説明

組成物、絶縁膜、およびその製造方法

【課題】半導体素子などにおける層間絶縁膜として使用するのに適した、適当な均一な厚さを有するシリコーン系膜が形成可能な、しかも誘電率特性、膜強度に優れた組成物、絶縁膜、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表される化合物、その加水分解物またはそれらの縮合
物を含む組成物。
【化1】


式中、R1は水素原子または置換基である。R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アリールカルボニル基、4級アンモニウム原子を有する基または金属原子である。mは6〜30の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物に関し、さらに詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として、適当な均一な厚さを有する塗膜が形成可能な、しかも、誘電率特性などに優れた絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法および絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な
層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
【0003】
しかし、無機材料の膜の中で最も低い誘電率を示すCVD−SiO2膜でも、誘電率は
約4程度である。また、低誘電率CVD膜として最近検討されているSiOF膜の誘電率は約3.3〜3.5であるが、この膜は吸湿性が高く、使用しているうちに誘電率が上昇するという問題がある。
【0004】
かかる状況下、絶縁性、耐熱性、耐久性に優れた絶縁膜材料として、オルガノポリシロキサンに高沸点溶剤や熱分解性化合物を添加して空孔を形成し、誘電率を下げる方法が知られている。しかしながら、上記のような多孔質膜では、多孔化することにより誘電率特性が下がっても、機械強度が低下すること、吸湿による誘電率増加がおこることなどが問題になっていた。また、互いに連結した空孔が形成されるため、配線に用いられた銅が、絶縁膜中に拡散することなどが問題となっていた。
【0005】
一方、環状構造を有するシロキサン化合物を用いて誘電率低下を図る試みは公知であるが(特許文献1、2、3参照)、これらに示されているのは、ケイ原子4または5個を含む環状構造を有する化合物だけであるが、これらの化合物の有する環構造内の空間が小さいため、絶縁膜の密度を低下させる効果が小さく、誘電率は十分に低下しなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−281904号公報
【特許文献2】特開2000−309753号公報
【特許文献3】特開2005−023075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、上記問題点を解決するための組成物、絶縁膜製造方法およびこれを用いて形成された絶縁膜に関し、さらに詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜として使用するのに適した、適当な均一な厚さを有するシリコーン系膜が形成可能な、しかも誘電率特性、膜強度に優れた組成物、絶縁膜、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段より達成されることが見出された。
(1) 下記一般式(I)で表される化合物、その加水分解物またはそれらの縮合
物を含む組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R1は水素原子または置換基である。R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アリールカルボニル基、4級アンモニウム原子を有する基または金属原子である。mは6〜30の整数を表す。
【0011】
(2) 一般式(I)のR2が水素原子である上記(1)に記載の組成物。
(3) 一般式(I)のR1がアリール基または炭素原子数4以上のアルキル基である上記(1)または(2)に記載の組成物。
(4) 一般式(I)のR1がフェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基または水酸基である上記(3)に記載の組成物。
【0012】
(5)一般式(I)のmが6、8または12である上記(1)〜(4)に記載の組成物。(6)一般式(I)で表される化合物その加水分解物またはそれらの縮合物に加えて、
一般式(II)で表される化合物、その加水分解物またはそれらの縮合物を含む組成物。
3nSiX4-n (II)
式中、R3は水素原子または非加水分解性基であり、Xは加水分解性基である。nは0
〜3の整数を表す。
【0013】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物を用いて製造された絶縁膜。
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、焼成する
ことを特徴とする絶縁膜の製造方法。
(9)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物を用いて製造されたポリマー。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体素子などにおける層間絶縁膜として使用するのに適した、誘電率特性に優れた絶縁膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に用いられる化合物について詳述する。
本発明において、縮合物とは、化合物が加水分解の後に発生したシラノール基の縮合生成物をいう。ただし、縮合生成物において、前記シラノール基がすべて縮合している必要はなく、一部が縮合したもの、縮合の程度が異なっているものの混合物などを包含した概念である。
【0016】
一般式(I)で示される化合物について説明する。
1は水素原子または置換基である。置換基の例としては、環状もしくは鎖状のアルキ
ル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、および水酸基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有してもよい。
低い誘電率の膜を与える点で、R1は、炭素原子4個以上を含む基であることが好ましい。中でも、シクロアルキル基または、分岐アルキル基が好ましく、シクロヘキシル基、
シクロペンチル基、t−ブチル基が、より好ましく、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基が最も好ましい。また、耐熱性およびプラズマ耐性の高い膜を与える点ではフェニル基が、好ましく、高い強度の膜を与える点では水酸基が好ましい。なお、R1としての炭素原子4個以上を含む基について炭素原子数の上限は好ましくは10である。
【0017】
2は水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜10、例えば、エチル基、ブチル基)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜10)、アシル基(好ましくは炭素原子数2〜10、例えば、CH3CO−)、アリールカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜12、例えばベンゾイル基)、4級アンモニウム原子を有する基(好ましくは炭素原子数22以下、より好ましくは炭素原子数16以下、更に好ましくは炭素原子数10以下、例えば、−N(CH3)4)または金属原子(例えば、Na,K,Cu,Mn)であるが、信頼性の高い低誘電率膜を低温焼成で形成できる点で、4級アンモニウムイオンまたは水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0018】
mは、6〜30の整数であるが、6〜15が好ましい。誘電率低下効果と、化合物の入手性の観点から6、8、12が特に好ましい。
【0019】
一般式(I)中の化合物は、1種類のR1からなるユニットから構成されていても良い
し、異なった種類のR1を有するユニットから構成されていても良い。R2についても同様である。
一般式(I)中の化合物は同一のユニットから構成されていることが好ましい。
【0020】
一般式(I)について置換基の立体的な位置関係については特に限定は無く、全てのR1が−Si−O−で形成される環に対して同方向に存在していても良いし、R1の方向が規則的に変わっても良いし、規則性がなくても良いが、膜中で均質な構造を形成するために、R1の方向には一定の規則性があることが好ましい。
また本発明の組成物には、一般式(I)で表される複数の異なった化合物もしくはその縮合物が含まれていても良い。
【0021】
以下に一般式(I)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
一般式(I)で表される化合物は、Inorganic Chemistry, 2002, 41, 6898-6904、
J. Gen. Chem. USSR, 1991, 61;6.2, 1257-1261, WO03/104305、Journal of Organometallic Chemistry (1996), 514(1-2), 29-35等に記載の方法に従って、合成できる。
【0027】
本発明の組成物は、一般式(I)で表される化合物に加えて、一般式(II)で表される化合物、その加水分解物またはそれらの縮合物を含んでいても良い。
3nSiX4-n (II)
【0028】
3は水素原子または非加水分解性基であるが、メチル基、フェニル基またはシクロア
ルキル基が好ましい。
Xは加水分解性基を表す。Xとしては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシル基などを挙げることができる。塗布液安定性等の観点から、Xとしてはアルコキシ基が好ましい。ここで、アルコキシ基としては、好ましくは炭素原子数1〜5の低級アルコキシ基であり、これらのアルコキシ基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。Xとして最も好ましいのはメトキシ基およびエトキシ基である。
nは0〜3の整数であるが、膜強度の観点から1または0が好ましい。
【0029】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
式(II)で表される化合物の添加量は、式(I)で表される化合物に対して1〜1000モル%が好ましく、5〜500モル%がより好ましい。
【0030】
本発明の組成物は、分子量が小さすぎると塗布面状が悪化しやすく、大きすぎるとろ過が困難になるため、GPCのポリスチレン換算重量平均分子量が300〜500万の範囲になるように縮合しておくことが好ましい。重量平均分子量としては500〜50万が好ましく、800〜20万が、より好ましい。
シラン化合物を縮合させる際に、塩基触媒、酸触媒、金属キレート化合物を使用しても良い。
【0031】
塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリメチルイミジン、1−アミノ−3−メチルブタン、ジメチルグリシン、3−アミノ−3−メチルアミンなどを挙げることができ、アミンあるいはアミン塩が好ましく、有機アミンあるいは有機アミン塩が特に好ましく、アルキルアミン、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドが最も好ましい。これらのアルカリ触媒は1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0032】
金属キレート化合物としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナ
ート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(
アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができ、好ましくはチタンまたはアルミニウムのキレート化合物、特に好ましくはチタンのキレート化合物を挙げることができる。これらの金属キレート化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0033】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸などの無機酸;酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物などの有機酸を挙げることができ、有機カルボン酸をより好ましい例として挙げることができる。これらの酸触媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0034】
上記触媒の使用量は、一般式(I)または(II)で表される化合物などのシラン化合物の総量1モルに対して、通常、0.00001〜10モル、好ましくは0.00005〜5モルである。また、本発明において、一般式(I)で表される化合物を縮合するときの温度は通常0〜250℃、好ましくは10〜180℃である。
【0035】
本発明の絶縁膜形成組成物は、溶剤を用いて支持体上に塗布する。使用できる溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、エチレンカーボネート、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が好ましく、これらの溶剤を単独あるいは混合して使用する。
【0036】
上記の中でも、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒド
ロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
【0037】
このようにして得られる本発明の組成物の全固形分濃度は、好ましくは、2〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。組成物の全固形分濃度が2〜30質量%であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、塗布液の保存安定性もより優れるものである。
【0038】
このようにして得られる本発明の絶縁膜形成用材料を、シリコンウエハ、SiO2 ウエハ、SiNウエハなどの基材に塗布する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段が用いられる。
【0039】
この際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用して加熱することによって、ガラス質または巨大高分子、またはその混合物の絶縁膜を形成することができる。
この際加熱雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、などで行うことができるが、焼成温度の最高値が300℃以上430℃以下の条件で焼成することが好ましい。焼成時間は通常1分〜20時間であるが、15分〜10時間が好ましい。
【0040】
より具体的には、本発明の絶縁膜形成材料を、例えばスピンコート法により、基板(通常は金属配線を有する基板)上に塗布し、予備熱処理を行うことにより溶媒を乾燥させるとともに、膜形成組成物に含まれるシロキサンをある程度架橋させ、次いで、300℃以上430℃以下の温度で最終熱処理(アニール)を行うことにより低誘電率の絶縁膜を形成できる。
【0041】
この方法により、誘電率の低い絶縁膜、すなわち、比誘電率が2.6以下、好ましくは2.4以下の絶縁膜膜を得ることができる。本発明の組成物に熱分解性化合物等を添加すること等によって多孔質化することにより、さらに誘電率を低下させてもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の部および%は、特記しない限り、それぞれ質量部および質量%であることを示している。
【0043】
〔合成例1〕
メタノール50mlとPd/C(10%)500mgを反応容器に入れ、ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン1.5gを加えて、12時間攪拌した。反応液をろ過して、例示化合物(I−2)のメタノール溶液を得た。
同様にして比較化合物Aおよび比較化合物Bのメタノール溶液をそれぞれ得た。
【0044】
【化6】

【0045】
〔合成例2〕
合成例1で得られた例示化合物(I−2)のメタノール溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10mlを加え、メタノールを減圧留去した後、130℃で3時間攪拌し、組成物(I−2−1)を得た。
【0046】
比較化合物Aおよび比較化合物Bをそれぞれ用いて同様に反応し、比較用組成物(A−1)および比較用組成物(B−1)を得た。
【0047】
〔合成例3〕
合成例1で得られた例示化合物(I−2)のメタノール溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10mlを加え、メタノールを減圧留去した後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液を5μl加え、室温で12時間攪拌し組成物(I−2−2)を得た。
【0048】
〔合成例4〕
合成例1で得られた例示化合物(I−2)のメタノール溶液にプロピレングリコールモ
ノメチルエーテルアセテート10mlを加え、メタノールを減圧留去した後、シュウ酸50mgを加えた。室温で1時間攪拌し、組成物(I−2−3)を得た。
【0049】
〔合成例5〕
Inorganic Chemistry, 41, 6898-6904 (2002) および Journal of Organometallic Chemistry (1996), 514(1-2), 29-35 に記載の方法に従って、本発明の化合物I−A、I−B及びI−Cと比較化合物Cを合成した。また、化合物(I−A)をBull. Chem. Soc. Jpn; 27; 1954, 441-443に記載の方法に従って還元し、化合物(I−D)を得た。
【0050】
【化7】

【0051】
〔合成例6〕
50mlの反応容器に、例示化合物(I−A)1.5gおよびシクロヘキサノン1gを入れ、130℃3時間攪拌し、組成物(I−A−1)を得た。
例示化合物(I−B)、(I−C)、(1−D)および比較化合物Cをそれぞれ用いて、同様にして反応系(I−B−1)、(I−C−1)、(1−D−1)および比較用組成物(C−1)を得た。
【0052】
〔合成例7〕
50mlの反応容器に、例示化合物(I−A)1.5gおよびシクロヘキサノン10gを入れ、ジアザビシクロウンデセン5μlを加え、室温で1時間攪拌し、組成物(I−A−2)を得た。
【0053】
例示化合物(I−B)、(I−C)および(I−D)をそれぞれ用いて、同様にして反応系(I−B−2)、(I−C−2)および(I−D−2)を得た。
【0054】
〔合成例8〕
50mlの反応容器に、例示化合物(I−A)1.5gおよびシクロヘキサノン10gを入れ、シュウ酸50mgを加えた。室温で1時間攪拌し、組成物(I−A−3)を得た。
例示化合物(I−B)、(I−C)および(I−D)をそれぞれ用いて、同様にして反応系(I−B−3)、(I−C−3)および(I−D−3)を得た。
【0055】
(実施例)
合成例の組成物を0.2μm孔径のテフロン(登録商標)製フィルターでろ過後、スピンコート法で4インチシリコンウエハ上に塗布後、ホットプレート上で110℃で1分間ついで200℃で1分間、基板を乾燥し、さらに窒素雰囲気のクリーンオーブン中で400℃で60分間加熱することによって塗膜を作成し、フォーディメンジョンズ社製水銀プローブを用いて、誘電率(測定温度25℃)を測定し、比誘電率を求めた。
【0056】
本塗膜の評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
同じ置換基を有する同士を比較すると、本発明の組成物は低誘電率の膜を形成できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物、その加水分解物またはそれらの縮合物を含む組成物。
【化1】

式中、R1は水素原子または置換基である。R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アリールカルボニル基、4級アンモニウム原子を有する基または金属原子である。mは6〜30の整数を表す。
【請求項2】
一般式(I)のR2が水素原子である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一般式(I)のR1がアリール基または炭素原子数4以上のアルキル基である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
一般式(I)のR1がフェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基または水酸基である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
一般式(I)のmが6、8または12である請求項1〜4に記載の組成物。
【請求項6】
一般式(I)で表される化合物、その加水分解物またはそれらの縮合物に加えて、一般式(II)で表される化合物、その加水分解物またはそれらの縮合物を含む組成物。
3nSiX4-n (II)
式中、R3は水素原子または非加水分解性基であり、Xは加水分解性基である。nは0
〜3の整数を表す。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物を用いて製造された絶縁膜。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、焼成することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物を用いて製造されたポリマー。

【公開番号】特開2006−273845(P2006−273845A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50794(P2006−50794)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】