、発泡ゴム層の発泡度に応じて孔数・孔径・孔形状が設定される。
【0048】
ここで、前述した2層構造のゴムを、レーザプリンタ、複写機、各種端末機をはじめとするOA機器などの給紙部に用いられる発泡ゴム層を備えたゴムローラとして用いる場合のより詳細な一例を説明する。
【0049】
発泡ゴム層の外側に形成されるゴム層の材質は、発泡剤と発泡助剤を除き、発泡ゴム層と同じである。ゴム層(外層ローラ)の厚さは0.3〜3.5mm、好ましくは0.3〜3.0、さらに好ましくは0.5〜2.5mmにするとよい。ゴム層の厚さが0.3mm未満であると耐久性が低下する。ゴム層の厚さが3.5mmを超えるとニップ幅や摩擦係数が不安定になる。
【0050】
ゴム層と発泡ゴム層の合計外径は20〜80mm、好ましくは20〜36mmにするとよい。上記の合計外径が20mm未満や、80mmを超える径でのニーズはほとんどないからである。
【0051】
上側逃がし孔13u、下側逃がし孔13dの孔形状は、略円、真円、楕円、長孔などにするとよい。上側逃がし孔13u、下側逃がし孔13dは、すべての上側逃がし孔13uの合計孔面積S1、あるいはすべての下側逃がし孔13dの合計孔面積S1と、発泡ゴム層の横断面(スポンジ断面)の面積S2との面積比(S1/S2)が10〜80%、好ましくは10〜70%となるようにするとよい。この面積比が10%未満では、未発泡ゴム材料が逃げにくく、成形室8の圧力が高くなりすぎて発泡しない。また、面積比が80%を超えると、発泡に必要な圧力を維持できない。
【0052】
本実施形態では、ゴム層と発泡ゴム層との合計外径と発泡ゴム層の厚みも考慮し、上側逃がし孔13uと下側逃がし孔13dを、外径1.0〜4.0mmの真円とし、かつ4〜24個(孔数は4個以上必須、本実施形態では孔数:16個)とした。
【0053】
次に、製造装置1を用いた発泡ゴムの製造方法を説明する。
【0054】
まず、図2および図3に示すように、中央部にモールドピン17を配置した下金型7d上に、中金型7m、上金型7u、ポッド4を順次重ね、上金型7uに隣接させて予備室3を設ける。
【0055】
中金型7m内の成形室8に予め略円筒状に成形されたゴム層31をセットし、その状態でポッド4の予備室3に固体状の未発泡ゴム材料srを配置し、ポッド4上にシリンダー5を重ねる。
【0056】
その状態で図4に示すように、金型7、ポッド4、シリンダー5を未発泡ゴム材料srの融点以上の温度(例えば、EPDMの場合は160℃以上)に加熱すると共に、予備室3内にシリンダー5の先端部5dを押し込んでいく。
【0057】
これにより、未発泡ゴム材料srを予備室3で加熱すると共に加圧して液状の未発泡ゴム材料rにし、これをポッド側ゴム流路4f、型側ゴム流路7fを通してモールドピン17内部に流し込み(図4中の下向きの矢印)、供給孔18から成形室8のゴム層31内側に注入する(図4中の左向きおよび右向きの矢印)。
【0058】
図5に示すように、予備室3内にシリンダー5の先端部5dをさらに押し込み、未発泡ゴム材料rを加硫する前に、成形室8内の圧力をコントロールする役目も果たす上側逃がし孔13uと下側逃がし孔13dを通して、余剰の(余分な)未発泡ゴム材料rを成形室8からそれぞれ逃がす(図5中の上向きおよび下向きの矢印)。成形室8から逃げた未発泡ゴム材料rは、図6(a)および図6(b)に示すように、さらに逃がし溝10u、10dから金型7の外部へ逃がされて排出される。
【0059】
これと同時に、成形室8内に注入して充填された未発泡ゴム材料rを加硫し、発泡させて略円筒状の発泡ゴム層32を成形すると共に、成形した略円筒状の発泡ゴム層32をゴム層31に接着する。
【0060】
その後、金型7からシリンダー5、ポッド4を取り外し、中金型7mから上金型7uと下金型7dを取り外し、中金型7mから2層構造のゴム51を取り出すと、例えば、2層給紙ローラとしての製品が得られる。
【0061】
本実施形態の作用を説明する。
【0062】
本実施形態に係る発泡ゴムの製造方法は、金型7内に予め成形されたゴム層31をセットし、その状態で固体状の未発泡ゴム材料srを加熱すると共に加圧して金型7内に注入し、注入した未発泡ゴム材料rを加硫し、発泡させて発泡ゴム層32を成形すると共に、ゴム層31に接着して2層構造のゴム51を得ている。
【0063】
より詳細にいえば、あらかじめ作製した外層ローラであるゴム層31を中型7mに固定し、未発泡ゴム材料srをゴム層31の内側から注入する。余分な未発泡ゴム材料srは、圧力をコントロールする孔(上側逃がし孔13uと下側逃がし孔13d)から排出され、固体状の未発泡ゴム材料srの細かい重量管理をしなくても、成形室8内に最適量の未発泡ゴム材料rを精度よく注入することができる。
【0064】
これにより、本実施形態に係る製造方法によれば、発泡加硫時に金型7内の未発泡ゴム材料rに一定の圧力が掛かり、スキン層(加硫後の接着力がない薄い層)形成前に発泡ゴム層32がゴム層31と接触するため、接着剤を使用しなくても接着が可能であり、2層構造のゴム51を簡単に製造できる。しかも本実施形態に係る製造方法で得られた2層構造のゴム51は、ニップ幅が安定しており、このことにより、摩擦係数も安定した値となる。
【0065】
これに対し、従来のように外層のゴム層を先に作製し、ゴム材料を予備成形して型にセットした場合、発泡までの時間経過によるスキン層形成のためにゴム層との接着力は小さくなる。また、型内の圧力も高くなりすぎて材料が発泡しないこともある。
【0066】
また、本実施形態に係る製造方法は、ひいては多数個取りの金型(1つの金型の製品取数が複数の場合)においても応用でき、個々に注入する未発泡ゴム材料srの重量を測定して投入することなく、ポッド4やシリンダー5を共通化して未発泡ゴム材料srを注入することが可能であり、非常に簡便であると共に、低コストで2層構造のゴム51が得られる。
【0067】
また、成形室8内に未発泡ゴム材料srが一定量精度よく注入され、加硫、発泡時に圧力をコントロールするための孔部分から未発泡ゴム材料srが流れることで、エア抜き不要で発泡が均一に得られる。発泡の均一化により発泡ゴム層32の潰れ量(寸法)も一定となり、安定したニップ幅および摩擦係数が得られる。
【0068】
摩擦係数は荷重に依存することが知られており、ニップ幅が変化してしまうと、見かけ上の荷重(接触面積に対する圧力)が変化するため、摩擦係数は安定化しない。
【0069】
ニップ幅の適正値については、ローラの寸法(外径、幅など)に依存するため最適範囲の記載が非常に難しいため、一般的にはローラ(本実施形態では、2層構造のゴム51)自体をたわませたときの荷重で代替している。
【0070】
一例として、本発明者らが外径27mm、幅10mm、ゴム層31の厚さ1.5mm、発泡ゴム層(スポンジ)32の厚さ3.5mmの2層構造のゴム51を試作したところ、これに3Nの荷重を掛けたときのニップ幅は5〜6mmであり、2層構造のゴム51を1mmたわませた時の荷重は1.7〜2.0N(摩擦係数も同等の約1.7〜2.0)であって、ニップ幅、摩擦係数共に非常に安定していた。
【0071】
摩擦係数の最適範囲は、1.0〜4.0程度である。なお、今まで作製した2層構造からなる給紙用のゴムローラに適用可能な2層構造のゴム51の摩擦係数は、1.6〜4.0となり、スポンジの硬さや材質によって変化する。なお、ソリッドローラ(1層の固体ローラ)では、摩擦係数が3を超えることは難しい。一般に0.8以上(紙−紙間の摩擦係数以上)の摩擦係数があれば、紙を分離することは可能である。
【0072】
また、本実施形態に係る製造方法では、装置1内で注入部2の予備室3と金型7の成形室8とを分離しているため、固体状の未発泡ゴム材料stの液化工程と、未発泡ゴムrの成形・発泡工程とをそれぞれ独立して行いつつ、材料投入から製品完成まで連続して2層構造のゴム51を製造できる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る製造方法は、未発泡ゴム材料rを加硫する前に、余剰の未発泡ゴム材料を成形室8から上側逃がし孔13uと下側逃がし孔13dを通して逃がすことで、成形室8内の圧力をコントロールできるため、発泡時に途中ガスを抜く作業などが不要で連続的な作業が可能である。
【0074】
これら上側逃がし孔13uと下側逃がし孔13dを用いることで、金型の製品取数が複数の場合、未発泡ゴム材料srの投入量が仮に過剰であったとしても、余剰の未発泡ゴム材料rが金型の外部へ流れていくため発泡が均一化され、発泡倍率のバラツキも小さい。従来の技術では各キャビティごとに投入重量を精密に管理する必要がある。
【0075】
発泡の均一化により発泡ゴム層32の潰れ量(寸法)も一定となり、この点も作用して2層構造のゴム51において、安定したニップ幅および摩擦係数を得ることができる。
【0076】
本実施形態に係る発泡ゴムの製造装置1によれば、本実施形態に係る発泡ゴムの製造方法を簡単に実施できる。
【0077】
また装置1では、金型7を構成する各中金型7m、上金型7u、下金型7d同士や、ポッド4、シリンダー5の装置構成部品がすべて着脱自在に設けられているので、装置1の操作が簡単で作業性もよく、特に、中金型7m、上金型7u、下金型7dの種類を簡単変更したり、部品を簡単に交換したりすることができる。
【0078】
さらに装置1では、上側逃がし孔13uと下側逃がし孔13dが製造したい発泡ゴム層32の発泡度に応じて孔数・孔径・孔形状が設定されるので、孔数・孔径・孔形状が種々に異なる上金型と下金型を変更すれば、所望の発泡度を有する発泡ゴム層32が得られる。
【0079】
例えば、上金型としては、前述した図7(a)の孔数:16個、孔径:1.0〜4.0mmで真円の上側逃がし孔13uを有する上金型7uのほか、図7(b)の上金型71bのように孔数:8個、上金型7uよりも大径で真円、図7(c)の上金型71cのように孔数:24個、上金型7uよりも小径で真円、図7(d)の上金型71dのように孔数:4個、上金型7uの孔径とほぼ同じ幅を有する長孔などの各上金型を、製造したい発泡ゴム層の発泡度に応じて使用できる。これらの中では、上金型71dを用いると最も発泡度が大きい発泡ゴム層が得られる。
【実施例】
【0080】
(実施例1〜14)
装置1を用い、金型7、ポッド4、シリンダー5として機械構造用炭素鋼(S15C、S55C)、アルミニウム合金を使用し、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を使用した。他の発泡剤としては、N−N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラシド(OBSH)、炭酸水素ナトリウムも可能(マイクロバルーン含む)であり、結果に変わりはない。
【0081】
表1に示された実施例1〜14の各成分を6インチオープンロールにより混練りし、各例の未発泡ゴム材料srを得た。次に、本実施形態に係る製造方法により、表1に示されたモールド金型を用い、あらかじめ作製しておいた各例の外層のゴム層を金型にセットし、また先に得られた未発泡ゴム材料srを注入部2の予備室3内にセットした後、各例の逃がし孔が加工された金型に注入し、160℃でプレスモールドし、加硫発泡させることにより2層給紙ローラ(2層構造のゴム)51を製造した。
【0082】
(比較例1〜5)
表1に示された比較例1〜5の各成分を用い、実施例1〜14とは異なる形状、個数、面積比、深さの上下金型を有する表1に示す金型を用いる以外は、実施例1〜14と同様にして2層給紙ローラ(2層構造のゴム)を製造した。
【0083】
(比較例6)
表1に示された比較例6の成分を用い、実施例1〜14とは異なる形状、個数、面積比、深さの上下金型を有する金型を用い、外層と内層を別々に作製した後、これらを接着剤で接着して2層給紙ローラ(2層構造のゴム)を製造した。
【0084】
あわせてこれら2層給紙ローラを対象に行った試験結果を示す。
【0085】
ローラ硬度は、アスカーC硬度計を用いて、荷重1kgを掛けて測定した。外層のゴム層と内層の発泡ゴム層の接着性評価は、2層給紙ローラの引張時に外層の破壊より先に界面から剥離するかどうか測定した。
【0086】
摩擦係数の評価は以下の方法で行った。駆動軸に固定した試験用ローラと一定荷重(W)を掛けたフリードラムとの間にロードセルを連結した所定用紙を挟み、それから前記試験用ローラを回転させて摩擦力(F)を測定した。摩擦係数はその摩擦力(F)と荷重(W)とを式=F/Wに入力して算出した。
【0087】
発泡倍率は、2層給紙ローラから発泡ゴム部を切断し比重測定を行い、真比重(未発泡時の比重)/見かけ比重(発泡ゴムの比重)から算出した。平均気泡径は測定した気泡径の大きいものから15個の気泡について得られる平均値とした。気泡状態は光学顕微鏡を用いて観察した。
【0088】
ニップ幅は、直接観察による数値化が困難であるため、オートグラフ(東洋精機社製)を用い、ローラ外周を1mm圧縮させたときの荷重(N)を90°位相をずらしながら測定し、円周方向のスポンジ安定性を確認した。
【0089】
分離性能の確認試験は、富士通社製スキャナFI−5650Cを使用し、普通紙、ノーカーボン紙、厚紙各200枚を通して、不送り、重送、多重送の発生やその他通紙に問題がないか確認した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1に示す実施例1〜14の2層給紙ローラは、いずれもニップ幅が安定しており、各用紙の分離性能も良好で、さらに外層と内層の接着性も良好で、摩擦係数も高くなっている。
【0092】
逃がし孔の大きさがφ0.5で、孔数が40個の金型で作製した比較例1は、金型内で未発泡ゴム材料srが発泡せず、取り出し時に急激に発泡し破壊される。
【0093】
逃がし孔の大きさがφ2で、孔数が6個の金型で作製した比較例2、逃がし孔の大きさがφ3で、孔数が2個の金型で作製した比較例3は、ニップ幅は安定しているが発泡倍率が低く、分離性能が悪い。
【0094】
逃がし孔の深さが20mmの金型で作製した比較例4は、気泡状態が不均一でニップ幅が安定しない。
【0095】
外層のゴム層の厚さが4mmの比較例5は、ニップ幅は安定しているが1mm圧縮時の荷重が大きく、分離性能が悪い。
【0096】
外層のゴム層と内層の発泡ゴム層を別々に作製し、接着剤を用いて後接着で作製した比較例6は、接着性評価において、界面から剥離する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1(a)は、本発明の好適な実施形態である発泡ゴムの製造方法に用いる発泡ゴムの製造装置の外観図、図1(b)はその部分断面図である。
【図2】図1に示した発泡ゴムの製造装置の分解部分断面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態である発泡ゴムの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】図3に引き続いて行う発泡ゴムの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】図4に引き続いて行う発泡ゴムの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)は図4における上金型の状態を示す上面図、図6(b)は図4における下金型の状態を示す下面図である。
【図7】図7(a)〜図7(b)は種々の逃がし孔を用いた上金型の平面図である。
【図8】図8(a)〜図8(e)は従来の発泡ゴムの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0098】
1 発泡ゴムの製造装置
7 金型(型)
7u 上金型
7m 中金型
7d 下金型
31 ゴム層
32 発泡ゴム層
sr 固体状の未発泡ゴム材料
r 液状の未発泡ゴム材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め成形されたゴム層に密着させて発泡ゴム層を成形する発泡ゴムの製造方法において、型内に前記ゴム層をセットし、その状態で固体状の未発泡ゴム材料を加熱すると共に加圧して前記型内に注入し、注入した未発泡ゴム材料を加硫し、発泡させて前記発泡ゴム層を成形すると共に、前記ゴム層に接着することを特徴とする発泡ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記型に隣接させて固体状の未発泡ゴム材料を配置する予備室を設け、その予備室と連通させて前記型内に前記発泡ゴム層を成形するための成形室を形成し、その成形室に予め筒状に成形された前記ゴム層をセットし、前記予備室に前記固体状の未発泡ゴム材料を配置し、その固体状の未発泡ゴム材料を前記予備室で加熱すると共に加圧して液状にし、これを前記成形室のゴム層内側に注入し、注入した未発泡ゴム材料を加硫し、発泡させて筒状の発泡ゴム層を成形すると共に、前記ゴム層に接着する請求項1記載の発泡ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記未発泡ゴム材料を加硫する前に、余剰の未発泡ゴム材料を前記成形室から逃がす請求項1または2記載の発泡ゴムの製造方法。
【請求項4】
予め成形されたゴム層に密着させて発泡ゴム層を成形する発泡ゴムの製造装置において、固体状の未発泡ゴム材料を配置して加熱すると共に加圧して液状にするための予備室と、その予備室と連通されると共に、前記ゴム層がセットされてその内側に液状の未発泡ゴム材料が注入され、注入された未発泡ゴム材料を加硫し、発泡させて前記発泡ゴム層を成形すると共に、前記ゴム層に接着するための成形室とを備えることを特徴とする発泡ゴムの製造装置。
【請求項5】
前記予備室が形成されたポッドと、そのポッド上に重ねられて固体状の未発泡ゴム材料を加圧するシリンダーと、前記ポッドが上方に重ねられて前記成形室が形成された筒状の中金型と、その中金型の上下にそれぞれ重ねられる筒状の上金型と筒状の下金型とをさらに備える請求項4記載の発泡ゴムの製造装置。
【請求項6】
上金型と下金型に、これらを上下に貫通して余剰の未発泡ゴムを逃がす逃がし孔をそれぞれ形成した請求項5記載の発泡ゴムの製造装置。
【請求項7】
前記逃がし孔は、発泡ゴム層の発泡度に応じて孔数・孔径・孔形状が設定される請求項6記載の発泡ゴムの製造装置。
【請求項8】
上金型と下金型に、余剰の未発泡ゴムを金型外部へ逃がす逃がし溝をそれぞれ形成した請求項5〜7いずれかに記載の発泡ゴムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−196115(P2009−196115A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37556(P2008−37556)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】