説明

紫外線遮断性樹脂組成物及びその利用

【課題】着色もなく、透明性に優れ、波長290nm〜420nmの全領域の紫外線を十分遮蔽し得る紫外線遮断性樹脂組成物であって、その紫外線遮断性能の対熱及び対湿熱耐久性にも優れ、貼着性能、又は塗膜表面状態及び密着性の対熱及び対湿熱耐久性にも優れる粘着剤層や塗膜を形成し得る、紫外線遮断性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基を有するアクリル系共重合体(A)、水酸基、(無水)カルボン酸基のうち少なくともいずれかと反応し得る反応性化合物(B)、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)もしくはキサントン系紫外線吸収剤(c2)の少なくともいずれか一方、及び380nm以下の波長の紫外線を吸収し得る紫外線吸収剤(c3)を含有し、さらに酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを含むことを特徴とする紫外線遮断性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線のうち、特に波長420nm以下の光の遮蔽性能に優れる紫外線遮断性樹脂組成物に関する。詳しくは有機エレクトロルミネッセンス(以下、「エレクトロルミネッセンス」を「EL」と略記する。)素子用ガラス部材の表面に紫外線遮断機能を付与するために好適な紫外線遮断性樹脂組成物に関する。表面に紫外線遮断機能を有するEL素子用ガラス部材は、EL素子を外部の紫外線から保護し、明所での視認性を向上すると共に、EL素子の劣化を防止し得る。
また、本発明は、透明性に優れる粘着剤層を構成層とする粘着シートであって、被着体に貼着後、高温下もしくは高温高湿下に曝されても粘着シートが被着体から浮いたり、剥がれたりせず、しかも、高温もしくは高温高湿下に曝されても紫外線遮蔽性能が低下しない紫外線遮断性粘着シートの形成に好適な紫外線遮断性粘着剤及び粘着シートにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、EL素子は、自己発光性であるため視認性が高く、かつ完全固体素子であるため、耐衝撃性に優れるとともに、取扱いが容易であることから、各種表示装置における発光素子としての利用が注目されている。
EL素子の一般的構造及び発光原理を簡単に説明する。EL素子は、発光層および該層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。そして、この電子が発光層において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際に放出されるエネルギーが光に変換される。
【0003】
EL素子には、発光材料に無機物質を用いた、無機EL素子と有機物質を用いた有機EL素子とがある。
このうち、有機EL素子は、印加電圧を大幅に低くし得ることから、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、単色のみでなく、赤,緑,青の3原色や白色を揃えるなど、多くの実用化研究が積極的に行われている。
【0004】
しかし、現在までの有機EL素子は、非点灯時、即ち両電極間に電界が印加されていない場合に、外部からの光、例えば蛍光灯などの照明や太陽光によって、発光層が励起されてしまう。その結果、明るい場所では、発光素子が点灯しているかどうかが分かりにくくなり(視認性の低下)、点灯時と非点灯時の明るさの比(コントラスト)が暗所に比して低下する。即ち、従来の有機EL素子は、明所と暗所とでは同程度の表示品質を確保することができなかった。
【0005】
さらに、有機EL素子には、外部からの紫外線(以下、「UV」と略すこともある)、特に日光に含まれる290nm〜420nmの波長の不可視の紫外線によって劣化し易いという問題がある。有機EL素子が上記UVに長時間曝露されると、発光層中の発光材料や、正孔注入層や正孔輸送層中の有機材料に変質が起こり、発光の退色や発光輝度の低下が生じる。この現象は、長期間自然光に曝されると、所定の輝度や発光色が得られなくなるという不都合を生じ、繰り返し使用時の安定性に劣るという大きな問題を持っている。
【0006】
また、無機ELの一種である発光ダイオード(以下「LED」と略す)は、消費電力が小さく、視野性も良好であり、寿命が長いので、白熱灯に代わるものとして、発明されて以来順調に普及してきている。さらに光の三原色のひとつである青色発光ダイオードが発明され、さらに、白色発光ダイオードも近年発明され、屋外ディスプレーや交通信号、液晶表示装置(LCD)のバックライト等用途に拍車がかかり多く使用されている。
発光する光の色は、使用される材料によってほぼ決定される。使用される発光材料として、青色ではInGaNやZnCdSe、緑色ではZnTeSeやGaP、黄色ではInGaN、赤色AlGaAsやGaPZn、赤外ではGaAsSiやInGaAsP等があり、それぞれ用途に応じて使用される。
LEDは、屋外で使用されることが多く、日光に曝されることが多い。日光に含まれる290nm〜420nmの波長の不可視の紫外線によって、LEDを構成する材料が劣化し易く、輝度が低下し易いという問題があった。
【0007】
つまり、有機EL素子やLEDの実用性を高めるためには、波長が420nm以下の紫外線を遮蔽し、このような紫外線から有機EL素子やLEDを保護する必要がある。
種々の文献に様々な紫外線吸収剤や様々な組み合わせが提案されてきた。
【0008】
例えば、特許文献1〜4には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が開示されている。しかし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は一般に溶解性が悪い。
【0009】
また、特許文献5〜8には、ジフェニルメタン系紫外線吸収剤が開示されている。
特許文献9〜10には、トリアジン系紫外線吸収剤が開示されている。
特許文献11には、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤が開示されている。
特許文献12〜16には、ハロゲン化銀写真感光材に用いられる含窒素五員環構造を有する化合物が紫外線吸収機能を有する旨記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1〜11に記載される従来の紫外線吸収剤は、380nm以下の紫外線を遮断し得るが、それよりも長波長側の紫外線遮断能が不十分であった。
【0011】
ところで、波長が290nm〜420nmの紫外線から有機EL素子やLEDを保護するには、紫外線遮断能を有する粘着剤を用いて、プラスチックフィルム等を有機EL用ガラス部材やLED用ガラス部材に貼着したり(図1又は2参照)、あるいは紫外線遮断能を有する塗料を有機EL用ガラス部材やLED用ガラス部材に塗工したりする方法が考えられる。
紫外線遮断能を有する粘着剤や塗料には、着色も少なく、透明性に優れることが要求される。
【0012】
また、有機EL素子やLED素子は様々な状況で使用されることが予測される。そこで、有機EL素子やLED素子には、過酷な温度や湿度を負荷する様々な加速度試験が課される。有機EL素子やLED素子を紫外線から保護するための粘着剤や塗料にも同様に高度な耐久性が要求される。
例えば、紫外線遮断能を有する粘着剤の場合は、粘着剤層が設けられたプラスチックフィルム等を被着体に貼着後、高温下(例えば、120℃の環境下)に長時間(例えば1000時間)放置したり、あるいは高温高湿度下(例えば、80℃、相対湿度90%の環境下)に長時間(例えば1000時間)放置したりしても、プラスチックフィルム等が有機EL用ガラス部材やLED用ガラス部材から浮いたり、剥がれたりしないことが要求される(貼着性能の対熱耐久性、対湿熱耐久性)。
紫外線遮断能を有する塗料の場合は、上記のような環境下に曝されても、塗膜にヒビ、シワ等が発生しないこと、塗膜が被着体に十分密着していること等が要求される(塗膜表面状態及び密着性の対熱耐久性、対湿熱耐久性)。
【0013】
さらに、紫外線遮断能を有する粘着剤や塗料には、上記のような環境下に曝されても、曝される前と比して紫外線遮断性能に変化がないこと(紫外線遮断性能の対熱耐久性、対湿熱耐久性)も要求される。
【0014】
特許文献12〜15に開示される含窒素五員環構造を有する化合物は、比較的長波長領域の紫外線吸収能を有する。
しかし、これらの化合物は、熱に弱く、上記のような環境下に曝されると分解し易い。従って、これらの化合物を含有する粘着剤や塗料から形成される粘着剤層や塗膜は、対熱耐久性及び対湿熱耐久性の点で難がある。しかも、紫外線吸収剤が分解すれば、紫外線遮断性能も低下する。
【0015】
つまり、従来の紫外線吸収剤では、着色もなく、透明性に優れ、290nm〜420nmの全領域の紫外線を十分遮蔽し、その紫外線遮断性能の対熱及び対湿熱耐久性にも優れる粘着剤層や塗膜であって、貼着性能の対熱及び対湿熱耐久性にも優れる、又は塗膜表面状態及び密着性の対熱及び対湿熱耐久性にも優れる、粘着剤層や塗膜を形成することはできなかった。
【特許文献1】特開2002−53824号公報
【特許文献2】特表2002−543266号公報
【特許文献3】特開2003−113317号公報
【特許文献4】特表2004−182822号公報
【特許文献5】特開平9−115668号公報
【特許文献6】特開平9−325333号公報
【特許文献7】特開2004−102223号公報
【特許文献8】特開平9−325333号公報
【特許文献9】特開平10−17557号公報
【特許文献10】特表2002−543265号公報
【特許文献11】特開平8−234352号公報
【特許文献12】特開昭63−53543号公報
【特許文献13】特開平9−115668号公報
【特許文献14】特開平6−337492号公報
【特許文献15】特開平7−114126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、着色もなく、透明性に優れ、波長290nm〜420nmの全領域の紫外線を十分遮蔽し得る紫外線遮断性樹脂組成物であって、その紫外線遮断性能の対熱及び対湿熱耐久性にも優れ、貼着性能、又は塗膜表面状態及び密着性の対熱及び対湿熱耐久性にも優れる粘着剤層や塗膜を形成し得る、紫外線遮断性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、第1の発明は、水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基〔「無水カルボン酸基」と「カルボン酸基」とを併せて「(無水)カルボン酸基」と表記する。以下同様。〕を有するアクリル系共重合体(A)、水酸基、(無水)カルボン酸基のうち少なくともいずれかと反応し得る反応性化合物(B)、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)もしくはキサントン系紫外線吸収剤(c2)の少なくともいずれか一方、及び前記紫外線吸収剤(c1)(c2)以外の紫外線吸収剤であって、380nm以下の波長の紫外線を吸収し得る紫外線吸収剤(c3)を含有し、さらに酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを含むことを特徴とする紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0018】
また、第2の発明は、 ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)が、下記一般式(I)あるいは(II)で示される化合物であることを特徴とする第1の発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
[一般式(I)及び(II)中、R1〜R2は、それぞれ独立にH、OH基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜26である直鎖状もしくは分岐鎖状あるいは脂環状炭化水素基及び炭素数2ないし3であるポリオキシアルキレン基から選ばれるいずれかであり、更に、R1は、ヘテロ原子を含んでいても良い環状炭化水素基であっても良い。]
【0022】
また、第3の発明は、キサントン系紫外線吸収剤(c2)が、下記一般式(III)〜(V)のいずれかで示される化合物であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
[一般式(III)〜(V)中、R3〜R11は、それぞれ独立にH、OH基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜26である直鎖もしくは分岐鎖状あるいは脂環状炭化水素基及び炭素数2ないし3であるポリオキシアルキレン基から選ばれるいずれかであり、更に、R11はヘテロ原子を含んでいても良い環状炭化水素基であっても良い。]
【0027】
また、第4の発明は、酸化防止剤(d1)が、フェノール系、燐系もしくは硫黄系化合物のいずれかであることを特徴とする第1ないし第3いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0028】
また、第5の発明は、光安定剤(d2)が、ヒンダートアミン系化合物であること特徴とする第1ないし第4いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0029】
また、第6の発明は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)を0.001〜10重量部及び/又はキサントン系紫外線吸収剤(c2)を0.001〜10重量部含有し、その他の紫外線吸収剤(c3)を0.001〜10重量部含有することを特徴とする第1ないし第5いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0030】
また、第7の発明は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、反応性化合物(B)を0.01〜20重量部含有することを特徴とする第1ないし第6いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0031】
また、第8の発明は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを0.001〜10重量部含有することを特徴とする第1ないし第7いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0032】
また、第9の発明は、アクリル系共重合体(A)が、ガラス転移温度が−80〜0℃のアクリル系共重合体(A1)であることを特徴とする第1ないし第8いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0033】
また、第10の発明は、紫外線遮断性粘着剤であることを特徴とする第1ないし第9いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物に関する。
【0034】
また、第11の発明は、第10の発明に記載の紫外線遮断性粘着剤から形成される紫外線遮断性粘着剤層の一方の面に剥離処理されてなるシートが積層され、前記紫外線遮断性粘着剤層の他方の面に、プラスチック基材フィルム、もしくは剥離処理されてなるシートが積層されてなることを特徴とする紫外線遮断性粘着シートに関する。
【0035】
また、第12の発明は、有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材の表面に、第1ないし第9いずれかの発明に記載の紫外線遮断性樹脂組成物から形成される紫外線遮断性樹脂組成物層が担持されてなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスセル用部材に関する。
【0036】
さらに、第13の発明は、有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材、第10の発明に記載の紫外線遮断性粘着剤から形成される紫外線遮断性粘着剤層、及びプラスチック基材フィルムが順次積層されてなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスセル用部材に関する。
【0037】
さらにまた、第14の発明は、第11の発明に記載の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層を介して、プラスチック基材フィルムを有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材に貼着するか、
または、第11の発明に記載の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートのうち一方を剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層にプラスチック基材フィルムを積層し、次いで残っている剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層を介して、プラスチック基材フィルムを有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材に貼着するか、
あるいは第11の発明に記載の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートのうち一方を剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層に有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材を積層し、次いで残っている剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層にプラスチック基材フィルムを積層することを特徴とする、
有機エレクトロルミネッセンスセル用部材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、着色もなく、透明性に優れ、波長290nm〜420nmの全領域の紫外線を十分遮蔽し得る紫外線遮断性樹脂組成物であって、その紫外線遮断性能の対熱及び対湿熱耐久性にも優れ、貼着性能、又は塗膜表面状態及び密着性の対熱及び対湿熱耐久性にも優れる粘着剤層や塗膜を形成し得る、紫外線遮断性樹脂組成物を提供することができるようになった。本発明の紫外線遮断性樹脂組成物を利用することによって、有機EL素子や発光ダイオードを波長290nm〜420nmの紫外線から効果的に保護することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物は、上記したように水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基を有するアクリル系共重合体(A)、水酸基、(無水)カルボン酸基のうち少なくともいずれかと反応し得る反応性化合物(B)、比較的長波長域の紫外線遮断機能を担う、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)もしくはキサントン系紫外線吸収剤(c2)の少なくともいずれか一方と、及び前記紫外線吸収剤(c1)(c2)以外の紫外線吸収剤であって、380nm以下の波長の紫外線を吸収し得る紫外線吸収剤(c3)を含有し、さらに酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを含むものである。
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物の態様の1つである紫外線遮断性粘着剤を用いてなる紫外線遮断性粘着シートを、有機EL用のガラス部材の表面に貼着することによって、有機EL素子を紫外線から効果的に保護することができる。
【0040】
<アクリル系共重合体(A)>
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物は、紫外線遮断性粘着剤、紫外線遮断性塗料として用いることができる。アクリル系共重合体(A)は、後述する反応性化合物(B)と共に粘着剤層や塗膜の大部分を形成するための成分であり、いずれの場合も後述する紫外線吸収剤(c1)〜(c3)等が粘着剤層や塗膜から脱落しないようにするための成分でもある。
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物を紫外線遮断性粘着剤として用いる場合には、バランスの良い粘着特性を発揮することが必要である。特に、タックと凝集力を両立させることが重要である。そこで、アクリル系共重合体(A)としてガラス転移温度(Tg)が−80〜0℃であるアクリル系共重合体(A1)を用いることが好ましい。
アクリル系共重合体(A)のTgが−80℃未満である紫外線遮断性樹脂組成物を粘着剤として用いた場合、形成される粘着剤層の凝集力が低下し、被着体から浮き・剥がれが生じやすくなる。一方、アクリル系共重合体(A)のTgが0℃を超える紫外線遮断性樹脂組成物を粘着剤として用いた場合、十分な接着力を得ることができない可能性がある。
【0041】
本発明の紫外線遮断性粘着剤の形成に好適に用いる、Tgが−80〜0℃であるアクリル系共重合体(A1)は、例えば、以下のようにして得ることができる。
即ち、水酸基も(無水)カルボン酸基も有しないアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル(アクリル系単量体という)を主成分とし、ラジカル重合性エチレン性不飽和二重結合を有し、且つ水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基を有する単量体を必須成分とする、アクリル系単量体混合物から形成されるものである。アクリル系単量体以外にも、ビニル基含有化合物も使用し得る。
【0042】
ラジカル重合性エチレン性不飽和二重結合を有し、(無水)カルボン酸基を有する単量体としては、
アクリル酸、メタクリル酸;
イタコン酸、マレイン酸等の二塩基酸類及びそれらのモノアルキルエステル;
無水イタコン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;
等が挙げられる。
【0043】
ラジカル重合性エチレン性不飽和二重結合を有し、水酸基を有する単量体としては、
例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル〔「アクリル酸2−ヒドロキシエチル」と「メタクリル酸2−ヒドロキシエチル」とを併せて「(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル」と表記する。以下同様。〕、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0044】
例えば、2−ヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}ブトキシベンゾフェノン、2, 2'−ジヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エトキシ−4'−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0045】
例えば、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)]−S−トリアジン、2, 4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)]−S−トリアジン等のトリアジン系の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0046】
例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系の(メタ)アクリル酸エステル類;
等が挙げられる。
【0047】
水酸基も(無水)カルボン酸基も有しないアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルとしては、
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
【0048】
例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの(メタ)アクリル酸環状エステル類;
【0049】
例えば、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル、(メタ)アクリル酸ビニル等の不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
が挙げられる。
【0050】
その他、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル類、リン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、スルホニル基含有の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、複素環含有(メタ)アクリル酸エステル類、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、末端がアルコキシ化された(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0051】
さらにアクリル系単量体と併用し得る単量体として、芳香族ビニル系単量体類、フッ素含有ビニル系単量体類、トリアルキルオキシシリル基含有ビニル系単量体類、トリビニルエーテル単量体類、モノビニルエーテル単量体類、ニトリル基含有ビニル系単量体類、アミド基含有ビニル系単量体類、ビニルエステル類等のビニル基含有化合物や、
不飽和カルボン酸類のエステル類;
エチレン、プロピレン、ブテンなどのアルケン類;、
ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1、3−ブタジエンなどのジエン類等を挙げることができる。
【0052】
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物の好適な態様である紫外線遮断性粘着剤は、上記したようにアクリル系共重合体(A)として、Tgが−80〜0℃の共重合体(A1)を用いることが好ましい。このような共重合体(A1)は、単量体として、Tgが−50℃以下のホモポリマーを形成し得る、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のアルキル側鎖のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等を、共重合に使用する全単量体100重量%中、20〜80重量%含有していることが好ましい。
【0053】
共重合に使用する全単量体100重量%のうち、残りの80〜20重量%は、接着力や凝集力の制御、各紫外線吸収剤との相溶化向上のために、Tgが−30〜100℃範囲のホモポリマーを形成し得る、アクリル系単量体であることが好ましく、後述の反応性化合物(B)との反応に関与する水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基を有する単量体と、他の単量体とを合わせて80〜20重量%用いることが好ましい。
水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基を有する単量体は、共重合に使用する全単量体100重量%のうち、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%の範囲がより好ましい。0.01重量%未満では充分な架橋構造が得られないため、粘着層の凝集力が低く、繰り返し使用時での安定性や耐久性に劣り、好ましくない。また、20重量%を超えた場合、粘着層の凝集力が高くなりすぎるため、積層されたガラス面との間で、環境変化により剥離し易くなるため、好ましくない。
【0054】
本発明に用いられるアクリル系共重合体(A)は、常法に従い、上記したような単量体の合計100重量部に対して、0.001〜5重量部の重合開始剤を用いて、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法により合成される。好ましくは溶液重合で合成される。
【0055】
本発明の紫外線遮断性粘着剤に用いられるアクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜2,000,000であることが粘着性の点で好ましく、200,000〜1,500,000の範囲がより好ましい。Mwが2,000,000を超えると共重合体の流動性が不良となって、後述の粘着シートを作製することが困難となり、50,000未満では粘着層の凝集破壊が起こりやすくなるので好ましくない。
【0056】
<反応性化合物(B)>
本発明における反応性化合物(B)は、前記したアクリル系共重合体(A)中の官能基である水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基と反応し得る官能基を分子内に有する化合物である。このような化合物としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及び金属キレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、架橋剤として作用するために、共重合体(A)中の水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。
【0057】
例えば、共重合体(A)中の官能基が(無水)カルボン酸基の場合、化合物(B)の官能基としてはイソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アジリジル基、オキサゾリン基が挙げられ、共重合体(A)中の官能基が水酸基の場合は、化合物(B)の官能基としてはイソシアネート基、N−メチロール基が挙げられる。
特にポリイソシアネート化合物は、架橋反応後の粘着剤組成物の被着体への接着性や基材フィルムへの密着性に優れていることから広く使用されている。
【0058】
例えば、ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0059】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0060】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0061】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0062】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0063】
また、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なお、ポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。ポリオールとジイソシアネートの反応物もポリイソシアネート化合物として使用することができる。
【0064】
これらポリイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)等の無黄変型または難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性の点から、特に好ましい。
【0065】
反応性化合物(B)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、反応促進のため、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えば3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。上記触媒の中で、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が反応性の点で好ましい。これらは、単独または複数を使用することができる。
【0066】
また、反応性化合物(B)のうち、エポキシ化合物の例としては、ビスフェノール型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0067】
反応性化合物(B)のうち、アミン化合物の例としては、1級アミノ基を2個以上有するポリアミンであれば特に制限なく使用することができるが、硬化速度が優れる点から、芳香環に直接結合していない1級アミノ基を2個以上有するポリアミンである脂肪族系ポリアミン(その骨格に芳香環を含んでも良い)が好ましい。また、ポリアミンとケトンとの反応生成物であるケチミンもアミン化合物として用いることができる。
【0068】
反応性化合物(B)のうち、アジリジン化合物の例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N′−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N′−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0069】
反応性化合物(B)のうち、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物であり、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
また、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応することによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。ジイソシアネートとしては、前述と同様のものを例示することができる。
このような高分子量ポリカルボジイミドとしては日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01,03,05,07,09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0070】
反応性化合物(B)のうち、オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を2個以上有する化合物である。具体的には、2′−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)等を挙げることができる。または、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンや、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンなどのビニル系単量体とこのビニル系単量体と共重合しうる他の単量体との共重合体でもよい。
【0071】
反応性化合物(B)のうち、メラミン化合物とは、トリアジン環を分子内に有する化合物である。メラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、メチルグアナミン、ビニルグアナミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。また、これらの低縮合化物やアルキルエーテル化ホルムアルデヒド樹脂やアミノプラスト樹脂を使用しても良い。
【0072】
反応性化合物(B)のうち、金属キレート化合物の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0073】
<紫外線吸収剤>
本発明においては、紫外線吸収剤として、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)もしくはキサントン系紫外線吸収剤(c2)の少なくとも一方を必須とし、これら以外の紫外線吸収剤であって、380nm以下の波長の紫外線を吸収し得る紫外線吸収剤(c3)をさらに含有することが重要である。
【0074】
<ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)>
ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)は、波長370nm以上、具体的には390nm以上の紫外線遮断性能の点で優れ、特に400nm近傍の紫外線遮断性能の点で優れる。
しかし、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)は、熱分解し、揮発成分を生じる可能性がある。故に、これを含有する粘着剤層は、熱分解の結果生じる揮発性成分の影響を受けて被着体から浮いたり、剥がれたりする可能性がある。また、この紫外線吸収剤(c1)を含有する塗膜は、熱分解の結果生じる揮発性成分の影響を受けてヒビが発生したり、密着性が低下したりする可能性がある。
紫外線吸収剤(c1)が分解すれば、当然これを含有する粘着剤層や塗膜の紫外線遮断性能も熱の影響を受けて低下する。
さらに、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)の熱分解の際には、酸素ラジカルが生じる可能性が有り、生じた酸素ラジカルは、アクリル系共重合体(A)を酸化劣化させる。アクリル系共重合体(A)が酸化劣化すると、これを含有する粘着剤層や塗膜の貼着性能や塗膜としての性能は低下する。
そして、湿度は、熱による影響を促進する。
そこで、これらの現象を予防するために、後述するように酸化防止剤(d1)や光安定剤(d2)を併用することが重要である。ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)の含有量は、紫外線遮断性能、その対熱及び対湿熱耐久性、及び貼着性能や塗膜性能の対熱及び対湿熱耐久性のバランスを考慮して、適宜決定することができる。
【0075】
本発明で用いられるピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)としては、下記一般式(I)で示されるように、分子内にピロリジン骨格とシアノアミド骨格の双方を有するピロリジン−シアノアミド系紫外線吸収剤や、下記一般式(II)で示されるようにピロリジン骨格とシアノスルホンアミド骨格の双方を有するピロリジン−シアノスルホンアミド系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは、波長370nm以上の紫外線遮断性能の点で優れた化合物である。
【0076】
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
なお、一般式(I)及び(II)中、R1〜R2は、それぞれ独立にH、OH基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜26である直鎖もしくは分岐鎖状あるいは脂環状炭化水素基及び炭素数2ないし3であるポリオキシアルキレン基から選ばれるいずれかであり、更に、R1はヘテロ原子を含んでいても良い環状炭化水素基であっても良い。
【0079】
一般式(I)で示されるピロリジン−シアノアミド系の化合物としては、例えば、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C25、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−メチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=CH3、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−プロピル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C37、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−ブチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C49、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ウンデシル−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C25、R2=C1123》、
2−シアノ−N−デシル−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C25、R2=C1021》、
2−シアノ−N−トリデシル−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C25、R2=C1327》、
2−シアノ−N−テトラデシル−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C25、R2=C1429》、
2−シアノ−N−シクロヘキシル−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C2H5、R2=C611》、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−ベンジル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C6H5、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ヒドロキシ−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=C2H5、R2=OH》、
2−シアノ−N−エチル−4−(1−ヒドロキシ−2−ピロリジニリデン)−2−ブテンアミド《R1=OH、R2=C25》等が挙げられる。
【0080】
一般式(II)で示されるピロリジン−シアノスルホン系化合物としては、例えば、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−スルホンアミド《R1=C2H5、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ドデシル−4−[1−(4−ピリジニル)−2−ピロリジニリデン]−2−スルホンアミド《R1=C54N、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ヒドロキシ−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−スルホンアミド《R1=C2H5、R2=OH》、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−ヒドロキシ−2−ピロリジニリデン)−2−スルホンアミド《R1=OH、R2=C1225》、
2−シアノ−N−ドデシル−4−(1−シクロヘキシル−2−ピロリジニリデン)−2−スルホンアミド《R1=OH、R2=C611》等が挙げられる。
特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0081】
<キサントン系紫外線吸収剤(c2)>
キサントン系紫外線吸収剤(c2)は、波長380nm以上、具体的には390nm以上の紫外線遮断性能の点で優れ、特に410nm近傍の紫外線遮断性能の点で優れる。
キサントン系紫外線吸収剤(c2)は、紫外線硬化性インキや紫外線硬化性塗料等の紫外線硬化性組成物に、光ラジカル重合開始剤として広く用いられている。つまり、キサントン系紫外線吸収剤(c2)は、紫外線を吸収して、ラジカルを発生する性質を有する。ラジカルが発生すると、アクリル系共重合体(A)にダメージを与え、貼着性能や塗膜状態に影響を与える可能性がある。
そこで、これらの現象を予防するために、後述するように酸化防止剤(d1)や光安定剤(d2)を併用することが重要である。キサントン系紫外線吸収剤(c2)の含有量は、紫外線遮断性能と、アクリル系共重合体(A)に与え得るダメージを考慮して、適宜決定することができる。
【0082】
本発明で用いられるキサントン系紫外線吸収剤(c2)としては、例えば、下記一般式(III)で示される分子内にアクリドン骨格を有するアクリドン系紫外線吸収剤、下記一般式(IV)で示される分子内にキサントン骨格を有する狭義のキサントン系紫外線吸収剤、下記一般式(V)で示される分子内にチオキサンテン−9−オン骨格を有するチオキサントン系紫外線吸収剤が挙げられる。上記のように波長380nm以上の紫外線遮断性能の点で優れ、官能基を適宜選択することによって、420nm近傍の波長まで紫外線を遮断することができる。
【0083】
【化13】

【0084】
【化14】

【0085】
【化15】

【0086】
一般式(III)〜(V)中、R3〜R11は、それぞれ独立にH、OH基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜26である直鎖もしくは分岐鎖状あるいは脂環状炭化水素基及び炭素数2ないし3であるポリオキシアルキレン基から選ばれるいずれかであり、更に、R11はヘテロ原子を含んでいても良い環状炭化水素基であっても良い。
【0087】
キサントン系紫外線吸収剤(c2)のうち、一般式(III)で示されるアクリドン系紫外線吸収剤としては、例えば、
アクリドン《R3=R4=R5=R6=R7=R8=R9=R10=R11=H》、
10−エチル−アクリドン《R11=C25、R3=R4=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−エチル−2−クロロアクリドン《R11=C25、R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−プロピル−2−クロロアクリドン《R11=C37、R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−ブチル−2−クロロアクリドン《R11=C49、R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−エチル−2−クロロアクリドン《R11=C25、R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−エチル−2−ブロモアクリドン《R11=C25、R4=Br、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−プロピル−2−ブロモアクリドン《R11=C37、R4=Br、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−ブチル−2−ブロモアクリドン《R11=C49、R4=Br、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−ヘプシル−2−クロロアクリドン《R11=C511、R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−ヘキシル−2−クロロアクリドン《R11=C613、R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−エチル−2−ヨードアクリドン《R11=C25、R4=I、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−プロピル−2−ヨードアクリドン《R11=C37、R4=I、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−ブチル2ヨードアクリドン《R11=C49、R4=I、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−エチル−2−シアノアクリドン《R11=C25、R4=CN、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−プロピル−2−シアノアクリドン《R11=C37、R4=CN、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−ブチル−2−シアノアクリドン《R11=C49、R4=CN、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
10−ブチル−2−エチルアクリドン《R11=C49、R4=C25、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
10−エチル−2,5−ジクロロアクリドン《R11=C25、R4=R8=Cl、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
10−ブチル−2,5−ジヒドロキシアクリドン《R11=C49、R4=R8=OH、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
10−シクロヘキシル−2,5−ジヒドロキシアクリドン《R11=C611、R4=R8=OH、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
10−エチル−2−クロロ−5−シアノアクリドン《R11=C25、R4=Cl、R8=CN、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
10−ブチル−2,4,5,8−テトラクロロアクリドン《R11=C49、R4=R5=R8=R9=Cl、R3=R5=R6=R7=R10=H》等が挙げられる。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0088】
キサントン系紫外線吸収剤(c2)のうち一般式(IV)で示される狭義のキサントン系紫外線吸収剤としては、例えば、
キサントン《R3=R4=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−メチルキサントン《R4=CH3、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−エチルキサントン《R4=C25、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−イソプロピルキサントン《R4=C37、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−ブチルキサントン《R4=C49、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−シクロヘキシルキサントン《R4=C611、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2,4−ジメチルキサントン《R4=R6=CH3、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2,5−ジメチルキサントン《R4=R8=CH3、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2,4−ジエチルキサントン《R4=R6=C25、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2,4−ジイソプロピルキサントン《R4=R6=C37、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2−クロロキサントン《R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
4−クロロキサントン《R5=Cl、R3=R4=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−ブロモキサントン《R4=Br、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−ヨードキサントン《R4=I、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−シアノキサントン《R4=CN、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2,4−ジクロロキサントン《R4=R6=Cl、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2,5−ジクロロキサントン《R4=R8=Cl、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2−ヒドロキシキサントン《R4=OH、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2,5−ジヒドロキシキサントン《R4=R8=OH、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2−クロロ−5−シアノキサントン《R4=Cl、R8=CN、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2,4,5,8−テトラクロロキサントン《R4=R5=R8=R9=Cl、R3=R6=R7=R10=H》等が挙げられる。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0089】
キサントン系紫外線吸収剤(c2)のうち、一般式(V)で示されるチオキサントン系紫外線吸収剤としては、例えば、
チオキサントン《R3=R4=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−メチルチオキサントン《R4=CH3、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−エチルチオキサントン《R4=C25、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−イソプロピルチオキサントン《R4=C37、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−ブチルチオキサントン《R4=C49、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−シクロヘキシルチオキサントン《R4=C611、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2,4−ジメチルチオキサントン《R4=R6=CH3、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2,5−ジメチルチオキサントン《R4=R8=CH3、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2,4−ジエチルチオキサントン《R4=R6=C25、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2,4−ジイソプロピルチオキサントン《R4=R6=C37、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2−クロロチオキサントン《R4=Cl、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
4−クロロチオキサントン《R5=Cl、R3=R4=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−ブロモチオキサントン《R4=Br、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−ヨードチオキサントン《R4=I、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2−シアノチオキサントン《R4=CN、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2,4−ジクロロチオキサントン《R4=R6=Cl、R3=R5=R7=R9=R8=R10=H》、
2,5−ジクロロチオキサントン《R4=R8=Cl、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2−ヒドロキシチオキサントン《R4=OH、R3=R5=R6=R7=R8=R9=R10=H》、
2,5−ジヒドロキシチオキサントン《R4=R8=OH、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2−クロロ−5−シアノチオキサントン《R4=Cl、R8=CN、R3=R5=R6=R7=R9=R10=H》、
2,4,5,8−テトラクロロチオキサントン《R4=R5=R8=R9=Cl、R3=R6=R7=R10=H》等が挙げられる。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0090】
<その他の紫外線吸収剤(c3)>
上記したように本発明の紫外線遮断性樹脂組成物は、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)もしくはキサントン系紫外線吸収剤(c2)の少なくとも一方を必須とし、これら以外の紫外線吸収剤であって、380nm以下の波長の紫外線を吸収し得る紫外線吸収剤(c3)をさらに含有することが重要である。
即ち、上記紫外線吸収剤(c1)、(c2)は主として、長波長領域、具体的には波長390nm以上の紫外線遮断機能を担う。しかし、これらの紫外線吸収剤には上記したように、熱、湿熱もしくは紫外線によって影響を受ける可能性がある。また、上記紫外線吸収剤(c1)、(c2)は、波長350〜370nm付近の紫外線遮断能がやや不十分である。
そこで、380nm以下の波長の紫外線を遮断するために、熱、湿熱もしくは紫外線によって影響を受けにくい、380nm以下の紫外線を吸収して電磁波等のエネルギーに変化させて放出させる効能を有する他の紫外線吸収剤(c3)を併用することが重要である。
【0091】
このような他の紫外線吸収剤(c3)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾオキサジン系、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、2−シアノアクリル酸エステル系、アントラニレート系、ケイヒ酸誘導体系、カンファー誘導体系、ベンザルマロネート誘導体系、レゾルシノール系、オキサニリド系、ジベンゾイルメタン系、クマリン誘導体系、安息香酸誘導体等の化合物が使用できる。
【0092】
ベンゾトリアゾール系としては、例えば、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール等の化合物を挙げることができる。
【0093】
トリアジン系としては、例えば2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2,4,6−トリス−(ジイソブチル4'−アミノ−ベンザルマロネート)−s−トリアジン、4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等の化合物を挙げることができる。
【0094】
ベンゾフェノン系としては、例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4−オクトキシベンゾフェノン、4−デシルオキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシベンゾフェノン、4,2′,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2′−ヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチルp−ベンゾインエチルエーテルなどの化合物が挙げられる。
【0095】
2−シアノアクリル酸エステル系としては、例えば、エチルα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸エステル、イソオクチル α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸エステル等の化合物が挙げられる。
【0096】
サリチル酸エステル系としては、例えば、サリチル酸イソセチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸フェニルなどの化合物が挙げられる。
【0097】
アントラニレート系としては、例えば、メチルアントラニレート等の化合物が挙げられる。
【0098】
ケイヒ酸誘導体系としては、例えば、エチルヘキシルメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソアミルメトキシシンナメート、ジイソプロピルメチルシンナメート、グリセリル−エチルヘキサノエートジメトキシシンナメート、メチル−α−カルボメトキシシンナメート、メチル−α−シアノ−β−メチル−p−メトキシシンナメート等の化合物が挙げられる。
【0099】
カンファー誘導体系としては、例えば、ベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー等の化合物が挙げられる。
【0100】
レゾルシノール系としては、例えば、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−tert−ブチルベンゾイルレゾルシノール)等の化合物が挙げられる。
【0101】
オキサリニド系としては、例えば、4,4′−ジ−オクチルオキシオキサニリド、2,2′−ジエトキシオキシオキサニリド、2,2′−ジ−オクチルオキシ−5,5′−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2′−ジ−ドデシルオキシ−5,5′−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2′−エチルオキサニリド、N,N′−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2′−エトキシオキサニリド等の化合物が挙げられる。
【0102】
ジベンゾイルメタン系としては、例えば、4−tert−ブチル−4′−メトキシジベンゾイルメタン等の化合物が挙げられる。
【0103】
クマリン誘導体系としては、例えば、7−ヒドロキシクマリン等の化合物が挙げられる。
ベンゾオキサジン系としては、3−メチル−2−(2−(1−メチル−2、5−ジエチル−1H−ピロール−3−イル)エテニル)−ベンゾオキサゾリウムクロライド、
3−エチル−2−(2−(1−エチル−2、5−ジメチル−1H−ピロール−3−イル)エテニル)−ベンゾオキサゾリウムクロライド等が挙げられる。
ベンザルマロネート系としては、ジメチコジエチルベンザルマロネート等が挙げられる。
安息香酸誘導体としては、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等が挙げられる。
【0104】
<酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)>
酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)は、熱分解し易い傾向にあるピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)の熱分解を抑制したり、紫外線照射を受けてキサントン系紫外線吸収剤(c2)から発生するラジカルによってアクリル系共重合(A)が酸化されることを抑制したりする機能を担う。
【0105】
本発明で用いられる酸化防止剤(d1)としては、熱や光エネルギーによりピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)やキサントン系紫外線吸収剤(c2)から発生する酸素ラジカルが、アクリル系共重合体(A)を酸化することを抑制し、アクリル系共重合体(A)の劣化を防止する機能を担う化合物である。例えば、フェノール系酸化防止剤,燐系酸化防止剤,硫黄系酸化防止剤等が使用される。
【0106】
フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系酸化防止剤、が挙げられ、モノフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリン−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、等が挙げられる。
【0107】
ビスフェノール系酸化防止剤としては、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、等が挙げられる。
【0108】
高分子型フェノール系酸化防止剤としては、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス−(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノール、等が挙げられる。
【0109】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3'−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0110】
燐系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジ−クレジルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよいが、着色し難い点で燐系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0111】
本発明で用いられる光安定剤(d2)は、光エネルギーによって発生し得る酸素ラジカルの発生自体を抑制する機能を担う化合物であり、酸素ラジカルの発生を抑制することによってアクリル系共重合体(A)の酸化劣化を抑制することができる。光安定剤(d2)としては、ヒンダードアミン系化合物(以下、「HALS」と略記する。)、ヒンダードフェノール系化合物等が使用でき、HALSが好ましい。
【0112】
HALSとしては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、2,2'−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)アルキルアミンニッケル、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物等を挙げることができる。
【0113】
ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、4,4’−チオビス(6−tert−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデン-ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(6−tert―ブチル−4−メチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(6−tert―ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert―ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−tert―ブチル−o−クレゾール)、4,4’−チオビス(6−tert―ブチル−o−クレゾール)、1,1,3−トリス(5−tert―ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,2’−ビス(2−ドデシルチオニトキシカルボニル)プロパン、1,6−ビス(3,5−ビ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセトオキシ)ヘキサン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、テトラビス[β-(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスホネート、ジ−エチル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスホネート等が挙げられ、前記フェノール系酸化防止剤としても使用される。
【0114】
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物は、水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基を有するアクリル系共重合体(A)100重量部に対して、反応性化合物(B)を0.01〜20重量部、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)を0.001〜10重量部及び/又はキサントン系紫外線吸収剤(c2)を0.001〜10重量部、その他の紫外線吸収剤(c3)を0.001〜10重量部、酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを0.001〜10重量部含有することが好ましく、反応性化合物(B)を0.01〜10重量部、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)を0.005〜5重量部及び/又はキサントン系紫外線吸収剤(c2)を0.005〜5重量部、その他の紫外線吸収剤(c3)を0.005〜5重量部、酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを0.005〜5重量部含有することがより好ましい。
【0115】
反応性化合物(B)の含有量が、20重量部を越えると、得られる紫外線遮断性樹脂組成物が紫外線遮断性粘着剤の場合、被着体に対する接着性が低下する傾向にある。また0.01重量部未満では、得られる紫外線遮断性樹脂組成物が紫外線遮断性粘着剤の場合、凝集力が低下し、貼着性能の対熱耐久性、対湿熱耐久性が低下する傾向にある。
共重合体(A)中の官能基と反応性化合物(B)中の官能基との反応により、粘着剤組成物が三次元架橋することにより、外界の熱や力の変化による後述の各紫外線吸収剤の被覆層への離脱が少なくなる。その結果、各種被着体との密着性を確保するだけでなく、含有している各紫外線吸収剤の局在化による凝集物発生を抑制し、従来よりも過酷な条件下における貼着性能の耐久性(対熱耐久性、対湿熱耐久性)をも向上することができる。従って、過酷な環境に曝される有機EL用ガラス部材の表面に、本発明の紫外線遮断性粘着剤を用いてなる紫外線遮断性粘着シートを貼着することによって、有機EL素子を長期にわたり紫外線から保護することができる。
【0116】
紫外線吸収剤(c1)と(c2)との合計量、または紫外線吸収剤(c3)の量のいずれかが0.001重量部未満だと紫外線遮断性能をほとんど期待できない。一方、紫外線吸収剤(c1)と(c2)との合計量、または紫外線吸収剤(c3)の量のいずれかが10重量部よりも多いと、得られる紫外線遮断性樹脂組成物が着色したり、透明性が低下したりするので、紫外線吸収剤(c1)と(c2)との合計量、及び紫外線吸収剤(c3)の量はそれぞれ0.001〜10重量部であることが好ましい。
【0117】
キサントン系紫外線吸収剤(c2)を使用する場合に、酸化防止剤(d1)が0.001重量部未満だと、アクリル系共重合体(A)の酸化をあまり抑制できない。ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)を使用する場合に、光安定剤(d2)が0.001重量部未満だと、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)の熱分解をあまり抑制できない。
一方、酸化防止剤(d1)と光安定剤(d2)との合計量が10重量部よりも多いと、後述する粘着シートの透明性が低下したり、(d1)(d2)自身の色による着色が問題となったりするおそれがあるため好ましくない。
【0118】
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、蛍光増白剤、各種樹脂、シランカップリング剤、軟化剤、染料、顔料、タッキファイヤ、可塑剤、充填剤および老化防止剤等を含有することができる。
蛍光増白剤とは、染料の一種であり、紫外線を吸収して、青白い光(蛍光)に変えて、白色感を増加させる効能を有する化合物である。
蛍光増白剤としては、ベンズオキサゾ−ル系、トリアジン系、ピラゾリン系、クマリン系化合物等を挙げることができる。
【0119】
<紫外線遮断性粘着剤><紫外線遮断性粘着シート>
本発明の紫外線遮断性樹脂組成物は、紫外線遮断性粘着剤として好適であり、有機溶剤を含有することが好ましい。紫外線遮断性粘着剤の場合、上述したようにアクリル系共重合体(A)として、ガラス転移温度が−80〜0℃のアクリル系共重合体(A1)を用いることが好ましい。
用いられる有機溶剤としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。
【0120】
本発明の紫外線遮断性粘着剤を用いてなる紫外線遮断性粘着シートについて説明する。
本発明の紫外線遮断性粘着シートは、以下に示す態様を呈する。
(1)剥離処理されてなるシート/紫外線遮断性粘着剤から形成される紫外線遮断性粘着剤層/剥離処理されていないプラスチック基材フィルム
(2)剥離処理されてなるシート/紫外線遮断性粘着剤から形成される紫外線遮断性粘着剤層/剥離処理されてなるシート
【0121】
本発明に用いられる剥離処理されてなるシートは、セパレーターとか剥離シートとも呼ばれ、被着体に貼着するまで粘着剤層表面を保護し、貼着の際に剥がされるものであり、紙やプラスチックフィルムの表面にシリコーン含有塗料等が塗布されてなるものである。
【0122】
また、プラスチック基材フィルムとは、その表面が剥離処理されていないプラスチックフィルムであり、プラスチック基材シートとも呼ばれる。
このようなプラスチック基材フィルムとしては、
ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
また、複数のプラスチックフィルムが積層された多層プラスチックフィルムも本発明においてプラスチック基材フィルムとして用いることができる。例えば、ヨウ素含有ポリビニルアルコールフィルムの両面をトリアセチルセルロースフィルムで挟んだ偏光フィルムや、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の、各種光学特性を持ついわゆる光学フィルムも使用できる。
【0123】
上記(1)の態様の紫外線遮断性粘着シートは、例えば、
(1−1)剥離処理されてなるシートの剥離処理面に、紫外線遮断性粘着剤を塗工し、必要に応じて液状媒体を除去して紫外線遮断性粘着剤層を形成し、形成された紫外線遮断性粘着剤層の表面にプラスチック基材フィルムを積層したり、
(1−2)プラスチック基材フィルム上に、紫外線遮断性粘着剤を塗工し、必要に応じて液状媒体を除去して紫外線遮断性粘着剤層を形成し、形成された紫外線遮断性粘着剤層の表面に、剥離処理されてなるシートの剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
また、上記(2)の態様の紫外線遮断性粘着シートは、例えば、
(2−1)剥離処理されてなるシートの剥離処理面に、紫外線遮断性粘着剤を塗工し、必要に応じて液状媒体を除去して紫外線遮断性粘着剤層を形成し、形成された紫外線遮断性粘着剤層の表面に、剥離処理されてなるシートの剥離処理面を積層することによって得ることができる。
【0124】
アクリル系共重合体(A)と、反応性化合物(B)との架橋反応は、粘着剤乾燥時、及び形成された粘着剤層表面に剥離処理されてなるシートやプラスチック基材フィルムを積層する際、さらには積層した後に進行する。
【0125】
本発明の紫外線遮断性粘着剤を剥離処理されてなるシートやプラスチック基材フィルムに塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。
乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては樹脂組成物の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
紫外線遮断性粘着剤層の厚さは、0.1μm〜200μmであることが好ましく、0.1μm〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な粘着力が得られないことがあり、200μmを超えても粘着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0126】
<有機ELセル用部材>
本発明の有機ELセル用部材は、有機EL用ガラス部材の表面に、本発明の紫外線遮断性樹脂組成物から形成される紫外線遮断性樹脂組成物層が担持されてなるものである。紫外線遮断性樹脂組成物層によって、有機EL素子を紫外線から保護し、有機EL素子自体の劣化を抑制・防止し、視認性を向上し、明所におけるコントラストを向上することができる。
紫外線遮断性樹脂組成物が紫外線遮断性塗料の場合、有機EL用ガラス部材の表面に直に紫外線遮断性塗料を塗工し、紫外線遮断性塗膜を形成することにより、本発明の有機ELセル用部材を得ることができる。
紫外線遮断性樹脂組成物が紫外線遮断性粘着剤の場合も同様にして、有機EL用ガラス部材の表面に直に紫外線遮断性粘着剤を塗工し、形成された紫外線遮断性粘着剤層の表面にプラスチック基材フィルムを積層することにより、本発明の有機ELセル用部材を得ることができる。紫外線遮断性樹脂組成物が紫外線遮断性粘着剤の場合は、上記した紫外線遮断性粘着シートを用いることによっても本発明の有機ELセル用部材を得ることができる。
【0127】
例えば、本発明の紫外線遮断性粘着シートのうち、
上記(1)の態様の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層を介して、プラスチック基材フィルムを有機EL用ガラス部材に貼着するか、
または、上記(2)の態様の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートのうち一方を剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層にプラスチック基材フィルムを積層し、次いで残っている剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層を介して、プラスチック基材フィルムを有機EL用ガラス部材に貼着するか、
あるいは、上記(2)の態様の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートのうち一方を剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層に有機EL用ガラス部材を積層し、次いで残っている剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層にプラスチック基材フィルムを積層することによって、本発明の有機ELセル用部材を得ることができる。
【実施例】
【0128】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0129】
<アクリル系共重合体(A)の製造>
(合成例1)
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、下記アクリル系単量体、有機溶剤、重合開始剤をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0130】
[重合槽]
アクリル酸n−ブチル 36.5部
アクリル酸メチル 12.5部
アクリル酸 1.0部
酢酸エチル 30部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸n−ブチル 36.5部
アクリル酸メチル 12.5部
アクリル酸 1.0部
酢酸エチル 36部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0131】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中、環流温度下で反応を開始した。反応が開始したところで、滴下装置から上記アクリル系単量体と重合開始剤及び有機溶剤との混合物の滴下を開始した。1時間かけて滴下終了後、さらに攪拌しながら8時間熟成した。反応終了後、トルエン:167部を加えて室温まで冷却し、アクリル系共重合体の透明な溶液(固形分約30%)を得た。
【0132】
(合成例2)
合成例1において用いたアクリル系単量体の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、アクリル系共重合体を含む透明な溶液を得た。
[重合槽]
アクリル酸n−ブチル 31.5部
メタクリル酸メチル 15部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 2.0部
アクリル酸 1.5部
酢酸エチル 30部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸n−ブチル 31.5部
メタクリル酸メチル 15部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 2.0部
アクリル酸 1.5部
酢酸エチル 36部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0133】
(合成例3)
合成例1において用いたアクリル系単量体の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、アクリル系共重合体を含む透明な溶液を得た。
[重合槽]
アクリル酸n−ブチル 37.5部
アクリル酸メチル 11.5部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 1.0部
酢酸エチル 30部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸n−ブチル 37.5部
アクリル酸メチル 11.5部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 1.0部
酢酸エチル 36部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0134】
合成例1〜3より得られたアクリル系共重合体(A)溶液につき、溶液外観、不揮発分濃度、溶液粘度、及び重量平均分子量を以下の方法に従って求め、結果を表1に示した。
【0135】
《溶液外観》
各合成例で得た各共重合体の溶液の外観を目視にて評価した。
【0136】
《不揮発分濃度の測定》
各合成例で得た各共重合体溶液、約1gを金属容器に秤量し、150℃オーブンにて20分間乾燥して、残分を秤量して残率計算をし、不揮発分濃度(%)を算出した。
【0137】
《溶液粘度の測定》
各合成例で得た各共重合体溶液を23℃中でB型粘度計(東京計器社製)にて、#3のローターを使用して12rpm、1分間回転の条件で測定し、溶液粘度(mPa・s)とした。
【0138】
《重量平均分子量(Mw)の測定》
測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPC System−21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0139】
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体溶液100部に対して、反応性化合物(B)として、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン(以下、「TAT」という)を0.06部、一般式(I)で示されるピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)の一種である2−シアノ−N−ドデシル−4−1−エチル−2−ピロリジニリデンブテンアミド(以下、「CNEPA」という)を0.5部、その他の紫外線吸収剤(c3)の一種である4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(以下、「BMDBM」という)を1.5部、酸化防止剤(d1)として、トリス(2,4−ジ−tert)−ブチルフェニル)フォスファイト(以下、「TBPP」という)を0.1部加えてよく撹拌して、紫外線遮断性粘着剤を得た。
【0140】
上記紫外線遮断性粘着剤を剥離処理されたポリエステルフィルム(以下、「剥離フィルム」という。)上に塗工し、100℃で2分間乾燥させ、厚みが25μmの粘着剤層を形成した。
形成された粘着剤層に、反射防止フィルムの片面を接触させ、剥離フィルム/粘着剤層/反射防止フィルムという構成の積層体を得た。
次いで、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成(暗反応)させて、粘着剤層の架橋反応を進行させ、粘着シートを得た。
【0141】
(比較例1)
実施例1で使用したピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)を加えないこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0142】
(比較例2)
実施例1で使用したその他の紫外線吸収剤(c3)を加えないこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0143】
(比較例3)
実施例1で使用した酸化防止剤(d1)を加えないこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0144】
(実施例2)
実施例1で使用した一般式(I)で示されるピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)の代わりに、一般式(II)で示されるピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)として2−シアノ−N−ヒドロキシ−4−(1−エチル−2−ピロリジニリデン)−2−スルホンアミド(以下、「CNPSA」という)を、その他の紫外線吸収剤(c3)の一種であるBMDBMの代わりに、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール(以下、「BTBCP」という)を、それぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、紫外線遮断性粘着剤及び粘着シートを得た。
【0145】
(比較例4)
実施例2で使用したピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)を加えないこと以外は、実施例2と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0146】
(比較例5)
実施例2で使用したその他の紫外線吸収剤(c3)を加えないこと以外は、実施例2と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0147】
(比較例6)
実施例2で使用した酸化防止剤(d1)を加えないこと以外は、実施例2と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0148】
(実施例3)
合成例1で得られた共重合体溶液100部に対して、反応性化合物(B)として、TATを0.06部、一般式(III)で示されるキサントン系紫外線吸収剤(c1)の一種である10−エチル−2−クロロアクリドン(以下、「ECNA」という)を1.5部、その他の紫外線吸収剤(c3)の一種であるBMDBMを1.5部、光安定剤(d2)として、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(以下、「TMPSE」という)を0.2部加えてよく撹拌して、紫外線遮断性粘着剤を得、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0149】
(比較例7)
実施例3で使用したキサントン系紫外線吸収剤(c2)を加えないこと以外は、実施例3と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0150】
(比較例8)
実施例3で使用したその他の紫外線吸収剤(c3)を加えないこと以外は、実施例3と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0151】
(比較例9)
実施例3で使用した光安定剤(d2)を加えないこと以外は、実施例3と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0152】
(実施例4、5)
実施例3で使用した一般式(III)で示されるキサントン系紫外線吸収剤(c2)の代わりに、一般式(IV)で示される2,4−ジイソプロピルキサントン(以下、「DIPS」という)(実施例4)、一般式(V)で示される2,5−ジクロロチオキサントン(以下、「DCSS」という)(実施例5)をそれぞれ用い、また、その他の紫外線吸収剤(c3)の一種であるBMDBMの代わりに、BTBCPを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、紫外線遮断性粘着剤を得、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0153】
(比較例10)
実施例4で使用したキサントン系紫外線吸収剤(c2)を加えないこと以外は、実施例4と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0154】
(比較例11、13)
実施例4,5で使用したその他の紫外線吸収剤(c3)を加えないこと以外は、それぞれ実施例4,5と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0155】
(比較例12、14)
実施例4,5で使用した光安定剤(d2)を加えないこと以外は、それぞれ実施例4、5と同様にして、粘着剤及び粘着シートを得た。
【0156】
(実施例6、8)
実施例2で使用した合成例1で得られた共重合体溶液の代わりに、合成例2で得られた共重合体溶液を(実施例6)、合成例3で得られた共重合体溶液を(実施例8)、それぞれ用い、また、反応性化合物(B)としてTATの代わりに、トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体(以下、「TDI/TMP」という)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、紫外線遮断性粘着剤及び粘着シートを得た。
【0157】
(実施例7、9)
実施例4で使用した合成例1で得られた共重合体溶液の代わりに、合成例2で得られた共重合体溶液を(実施例7)、合成例3で得られた共重合体溶液を(実施例9)、それぞれ用い、また、反応性化合物(B)としてTATの代わりに、TDI/TMPを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、紫外線遮断性粘着剤及び粘着シートを得た。
【0158】
(実施例10)
合成例1で得られた共重合体溶液100部に対して、反応性化合物(B)としてTATを0.06部、一般式(I)で示されるピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)としてCNEPAを0.5部、一般式(III)で示されるキサントン系紫外線吸収剤(c2)としてECNAを2.0部、その他の紫外線吸収剤(c3)としてBMDBMを1.0部、酸化防止剤(d1)としてTBPPを0.1部、光安定剤(d2)としてTMPSEを0.3部加えてよく撹拌して、紫外線遮断性粘着剤を得、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0159】
実施例及び比較例で得られた粘着剤の配合割合を表2に示した。また得られた粘着シートについて、後述する方法に従って、貼着性能の耐久性(対熱耐久性、対湿熱耐久性)、UV遮断性(初期、対熱耐久性、対湿熱耐久性)、ヘイズを評価し、結果を表2に示した。
【0160】
《貼着性能の耐久性(対熱耐久性、対湿熱耐久性)》
粘着シートを150mm×80mmの大きさにカットし、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面にラミネーターを用いてそれぞれ貼着した。
続いて、この反射防止フィルムが貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて反射防止フィルムをガラス板に密着させた。
更に、この反射防止フィルムとガラス板の積層物を、120℃の環境下で1000時間、又は80℃、相対湿度90%の環境下で1000時間、それぞれ放置した後の粘着剤層の浮き、ハガレの有無を目視で観察し、3段階で評価した。
○:「浮きおよびハガレが全く認められない。」
△:「若干浮き又はハガレ認められるが、実用上問題がない。」
×:「全面的に浮きやハガレがあり、実用不可である。」
【0161】
《紫外線遮蔽能の耐久性(対熱耐久性、対湿熱耐久性)》
上記の貼着性能の耐久性評価用試料と同様の構成、即ち「反射防止フィルム/粘着剤層/フロートガラス/粘着剤層/反射防止フィルム」の試料を得、初期、120℃の環境下で1000時間放置後、または80℃、相対湿度90%の環境下で1000時間放置後、それぞれの波長420nm以下の紫外線遮蔽能を、23℃相対湿度50%の条件下で「Ubest V−570」(日本分光(株)社製)を用いて測定し、3段階で評価した。
○:「波長420nm以下の紫外線のカット率が100%であり、実用上問題なし。」
△:「波長420nm以下の紫外線のカットが率95%以上100%未満であり、実用上問題がある。」
×:「波長420nm以下の紫外線のカット率が95%未満であり、実用不可である。」
【0162】
《光学特性(ヘイズ)の評価方法》
各実施例、比較例で得られた粘着剤を、剥離処理されたポリエステルフィルムに塗工して100℃で2分間乾燥させ、厚さ25μmの粘着剤層を設けた後に、更に剥離処理されたポリエステルフィルムを被せた。この剥離処理ポリエステルフィルムに挟まれた粘着剤層を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成させた後、両方の剥離処理ポリエステルフィルムを取り除き、粘着剤層自体の外観を目視判定し、さらにヘイズを「NDH−300A」[日本電色工業(株)製]で測定した。
○:「実用上全く問題がない。ヘイズ:1未満。」
△:「曇り等は認められない。ヘイズ:1以上3未満。」
×:「若干曇りが認められ、実用上問題がある。ヘイズ:3以上。」
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】紫外線遮断性粘着剤層が設けられてなる有機EL部材の構成の一例を示す模式図である。
【0166】
【図2】紫外線遮断性粘着剤層が設けられてなるLED部材の構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0167】
1:有機EL素子
2:ガラス層
3:紫外線遮断性粘着剤層
4:ポリエステルフィルム
5:ポリエステルフィルム保護用ハードコート層
6:発光ダイオード(LED)素子
7:アクリル樹脂層もしくはガラス層
8:アクリル樹脂層もしくはガラス層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基及び/又は(無水)カルボン酸基を有するアクリル系共重合体(A)、水酸基、(無水)カルボン酸基のうち少なくともいずれかと反応し得る反応性化合物(B)、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)もしくはキサントン系紫外線吸収剤(c2)の少なくともいずれか一方、及び前記紫外線吸収剤(c1)(c2)以外の紫外線吸収剤であって、380nm以下の波長の紫外線を吸収し得る紫外線吸収剤(c3)を含有し、さらに酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを含むことを特徴とする紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項2】
ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)が、下記一般式(I)あるいは(II)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

[一般式(I)及び(II)中、R1〜R2は、それぞれ独立にH、OH基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜26である直鎖状もしくは分岐鎖状あるいは脂環状炭化水素基及び炭素数2ないし3であるポリオキシアルキレン基から選ばれるいずれかであり、更に、R1は、ヘテロ原子を含んでいても良い環状炭化水素基であっても良い。]
【請求項3】
キサントン系紫外線吸収剤(c2)が、下記一般式(III)〜(V)のいずれかで示される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【化3】

【化4】

【化5】

[一般式(III)〜(V)中、R3〜R11は、それぞれ独立にH、OH基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜26である直鎖もしくは分岐鎖状あるいは脂環状炭化水素基及び炭素数2ないし3であるポリオキシアルキレン基から選ばれるいずれかであり、更に、R11はヘテロ原子を含んでいても良い環状炭化水素基であっても良い。]
【請求項4】
酸化防止剤(d1)が、フェノール系、燐系もしくは硫黄系化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項5】
光安定剤(d2)が、ヒンダートアミン系化合物であること特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項6】
アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、ピロリジン−アミド系紫外線吸収剤(c1)を0.001〜10重量部及び/又はキサントン系紫外線吸収剤(c2)を0.001〜10重量部含有し、その他の紫外線吸収剤(c3)を0.001〜10重量部含有することを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項7】
アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、反応性化合物(B)を0.01〜20重量部含有することを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項8】
アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、酸化防止剤(d1)もしくは光安定剤(d2)の少なくともいずれかを0.001〜10重量部含有することを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項9】
アクリル系共重合体(A)が、ガラス転移温度が−80〜0℃のアクリル系共重合体(A1)であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項10】
紫外線遮断性粘着剤であることを特徴とする請求項1ないし9いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10記載の紫外線遮断性粘着剤から形成される紫外線遮断性粘着剤層の一方の面に剥離処理されてなるシートが積層され、前記紫外線遮断性粘着剤層の他方の面に、プラスチック基材フィルム、もしくは剥離処理されてなるシートが積層されてなることを特徴とする紫外線遮断性粘着シート。
【請求項12】
有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材の表面に、請求項1ないし9いずれか記載の紫外線遮断性樹脂組成物から形成される紫外線遮断性樹脂組成物層が担持されてなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスセル用部材。
【請求項13】
有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材、請求項10記載の紫外線遮断性粘着剤から形成される紫外線遮断性粘着剤層、及びプラスチック基材フィルムが順次積層されてなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスセル用部材。
【請求項14】
請求項11記載の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層を介して、プラスチック基材フィルムを有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材に貼着するか、
または、請求項11記載の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートのうち一方を剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層にプラスチック基材フィルムを積層し、次いで残っている剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層を介して、プラスチック基材フィルムを有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材に貼着するか、
あるいは請求項11記載の紫外線遮断性粘着シートから剥離処理されてなるシートのうち一方を剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層に有機エレクトロルミネッセンス用ガラス部材を積層し、次いで残っている剥離処理されてなるシートを剥がし、露出した紫外線遮断性粘着剤層にプラスチック基材フィルムを積層することを特徴とする、
有機エレクトロルミネッセンスセル用部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−284516(P2007−284516A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111849(P2006−111849)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】