説明

粒状物等の光学判別装置及び粒状物等の光学式選別装置

【課題】粒状物等の判別精度を向上させた光学式判別装置(光学式選別装置)を提供することを技術的課題としたものである。
【解決手段】
粒状物等の光学式判別装置(又は光学式選別装置)における判別手段(FPGA)11は、しきい値領域K1を設定するにあたって、移送手段3によって移送した判別すべき原料サンプルから反射光及び/又は透過光を前記撮像部9a,9bで撮像し、該撮像データ9a,9bにおける任意の二波長の各濃度値を二次元グラフ上に描画し、該二次元グラフ上に描画した各濃度値画素b1の全てを対象に、このうちの異なる2点の画素b1を直径とする2点間円Nの中に当該2点の画素以外の画素b1があるか否かを判定し、該判定によって前記2点間円Nの中に当該2点の画素以外の画素b1が無い場合にのみ当該2点画素b1,b1を接続線Qで結び、これら各接続線Qの接合によって描画された閉領域K1を前記しきい値領域K1として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物(穀粒、豆類及び樹脂ペレット等)や着色ビン、海苔などの原料を光学検出して色彩等によって当該粒状物等を判別する光学的判別装置及び該光学的判別装置を用いた選別装置に係り、特に、光学検出した色彩等に基づいて粒状物等を判別する判別手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の粒状物等の光学的判別装置は、傾斜シュート等の移送手段から放出落下した穀粒の反射光・透過光(色彩)を光学検出手段によって検出し、検出した穀粒の色彩に基づいて選別すべき粒状物か否かを判別手段が判別し、判別した粒状物を選別手段によって選別するものとして知られている(例えば、特許文献1)。前記判別手段は、判別用の所定のしきい値を備え、該所定のしきい値と検出した穀粒の色彩とを比較して選別すべき粒状物を判別するものとなっている。
【0003】
ところで、前記粒状物の光学式選別機においては、前記判別手段で選別すべき粒状物を判別する際に、穀粒からの反射光・透過光を二つ以上の波長を用いて検出して行う場合があり、例えば、穀粒からの反射光・透過光を赤・緑・青のカラー光(RGB光)で検出して判別するケースがある。このケースにおいては、判別を行う際に、予め図9に示すような、RGB光における赤−緑、緑−青及び赤−青の各二次元グラフにおいて、予め取得した選別すべき粒状物サンプル(良品又は不良品のいずれか)の各濃度値Xを複数の区分け線W1,W2,W3,W4によって区分してしきい値領域Wが設定される。そして、該しきい値領域Wと検出光を順次対比して選別すべき穀粒が判別される。
【特許文献1】特開2003−205269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記光学式選別機における判別手段には、判別精度に関して以下の問題点がある。すなわち、上記判別手段は、前述のように各二次元グラフにおけるしきい値領域Wが複数の区分け線W1,W2,W3,W4によって囲まれて設定されているため、当該しきい値領域W内の隅部分に反対側に判別されるべき領域が含まれてしまう。このため、前記しきい値領域Wに基づいて判別すると、前記隅部分に該当する穀粒を誤判別して選別するという懸念があった。
そこで、本発明は上記問題点にかんがみ、判別精度を向上させた粒状物等の光学式判別装置(光学式選別装置)を提供することを技術的課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1により、
原料を移送する移送手段と、
該移送手段によって移送された原料に複数波長の光を照射する光源部と前記原料からの反射光及び/又は透過光を撮像する撮像部とを有する光学検出手段と、
該光学検出手段が撮像した撮像データにおける二波長の濃度値と予め定めた前記二波長の濃度値におけるしきい値領域とを比較して前記原料を判別する判別手段と、
を有する粒状物等の光学式判別装置において、
前記判別手段は、前記しきい値領域を設定するにあたって、前記移送手段によって移送した判別すべき原料サンプルから反射光及び/又は透過光を前記撮像部で撮像し、該撮像データにおける任意の二波長の各濃度値を二次元グラフ上に描画し、該二次元グラフ上に描画した各濃度値の画素b1の全てを対象に、このうちの異なる2点の画素b1を直径とする2点間円Nの中に当該2点の画素以外の画素b1があるか否かを判定し、該判定によって前記2点間円Nの中に当該2点の画素以外の画素b1が無い場合にのみ当該2点画素b1,b1を接続線Qで結び、これら各接続線Qの接合によって描画された閉領域K1を前記しきい値領域K1として設定する、という技術的手段を講じた。
【0006】
また、請求項2により、
前記判別手段は、前記しきい値領域K1を描画した二次元グラフにおいて、該二次元グラフの全ての画素を対象に、順次、該各画素を中心画素Tとする任意半径Yの円形画素領域Hを定め、該円形画素領域H内に前記しきい値領域K1があるか否かを判定し、該判定によって前記円形画素領域H内に前記しきい値領域K1がある場合にのみ、当該二次元グラフとは別の膨張二次元グラフにおける前記中心画素Tに該当する画素を前記しきい値領域K1の範囲に含める円形膨張処理を行って膨張しきい値領域K2を設定するようにするとよい。
【0007】
さらに、請求項3により、
前記判別手段は、前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2を描画した二次元グラフにおいて、該二次元グラフの全ての画素を対象に、順次、該各画素を中心画素Tとする任意半径Yの円形画素領域Hを定め、該円形画素領域H内に前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2の領域の画素以外の画素が重合しているか否かを判定し、該判定によって前記円形画素領域H内に前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2以外の画素が重合している場合にのみ、当該二次元グラフとは別の収縮二次元グラフにおける前記中心画素Tに該当する画素を前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2からキャンセルする円形収縮処理を行って収縮しきい値領域K3を設定するようにするとよい。
【0008】
また、請求項4により、
前記判別手段11に前記円形画素領域Hにおける任意半径Yを設定入力する判別感度調整部11aを接続するとよい。
【0009】
さらに、前記請求項1乃至請求項4のいずれかの粒状物等の光学式判別装置において、前記判別手段で判別した原料を選別する選別手段を設けて粒状物等の光学式選別装置としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粒状物等の光学式判別装置によれば、判別手段によって設定されるしきい値領域K1(基礎的しきい値K1:上記実施例では良品領域。)の外形は、他方側の判別領域(上記実施例では不良品領域。)を含めないように正確(シャープ)に特定されるので、当該しきい値領域によって原料を正確に判別することができ、また、前記判別に基づいて選別も正確になる。
【0011】
また、判別手段で感度調整された、円形膨張処理による膨張しきい値領域K2又は円形収縮処理による収縮しきい値領域K3は、前記円形膨張処理又は円形収縮処理の際に用いられる円形画素領域Hの任意半径Y分だけ全周にわたって均等に膨張又は収縮されるため、膨張しきい値領域K2又は収縮しきい値領域K3の全体形状が変化しない。このため、感度調整(膨張又は収縮)後においても原料を正確に判別でき、また、選別も正確である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1から図8を参照しながら説明する。図1は、本発明における粒状物等の光学判別装置を備えた選別装置(光学式選別装置)1の縦側断面図である。該光学式選別装置1は、上部に被判別原料(粒状物(穀粒、豆類及び樹脂ペレット等)(以下、「穀粒」という。))を移送する移送手段3を備える。該移送手段3は穀粒の原料供給タンク4と、該原料供給タンク4の下部に構成した振動供給部5と、該振動供給部5から供給された穀粒を流下させる傾斜シュート6と、を備えてなる。
【0013】
前記傾斜シュート6の下端部近傍には、該傾斜シュート6の下端部から放出される穀粒の落下軌跡Rを挟むように光学検出手段7,7を一対対向配設する(図1参照)。該光学検出手段7a,7bはそれぞれ、前記落下軌跡R上の光学検出位置Pに光を照射する光源部8a,8bと、前記光学検出位置Pからの光を受光するCCDカメラ(撮像部、受光部)9a,9bと、前記光学検出位置Pの背景色として前記CCDカメラ9a,9bがそれぞれ光学検出する背景板10a,10bと、を有してなる。前記光源部8a,8bは白色蛍光灯とし、また、前記CCDカメラ9a,9bは、光学検出位置Pの穀粒からの透過・反射カラー光と前記背景板10a,10bからの反射カラー光とを受光するカラーCCDラインセンサを内蔵する。該CCDラインセンサ(CCDカメラ9a,9b)は、前記光学検出位置Pにおける水平方向を順次走査するように構成してある。
【0014】
前記前記CCDカメラ9a,9bは信号処理部(判別手段)11に接続する(図1参照)。該信号処理部11は、前記CCDカメラ9a,9bが検出した検出光と予め設定したしきい値とを比較して穀粒を判別するものであり、例えば、FPGA(Fild Programble Gate Array)等によって構成する。また、前記信号処理部11は、後述する選別手段12における噴風駆動回路12に接続するとともに、後述するしきい値(しきい値領域)の判別感度を調整する判別感度調整部11aに接続する。該判別感度調整部11aは、後述のSTEP4(閉領域膨張図作成)の円形膨張処理を行う際に、またSTEP5(閉領域収縮図作成)の円形収縮処理を行う際に、円形画素領域(画素H)を求めるための半径画素数を任意に設定入力できるものとする。
【0015】
前記光学検出手段7,7の下方には、選別すべき穀粒を高圧エアーの噴風によって選別する選別手段12を配設する。該選別手段12は高圧エアーを噴風する複数の噴風ノズル12aと、該各噴風ノズル12aに対応して設けられた電磁弁12bと、該各電磁弁12bを駆動させる前記噴風駆動回路12cとを有してなる(図2参照)。前記複数の噴風ノズル12aのそれぞれは、前記落下軌跡Rに沿った光学検出位置Pの下流側の任意位置を噴風するように、当該任意位置と近接した位置に水平方向にわたって並設してある。
【0016】
前記落下軌跡Rに沿った前記選別手段12の下方には、選別されていない穀粒(例えば良品)を収容する製品収容部13を備え、また、該製品収容部13の外周には選別すべき穀粒(例えば不良品)を収容する選別粒収容部14を備える(図1参照)。
【0017】
次に、本発明の作用を説明する。
【0018】
前記信号処理部(判別手段)11である前記FPGAには、選別すべき穀粒を判別する前述のしきい値が設定されている。本発明は前記しきい値を設定する方法に特徴があり、以下、そのしきい値設定方法について、図3を参照しながら説明する。前記FPGAには、以下のSTEP1からSTEP5の処理の実行プログラムを内蔵させてある。
【0019】
STEP1(集合点図作成)
まず、任意量の良品の原料穀粒サンプル(不良品に換えてもよい。)を前記移送手段3から傾斜シュート6を介して前記光学検出位置Pを通過させ、各良品サンプルのRGB光を前記CCDカメラ9a,9bによって検出する。前記FPGAは前記CCDカメラ9a,9bが検出した各RGB光のデータ(撮像データ、受光データ)を取り込み、該各RGB光データにおける二波長、例えば赤(第一波長濃度)−緑(第二波長濃度)における各濃度値b1(各濃度値画素b1)を図3の(1)のような二次元グラフ(二次元画面)に点として表し、これらを集合点分布Bとして認識する。前記二次元グラフは、縦軸255画素×横軸255画素とし、かつ、縦軸・横軸に前記濃度値とした。
【0020】
STEP2(集合接線図作成)
続いて前記FPGAは、STEP1で作成した集合点図(集合点分布B)(図3の(1))を基に、集合接線図(図3の(2)−(A))を作成する。該集合接線図は、まず、STEP1と同様の縦軸255画素×横軸255画素からなる二次元グラフに前記集合点分布Bを描画する。この後、該二次元グラフに表示した集合点分布Bにおける全ての濃度値(点)を対象に、任意の2点を直径とする2点間円Nを求めて該2点間円Nの中に他の点がなければ図3の(2)−(B)−(a)のように、その2点間の画素を二値化の黒(点)で構成する接合線Qで結び、当該2点間円Nの中に他の点があれば図3の(2)−(B)−(b)のようにその2点間は前記接合線Qで結ばない集合接線化処理を行って作成する。
【0021】
STEP3(閉領域図作成)
次に、前記FPGAは、STEP2で作成した集合接線図(図3の(2)−(A))を基に、閉領域図(図3の(3))を作成する。該閉領域図は、前記集合接線図(図3の(2)−(A))に示された複数の接合線Qで結ばれてなる集合S(集合画素S)において、該集合画素Sの全画素を強制的に二値化の黒(点)にする閉領域化処理(穴埋処理)によって作成される。このようにして閉領域図(図3の(3))には閉領域画素集合K1が表示され、該閉領域画素集合K1は、前記しきい値領域K1(本実施例では良品の領域)(以下、「基礎的しきい値領域K1」という。)として設定される。
【0022】
なお、上記では、前記CCDカメラ9a,9bが検出した各RGB光のうちの赤(第一波長濃度)−緑(第二波長濃度)の二波長における基礎的しきい値領域K1(本実施例では良品の領域)を設定したが、この二波長とは別に、青(第一波長濃度)−赤(第二波長濃度)の二波長における基礎的しきい値や、緑(第一波長濃度)−青(第二波長濃度)の二波長における基礎的しきい値をそれぞれ同様に設定してもよい。
【0023】
本発明の特徴的作用効果(その1):
本発明の特徴的作用効果は、STEP2の前記集合接線化処理とSTEP3の閉領域化処理によって、前記基礎的しきい値領域K1(本実施例では良品の領域)の外形を他方側の領域(本実施例では不良品の領域)をより含めないように正確(シャープ)に特定でき、これによって原料をより正確に判別して選別できる点にある。
【0024】
選別運転:
このようにして設定された前記基礎的しきい値領域K1(本実施例では良品の領域)に基づき、選別運転は行われる。該選別運転は、まず原料が前記移送手段3及び傾斜シュート6を介して前記光学検出位置Pに順次移送流下される。そして、前記CCDカメラ9a,9bにより、前記光学検出位置Pを通過する各原料を順次撮像し、この撮像したRGB光データを前記判別手段(FPGA)11が前記基礎的しきい値領域K1と順次比較して選別すべき穀粒を判別するとともに、前記噴風駆動回路12cに選別信号を出力することにより、該当する電磁弁12bを駆動させて選別すべき穀粒が該当する噴風ノズル12aからの高圧エアー噴風によって選別除去されるという流れによって行われる。
【0025】
STEP4(閉領域膨張図作成)
ところで、前記基礎的しきい値領域K1は、必要に応じて当該STEP4により判別感度を膨張することができる。以下、その判別感度を膨張する方法を説明する。当該STEP4の処理は、前記判別感度調整部11aから前記判別手段(FPGA)11に、後述の円形画素領域(画素H)を求めるための任意の半径画素数が設定入力(本実施例では10画素Gとした。図4,図5参照)されることにより実行される。当該STEP4の処理は、後述する円形膨張処理により、STEP3で作成した基礎的しきい値領域K1(図3の(3))を膨張して膨張しきい値領域K2(図3の(4))にする。
【0026】
円形膨張処理:
前記円形膨張処理の説明を図3、図4、図5及び図6を参照しながら行う。前記円形膨張処理は、まず、前記基礎的しきい値領域K1を描画した縦軸255画素×横軸255画素の二次元グラフにおいて、該二次元グラフの全画素を対象に、図4に示すような任意の画素(中心画素T)を中心とした任意半径Y(図4の例では10画素Gとした。)の円形画素領域(画素H)を求め、該円形画素領域H内に前記基礎的しきい値領域K1の画素が検出されるか否かを判別する重合検出処理が行われる。該重合検出処理は、図5に示す二次元グラフ(縦軸255画素×横軸255画素)の左上の画素をまず前記中心画素Tとして求めた円形画素領域H内に前記基礎的しきい値領域K1の画素が検出されるか否かを判別し、この判別が終了すると右隣の画素を中心画素Tとして同様の判別を行い、二次元グラフの全画素について順次判別を行う(図5参照)。
【0027】
さらに、前記円形膨張処理の具体的処理内容について説明する(図5参照)。図5に示したように、二次元グラフにおける例えば(1)、(2)及び(3)の各円形画素領域Hに基づいた判別ケースでは、各円形画素領域H内に前記基礎的しきい値領域K1の画素が検出されないので、当該二次元グラフとは別の膨張二次元グラフ(図示せず。)の対応画素に二値化の白として描画する(なお、前記膨張二次元グラフには、前記基礎的しきい値領域K1は描画ずみ。)。
【0028】
一方、例えば、二次元グラフにおける(4)の判別ケースのように、円形画素領域H内に前記基礎的しきい値領域K1の画素k1が重合していることが判別されたときは、この判定結果を受けて、当該円形画素領域Hにおける中心画素Tを前記基礎的しきい値領域K1の領域の画素に含めるべく膨張二次元グラフ(図示せず。)の対応画素に二値化の黒(点)を描画する。該描画(中心画素Tの黒(点)の描画)が終了すると、次に、右隣の画素を中心画素Tとする円形画素領域H内に前記基礎的しきい値領域K1の画素k1が重合しているか否かを判別し、本実施例では重合しているので上記と同様に前記膨張二次元グラフに描画する。このようにして前記二次元グラフの全画素について順次判別を行なう円形膨張処理を行い、前記膨張二次元グラフ(閉領域膨張図)に膨張しきい値領域K2(図3の(4))を完成させる。
【0029】
また、図6に、前記円形膨張処理によって前記基礎的しきい値領域K1を膨張しきい値領域K2に膨張する大まかな流れを示す。図6−(1)が前記基礎的しきい値領域K1であり、図6−(2)における斜線部K1−1が前記円形膨張処理によって膨張された部分であり、また、図6−(3)が円形膨張処理を終えた前記膨張しきい値領域K2である。
【0030】
本発明の特徴的作用効果(その2):
本発明は、前記基礎的しきい値領域K1の感度調整(膨張)した場合でも、前記円形膨張処理(STEP4)によって前記基礎的しきい値領域K1が当該基礎的しきい値領域K1の外周から前記円形画素領域Hの任意半径Y分だけ均等に膨張(拡張)されるため、前記基礎的しきい値領域K1の外形(他方側の領域(本実施例では不良品の領域)をより含めないように特定した外形)の全体形状を変化しないので、感度調整(膨張)後においても原料を正確に判別して選別することができる。
【0031】
STEP5(閉領域収縮図作成)
一方、必要に応じて前記膨張しきい値領域K2を収縮する感度調整を当該STEP5によって行うことができる。以下、その感度調整(収縮)の方法を説明する。当該STEP5の処理は、前記判別感度調整部11aから前記判別手段(FPGA)11に、後述の円形画素領域(画素H)を求めるための任意の半径画素数が設定入力(本実施例では10画素Gとした。図4,図6参照)されることにより実行される。当該STEP5の処理は、後述する円形収縮処理により、STEP4で作成した膨張しきい値領域K2(図3の(4))又はSTEP3で作成した基礎的しきい値領域K1(図3の(3))を収縮して収縮しきい値領域K3(図3の(5))にする。
【0032】
円形収縮処理:
前記円形収縮処理の説明を図3、図4、図7及び図8を参照しながら行う。以下、前記膨張しきい値領域K2又は基礎的しきい値領域K1のうち、代表して前記膨張しきい値領域K2を収縮しきい値領域K3に円形収縮処理する例について説明する。前記円形収縮処理は、まず、前記膨張しきい値領域K2を描画した縦軸255画素×横軸255画素の二次元グラフにおいて、該二次元グラフの全画素を対象に、図4に示すような任意の画素(中心画素T)を中心とした任意半径Y(図4の例では10画素Gとした。)の円形画素領域(画素H)を求め、該円形画素領域H内に前記膨張しきい値領域K2の画素が検出されるか否かを判別する重合検出処理が行われる。該重合検出処理は、図7に示す二次元グラフ(縦軸255画素×横軸255画素)の左上の画素をまず前記中心画素Tとして求めた円形画素領域H内に前記膨張しきい値領域K2の画素が検出されるか否かを判別し、この判別が終了すると右隣の画素を中心画素Tとして同様の判別を行い、二次元グラフの全画素について順次判別を行う(図7参照)。
【0033】
さらに、前記円形収縮処理の具体的処理内容について説明する(図7参照)。図7に示したように、二次元グラフにおける例えば(1)、(2)及び(3)の各円形画素領域Hに基づいた判別ケースでは、各円形画素領域H内に前記膨張しきい値領域K2の画素が検出されないので、当該二次元グラフとは別の収縮二次元グラフ(図示せず。)の対応画素に二値化の白として描画する(なお、前記収縮二次元グラフには、前記膨張しきい値領域K2は描画ずみ。)。
【0034】
一方、例えば、二次元グラフにおける(4)の判別ケースのように、円形画素領域H内に前記膨張しきい値領域K2の領域の画素以外の画素k2が重合していることが判別されたときは、この判定結果を受けて、当該円形画素領域Hにおける中心画素Tを前記膨張しきい値領域K2の領域の画素から除外(キャンセル)するべく前記収縮二次元グラフ(図示せず。)の対応画素に二値化の白を描画する。該描画(中心画素Tの白の描画)が終了すると、次に、右隣の画素を中心画素Tとする円形画素領域H内に前記膨張しきい値領域K2の領域の画素でない画素k2が重合しているか否かを判別し、本実施例では重合しているので上記と同様に前記収縮二次元グラフに描画する。このようにして前記二次元グラフの全画素について順次判別を行なう円形収縮処理を行い、前記収縮二次元グラフ(閉領域収縮図)に収縮しきい値領域K3(図3の(5))を完成させる。
【0035】
また、図8に、前記円形収縮処理によって前記膨張しきい値領域K2を収縮しきい値領域K3に収縮する大まかな流れを示す。図8−(1)が前記膨張しきい値領域K2であり、図8−(2)における斜線部K2−1が前記円形収縮処理によって収縮された部分であり、また、図8−(3)が円形収縮処理を終えた前記収縮膨張しきい値K3である。
【0036】
なお、本発明はSTEP5の円形収縮処理(閉領域収縮図作成)によっても、STEP4と同様に、前記膨張しきい値領域K2が当該膨張しきい値領域K2の外周から前記円形画素領域Hの任意半径Y分だけ均等に収縮されるため、前記膨張しきい値領域K2の外形の全体形状を変化させないで感度調整(収縮)が行われる。このため、該感度調整(膨張)後においても原料を正確に判別して選別することができる。
【0037】
ところで、本発明の実施の形態は上記光学式選別装置1だけに限られるものではなく、二波長の検出光に基づいて判別用のしきい値を設定し、該しきい値によって原料を光学的に判別する判別手段を備えた検査装置や選別装置であればよい。したがって、例えば、本出願人によって開示された穀粒の外観品質(品位)を光学的に判別するいわゆる穀粒判別器(例えば、特開2002−202265号公報などに開示)においても本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明における粒状物等の光学式判別装置を示す縦側断面図。
【図2】同粒状物等の光学式判別装置における判別手段の周辺のブロック図。
【図3】判別手段によるしきい値設定方法のフロー図。
【図4】しきい値設定方法において用いられる円形画素領域Hを示した概念図。
【図5】判別手段による円形膨張処理の処理概要図。
【図6】円形膨張処理によって基礎的しきい値領域K1を膨張しきい値領域K2に膨張させた概要図。
【図7】判別手段による円形収縮処理の処理概要図。
【図8】円形収縮処理によって膨張しきい値領域K2を収縮しきい値領域K3に収縮させた概要図。
【図9】従来のしきい値領域Wを示した二次元グラフ。
【符号の説明】
【0039】
1 光学式選別装置
3 移送手段
4 原料供給タンク
5 振動供給部
6 傾斜シュート
7a 光学検出手段
7b 光学検出手段
8a 光源部
8b 光源部
9a CCDカメラ(撮像部)
9b CCDカメラ(撮像部)
10a 光学検出手段
10b 光学検出手段
11 判別手段(信号処理部、FPGA)
11a 判別感度調整部
12 選別手段
12a 噴風ノズル
12b 電磁弁
12c 噴風駆動回路
13 製品収容部
14 選別粒収容部
B 集合店分布
b1 濃度値(濃度値画素)
G 画素
H 円形画素領域
R 落下軌跡
K1 基礎的しきい値領域(閉領域画素集合)
K1−1 斜線部
K2 膨張しきい値領域
K2−1 斜線部
K3 収縮しきい値領域
N 2点間円
P 光学検出位置
Q 接合線
S 集合画素
T 中心画素
W しきい値領域
W1 区分け線
W2 区分け線
W3 区分け線
W4 区分け線
X 濃度値
Y 任意半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を移送する移送手段と、
該移送手段によって移送された原料に複数波長の光を照射する光源部と前記原料からの反射光及び/又は透過光を撮像する撮像部とを有する光学検出手段と、
該光学検出手段が撮像した撮像データにおける二波長の濃度値と予め定めた前記二波長の濃度値におけるしきい値領域とを比較して前記原料を判別する判別手段と、
を有する粒状物等の光学式判別装置において、
前記判別手段は、前記しきい値領域を設定するにあたって、前記移送手段によって移送した判別すべき原料サンプルから反射光及び/又は透過光を前記撮像部で撮像し、該撮像データにおける任意の二波長の各濃度値を二次元グラフ上に描画し、該二次元グラフ上に描画した各濃度値の画素b1の全てを対象に、このうちの異なる2点の画素b1を直径とする2点間円Nの中に当該2点の画素以外の画素b1があるか否かを判定し、該判定によって前記2点間円Nの中に当該2点の画素以外の画素b1が無い場合にのみ当該2点画素b1,b1を接続線Qで結び、これら各接続線Qの接合によって描画された閉領域K1を前記しきい値領域K1として設定することを特徴とする粒状物等の光学式判別装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記しきい値領域K1を描画した二次元グラフにおいて、該二次元グラフの全ての画素を対象に、順次、該各画素を中心画素Tとする任意半径Yの円形画素領域Hを定め、該円形画素領域H内に前記しきい値領域K1があるか否かを判定し、該判定によって前記円形画素領域H内に前記しきい値領域K1がある場合にのみ、当該二次元グラフとは別の膨張二次元グラフにおける前記中心画素Tに該当する画素を前記しきい値領域K1の範囲に含める円形膨張処理を行って膨張しきい値領域K2を設定する請求項1に記載の粒状物等の光学式判別装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2を描画した二次元グラフにおいて、該二次元グラフの全ての画素を対象に、順次、該各画素を中心画素Tとする任意半径Yの円形画素領域Hを定め、該円形画素領域H内に前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2の領域の画素以外の画素が重合しているか否かを判定し、該判定によって前記円形画素領域H内に前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2以外の画素が重合している場合にのみ、当該二次元グラフとは別の収縮二次元グラフにおける前記中心画素Tに該当する画素を前記しきい値領域K1又は膨張しきい値領域K2からキャンセルする円形収縮処理を行って収縮しきい値領域K3を設定する請求項1又は請求項2に記載の粒状物等の光学式判別装置。
【請求項4】
前記判別手段11に前記円形画素領域Hにおける任意半径Yを設定入力する判別感度調整部11aを接続した請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の粒状物等の光学式判別装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の粒状物等の光学式判別装置において、前記判別手段で判別した原料を選別する選別手段を有してなる粒状物等の光学式選別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−119410(P2009−119410A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298351(P2007−298351)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】