説明

結晶シリコン粒子およびその製造方法ならびにこれを用いた光電変換素子

【課題】高品質な結晶シリコン粒子を提供する。
【解決手段】シリコン融液にYb、Lu、またはYの単体あるいはYb、Lu、またはY元素を含む化合物のうち少なくとも1つを添加する工程と、シリコン融液を一方向に排出し、粒状4に凝固させる凝固工程と、を備える。シリコン融液は、窒化珪素を含んで成る坩堝1で溶融される。また、凝固工程は、シリコン融液の過冷却度を自然放冷時の過冷却度よりも小さい弱過冷却度でシリコン融液を凝固させてシリコン粒子5を形成した後、シリコン融液の凝固開始温度領域でシリコン粒子5を保温し、シリコン粒子5を結晶化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶シリコン粒子およびその製造方法ならびに太陽電池等に利用される光電変換装置に用いられる光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電変換装置として、結晶シリコンウエハを用いた光電変換効率(以下、変換効率ともいう)の高い太陽電池が実用化されている。この結晶シリコンウエハは、結晶性が良く、かつ不純物が少なくてその分布に偏りのない大型の単結晶シリコンインゴットから切り出されて作製されている。しかし、大型の単結晶シリコンインゴットは作製するのに長時間を要するために生産性が悪く、これにより高価となるので、大型の単結晶シリコンインゴットを必要とせず、高変換効率の次世代太陽電池の出現が強く望まれている。
【0003】
そこで、今後の市場において有望な光電変換装置の一種として、光電変換素子として結晶シリコン粒子を用いた太陽電池が注目されている。
【0004】
現在、結晶シリコン粒子を作製するための原料は、単結晶シリコン材料を粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や流動床法によって気相合成された高純度シリコンを用いている。そして、原料のサイズあるいは重量による分別を行った後に、赤外線や高周波誘導コイルを用いて原料を容器内で再度溶融し、その後に自由落下させることで球状化させる溶融落下方法が用いられている。
【0005】
また、この溶融落下方法においては、ノズルを振動させながら半導体の溶融物体を落下させ、ノズルから落下する液体または固体の粒子を、結晶化加熱手段によって加熱して再溶融して、その粒子が気相中に存在している状態で、粒子を単結晶または多結晶にする球状半導体粒子の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2002−292265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の結晶シリコン粒子の製造方法によれば、シリコン融液の凝固点の制御が成されていないため、結晶化前のシリコン粒子の表面に複数の核が生成していた。そのため、このような従来の製造方法では、上記核を起点として多数の結晶が成長しやすくなり、シリコン粒子が多結晶化し、結晶の品質が低下する場合があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、高品質、具体的にはより単結晶に近い結晶シリコン粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の結晶シリコン結晶の製造方法は、シリコン融液にYb、Lu、またはYの単体あるいはYb、Lu、またはY元素を含む化合物のうち少なくとも1つを添加する工程と、前記シリコン融液を一方向に排出し、粒状に凝固させる凝固工程と、を具備することを特徴とする。
【0009】
本発明のシリコン結晶粒子は、Yb、Lu、またはYの単体あるいはYb、Lu、またはY元素を含む化合物を含有してなることを特徴とする。
【0010】
本発明の光電変換素子は、第1導電部と該第1導電部の一部を覆うように形成された第2導電部とを有する請求項4に記載のシリコン結晶粒子と、互いに間隔を空けて配置された前記シリコン結晶粒子の第1導電部と電気的に接続された導電性基体と、前記第2導電部と電気的に接続されるとともに、少なくとも隣接する前記シリコン結晶粒子間に配された電極と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の結晶シリコン粒子の製造方法によれば、Yb、Lu、またはY成分をシリコン融液に添加することにより、他の核生成を抑制し最初に生成した核を優先的に成長させることができるため、粒界の少ない結晶シリコン粒子を製造することができる。
【0012】
また、本発明の結晶シリコン粒子は、粒界が少なく、極めて単結晶に近いものとすることができるため、高品質な結晶とすることができるとともに、当該結晶シリコン粒子を用いて成る光電変換素子は、その光電変換効率をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の結晶シリコン粒子の製造方法、結晶シリコン粒子、光電変換素子に係る実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法の一実施形態に用いられる製造装置の概略構成を示す断面図である。図1において、1は坩堝であり、この坩堝1の底部にはノズル部1aが設けられている。坩堝1の下方には、落下管2が上下方向に配置されている。坩堝1内のシリコン原料を加熱し溶融させ、シリコン融液を作製するための誘導加熱コイル等の加熱装置3が設けられている。
【0015】
本実施の形態では、坩堝1で作製したシリコン融液にYb、Lu、またはYの単体あるいはYb、Lu、またはY元素を含む化合物のうち少なくとも1つを添加した後、シリコン融液をノズル1aより鉛直方向(一方向)に排出し、粒状に凝固させている。
【0016】
このように、シリコン融液にYb、Lu、またはYの単体あるいはYb、Lu、またはY元素を含む化合物のうち少なくとも1つをシリコン融液に添加することによって、Yb、Lu、またはY成分をシリコンに添加した融液が凝固開始すると、偏析により融液側のYb、Lu、またはYの濃度が高くなり凝固点を下げる(凝固点降下)ことができる。その結果、本実施の形態によれば、他の核生成を抑制し最初に生成した核を優先的に成長させることができるため、粒界の少ない結晶シリコン粒子を製造することができる。
【0017】
シリコン融液に添加するYb(イッテルビウム)、Lu(ルテニウム)、およびY(イットリウム)は、それぞれ単体でもよいが、シリコン結晶の品質を低下させにくいものであれば、上記元素が他の元素と化合してできる化合物であってもよい。このような化合物としては、例えば、Yb(酸化イッテルビウム)、Lu(酸化ルテニウム)、Y(酸化ルテニウム)が挙げられる。また、上記添加物は、上述した酸化物以外に、窒化物であってもよい。
【0018】
上記した添加物は、例えば、上記添加物を坩堝1内に直接投入し、シリコン融液に混入させる方法、上記添加物を含む微粒子を浮遊させたガスを坩堝1内に導入し、シリコン融液に混入させる方法等が挙げられる。また、他の方法としては、固体状態のシリコン原料の表面に上記添加物を含む層を形成し、該シリコン原料を坩堝1内に投入しシリコン融液に混入させてもよい。また、間接的に上記添加物をシリコン融液に添加する方法としては、上記添加物を坩堝1の材料に混入させ、シリコン融液を作製する際、坩堝1から上記添加物の一部をシリコン融液に流出させるような方法であってもよい。
【0019】
また、上記添加物の含有量は、結晶シリコン粒子1個に対して、1〜5000ppmであれば、効率良くシリコンを結晶化することができるとともに、製造された結晶シリコン粒子で光電変換素子を作製しても、光電変換効率に対する影響を小さくすることができる。添加濃度の測定はICP−MS等の元素分析法で行う。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る製造方法で製造された結晶シリコン粒子の断面写真であり、図3は、Yb等の添加物を混入させていない従来の製造方法で製造された結晶シリコン粒子の断面写真である。図3に示されるように、従来の製造方法で製造された結晶シリコン粒子は、結晶シリコン粒子の内部に多数の粒界が存在している(同図中の亀裂が粒界)。また、図示していないが、過冷却度を制御しない場合、表面に均一核生成によって製造された結晶シリコン粒子となり数百〜数万個の多数の粒界が存在している。これに対し、図2に示されるように、本実施の形態に係る製造方法で製造された結晶シリコン粒子は、上述したように、粒界がほとんど存在していないため、極めて単結晶に近い状態となる。
【0021】
以下、本実施の形態に係る結晶シリコン粒子の製造方法で用いる製造装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
坩堝1は、シリコン材料を加熱溶融してシリコン融液とするとともに、底部のノズル部1aから粒状のシリコン融液4として排出するための容器である。坩堝1内で加熱溶融したシリコンの融液は、ノズル部1aより落下管2中へ排出され、粒状のシリコン融液4となって落下管2の内部を落下する。
【0023】
坩堝1の材料としては、例えば、炭素,炭化珪素質焼結体,炭化珪素結晶体,窒化ホウ素質焼結体,酸窒化珪素質焼結体,石英,水晶,窒化珪素質焼結体,酸化アルミニウム質焼結体,サファイア,酸化マグネシウム質焼結体等が好ましい。また、これらの材料の複合体、混合体または化合体であってもよい。また、上記材料から成る基体の表面に炭化珪素膜,窒化珪素膜,酸化珪素膜をコーティングしてもよい。また、坩堝1内において原料を融点以上に加熱する加熱方法としては、電磁誘導加熱や抵抗加熱等が好適である。
【0024】
また、窒化珪素にYb、LuまたはY酸化物を添加した坩堝材料を使用するとシリコン融液へ再現性良く容易に添加することができる。Yb、LuまたはY酸化物の添加濃度としては窒化珪素に対する重量比で0.1質量%〜20質量%が好ましい。0.1%未満では添加量不足により効果が小さくなるため好ましくなく、20%を超える場合坩堝強度低下により坩堝破損の危険があるため好ましくない。
【0025】
シリコン融液は、坩堝1のノズル部1aから一方向に排出され、粒状として落下管2内を落下させる。このとき、粒状のシリコン融液4を落下中に冷却して凝固させる(凝固工程)ことによって結晶シリコン粒子5が製造される。
【0026】
このとき、上記凝固工程は、シリコン融液の過冷却度を自然放冷時の過冷却度よりも小さい弱過冷却度でシリコン融液を凝固させてシリコン粒子を形成した後、シリコン融液の凝固開始温度領域でシリコン粒子を一定時間保温し、該シリコン粒子を結晶化する工程を経ることが好ましい。
【0027】
通常、粒状のシリコン融液4が凝固する温度である過冷却度((過冷却度)=(シリコンの融点である1414℃)−(凝固開始温度))によって、結晶性が異なる現象が知られている。溶融落下法によって粒状のシリコン融液4を凝固させる場合、明らかな凝固起点が無いことから、凝固する温度、過冷却度のばらつきが大きく、多くの場合300℃以上の過冷却度(1114℃以下の粒状のシリコン融液4の温度)で凝固する。即ち、自然放冷時の過冷却状態での粒状のシリコン融液4の温度は、1114℃以下となる。このように比較的大きな過冷却度で凝固した結晶シリコン粒子5は、粒界が形成された低品質な多結晶シリコン粒子が形成される場合がある。
【0028】
一方で、上記した凝固工程によれば、過冷却度を小さくするとともに、図4に示すように、凝固開始温度領域で一定時間、粒状のシリコン融液4を保温することによって、結晶の品質を向上させることができる。
【0029】
また、この弱過冷却度は、より高い結晶品質の結晶シリコン粒子を得るという観点から、40℃乃至200℃であることが好ましい。また、上記の弱過冷却度は、粒状のシリコン融液4の平均粒径が100〜600μm程度の場合に特に有効なものである。
【0030】
ノズル1aからシリコン融液を液滴として排出する際に、坩堝1内の雰囲気ガス(アルゴンガス等)を大気圧よりも大きくすれば、融液の液面を加圧することによって、液滴を効率的に排出させることができる。これにより、ノズル1aから排出される液滴の個数を10000個/秒程度とすることができる。ノズル1aの孔の直径は特に限定されるものではないが、排出される液滴の大きさが直径50〜700μm程度とするならば、ノズル1aの孔の直径は、40〜300μm程度である。
【0031】
ノズル1aから融液を液滴として排出する直前から、坩堝1の一端(下端)に設けられたノズル1aに3次元運動を行わせると好ましい。ノズル1aの3次元運動は、例えば、ノズル1aを重力の方向に沿って往復運動(1次元運動)等させる縦方向の運動と、縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とを組み合わせた複合運動である。溶融した原料はノズルから柱状体(以下、液柱という)として排出されるが、この液柱に縦方向の振動を加えることによって、液柱を複数の液滴に分裂させることができる。なお、上述したような振動をノズル1aに与える装置としては、例えば電磁駆動装置、圧力駆動装置、圧電駆動装置等が挙げられる。
【0032】
縦方向の運動は、ノズル1aから液柱として排出された融液が複数の液滴に分離しやすくするという観点から、縦方向の運動の周波数(振動数)は、1kHz〜50kHz程度がよい。なお、縦方向の運動は、完全な往復運動でなくてもよく、縦長の楕円軌道等であってもよい。縦方向の運動によって、融液の液滴分離を制御することにより、均一な大きさの液滴に分離させ、その結果均一な大きさのシリコン粒子が製造可能となるため好ましい。
【0033】
横方向の2次元振動は、複数の液滴がお互いの間隔を広げる方向への運動させることができる。たとえばノズルの延長線を中心として螺旋状に広がりながら落下させることができる。螺旋状に広がりながら落下することができるため、落下中の合体を防止することができるため好ましい。また、より安定して単結晶粒子を得るためには、前記3次元運動を行い液滴をほぼ同じ大きさでかつ落下中に合体させないことがより好ましい。
【0034】
落下管2は、坩堝1のノズル部1aから下方に向けて上下方向に配置され、ノズル部1aから排出された粒状のシリコン融液4を落下中に冷却して凝固させる管である。この落下管2の内部は所望の雰囲気ガスで所望の圧力に制御されている。この所望の雰囲気ガスとしては、不活性ガスがよく、特にはヘリウムガスまたはアルゴンガスが好ましい。ヘリウムガスまたはアルゴンガスは不活性ガスであり、粒状のシリコン融液4への雰囲気ガスからの不純物の混入を防ぐことができる。
【0035】
さらに、ヘリウムガスまたはアルゴンガスは、粒状のシリコン融液4との反応が小さく、粒状のシリコン融液4が凝固して結晶化する際の妨げとなる、粒状のシリコン融液4表面の反応層の形成が抑制できるため好ましい。即ち、過冷却工程を不活性ガスから成る雰囲気ガス中で行うことが好ましい。これにより、粒状のシリコン融液4の表面からの不純物の混入を防ぐとともに、粒状のシリコン融液4の表面における核生成を一定に保つことができる。
【0036】
また、不活性ガスの圧力は、ガス流入量とガス排出量を調整することにより制御することができる。その圧力は大気圧が好ましい。過冷却工程を大気圧の雰囲気ガス中で行うことから、速やかに凝固開始温度に冷却することができ、結晶シリコン粒子5の結晶性のばらつきを抑えることができる。また、製造装置としても短距離の落下で過冷却工程が成立するため、低コスト化が成される。
【0037】
液滴を落下させる際に、坩堝1のノズル部1aから下方に向けて上下方向に配置された落下管の中を落下させる。落下管2は、シリコン等から成る液滴よりも高い融点を有する炭化珪素等から成る。落下管2は、落下する液滴が接触しにくい内径を有するのがよく、1〜5m程度の内径がよい。
【0038】
加熱装置3は、坩堝1内にあるシリコンを加熱し溶融させるための装置である。加熱装置3は、高周波誘導コイル等の誘導加熱装置や抵抗加熱装置等から成る。加熱温度は、シリコンを溶融するため、シリコンの融点である1414℃以上である。抵抗加熱装置を使用する場合、例えば坩堝1と同じ不活性ガスから成る雰囲気ガス中で坩堝1に接触させて加熱するものであり、炭素系ヒーター、例えば、グラファイト,炭素繊維強化カーボン,SiCコート材料,ガラス状炭素コート材料等から成るものが使用可能である。また、炉心管の外側の酸化性雰囲気から間接的に坩堝1を加熱する場合、炭化珪素や珪化モリブデンを含む抵抗線、抵抗板等を有する抵抗加熱装置を使用することができる。
【0039】
また、加熱装置3として、誘導加熱装置を使用する場合、例えば坩堝1に炭素からなるサセプターを接触させ、炉心管(不図示)の外側に高周波誘導コイルを設け、誘導電流によりサセプターを加熱することにより、坩堝1を加熱する方法等がある。
【0040】
次に、上述した本実施の形態に係る製造方法で作製された結晶シリコン粒子を用いて作製された光電変換素子の実施の形態について説明する。
【0041】
本発明の一実施の形態に係る光電変換素子10は、図5に示すように、結晶シリコン粒子11と、導電性基体12と、絶縁層13と、酸化膜14と、透光性導電層15と、電極16と、を備えている。
【0042】
結晶シリコン粒子11は、略球状を成し、第1導電型の半導体部11a(例えばp型)を有し、表層に第2導電型の半導体部11b(例えばn型)を有している。本実施の形態では、第1導電型の半導体部11aで構成された結晶シリコン粒子111の表層に第2導電型の半導体部11bが形成されている。また、本実施の形態において、結晶シリコン粒子111は、その表面が複数の凸部を有する凹凸構造を成している。
【0043】
結晶シリコン粒子11は、p型の第1導電型の半導体部からなる半導体粒子の表面に、リン(P)を含むリン化合物等をドープすることにより、表層に第2導電型の半導体部11bが形成されている。また、結晶シリコン粒子11は、水酸化ナトリウムと、イソプロピルアルコール、ラウリル酸およびn−オクタン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含むウェットエッチング処理溶液等を用いることにより、凸部を形成できるとともに、凸部の先端部を曲面状にできる。
【0044】
第2導電型の半導体部11bの厚みは好ましくは0.2〜3μm程度であり、より好ましくは1μm程度である。このような厚みとすることにより、結晶シリコン粒子11の表層部にpn分離構造をほぼ均一に形成できる。
【0045】
導電性基体12は、結晶シリコン粒子11を支持するとともに、結晶シリコン粒子11に光が照射されることによって生じた電荷を集める機能を有する。導電性基体12の形状は、特に限定されるものでなく、四角形、五角形等の多角形状、または円板状等、用途に応じて様々に変更可能である。導電性基体12の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウムとアルミニウムよりも高い融点を有する金属とから成るアルミニウム合金、鉄、ステンレススチール、ニッケル合金等の金属が挙げられる。一方で、導電性基体12は、上記した金属で形成された導電層を表面に具備するセラミック基板等であってもよい
絶縁層13は、隣接する結晶シリコン粒子11間に配されるものであり、隣接する結晶シリコン粒子11同士を電気的に絶縁する機能を有している。このような絶縁層の絶縁材料としては、例えば、SiO,B,Al,CaO,MgO,P25,Li2O,SnO,ZnO,BaO,TiO2等を任意成分とする材料からなる低温焼成用ガラス材料、上記材料の1種または複数種から成るフィラーを含有したガラス組成物、ポリイミド或いはシリコーン樹脂等の有機系の材料等が挙げられる。絶縁層13の厚みにはとくに限定はなく、絶縁層13上に設けられる透光性導電層15が均一に設けられればよい。
【0046】
酸化膜14は、光電子の再結合を低減する機能を有する。このような保護膜としては、例えば酸化珪素、窒化珪素等が挙げられる。また、酸化膜14の厚みは、10〜1000Å程度が好ましい。このような厚みとすることにより、光電子の再結合を抑制して、効率良く光電子を透光性導電層15へ導くことができる。
【0047】
そして、酸化膜14は、第2導電型の半導体部11bが透光性導電層15と接続されていない部分(非接続部)における第2導電型の半導体部11bの上面に形成されている。そのため、本実施の形態では、透光性導電層15と導通をとるべき第2導電型の半導体部11bの部位以外の部分を酸化膜14で覆うことができるため、第2導電型の半導体部11bと透光性導電層15との界面で光電子の再結合が発生しにくくなり、高い光電変換効率を維持することができる。なお、酸化膜14は、第2導電型の半導体部11bと透光性導電層15との導通部の除き、結晶シリコン粒子11全体を覆っていてもよい。
【0048】
透光性導電層15はスパッタリング法、気相成長法、塗布焼成法等により形成される。透光性導電層15は、SnO2,In23,ITO,ZnO,TiO2等から選ばれる1種または複数種の酸化物系膜等から構成される。また、透光性導電層15は、第2導電型の半導体部11bの表面に沿って形成され、結晶シリコン粒子11の凹凸に沿って形成されることが好ましい。結晶シリコン粒子11の内部で形成されたキャリアを効率よく集めることが可能となるからである。
【0049】
電極16は、透光性導電層上に形成するアルミニウム、銅、ニッケル等からなる金属箔、銀、ニッケル等からなる導電性ペーストをもちいて印刷形成する導電体等である。
【0050】
次に、本実施の形態に係る光電変換素子の製造方法の一例について説明する。
【0051】
まず、p型の結晶シリコン粒子にリン拡散処理を行うことで外表部をnのシリコン層にして、表層部にpn接合を形成する。
【0052】
次に、アルミニウム等からなる導電性基体12の主面上に、互いに間隔を空けるように複数の結晶シリコン粒子を配置し、アルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以上の温度で約2分加熱して、結晶シリコン粒子11を導電性基体12上に接合し、アルミニウムとシリコン界面にP層を形成する。
【0053】
次に、硬いロール等にレジストを塗布して、結晶シリコン粒子11上にレジストを転写して、結晶シリコン粒子11上部のみを被覆する。これを、フッ硝酸に浸漬して、露出したnシリコン膜を除去する。この後、レジストを薄いアルカリ溶液で除去する。
【0054】
次に、結晶シリコン粒子11を上の酸化雰囲気で加熱し、酸化膜14を形成する。次いで、導電性基体12上の多数の結晶シリコン粒子11の間に、ポリイミド等の樹脂溶液を滴下して乾燥させて、絶縁層13を形成した。結晶シリコン粒子及び絶縁層の上に、透光性導電層15としてのITO膜を、80nmの厚みで形成する。最後に、結晶シリコン粒子11の間に、銅等からなる金属箔を透光性導電層15と導通させるように形成する。
【0055】
このように、本実施の形態における光電変換素子では、粒界の少ない結晶シリコン粒子を用いているため、光電変換効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る結晶シリコン粒子の製造方法を利用する際に用いる製造装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る結晶シリコン粒子の製造方法によって作製された結晶シリコン粒子の断面写真である。
【図3】従来の製造方法で作製された結晶シリコン粒子の断面写真である。
【図4】本発明の実施の形態に係る結晶シリコン粒子の製造方法における結晶シリコン粒子の温度プロファイルを説明するためのグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る光電変換装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1:坩堝
1a:ノズル
2:落下管
3:加熱装置
4:粒状のシリコン融液
5、11:結晶シリコン粒子
11a:第1導電型の半導体部
11b:第2導電型の半導体部
12:導電性基体
13:絶縁層
14:酸化膜
15:透光性導電層
16:電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコン粒子の製造方法であって、
シリコン融液にYb、Lu、またはYの単体あるいはYb、Lu、またはY元素を含む化合物のうち少なくとも1つを添加する工程と、
前記シリコン融液を一方向に排出し、粒状に凝固させる凝固工程と、を備えた結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン融液は、窒化珪素を含んで成る坩堝で溶融されることを特徴とする結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記凝固工程は、前記シリコン融液の過冷却度を自然放冷時の過冷却度よりも小さい弱過冷却度で前記シリコン融液を凝固させてシリコン粒子を形成した後、前記シリコン融液の凝固開始温度領域で前記シリコン粒子を保温し、該シリコン粒子を結晶化することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項4】
Yb、Lu、またはYの単体あるいはYb、Lu、またはY元素を含む化合物を含有してなる結晶シリコン粒子。
【請求項5】
第1導電部と該第1導電部の一部を覆うように形成された第2導電部とを有する請求項4に記載の結晶シリコン粒子と、
互いに間隔を空けて配置された前記結晶シリコン粒子の第1導電部と電気的に接続された導電性基体と、
前記第2導電部と電気的に接続されるとともに、少なくとも隣接する前記結晶シリコン粒子間に配された電極と、を備えた光電変換素子。



【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−126393(P2010−126393A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302305(P2008−302305)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】