説明

経路案内装置

【課題】制御部における処理負荷を軽減しつつ、ロータリーにおける案内を適切に行うこと。
【解決手段】地図データは、ロータリーRに対して、そのロータリーリンクR1〜R6に繋がる接続道路リンクLa,Lb,Lc、Ldの端部とロータリーRの中心とを結ぶダミーリンクD1〜D4を有する。ロータリーRが案内対象地点となったとき、ロータリーRに進入するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第1のダミーリンクと、ロータリーから退出するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第2のダミーリンクとを特定し、これら第1及び第2のダミーリンクの角度差に基づいて、ロータリーにおける車両が進むべき方向を案内する。これにより、ロータリーRにおける方向案内を、単に2本のダミーリンクの角度差に基づいて行うことが可能になり、処理負荷を軽減しつつ、適切な方向案内を行うことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地まで案内経路に沿って車両が走行できるように案内を行う経路案内装置に関し、特にロータリーにおいて適切な案内を行うことを可能とした経路案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーにおいて分かりやすい方向案内を行うことを目的として、例えば特許文献1に示す装置が提案されている。この従来装置においては、まず、ロータリーに入る道路と出る道路との角度差及び取り付け位置の角度に基づいて、直進判定を行う。例えば入る道路と出る道路との角度差が30°以内である場合には、ロータリーにおける進行方向は直進と判定して、直進案内をする。さらに、入る道路と出る道路との角度差が30°より大きくとも、その角度差が45°以下であり、かつ入る道路と出る道路との取り付け位置の角度が30°以内である場合には直進と判定し、直進案内を行う。
【0003】
また、入る道路と出る道路との角度差が150°以上210°以下であって、その名称が等しく、それら入る道路と出る道路に接続された接続道路が道路番号の等しい対面通行道路であり、さらに、入る道路と出る道路とが一方通行道路であって、隣接して存在しているとの判定が全て成立した場合には、車両は一方通行道路を通ってロータリーにてUターンするものとみなして一方通行のUターン案内を行う。すなわち、この場合、車両は、上記接続道路から、一方通行道路である入る道路を通ってロータリーに進入し、そのロータリーをほぼ一周して、一方通行道路である出る道路を通って、再び上記接続道路に戻ることになる。
【0004】
さらに、入る道路から出る道路までのロータリーリンクを含む角度変位を、時計回りの角度を負、反時計回りの角度を正として、積算して求める。そして、−180°<角度変位<−150°の場合には右に戻る方向、−150°<角度変位<0°の場合には右折、0°<角度変位<150°の場合には左折、及び150°<角度変位<180°の場合には、左に戻る方向と判定して、左右方向の案内を行う。
【特許文献1】特開平11−51684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に記載の従来装置では、直進案内、一方通行のUターン案内、左右方向の案内等を行うために、ロータリー内のリンク、ロータリーに入る道路、ロータリーから出る道路、およびそれら入る道路及び出る道路に接続された接続道路の角度や位置、道路番号、一方通行道路か対面通行道路か等を判定する必要がある。すなわち、ロータリーにおける車両が進むべき方向を案内するために、非常に複雑な演算処理が必要となっていた。
【0006】
本発明は上述した点に鑑みてなされたものであり、制御部における処理負荷を軽減しつつ、ロータリーにおける案内を適切に行うことが可能な経路案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の経路案内装置は、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
道路を複数のリンクによって示した道路地図データを記憶する地図記憶手段と、
道路地図データに基づいて、目的地に達する案内経路を設定する案内経路設定手段と、
案内経路設定手段が設定した案内経路に沿って車両が走行するように、車両の現在位置が案内経路における案内対象地点に接近したとき、当該案内対象地点において車両が進むべき方向を案内する案内手段とを備えた経路案内装置であって、
地図記憶手段が記憶する道路地図データは、ロータリーである旨の属性が付与されたロータリーリンクに繋がる接続道路リンクの端部とロータリーの中心とを結ぶダミーリンクを有し、
案内手段は、ダミーリンクが設定されたロータリーが案内対象地点となったとき、ロータリーに進入するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第1のダミーリンクと、ロータリーから退出するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第2のダミーリンクとを特定し、これら第1及び第2のダミーリンクの角度差に基づいて、ロータリーにおける車両が進むべき方向を案内することを特徴とする。
【0008】
上述したように、請求項1に記載の経路案内装置における道路地図データは、ロータリーリンクに繋がる接続道路リンクの端部とロータリーリンクの中心とを結ぶダミーリンクを有する。そして、車両が案内対象地点としてのロータリーに接近した場合には、ロータリーに進入するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第1のダミーリンクと、ロータリーから退出するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第2のダミーリンクとの角度差に基づいて、車両が進むべき方向を案内する。
【0009】
すなわち、ダミーリンクを設けることにより、ロータリーにおける方向案内を、通常の交差点における方向案内と同様に、単に2本のリンクの角度差に基づいて行うことが可能になる。従って、演算処理負荷を軽減しつつ、ロータリーにおける案内を適切に行うことが可能になる。
【0010】
ここで、ロータリーの直径が大きい場合や道幅が広い場合には、車両は、接続道路リンクから直角にロータリーに進入したり、ロータリーから退出したりするのではなく、接続道路リンクとロータリーとの間を斜めに走行するように進む場合がある。このため、複数のリンクによって示されるロータリーに直角に接続道路リンクを接続すると、車両の位置がそのリンクからずれて、車両のロケーション精度が低下する場合がある。このため、車両が実際に走行する位置に対応するように、ロータリーへの接続道路リンクに進入連絡リンクや退出連絡リンクが付加されることがある。
【0011】
また、上述した特許文献1に記載されるように、ロータリーに対する進入・退出のし易さ等を考慮して、実際に、ロータリーとそのロータリーに繋がる接続道路との間に、一方通行の進入連絡道路及び退出連絡道路が設けられる場合がある。このような場合にも、ロータリーリンクと接続道路リンクとの間に、進入連絡リンクや退出連絡リンクが介在することになる。
【0012】
図4に、進入連絡リンクLa1,Ld1及び退出連絡リンクLa2,Ld2の一例を示す。これらは、ロータリーRに進入する道路、及びロータリーRから退出する道路に該当するが、図4に示すように、進入連絡リンクLa1,Ld1及び退出連絡リンクLa2,Ld2は、接続道路リンクLa,Ldとは異なる向きに設定される。このため、これら進入連絡リンクLa1,Ld1や退出連絡リンクLa2,Ld2の向きを基準として、ロータリーRにおける車両がすすむべき方向を案内すると、車両の運転者の感覚とは随分異なる方向が案内される可能性がある。
【0013】
例えば、図4において車両が接続道路リンクLaからロータリーRに進入し、ロータリーRのリンクR1,R2,R3を反時計回りに走行した後、接続道路リンクLdへと向かう場合を想定する。この場合、接続道路リンクLaに付加された進入連絡リンクLa1をロータリーRに進入する道路、接続道路リンクLdに付加された退出連絡リンクLd2をロータリーRから退出する道路とすると、両道路の角度差から、左に戻る方向との左右方向の案内がされてしまう。しかしながら、この場合には、運転者は接続道路リンクLaを走行してきたのであるから、ロータリーRにおいて左折するとの左右方向の案内が、その感覚に合致する案内となる。
【0014】
そのため、請求項2に記載の経路案内装置では、ダミーリンクは、少なくとも、ロータリーリンクとそのロータリーリンクに繋がる少なくとも1本の接続道路リンクとの間に、当該接続道路リンクとは方向の異なる、ロータリーリンクへの進入のための進入連絡リンク及びロータリーリンクからの退出のための退出連絡リンクが介在するロータリーリンクに対して設けられ、進入連絡リンク及び退出連絡リンクが介在する接続道路リンクに関しては、当該進入連絡リンク及び退出連絡リンクを除外して、接続道路リンクの端部とロータリーリンクの中心とを結ぶように設定されることを特徴とする。
【0015】
このように、進入連絡リンク及び退出連絡リンクを無視して、接続道路リンクの端部とロータリーの中心とを結ぶようにダミーリンクを設定すると、進入連絡リンク及び退出連絡リンクの角度が考慮されなくなるので、運転者の感覚に合致した分かりやすい方向案内を行うことができる。
【0016】
請求項3に記載するように、経路案内表示装置は、さらに、表示装置と、道路地図データに基づいて、案内経路を含む道路地図を表示装置に表示させる表示制御手段とを備え、
表示制御手段は、ダミーリンクを除く、道路を示す複数のリンクを用いて道路地図を表示させることが好ましい。
【0017】
これにより、道路地図データはダミーリンクを有しながら、道路地図としては、実際の道路形状に合致した道路地図のみを表示することができ、表示地図の見易さを損なうことを防止できる。
【0018】
請求項4に記載するように、案内手段は、音声によって、案内対象地点における車両が進むべき方向を案内することが好ましい。音声を用いて方向案内を行うことにより、運転者は、車両の前方に視線を向けたまま、車両が進むべき方向を認識でき、車両の安全走行に寄与できるためである。
【0019】
請求項5に記載するように、道路地図データは、その道路地図データに含まれる全てのロータリーリンクに対して、ダミーリンクを有することが好ましい。これにより、ロータリーと通常の交差点とにおいて、車両が進むべき方向を案内するための処理の一部を共通化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係わる経路案内装置を備えた車両用ナビゲーション装置20の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように、車両用ナビゲーション装置20は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、VICS送受信機11、音声コントローラ12、リモコンセンサ16、及びこれらに接続された制御回路としてのナビゲーションECU8を備えている。
【0021】
ナビゲーションECU8は通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、ナビゲーションECU8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。
【0022】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、走行距離を算出するための車速(距離)センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した内の一部で構成しても良い。
【0023】
地図データ入力器6は、ノードデータ及びリンクデータからなる道路データ、地形等を示す背景データ、地名等を表示するための文字データなどからなる、地図を描画するために必要な地図データをナビゲーションECU8に入力する装置である。この地図データ入力器6は、地図データを記憶する記憶媒体を備え、その記憶媒体としては、記憶するデータ量からCD−ROMやDVD−ROM等を用いるのが一般的であるが、メモリカードやハードディスクなどの書き換え可能な媒体を用いてもよい。
【0024】
ここで、道路データにおける、ノードデータ及びリンクデータの構成について説明する。ノードデータは、複数の道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類、信号機の有無、規制情報等の各データから構成されている。
【0025】
一方、リンクデータは、道路毎に固有の番号を付したリンクID、リンク長、始点及び終点のノード座標、道路種別(高速道路,有料道路,国道,県道,細街路、ロータリー内道路、ロータリー接続道路等)、道路幅員、車線数、リンク走行時間、法定制限速度等の各データから構成されている。すなわち、リンクデータのリンクとは、地図上の各道路を、交差点、分岐点などを示すノードにより複数に分割し、2つのノード間をリンクとして規定したものである。従って、始点及び終点のノード座標は、リンクの始端と終端の座標となる。
【0026】
これらのノードデータ及びリンクデータにより、地図上に道路を描画したり、ダイクストラ法等の公知の手法を用いて、出発地から目的地までの案内経路を算出することが可能になる。
【0027】
また、本実施形態においては、ロータリー、特に、ロータリーリンクとその接続道路リンクとの間に進入連絡リンク及び退出連絡リンクが設けられたロータリーに対応して、接続道路リンクの端部とロータリーの中心とを結ぶダミーリンクが設けられ、地図データ入力器6の記憶媒体に記憶されている。このダミーリンクは、道路地図の表示には用いられず、ロータリーにおける車両が進むべき方向を音声案内するためにのみ用いられる。
【0028】
ここで、上述した進入連絡リンク及び退出連絡リンクに関して、図4に基づいて説明する。ロータリーRの直径が大きい場合或いは接続道路やロータリーRの道幅が広い場合には、車両は、接続道路から直角にロータリーRに進入したり、ロータリーRから退出したりするのではなく、接続道路とロータリーRとの間を斜めに走行するように進む場合がある。このため、複数のリンクR1〜R6によって示されるロータリーRに直角に接続道路リンクLa,Ldを接続すると、車両の位置がそのリンクLa,Ldからずれて、車両のロケーション精度が低下する場合がある。このため、車両が実際に走行する位置に対応するように、ロータリーリンクへの接続道路リンクLa,Ldに進入連絡リンクLa1,Ld1や退出連絡リンクLa2,Ld2が付加されることがある。
【0029】
また、ロータリーRに対する進入・退出のし易さ等を考慮して、実際に、ロータリーRとそのロータリーRに繋がる接続道路との間に、一方通行の進入連絡道路及び退出連絡道路が設けられる場合がある。このような場合にも、ロータリーリンクR1〜R6と接続道路リンクLa,Ldとの間に、進入連絡リンクLa1,Ld1や退出連絡リンクLa2,Ld2が介在することになる。
【0030】
なお、図4に示す例では、車両はロータリーRを反時計回りに走行することを前提としているため、ロータリーに向かって、接続道路リンクLa,Ldの右側に進入連絡リンクLa1,Ld1が設けられ、左側に退出連絡リンクLa2,Ld2が設けられている。
【0031】
図4において、進入連絡リンクLa1,Ld1及び退出連絡リンクLa2,Ld2を有する接続道路リンクLa,Ldに関しては、ダミーリンクD1,D4が、その進入連絡リンクLa1,Ld1及び退出連絡リンクLa2,Ld2を除外して、接続道路リンクLa,Ldのロータリー側端部とロータリーRの中心とを結ぶように設定されている。また、進入連絡リンク及び退出連絡リンクを持たない接続道路リンクLb,Lcに関しては、ダミーリンクD2,D3が、接続道路リンクLb,LcのロータリーRへの接続位置とロータリーRの中心とを結ぶように設定されている。なお、ロータリーRの中心は、厳密に設定される必要はなく、ロータリーRの形状や、接続道路の本数に応じて、少なくともロータリーR内に属する位置に設定されれば良い。
【0032】
また、ダミーリンクD1〜D4は、ロータリーRを特定するための識別情報、もしくは対応する接続道路リンクと関連付けて記憶されており、これらの情報から、所望のダミーリンクを読み出すことが可能である。
【0033】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチとして構成され、各種入力に使用される。
【0034】
外部メモリ9は、例えばメモリカードやハードディスクドライブ(HDD)等の読み書き可能な記憶媒体を有し、テキストデータや画像データ等の各データの保存のために利用される。
【0035】
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイによって構成され、表示装置10の画面には、ナビゲーションECU8の処理により、例えば、位置検出器1から入力された車両の現在位置に対応する自車位置マークと、地図データ入力器6より入力された地図データによって生成される車両周辺の道路地図が表示される。
【0036】
VICS送受信機11は、道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介して、VICSセンタから配信される道路交通情報を受信し、また必要な情報をビーコンに送信する装置である。受信した道路交通情報は、ナビゲーションECU8で処理し、例えば渋滞情報や規制情報は道路地図上に重ねて表示される。
【0037】
音声コントローラ12は、音声認識装置14と接続されており、マイク15から入力された音声信号が音声認識装置14によって認識され、その認識情報を取得することにより、音声信号に対応する操作信号をナビゲーションECU8へ出力する。また、音声コントローラ12は、ナビゲーションECU8によって指示された、車両が進むべき方向を案内するための合成音声や喚起音をスピーカ13に出力する。
【0038】
リモコンセンサ16は、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称する)17からの操作信号を無線にて受信する。このリモコン17も、上記した操作スイッチ群7と同様に、各種の入力に使用される。例えば、本実施形態のナビゲーション装置20は経路案内機能を備えており、操作スイッチ群7又はリモコン17によって目的地が入力されると、現在位置(或いは、ユーザが指定した出発地)から目的地までの最適な経路を自動的に探索して案内経路を算出し、その案内経路に従って経路案内処理を行う。この経路案内時には、表示装置10の画面に、案内経路が強調表示された道路地図が表示されたり、車両が交差点やロータリー等の案内対象地点に接近した時には、その案内対象地点の拡大案内図を表示したり、音声にて車両が進むべき方向を案内したりする。
【0039】
次に、車両用ナビゲーション装置20が地図表示等のために実行するメインルーチンについて、図2のフローチャートを用いて説明する。このメインルーチンにおいて、目的地が設定されたと判定された場合、経路案内処理が実行される。
【0040】
図2において、まず、ステップS10では、位置検出器1の各センサによって測定された位置データに基づいて、車両の現在位置を算出する。このとき、GPS受信機5による位置データは、上述の道路データの座標データ(緯度と経度)と同じ形態で取得される。また、地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、車速センサ4によって自車両の進行方向及び走行距離に関するデータが取得され、過去に算出、もしくは確定された車両位置を基準として、現在位置の座標データの算出を行う(自立航法による座標データの算出)。
【0041】
なお、現在位置は、基本的には、自立航法により算出された座標データに基づいて求められる。ただし、GPS受信機5による位置データが取得されている場合には、両者を比較し、その差が所定距離以上である場合には、現在位置として、GPS受信機5による位置データを採用する。
【0042】
続いて、ステップS20では、ステップS10にて算出された車両の現在位置の座標に基づいて、車両周辺の地図データの読み込みを行う。そして、ステップS30において、車両の現在位置を示す自車両マークと、読み込んだ周辺地図とを表示装置10に表示する。このとき、マップマッチング処理により、道路上に車両位置が特定され、自車両マークはその特定された車両位置に対応するように表示される。
【0043】
ステップS40では、操作スイッチ群7やリモコン17などを用いて、目的地が設定されたか否かを判定する。この判定処理において、目的地が未設定と判定された場合には、ステップS10の処理に戻り、目的地が設定されたと判定された場合には、ステップS50の処理に進む。
【0044】
ステップS50では、現在位置或いはユーザが指定した出発地から目的地までの最適な経路を、公知のダイクストラ法等の手法を用いて、道路データに基づいて探索する。この探索された案内経路に従った経路案内の実行がユーザによって指示された場合に、ステップS60に進んで、経路案内処理を行う。
【0045】
この経路案内処理を、図3のフローチャートに基づいて、説明する。まず、ステップS110にて車両の現在位置を検出し、ステップS120にて車両の現在位置周辺の地図データを読み込む。そして、ステップS130において、車両の現在位置を示す自車両マーク及び周辺地図を表示するとともに、案内経路に該当する道路を着色等によって強調して表示する。
【0046】
次にステップS140では、車両が目的地に到達したか否かを判定する。この判定処理において、目的地に到達したと判定されると、図3に示す経路案内処理を終了する。一方、目的地にまだ達していないと判定されると、ステップS150に進む。ステップS150では、車両が交差点やロータリーなどの案内対象地点に対して所定距離まで接近したか否かが判定される。この判定処理において、案内対象地点には接近していないと判定されると、ステップS110の処理に戻り、案内対象地点に接近したと判定されると、ステップS160の処理に進む。
【0047】
ステップS160では、案内対象地点がロータリーであるか否かが判定される。例えば、車両が走行する道路の道路種別が、ロータリー接続道路である場合に、案内対象はロータリーであると判定できる。もしくは、案内経路を構成するリンクデータにおいて、車両の現在位置から所定距離前方に位置するリンクの道路種別がロータリー内道路(ロータリーリンク)の場合に、案内対象がロータリーであると判定しても良い。その他、案内経路において、ロータリーへの分岐を示す種類のノードデータが存在することに基づいて、案内対象地点がロータリーであると判定することもできる。
【0048】
ステップS160において、案内対象地点がロータリーではないと判定された場合、ステップS170に進み、ロータリーと判定された場合にはステップS180に進む。ステップS170では、交差点等のロータリー以外の案内対象地点において、その案内対象地点に進入する進入リンクと、その案内対象地点から退出する退出リンクを読み出す。一方、ステップS180では、ロータリーへの進入リンクに連なる第1のダミーリンクと、ロータリーからの退出リンクに連なる第2のダミーリンクを読み出す。
【0049】
ステップS190では、ステップS170にて読み出した進入リンクと退出リンクとの角度差、もしくはステップS180にて読み出した第1のダミーリンクと第2のダミーリンクとの角度差を算出する。そして、ステップS200において、その角度差に応じた方向を音声にて報知するとともに、案内対象地点の拡大図を表示装置10に表示して、車両が進むべき方向を案内する。
【0050】
上述した経路案内処理における、特にロータリーでの方向案内処理のメリットについて、図4を用いて説明する。
【0051】
上述したように、本実施形態においては、地図データが、ロータリーリンクR1〜R6に繋がる接続道路リンクLa〜Ldの端部とロータリーリンクR1〜R6の中心とを結ぶダミーリンクD1〜D4を有する。そして、車両が案内対象地点としてのロータリーRに接近した場合には、ロータリーRに進入するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第1のダミーリンクと、ロータリーから退出するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第2のダミーリンクとの角度差に基づいて、車両が進むべき方向を案内する。例えば、進入経路が接続道路リンクLa、退出経路が接続道路リンクLdである場合、第1のダミーリンクはD1となり、第2のダミーリンクはD4となる。この場合、ダミーリンクD1とダミーリンクD4との角度差は時計回り方向に約90度であるため、車両の進行方向は左折方向との案内がなされる。
【0052】
このように、ダミーリンクD1〜D4を設けることにより、ロータリーRにおける方向案内を、通常の交差点における方向案内と同様に、単に2本のリンクの角度差に基づいて行うことが可能になる。従って、ECU8における処理負荷を軽減しつつ、ロータリーRにおける方向案内を適切に行うことが可能になる。
【0053】
さらに、本実施形態では、ダミーリンクD1〜D4を設ける際に、ロータリーRと接続道路リンクLa,Ldとの間に進入連絡リンクLa1,Ld1及び退出連絡リンクLa2,Ld2が介在する場合、それらの進入連絡リンクLa1,Ld1及び退出連絡リンクLa2,Ld2を無視して、接続道路リンクLa,Ldのロータリー側端部とロータリーRの中心とを結ぶようにダミーリンクLa,Ldを設定する。これにより、ロータリーの方向案内に進入連絡リンク及び退出連絡リンクの角度が考慮されなくなるので、運転者の感覚に合致した分かりやすい方向案内を行うことができる。この理由について、以下に詳述する。
【0054】
図4に示すように、進入連絡リンクLa1,Ld1及び退出連絡リンクLa2,Ld2は、接続道路リンクLa,Ldとは異なる向きに設定される。このため、これら進入連絡リンクLa1,Ld1や退出連絡リンクLa2,Ld2の向きを基準として、ロータリーRでの車両が進むべき方向を案内すると、車両の運転者の感覚とは随分異なる方向が案内される可能性がある。
【0055】
例えば、図4において車両が接続道路リンクLaからロータリーRに進入し、ロータリーRのリンクR1,R2,R3を反時計回りに走行した後、接続道路リンクLdへと向かう場合を想定する。この場合、接続道路リンクLaに付加された進入連絡リンクLa1をロータリーRに進入する道路、接続道路リンクLdに付加された退出連絡リンクLd2をロータリーRから退出する道路とすると、両道路の角度差から、左に戻る方向との左右方向の案内がされてしまう。しかしながら、この場合には、運転者は接続道路リンクLaを走行してきたのであるから、ロータリーRにおいて左折するとの左右方向の案内が、その感覚に合致する案内となるのである。
【0056】
上述したように、ダミーリンクを用いることにより、接続道路リンクLaからロータリーRに進入し、接続道路リンクLdへ退出する場合には、ロータリーRにおける案内方向は左折方向となり、運者車の間隔に合致した方向案内を行うことができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明による経路案内装置は、上述した実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することができる。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、接続道路リンクとロータリーリンクとの間に進入連絡リンク及び退出連絡リンクが介在するロータリーに対して、ダミーリンクを設定する例について説明した。しかし、このダミーリンクは、進入連絡リンク及び退出連絡リンクの存在の有無に係わらず、全てのロータリーに対して設定されることが好ましい。これにより、ロータリー毎に、進行方向の案内のための処理を変更することが防止できる。さらに、ロータリーと通常の交差点とにおいて、車両が進むべき方向を案内するための処理の一部を共通化することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係わる、車両用ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】車両用ナビゲーション装置が地図表示等のために実行するメインルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートにおける経路案内処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】ロータリーRの一例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1…位置検出器
6…地図データ入力器
7…操作スイッチ群
8…ナビゲーションECU
9…外部メモリ
10…表示装置
11…VICS受信機
20…車両用ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
道路を複数のリンクによって示した道路地図データを記憶する地図記憶手段と、
前記道路地図データに基づいて、目的地に達する案内経路を設定する案内経路設定手段と、
前記案内経路設定手段が設定した案内経路に沿って車両が走行するように、前記車両の現在位置が前記案内経路における案内対象地点に接近したとき、当該案内対象地点において車両が進むべき方向を案内する案内手段とを備えた経路案内装置であって、
前記地図記憶手段が記憶する道路地図データは、ロータリーである旨の属性が付与されたロータリーリンクに繋がる接続道路リンクの端部と前記ロータリーの中心とを結ぶダミーリンクを有し、
前記案内手段は、前記ダミーリンクが設定されたロータリーが案内対象地点となったとき、前記ロータリーに進入するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第1のダミーリンクと、前記ロータリーから退出するための案内経路に対応する接続道路リンクに連なる第2のダミーリンクとを特定し、これら第1及び第2のダミーリンクの角度差に基づいて、前記ロータリーにおける前記車両が進むべき方向を案内することを特徴とする経路案内装置。
【請求項2】
前記ダミーリンクは、少なくとも、前記ロータリーリンクとそのロータリーリンクに繋がる少なくとも1本の接続道路リンクとの間に、当該接続道路リンクとは方向の異なる、前記ロータリーリンクへの進入のための進入連絡リンク及び前記ロータリーリンクからの退出のための退出連絡リンクが介在するロータリーリンクに対して設けられ、前記進入連絡リンク及び退出連絡リンクが介在する接続道路リンクに関して、当該進入連絡リンク及び退出連絡リンクを除外して、前記接続道路リンクの端部と前記ロータリーリンクの中心とを結ぶように設定されることを特徴とする請求項1に記載の経路案内装置。
【請求項3】
表示装置と、
前記道路地図データに基づいて、前記案内経路を含む道路地図を前記表示装置に表示させる表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記ダミーリンクを除く、前記道路を示す複数のリンクを用いて前記道路地図を表示させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置。
【請求項4】
前記案内手段は、音声によって、案内対象地点における車両が進むべき方向を案内することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の経路案内装置。
【請求項5】
前記道路地図データは、その道路地図データに含まれる全てのロータリーリンクに対して、前記ダミーリンクを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の経路案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−266739(P2006−266739A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82257(P2005−82257)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】