説明

白色プリプレグ、白色積層板、及び金属箔張り白色積層板

【課題】
これまでのプリント配線基板用白色積層板は、熱硬化性樹脂部分が熱によって変色し、反射率が低下する問題があった。紫外発光素子を用いる種類のLEDでは、LEDチップを実装する基板が紫外線により劣化、変色するため、紫外線や熱による変色の極めて少ない基板への要求が強くなっている。更に、チップLEDの封止工程において液漏れ等を起こさないよう高い板厚精度も要求されている。
【解決手段】
本発明の白色プリプレグは、脂環式エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)、グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)、白色顔料(C)、及び硬化剤(D)を必須成分とする樹脂組成物(E)を、シート状ガラス繊維基材に含浸、乾燥させてなることを特徴とする。又、本発明の白色積層板は、上記白色プリプレグ1枚、又は複数枚積層したものを加熱加圧成形してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板として使用する白色積層板、金属箔張り白色積層板、及び積層して該白色積層板、該金属箔張り白色積層板を製造するための白色プリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は、携帯電話、カメラ一体型VTR、携帯CD、MDプレーヤー等に見られるように、軽量化、薄型化が進んでいるだけでなく、外観、操作性や視認性等の付加価値が求められるようになっている。そのために視覚的効果の高い発光体が多数使われるようになってきており、この発光体には小型で消費電力の少ない発光ダイオード(以後LEDと表記)が用いられている。
【0003】
ところでこれらのLEDは、近年の技術の進歩により、従来の赤色、黄色、緑色のほか、青色や白色のLEDも実用化されるようになり、特に、青色、白色の発光ダイオードの需要が急増している。さらに、近年、LEDは高輝度化が進んできており、超高輝度LEDも実用化され始めている。
【0004】
従来は、発光体部を樹脂で封止した砲弾型タイプのLEDが主に用いられていたが、近年、電子機器の小型、薄型化から、基板表面に素子を直接実装したチップLEDの使用が増加してきた。このチップLEDは、当初、砲弾型タイプのLEDに比べて輝度が低いという問題もあったが、その後の改良により、砲弾型タイプと比べても遜色ないレベルにまで至っている。チップLEDの輝度が増加したことにより、チップLEDを高密度集積させることで面光源としての利用も可能になった。このような面光源は特に薄型であることが要求される液晶ディスプレイ用バックライトに好適に利用され、その他、面発光型の照明装置として誘導表示照明灯、避難口照明灯、広告灯等へ応用される。
【0005】
ところで、白色LEDの発光方法には、青色発光素子と黄色蛍光体を併用したタイプ、赤色、青色、緑色の3原色併用タイプ、若しくは紫外発光素子と蛍光体を併用したタイプがある。
【0006】
LED素子を載せるプリント配線基板としては、従来から、熱硬化性樹脂を含浸したシート状ガラス繊維基材の層(プリプレグ)を加熱加圧成形した積層板が使用されている。特に、青色、白色のチップLEDでは、可視光短波長領域の反射が重要であり、熱硬化性樹脂に着色顔料として二酸化チタン等を含有させた白色のものが従来から使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これまでのプリント配線基板用白色積層板は、熱硬化性樹脂部分が長期使用や加工時の熱によって変色し、反射率が低下する問題があった。なかでも、紫外発光素子を用いる種類のLEDでは、LEDチップを実装する基板が紫外線により劣化、変色するために、近年の高輝度LEDの実装には不適であった。そのため、紫外線や熱による変色の極めて少ない基板への要求が強くなっている。さらに、チップLEDを実装する際、チップLEDの封止工程において液漏れ等の不具合を起こさないよう高い板厚精度も要求されており、両者を兼ね備えた基板が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、熱或いは紫外線によっても劣化、変色が極めて少なく、反射率低下の極めて少ないプリント配線基板用白色プリプレグ、及び該白色プリプレグを1枚乃至複数枚積層した白色積層板、更に金属箔を積層配置した金属箔張り白色積層板を発明するに至った。また、係る白色積層板、及び金属箔張り白色積層板は、高い耐熱性を有しており、板厚精度も良く、加工性にも優れるものである。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の(1)〜(13)の構成を有する。
(1)本発明の白色プリプレグは、脂環式エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)、グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)、白色顔料(C)、及び硬化剤(D)を必須成分とする樹脂組成物(E)を、シート状ガラス繊維基材に含浸、乾燥させてなることを特徴とする。
(2)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記脂環式エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル型、フェノール類のノボラック型、グリシジルアミン型、及びグリシジルエステル型の中から選ばれる汎用エポキシ樹脂(A2)を、エポキシ樹脂(A)中に5〜60重量%含有することを特徴とする。
(3)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記樹脂組成物(E)が、(A);20〜85重量%、(B);5〜40重量%、(C);10〜75重量%、(D);(E)に含まれるエポキシ基1当量当り0.5〜2の当量比となる配合量、の組成比からなることを特徴とする。
(4)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記脂環式エポキシ樹脂(A1)が下記式(1)で表される構造を有することを特徴とする。




………式(1)
式(1)中、Rは、水素または炭素数1〜5の直鎖若しくは側鎖を有するアルキル基を表す。また、nは1から30の整数を表す。
(5)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)が、グリシジル(メタ)アクリレートホモポリマーであることを特徴とする。
(6)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)が、グリシジル(メタ)アクリレートとラジカル重合性モノマーとの共重合体であることを特徴とする。
(7)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記白色顔料(C)が酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ、及び合成スメクタイトから選ばれる1種類、又は2種類以上であることを特徴とする。
(8)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記白色顔料(C)が二酸化チタンであることを特徴とする。
(9)本発明の白色プリプレグは、好ましくは前記硬化剤(D)が、潜在性硬化剤であることを特徴とする。
(10)本発明の白色積層板は、好ましくは(1)〜(9)に記載の白色プリプレグ1枚、又は複数枚積層したものを加熱加圧成形してなることを特徴とする。
(11)本発明の金属箔張り白色積層板は、好ましくは(1)〜(9)に記載の白色プリプレグ1枚、又は複数枚積層したものに、更に金属箔を積層配置したものを加熱加圧成形してなることを特徴とする。
(12)(10)項記載の白色積層板は、好ましくはチップ型発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板として使用する。
(13)(11)項記載の金属箔張り白色積層板は、好ましくはチップ型発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板として使用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可視光領域の反射率が高く、しかも加熱や紫外線による変色が著しく少なく、高い耐熱性と板厚精度に優れるプリント配線基板用白色プリプレグ、白色積層板、及び金属箔張り白色積層板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の白色プリプレグにおいては、シート状ガラス繊維基材に含浸させる樹脂組成物(E)の構成要素の一つであるエポキシ樹脂(A)が、脂環式エポキシ樹脂(A1)を含むことが必要である。該脂環式エポキシ樹脂(A1)は熱硬化性樹脂の一つであり、耐紫外線対策として極めて有効で、紫外線による劣化、変色が極めて少なく、反射率低下の極めて少ない白色プリプレグ、白色積層板、及び金属箔張り白色積層板を得ることが可能となる。また、耐熱性を得るために、該脂環式エポキシ樹脂(A1)の中でも硬化物のガラス転移温度の高い樹脂を使用することが好ましい。樹脂硬化物のガラス転移温度は、150〜300℃の範囲であることが好ましく、180〜250℃であることがより好ましい。
【0012】
一般に、脂環式エポキシ樹脂(A1)としては、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型、シクロヘキセンオキシド型のほかに、シクロヘキサン誘導体の縮合体に直接エポキシ基が結合したような脂環式エポキシ樹脂(前記構造式(1))などを例示することができる。
【0013】
しかし、上記水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、反応性が低く、硬化剤により異なるが硬化物のガラス転移温度も一般的に120℃程度と低い。また、一方のシクロヘキセンオキシド型のエポキシ樹脂は、硬化物のガラス転移温度は高い(一般に180℃から200℃程度)が反応性が低い。ただ、いずれの脂環式エポキシ樹脂においても、耐紫外線性が高いことは知られているので、酸無水物系の硬化剤を選択することで本発明のエポキシ樹脂(A)としての適用が可能である。上記構造式(1)で表されるような脂環式エポキシ樹脂(A1)は、高い耐熱性と耐紫外線性を有しているため、本発明のエポキシ樹脂(A)として適用するのに最も好ましい。
【0014】
脂環式エポキシ樹脂(A1)は、溶融粘度が低く、プリプレグを加熱加圧成形した際の板厚精度が悪くなるという問題が生じる可能性があるため、本発明の白色プリプレグにおいて、シート状ガラス繊維基材に含浸させる樹脂組成物(E)中のエポキシ樹脂(A)として脂環式エポキシ樹脂(A1)のみを用いるより、他のエポキシ樹脂をブレンドすることが好ましい。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂(A)に、上記不具合の改善と製造コストの改善のために汎用エポキシ樹脂(A2)を添加してもよい。即ちエポキシ樹脂(A)中の脂環式エポキシ樹脂(A1)の割合を減じ、残部を汎用エポキシ樹脂(A2)で置き換えてもよい。該汎用エポキシ樹脂(A2)の添加量は、エポキシ樹脂(A)中に5〜60重量%含有させるがよく、好ましくは、30〜50重量%がよい。エポキシ樹脂(A)に対する添加量が60重量%以下であれば脂環式エポキシ樹脂(A1)を使用することによる効果が低下することはなく、即ち、熱或いは紫外線による劣化、変色が発生し易くなることはない。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂(A)に添加する汎用エポキシ樹脂(A2)としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、F、又はS等)のジグリシジルエーテル型、フェノール類(フェノール、クレゾール等)のノボラック型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型などがあり、特に限定されるものではないが、ビスフェノール類(特にA、及びF)のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂がコストと性能のバランスがよく、好ましい。
【0017】
本発明の白色プリプレグにおいて、シート状ガラス繊維基材に含浸させる樹脂組成物(E)の構成要素の一つである、脂環式エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物(E)(非揮発成分)の20〜85重量%であることが好ましい。20重量%以上であれば上記効果を得ることが可能であり、85重量%以下であれば、脂環式エポキシ樹脂(A1)の溶融粘度が低いことに起因する、プリプレグを加熱加圧成形した際の板厚精度が悪くなるという問題が生じる可能性はなく、さらにコスト的に不利になることもない。
【0018】
本発明の白色プリプレグにおいて、シート状ガラス繊維基材に含浸させる樹脂組成物(E)には、グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)を添加することが必要である。これにより、樹脂組成物(E)の顔料の分散性と、プリプレグ成形時の樹脂の流動性が改善され、前述の、脂環式エポキシ樹脂(A1)は溶融粘度が低く、プリプレグを加熱加圧成形した際の板厚精度が悪くなるという問題を回避することが可能となる。顔料の分散性が改善されることにより外観が良くなり、成形時の樹脂の流動性が改善されることによって積層板の板厚精度が向上する。
【0019】
上記、グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)としては、エポキシ当量が好ましくは100〜1000g/eq程度であり、重量平均分子量が200〜250,000の範囲の、グリシジル(メタ)アクリレートホモポリマー、又はグリシジル(メタ)アクリレートとラジカル重合性モノマーとの共重合体であることが耐熱性を向上させるためには好ましい。共重合の割合はグリシジル(メタ)アクリレートに対してラジカル重合性モノマー5〜75重量%の範囲が好ましい。又、好適に使用できるラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0020】
上記、グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)の添加量は、樹脂組成物(E)中に、5〜40重量%が良い。前述した汎用エポキシ樹脂(A2)を添加するときは、上記グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)を樹脂組成物(E)に対して5重量%以上添加することで、耐熱性の低下や脂環式エポキシ樹脂(A1)と汎用エポキシ樹脂(A2)の硬化物中での相分離を抑えることができ、特に10〜20重量%の添加が最も効果が発揮され、好ましい。また、40重量%以下であれば、シート状ガラス繊維基材への樹脂組成物(E)の含浸性が悪くなることはない。
【0021】
本発明の樹脂組成物(E)には、白色顔料(C)を添加することが必要である。添加する白色顔料(C)としては、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ、合成スメクタイトなどが例示でき、白色の無機粉末であれば特に限定されるものではないが、可視光反射率や白色度、或いは電気特性といった観点から二酸化チタンを用いるのが最も好ましい。
【0022】
二酸化チタンの結晶構造はアナターゼ型とルチル型がある。両者の特徴を挙げると、アナターゼ型は可視光短波長領域の反射率が良好であり、ルチル型は長期の耐久性や耐変色性に優れる。本発明の樹脂組成物(E)に添加する白色顔料(C)としてはどちらでも良く、特に限定されるものではない。両者を混合して使用することも勿論可能である。
【0023】
本発明の樹脂組成物(E)に含まれる白色顔料(C)の含有量は、樹脂組成物(E)中に10〜75重量%が良い。10重量%以上であれば十分な白色度、反射率を得ることができ、75重量%以下であればシート状ガラス繊維基材への含浸性が低下したり金属箔との接着強度が低下したりといった不具合が発生することはない。
【0024】
白色顔料(C)として二酸化チタンを使用する場合、二酸化チタンには表面処理としてアルミナ、シリカ処理等を行っても良い。又、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤処理も可能である。
【0025】
シート状ガラス繊維基材に含浸させる樹脂組成物(E)には、上記白色顔料(C)以外に、必要に応じてシリカなどの無機充填材を含有することができる。含有することのできる無機充填材としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、Eガラス粉末、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、クレイ、タルク等が挙げられ、単体で使用しても良く、又、2種類以上を併用しても良い。これらの無機充填材を含有することにより、基板の剛性率が向上する。配合量は特に限定しないが、樹脂組成物(E)に対して50重量%以下であることが好ましい。50重量%以下であればシート状ガラス繊維基材への含浸性が低下したり金属箔との接着強度が低下したりといった不具合が発生する可能性はほとんど生じない。
【0026】
シート状ガラス繊維基材に含浸させる樹脂組成物(E)には、上記白色顔料(C)や無機充填材以外に、必要に応じて蛍光剤を配合することができる。蛍光剤を配合することにより、可視光短波長領域での見かけの反射率を高くすることができる。ここで、蛍光剤とは、光、放射線、紫外線等の光エネルギーを吸収し、他の波長の光に変えて放射する特性を持つ化合物であり、例えば有機物では、ジアミノスチルベン誘導体、アントラセン、サリチル酸ナトリウム、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカリルアミン誘導体等がある。また無機物では、ZnCdS:Ag、ZnS:Pb、ZnS:Cu等がある。蛍光剤は、反射率の低下が著しい可視光短波長領域(380〜470nm)に放射波長が存在することが好ましく、上記の蛍光剤のうち、一般的には蛍光増白剤と呼ばれているジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等が好適である。その添加量については、限定するものではないが、ピラゾリン誘導体の場合、樹脂組成物(E)に対して0.1重量%程度の添加から効果を発揮し、添加量が多いほど効果が大きくなる。また、添加する蛍光増白剤は、溶剤に可溶であることが望ましい。
【0027】
本発明に使用するエポキシ樹脂系には硬化剤(D)が必要である。エポキシ樹脂の硬化剤には、一級アミン(ジアミノジフェニルスルホン(以下DDSと表記)等)、二級アミン、三級アミンの他に、酸無水物やその誘導体および芳香族ジアゾニウム塩や芳香族スルホニウム塩などの光硬化剤がある。
【0028】
本発明に使用する硬化剤(D)は、上記の硬化剤であれば特に限定されるものではないが、脂環式エポキシ樹脂(A1)として前記構造式(1)で表されるものを使用する場合は、ジシアンジアミド(以下DICYと表記)等の潜在性硬化剤を用いるのが好ましい。
【0029】
ここで潜在性硬化剤とは、ある温度を越えると硬化剤としての機能を発揮して熱硬化性樹脂を硬化させるものである。そのような温度は一般に「活性化温度」と呼ばれ、活性化温度より低い温度では、熱硬化性樹脂の硬化は実質的に起こらない。該活性化温度は、特に規定しないが、80〜170℃の範囲であれば取り扱いやすく実用上好ましい。
【0030】
潜在性硬化剤としては、上記DICY以外に、尿素系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤等が使用できる。
【0031】
硬化剤(D)の配合量は、硬化剤の種類により異なるが、一般的にはエポキシ当量とアミン(酸)当量から求めた割合とするのが好ましい。即ち、本発明の白色プリプレグに使用する樹脂組成物(E)中の、エポキシ樹脂類((A1)+(A2)+(B))に対する硬化剤(D)の配合比率が、エポキシ基1当量当り0.5〜2の当量比となる配合量とすることが好ましい。
【0032】
また、硬化剤(D)として前記DICYを使用する際は、該硬化剤の他に、三級アミンやイミダゾール類などを硬化促進剤として必要に応じて添加しても良い。イミダゾール類としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等を挙げることができる。該硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂類と硬化剤((A1)+(A2)+(B)+(D))に対して、0.05〜5重量%程度が良い。
【0033】
本発明の白色プリプレグに使用するシート状ガラス繊維基材としては、ガラスクロス、不織布のいずれでもよく、ガラスクロスと不織布とを併用してもよい。ガラスクロスの場合、平織り構造を基本とするが、ななこ織り、繻子織り、綾織り等の織物構造でもよく、特に限定するものではない。外観や加工性を損なわないために経糸と緯糸の交差部の隙間が小さい織り構造を使用することが好ましい。ガラスクロスの厚みについては、特に制限はないが0.02〜0.3mmの範囲のものが取り扱いやすく好ましい。
【0034】
また、シート状ガラス繊維基材に、シランカップリング剤等による表面処理を行ってもよい。さらに、シート状ガラス繊維基材自身が白色に着色されたものでもよい。
【0035】
以上説明した樹脂組成物にメチルエチルケトン等の溶剤を加え、樹脂ワニスを調製し、ガラスクロス等からなるシート状ガラス繊維基材に含浸させ、乾燥して本発明の白色プリプレグを製造する。樹脂組成物をシート状ガラス繊維基材に含浸・乾燥させる方法としては特に限定するものではなく、例えば樹脂組成物中に、シート状ガラス繊維基材を浸漬するなどして含浸させた後、100℃〜180℃程度の温度で加熱して溶剤の除去およびエポキシ樹脂を半硬化させる方法等が採用できる。シート状ガラス繊維基材に含浸・乾燥して製造する白色プリプレグの樹脂組成物含浸量は、特に限定しないが30〜60重量%とするのが好ましい。
【0036】
得られた白色プリプレグ1枚、又は複数枚積層したものを加熱加圧成形して本発明の白色積層板を製造する。又、得られた白色プリプレグ1枚、又は複数枚積層したものに、更に金属箔を積層配置し、加熱加圧成形して本発明の金属箔張り白色積層板を製造する。重ね合わせる枚数は特に制限はないが、単層基板としては白色プリプレグ1枚、又は2〜10枚を重ね、金属箔張り白色積層板の場合はその上に、又は上下に金属箔を積層配置するのが一般的である。多層基板は、上記単層基板を複数枚積層して製造されるが、重ね合わせる枚数については特に制限はない。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が用いられる。又、金属箔の厚みは3μm〜105μmが一般的であり、特に12μm〜35μmとするのが好ましい。また、本発明の白色プリプレグを積層する表面層のみに使用し、中間層には従来技術によるプリプレグを使用することも可能である。このようにして得られた本発明の白色積層板、金属箔張り白色積層板は、可視光領域の反射率が高く、しかも加熱や紫外線による変色が著しく少なく、高い耐熱性を持った板厚精度に優れるプリント配線基板用白色積層板、及び金属箔張り白色積層板となる。
【0037】
得られた白色積層板に、アディティブ法にて導体パターンを形成し、プリント配線基板とする。又、得られた金属箔張り白色積層板の金属箔上に回路パターンを印刷し、エッチングを施してプリント配線基板とする。チップLEDを該プリント配線基板に実装するには、先ずプリント配線基板上に半田を塗布し、その上にチップLEDを載置したのち、これをリフロー等に通して半田を溶融することでチップLEDをプリント基板に固定する。チップLEDを高密度集積させることで面光源としての利用も可能になり、このような面光源は特に薄型であることが要求される液晶ディスプレイ用バックライトに好適に利用される。その他、面発光型の照明装置として誘導表示照明灯、避難口照明灯、広告灯等へ応用される。
【0038】
チップLED実装用基板の板厚精度は、基板上に実装した素子をトランスファー成形で封止する際にきわめて重要である。ここでトランスファー成形とは、型締めした金型内に樹脂を圧入する手法のことをいう。チップLEDに用いられる基板の厚みは、0.06mmから1.0mmが一般的であるが、板厚の精度が悪ければ、トランスファー成形の際、型締め時に基板と金型との間に隙間が発生し、圧入した樹脂がその隙間から漏れて成形不良が発生する。このようなトランスファー成形における基板の板厚の要求精度は、例えば厚みが1.0mmの基板であれば許容差±0.05mm以下(範囲は0.1mm)、好ましくは許容差±0.03mm以下(範囲は0.06mm)である。従って、板厚精度の高い基板があればチップLEDの製造工程において不良率を大幅に低減でき、産業上極めて有意となる。
【実施例】
【0039】
次に本発明の内容および効果を実施例によって説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しないかぎり以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
脂環式エポキシ樹脂:EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)50重量部 、ビスフェノールA型エポキシ樹脂:AER−6051EK75(旭化成工業(株)製)40重量部、並びにグリシジルメタクリレートコポリマー:マープルーフG−0150M(日本油脂(株)製)10重量部をメチルエチルケトン(以下MEKと表記)50重量部に溶解させた。…(ワニスA)
硬化剤としてDICY3重量部、硬化促進剤としてC11Z−CN(四国化成工業(株)製、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)0.1重量部をジメチルホルムアミド(以下DMFと表記)25重量部に溶解させた。…(ワニスB)
ワニスAとワニスBを混合し、白色顔料としてルチル型二酸化チタンR−21(堺化学工業(株)製)73重量部、蛍光増白剤としてHR−101(中央合成化学(株)製、ピラゾリン誘導体、放射波長:450nm)0.3重量部を添加し、室温で1時間攪拌して白色エポキシワニスを得た。
この白色エポキシワニスを0.1mm厚ガラスクロスWEA−116E(日東紡(株)製)に含浸させ、150℃で5分間予備乾燥し、樹脂組成物含有量50%のプリプレグを得た。このプリプレグ1枚、4枚、及び10枚積層したものに対し、その上下に18μm厚さの銅箔を重ね、圧力40kgf/cm、温度170℃で加熱加圧成形して、0.1mm厚、0.4mm厚、及び1mm厚の金属箔張り白色積層板をそれぞれ得た。
【0041】
[比較例1]
白色エポキシワニスの組成を次のように変え、他は実施例1と同様にして白色積層板を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:AER−6051EK75(旭化成工業(株)製)50重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−704(東都化成(株)製)50重量部をMEK40重量部に溶解させた。…(ワニスC)
硬化剤としてDDS19重量部、硬化促進剤として2P4MZ(四国化成工業(株)製、2−フェニル−4−メチルイミダゾール)0.4重量部をDMF30重量部に溶解させた。…(ワニスD)
ワニスCとワニスDを混合し、白色顔料としてアナターゼ型二酸化チタンTA−500(富士チタン工業(株)製)73重量部、蛍光増白剤としてHR−101(中央合成化学(株)製)0.3重量部を添加して白色エポキシワニスを得た。
得られた白色エポキシワニスを用い、実施例1と同様にしてプリプレグを作成し、それを積層し、上下に銅箔を重ねて加熱加圧成形して0.1mm厚、0.4mm厚、及び1mm厚の金属箔張り白色積層板をそれぞれ得た。
【0042】
[効果確認試験]
1)耐熱変色性
実施例1、比較例1で得られた0.1mmの金属箔張り白色積層板の銅箔をエッチング処理によって除去した後、該基板表面の可視光反射率をJIS−Z8722に準拠して測定し、さらに180℃で4時間加熱処理した後の可視光反射率を同様に測定した。
結果は図1に示した。図1から明らかなように、実施例1の基板は、比較例1の基板と比べて短波長領域での劣化が少なく、耐熱性が向上しているのが分かる。
2)耐紫外線性
実施例1、比較例1で得られた0.1mm厚の金属箔張り白色積層板の銅箔をエッチング処理によって除去した後、該基板表面の可視光反射率をJIS−Z8722に準拠して測定し、さらに400Wの高圧水銀灯光(紫外部発光スペクトル:253.7nm,365nm)を基板に対して照射距離45cm(照射強度=約6W/m)で500時間照射処理した後の可視光反射率を同様に測定した。
結果は図2に示した。図2から明らかなように、実施例1の基板は、比較例1の基板と比べて短波長領域での劣化が少なく、耐紫外線性が向上しているのが分かる。
3)ガラス転移温度
ガラス転移温度はJIS−C6481に準拠して求めた。すなわち実施例1、比較例1で得られた0.4mm厚の金属箔張り白色積層板の銅箔をエッチング処理によって除去した後、7mm×70mmの大きさに切り出し、自由減衰型動的粘弾性測定装置(レスカ社製、型番:AD−1100AD)を用いて昇温速度2℃/分で測定し、測定データの損失正接のピーク温度からガラス転移温度を求めた。
実施例1、比較例1の白色積層板(金属箔除去後)のガラス転移温度は、それぞれ200℃、190℃であった。この結果から実施例1、比較例1の白色積層板は、いずれも実用上十分な耐熱性を有していたが、その中でも実施例1の白色積層板の方が耐熱性が優れていることが分かる。
4)板厚精度
実施例1、比較例1で得られた1mm厚の金属箔張り白色積層板(1000mm×1000mm)の板厚を、1/1000mmのマイクロメータを用いて縦250mm間隔および横70mm間隔で計60箇所測定し、板厚範囲、及び最大値と最小値の差を求めた。
実施例1、比較例1の金属箔張り白色積層板の板厚データを表1に示した。実施例1及び比較例1の板厚の最大値と最小値の差は、夫々0.055mm、0.115mmであった。
この結果から明らかなように実施例1の金属箔張り白色積層板は比較例1に比べて板厚の精度が向上し、要求精度を十分満たしていることが分かる。








【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
以上、説明したように、本発明によれば、可視光領域の反射率が高く、しかも加熱や紫外線による変色が著しく少なく、高い耐熱性と板厚精度に優れるプリント配線基板用白色プリプレグ、白色積層板、及び金属箔張り白色積層板を提供することができ、産業界に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】180℃、4時間加熱処理後の可視光反射率の比較。
【図2】高圧水銀灯(400W)光(紫外部主発光波長:253.7nm及び365nm、照射強度:約6W/m)500時間照射処理後の可視光反射率の比較。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)、グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)、白色顔料(C)、及び硬化剤(D)を必須成分とする樹脂組成物(E)を、シート状ガラス繊維基材に含浸、乾燥させてなることを特徴とする白色プリプレグ。
【請求項2】
前記脂環式エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル型、フェノール類のノボラック型、グリシジルアミン型、及びグリシジルエステル型の中から選ばれる汎用エポキシ樹脂(A2)を、エポキシ樹脂(A)中に5〜60重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の白色プリプレグ。
【請求項3】
前記樹脂組成物(E)が、(A);20〜85重量%、(B);5〜40重量%、(C);10〜75重量%、(D);(E)に含まれるエポキシ基1当量当り0.5〜2の当量比となる配合量、の組成比からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白色プリプレグ。
【請求項4】
前記脂環式エポキシ樹脂(A1)が下記式(1)で表される構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の白色プリプレグ。


……式(1)
式(1)中、Rは、水素または炭素数1〜5の直鎖若しくは側鎖を有するアルキル基を表す。また、nは1から30の整数を表す。
【請求項5】
前記グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)が、グリシジル(メタ)アクリレートホモポリマーであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の白色プリプレグ。
【請求項6】
前記グリシジル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)が、グリシジル(メタ)アクリレートとラジカル重合性モノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の白色プリプレグ。
【請求項7】
前記白色顔料(C)が酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ、及び合成スメクタイトから選ばれる1種類、又は2種類以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の白色プリプレグ。
【請求項8】
前記白色顔料(C)が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の白色プリプレグ。
【請求項9】
前記硬化剤(D)が、潜在性硬化剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の白色プリプレグ。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の白色プリプレグ1枚、又は複数枚積層したものを加熱加圧成形してなることを特徴とする白色積層板。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の白色プリプレグ1枚、又は複数枚積層したものに、更に金属箔を積層配置したものを加熱加圧成形してなることを特徴とする金属箔張り白色積層板。
【請求項12】
請求項10記載の白色積層板を使用してなるチップ型発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板。
【請求項13】
請求項11記載の金属箔張り白色積層板を使用してなるチップ型発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−316173(P2006−316173A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140406(P2005−140406)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591045703)利昌工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】