説明

素子の機能部を露出させた半導体装置の製造方法

【課題】不要な廃棄物を低減させ、半導体装置の信頼性を向上させ、および生産性を向上させることができる半導体装置の製造方法を提供。
【解決手段】機能部(受光部120)を有するウエハ上の受光部120、または受光部120の周囲に第1樹脂部(第1樹脂膜)を形成する工程と、ウエハを分割して、基材(リードフレーム180)の上面に搭載する工程と、第1樹脂膜の上面およびリードフレーム180の下面のそれぞれに封止用金型を圧接し、第1樹脂膜の周囲の空隙部分に第2樹脂(封止樹脂)を注入して、第1樹脂膜の周囲に第2樹脂層(封止樹脂層200)を形成する封止工程と、第1樹脂膜を除去し、受光素子100の一部を外部に露出させる工程を含み、封止工程において、第1樹脂膜の上面が、封止樹脂層200の上面と同一平面となるか、または第1樹脂膜の上面が、封止樹脂層200の上面より高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子の機能部を露出させた半導体装置の製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展に伴い、素子の機能部を露出させた半導体装置が実用化されている。これは、光信号を電気信号に変換させる素子においては、半導体装置の外部から入力する光信号を直接光素子の受光部に入力するような半導体装置において、光信号の減衰を抑制すること、また、黒色樹脂を使用することにより半導体装置の耐湿性を向上させ鉛フリー実装時のリフロー条件に適合させること、等の要請があるためである。
【0003】
特に、光信号に青色光を使用する光記録技術において、その光信号を電気信号に変化する受光装置に使用しているエポキシ樹脂が青色光により劣化し光透過特性が悪くなり使用できなくなるという点で、光路上からエポキシ樹脂を排除した前述の機能部を露出させた半導体装置が必要となる。
【0004】
また、このような構造の半導体装置は、MEMS(Micro Electro−Mechanical systems)、電機音響フィルター等の機能素子中に可動部があり、この可動部分を樹脂封止出来ない装置や、カメラ用の固体撮像素子にも応用が期待できる。
【0005】
図7および図8は、特許文献1および2に記載された、光路上からのエポキシ樹脂を排除した前述の機能部を露出させた撮像用半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0006】
特許文献1では、図7(a)に示すように、複数の半導体素子5が搭載された半導体ウエハ1の機能部上に、フォトレジストを塗布し、露光、現像およびエッチングによりレジスト保護膜2を形成し、ダイシングにより半導体素子5を取り出す。次に図7(b)、(c)に示すように、回路基板6にレジスト保護膜2が形成された半導体素子5を搭載し、ワイヤ7によって半導体素子5と回路基板6を電気的に接続する。次に図7(d)に示すように樹脂封止により半導体素子5、ワイヤ7および保護膜2を樹脂8で覆う。なお保護膜2の上面も樹脂8で覆われる。
【0007】
その後、図7(e)に示すように、樹脂を研磨し保護膜2を露出させる。露出した保護膜2を、エッチングにより除去し、半導体素子5の機能部を露出させる。
【0008】
その後、図7(f)に示すように、機能部の保護のためカバーガラス(カバー用テープ)11を搭載し、半導体素子ごとに個片切断を行い、撮像用半導体装置が完成する。
【0009】
特許文献2では、図8(a)に示すように、基材30の所望の位置に固体撮像素子10を個別に接合し、図8(b)に示すように個片に形成された柔軟性を有する保護膜36を固体撮像素子10の露光面の受光領域に個別に被覆する。
【0010】
次に、図8(c)に示すように基材30と固体撮像素子10を金属線40で電気的に接続する。続いて、図8(d)に示すように、平坦な狭圧面を有する金型により、保護膜36を被着した固体撮像素子10を基材30とともに金型により狭圧し、金型の狭圧面と保護膜36および隣接する固体撮像素子10によって囲まれた空隙部分に封止材42を充填する。
【0011】
次に、図8(e)に示すように、樹脂成形した後に保護膜36を除去し、さらに図8(f)に示すように、封止材42を介して各固体撮像素子10の露出する受光面を覆うように、基材30の全面にわたって透光板46を接着し、隣接する固体撮像素子10間に沿って個片の半導体装置が完成する。
【特許文献1】特開2006−237051号公報
【特許文献2】特開2003−332542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示された工法を適用させる場合、いくつかの問題がある。
下に述べる問題の原因はいずれも、レジスト保護膜2を除去する前に、保護膜2の上面が樹脂8で覆われているため、樹脂8を研磨する工程が必要となる事に起因する。保護膜2の上面を樹脂8で覆わなければならない原因としては、保護膜2はフォトレジストを使用しており、0.1mm以上の膜厚を塗布により形成すると膜厚のばらつきが大きく、樹脂封止の際に、封止金型で保護膜2を均一にクランプすることができず、保護膜2の上面も樹脂8で覆う必要があるため、と考えられる。以下にこの問題点を列挙する。
【0013】
第1の問題点は、この樹脂8を研磨する工程が必要となり、生産性が悪いということである。
【0014】
この研磨工程を追加することで、製造に掛かる工程数が増え、このため製造期間の増大を招く。特に、研磨工程においては、その準備作業として研磨する半導体装置を支持体に張付ける作業、また、後処理作業において研磨して薄くなった半導体装置を支持体から剥す作業も加わり、研磨作業の他にも作業が付加される。このため、製造期間の長期化への影響は大きい。
【0015】
第2の問題点は、半導体装置の品質低下である。
前述の樹脂研磨工程で樹脂8を研磨する際に、その研磨による振動で、配線の切断や、ひどい場合には半導体素子を破壊し、半導体装置の品質を落とすことにもつながる。
【0016】
次に、特許文献2に開示された工法において、以下の理由によりコストが高いという問題がある。
特許文献2には、保護膜36は、固体撮像素子10に個別に被着される。保護膜36は柔軟性を有した個片のものであり、固体撮像素子10は既に基材30に所望の位置精度で搭載されていることが記載されている。
そのため、個片の保護膜36は、基材に搭載された固体撮像素子の個々に、精度良く被着する必要があった。
【0017】
柔軟性を有する個片の保護膜36を基材30に搭載された固体撮像素子10の受光領域に精度よく被着させるためには、例えばカメラなどの認識を用いて、保護膜36および固体撮像素子10の両方の位置を検出し、個別に制御をして被着する必要がある。つまり、保護膜36を被着させる設備が高額なものとなり、また被着には各々の認識が必要となり、被着にはある程度の時間を要し、製造TATは長くなってしまう。
【0018】
前述のように、特許文献2では、保護膜の被着工程には、高額な設備と被着時間が必要となり、生産性および製造コストが高くなることが容易に想像できる。前記設備および時間を要さない場合には、保護膜36の位置精度が悪くなり、品質歩留りが悪く、ロスコストが多くなる。
【0019】
また、保護膜36は予め個片で供給されるため、保護膜自体のコストも高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、機能部を有するウエハ上に第1樹脂層を形成する工程と、
前記第1樹脂層を所定の形状にパターニングし、前記機能部、または前記機能部の周囲に第1樹脂部を形成する工程と、
前記ウエハを分割して、素子に個片化する工程と、
前記素子を基材の上面に搭載する工程と、
前記第1樹脂部の上面および前記基材の下面のそれぞれに封止用金型の成型面を圧接し、前記封止用金型の前記成型面に囲まれた空隙部分のうち、前記第1樹脂部の周囲の前記空隙部分に第2樹脂を注入して、前記第1樹脂部の周囲に第2樹脂層を形成する封止工程と、
前記第1樹脂部を除去し、前記素子の一部を外部に露出させる工程を含み、
前記封止工程において、前記第1樹脂部の上面が、前記第2樹脂層の上面と同一平面となるか、または前記第1樹脂部の上面が、前記第2樹脂層の上面より高くなることを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0021】
素子を基材の上面に搭載する前に、機能部を有するウエハ上の第1樹脂層をパターニングするので、機能部、または前記機能部の周囲に第1樹脂部を一括して形成できる。
第2樹脂層を形成する封止工程において、前記第1樹脂部の上面および前記基材の下面のそれぞれに封止用金型の成型面を圧接し、前記封止用金型の前記成型面に囲まれた空隙部分のうち、前記第1樹脂部の周囲の前記空隙部分に第2樹脂を注入して、前記第1樹脂部の周囲に第2樹脂層を形成するため、前記第1樹脂部を研磨する工程が必要ない。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、不要な廃棄物を低減させ、半導体装置の信頼性、および生産性を向上させることができる半導体装置の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。第一の実施形態の半導体装置の製造方法について図2から4を参照として説明する。
【0024】
第一の実施形態の半導体装置220の製造方法は、機能部(受光部120)を有するウエハ110上に第1樹脂層130を形成する工程と、第1樹脂層130を所定の形状にパターニングし、受光部120、または受光部120の周囲に第1樹脂部(第1樹脂膜140)を形成する工程と、ウエハ110を分割して、素子(受光素子100)に個片化する工程と、受光素子100を基材(リードフレーム180)の上面に搭載する工程と、第1樹脂膜140の上面およびリードフレーム180の下面のそれぞれに封止用金型の成型面を圧接し、封止用金型の成型面に囲まれた空隙部分のうち、第1樹脂膜140の周囲の空隙部分に第2樹脂(封止樹脂)を注入して、第1樹脂膜140の周囲に第2樹脂層(封止樹脂層200)を形成する封止工程と、第1樹脂膜140を除去し、受光素子100の一部を外部に露出させる工程を含み、封止工程において、第1樹脂膜140の上面が、封止樹脂層200の上面と同一平面となるか、または第1樹脂膜140の上面が、封止樹脂層200の上面より高くなることを特徴とする。
【0025】
第1樹脂層130が膜状の場合には、第一の実施形態の半導体装置220の製造方法は、第1樹脂膜140を形成する工程が、ウエハ110上に第1樹脂層130を膜状に形成する工程と、膜状の第1樹脂層130を所定の形状にパターニングし、受光部120、または受光部120の周囲に第1樹脂膜140を形成する工程とを含んでもよい。
【0026】
〔工程1〕 受光素子の受光部への第1樹脂膜の形成
まず、図2(a)に示すように、複数の受光素子が形成されたウエハ110を準備する。このウエハ110に配置されたそれぞれの受光素子の表面には、受光部120が露出している。ウエハ110に配置された受光素子は、単数または複数でもよい。図2(a)では、ウエハ110に配置された複数の受光素子のうち、2つを示している。
【0027】
次に、図2(b)に示すように、ウエハ110上に、第1樹脂層130を形成する。第1樹脂層130は、均一な厚みを有するフィルムであることが好ましい。
これにより、ウエハ110上に、0.05mm以上の均一な厚みを有する第1樹脂層130を形成することができる。
【0028】
また、第1樹脂層130は、ウエハ110上に、ほぼ均一な厚みを有する第1樹脂の層が形成されていればよく、さらに単層または多層でもよい。第1樹脂層130の形状は、特に限定されない。
【0029】
ここで、第1樹脂層130として液状の樹脂を用いた場合、ウエハ110全体に均一な膜厚とするためには低粘度樹脂を用いることになり、その低粘度のために0.05mm以上の厚みを得ることが困難である。
【0030】
一方、液状の樹脂を用いてウエハ110全体に0.05mm以上の膜厚みを形成しようとすると、高粘度樹脂を用いることとなり、その高粘度のためにウエハ上への塗布時に粘性抵抗が高く、高さのバラツキが大きくなり、均一な膜を得ることが困難である。
【0031】
したがって、フィルム加工終了時点で第1樹脂層130の厚さが計測され、その厚みが保証された膜状の第1樹脂層130を用いることが好ましい。これにより、0.05mm以上の均一な第1樹脂層130を得ることができる。
第1樹脂層130として用いるフィルムは、液状の第1樹脂を塗工し、乾燥させることで得ることができる。
【0032】
本実施形態において、第1樹脂層130はウエハ110全体を被覆する。ここで、第1樹脂層130の厚さは、0.1mm以上が好ましい。さらに、第1樹脂層130の厚さは、0.15mm以下とすることが好ましい。
さらに膜厚0.12mmのフィルムを用いることで、膜厚が0.12mmの第1樹脂層130が得られる。
【0033】
続いて、図2(c)に示すように、受光部120が露光用マスク170の上面に形成された所定の位置に収まるように位置合せをして、露光を行い、第1樹脂膜140を形成するように第1樹脂層130をパターニングする。
【0034】
さらに、図2(d)に示すように、現像処理を行い、第1樹脂膜140以外の第1樹脂層130を除去し、受光部120を被覆した第1樹脂膜140が形成される。
上記第1樹脂膜140は、受光部120、または受光部120の周囲に上に形成されてもよく、さらに第1樹脂膜140は、少なくとも受光部120全体を覆うように形成されもよい。
【0035】
このように、第1樹脂膜140は、フォトリソグラフィ工法を用いて形成することができるがその他の方法を用いてもよい。このフォトリソグラフィ工法を用いられる第1樹脂としては、下述する光硬化性樹脂などを用いることができる。フォトリソグラフィ工法において、マスクの開口比、露光量、現像液濃度、現像液温度あるいは現像時間は適宜調整できる。
【0036】
なお、この現像処理後の時点では、第1樹脂膜140は完全に硬化していないため、第1樹脂膜140とウエハ110、すなわち第1樹脂膜140と受光素子100とは、弱い接合力で接着しているが、強固に接着はしていないと考えられる。
【0037】
続いて、第1樹脂膜140が形成されたウエハ110を熱処理することで、第1樹脂膜140を完全硬化させ、第1樹脂膜140とウエハ110、すなわち第1樹脂膜140と受光素子100の間を強固に接着させることができる。
【0038】
上記第1樹脂の硬化後の弾性率は、上限値が20℃で6GPa以下、かつ200℃で3GPa以下が好ましい。さらに、下限値が20℃で1GPa以上、かつ200℃で10MPa以上が好ましい。本実施形態では、第1樹脂層130に用いられる第1樹脂の弾性率は、常温で約2.4GPa、200℃で約15MPaに調整されている。
上記弾性率は、動的粘弾性測定法により評価して得られた。
【0039】
第1樹脂の弾性率は、光、熱、および光と熱の併用で硬化可能な樹脂の種類や、硬化剤など含有物の組成比の変更、または硬化光量や硬化温度などの製造条件を適宜設定すること等により、適宜調整できる。上記光、熱、および光と熱の併用で硬化可能な樹脂として、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および光熱硬化性樹脂から選択される樹脂が挙げられる。本実施形態の第1樹脂は、これらの樹脂を含んでもよい。光硬化性樹脂は、光化学反応により硬化する樹脂であればよく、光としては、可視光および紫外線などが含まれてもよい。また、光熱硬化性樹脂は熱硬化性樹および光硬化性樹脂を混合しているものであればよい。
【0040】
上記樹脂の具体例は、アクリル系樹脂などの光硬化性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリル系樹脂およびエポキシ樹脂などを含む光熱硬化性樹脂がある。
【0041】
次いで、図2(e)に示すように、ウエハ110を分割して、受光素子100に個片化することで、ウエハ110から個々の受光素子100を切り出して、受光部120、または受光部120の周囲に第1樹脂膜140を有する受光素子100を得る。
【0042】
図1(a)、および図1(b)に示すように、第1樹脂膜140は、円柱状に形成されている。ここで、第1樹脂膜140の形状は円柱状だけでなく、受光部120の形状により楕円、あるいは四角形などの柱状に形成することもできる。
【0043】
〔工程2〕 分割された受光素子のリードフレームへの実装とワイヤボンディング
図3(a)に示すように、受光素子100をリードフレーム180上の所定の位置に接着剤を介して接着される。続いて、受光素子100とリードフレーム180のそれぞれの所定の位置を、金属細線190を介して、電気的に接続させる。なお、このリードフレーム180上には、所定の距離を保ちながら密集させて受光素子100が配置されている。
【0044】
〔工程3〕 樹脂封止による封止樹脂層の形成
図3(b)に示すように、第1樹脂膜140の周囲を第2樹脂で受光素子100、金属細線190およびリードフレーム180全体を被覆する封止樹脂層200を形成する。封止樹脂層200に用いられる第2樹脂は、ガラスフィラーなどを含む樹脂でもよい。以下、図3および4を用いて、封止工程の詳細を説明する。
【0045】
図4(a)に示すように、平坦な面を成型面とする封止用金型の上型と下型230,240を用意し、図3(a)に示されたリードフレーム180上の受光素子100を、封止用金型230,240の所定の位置に固定する。
【0046】
続いて、図4(b)に示すように、第1樹脂膜140の上面に封止用金型の上型230の成型面を、リードフレーム180の下面に封止用金型の下型240の成型面を、それぞれ圧接する。すなわち、第1樹脂膜140の上面と封止用金型の上型230の成型面とのすき間、およびリードフレーム180の下面と封止用金型の下型240の成型面とのすき間を最小限におさえ、両者をそれぞれ密着する。
また、リードフレーム180の下面に封止用金型の下型240の成型面との間にフィルムを挟んで圧接してもよい。
【0047】
次いで、図4(c)に示すように、圧接された状態のまま、熱によって溶融した第2樹脂(封止樹脂)を、封止用金型230,240のそれぞれの成型面に囲まれた空隙部分に注入し、第1樹脂膜140の周囲を埋める封止樹脂層200を形成する。
【0048】
この時、第1樹脂膜140の上面と封止用金型の上型230の成型面との間は挟圧による外力で強固に密着され、かつ受光素子100と第1樹脂膜140の間は前述の通り強く接着されている。
【0049】
このとき、第1樹脂膜140は弾性率が20℃で6GPa以下、かつ200℃で3GPa以下から20℃で1GPa以上、かつ200℃で10MPa以上の範囲の弾性率であれば、封止用金型の上型230による挟圧により第1樹脂膜140が弾性変形し、この挟圧による外力を吸収して受光素子100を保護することが出来る。
【0050】
さらに、この弾性変形により第1樹脂膜140を封止用金型の上型230に密着させる反力が生じることが出来る。これにより、第1樹脂膜140と封止用金型の上型230の接着面に封止樹脂が流れ込むのを防ぐことができる。
【0051】
上述した第1樹脂膜140の弾性変形による第1樹脂膜140と封止用金型の上型230の密着力を増すために、第1樹脂膜140の上面の高さが封止樹脂層200上面のよりも0mm以上から0.05mm以下の範囲で高くすることができる。
【0052】
ここで、第1樹脂膜140の上面が封止樹脂層200の上面より0.05mmより高い場合には、封止用金型230の挟圧による外力が強まり、第1樹脂膜140の変形が塑性変形に至り、破断する事がある。一方、第1樹脂膜140の上面が封止樹脂層200の上面より低い場合、すなわち第1樹脂膜140の上面の高さが、封止樹脂層200の上面の高さ未満であれば、封止樹脂が第1樹脂膜140の表面すなわち第1樹脂膜140と封止用金型の上型230の密着面に流入することは明らかである。
【0053】
次いで、封止用金型230,240を取り外して、図3(b)に示すような第1樹脂膜140の上面が封止樹脂層200の上面よりわずかに突き出て形成された受光素子100を得ることができる。これにより、リードフレーム180上の密集した受光素子100が一括して封止される。
【0054】
〔工程4〕 第1樹脂膜の除去(受光部の露出)
図3(c)に示すように、第1樹脂膜140を除去し受光部120を開口する。これは、外部から入力する光信号を、開口した受光部120に直接入力させ、光信号の減衰を抑制することができるためである。
【0055】
また、封止樹脂として、ガラスフィラーを含む黒色樹脂を使用することができる。これにより、半導体装置220の耐湿性を向上させ鉛フリー実装時のリフロー条件に適合させることができる。
【0056】
特に、光信号に青色光を使用する光記録技術において、その光信号を電気信号に変化する受光装置に使用している例えばエポキシ樹脂が青色光により劣化し青色光に対する光透過特性が悪くなるという点から、光路上からエポキシ樹脂を排除した機能素子の一部を露出させた半導体装置が必要となる。
【0057】
除去方法としては、以下の方法に限定されるものではない。まず、第1樹脂膜140の周囲を封止樹脂層200で形成したリードフレーム180を剥離液に浸漬する。剥離液により第1樹脂膜140はその表面から膨潤し、一部は溶融する。その際、第1樹脂膜140と受光素子100との接着面、および第1樹脂膜140と封止樹脂層200の接着面は、密着が弱い状態になる。
【0058】
次に、剥離液から取り出し、第1樹脂膜140が形成された封止樹脂層200の表面に、粘着性がある剥離テープ210を第1樹脂膜140と密着させるように貼付け、引き剥がす。
【0059】
前述のように、第1樹脂膜140は剥離液により受光素子100および封止樹脂層200とは密着が弱い状態であるため、剥離テープ210と第1樹脂膜140の密着力により、第1樹脂膜140を除去することができ、図3(c)に示す第1樹脂膜140を除去された受光素子100を得ることができる。
【0060】
〔工程5〕 半導体装置の個片化
続いて、図3(d)に示すように、リードフレーム180を受光素子100ごとに分割し、所望の形状の半導体装置220を得る。
【0061】
図1(b)に示すように、半導体装置220は、リードフレーム180の上面に設けられた受光素子100と、受光素子100の受光部120(機能部)が開口され、受光部120の周囲を埋める第2樹脂からなる封止樹脂層200と、を備えている。また、受光素子100は、金属細線190を介してリードフレーム180と電気的に接続されている。
【0062】
以下、第一の実施形態の効果を説明する。
図1(a)を参照すると、本発明の第一の実施の形態として半導体装置の斜視図が示されている。図1(b)は、図1のA−A'線に沿った断面図である。
【0063】
一つの効果は、生産効率を向上できることである。特許文献1に開示された半導体装置の工法では、保護膜2の上面を覆う樹脂8を研磨する工程が必要であるが、本実施形態によれば、第1樹脂膜140の上面には封止樹脂の浸入がなく、研磨工程が不要となり、生産工程が削減できる。また、研磨による振動などの悪い影響のない製造方法であるため、半導体装置の信頼性も向上する。
【0064】
特許文献2に開示された半導体装置の工法では、保護膜36は個片であり基材に搭載された固体撮像素子の個々に、精度良く被着する必要があるが、本実施形態によれば、ウエハ110に第1樹脂層130を全面に貼付け、第1樹脂層130を一括に精度よく形成できるため生産性がよく、第1樹脂層130の形状、位置精度も良好で高品質な第1樹脂層130が形成される。
【0065】
もう一つの効果は、廃棄物を軽減することができる。特許文献1に開示された半導体装置の工法によると、保護膜2の上面を覆う樹脂8を研磨するため、研磨された樹脂8および研磨剤の廃棄物が発生する。本実施形態によれば、第1樹脂膜140の上面には封止樹脂の浸入がなく、研磨工程が不要となり、廃棄物が削減できる。
また、リードフレーム180の下面に封止用金型の下型240の成型面との間にフィルムを挟むことにより、その間の圧接力を高めることができる。
【0066】
上記の効果により、光を扱う半導体素子、および半導体装置220の樹脂の研磨工程をなくし、生産効率を向上できること、不要な廃棄物を低減させ、かつ半導体装置220の信頼性を向上させる半導体装置220の製造方法を提供できる。
【0067】
本実施形態においては、第1樹脂膜140の厚さが0.12mmである例を示したが、第1樹脂膜140の厚さは適宜調整でき、第1樹脂膜140の高さを0.12mm以上とする場合には、第1樹脂層130の厚さをさらに厚くしてもよい。第1樹脂層130の膜厚を調整することで、上述の封止工程により、封止樹脂層200の膜厚を第1樹脂層130の膜厚以下に制御することができる。
第1樹脂膜140の厚さは、0.1mm以上から、好ましくは0.15mm以下とすることにより、封止樹脂層200の膜厚を適切に制御し、金属細線190が封止樹脂層200からはみ出ないようにすることができる。
【0068】
本発明によれば、ウエハ110上の受光部120、または受光部120の周囲に第1樹脂膜140を形成する工程において、第1樹脂膜140は膜状の樹脂とすることで、第1樹脂膜140の封止金型の上型230と接触する第1樹脂膜140部分中の最も厚い部分の厚さを均一なものとすることができる。これにより、第1樹脂膜140の上面が、封止樹脂層200の上面と同一平面となるか、または第1樹脂膜140の上面が、封止樹脂層200の上面より高くなるように第1樹脂膜140を形成することにより、第1樹脂膜140をわずかに圧縮させた状態で封止樹脂層200を封止するため、第1樹脂膜140の上面と封止金型230の成形面の合わせ面には隙間がなく、第1樹脂膜140上面への封止樹脂層200の浸入が防止される。
【0069】
また、第1樹脂膜140は弾性を有するため、封止金型230でクランプする際の封止金型230からの応圧に対して第1樹脂膜140が緩衝材として働くことができる。これにより、受光素子100に応圧が伝えることが低減し、素子のクラック等の不具合が防止される。
【0070】
なお、第1樹脂で形成される第1樹脂膜140は、ウエハ110上で受光部120側の全面を第1樹脂層130で覆った後、フォトリソグラフィ工法などにより精度良く、一括形成される。
【0071】
前述のように、本実施形態の半導体装置220の製造方法により、第1樹脂膜140上面に、封止樹脂層200がない樹脂封止が可能となり、従来必要としていた封止樹脂層200を研磨する工程が不要となり、生産性が向上し、製品コストも低減できる。
【0072】
また、第1樹脂膜140は、ウエハ110が受光素子100に個片化する前に、ウエハ110上で形成されるため、フォトリソグラフィ工法などにより精度よく一括で形成が可能であり、生産性が向上し品質のよいものとなっている。
【0073】
また、研磨する工程がないことにより、半導体装置220へ研磨を行う際の振動もなく、品質が向上することになる。
更に、研磨による廃棄物の発生がなく、廃棄物の低減と共に製造コストの軽減が可能となる。
【0074】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0075】
(第二の実施形態)
図5は、第二の実施形態における半導体装置220の製造工程における第1樹脂部(枠体150)の形状を示す断面図である。
【0076】
第二の実施形態における第1樹脂部(枠体150)の構成は、第一の実施形態の第1樹脂膜140が柱状の構造であったのに対し、第二の実施形態の枠体150は、受光素子100の表面の一部が露出した開口を持つ枠状の枠体150で形成される構造である。その他の構成は、第一の実施形態と同様である。
【0077】
なお、第二の実施形態における半導体装置220の製造工程は、第一の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0078】
試作結果によって、枠体150の構造でも第1実施形態と同様の効果が得られることが分かった。
【0079】
更に、枠体150を枠状に形成することにより、枠体150の除去工程において、枠体150の剥離は、第一の実施形態の第1樹脂膜140の剥離よりも、容易に行うことできる。
【0080】
これは、枠体150が枠状であるために、剥離液との接触面積が第一の実施形態の第1樹脂膜140に比べ広く、膨潤と溶融がより容易に行うことができるためであると考えられる。
【0081】
枠体150を枠状の構造にすることにより、更なる生産性の向上も可能にすることができる。
【0082】
(第三の実施形態)
図6は、第三の実施形態における半導体装置220の製造工程における第1樹脂部(凹状体160)の形状を示す断面図である。
【0083】
第三の実施形態における第1樹脂部(凹状体160)の構成は、第一の実施形態の第1樹脂膜140が柱状の構造であったのに対し、第三の実施形態の凹状体160は、凹部の厚みが局部的に薄くなっていることを特徴とする。その他の構成は、第一の実施形態と同様である。
【0084】
なお、第三の実施形態における半導体装置220の製造工程は、第一の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0085】
試作結果によって、凹状体160の構造でも第一の実施形態と同様の効果が得られることが分かった。
【0086】
更に、凹状体160の凹部の厚みが局部的に薄くなっていることにより、凹状体160の除去工程において、凹状体160の剥離は、第一の実施形態の第1樹脂膜140の剥離よりも、容易に行うことできる。
【0087】
これは、凹状体160の表面が凹部であるために、剥離液との接触面積が第一の実施形態の第1樹脂膜1402Aに比べ広く、膨潤と溶融がより容易に行うことができるためであると考えられる。
【0088】
更に、本実施形態は、第2実施形態よりも受光部120のサイズが小さい受光素子100に対して有効である。これは、第1樹脂層130を枠体150に加工する場合、その中央部から枠体150を現像時に完全に除去しなくてはならないが、受光部120が小さくなると枠体150の加工精度の限界で枠体150の加工が不可能になる場合があるからである。
【0089】
このような受光部120のサイズが小さい受光素子100に対しても、予め凹状体160の中央部である凹部に樹脂を薄く残す設計をすることで、枠体150に加工した場合とほぼ同様に凹状体160の除去を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の半導体装置の第一の実施形態を示す断面図
【図2】本発明の第一の実施形態の半導体装置の製法を示す工程図
【図3】本発明の第一の実施形態の半導体装置の製法を示す工程図
【図4】本発明の第一の実施形態の半導体装置の製法における封止工程の図
【図5】本発明の半導体装置の第二の実施形態を示す断面図
【図6】本発明の半導体装置の第三の実施形態を示す断面図
【図7】従来の半導体装置の製法を示す工程図(特許文献1)
【図8】従来の半導体装置の製法を示す工程図(特許文献2)
【符号の説明】
【0091】
2 レジスト保護膜
6 回路基板
7 ワイヤ
8 樹脂
10 固体撮像素子
30 基材
36 保護膜
40 金属線
42 封止材
46 透光板
100 受光素子
110 ウエハ
120 受光部
130 第1樹脂層
140 第1樹脂膜
150 枠体
160 凹状体
170 露光用マスク
180 リードフレーム
190 金属細線
200 封止樹脂層
210 剥離テープ
220 半導体装置
230 封止金型の上型
240 封止金型の下型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能部を有するウエハ上に第1樹脂層を形成する工程と、
前記第1樹脂層を所定の形状にパターニングし、前記機能部、または前記機能部の周囲に第1樹脂部を形成する工程と、
前記ウエハを分割して、素子に個片化する工程と、
前記素子を基材の上面に搭載する工程と、
前記第1樹脂部の上面および前記基材の下面のそれぞれに封止用金型の成型面を圧接し、前記封止用金型の前記成型面に囲まれた空隙部分のうち、前記第1樹脂部の周囲の前記空隙部分に第2樹脂を注入して、前記第1樹脂部の周囲に第2樹脂層を形成する封止工程と、
前記第1樹脂部を除去し、前記素子の一部を外部に露出させる工程を含み、
前記封止工程において、前記第1樹脂部の上面が、前記第2樹脂層の上面と同一平面となるか、または前記第1樹脂部の上面が、前記第2樹脂層の上面より高くなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記素子の一部を外部に露出させる工程は、前記第1樹脂部を剥離液に浸漬した後に、粘着性テープを用いて前記第1樹脂部を除去することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1樹脂部に用いられる第1樹脂は、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および光熱硬化性樹脂から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1樹脂部に用いられる第1樹脂は、硬化後の弾性率が20℃で6GPa以下、かつ200℃で3GPa以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1樹脂部に用いられる第1樹脂は、硬化後の弾性率が20℃で1GPa以上、かつ200℃で10MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1樹脂部の上面が、前記第2樹脂層の上面よりも0mm以上から0.05mm以下の範囲で高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1樹脂部の厚さが0.1mm以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1樹脂部の厚さが0.15mm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1樹脂層が、フイルムであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1樹脂部を形成する工程が、
前記ウエハ上に前記第1樹脂層を膜状に形成する工程と、
膜状の前記第1樹脂層を所定の形状にパターニングし、前記機能部、または前記機能部の周囲に第1樹脂膜を形成する工程と、をさらに含む請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1樹脂部除去工程の後、前記基材を前記素子ごとに分割する工程をさらに含む請求項1乃至10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記封止工程において、前記基材の下面と前記封止用金型の前記成型面との間にフィルムを挟んで圧接することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1樹脂部が、少なくとも前記機能部全体を覆うように形成されているか、または前記機能部全体またはその一部が露出する枠体として形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1樹脂部は、凹状体であり、
前記凹状体は、凹部の厚みが局部的に薄くなっていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−62232(P2010−62232A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224284(P2008−224284)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】