説明

発泡合成樹脂成形体及びその製造方法

【課題】穴状部が貫通孔である場合には、発泡成形時に該穴状部を塞ぐバリ部を形成することなく、該穴状部の周辺部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止ないし抑制することが可能であり、該穴状部が非貫通状である場合には、該穴状部の底部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止ないし抑制することが可能な発泡合成樹脂成形体の製造方法及び発泡合成樹脂成形体を提供する。
【解決手段】少なくとも第1の型21と第2の型22とを有する金型20を用いて、外面に穴状部3を有する発泡合成樹脂成形体1を製造する。第1の型21のキャビティ内面に、穴状部3を形成するための凸部23が設けられており、金型20は、型締めした状態において、凸部23の突出方向の先端面が第2の型22のキャビティ内面に所定の間隔をあけて対向するように構成されている。金型20を型締めした状態において、凸部23の先端面と第2の型22のキャビティ内面との間に金型20内の気体を気体誘導手段で誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に貫通孔等の穴状部を有する発泡合成樹脂成形体と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや家屋内に設置されるソファー等のシートは、軟質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッドと、このシートパッドの表面に装着された表皮材とから成る。
【0003】
近年、車両用シートに、車両の側面衝突時や横転時等に乗員と車室の側面との間にエアバッグを膨張させるエアバッグ装置が設置されることがある。その場合、シートパッドに、このエアバッグ装置を収納するための貫通孔や凹部が形成されることがある。また、これ以外にも、シートパッドには、シートフレームが係合する凹部や、ヘッドレストの支持脚やスピーカ等が挿入される貫通孔など、種々の穴状部が形成されることがある。
【0004】
穴状部付きシートパッドを金型を用いて成形する場合、該金型の内面には、この穴状部を形成するための凸部が設けられている。この凸部の外形は、穴状部の内部の形状と同一形状となっている。金型内において発泡合成樹脂材料を発泡させてシートパッド本体を成形した際に、この凸部が存在していた部分が、脱型後に穴状部となる。
【0005】
I. 第15図(a)は、従来の一般的な貫通孔付きシートパッド成形用金型の概略的な縦断面図であり、第15図(b)は、この金型により成形されたシートパッドの縦断面図である。第15図(a)の通り、金型110は、上型111及び下型112(さらに必要に応じ中子)を有しており、該下型112内にウレタン等の発泡原料を供給し、型締めして発泡させることにより、シートパッド100が成形される。シートパッド100は、一般的に、金型110内において、その着座者対峙面を下向きにした姿勢にて成形される。この従来例では、シートパッド100の着座者対峙面と反対側の面(以下、裏面ということがある。)に補強材101が一体成形されている。
【0006】
この従来例では、下型112のキャビティの底面から孔形成用の凸部113が突設されている。この凸部113により、シートパッド100にはその着座者対峙面から裏面側に向って孔102が形成される。即ち、発泡成形時にこの凸部113が存在していた部分が孔102となる。
【0007】
上型111及び下型112を型締めした状態においては、凸部113の先端面(上端面)は、上型111のキャビティの天井面から若干離隔している。これは、上型111と下型112との接合面の密着性を確保すると共に、発泡成形時に、孔102の周囲にエア溜まりが生じることを防止するためである。即ち、このように凸部113の先端面が上型111のキャビティの天井面から離隔していることにより、発泡成形時に凸部113の外周面と上型111のキャビティの天井面とが交わるコーナー部にエアが取り残されても、このエアが発泡樹脂と共に凸部113と上型111との間の隙間に入り込む。従って、この金型110により発泡成形されたシートパッド100には、発泡成形時にこの凸部113と上型111との間の隙間に発泡樹脂が入り込むことにより、第15図(b)の通り、孔102を塞ぐバリ部103が生じる。そのため、脱型後、このバリ部103を除去する必要がある。
【0008】
実開昭55−166622号公報には、このバリ部103の除去作業を容易化することができるように構成されたシートパッド成形用金型が記載されている。第16図(a)は同号の金型の縦断面図であり、第16図(b)はこの金型により成形されたシートパッドの縦断面図である。この金型110’にあっては、第16図(a)の通り、上型111のキャビティ天井面のうち凸部113の先端面と対峙する領域に、金型外方へ向って凹陥する凹所114が設けられている。発泡成形時には、凸部113の先端面と上型111のキャビティ天井面との間の隙間を通って該凹所114に発泡樹脂が入り込む。従って、この金型110’により成形されたシートパッド100’には、この凹所114に入り込んだ発泡樹脂により、第16図(b)の通り、該シートパッド100’の外面から突出するバリ塊104が形成される。そのため、脱型後に孔102を塞いでいるバリ部103を除去する際には、このバリ塊104を摘んで容易に除去することができる。
【0009】
特開2008−154839号公報には、孔102を塞ぐバリ部103をカッター等の切断手段(図示略)を用いてくり抜く場合に、このくり抜き作業を容易化するために、シートパッド100の表面に、この孔102の範囲(輪郭)を示す溝(図示略)を設けると共に、この範囲の内側に、該溝に接するように切欠き凹部(図示略)を設けることが記載されている。バリ部103をくり抜く場合には、切断手段を切欠き凹部に刺し込み、この位置から溝に沿ってフォームを切断することにより、バリ部103を比較的容易にくり抜くことができる。なお、同号公報では、バリ部103をくり抜いた後の孔102は、サイドエアバッグ装置を収納するための収納部となる。
【0010】
II. 孔102が非貫通状である場合には、金型110を型締めした状態において、凸部113の先端面と上型111のキャビティ天井面との間には、所定の間隔が空いており、発泡成形時にこの凸部113と上型111との間の隙間に発泡樹脂が入り込むことにより、非貫通状の孔102の底部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭55−166622号公報
【特許文献2】特開2008−154839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
I. 上記実開昭55−166622号公報及び特開2008−154839号公報のように、孔102が貫通孔であるにも拘らず、シートパッド100(又は100’)の発泡成形時には、ウレタンフォームにより該孔102を塞ぐようにバリ部103を形成し、脱型後にこのバリ部103を除去する場合、このバリ部103を形成した分のウレタン原料が無駄になる。
【0013】
II. 孔102が非貫通状である場合、該孔102の底部におけるフォームの肉厚が小さくなるほど(即ち金型110を型締めした状態において、凸部113の先端面と上型111のキャビティ天井面との間隔が小さくなるほど)、発泡成形時に凸部113の先端面と上型111のキャビティ天井面との間にウレタン原料が進入しにくくなるため、該孔102の底部にボイド等の成形不良が生じ易くなるおそれがある。
【0014】
本発明は、外面に穴状部を有する発泡合成樹脂成形体の製造方法において、該穴状部が貫通孔である場合には、発泡成形時に該穴状部を塞ぐバリ部を形成することなく、該穴状部の周辺部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止ないし抑制することが可能であり、該穴状部が非貫通状である場合には、該穴状部の底部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止ないし抑制することが可能な発泡合成樹脂成形体の製造方法と、この製造方法により製造された発泡合成樹脂成形体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明(請求項1)の発泡合成樹脂成形体の製造方法は、少なくとも第1の型と第2の型とを有する発泡成形用金型を用いて、外面に穴状部を有する発泡合成樹脂成形体を製造する方法であって、該第1の型のキャビティ内面に、該穴状部を形成するための凸部が設けられており、該発泡成形用金型は、型締めされたときに、該凸部の突出方向の先端面が該第2の型のキャビティ内面に所定の間隔をあけて対向するように構成されている発泡合成樹脂成形体の製造方法において、該発泡合成樹脂成形体の発泡成形時に、該凸部の該先端面と該第2の型のキャビティ内面との間に該発泡成形用金型内の気体を気体誘導手段で誘導することを特徴とするものである。
【0016】
請求項2の発泡合成樹脂成形体の製造方法は、請求項1において、前記気体誘導手段は、前記発泡成形用金型が型締めされた状態において前記凸部の前記先端面と前記第2の型のキャビティ内面との間に介在する介在体を有しており、該介在体は、通気量が20〜350cc/cm/秒の高通気性材料よりなることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3の発泡合成樹脂成形体の製造方法は、請求項2において、発泡合成樹脂成形体は、その外面の少なくとも一部に沿って補強材が配設され、該補強材が該発泡合成樹脂成形体と一体成形により一体化されるものであり、前記介在体は、該補強材と一体に設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4の発泡合成樹脂成形体の製造方法は、請求項2又は3において、前記介在体は、目付け量が50〜250g/mの繊維集合材料よりなることを特徴とするものである。
【0019】
請求項5の発泡合成樹脂成形体の製造方法は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記介在体は、前記穴状部を横切るように配設されることを特徴とするものである。
【0020】
請求項6の発泡合成樹脂成形体の製造方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記発泡成形用金型を型締めした状態において、前記凸部の前記先端面は、前記第2の型のキャビティ内面とその他の型のキャビティ内面とに跨って対向しており、該発泡成形用金型は、該第2の型と該その他の型とのパーティングラインを介して該発泡成形用金型内の気体を該発泡成形用金型外に排出する気体排出手段を有することを特徴とするものである。
【0021】
本発明(請求項7)の発泡合成樹脂成形体は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発泡合成樹脂成形体の製造方法により製造されたものである。
【0022】
請求項8の発泡合成樹脂成形体は、請求項7において、該発泡合成樹脂成形体はシートパッドであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明(請求項1)の発泡合成樹脂成形体の製造方法にあっては、発泡合成樹脂成形体の発泡成形時には、発泡成形用金型(以下、金型と略す。)内の気体が、気体誘導手段により、該発泡合成樹脂成形体に穴状部を形成するための凸部の先端面と、これに対向するキャビティ内面との間に誘導される。これにより、例えば穴状部が貫通孔である場合には、前述の従来技術のように該凸部とキャビティ内面との間に発泡合成樹脂を入り込ませてバリ部を形成しなくても、この凸部の外面とキャビティ内面とが交わる隅角部に気体が残留することを防止することができる。その結果、貫通孔を塞ぐバリ部を形成することなく、該貫通孔の周辺部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止することができる。
【0024】
穴状部が非貫通孔である場合には、この凸部とキャビティ内面との間に発泡合成樹脂を入り込ませるが、発泡成形時にこれらの間に金型内の気体が誘導されることにより、仮にこれらの間隔が比較的狭くても、発泡合成樹脂がスムーズにこれらの間に入り込む。これにより、穴状部の底面が比較的肉厚の小さなものであっても、この穴状部の底面に成形不良が生じることを十分に防止することができる。
【0025】
請求項2の通り、金型の型締め時に、凸部の先端面とキャビティ内面との間に、通気量が20〜350cc/cm/秒の高通気性材料よりなる介在体を介在させることにより、発泡成形時には、金型内の気体をこの介在体によって効果的に該凸部の先端面とキャビティ内面との間に誘導することができる。よって、この介在体により、簡易な構成にて十分に効果的な気体誘導手段を構成することができる。
【0026】
請求項3の通り、この介在体は、発泡合成樹脂成形体と一体成形される補強材と一体に設けられていることが好ましい。このように構成することにより、補強材と共に介在体を容易に金型内に設置することができる。なお、この場合、発泡合成樹脂成形体の脱型後に介在体を補強材から除去してもよく、そのまま残留させてもよい。
【0027】
請求項4の通り、この介在体の構成材料としては、目付け量が50〜250g/mの繊維集合材料が簡便であり、好ましい。
【0028】
請求項5の通り、介在体を、発泡合成樹脂成形体の穴状部を横切るように配設することにより、発泡成形時に、凸部の両サイドから効率よく金型内の気体を該凸部とキャビティ内面との間に誘導することができる。
【0029】
請求項6の態様にあっては、発泡成形時に、凸部とキャビティ内面との間に誘導された気体を、これらの間に臨むパーティングラインを介して気体排出手段により金型外に排出することができるので、より効果的に、凸部とキャビティ内面との隅角部に気体が残留することを防止することが可能である。
【0030】
かかる本発明の製造方法により製造された本発明(請求項7)の発泡合成樹脂成形体は、穴状部の周辺部や底面(穴状部が非貫通孔である場合)に成形不良が生じることが防止されるため、外面の形状精度の高いものとなる。
【0031】
請求項8の通り、本発明の発泡合成樹脂成形体は、シートパッドに適用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う部分の平面図である。
【図3】発泡成形途中時における図1(a)と同様部分の縦断面図である。
【図4】発泡成形完了時における図1(a)と同様部分の縦断面図である。
【図5】図1の発泡成形用金型を用いて製造された発泡合成樹脂成形体の斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の発泡成形途中時における縦断面図である。
【図8】実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の縦断面図である。
【図9】発泡成形途中時における図8(a)と同様部分の縦断面図である。
【図10】発泡成形途中時における図8(b)と同様部分の縦断面図である。
【図11】発泡成形完了時における図8(a),(b)と同様部分の縦断面図である。
【図12】図8の発泡成形用金型を用いて製造された発泡合成樹脂成形体の斜視図である。
【図13】実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の発泡成形途中時における縦断面図である。
【図14】実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の縦断面図である。
【図15】従来例に係るシートパッド用発泡成形体及びその成形用金型の縦断面図である。
【図16】従来例に係るシートパッド用発泡成形体及びその成形用金型の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、発泡合成樹脂成形体として、車両用シートパッドを例示しているが、本発明は、車両用以外のシートパッドを構成する発泡合成樹脂成形体や、シートパッド以外の発泡合成樹脂成形体、及びその製造方法にも適用可能である。
【0034】
[第1の実施の形態]
第1図(a),(b)は、実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の縦断面図であり、第1図(a)は第2図のIA−IA線に沿う断面を示し、第1図(b)は第1図(a)のIB−IB線に沿う断面を示している。第2図は、第1図のII−II線に沿う部分の平面図である。第3図は、発泡成形途中時における第1図(a)と同様部分の縦断面図である。第4図は、発泡成形完了時における第1図(a)と同様部分の縦断面図である。第5図(a),(b)は、この発泡成形用金型を用いて製造された発泡合成樹脂成形体としてのシートパッドの貫通孔付近の斜視図であり、第5図(a)は、気体誘導手段としての介在体を切除する前の状態を示し、第5図(b)は介在体を切除した後の状態を示している。第6図は、第5図(b)のVI−VI線に沿う断面図である。
【0035】
この実施の形態では、発泡合成樹脂成形体は、車両用シートを構成するシートパッド1である。このシートパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体2と、該シートパッド本体2の裏面(着座者と反対側の面)に沿って配設された補強材10とを備えている。補強材10は、シートパッド本体2と一体成形により一体化されている。補強材10は不織布等よりなるが、これに限定されない。この実施の形態では、シートパッド1に、穴状部として、該シートパッド本体2をその表側(着座者側)から裏側まで貫通した貫通孔3が設けられている。補強材10には、この貫通孔3に重なる開口部10aが設けられている。この実施の形態では、該貫通孔3は、その軸心線方向と直交方向の断面形状が略円形となっているが、貫通孔3の形状や配置はこれに限定されない。
【0036】
この実施の形態では、シートパッド本体2を発泡成形するための金型20は、下型21と上型22とを有している。この実施の形態では、下型21が請求項1の第1の型に対応し、上型22が請求項1の第2の型に対応する。なお、金型20の構成はこれに限定されるものではなく、例えば必要に応じてさらに中型等を有していてもよい。この金型20のキャビティ内において、シートパッド1は、表側を下向きにした姿勢で成形される。即ち、下型21のキャビティ内面(底面)によりシートパッド1の表側が成形され、上型22のキャビティ内面(天井面)によりシートパッド1の裏側が成形される。下型22のキャビティ底面からは、上型22のキャビティ天井面に向かって、貫通孔3を形成するための凸部23が突設されている。下型21と上型22との型締めに先立ち、上型22のキャビティ天井面に沿って補強材10が配置される。補強材10は、クリップやピン、マグネット等の留付手段(図示略)により上型22のキャビティ天井面に保持される。この際、補強材10の開口部10aは、第1図(b)及び第2図の通り、上型22のキャビティ天井面のうち凸部23の突出方向の先端面(以下、先端面と略す。)と対向する領域に配置される。
【0037】
この金型20は、下型21と上型22とを型締めした状態において、凸部23の先端面が上型22のキャビティ天井面に対し所定の間隔をあけて対向するように構成されている。この実施の形態では、型締め状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間隔は、金型20内の気体はこれらの間に進入することができるが、該金型20内で発泡した発泡合成樹脂原料はこれらの間に進入することができない程度の大きさとされている。
【0038】
この型締め状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間隔は、金型20内で発泡した発泡合成樹脂原料が凸部23の先端部に到達したときの該発泡合成樹脂原料の粘度に応じて設定されるが、具体的には、0.1〜3mm特に0.5〜1.5mmであることが好ましい。
【0039】
型締め状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間隔をこのように設定することにより、実質的に、前述の従来技術のように貫通孔3を塞ぐバリ部を形成することなく、即ち貫通孔3が初めからシートパッド本体2を貫通した状態にて、該シートパッド本体2を発泡成形することができる。なお、型締め状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間隔は、該凸部23の先端面の全体にわたって均等であってもよく、部分的に異なっていてもよい。
【0040】
この実施の形態では、金型20を型締めするときに、凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に、高通気性材料よりなる介在体11を介在させる。この実施の形態では、該介在体11が、発泡成形時に金型20内の気体を凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に誘導するための気体誘導手段を構成する。
【0041】
この介在体11は、通気量が好ましくは20〜350cc/cm/秒、特に好ましくは50〜200cc/cm/秒の高通気性材料よりなる。通気量は、フラジール形法に従って測定される。このような高通気性材料としては、例えば不織布、編織布、綿、フェルト、ガラスウール、ロックウール、紙等の繊維集合材料や、連通気泡構造の(即ち通気性を有する)ウレタンフォーム等が好ましい。この繊維集合材料を構成する繊維としては、例えばポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等が好適である。介在体11を繊維集合材料により構成する場合には、この繊維集合材料として、目付け量が50〜250g/m、特に80〜140g/mで、且つ通気量が20〜350cc/cm/秒、特に50〜200cc/cm/秒のものを用いるのが好ましい。なお、介在体11の構成材料はこれに限定されない。
【0042】
この実施の形態では、介在体11は帯状のものであり、第1図(a),(b)及び第2図の通り、凸部23の先端面を横切るように配置され、その長手方向の両端側は、凸部23の先端面の外周縁に達している。この介在体11の両端側は、型締め状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間から金型20内に連通する(この実施の形態では、後述の通り、介在体11の両端側は補強材10を介して金型20内に連通する。)。このように介在体11を長く延在させることにより、介在体11を凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に配置するのが容易になると共に、発泡成形時に金型20内の気体を効率よく凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に誘導することができる。
【0043】
なお、介在体11は、少なくとも一部が、型締め状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間から金型20内に連通すればよい。
【0044】
介在体11は、その外面の全体において、外部から内部への気体の進入、及び内部から外部への気体の放散を許容するものとなっている。即ち、介在体11は、第2図の矢印Gの通り、発泡成形時にその両端側から発泡合成樹脂に押されて内部に進入して来た気体を、その両側辺から凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間の隙間(介在体11と補強材10の開口部10aとの間の隙間)へと放散させることができるようになっている。なお、介在体11の形状及び配置はこれに限定されない。例えば、介在体11は、凸部23の先端面の全体を覆う形状であってもよい。
【0045】
この実施の形態では、該介在体11は、補強材10と一体化されており、その両端側は、それぞれ補強材10の開口部10aの内周縁に連なっている。特に、この実施の形態では、介在体11は、補強材10と共通の材料(この実施の形態では不織布)により、該補強材10と一連一体に設けられているが、これに限定されない。例えば、介在体11は、補強材10の構成材料とは異なる高通気性材料により構成され、開口部10aを横切るように配置されて両端部が縫合又は接着等の取付手段により補強材10に取り付けられてもよい。あるいは、介在体11は、補強材10と一体化されていなくてもよい。なお、介在体11と補強材10とを共通の材料(即ち高通気性材料)により一連一体に構成した場合には、発泡成形時に金型20内の気体が補強材10の内部にも進入すると共に、この気体が補強材10の内部を通ってスムーズに介在体11に移動することができる。
【0046】
介在体11は、幅及び厚さが大きいほど、通気量が大きくなる。介在体11の幅が小さすぎると、介在体11が破れ易く、金型20内に装着するのが困難になり、介在体11の幅が大きすぎると、介在体11を後で切除するのが面倒になるので、5〜100mm特に5〜50mmであることが好ましい。介在体11の厚さは、金型20を型締めした状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間隔よりも若干大きいことが好ましい。この場合、介在体11は、金型20が型締めされたときに、該凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に若干圧縮された状態で介在することとなる。この場合、型締め前における介在体11の厚さは、金型20を型締めした状態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間隔の0.1〜30倍特に0.2〜5倍であることが好ましい。この場合、介在体11は、型締めされて凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間で圧縮状態となっているときに、通気量が5〜350cc/cm/秒、特に10〜200cc/cm/秒であることが好ましい。
【0047】
介在体11は、シートパッド本体2の成形後、必要に応じて切除される。
【0048】
次に、金型20を用いてシートパッド1を製造する手順について説明する。
【0049】
まず、下型21と上型22とを型開きし、該上型22のキャビティ天井面に補強材10を被着させる。この際、補強材10の開口部10aを該キャビティ天井面の凸部23との対向領域に重ね、介在体11を、この対向領域を横切るように配置する。この実施の形態では、介在体11の両端が開口部10aの内周縁に連結されているので、補強材10を所定の位置に配置するだけで、容易に、介在体11を該キャビティ天井面の凸部23との対向領域に配置することができる。
【0050】
次に、下型21内に発泡合成樹脂原料を注入し、下型21と上型22とを型締めして該発泡合成樹脂原料を加熱・発泡させる。この発泡合成樹脂は、上型22のキャビティ天井面に向かって膨張し、金型20内のキャビティ空間を充填する。これにより、シートパッド本体2が成形されると共に、該シートパッド本体2の裏面に補強材10が一体化される。
【0051】
この際、第3図の通り、凸部23の周囲においては、矢印Bのように該凸部23の先端部に向かって膨張する発泡合成樹脂に押されて金型20内の気体が矢印Gの通り補強材10を介して介在体11の内部に進入する。この介在体11の内部に進入した気体は、第2図の通り、該介在体11の内部を通り、該介在体11の両側辺から凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間の隙間へと放散される。この実施の形態では、金型20内の気体の一部は、補強材10の内部にも吸収される。また、この気体の一部は、補強材10の開口部10aの内周縁から介在体11を通らずに直接、凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間の隙間へと放散される。このとき、発泡合成樹脂は、実質的に、凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に進入しないため、貫通孔3を塞ぐバリ部は形成されない。
【0052】
このようにして金型20内の気体が凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に誘導されることにより、該凸部23の先端側の外周面と上型22のキャビティ天井面とが交わる隅角部に気体が残留することが防止され、この隅角部にも十分に発泡合成樹脂が充填される。その結果、貫通孔3を塞ぐバリ部を形成することなく、該貫通孔3の周辺部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止することができる。
【0053】
発泡合成樹脂が硬化した後、型開きしてシートパッド1を脱型する。その後、必要に応じ、貫通孔3を横切る介在体11を切除すると共に、シートパッド本体2の表面の仕上げ処理を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0054】
このようにして製造されたシートパッド1は、貫通孔3が初めからシートパッド本体2を貫通したものとなっており、前述の従来技術のように脱型後にバリ部をくり抜いて貫通孔3を貫通させる作業が不要である。しかも、このようなバリ部を設けなくても、貫通孔3の周辺部にボイド等の成形不良が生じることが十分に防止される。これにより、外面の形状精度の高いシートパッド1を容易に且つ歩留まりよく製造することができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
第7図は、別の実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の発泡成形途中時の縦断面図である。なお、第7図は、第3図と同様部分を示している。
【0056】
第7図の金型20Aにおいては、貫通孔形成用凸部23の先端面に、発泡成形時に金型20内から介在体11及び/又は補強材10を介して該凸部23と上型22のキャビティ天井面との間に誘導された気体を溜めるための凹所24が形成されている。この実施の形態では、介在体11と凹所24とにより、発泡成形時に金型20A内の気体を凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に誘導するための気体誘導手段が構成されている。この凹所24は、凸部23の先端面の外周縁よりも中央側に位置しており、上型22のキャビティ天井面側にのみ開放したものとなっている。この凹所24の容積は、金型20の容積等に応じて決定される。第7図では、凸部23の先端面の中央付近に1個だけ凹所24が設けられているが、凹所24の個数及び配置はこれに限定されない。また、第7図では、凹所24の上に介在体11が重なっているが、必ずしも凹所24に介在体11が重なるように構成しなくてもよい。
【0057】
第7図のその他の構成は、前述の第1の実施の形態と同様であり、第7図において第1〜6図と同一符号は同一部分を示している。この金型20Aを用いたシートパッド1の製造方法も第1の実施の形態と同様である。
【0058】
この金型20Aを用いてシートパッド1を製造した場合も、第1の実施の形態における金型20を用いた場合と同様の作用効果が奏される。
【0059】
この金型20Aを用いてシートパッド1を製造した場合にあっては、凸部23の先端面に、気体を溜めておける凹所24が設けられているので、発泡成形時には、金型20内の気体をより多量に該凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に誘導することができる。その結果、より効果的に、該凸部23の先端側の外周面と上型22のキャビティ天井面とが交わる隅角部に気体が残留することを防止することが可能となる。
【0060】
[第3の実施の形態]
第8図(a),(b)は、別の実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の縦断面図であり、第8図(a)は第8図(b)のVIIIA−VIIIA線に沿う断面を示し、第8図(b)は第8図(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面を示している。第9図(a),(b)は、発泡成形途中時における第8図(a)と同様部分の縦断面図であり、第9図(a)は発泡成形工程の比較的初期の段階を示し、第9図(b)は発泡成形工程の比較的後期の段階を示している。第10図は、第9図(b)と同様の時点における、第8図(b)と同様部分の縦断面図である。第11図(a),(b)は、それぞれ、発泡成形完了時における、第8図(a),(b)と同様部分の縦断面図である。第12図は、この金型を用いて製造された発泡合成樹脂成形体としてのシートパッドの斜視図である。
【0061】
この実施の形態におけるシートパッド30は、車両用シートの背もたれ部を構成するバックパッドである。このシートパッド30も、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体31と、該シートパッド本体31の裏面に沿って配設された補強材40とを備えている。補強材40は、シートパッド本体31と一体成形により一体化されている。このシートパッド30は、シートのバックフレーム(図示略)に取り付けられ、表皮材(図示略)によって外面が被覆されるものである。なお、以下のシートパッド30の各部の説明においては、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッド30を用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0062】
第12図の通り、シートパッド本体31は、バックフレームの前面側を覆う主体部32と、該主体部32の後面の上辺及び左右の側辺からそれぞれ後方へ延出した第1延出部33と、該第1延出部33の後端から該主体部32の後面の中央側へ張り出した第2延出部34とを有している。これらの主体部32、第1延出部33及び第2延出部34は一体的に形成されている。また、第1延出部33及び第2延出部34は、主体部32の後面の上辺及び左右の側辺に沿って連続して形成されている。これらの主体部32、第1延出部33及び第2延出部34によって囲まれた空間は、バックフレームの上部及び左右の側部がそれぞれ嵌合する凹部35となっている。この凹部35は、主体部32の後面の中央側に向かって開放している。
【0063】
第12図の通り、この実施の形態では、シートパッド本体31の右側面に、穴状部として、サイドエアバッグ装置(図示略)を収納するためのエアバッグ装置収納部36が設けられている。このエアバッグ装置収納部36は、主体部32の右側辺に沿う第1延出部33を左右方向に貫通した貫通孔よりなり、奥側は凹部35内に連通している。該サイドエアバッグ装置は、バックフレームの側部に取り付けられており、シートパッド30をバックフレームに装着する際に、凹部35を介してエアバッグ装置収納部36内に配置される。なお、この実施の形態では、エアバッグ装置収納部36は、縦長の略長方形状の開口形状となっているが、エアバッグ装置収納部36の開口形状はこれに限定されない。この実施の形態では、シートパッド30は、車両の右座席用であるが、構成を左右逆にすることにより、左座席用とすることも可能である。
【0064】
補強材40は、主体部32の後面、並びに、第1延出部33及び第2延出部34の凹部35側の面に沿って配設されている。この補強材40には、エアバッグ装置収納部36に重なる開口部40a(第8図(b))が設けられている。この開口部40aの周縁部は、エアバッグ装置収納部36の内周面を覆っている。
【0065】
次に、このシートパッド30を成形するための金型50について説明する。第8図(a),(b)の通り、この実施の形態では、金型50は、下型51と、上型52と、該上型52にセットされた中型53とを有している。この実施の形態では、該中型53が請求項6における第1の型に相当し、下型51が請求項6における第2の型に相当し、上型52が請求項6におけるその他の型に相当する。この実施の形態でも、前述の第1の実施の形態における金型20と同様に、下型51のキャビティ面によりシートパッド本体31の前面側が成形され、上型52及び中型53のキャビティ面によりシートパッド本体31の後面側が成形される。以下、特に説明のない限り、金型50の上下方向及び左右方向は、第8〜11図における上下方向及び左右方向をいい、シートパッド30の上下方向、左右方向及び前後方向は、前述の通り、このシートパッド30を用いて構成したシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向をいう。
【0066】
中型53の側面から側方へ、シートパッド本体31の後面側の凹部35を形成するための突出部54が突設されている。この突出部54は、シートパッド本体31の後面の上側及び左右両側に連続して凹部35を形成するために、中型53から三方へ連続して突出している。下型51のキャビティ底面と中型53の下面との間のキャビティ空間Sによりシートパッド本体31の主体部32が成形され、突出部54の突出方向の先端面と下型51のキャビティ側面との間のキャビティ空間Sにより第1延出部33が成形され、該突出部54の上面と上型52のキャビティ天井面との間のキャビティ空間Sにより第2延出部34が成形される。
【0067】
この実施の形態では、シートパッド本体31の右側の第1延出部33を形成するためのキャビティ空間Sに臨む中型53の突出部54からさらに側方へ、エアバッグ装置収納部36を形成するため凸部55が張り出している。
【0068】
この実施の形態では、第8図(a)の通り、下型51と上型52とを型締めした状態において、凸部55の張出方向の先端面は、該下型51のキャビティ側面及び上型52のキャビティ側面の双方に跨って対向する。即ち、この実施の形態では、下型51と上型52とのパーティングラインPは、この凸部55の先端面との対向領域を横切る位置に配置されている。上型52と中型53とのパーティングラインPは、シートパッド本体31の第2延出部34の先端側に位置している。この実施の形態では、金型50は、パーティングラインP,Pを介して該金型50内の気体を外部に吸引排気する気体排出手段(図示略)を有している。
【0069】
このように、パーティングラインPが金型50のキャビティ側面のうち、上型52側の最外位置であるXではなくX、即ち凸部55の先端面と対向する領域を横切っている構成は、第8図(a)の通り、下型51と上型52とを型締めした状態において、成形後の型開時に製品の破れ発生の原因となる側方への凹陥を極力なくした位置Xが上型52側の最外位置であるXに対して内側に位置する金型に有効である。これは、中型53の開閉を可能とするために、XがXに対して必ず外側に位置している必要があるという理由による。
【0070】
金型50は、下型51と上型52とを型締めした状態において、凸部55の先端面が下型51及び上型52のキャビティ側面に対し所定の間隔をあけて対向するように構成されている。この実施の形態でも、型締め状態における凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間隔は、金型50内の気体はこれらの間に進入することができるが、該金型50内で発泡した発泡合成樹脂原料はこれらの間に進入することができない程度の大きさとされている。この型締め状態における凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間隔の好適範囲は、前述の第1の実施の形態における凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間隔と同様である。
【0071】
この実施の形態でも、金型50を型締めするときに、凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に、高通気性材料よりなる介在体41を介在させる。この実施の形態では、該介在体41と前記気体排出手段とが、発泡成形時に金型50内の気体を凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に誘導するための気体誘導手段を構成する。
【0072】
この実施の形態でも、介在体41は帯状のものである。この帯状の介在体41は、第8図(b)の通り、凸部55の先端面を上下方向(金型50の上下方向であって、シートパッド30にとっての前後方向に対応する。以下、同様。)に横切るように配置され、その長手方向の両端側は、凸部55の先端面の上縁及び下縁に達している。この実施の形態でも、介在体41は、補強材40と一体に設けられており、その長手方向の両端側は、該補強材40の開口部40aの内周縁に連なっている。この介在体41の物性や構成等に関する好適範囲や補則事項、この介在体41を構成するのに好適な材料などは、前述の第1の実施の形態における介在体11と同様である。
【0073】
次に、この金型50を用いてシートパッド30を製造する手順について説明する。
【0074】
まず、下型51と上型52とを型開きし、該中型53のキャビティ面に補強材40を被着させる。この際、補強材40の開口部40aに該中型53の凸部55を挿入し、該凸部55の先端面に介在体41を重ね、該介在体41が凸部55の先端面を上下に横切るように配置する。この実施の形態でも、介在体41の両端は開口部40aの内周縁に連結されているので、補強材40を所定の位置に配置するだけで、容易に、介在体41を凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に位置するように配置することができる。
【0075】
次に、下型51内に発泡合成樹脂原料を注入し、下型51と上型52とを型締めして該発泡合成樹脂原料を加熱・発泡させる。この発泡合成樹脂は、第9図(a),(b)及び第10図の通り、キャビティ空間S,S,Sをこの順に充填していく。これにより、シートパッド本体31の主体部32、第1延出部33及び第2延出部34が一体に形成される。また、これらの裏面(第1延出部33及び第2延出部34においては前記凹部35の内側に臨む面)に補強材40が一体化される。
【0076】
この際、第9図(a)の通り、凸部55の周囲においては、まず、矢印Bのように、発泡合成樹脂が下型51のキャビティ底面、並びに中型53の突出部54及び凸部55の下面に沿って該凸部55の先端側に向かって膨張し、この発泡合成樹脂に押されて凸部55の下側の気体が矢印Gの通り補強材40を介して介在体41の下端側から該介在体41の内部に進入する。次いで、発泡合成樹脂は、第9図(b)及び第10図のように、凸部55の両側のキャビティ空間Sを通ってキャビティ空間Sに流入する。キャビティ空間Sに流入した発泡合成樹脂は、第10図の矢印Bの通り、この第10図における凸部55の左右両側から該凸部55の上面の左右方向の中央側に向かって進む。この発泡合成樹脂に押されて凸部55の上側の気体が矢印Gの通り補強材40を介して介在体41の上端側から該介在体41の内部に進入する。このとき、発泡合成樹脂は、実質的に、凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に進入しないため、エアバッグ装置収納部36を塞ぐバリ部は形成されない。
【0077】
介在体41の下端側及び上端側から該介在体41の内部に進入した気体は、該介在体41の内部を通り、該介在体41の両側辺から凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間の隙間へと放散される。なお、この実施の形態でも、金型50内の気体の一部は、補強材40の内部にも吸収される。また、この気体の一部は、補強材40の開口部40aの内周縁から介在体41を通らずに直接、凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間の隙間へと放散される。
【0078】
この実施の形態では、該凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間の隙間へと放散された気体は、パーティングラインPから前記気体排出手段により金型50外に排出される。なお、介在体41もパーティングラインPに重なっているので、介在体41の内部に進入した気体の一部は、該介在体41の内部から直接、パーティングラインPを介して金型50外に吸引排気される。
【0079】
この金型50の形状であると、従来技術では、発泡成形時に、凸部55の下面と下型51のキャビティ側面とが交わる隅角部、並びに、凸部55の上面と上型52のキャビティ側面とが交わる隅角部に、比較的、金型50内の気体が残留し易い。しかしながら、本発明にあっては、気体誘導手段としての介在体41により、これらの隅角部から凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に気体が誘導されるため、これらの隅角部に気体が残留することが防止され、第11図(a),(b)の通り、これらの隅角部にも十分に発泡合成樹脂が充填される。その結果、エアバッグ装置収納部36を塞ぐバリ部を形成することなく、該エアバッグ装置収納部36の周辺部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止することができる。
【0080】
この実施の形態では、上記の通り、凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間からパーティングラインPを介して気体排出手段により金型50外に排出されるため、より効果的に、凸部55の外周面と下型51及び上型52のキャビティ側面との隅角部に気体が残留することを防止することが可能である。
【0081】
発泡合成樹脂が硬化した後、型開きしてシートパッド30を脱型する。その後、必要に応じ、エアバッグ装置収納部36を横切る介在体41を切除すると共に、シートパッド本体31の表面の仕上げ処理を行うことにより、シートパッド30が完成する。
【0082】
このようにして製造されたシートパッド30は、エアバッグ装置収納部36が初めからシートパッド本体31を貫通したものとなっており、前述の従来技術のように脱型後にバリ部をくり抜いてエアバッグ装置収納部36を貫通させる作業が不要である。しかも、このようなバリ部を設けなくても、エアバッグ装置収納部36の周辺部にボイド等の成形不良が生じることが十分に防止される。これにより、外面の形状精度の高いシートパッド30を容易に且つ歩留まりよく製造することができる。
【0083】
[第4の実施の形態]
第13図は、別の実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体の製造方法に用いられる発泡成形用金型の、第10図と同様時点における縦断面図である。
【0084】
上記の金型50を用いた発泡成形時には、凸部55の周辺部において、発泡合成樹脂は、まず該凸部55の下側のキャビティ空間を充填し、次いで該凸部55の上側のキャビティ空間を充填する。この凸部55の下側のキャビティ空間を充填する段階では、発泡合成樹脂原料の樹脂化がさほど進行しておらず、発泡合成樹脂は比較的粘度の低い状態であるため、仮に気体誘導手段により凸部55の下側の気体を該凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に誘導しなくても、比較的容易に、該凸部55の下面と下型51のキャビティ側面との隅角部にも発泡合成樹脂が充填される。
【0085】
これに対し、凸部55の上側のキャビティ空間を充填する段階では、発泡合成樹脂原料の樹脂化が進み、発泡合成樹脂は比較的粘度の高い状態となっているため、気体誘導手段により凸部55の上側の気体を該凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に誘導する必要性が高い。
【0086】
第13図の実施の形態では、以上の点を考慮し、気体誘導手段を構成する介在体41は、前述の第3の実施の形態に比べて上下方向の長さが短く、上端側のみが凸部55の上側のキャビティ空間に連通した(この実施の形態では、介在体41の上端側のみが補強材40の開口部40aの内周縁に連なった)ものとなっている。
【0087】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第3の実施の形態と同様であり、第13図において第8〜12図と同一符号は同一部分を示している。
【0088】
この実施の形態にあっても、発泡成形時には、凸部55の周辺部において比較的気体が残留し易い凸部55の上側の気体を介在体41により該凸部55の先端面と下型51及び上型52のキャビティ側面との間に誘導するため、シートパッド30のエアバッグ装置収納部36の周辺部にボイド等の成形不良が生じることを十分に防止することができる。
【0089】
また、この実施の形態では、介在体41が比較的小さなものであるため、シートパッド30の脱型後に介在体41を切除するとしても、材料の無駄が抑制される。しかも、この介在体41は、上端側のみ補強材40に連なっているので、この介在体41の切除作業も容易である。
【0090】
[第5の実施の形態]
本発明は、非貫通状の穴状部を有する発泡合成樹脂成形体にも適用可能である。
【0091】
第14図は、前述の第1の実施の形態における金型20を、この金型20により成形されるシートパッド1が非貫通状の穴状部を有したものとなるように変更した変更例を示す縦断面図である。なお、第14図は、第3図と同様時点及び同様部分を示している。
【0092】
この実施の形態では、金型20を型締めした状態において、シートパッド1に穴状部を形成するための凸部23の先端部と上型22のキャビティ天井面との間の間隔は、該金型20内で発泡した発泡合成樹脂原料がこれらの間に進入することを許容する大きさとなっている。発泡成形時に凸部23の先端部と上型22のキャビティ天井面との間に発泡合成樹脂が充填されることにより、この凸部23により形成されたシートパッド1の穴状部は非貫通状のものとなる。
【0093】
この実施の形態における金型20のその他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
【0094】
この金型20を用いたシートパッド1の製造方法も、第1の実施の形態と同様である。
【0095】
この金型20を用いてシートパッド1(シートパッド本体2)を発泡成形した場合、下型21から上型22のキャビティ天井面に向かって膨張してきた発泡合成樹脂が凸部23の先端面を越えると、この発泡合成樹脂は該凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に入り込む。この際、金型20内の気体が介在体11により凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に誘導される。
【0096】
その後、発泡合成樹脂が凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間を充填していくにつれて、これらの間に存在していた余剰気体が介在体11(及びこれに連なる補強材10)に吸収される。これにより、凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に気体が残留することが防止され、これらの間にも十分に発泡合成樹脂が充填される。
【0097】
以上の通り、この実施の形態では、金型20内の気体が介在体11により凸部23の先端面と上型22のキャビティ天井面との間に誘導されるため、これらの間の間隔が比較的狭くても、発泡合成樹脂がスムーズにこれらの間に進入することができる。これにより、非貫通状の穴状部の底面が比較的肉厚の小さなものであっても、この穴状部の底面に成形不良が生じることを十分に防止することができる。
【0098】
なお、この実施の形態では、第1の実施の形態における金型20を、この金型20により成形されるシートパッド1が非貫通状の穴状部を有したものとなるように変更した変更例を示したが、前述の第3及び第4の実施の形態における金型50も、この金型50により成形されるシートパッド30が非貫通状のエアバッグ装置収納部36を有したものとなるように変更することが可能である。
【0099】
上記の構成は、いずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成をもとりうる。
【0100】
例えば、上記の実施の形態では、発泡合成樹脂成形体に穴状部を形成するための凸部と、これに対向するキャビティ内面との間に、高通気性材料よりなる介在体を介在させることにより、金型内の気体を該凸部とキャビティ内面との間に誘導する気体誘導手段を構成しているが、気体誘導手段の構成はこれに限定されない。例えば、気体誘導手段は、穴状部を形成するための凸部と、これに対向するキャビティ内面との一方又は双方に、金型外部へ通じる通気路を設け、この通気路に金型内の気体を誘導するように構成されてもよい。
【0101】
上記の実施の形態は、シートパッドへの本発明の適用例を示しているが、本発明は、シートパッド以外の発泡合成樹脂成形体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 シートパッド
2 シートパッド本体
3 貫通孔
10 補強材
11 介在体
20 金型
21 下型
22 上型
23 凸部
24 凹所
30 シートパッド
31 シートパッド本体
32 主体部
33 第1延出部
34 第2延出部
35 凹部
36 エアバッグ装置収納部
40 補強材
41 介在体
50 金型
51 下型
52 上型
53 中型
55 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の型と第2の型とを有する発泡成形用金型を用いて、外面に穴状部を有する発泡合成樹脂成形体を製造する方法であって、
該第1の型のキャビティ内面に、該穴状部を形成するための凸部が設けられており、
該発泡成形用金型は、型締めされたときに、該凸部の突出方向の先端面が該第2の型のキャビティ内面に所定の間隔をあけて対向するように構成されている発泡合成樹脂成形体の製造方法において、
該発泡合成樹脂成形体の発泡成形時に、該凸部の該先端面と該第2の型のキャビティ内面との間に該発泡成形用金型内の気体を気体誘導手段で誘導することを特徴とする発泡合成樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記気体誘導手段は、前記発泡成形用金型が型締めされた状態において前記凸部の前記先端面と前記第2の型のキャビティ内面との間に介在する介在体を有しており、
該介在体は、通気量が20〜350cc/cm/秒の高通気性材料よりなることを特徴とする発泡合成樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、発泡合成樹脂成形体は、その外面の少なくとも一部に沿って補強材が配設され、該補強材が該発泡合成樹脂成形体と一体成形により一体化されるものであり、
前記介在体は、該補強材と一体に設けられていることを特徴とする発泡合成樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記介在体は、目付け量が50〜250g/mの繊維集合材料よりなることを特徴とする発泡合成樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記介在体は、前記穴状部を横切るように配設されることを特徴とする発泡合成樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記発泡成形用金型を型締めした状態において、前記凸部の前記先端面は、前記第2の型のキャビティ内面とその他の型のキャビティ内面とに跨って対向しており、
該発泡成形用金型は、該第2の型と該その他の型とのパーティングラインを介して該発泡成形用金型内の気体を該発泡成形用金型外に排出する気体排出手段を有することを特徴とする発泡合成樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発泡合成樹脂成形体の製造方法により製造された発泡合成樹脂成形体。
【請求項8】
請求項7において、該発泡合成樹脂成形体はシートパッドであることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−201050(P2012−201050A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69414(P2011−69414)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】