説明

窒化物半導体基板

【課題】IF加工を省略しても目視にて表裏の判別が可能で、しかも端面部の加工歪を除去することが可能とする方法を提供する。
【解決手段】半導体素子が形成される面を表面11とし、表面11の反対側を裏面12とし、表面11及び裏面12に連接する面を端面13とする透明な窒化物半導体基板10において、端面13が表面11から裏面12にわたり傾斜しており、窒化物半導体基板10の表面11及び裏面12の中心を通る基板10の厚さ方向の断面において、表面11と端面13とのなす角度をθ1、裏面12と端面13とのなす角度をθ2とするとき、θ1>θ2であり、θ1とθ2との差が10°以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化物半導体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高寿命青色レーザーや高輝度青色LED、高特性電子デバイス向けに使用される窒化ガリウム単結晶基板として、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法等により成長された低転位の自立型窒化ガリウム単結晶基板が製造されている。本窒化ガリウム単結晶基板は、一般的に、両面ミラーで加工され、加工歪がない状態に加工すると透明な基板となる。したがって、半導体素子が形成される表面と、そうではない裏面とを判別する必要がある。従来、基板の表裏を判別するには種々の方法が採用されている。
【0003】
例えば、インデックスフラット(IF)を形成する方法がある。基板の表裏は、一般的に、結晶方位を示すオリエンテーションフラット(OF)だけでは判別できない。また、透明で見えにくい窒化ガリウム基板にあっては、基板の表面側と裏面側とを単に面取りするだけでは、面取り形状が傾斜角であったり円弧断面であったりしても、輪郭がくっきりと見えるようにはなるが、基板の表裏を判別することはできない。そこで、OFと異なる長さに加工したIFを基板外周部に形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基板の端面を片面だけ面取り加工する方法がある。基板の表裏面のうち表面側だけを面取りし、裏面側を面取りせずにそのまま残して表裏非対称に加工している(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、ノッチ部を面取りする方法がある。結晶方位を示すオリエンテーションフラット(OF)の代わりにノッチを形成する。ノッチだと表裏の判別がしづらいため、さらにノッチ部の表裏の面取り量を異ならせている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
なお、基板の表裏を判別するものではないが、ウェハの裏面を研削して薄化する際に、ウェハにかかるストレスを低減し、クラックやワレ不良を抑制する方法として、裏面側の面取り量を表面側よりも多くなるように面取り加工する方法(例えば、特許文献4参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−356398号公報( [0008]〜 [0009]、図6)
【特許文献2】特開昭58−71616号公報(第2頁、第12図、第13図)
【特許文献3】特開2000−331898号公報( [0010]、図1)
【特許文献4】特開2005−251961号公報( [0011]、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のようにIFをつけると、目視にて表裏の判別が可能となるものの、窒化ガリウム単結晶基板をはじめとする窒化物半導体基板が非常に高価な材料であり、基板面積が小さくなるため、取得できるチップ数が減少し、コスト高の要因となっていた。
また、特許文献2では、不透明な基板の場合には有効であるが、窒化物半導体基板のよ
うな透明な基板の場合、片面だけの面取り加工であると、表裏面の判別が必ずしも有効ではなかった。また、特許文献3のようにノッチ部に面取りを形成する方法では、SiやGaAsと異なり、窒化ガリウムのような硬い窒化物半導体基板の場合には、ノッチ自体の形成が困難であるため、その適用が困難であった。
【0009】
なお、特許文献4の技術を窒化物半導体基板に適用して、裏面側の面取量が多くなるように加工することも考えられるが、面取り加工時の加工歪みを取るために行われるドライエッチングでは、ガスが裏面まで回りこみにくく面取加工時に生じた加工歪が残り、残留応力により後工程でワレが生じやすくなるというおそれがあった。
【0010】
したがって、透明基板では、従来、表裏面を目視にて判別するには、IF加工がもっとも有効とされていた。
【0011】
本発明の目的は、IF加工を省略しても目視にて表裏の判別が可能で、しかも端面部の加工歪を除去することが可能な窒化物半導体基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主要な観点によれば、半導体素子が形成される面を表面とし、該表面の反対側を裏面とし、前記表面及び前記裏面に連接する面を端面とする透明な窒化物半導体基板において、前記端面が前記表面から前記裏面にわたり傾斜しており、前記窒化物半導体基板の前記表面及び裏面の中心を通る基板厚さ方向の断面において、前記表面と前記端面とのなす角度をθ1、前記裏面と前記端面とのなす角度をθ2とするとき、θ1>θ2であり、前記角度θ1と前記角度θ2との差が10°以上であることを特徴とする窒化物半導体基板が提供される。この場合において、前記端面の傾斜が直線状であったり、弧を持つ形状であったりすることが好ましい。また、前記角度θ1と前記角度θ2との差が60°以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、IF加工を省略しても目視にて表裏の判別ができ、しかも端面部の加工歪を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の窒化物半導体基板の表面と傾斜がなす角θ1が、裏面と傾斜のなす角θ2より大きい場合の基板中心を通る断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の窒化物半導体基板の断面形状に加工するために、傾斜を持つ砥石により加工する一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態の窒化物半導体基板と、端面の傾斜がθ1<θ2である窒化物半導体基板とを比較したドライエッチングの説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の窒化物半導体基板の断面形状に加工するために、基板中心厚さより、砥石中心軸を上方に位置させて加工する一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態の窒化物半導体基板の弧を持つ形状に加工された傾斜に対するθ1、θ2の定義を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の窒化物半導体基板の自立したGaN基板上に、AlxGa(1−x)N(1≧x>0)で表される層を含むLED構造のエピタキシャル成長層を積層したLED用エピタキシャルウェハの断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について述べる。
【0016】
図1に実施の形態の窒化物半導体基板の断面図を示す。窒化物半導体基板10は透明で
あり、半導体素子が形成される面を表面11とし、この表面11の反対側を裏面12とし、前記表面11及び前記裏面12に連接する外周面を端面13とする面を有する。表面11と裏面12とは相対向する一対の面をなす。このような窒化物半導体基板10は、端面13が表面11から裏面12にわたり傾斜している。かつ、窒化物半導体基板10の表面11及び裏面12の中心を通る基板厚さ方向の断面において、表面11と端面13の傾斜とのなす角度をθ1、裏面12の端面13の傾斜とのなす角度をθ2とするとき、θ1>θ2である形状に端面加工してある。
【0017】
ここで、端面13が表面11から裏面12にわたり傾斜しておりとは、表面11と裏面12とに直交する垂直面ないし削り残し面がなく、端面全面が加工されて傾斜しているということである。したがって、表面11側の縁端部のみが面取り加工され、裏面12側の縁端部が面取り加工されず端面に垂直面が残り、結果的にθ1>θ2を満たしているような片面加工のものは含まれない。
【0018】
端面13を表面11から裏面12にわたり傾斜させ、かつθ1>θ2で、θ1とθ2との差を10°以上とすることによって、IF加工を省略しても表裏を判別できることがわかった。なお、窒化物半導体は、例えば窒化ガリウムが一般的であるが、その他のAlNやAlGaNなどの六方晶系でも良い。
【0019】
本実施の形態において、表面11と傾斜面のなす角度θ1と裏面12と傾斜面のなす角度θ2との差が、60°以下であることが望ましい。角度θ1と角度θ2の差を10°以上60°以下した理由は、10°より小さくなると、目視にて傾斜方向の判別が難しくなり、また、60°より大きくなると、外周部の尖りが顕著になり始め、エピタキシャル成長時のクラックやワレなどの不良が発生し始めるためである。
【0020】
上記端面の形状の傾斜をまっすぐな直線とする実施態様の場合、端面加工は、図2に示すように、総形研削砥石15によって窒化物半導体基板10の表面11側縁端部から端面全面を研削することにより実施できる。
総形研削砥石15は、その回転軸16が、窒化物半導体基板10を吸着させて回転させる吸着ステージ17の回転軸と平行となるように設けられる。総形研削砥石15は、窒化物半導体基板10との当接面となる研削面(端面)18が、基板の端面傾斜形状と一致するような傾斜した直線となるような傾斜面を持つ砥石が使用される。この総形研削砥石15は高速回転させ、窒化物半導体基板10をその軸方向と直角に移動させて、総形研削砥石15の研削面18を窒化物半導体基板10の表面側端面の稜線に当接させる。窒化物半導体基板10は、ゆっくり回転させ、1回転の間で端面加工を完了させる。この際、クーラントノズル19からクーラント20を総形研削砥石15に向けて吐出させて、総形研削砥石15を冷却すると共に加工に伴って発生する研削熱及び切りくずを除去する。これによって、窒化物半導体基板10の端面13を傾斜直線状に加工することができる。
なお、窒化物半導体基板10にOFを形成する場合は、上記端面加工中、窒化物半導体基板10の回転位置がOFを形成したい位置に来たところで、窒化物半導体基板10が総形研削砥石15に更に近づくように窒化物半導体基板10の移動を開始させ(窒化物半導体基板10は常に一定速度でゆっくり回転している)、OF長さの半分を形成したところで、今度は逆に窒化物半導体基板10が総形研削砥石15から遠ざかるように窒化物半導体基板10の移動を開始させ、OFの形成が終了したところで、窒化物半導体基板10の移動を停止させることにより形成している。窒化物半導体基板10の移動停止後は、外周円弧部の端面加工が再開される。このように、窒化物半導体基板10が1回転する間にすなわち、1回のシーケンスで、外周円弧部の端面加工とOF形成およびOFの端面加工を実現することができる。
【0021】
なお、図2に示す加工方法の場合、加工したい傾斜角に対応した総形研削砥石15を用
意することにより、窒化物半導体基板10の端面13の傾斜角を自在に変更することができる。
【0022】
このように端面13が表面11から裏面12にわたり傾斜し、かつθ1>θ2とすることによって、1回のシーケンスで端面加工を行うことができる。窒化物半導体基板10の表面側と裏面側の両面を面取り加工するような従来例の場合、1回目のシーケンスで窒化物半導体基板の円形加工(外径加工ともいう)およびOF、IF加工を行い、2回目のシーケンスで円弧外周部およびOF、IFの表面(または裏面)側の面取り加工を行い、3回目のシーケンスで円弧外周部およびOF、IFの裏面(または表面)側の面取り加工を行うことになる。このため加工時間が非常に長くなり、装置能力が非常に低い。この点で、本実施の形態のように外周を削りながら端面を直線傾斜状に加工する方法だと、外径加工と同時に端面加工が1回のシーケンスで行えるので、加工時間を短縮化でき、加工装置能力も高めることができる。
【0023】
また、基板の面取り加工をすると研削量が増加するため砥石寿命も短くなり、コスト高の要因となっていたが、本実施の形態によれば、研削量が低減するため、そのようなことが改善できる。
【0024】
上述したように端面加工した窒化物半導体基板10は、通常、基板表面の加工歪みを除去すると共に、端面加工時に生じた加工歪みを除去するためにドライエッチングを行う。ドライエッチングの原理は、図3に示すように、高真空下のチャンバ20a内で、エッチングガス、例えば塩素系ガスをプラズマ化し、プラズマ化によりエッチングガスのイオン種21を発生する。発生したエッチングガスのイオン種21が、基板を置く陰極22に高周波電圧を印可することにより加速されて直線的に基板に衝突し化学反応が進み、基板表面がエッチングされる。このプラズマ化されたエッチングガスのイオン種21は、非常に直線性が高く、基板の裏面に回り込みにくい性質がある。
したがって、ドライエッチング時、窒化物半導体基板の端面の傾斜がθ1<θ2となるように加工した基板14の断面形状では、イオン種21が裏面まで効率よく回り込めない。このため、外径及び端面加工時に生じた端面の加工歪みが除去できず、後工程でワレやクラックが生じやすくなる。しかし、本実施の形態による端面が表面から裏面にわたり傾斜し、かつθ1>θ2である窒化物半導体基板10の形状だと、ガスが端面全面に確実に供給されるため、加工歪みが除去でき、後工程でワレやクラックの発生を有効に抑止できる。
【0025】
また、本発明を実施する場合、端面の傾斜はまっすぐな直線でなければならないというわけではなく、端面の傾斜が弧を持つ形状とすることもできる。この場合、端面加工は、図4に示すように円筒研削砥石28によって窒化物半導体基板10の表面側縁端部から端面を研削することにより実施できる。円筒研削砥石28は、その回転軸26が窒化物半導体基板10を吸着させて回転させる吸着ステージ17の回転軸と直交するように設けられる。また、回転軸26は、基板中心厚さの高さより上方に位置させている。円筒研削砥石28は基板回転方向に対し直交するように回転させる。円筒研削砥石28は、窒化物半導体基板10との当接面となる端面が、円筒面を持つ砥石が使用される。この円筒研削砥石28を回転させ、窒化物半導体基板10をその軸方向と直角に移動させて、円筒研削砥石28の研削面を窒化物半導体基板10の表面側端面の稜線に当接させる。この際、クーラントノズル19からクーラント20を砥石に向けて吐出させて、円筒研削砥石28を冷却すると共に加工に伴って発生する研削熱及び切りくずを除去する。これによって、窒化物半導体基板10の端面を弧を持つ傾斜形状に加工することができる。
なお、この方式でOFを形成する場合、上記端面加工を終えた後、窒化物半導体基板10の回転を停止させ、窒化物半導体基板10のOFを形成させたい部分が円筒研削砥石28に対向するように窒化物半導体基板10の位置決めを行い、円筒研削砥石28を回転さ
せると共に窒化物半導体基板10をその軸方向と直角に移動させて、円筒研削砥石28に当接させOFを形成する。このように2回のシーケンスで実現可能となる。
窒化物半導体基板の表面側と裏面側の両面を面取り加工するような従来例の場合は、例えば、1回目のシーケンスで、窒化物半導体基板の外径加工を行い、2回目のシーケンスで外周部の表面(または裏面)側の面取り加工を行い、3回目のシーケンスで外周部の裏面(または表面)側の面取り加工を行い、4回目のシーケンスでOF加工を行い、5回目のシーケンスでOF部の表面(または裏面)側の面取り加工を行い、6回目のシーケンスでOF部の裏面(または表面)側の面取り加工を行い、7回目のシーケンスでIF加工を行い、8回目のシーケンスでIF部の表面(または裏面)側の面取り加工を行い、9回目のシーケンスでIF部の裏面(または表面)側の面取り加工を行うことになる。
【0026】
図4に示す加工方法の場合、基板厚さの中心位置より、円筒研削砥石28の回転軸26をどのくらい上方、または下方の位置にて加工をするかを設定することにより、傾斜角を任意に変更できる。
【0027】
このように端面の傾斜を、弧を描く形状とする場合、一般に基板厚さdは、通常250〜450μmくらいであり、大きな弧とはならないが、直線の場合と違って、θ1、θ2の定義が問題になる。ここでは、図5に示すように、弧を描く形状とする場合、基板厚さdの中心を通る表裏面と平行な直線31と弧32との交点33における弧32の接線34が表面11となす角をθ1、裏面12とのなす角θ2と定義する。
【0028】
SiやGaAsの面取り加工に使用される砥石のボンド材はメタルが一般的であるが、GaNなどの窒化物半導体基板の場合は、SiやGaAsに比べ硬質材料であり、砥粒の目つぶれ、目詰まりが生じやすいため、一般的に自生発刃しやすいレジンやセラミック材を用いたボンド材が使用される。その際、砥石の形状が変形しやすいため、基板の面取り形状を簡易に維持できるメリットから、図2に示す総形研削砥石を用いた方式ではなく、図4に示す円筒研削砥石を基板回転方向に対し垂直に回転させトレースすることにより端面加工する方式を採用することが好ましい。
【0029】
このように基板外周を削りながら端面を傾斜状に加工する方法だと、外径加工と同時に傾斜形状が形成されるため面取り加工のシーケンスを動作させる必要が無いため、加工時間を大幅に短縮できる。
【0030】
本発明の実施の形態によれば、以下に挙げる一つ又はそれ以上の効果を有する。
(1)基板の端面を表面から裏面にわたり傾斜させ、かつθ1>θ2とすることによって、窒化物半導体の透明基板に対し、IF加工を省略しても目視にて表裏の判別ができる。(2)従来よりも端面加工のためのシーケンスを減らせるので、コスト高の一つの要因となっている面取り加工コストを低減できる。
(3)表裏面の面取り角度の関係をθ1>θ2とすることによって、ドライエッチング時、基板の端面全面をエッチングガスに晒すことができることにより、端面部の加工歪を有効に除去できる。その結果、エピタキシャル成長時のクラック、ワレ不良も生じない。
(4)外径加工及び端面加工が1回のシーケンスで済むことにより、外径加工時のスループットが向上するため、コストを低減できる。また、透明基板にてIFが不要となるため、IF加工に起因する砥石の劣化促進やチップ取得面積の減少が解消でき、チップ取得数が増え、コストを低減できる。
【実施例】
【0031】
次に実施例について説明する。
【0032】
(実施例1)
実施例1では、透明な窒化ガリウム基板を作製し、その表裏面の判別を行った。
C面を表面とするサファイヤ基板の上に、HVPE成長にて窒化ガリウムの厚膜基板を得た。厚膜基板の表面(Ga極性面)を平坦な面を持つセラミックプレートに裏面(N極性面)が加工面となるようにワックスを用いて貼り付けた。そして、ダイヤモンド砥粒砥石#325を用い基板の裏面を研削し平坦な面にした。次に溝加工を施した錫定盤にダイヤモンドスラリーを供給しながら、定盤と加圧したワークを回転し基板裏面の加工を行った。さらに汎用的な市販のコロイダルシリカのスラリーを用い基板裏面のポリッシュを行った。そして、セラミックプレートを加熱してワックスを液状にし、ワークを取り外し、有機洗浄を行った。
【0033】
次に、平坦な面を持つセラミックプレートに基板の表面(Ga極性面)が加工面となるようにワックスを用いて貼り付けた。そして、ダイヤモンド砥粒砥石#325を用い基板表面を研削し平坦な面にした。次に溝加工を施した錫定盤にダイヤモンドスラリーを供給ながら、定盤と加圧したワークを回転し基板表面の加工を行った。ダイヤモンド砥粒径を徐々に微細なものに変え、最終的に1μmダイヤ砥粒を用い基板表面を平坦な鏡面に仕上げた。さらに、セラミックプレートを加熱してワックスを液状にし、ワークを取り外し、有機洗浄を行った。そして、ドライエッチングをおこない、表面(Ga極性面)の加工歪を除去し、透明な厚さ300μmの窒化ガリウム基板を得た。
【0034】
次に、図4に示す加工方法で外周を削りながら端面を表面から裏面にわたり傾斜状に加工した。この方法だと、外径加工と同時に傾斜形状が形成され、面取り加工のシーケンスを動作させる必要が無いため、加工時間を大幅に短縮できた。基板中心を通るように基板を割り断面を顕微鏡で観察し、傾斜角を求めた。このような方法で、表1に示す種々の角度θ1、θ2を持つサンプルを用意した。次に、被験者を30人集め、サンプルを表裏教えずにどちらの方向に傾斜しているか判別実験を行った。その結果、端面が表面から裏面にわたり傾斜した端面の角度がθ1>θ2で、その傾斜の差が10°以上になると、目視判別を行った30人全員が正確に判別できるという結果となった。
【0035】
【表1】

【0036】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で得られた窒化ガリウム基板にさらにLED用エピタキシャル層を成長させ、その基板の外周部に生じるクラックやワレを調べた。
実施例1と同様な方法で、透明な厚さ300μmの窒化ガリウム基板を得た。次に、図4に示す加工方法で外周を削りながら傾斜状に加工した。基板中心を通るように基板を割り断面を顕微鏡で観察し、傾斜角を求めた。同様の方法で、表2に示すサンプルを各5枚ずつ用意した。各サンプルについてエッチング加工を行い、傾斜部の加工歪を除去した後、有機洗浄を行った。
【0037】
基板端面が表面から裏面にわたり傾斜しており、かつθ1>θ2である形状に加工されていることから、エッチングガスが十分供給されるため外周加工時に生じた加工歪は除去された。これらの基板上に、減圧MOVPE法を用いて、図6に示す構造のLED用エピタキシャル層を成長した。成長した層は、窒化ガリウム基板1側から順に、Siドープn型GaNバッファ層2、Siドープn型Al0.15GaNクラッド層3、3周期のInGaN−MQW層4、Mgドープp型Al0.15GaNクラッド層5、Mgドープp型Al0.10GaNクラッド層6及びMgドープp型GaNコンタクト層7である。
【0038】
その際、基板の外周部にクラックやワレが生じた枚数を調べた。その結果、θ1とθ2の差が60°までの基板は5枚中クラックやワレが生じなかったが、70°〜90°のサンプルは5枚中1、2枚クラックやワレ不良が発生した。
【0039】
【表2】

【符号の説明】
【0040】
10 窒化物半導体基板
11 表面
12 裏面
13 端面
15 総形研削砥石
17 吸着ステージ
21 イオン種

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成される面を表面とし、該表面の反対側を裏面とし、前記表面及び前記裏面に連接する面を端面とする透明な窒化物半導体基板において、
前記端面が前記表面から前記裏面にわたり傾斜しており、
前記窒化物半導体基板の前記表面及び裏面の中心を通る基板厚さ方向の断面において、
前記表面と前記端面とのなす角度をθ1、前記裏面と前記端面とのなす角度をθ2とするとき、θ1>θ2であり、前記角度θ1と前記角度θ2との差が10°以上であることを特徴とする窒化物半導体基板。
【請求項2】
前記端面の傾斜が直線状であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板。
【請求項3】
前記端面の傾斜が弧を持つ形状であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板。
【請求項4】
前記角度θ1と前記角度θ2との差が、60°以下である請求項1〜3のいずれかに記載の窒化物半導体基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−195598(P2010−195598A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38844(P2009−38844)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】