説明

磁気記憶装置

【課題】比較的簡素な構成で一対の電流配線を要することなく効率良く確実な磁化反転を可能とし、装置の更なる微小化を可能とする信頼性の高い磁気記憶装置を実現する。
【解決手段】少なくとも磁化反転層4の両側面、ここでは絶縁層3、磁化反転層4及びキャリア注入層5からなる積層体の両側面に、絶縁層6及び非磁性金属層、ここではRu層7を介して、一対の磁化制御層8を設ける。キャリア注入層5は、SrTiO3から、磁化制御層8はGdFeCo,GdDyFeCo,GdNdFeCo等の希土類遷移金属合金から形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転磁化を利用して磁気記憶を行う磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源を断っても記憶が消失しない不揮発性メモリ素子の一つに、磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic random access memory:MRAM)がある。MRAMは、磁気抵抗素子であるTMR膜の上下に記録読み出し用の電流配線(ビット線とワード線)を施した構成となっている。TMR膜の主要構成は、図10に示すように、固定層(反強磁性層)1上に、固定磁化層(ピン層)2、絶縁層(バリア層)3、及び磁化反転層(フリー層)4が順次積層されて構成される。MRAMでは、磁化反転層4の磁化反転の制御は、上記の積層体の上下に配された配線に電流を流し、これにより合成磁場を生成することにより行なわれる。
【0003】
近時では、MRAMの更なる高密度化の要請が高まっており、これを実現するためにTMR膜の微小化が進められている。しかしながら、TMR膜が微小化すると、フリー層の反磁場が増加し、磁化反転に必要な電流が増大して消費電力が増加すること、合成磁場が隣接素子に影響を与えてしまうこと等の解決すべき課題がある。
【0004】
これらの問題を解決する手法として、スピン偏極した電流を注入する「スピン注入磁化反転方式」の技術が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
しかしながら、当該技術において、現状では磁化反転に必要な電流密度は、未だ107 [A/cm2]程度と大きい。素子面積を0.1μm2以下のサイズにして、GBit級のメモリを実現するためには、2桁程度、電流密度を改善する必要があると試算されている。
【0005】
電流密度改善のため、光誘起によってキャリアが生成される磁性半導体を用いた磁気抵抗素子が提案されている(特許文献2)。この磁気抵抗素子は、左右特定の円偏光を照射することで光誘起されたキャリアのスピンを選択的に偏極させてスピン注入磁化反転の効率化を図ることを目的としている。
また、磁気センサとしての用途を目的とした特許であるが、光誘起でキャリア電子が生成される酸化膜に関する報告がなされている(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−186274号公報
【特許文献2】特開2005−11907号公報
【特許文献3】特開2003−209266号公報
【非特許文献1】スピン注入磁化反転の研究動向,屋上公二郎,鈴木義茂, 日本応用磁気学会Vol.28 No.9, (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術においては、107 [A/cm2]程度より小さい電流密度では十分な磁化反転が得られないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、比較的簡素な構成で一対の電流配線を要することなく効率良く確実な磁化反転を可能とし、装置の更なる微小化を可能とする信頼性の高い磁気記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の磁気記憶装置は、磁化方向が固定されている固定磁化層と、前記固定磁化層の磁化方向に対して平行又は反平行に磁化方向が反転される磁化反転層とが、絶縁層を介して積層されており、前記固定磁化層上に、当該固定磁化層にキャリア電子を与えるキャリア注入層と、前記磁化反転層の磁化方向を前記反平行とする際に、前記磁化反転層に前記反平行の磁場を印加する磁化制御層とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的簡素な構成で一対の電流配線を要することなく効率良く確実な磁化反転を可能とし、装置の更なる微小化を可能とする信頼性の高い磁気記憶装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
−本発明の基本骨子−
本発明者は先ず、上記した従来技術を加味して鋭意検討し、図1に示すように、図10の積層体上、電流密度を低減させるために光誘起でキャリア電子が生成される酸化膜であるキャリア注入層5を磁化反転層4に接して設ける構成について考察した。
図1の構成を採ることにより、キャリア注入層5への光照射によって形成されたキャリアスピンが磁化反転に寄与する割合が増えることから電流密度の低減に効果があると考えられる。
【0012】
ところがこの場合、生成したキャリア電子のスピンの向きはランダムであり、磁化反転に必要なキャリア電子としては効率が悪くなることが判明した。特に、平行磁化から反平行磁化に反転させる際の効率が劣る。
【0013】
即ち、固定磁化層2側から電流(スピン編極電流Is)を流すことで磁化反転層4側から伝導したキャリア電子のうち、多数スピン電子は固定磁化層2を通過するが、少数スピン電子が絶縁層3と固定磁化層2との界面で反射され磁化反転層4自身のスピンにトルクを及ぼす。この少数スピンは、固定磁化層2の磁化と反平行であるため、磁化反転層4の磁化は固定磁化層2の磁化と反平行になる。多数スピン電子と少数スピン電子との割合は、磁性層の分極率に依存する。例えば、磁性層がCoFeからなる場合では、約53%の分極率であることが知られている。このことから、磁化反転層4をCoFeで形成した場合、約47%の少数スピン電子によって反平行状態にするため、多数スピン電子によって平行状態にする場合以上に電流が必要となり、107 [A/cm2]程度の電流密度が必要となることが判った。
【0014】
本発明者は、上記の考察を踏まえ、鋭意検討した結果、特に平行磁化から反平行磁化に磁化反転層を効率的に反転させるための素子構成に想到した。
本発明の磁気記憶装置では、磁化反転層の磁化を効率的に反転させ、電流密度を低減するため、磁化反転層の磁化制御を行う磁性層(磁化制御層)を新たに設けた構成を提案する。具体的には、図2に示すように、図1の素子構成に加え、少なくとも磁化反転層4の両側面、ここでは絶縁層3、磁化反転層4及びキャリア注入層5からなる積層体の両側面に、絶縁層6及び非磁性金属層、ここではRu層7を介して、一対の磁化制御層8を設ける。磁化制御層8の材料としては、GdFeCo,GdDyFeCo,GdNdFeCo等の希土類遷移金属合金を用いる。Ru層7は、磁化制御層8を固定磁化層2と反強磁性結合させて反平行磁化状態とするために設けるものであり、磁化制御層8が固定磁化層2とRu層7を介して配される。以下では便宜上、固定層1上に、固定磁化層2、絶縁層3、磁化反転層4、及びキャリア注入層5からなる積層体をTMR膜10と称する。
【0015】
図3に示すように、この磁化制御層8は、例えば、室温から60℃までの範囲に補償温度を有し、この範囲内で自発磁化が消失しており、100℃程度で約200[emu/cc]の磁化が発現する磁性層である。補償温度、及び自発磁化Msが最大となる温度は、希土類と遷移金属の組成を変えることで任意に調節することができる。
【0016】
以下、図4及び図5を参照して、本発明のMRAMにおける磁化反転動作について説明する。
先ず図4(a)に示すように、磁化反転層4の磁化方向を反平行状態から平行状態に反転させる際には、TMR膜10にキャリア注入層5から電流Isを流す。キャリア注入層5側から電流を加えることで、固定磁化層2側から伝導するキャリア電子が固定磁化層2の磁化状態を反映して磁化反転層4の磁化方向を平行状態にする。この反転は、従来通り比較的低い電流で実現する。即ち、固定磁化層2を通過した固定磁化層2と同じ方向を向いた多数スピン電子が、磁化反転層4のスピンにトルクを与えて反転する。このとき、磁化制御層8の磁化は補償温度のために影響を受けない。
【0017】
一方、図4(b)に示すように、磁化反転層4の磁化方向を平行状態から反平行状態に反転させる際には、キャリア注入層5にレーザ光等の光照射を行うのと同時に、TMR膜10に固定磁化層2側から電流Isを流す。レーザ光照射により、TMR膜10が加熱されることで磁化制御層8の磁化が発現する。磁化制御層8の磁化方向は、固定磁化層2の磁化に対して反平行に向き、この磁化制御層8からの漏洩磁場により磁化反転層4の磁化方向を反平行状態とすることがアシストされる。レーザ照射によって生成されたキャリア電子は、磁化反転層4の磁化が固定磁化層2の磁化と平行な場合では、約47%の少数スピン電子の反射によって磁化反転層4の磁化を反平行状態にするが、外部磁場のアシストがあるために従来よりも低い電流で磁化を反転することができる。
【0018】
図5に示すように、磁化反転に107 [A/cm2]程度の電流密度を要する従来のTMR膜に外部磁場を加えた実験から、約100[Oe]の磁場印加で106 [A/cm2]程度に電流密度が低減した結果が得られた。即ち、磁化制御層8を設けることにより、比較的小さな電流密度で磁化反転層4の磁化状態を極めて効率良く反平行にすることができる。
【0019】
以上説明したように、キャリア注入層5を付加してTMR膜10を構成し、キャリア注入層5に光照射することにより、光照射しない場合に比して生成されたキャリア電子が約3桁も多く、その約47%が磁化反転に寄与する。本発明では、更に一対の磁化制御層8を適宜設けることにより、キャリア注入層5への光照射で生成したキャリア電子のほぼ100%が磁化反転に寄与する。そのため、TMR膜10に供給する電流密度を大幅に低減させることができる。
【0020】
−本発明を適用した具体的な実施形態−
以下、本発明をMRAMに適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図6は、本実施形態によるMRAMのメモリセルアレイ構造を示す概略平面図、図7は、本実施形態によるMRAMのメモリセル構造を示す概略断面図であり、図6の破線I−Iに沿った断面図が図7に相当する(但し図6では、各メモリセルにおける選択トランジスタ等の図示を省略する。)。
【0021】
このMRAMは、図6に示すように、例えばシリコン半導体基板20上に、複数のメモリセル11がマトリクス状に配設されてメモリセルアレイが構成されている。
各メモリセル11は、図7に示すように、シリコン半導体基板20上に、選択トランジスタ12と、選択トランジスタ12に隣接磁気メモリ素子13とが形成され、磁気メモリ素子13上にビット線14が電気的に接続されて構成されている。ビット線14は、メモリセル11毎に対応して設けられている。
【0022】
選択トランジスタ12は、シリコン半導体基板20の素子分離構造、例えばSTI素子分離構造31により確定された活性領域32(例えばp型不純物が導入されてウェル21が形成されている。)において、シリコン酸化膜等からなる薄いゲート絶縁膜22を介してゲート電極23が形成されており、活性領域32におけるゲート電極23の両側の部分に、不純物、例えばn型不純物が導入されてソース領域24及びドレイン領域25が形成され、構成されている。
【0023】
磁気メモリ素子13は、選択トランジスタ12に隣接して設けられており、帯状に形成された電極26上に上述したTMR膜10が形成され、構成されている。
TMR膜10は、例えば、固定層1がIrMn、固定磁化層2がCoFe、絶縁層3がMgO、磁化反転層4がCoFe、キャリア注入層5が3eV前後にバンドギャップを有する酸化膜、例えばSrTiO3から形成されている。ここで、キャリア注入層5の酸化膜が3eV前後にバンドギャップを有することにより、青紫色レーザを用いた励起が可能となる。
一対の磁化制御層8は、例えば、GdFeCo,GdDyFeCo,GdNdFeCo等の希土類遷移金属合金、ここではGdFeCoから形成されている。
【0024】
ゲート電極23を覆うシリコン酸化膜等の層間絶縁膜33aに、ソース領域24及びドレイン領域25と電気的に接続されるタングステン(W)等の導電プラグ27,28(コンタクト孔27a,28aがWで埋め込まれてなる)が形成されている。導電プラグ28と磁気メモリ素子13の電極26とが接続され、導電プラグ28を介して電極26とドレイン領域25とが電気的に接続されている。一方、導電プラグ27上にAl合金等の配線29が形成され、導電プラグ27を介して配線29とソース領域24とが電気的に接続されている。磁気メモリ素子13の上面を除く部位及び配線29は、層間絶縁膜33b内に埋設されている。
【0025】
このメモリセル11にデータを書き込む際には、以下のように実行される。
選択トランジスタ12で選択された磁気メモリ素子13において、磁化反転層4の磁化方向を反平行状態から平行状態に反転させる際には、ビット線14から電極26の方向に、TMR膜10に電流Isを流す。
一方、磁化反転層4の磁化方向を平行状態から反平行状態に反転させる際には、不図示のレーザ機構により磁気メモリ素子13のキャリア注入層5にレーザ光照射、ここでは青紫色レーザ光の照射を行うのと同時に、電極26からビット線14の方向に、TMR膜10に電流Isを流す。レーザ光照射により、TMR膜10が加熱されることで磁化制御層8の磁化が発現する。磁化制御層8の磁化方向は、固定磁化層2の磁化に対して反平行に向き、この磁化制御層8からの漏洩磁場(例えば数百[Oe])により磁化反転層4の磁化方向を反平行状態とすることがアシストされる。
【0026】
また、メモリセル11からデータを読み出す際には、以下のように実行される。
選択トランジスタ12で選択された磁気メモリ素子13において、レーザ光照射をすることなく電極26側からビット線14側に記録時よりも弱い電流を流す。平行磁化状態と反平行磁化状態の抵抗値が(平行磁化状態の抵抗値)<(反平行磁化状態の抵抗値)であることを利用して"0"、"1"を判別する。電流方向は記録時よりも弱い値ならばビット線14側から電極26側に流しても良いが、この方向は記録時と再生時の電流マージンが狭いので、再生電流で誤って記録されないように電極26側からビット線14側に流すのが望ましい。
【0027】
以下、上記のように構成されるMRAMの製造方法について説明する。
図7、図8−1、図8−2、図9−1、及び図9−2は、本実施形態によるMRAMの主要構成部である磁気メモリ素子の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0028】
先ず、シリコン半導体基板20の素子分離領域に分離溝を形成し、この分離溝に絶縁物を充填して、STI素子分離構造31を形成し、シリコン半導体基板20上で活性領域32を画定する。
次に、活性領域32に不純物、ここでは例えばp型不純物であるホウ素(B)をイオン注入し、ウェル21を形成する。
【0029】
次に、活性領域32上にシリコン酸化膜を形成した後、多結晶シリコン膜を堆積し、リソグラフィー及びエッチングによりこれらを電極形状に加工することにより、シリコン半導体基板20上にゲート絶縁膜22を介してゲート電極23を形成する。
次に、ゲート電極23をマスクとして、活性領域32におけるゲート電極23の両側の部分に、不純物、例えばn型不純物であるリン(P)をイオン注入し、所定のアニール処理を施すことにより、ソース領域24及びドレイン領域25を形成する。
【0030】
次に、ゲート電極23を覆うようにシリコン酸化膜を堆積し、層間絶縁膜33aを形成する。この層間絶縁膜をリソグラフィー及びエッチングにより加工し、ソース領域24及びドレイン領域25の表面の一部をそれぞれ露出させるコンタクト孔27a,28aを形成する。
【0031】
次に、コンタクト孔27a,28aを埋め込むように、導電物、例えばWを層間絶縁膜33a上に堆積し、化学機械研磨(CMP)により平坦化して、ソース領域24及びドレイン領域25と電気的に接続される導電プラグ27,28を形成する。なお、コンタクト孔27a,28aの内壁面にTiN等のバリア膜を形成し、これを介してコンタクト孔27a,28aにWを充填するようにしても良い。
次に、層間絶縁膜33a上にアルミ合金膜を堆積し、これをリソグラフィー及びエッチングにより加工して、導電プラグ27と接続される配線29を形成する。
【0032】
そして、図8−1、図8−2、図9−1、及び図9−2に示すように、磁気メモリ素子13を形成する。
初めに、図8−1(a)に示すように、電極26上を含む層間絶縁膜33aの全面に、固定層1、固定磁化層2、絶縁層3、磁化反転層4、キャリア注入層5、Ta層9を順次堆積する。
詳細には先ず、全面に導電物、ここではCuを堆積し、これを図7のようにリソグラフィー及びエッチングにより導電プラグ28と接続されるようにストライプ状に加工し、電極26を形成する。
次に、電極26上を含む層間絶縁膜33aの全面に、IrMn、CoFe、MgO、CoFe、SrTiO3、及びTaを、膜厚7nm程度、膜厚3.5nm程度、膜厚0.9nm程度、膜厚3nm程度、膜厚3.5nm程度、膜厚10nm程度に順次堆積し、固定層1、固定磁化層2、絶縁層3、磁化反転層4、キャリア注入層5、Ta層9を形成する。
【0033】
続いて、図8−1(b)に示すように、レジストパターン34を形成する。
詳細には、Ta層9上にレジストを塗布し、リソグラフィーによりこれを加工して、素子形状のレジストパターン34を形成する。各レジストパターン34は、導電プラグ28の上方部位に位置整合し、電極26上で整列するように形成される。
【0034】
続いて、図8−1(c)に示すように、レジストパターン34をマスクとして、エッチングによりTa層9を加工する。
続いて、図8−2(a)に示すように、レジストパターン34を灰化処理等により除去する。
【0035】
続いて、図8−2(b)に示すように、キャリア注入層5、磁化反転層4、絶縁層3を加工する。
詳細には、レジストパターン34に倣って加工されたTa層9をマスクとして、イオンビームエッチング(IBE)法により、キャリア注入層5、磁化反転層4、及び絶縁層3を加工する。
【0036】
続いて、図9−1(a)に示すように、絶縁層6を堆積する。
詳細には、加工された絶縁層3、磁化反転層4、及びキャリア注入層5、及びTa層9からなる積層体を覆うように、例えばシリコン酸化膜を堆積し、絶縁層6を膜厚2nm程度に堆積する。
【0037】
続いて、図9−1(b)に示すように、絶縁層6を加工する。
詳細には、絶縁層6を反応性イオンエッチング(RIE)により加工し、絶縁層6を絶縁層3、磁化反転層4、キャリア注入層5、及びTa層9からなる積層体の両側面のみに残す。
【0038】
続いて、図9−1(c)に示すように、Ru層7を形成する。
詳細には、両側面に絶縁層6の形成された絶縁層3、磁化反転層4、キャリア注入層5、及びTa層9からなる積層体を覆うように、Ru層7を膜厚0.4nm程度に堆積する。
【0039】
続いて、図9−2(a)に示すように、磁化制御層8を堆積する。
詳細には、Ru層7を覆うように、GdFeCoを膜厚17nm程度に堆積し、磁化制御層8を形成する。
【0040】
続いて、図9−2(b)に示すように、一対の磁化制御層8を形成する。
詳細には、キャリア注入層5を研磨ストッパーとし、キャリア注入層5の表面が露出するまで、磁化制御層8、Ru層7、及びTa9をCMP法により研磨し、平坦化する。このとき、絶縁層3、磁化反転層4及びキャリア注入層5からなる積層体とは絶縁層6及びRu層7を介して、固定磁化層2とはRu層7を介して、当該積層体の両側に一対の磁化制御層8が形成される。
【0041】
次に、磁気メモリ素子13及び配線29を埋め込むように、全面に層間絶縁膜33bを堆積する。
次に、磁気メモリ素子13のキャリア注入層5を研磨ストッパーとし、キャリア注入層5の表面が露出するまで、層間絶縁膜33bを研磨し、平坦化する。
【0042】
次に、層間絶縁膜33bの全面に導電膜、ここでは酸化インジウムにアンチモンを加えた膜を堆積する。そして、この導電膜を、各磁気メモリ素子13にそれぞれ接続させるように、メモリセル11毎に島状に加工し、各ビット線14を形成する。
しかる後、更なる層間絶縁膜や配線等の形成工程を経て、MRAMを完成させる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、比較的簡素な構成で一対の電流配線を要することなく効率良く確実な磁化反転を可能とし、装置の更なる微小化を可能とする信頼性の高いMRAMが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の基礎をなすTMR膜の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明のTMR膜の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明において、スピン偏極電流と抵抗値との関係を示す特性図である。
【図4】本発明のMRAMにおける磁化反転動作について説明するための概略断面図である。
【図5】本発明のMRAMにおける磁化反転動作について説明するための概略断面図である。
【図6】本実施形態によるMRAMのメモリセルアレイ構造を示す概略平面図である。
【図7】本実施形態によるMRAMのメモリセル構造を示す概略断面図である。
【図8−1】本実施形態によるMRAMの主要構成部である磁気メモリ素子の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図8−2】図8−1に引き続き、本実施形態によるMRAMの主要構成部である磁気メモリ素子の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図9−1】図8−2に引き続き、本実施形態によるMRAMの主要構成部である磁気メモリ素子の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図9−2】図9−1に引き続き、本実施形態によるMRAMの主要構成部である磁気メモリ素子の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図10】従来のMRAMにおけるTMR膜の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 固定層
2 固定磁化層
3,6 絶縁層
4 磁化反転層
5 キャリア注入層
7 Ru層
8 磁化制御層
10 TMR膜
11 メモリセル
12 選択トランジスタ
13 磁気メモリ素子
14 ビット線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が固定されている固定磁化層と、前記固定磁化層の磁化方向に対して平行又は反平行に磁化方向が反転される磁化反転層とが、絶縁層を介して積層されており、
前記固定磁化層上に、当該固定磁化層にキャリア電子を与えるキャリア注入層と、
前記磁化反転層の磁化方向を前記反平行とする際に、前記磁化反転層に前記反平行の磁場を印加する磁化制御層と
を含むことを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項2】
前記キャリア注入層は、キャリア電子を励起させるエネルギーの光照射により、キャリア電子を生成するものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記磁化制御層は、所定の補償温度で前記反平行の磁化が発現する性質を有しており、前記磁化反転層に前記反平行の漏洩磁場を印加するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記磁化制御層は、室温よりも高温の補償温度で前記反平行の磁化が発現する性質を有しており、前記磁化反転層に前記反平行の漏洩磁場を印加するものであり、前記光照射により前記補償温度に達することを特徴とする請求項2に記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記磁化制御層は、前記磁化反転層の両側に、絶縁膜を介して当該磁化反転層を挟持するように設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−277621(P2008−277621A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121010(P2007−121010)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】