説明

空調制御システム

【課題】空調制御装置側に大型の冷却液循環ポンプを備える必要なく、空調制御システムにおける冷媒用のコンプレッサの過熱を抑制する。
【解決手段】燃料電池10に冷却液をメイン循環ポンプ12により循環させることによって燃料電池10の冷却を行う冷却装置と、車両の車室内の空調を制御する空調制御装置と、を含み、冷却装置と空調制御装置との間において熱交換が可能である空調制御システムであって、燃料電池10を間欠運転する際に、メイン循環ポンプ12を連続動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を利用した空調制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、低温時では十分な発電能力を得ることができない。このため、燃料電池の始動時などの低温時において、燃料電池の電力でその冷却水を加熱して燃料電池を暖機する技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、燃料電池システムには、燃料電池を運転に適した温度に保つために、冷却水を循環させて、燃料電池で生じた不要な熱をラジエータで放熱する冷却装置が設けられる。
【0003】
一方、燃料電池をその動力源として利用する移動体(例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車)には、室内の冷暖房を行う空調制御装置が搭載される。空調制御装置には、例えば、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式ヒートポンプを利用するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
燃料電池システムと空調制御装置とを独立したシステムとして移動体に搭載すると、部品点数の増加、重量の増大、エネルギーのロスといった問題が生ずる。これらは、移動体の燃費が悪化する一要因となる。また、移動体への搭載スペースには限りがある。
【0005】
そこで、特許文献3〜7には、燃料電池システムで生じる熱を空調制御装置で利用したり、廃熱したりする技術が提案されている。例えば、燃料電池スタックの発生熱を暖房用熱交換器により回収して暖房装置の熱源として利用する技術がある(例えば、特許文献3参照)。また、燃料電池の冷却水をヒータコアに通水して暖房を行う車両用空調装置において、燃料電池で発生した燃料電池で不要な熱量が空調に必要な熱量よりも小さいときは、不足する熱量を補うように電気ヒータを発熱制御する技術がある(例えば、特許文献4参照)。また、燃料電池本体からの余った熱を空調機システムが備える放熱器で大気に放出させる技術がある(例えば、特許文献5参照)。また、回生ブレーキで発生する余剰電力で燃料電池の冷却水を加熱することで余剰電力を消費し、燃料電池の冷却水の熱を空調に利用するシステムがある(例えば、特許文献6参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−94202号公報
【特許文献2】特開2003−42604号公報
【特許文献3】特開平6−260196号公報
【特許文献4】特開2001−315524号公報
【特許文献5】特開2003−130491号公報
【特許文献6】特許第3353299号公報
【特許文献7】特開2003−146056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃料電池の冷却装置と空調制御装置とを複合化させたシステムでは、燃料電池の必要出力が低くなった際に燃料電池を間欠運転することがある。その場合、空調制御装置のエアコンプレッサの周辺温度が高くなり、空調制御装置に不具合が生ずる場合があった。エアコンプレッサの周辺温度を低く保つためには、空調制御装置側に燃料電池の冷却装置で用いられる冷却液を循環させるための大型の循環ポンプを備える必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃料電池に冷却液をメイン循環ポンプにより循環させることによって当該燃料電池の冷却を行う冷却装置と、車両の車室内の空調を制御する空調制御装置と、を含み、前記冷却装置と前記空調制御装置との間において熱交換が可能である空調制御システムであって、前記燃料電池を間欠運転する際に、前記メイン循環ポンプを動作させることを特徴とする。
【0009】
例えば、前記燃料電池への燃料ガス及び酸化剤ガスの少なくとも1つの供給を停止している間、前記メイン循環ポンプを動作させ続ける。
【0010】
また、前記冷却装置と前記空調制御装置との間で熱交換を行う熱交換器と、前記冷却装置から前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、を切り替える三方弁と、前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させるサブ循環ポンプと、を備え、前記メイン循環ポンプの出力定格は、前記サブ循環ポンプの出力定格の2倍以上であることが好適である。
【0011】
また、前記冷却装置と前記空調制御装置との間で熱交換を行う熱交換器と、前記冷却装置から前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、を切り替える三方弁と、前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させるサブ循環ポンプと、を備え、前記メイン循環ポンプの最大出力流量は、前記サブ循環ポンプの最大出力流量の10倍以上であることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料電池の冷却装置と空調制御装置とを複合化させた空調制御システムにおいて、空調制御装置側に大型の冷却液循環ポンプを備える必要なく、燃料電池を間欠運転した場合に空調制御装置のエアコンプレッサの温度の上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔構成〕
図1は、本発明における空調制御システムの構成を示すブロック図である。空調制御システムは、燃料電池システム及び空調制御装置を含んで構成される。 HYPERLINK "http://www8.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=235&N0500=4E#N/;%3E7?:6:8%3C///&N0001=147&N0552=9&N0553=000003" \t "tjitemdrw" 図1には、車両に搭載された燃料電池システム及び空調制御装置が示されている。燃料電池システムは、車両の駆動力となる電力を発電するものである。また、空調制御装置は、車両の室内の温度を調整するためのものである。
【0014】
〈燃料電池システム〉
燃料電池システムは、燃料電池10及び燃料電池10の冷却装置を含んで構成される。
【0015】
燃料電池10は、それぞれが発電の単位となる複数の単セルが積層されて構成される。各セルは、電解質と、電解質を両側から挟む燃料極(アノード)及び空気極(カソード)と、燃料極及び空気極を挟む燃料極側セパレータ及び空気極側セパレータを含んで構成される。
【0016】
燃料極は、拡散層と触媒層とを有する。燃料極には、水素ガス等の燃料ガスが燃料供給装置(図示しない)により供給される。燃料極に供給された燃料ガスは、拡散層で拡散され触媒層に到達する。触媒層では、酸化反応により水素がプロトン(水素イオン)と電子とに分離される。水素イオンは電解質を通って空気極に移動し、電子は外部回路を通って空気極に移動する。
【0017】
空気極は、拡散層と触媒層とを有する。空気極には、空気等の酸化剤ガスが酸化剤供給装置(図示しない)により供給される。空気極に供給された酸化剤ガスは、拡散層で拡散され触媒層に到達する。触媒層では、酸化剤ガスと、電解質を通って空気極に到達した水素イオンと、外部回路を通って空気極に到達した電子とによる還元反応が生ずる。これにより水が生成される。
【0018】
また、燃料極における酸化反応と空気極における還元反応の際に、外部回路を通る電子が燃料電池10のセルスタックの両端子間に接続される負荷に対する電力として取り出される。
【0019】
燃料電池10では、発電に伴って熱が発生する。一方、燃料電池10での電気化学反応には適した温度があり、燃料電池10の運転がそれに適した温度で行われるように、燃料電池10には冷却装置が併設される。冷却装置としては、一般的に、燃料電池10に設けられている冷却液通路へ冷却液を循環させる方法が採られる。
【0020】
本実施の形態における冷却装置は次のように構成される。燃料電池10には、燃料電池10の冷却液通路に通じる冷却液の入口及び出口が設けられる。冷却液の入口は、配管Aを介して、冷却液を循環させる循環ポンプ(ウォータポンプ)12の出口に接続されている。一方、燃料電池10の冷却液の出口は、配管Bを介して、冷却液を冷却するラジエータ(冷却器)16の入口に接続されている。
【0021】
また、ラジエータ16の冷却液の出口は、配管Cを介して三方弁18の第2の入口に接続されている。配管Bには、その途中から分岐するバイパス管Dの一端が接続されている。バイパス管Dの他端は、三方弁18の第1の入口に接続されている。また、三方弁18の出口は、配管Eを介して循環ポンプ12の入口に接続されている。
【0022】
このように、冷却装置は、冷却液がラジエータ16を経由して循環する第1の循環路と、冷却液がラジエータ16を経由することなくバイパス管Dを通って循環する(冷却器をバイパスする)第2の循環路とを含む。第1及び第2の循環路を流れる冷却液の量は、燃料電池10の温度に応じて三方弁18により調整される。
【0023】
具体的には、配管A,B,Cには、燃料電池10から排出される冷却液の温度を検知する温度センサ20が設置されており、この温度センサ20で検知される冷却液温度に従って、三方弁18の動作が制御される。
【0024】
例えば、第1及び第2の入口の冷却液温度が燃料電池10の暖機を要すると認められる第1の温度を下回る場合には、三方弁18の第1の入口が開かれ、かつ、第2の入口が閉じられて、冷却液がラジエータ16により冷やされないようにされる。また、燃料電池が安定して運転できる上限温度を冷却液温度が超える場合には、三方弁18の第1の入口が閉じられ、かつ、第2の入口が開かれて、冷却液がラジエータ16により冷却される。
【0025】
また、燃料電池10の冷却液の入口と出口に跨るように、イオン交換器22が設けられる。イオン交換器22は、燃料電池の冷却装置を循環する冷却液に含まれる不純物を除去して冷却液を浄化する。これにより、冷却液の電気的な絶縁耐圧を高めることができる。
【0026】
さらに、冷却装置は、空調制御装置と複合化するための配管系を含んで構成される。三方弁24の第1の入口は配管Bに接続されており、三方弁24の第2の入口は配管Fを介して配管Eに接続されると共に発熱体付き熱交換器14の冷却液出口に接続されている。三方弁24の出口は、配管Gを介して、循環ポンプ26の入口に接続される。循環ポンプ26の出口は、配管Hを介して、第1室内熱交換器(室内ガスクーラGC)28の熱伝達部の入口に接続される。第1室内熱交換器28の熱伝達部の出口は、配管Iを介して、発熱体付き熱交換器14の入口に接続される。第1室内熱交換器28は、室内に送り出される空気の通路30上に配置されており、循環ポンプ26から送られてくる冷却液と送風機32によって室内に送り出される空気との熱交換を行う。
【0027】
〈空調制御装置〉
車室内の空調制御装置は、次のように構成されている。冷媒を吸入圧縮する電動コンプレッサ(圧縮機)34の出口は、配管aを介して、冷房用電磁弁36の入口に接続される。冷房用電磁弁36の出口は、配管bを介して、暖房用膨張弁38の入口に接続される。暖房用膨張弁38の出口は、配管cを介して、室外熱交換器40の入口に接続されている。
【0028】
また、配管aの途中には、配管aから分岐するように配管dが接続されており、配管dは発熱体付き熱交換器14の冷媒入口に接続されている。発熱体付き熱交換器14の冷媒出口は、配管eを介して、配管bの中間に接続されている。このように、電動コンプレッサ34と室外熱交換器40との間には、並列な二つの冷媒流路が設けられた状態となっている。そして、冷房用電磁弁36の開弁/閉弁動作により、二つの冷媒流路を流れる冷媒の量が調整されるように構成されている。
【0029】
室外熱交換器40の出口は、配管fを介して、内部熱交換器42の室外側冷媒入口に接続されている。内部熱交換器42は、室外熱交換器40からの冷媒と、電動コンプレッサ34に吸入される冷媒とを熱交換する。内部熱交換器42の室外側冷媒出口は、配管gを介して冷房用膨張弁44の入口に接続されている。冷房用膨張弁44の出口は、配管hを介して第2室内熱交換器(エバポレータ)46の入口に接続されている。
【0030】
第2室内熱交換器46は、空気の通路30上において、第1室内熱交換器28よりも空気の流れの上流側に配置されており、室内に送り出すべき空気と冷媒とを熱交換する。第2室内熱交換器46の出口は、配管iを介して、アキュムレータ(気液分離器)48の入口に接続されている。アキュムレータ48は、冷媒通路(ヒートポンプ)を循環する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を流出する。アキュムレータ48の出口は、配管jを介して内部熱交換器42の室内側冷媒入口に接続されており、内部熱交換器42の室内側冷媒出口は、配管kを介して電動コンプレッサ34の入口に接続されている。
【0031】
また、配管iの中間部分には、バイパス管mの一端が接続されており、その他端は暖房用電磁弁50の入口に接続されている。暖房用電磁弁50の出口は、バイパス管nを介して内部熱交換器42の室外側冷媒入口に接続されている。
【0032】
なお、空気の通路30内には、室内外から導入される空気を空気流れの下流側へ送り出す送風機32が設けられている。また、第1室内熱交換器28には、第1室内熱交換器28を通過する空気の量を調整するためのエアミックスドア(図示しない)が取り付けられている。エアミックスドアの開度が大きくなるほど、第1室内熱交換器28を通過する空気の量が増加するように構成されている。
【0033】
なお、発熱体付き熱交換器14は、通電により発熱するヒータを有する発熱体(図示しない)と、冷却液流路を有する冷却液側部52と、冷媒流路を有する冷媒側部54とを備えている。冷却液流路を流れる冷却液、及び冷媒流路を流れる冷媒の夫々は、発熱体の発熱により加熱されるように構成されている。また、冷却液流路を流れる冷却液と冷媒流路を流れる冷媒との間で熱交換が行われるように構成されている。
【0034】
〈制御部〉
次に、上述した燃料電池システム及び空調制御装置を制御する構成について説明する。 HYPERLINK "http://www8.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=235&N0500=4E#N/;%3E7?:6:8%3C///&N0001=147&N0552=9&N0553=000003" \t "tjitemdrw" 図1に示すように、実施形態に係る車両には、燃料電池10と、燃料電池10に対して並列に接続された蓄電池60と、車両の駆動力を供給する電動機(モータ)62と、その駆動回路64と、燃料電池10や蓄電池60からの電力を駆動回路64に供給し、電動機62の作動を制御する制御部66とを備えている。
【0035】
電動機62は、車両の減速時(車両のブレーキが作動したとき等)において、一時的に発電機として使用される。これにより、車両に回生ブレーキがかかるように構成されている。回生ブレーキによって生じた回生エネルギー(回生電力)は、蓄電池60で回収されるように構成されており、蓄電池60で回収しきれない余剰電力は、発熱体の発熱により消費されるように構成されている。
【0036】
制御部66は、燃料電池10及び蓄電池60と駆動回路64との間に設けられている。制御部66は、電力供給線を介して発熱体付き熱交換器14の各発熱体(図示しない)に接続されている。制御部66は、燃料電池10や蓄電池60からの直流電力を交流電力に変換するインバータ(図示しない)や、燃料電池システム及び空調制御装置の各部からの信号を受け取り、燃料電池システム及び空調制御装置の制御を行う制御装置(ECU(Electric Control Unit))68などから構成されている。
【0037】
蓄電池残存容量計70は、蓄電池60の端子に接続される。蓄電池残存容量計70は、蓄電池の電圧や電流の計測値に基づいて蓄電池60の充電率を制御部66へ送信する。制御部66は、蓄電池60の充電率を監視するように構成されている。回生ブレーキによる電力が発生した場合に、充電率が所定値を上回っていない場合には、制御部66は、駆動回路64から受け取る回生ブレーキにより生じた電力(電流)を蓄電池60側に流して蓄電池60を充電し、充電率が所定値を上回っている場合には、当該電力(電流)を発熱体付き熱交換器14の発熱体側に流して発熱体を発熱させるように構成されている。
【0038】
ECU68は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェースなどから構成されており、メモリに記憶された所定の制御プログラムを実行することによって、発熱体の発熱のオン/オフ制御を行うとともに、このオン/オフ制御に関連した燃料電池10の温度調整、室内暖房、余剰な回生エネルギーの消費に係る処理を行う。また、三方弁18,24、冷房用電磁弁36、暖房用膨張弁38、冷房用膨張弁44及び暖房用電磁弁50の開閉又は開度調整を行う。さらに、ラジエータ16のファンの回転数、室外熱交換器40のファンの回転数及び送風機32の風量を制御する
【0039】
[動作説明]
燃料電池の冷却装置と空調制御装置との空調制御システムは、燃料電池の発電による熱を車室内の空調における暖房に利用することを可能とする。以下、本実施の形態における空調制御システムにおける暖房及び冷房の制御について説明する。空調制御システムの制御は、図2に示すフローチャートに沿って行われる。
【0040】
ステップS10では、冷房又は暖房の選択が行われる。制御部66は、車室内に設けられているエアコン制御パネルの操作信号を受けて、冷房運転又は暖房運転する必要があるか否かを判定する。冷房運転する場合にはステップS12へ処理を移行させ、暖房運転する場合にはステップS14へ処理を移行させる。
【0041】
ステップS12では、空調制御システムにより冷房運転が実行される。制御部66のECU68は、冷房用電磁弁36を開弁させると共に暖房用電磁弁50を閉弁させる。さらに、ECU68は、冷房用膨張弁44を動作させると共に暖房用膨張弁38を停止させる。これにより、電動コンプレッサ34からの冷媒が発熱体付き熱交換器14を経由することなく、また、暖房用膨張弁38の影響を受けることなく室外熱交換器40に到達する状態となる。また、室外熱交換器40からの冷媒が冷房用膨張弁44を通って第2室内熱交換器46へ案内される状態となる。
【0042】
このような状態において、電動コンプレッサ34が冷媒を圧縮して配管aに送り出すことにより、冷媒は、冷房用電磁弁36→暖房用膨張弁38→室外熱交換器40→内部熱交換器42→冷房用膨張弁44→第2室内熱交換器46→アキュムレータ48→室外熱交換器40→電動コンプレッサ34の順で循環する。
【0043】
また、ECU68は、通路30に設けられたエアミックスドアを閉じられた状態に制御する。これにより、通路30を流れる空気が第1室内熱交換器28を通過しないように車室へ誘導される。
【0044】
さらに、ECU68は、三方弁24へ制御信号を送り、配管Fと配管Gとが繋がり、配管Bと配管Gとが遮断された状態となるように三方弁24を切り替える。これにより、燃料電池の冷却装置の冷却液循環系と空調制御装置の冷媒循環系とが切り離された状態となる。
【0045】
このとき、室外熱交換器40において、室外空気と冷媒との熱交換により放熱が行われる。また、第2室内熱交換器46において、室内に送り出されるべき空気と冷媒との熱交換により、冷媒が空気から熱を奪って蒸発する。これによって、冷やされた空気が室内に送り出される。一方、冷却液は、循環ポンプ26→第1室内熱交換器28→発熱体付き熱交換器14→三方弁24→循環ポンプ26の順に、燃料電池10の冷却とは無関係の循環経路を流通する。
【0046】
なお、冷房時には、燃料電池10が連続運転であるか間欠運転であるかに関わらず、燃料電池の冷却装置によって冷却液通路へ冷却液を循環させられ、燃料電池10の冷却が行われる。また、燃料電池10が停止されている場合には、燃料電池10への燃料ガス(水素等)の供給及び酸化剤ガス(空気等)の供給を行うポンプと共に、循環ポンプ12が停止させられる。これによって、空調制御システム全体のエネルギー消費が抑制される。
【0047】
ステップS14では、燃料電池10の廃熱の大きさに応じて、燃料電池10の冷却装置と空調制御装置との接続が制御される。ECU68は、温度センサ20等により燃料電池10の温度が所定の温度TR以上であると判断される場合、三方弁24に制御信号を送信し、配管Bと配管Gとが繋がり、配管Fと配管Gとが遮断された状態となるように三方弁24を切り替える。このように、燃料電池10の運転状態に応じて、燃料電池10からの廃熱が大きいと判断される場合には、燃料電池の冷却液の循環経路と空調制御装置の冷媒循環経路とが熱的に接続される。
【0048】
一方、温度センサ20等により燃料電池10の温度が所定の温度TR未満であると判断される場合、三方弁24に制御信号を送信し、配管Fと配管Gとが繋がり、配管Bと配管Gとが遮断された状態となるように三方弁24を切り替える。このように、燃料電池10からの廃熱が小さいと判断される場合には、燃料電池の冷却液の循環経路と空調制御装置の冷媒循環経路とが熱的に遮断される。
【0049】
なお、本実施の形態では、温度センサ20により燃料電池10の温度を検出して処理するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、燃料電池10に温度センサを設置して、燃料電池10の温度を直接測定するものとしてもよい。
【0050】
ステップS16では、燃料電池10が連続運転状態であるか、間欠運転状態であるかが判定される。ECU68は、燃料電池10の必要出力に応じて、燃料電池10の運転状態を制御する。例えば、燃料電池10に要求される出力が燃料電池10の定格出力の10%以上であれば連続運転とし、10%未満になった場合に間欠運転状態とする。燃料電池10が連続運転状態であればステップS18へ処理を移行させ、燃料電池10が間欠運転状態であればステップS20へ処理を移行させる。
【0051】
ステップS18では、燃料電池10が連続運転されている際の暖房運転が実行される。制御部66のECU68は、冷房用電磁弁36を閉弁させると共に暖房用電磁弁50を開弁させる。さらに、ECU68は、冷房用膨張弁44を停止させると共に暖房用膨張弁38を動作させる。これにより、電動コンプレッサ34からの冷媒が発熱体付き熱交換器14を経由すると共に、暖房用膨張弁38の動作を受けて室外熱交換器40に到達する状態となる。また、室外熱交換器40からの冷媒が暖房用電磁弁50を通って、第2室内熱交換器46へ案内されることなくアキュムレータ48へ案内される。
【0052】
このような状態において、電動コンプレッサ34が冷媒を圧縮して配管aに送り出すことにより、冷媒は、熱交換器14→暖房用膨張弁38→室外熱交換器40→暖房用電磁弁50→アキュムレータ48→室外熱交換器40→電動コンプレッサ34の順で循環する。
【0053】
また、ECU68は、通路30に設けられたエアミックスドアを開いた状態に制御する。これにより、通路30を流れる空気が第1室内熱交換器28を通過した上で車室へ誘導される。
【0054】
燃料電池10の温度が所定の温度TR未満であった場合、燃料電池10の冷却液循環経路と第1室内熱交換器28の冷却液循環経路とは三方弁24によって熱的に遮断されている。燃料電池10の出口から出た冷却液はラジエータ16により冷却されて、循環ポンプ12によって再び燃料電池10へ戻される。一方、第1室内熱交換器28を流れる冷却液は、循環ポンプ26により第1室内熱交換器28、熱交換器14、三方弁24を通って循環ポンプ26に戻ってくる。
【0055】
燃料電池10の温度が所定の温度TR以上であった場合、燃料電池10の出口から出た冷却液の一部は、三方弁24、循環ポンプ26、第1室内熱交換器28、熱交換器14を通って循環ポンプ12により再び燃料電池10へ戻される。このとき、第1室内熱交換器28から、送風機32によって車室へ送り込まれる空気に燃料電池10からの排熱が伝達され、車室が暖気される。また、熱交換器14では、冷却液から空調制御装置を循環する冷媒に熱が伝達される。
【0056】
このとき、燃料電池10は連続運転中であるので、燃料電池10へ燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用ポンプ(図示しない)及び酸化剤ガス供給用ポンプ(図示しない)も連続運転されている。
【0057】
ステップS20では、燃料電池10が間欠運転されている際の暖房運転が実行される。暖房運転時の空調制御装置は、ほぼステップS18と同様である。
【0058】
燃料電池10の温度が所定の温度TR未満であった場合、燃料電池10の冷却液循環経路と第1室内熱交換器28の冷却液循環経路とは三方弁24によって熱的に遮断されている。燃料電池10の出口から出た冷却液はラジエータ16により冷却されて、循環ポンプ12によって再び燃料電池10へ戻される。一方、第1室内熱交換器28を流れる冷却液は、循環ポンプ26により第1室内熱交換器28、熱交換器14、三方弁24を通って循環ポンプ26に戻ってくる。
【0059】
燃料電池10の温度が所定の温度TR以上であった場合、燃料電池10の出口から出た冷却液の一部は、三方弁24、循環ポンプ26、第1室内熱交換器28、熱交換器14を通って循環ポンプ12により再び燃料電池10へ戻される。このとき、第1室内熱交換器28から、送風機32によって車室へ送り込まれる空気に燃料電池10からの排熱が伝達され、車室が暖気される。また、熱交換器14では、冷却液から空調制御装置を循環する冷媒に熱が伝達される。
【0060】
このとき、燃料電池10の間欠的な停止に合わせて、燃料電池10へ供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの少なくとも一方の供給が間欠的に停止される。すなわち、燃料電池10へ燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用ポンプ(図示しない)及び酸化剤ガス供給用ポンプ(図示しない)の少なくとも一方が間欠運転されている。
【0061】
一方、循環ポンプ12は、燃料電池10の間欠的な停止にも関わらず連続的に運転される。循環ポンプ12を連続的に運転させることによって、燃料電池10の停止時にも循環ポンプ12により第1室内熱交換器28へ冷却液を連続的に供給するができ、循環ポンプ26の負荷の負担を軽減させることができる。
【0062】
従来、燃料電池10の停止時には同時に停止させていた循環ポンプ12を燃料電池10の停止時にも動作させることによって、従来は燃料電池10の停止時には循環ポンプ26のみに負担させていた第1室内熱交換器28への冷却液の循環を循環ポンプ12にも負担させることができる。したがって、定格出力が小さい循環ポンプ26を設置するだけでよくなる。具体的には、循環ポンプ26の最大流量を循環ポンプ12の1/10未満とし、循環ポンプ26の定格出力を循環ポンプ12の定格出力の1/2未満にすることができる。
【0063】
このように、循環ポンプ26の定格出力を小さくすることで、燃料電池10を完全に停止させ、燃料電池10の冷却装置と空調制御装置とを熱的に切断した場合において、循環ポンプ26を動作させる際のシステム全体の消費電力を抑えることができる。
【0064】
一方、燃料電池10を間欠的に運転させ、燃料電池10の排熱を空調制御装置において利用できる場合では、循環ポンプ26の定格出力が小さくとも、燃料電池10の冷却装置の冷却液から空調制御装置の冷媒への充分な熱交換ができる程度に第1室内熱交換器28へ冷却液を循環させることができる。これにより、空調制御装置の電動コンプレッサ34の負担を低減させることができる。
【0065】
以上のように、暖房時に、燃料電池10の冷却装置の冷却液循環系と空調制御装置の冷媒循環系との間で熱交換可能とする。これによって、燃料電池10からの排熱を車室の空調の暖気に用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態における空調制御システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における空調制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 燃料電池、12 循環ポンプ(メイン循環ポンプ)、14 熱交換器、16 ラジエータ、18,24 三方弁、20 温度センサ、22 イオン交換器、26 循環ポンプ(サブ循環ポンプ)、28 第1室内熱交換器、30 通路、32 送風機、34 電動コンプレッサ(エアコンプレッサ)、36 冷房用電磁弁、38 暖房用膨張弁、40 室外熱交換器、42 内部熱交換器、44 冷房用膨張弁、46 第2室内熱交換器、48 アキュムレータ、50 暖房用電磁弁、52 冷却液側部、54 冷媒側部、60 蓄電池、62 電動機、64 駆動回路、66 制御部、70 蓄電池残存容量計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に冷却液をメイン循環ポンプにより循環させることによって当該燃料電池の冷却を行う冷却装置と、
車両の車室内の空調を制御する空調制御装置と、を含み、
前記冷却装置と前記空調制御装置との間において熱交換が可能である空調制御システムであって、
前記燃料電池を間欠運転する際に、前記メイン循環ポンプを動作させることを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空調制御システムにおいて、
前記燃料電池への燃料ガス及び酸化剤ガスの少なくとも1つの供給を停止した間、前記メイン循環ポンプを動作させることを特徴とする空調制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空調制御システムにおいて、
前記冷却装置と前記空調制御装置との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記冷却装置から前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、を切り替える三方弁と、
前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させるサブ循環ポンプと、を備え、
前記メイン循環ポンプの出力定格は、前記サブ循環ポンプの出力定格の2倍以上であることを特徴とする空調制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の空調制御システムにおいて、
前記冷却装置と前記空調制御装置との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記冷却装置から前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させる状態と、を切り替える三方弁と、
前記冷却装置とは独立に前記熱交換器へ冷却液を循環させるサブ循環ポンプと、を備え、
前記メイン循環ポンプの最大出力流量は、前記サブ循環ポンプの最大出力流量の10倍以上であることを特徴とする空調制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−94207(P2008−94207A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276841(P2006−276841)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】