説明

絶縁シート及び積層構造体

【課題】熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を導電層に接着するのに用いられ、未硬化状態でのハンドリング性に優れており、加工性に優れた硬化物を得ることができ、さらに絶縁破壊特性、熱伝導性及び耐熱性に優れた硬化物を得ることができる絶縁シートを提供する。
【解決手段】熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体4を導電層2に接着するのに用いられ、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量3万以上のポリマー(A)と、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量600以下のエポキシモノマー(B1)及びオキセタンモノマー(B2)の内の少なくとも一方のモノマー(B)と、硬化剤(C)と、無機フィラー(D)と、有機フィラー(E)とを含有する絶縁シート3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる絶縁シートに関し、より詳細には、未硬化状態でのハンドリング性に優れており、かつ絶縁破壊特性、熱伝導性、耐熱性及び加工性に優れた硬化物を与える絶縁シート、及び該絶縁シートを用いた積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器の小型化及び高性能化が進行している。それに伴って、電子部品の実装密度が高くなってきており、電子部品から発生する熱を放散させる必要が高まってきている。熱を放散させる方法としては、高い放熱性を有し、かつ熱伝導率が10W/m・K以上であるアルミニウム等などの熱伝導体を、発熱源に接着する方法が広く採用されている。また、この熱伝導体を発熱源に接着するのに、絶縁性を有する絶縁接着材料が用いられている。絶縁接着材料には、高い熱伝導率を有することが強く求められている。
【0003】
上記絶縁接着材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤、エラストマー及び無機充填剤を含有する接着剤組成物を、ガラスクロスに含浸させた絶縁接着シートが開示されている。
【0004】
ガラスクロスを用いない絶縁接着材料も知られている。例えば、下記の特許文献2の実施例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノールノボラック、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びアルミナを含む絶縁接着剤が開示されている。ここでは、エポキシ樹脂の硬化剤として、3級アミン、酸無水物、イミダゾール化合物、ポリフェノール樹脂及びマスクイソシアネート等が挙げられている。
【特許文献1】特開2006−342238号公報
【特許文献2】特開平8−332696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の絶縁接着シートでは、ハンドリング性を高めるために、ガラスクロスが用いられていた。ガラスクロスを用いた場合には、薄膜化が困難であり、かつレーザー加工、打ち抜き加工又はドリル穴開け加工等の各種加工が困難であった。また、ガラスクロスを含む絶縁接着シートの硬化物の熱伝導率は比較的低いため、充分な放熱性が得られないこともあった。さらに、ガラスクロスに接着剤組成物を含浸させるために、特殊な含浸設備を用意しなければならなかった。
【0006】
特許文献2の絶縁接着剤は、ガラスクロスを用いていないため、上記のような種々の問題は生じない。しかし、この絶縁接着剤は、未硬化状態ではそれ自体が自立性を有するシートではなかった。このため、絶縁接着剤のハンドリング性が悪かった。
【0007】
本発明の目的は、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を導電層に接着するのに用いられ、未硬化状態でのハンドリング性に優れており、加工性に優れた硬化物を得ることができ、さらに絶縁破壊特性、熱伝導性及び耐熱性に優れた硬化物を得ることができる絶縁シート、及び該絶縁シートを用いた積層構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる絶縁シートであって、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1)及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2)の内の少なくとも一方のモノマー(B)と、硬化剤(C)と、無機フィラー(D)と、有機フィラー(E)とを含有し、前記無機フィラー(D)を20〜60体積%の範囲内で、前記有機フィラー(E)を3〜40体積%の範囲内で、かつ前記無機フィラー(D)と前記有機フィラー(E)とを合計で100体積%未満の割合で含有することを特徴とする、絶縁シートが提供される。
【0009】
本発明の絶縁シートのある特定の局面では、前記有機フィラー(E)は、コアシェル構造を有する。
【0010】
本発明の絶縁シートの他の特定の局面では、前記有機フィラー(E)は、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物と、有機物とを含む複合フィラーである。
【0011】
上記ポリマー(A)は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂を用いた場合、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。また、上記フェノキシ樹脂のガラス転移温度Tgは95℃以上であることが好ましい。この場合には、樹脂の熱劣化をより一層抑制できる。
【0012】
上記硬化剤(C)は、多脂環式骨格を有する酸無水物、もしくはテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物であることが好ましい。また、上記硬化剤(C)は、下記式(1)〜(3)のいずれかで表される酸無水物であることがより好ましい。これらの好ましい硬化剤(C)を用いた場合には、絶縁シートの柔軟性、耐湿性又は接着性をより一層高めることができる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又は水酸基を示す。
【0017】
上記硬化剤(C)は、メラミン骨格もしくはトリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂であることも好ましい。この好ましい硬化剤(C)を用いた場合、絶縁シートの硬化物の柔軟性や難燃性をより一層高めることができる。
【0018】
本発明に係る積層構造体は、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されており、該絶縁層が、本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させて形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る積層構造体では、前記熱伝導体は金属であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る絶縁シートでは、上記(A)〜(E)成分が含有されており、かつ上記無機フィラー(D)と上記有機フィラー(E)とが上記特定の割合で含有されているので、絶縁シートの硬化物を打ち抜き加工又はドリル穴開け加工等する際の加工性を高めることができる。例えば、絶縁シートの硬化物を打ち抜き加工又はドリル穴開け加工する際に、金型の摩耗を抑制できる。
【0021】
さらに、本発明に係る絶縁シートでは、上記(A)〜(E)成分が含有されているので、絶縁シートの未硬化状態でのハンドリング性を高めることができる。また、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性、熱伝導性及び耐熱性を高めることができる。
【0022】
本発明に係る積層構造体は、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されており、該絶縁層が、本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させて形成されているので、導電層側からの熱が絶縁層を介して上記熱伝導体に伝わりやすい。このため、該熱伝導体によって熱を効率的に放散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本願発明者らは、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1)及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2)の内の少なくとも一方のモノマー(B)と、硬化剤(C)とを含み、かつ無機フィラー(D)と、有機フィラー(E)とを上記特定の割合で含む組成を採用することによって、絶縁シートの硬化物を打ち抜き加工又はドリル穴開け加工等する際の加工性を高めることができることを見出した。
【0024】
さらに、本願発明者らは、上記組成を採用することによって、絶縁シートの未硬化状態でのハンドリング性を高めることができ、かつ絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性、熱伝導性及び耐熱性を高めることができることを見出した。
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0026】
本発明に係る絶縁シートは、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1)及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2)の内の少なくとも一方のモノマー(B)と、硬化剤(C)と、無機フィラー(D)と、有機フィラー(E)とを含有する。
【0027】
(ポリマー(A))
本発明に係る絶縁シートに含まれる上記ポリマー(A)は、芳香族骨格をポリマー全体の中に有していればよく、主鎖骨格内に含んでいてもよく、側鎖中に含んでいてもよい。ポリマー(A)は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0028】
上記芳香族骨格は特に限定はされない。上記芳香族骨格の具体例としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格又はビスフェノールA型骨格等が挙げられる。なかでも、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0029】
上記ポリマー(A)は、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であれば特に限定されない。上記ポリマー(A)として、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0030】
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、又はポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物などのスーパーエンプラと呼ばれている耐熱性樹脂群等を使用できる。熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の内のいずれか一方が用いられてもよく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とが併用されてもよい。
【0031】
上記ポリマー(A)は、スチレン系重合体又はフェノキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂であることがより好ましい。この場合には、硬化物の酸化劣化を防止でき、かつ硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0032】
上記スチレン系重合体として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、又はスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等を用いることができる。中でも、スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン系重合体が好ましい。
【0033】
上記スチレン系モノマーとして、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。スチレン系モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、又はメタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。上記アクリル系モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0036】
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましい。中でも、上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有するフェノキシ樹脂であることがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも一方を有するフェノキシ樹脂であることが更に好ましい。これらのフェノキシ樹脂を用いた場合には、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0037】
上記フェノキシ樹脂は、主鎖中に多環式芳香族骨格を有することが好ましい。また、上記フェノキシ樹脂は、下記式(4)〜(9)で表される骨格の内の少なくとも1つの骨格を主鎖中に有することがより好ましい。
【0038】
【化4】

【0039】
上記式(4)中、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、Xは単結合、炭素数1〜7の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、又は−CO−である。
【0040】
【化5】

【0041】
上記式(5)中、R1aは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。
【0042】
【化6】

【0043】
上記式(6)中、R1bは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、lは0〜4の整数である。
【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
上記式(8)中、R、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Xは−SO−、−CH−、−C(CH−、又は−O−であり、kは0又は1の値である。
【0047】
【化9】

【0048】
上記ポリマー(A)としては、例えば、下記式(10)又は下記式(11)で表されるフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0049】
【化10】

【0050】
上記式(10)中、Aは上記式(4)〜(6)のいずれかで表される構造を有し、かつその構成は上記式(4)で表される構造が0〜60モル%、上記式(5)で表される構造が5〜95モル%、及び上記式(6)で表される構造が5〜95モル%であり、Aは水素原子、又は上記式(7)で表される基であり、nは平均値で25〜500の数である。
【0051】
【化11】

【0052】
上記式(11)中、Aは上記式(8)又は上記式(9)で表される構造を有し、nは少なくとも21以上の値である。
【0053】
上記ポリマー(A)のガラス転移温度Tgは、60〜200℃の範囲にあることが好ましく、90〜180℃の範囲にあることがより好ましい。ポリマー(A)のTgが低すぎると、樹脂が熱劣化する場合がある。ポリマー(A)のTgが高すぎると、ポリマー(A)と他の樹脂との相溶性が悪くなる。この結果、絶縁シートの未硬化状態でのハンドリング性、並びに絶縁シートの硬化物の耐冷熱サイクル性及び耐高温放置性等の耐熱性が低下することがある。
【0054】
上記ポリマー(A)がフェノキシ樹脂である場合、ガラス転移温度Tgは、95℃以上であることが好ましく、110〜200℃の範囲であることがより好ましく、110〜180℃の範囲であることがさらに好ましい。フェノキシ樹脂のTgが低すぎると、樹脂が熱劣化することがある。フェノキシ樹脂のTgが高すぎると、フェノキシ樹脂と他の樹脂との相溶性が悪くなる。この結果、絶縁シートの取扱い性、並びに絶縁シートの硬化物の耐冷熱サイクル性及び耐高温放置性等の耐熱性が低下することがある。
【0055】
上記ポリマー(A)の重量平均分子量は、30,000以上である。ポリマー(A)の重量平均分子量は、30,000〜1,000,000の範囲内にあることが好ましく、40,000〜250,000の範囲内にあることがより好ましい。ポリマー(A)の重量平均分子量が小さすぎると、絶縁シートが熱劣化することがある。ポリマー(A)の重量平均分子量が大きすぎると、他の樹脂との相溶性が悪くなり、結果として絶縁シートの取扱い性、並びに絶縁シートの硬化物の耐冷熱サイクル性及び耐高温放置性等の耐熱性が低下する場合がある。
【0056】
上記ポリマー(A)と、上記モノマー(B)と、上記硬化剤(C)とを含む絶縁シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中に、ポリマー(A)は20〜60重量%の割合で含有されることが好ましく、30〜50重量%の割合で含有されることがより好ましい。ポリマー(A)は上記の範囲内で、ポリマー(A)とモノマー(B)との合計が100重量%未満となる割合で含まれることが好ましい。ポリマー(A)の量が少なすぎると、絶縁シートの未硬化状態でのハンドリング性が低下することがある。ポリマー(A)の量が多すぎると、無機フィラー(D)及び有機フィラー(E)の分散が困難になることがある。なお、全樹脂成分とは、ポリマー(A)、エポキシモノマー(B1)、オキセタンモノマー(B2)、硬化剤(C)及び必要に応じて添加される他の樹脂構成成分の総和をいう。全樹脂成分には、有機フィラー(E)は含まれないこととする。
【0057】
(モノマー(B))
本発明に係る絶縁シートは、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下のエポキシモノマー(B1)、及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下のオキセタンモノマー(B2)の内の少なくとも一方のモノマー(B)を含む。絶縁シートは、モノマー(B)として、エポキシモノマー(B1)のみが用いられてもよく、オキセタンモノマー(B2)のみが用いられてもよく、エポキシモノマー(B1)とオキセタンモノマー(B2)との双方が用いられてもよい。
【0058】
上記エポキシモノマー(B1)は、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であれば特に限定されない。上記エポキシモノマー(B1)の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンテン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、又はピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらのエポキシモノマー(B1)は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
【0060】
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、又はジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
【0061】
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、又は1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
【0062】
上記アダマンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンテン、又は2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンテン等が挙げられる。
【0063】
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、又は9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0064】
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、又は4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
【0065】
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、又は1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
【0066】
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
【0067】
上記オキセタンモノマー(B2)は、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であれば特に限定されない。上記オキセタンモノマー(B2)の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、又はオキセタン化フェノールノボラック等が挙げられる。これらのオキセタンモノマー(B2)は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
上記エポキシモノマー(B1)及びオキセタンモノマー(B2)の重量平均分子量、すなわちモノマー(B)の重量平均分子量は、600以下である。モノマー(B)の重量平均分子量の好ましい下限は200、好ましい上限は550である。モノマー(B)の重量平均分子量が小さすぎると、揮発性が高すぎて絶縁シートの取扱い性が低下することがある。モノマー(B)の重量平均分子量が大きすぎると、シートが固くかつ脆くなったり、接着力が低下したりすることがある。
【0069】
上記ポリマー(A)と、上記モノマー(B)と、上記硬化剤(C)とを含む絶縁シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中に、モノマー(B)は10〜60重量%の範囲内で含有されることが好ましく、10〜40重量%の範囲内で含有されることがより好ましい。モノマー(B)は上記範囲内で、ポリマー(A)とモノマー(B)との合計が100重量%未満となる割合で含まれることが好ましい。モノマー(B)の量が少なすぎると、接着性や耐熱性が低下することがある。モノマー(B)の量が多すぎると、絶縁シートの柔軟性が低下することがある。
【0070】
(硬化剤(C))
本発明に係る絶縁シートに含まれている硬化剤(C)は特に限定されない。硬化剤(C)は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
上記硬化剤(C)は、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物であることが好ましい。この好ましい硬化剤(C)を用いた場合、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた絶縁シートの硬化物を得ることができる。
【0072】
上記フェノール樹脂は特に限定されない。上記フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、又はポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。なかでも、シート柔軟性や難燃性がより一層高められるので、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
【0073】
上記フェノール樹脂の市販品としては、明和化成社製のMEH−8005、MEH−8010及びNEH−8015、ジャパンエポキシレジン社製のYLH903、大日本インキ社製のLA―7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P、並びに群栄化学社製のPS6313及びPS6492等が挙げられる。
【0074】
芳香族骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物は、特に限定されない。芳香族骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。なかでも、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸を用いた場合には、耐水性を高めることができる。
【0075】
上記芳香族骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物の市販品としては、サートマー・ジャパン社製のSMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80、マナック社製のODPA−M及びPEPA、新日本理化社製のリカジットMTA―10、リカジットMTA−15、リカジットTMTA、リカジットTMEG−100、リカジットTMEG−200、リカジットTMEG−300、リカジットTMEG−500、リカジットTMEG−S、リカジットTH、リカジットHT−1A、リカジットHH、リカジットMH−700、リカジットMT−500、リカジットDSDA及びリカジットTDA−100、並びに大日本インキ化学社製のEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570等が挙げられる。
【0076】
また、脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、テルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物であることが好ましい。この場合には、絶縁シートの柔軟性、耐湿性又は接着性などをより一層高めることができる。また、脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又はその変性物等も挙げることができる。
【0077】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物の市販品としては、新日本理化社製のリカジットHNA及びリカジットHNA−100、並びにジャパンエポキシレジン社製のエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309等が挙げられる。
【0078】
また、上記硬化剤(C)は、下記式(1)〜(3)のいずれかで表される酸無水物であることがより好ましい。この場合には、シートの柔軟性、耐湿性又は接着性をより一層高めることができる。
【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
【化14】

【0082】
上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又は水酸基を示す。
【0083】
硬化速度や硬化物の物性などを調整するために、上記硬化剤とともに、硬化促進剤を用いてもよい。
【0084】
上記硬化促進剤は特に限定されない。硬化促進剤の具体例としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアジン類、有機リン系化合物、4級ホスホニウム塩類もしくは有機酸塩などのジアザビシクロアルケン類、有機金属化合物類、4級アンモニウム塩類又は金属ハロゲン化物が挙げられる。上記有機金属化合物類としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体等が挙げられる。
【0085】
上記硬化促進剤としては、高融点のイミダゾール硬化促進剤、高融点の分散型潜在性硬化促進剤、マイクロカプセル型潜在性硬化促進剤、アミン塩型潜在性硬化促進剤、又は高温解離型かつ熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等を使用できる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記高融点の分散型潜在性促進剤としては、ジシアンジアミド又はアミンをエポキシモノマー等に付加したアミン付加型促進剤等が挙げられる。上記マイクロカプセル型潜在性促進剤としては、イミダゾール系、リン系又はホスフィン系の促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤が挙げられる。上記高温解離型かつ熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤としては、ルイス酸塩又はブレンステッド酸塩等が挙げられる。
【0087】
なかでも、上記硬化促進剤は、高融点のイミダゾール系硬化促進剤であることが好ましい。高融点のイミダゾール系硬化促進剤を用いた場合、反応系を容易に制御でき、かつ絶縁シートの硬化速度や硬化物の物性などをより一層容易に調整できる。融点100℃以上の高融点の硬化促進剤は、取扱性に優れている。従って、硬化促進剤の融点は100℃以上であることが好ましい。
【0088】
(無機フィラー(D))
本発明に係る絶縁シートに無機フィラー(D)が含まれていることにより、絶縁シートの硬化物の放熱性を高めることができる。
【0089】
上記無機フィラー(D)は特に限定されない。無機フィラー(D)は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。無機フィラー(D)は、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらの好ましい無機フィラー(D)を用いた場合には、絶縁シートの硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
【0090】
上記無機フィラー(D)は、球状アルミナ及び球状窒化アルミニウムの内の少なくとも一方であることがより好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
【0091】
上記無機フィラー(D)の平均粒子径は、0.1〜40μmの範囲内にあることが好ましい。無機フィラー(D)の平均粒子径が0.1μm未満であると、高い密度で充填することが困難なことがある。無機フィラー(D)の平均粒子径が40μmを超えると、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性が低下することがある。
【0092】
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0093】
絶縁シート100体積%中に、無機フィラー(D)は20〜60体積%の範囲内で含有される。無機フィラー(D)は上記範囲内で、無機フィラー(D)と有機フィラー(E)との合計が100体積%未満となる割合で含まれる。無機フィラー(D)の量が20体積%未満であると、絶縁シートの硬化物の放熱性が充分に高められないことがある。無機フィラー(D)の量が60体積%を超えると、絶縁シートの硬化物の加工の際に、金型が摩耗しやすくなる。絶縁シート100体積%中に占める無機フィラー(D)の量の好ましい下限は30体積%であり、好ましい上限は55体積%である。
【0094】
(有機フィラー(E))
本発明に係る絶縁シートでは、無機フィラー(D)とともに、有機フィラー(E)が含有されている。
【0095】
本発明の特徴は、無機フィラー(D)とともに、有機フィラー(E)が含有されていることにある。
【0096】
絶縁シートの硬化物の放熱性を高めるためには、無機フィラー(D)の配合量を多くすることが考えられる。しかし、アルミナ等の無機フィラーの硬度は、比較的高い。このため、無機フィラー(D)の配合量を多くした場合、絶縁シートの硬化物を打ち抜き加工又はドリル穴開け加工等する際に、金型が摩耗しやすかった。金型の摩耗を抑制するためには、無機フィラー(D)の配合量を少なくすればよい。しかし、無機フィラー(D)の配合量を少なくすると、絶縁シートに含まれている樹脂成分の量が相対的に多くなるため、積層プレスする際などに絶縁シートが流動することがあった。絶縁シートが流動すると、絶縁シートの硬化物の膜厚が薄くなりすぎて、絶縁破壊特性が低下することがあった。
【0097】
本発明では、無機フィラー(D)とともに、上記有機フィラー(E)が上記特定の割合で含有されているため、絶縁シートの硬化物を打ち抜き加工又はドリル穴開け加工等する際に、金型の摩耗を抑制できる。しかも、積層プレスする際などに絶縁シートが流動するのを抑制できる。さらに、絶縁シートが流動し難いため、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性を高めることができる。
【0098】
上記有機フィラー(E)は、モノマーにより形成された繰返し構造を含む不溶性粒子であることが好ましい。上記モノマーは、アクリル系モノマー又はスチレン系モノマーであることが好ましい。
【0099】
アクリル系モノマー及びスチレン系モノマーは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、又はメタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。上記アクリル系モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
上記スチレン系モノマーとして、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン又は3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。スチレン系モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
上記有機フィラー(E)は、コアシェル構造を有することが好ましい。コアシェル構造を有する有機フィラーを用いた場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。コアシェル構造を有する有機フィラーは、コア層と、該コア層を被覆しているシェル層とを有する。上記コア層及び該コア層を被覆しているシェル層はアクリル系化合物であることが好ましい。
【0103】
上記有機フィラー(E)は、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物と、有機物とを含む複合フィラーであることが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0104】
上記コア層が、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物を含むことが好ましい。上記シェル層が、有機物を含むことが好ましい。上記有機フィラー(E)は、上記ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物を含むコア層と、上記有機物を含むシェル層とを有する複合フィラーであることが好ましい。
【0105】
上記ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物は、シロキサン系ポリマーであることが好ましい。上記有機物は、アクリル系化合物であることが好ましい。
【0106】
上記有機フィラー(E)の平均粒子径は、0.05〜20μmの範囲内にあることが好ましい。有機フィラー(E)の平均粒子径が0.05μm未満であると、高い密度で充填することが困難なことがある。有機フィラー(E)の平均粒子径が20μmを超えると、絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
【0107】
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0108】
絶縁シート100体積%中に、有機フィラー(E)は3〜40体積%の範囲内で含有される。有機フィラー(E)は上記範囲内で、無機フィラー(D)と有機フィラー(E)との合計が100体積%未満となる割合で含まれる。有機フィラー(E)の量が3体積%未満であると、積層プレス時の絶縁シートの流動を充分に抑えられないことがある。有機フィラー(E)の量が40体積%を超えると、絶縁シート硬化物の耐熱性が低下することがある。絶縁シート100体積%中に占める有機フィラー(E)の量の好ましい下限は5体積%であり、より好ましい下限は7体積%である。絶縁シート100体積%中占める有機フィラー(E)の量の好ましい上限は30体積%であり、より好ましい下限は25体積%である。
【0109】
絶縁シート100体積%中に、上記無機フィラー(D)と上記有機フィラー(E)とは合計で30〜90体積%の範囲内で含有されることが好ましい。上記無機フィラー(D)と上記有機フィラー(E)との合計量が少なすぎると、積層プレス時に絶縁シートが流動することがある。上記無機フィラー(D)と上記有機フィラー(E)との合計量が多すぎると、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性、耐熱性又は銅剥離強度が低下することがある。
【0110】
(他の成分)
本発明に係る絶縁シートは、シート特性をより一層高めるために、ガラスクロス、ガラス不織布又はアラミド不織布等の基材物質を含んでいてもよい。もっとも、基材物質を含まなくても、本発明の絶縁シートは室温(23℃)において未硬化状態でも自立性を有し、かつ優れたハンドリング性を有する。よって、絶縁シートは基材物質を含まないことが好ましく、特にガラスクロスを含まないことが好ましい。絶縁シートが上記基材物質を含まない場合、絶縁シートの厚みを薄くすることができ、かつ絶縁シートの熱伝導率をより一層高めることができる。さらに、絶縁シートが上記基材物質を含まない場合、必要に応じて絶縁シートにレーザー加工、打ち抜き加工又はドリル穴開け加工等の各種加工を容易に行うこともできる。なお、自立性とは、PETフィルムや銅箔といった支持体が存在しなくても、例え未硬化状態であっても、シートの形状を保持し、シートとして取扱うことができることをいう。
【0111】
また、本発明の絶縁シートは、必要に応じて、チキソ性付与剤、分散剤、難燃剤又は着色剤等を含有していてもよい。
【0112】
(絶縁シート)
本発明に係る絶縁シートの製造方法は特に限定されない。絶縁シートは、例えば、上述した材料を混合した混合物を溶剤キャスト法、又は押し出し成膜法等の方法でシート状に成形することにより得られる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。
【0113】
絶縁シートの膜厚は特に限定されない。絶縁シートの膜厚は、10〜300μmの範囲内にあることが好ましく、50〜200μmの範囲内にあることがより好ましく、70〜120μmの範囲内にあることがさらに好ましい。膜厚が薄すぎると、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性が低下することがある。膜厚が厚すぎると、金属体を導電層に接着したときに放熱性が低下することがある。
【0114】
絶縁シートの膜厚を厚くすることにより、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性をより一層高めることができる。もっとも、絶縁シートの膜厚が薄くても、本発明の絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性は充分に高い。
【0115】
本発明に係る絶縁シートの未硬化状態でのガラス転移温度Tgは、25℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が25℃を超えると、室温において固くかつ脆くなることがあり、かつ絶縁シートの未硬化状態でのハンドリング性が低下することがある。
【0116】
絶縁シートの硬化物の熱伝導率は、0.7W/m・K以上であることが好ましい。絶縁シートの硬化物の熱伝導率は、1.0W/m・K以上であることがより好ましく、1.5W/m・K以上であることがさらに好ましい。熱伝導率が低すぎると、硬化物の放熱性が低くなることがある。
【0117】
絶縁シートの硬化物の絶縁破壊電圧は、30kV/mm以上であることが好ましい。絶縁シートの硬化物の絶縁破壊電圧は、40kV/mm以上であることがより好ましく、50kV/mm以上であることがさらに好ましく、80kV/mm以上であることがさらに好ましく、100kV/mm以上であることがさらに好ましい。絶縁破壊電圧が低すぎると、例えば電力素子用のような大電流用途に用いられた場合に、絶縁シートの硬化物の絶縁性が低くなることがある。
【0118】
絶縁シートの硬化物の体積抵抗率は、1014Ω・cm以上であることが好ましく、1016Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗率が低すぎると、導体層と熱伝導体との間の絶縁を保てないことがある。
【0119】
絶縁シートの硬化物の熱線膨張率は、30ppm/℃以下であることが好ましく、20ppm/℃以下であることがより好ましい。熱線膨張率が高すぎると、硬化物の耐冷熱サイクル性が低下することがある。
【0120】
(積層構造体)
本発明に係る絶縁シートは、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる。また、本発明に係る絶縁シートは、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されている積層構造体の絶縁層を構成するのに好適に用いられる。例えば、両面に銅回路が設けられた積層板又は多層配線板、銅箔、銅板、半導体素子又は半導体パッケージ等の各導電層に、絶縁シートを介して金属体を接着した後、絶縁シートを硬化させることにより、上記積層構造体を得ることができる。
【0121】
図1に、本発明の一実施形態に係る積層構造体を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0122】
図1に示す積層構造体1は、発熱源としての導電層2の表面2aに、絶縁層3を介して、熱伝導体4が積層されている。絶縁層3は、本発明の絶縁シートを硬化させて形成されている。熱伝導体4としては、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体が用いられている。
【0123】
上記積層構造体1では、絶縁層3が高い熱伝導率を有するので、導電層2側からの熱が絶縁層3を介して上記熱伝導体4に伝わりやすい。上記積層構造体1では、該熱伝導体4によって熱を効率的に放散させることができる。
【0124】
上記熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体は特に限定されない。上記熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体は、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム又はグラファイトシート等が挙げられる。中でも、上記熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。銅又はアルミニウムは、放熱性に優れている。
【0125】
本発明に係る絶縁シートは、基板上に半導体素子が実装されている半導体装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を接着するのに好適に用いられる。本発明に係る絶縁シートは、半導体素子以外の電子部品素子が基板上に搭載されている電子部品装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を接着するのにも好適に用いられる。
【0126】
半導体素子が大電流用の電力用デバイス素子である場合には、絶縁シートの硬化物には、絶縁性又は耐熱性等により一層優れていることが求められる。従って、このような用途に、本発明の絶縁シートは好適に用いられる。
【0127】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0128】
以下の材料を用意した。
【0129】
[ポリマー(A)]
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:E1256、Mw=51,000、Tg=98℃)
(2)高耐熱フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名:FX−293、Mw=43,700、Tg=163℃)
(3)エポキシ基含有スチレン樹脂(日本油脂社製、商品名:マープルーフG−1010S、Mw=100,000、Tg=93℃)
【0130】
[ポリマー(A)以外のポリマー]
(1)エポキシ基含有アクリル樹脂(日本油脂社製、商品名:マープルーフG−0130S、Mw=9,000,Tg=69℃)
【0131】
[エポキシモノマー(B1)]
(1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828US、Mw=370)
(2)ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート806L、Mw=370)
(3)3官能グリシジルジアミン型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート630、Mw=300)
(4)フルオレン骨格エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル社製、商品名:オンコートEX1011、Mw=486)
(5)ナフタレン骨格液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製、商品名:EPICLON HP−4032D、Mw=304)
【0132】
[オキセタンモノマー(B2)]
(1)ベンゼン骨格含有オキセタン樹脂(宇部興産社製、商品名:エタナコールOXTP、Mw=362.4)
【0133】
[エポキシモノマー(B1)及びオキセタンモノマー(B2)以外のモノマー]
(1)ヘキサヒドロフタル酸骨格液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:AK−601、Mw=284)
(2)ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:1003、Mw=1300)
【0134】
[硬化剤(C)]
(1)脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:MH−700)
(2)芳香族骨格酸無水物(サートマー・ジャパン社製、商品名:SMAレジンEF60)
(3)多脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:HNA−100)
(4)テルペン系骨格酸無水物(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピキュアYH−306)
(5)ビフェニル骨格フェノール樹脂(明和化成社製、商品名:MEH−7851−S)
(6)アリル基含有骨格フェノール樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YLH−903)
(7)トリアジン骨格系フェノール樹脂(大日本インキ化学社製、商品名:フェノライトKA−7052−L2)
(8)メラミン骨格系フェノール樹脂(群栄化学工業社製、商品名:PS−6492)
(9)イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール(イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製、商品名:2MZA−PW)
【0135】
[無機フィラー(D)]
(1)5μmアルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製、商品名:LT300C、平均粒子径5μm)
(2)2μmアルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製、商品名:LS−242C、平均粒子径2μm)
(3)6μm窒化アルミニウム(破砕フィラー、東洋アルミニウム社製、商品名:FLC、平均粒子径6μm)
【0136】
[有機フィラー(E)]
(1)0.1μm粒子(コアシェル型シリコーン−アクリル粒子、旭化成ワッカーシリコーン社製、商品名:P22、平均粒子径0.1μm、コアシェル構造を有する、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物を含むコア層と有機物を含む)
(2)0.5μm粒子(コアシェル型有機粒子、ガンツ化成社製、商品名:AC−3355、平均粒子径0.5μm、コアシェル構造を有する)
(3)4μm粒子(アクリル粒子、ガンツ化成社製、商品名:GM−0401S、平均粒子径4μm)
【0137】
[添加剤]
(1)エポキシシランカップリング剤(信越化学社製、商品名:KBE403)
【0138】
[溶剤]
(1)メチルエチルケトン
【0139】
(実施例1)
ホモディスパー型攪拌機を用いて、下記の表1に示す割合(配合単位は重量部)で各原料を配合し、混練し、絶縁材料を調製した。
【0140】
膜厚50μmの離型PETシートに、上記絶縁材料を100μmの厚みになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PETシート上に絶縁シートを作製した。
【0141】
(実施例2〜22及び比較例1〜5)
使用した各原料の種類及び配合量を下記の表1〜3に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして絶縁材料を調製し、PETシート上に絶縁シートを作製した。
【0142】
(実施例及び比較例の評価)
上記のようにして得られた各絶縁シートを評価した。
【0143】
(1.ハンドリング性)
PETシートと、該PETシート上に形成された絶縁シートとを有する積層シートを460mm×610mmの平面形状を有するように切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを用いて、室温(23℃)でPETシートから未硬化状態の絶縁シートを剥離したときのハンドリング性を下記の基準で評価した。
【0144】
〇:絶縁シートの変形がなく、容易に剥離可能
△:絶縁シートを剥離できるものの、シート伸びや破断が発生する
×:絶縁シートを剥離できない
【0145】
(2.熱伝導率)
絶縁シートを120℃のオーブン内で1時間、その後200℃のオーブン内で1時間加温処理し、絶縁シートを硬化させた。絶縁シートの硬化物の熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。
【0146】
(3.絶縁破壊電圧)
絶縁シートを100mm×100mmの平面形状を有するように切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを120℃のオーブン内で1時間、更に200℃のオーブン内で1時間硬化させ、絶縁シートの硬化物を得た。耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、絶縁シートの硬化物間に、1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。絶縁シートの硬化物が破壊した電圧を、絶縁破壊電圧とした。
【0147】
(4.半田耐熱)
絶縁シートを1.5mm厚のアルミ板と35μm厚の電解銅箔との間に挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板を50mm×60mmのサイズに切り出した。これを288℃の半田浴に銅箔側を下に向けて浮かべ、銅箔の膨れ・剥がれが発生するまでの時間を測定し以下の基準で判定した。
【0148】
◎:10分経過しても膨れ、剥離の発生なし
〇:3分経過しても膨れ、剥離の発生なし
△:1分経過後、かつ3分経過する前に膨れ、剥離が発生
×:1分経過する前に膨れ、剥離が発生
【0149】
(5.加工性)
絶縁シートを1.5mm厚のアルミ板と35μm厚の電解銅箔との間に挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板を直径2.0mmのドリル(ユニオンツール社製、RA series)を用いて、回転数30000及びテーブル送り速度0.5m/分の条件でルーター加工した。ばりが発生するまでの加工距離を測定し、加工性を以下の基準で評価した。
【0150】
○:ばりが発生することなく5m以上加工可能
△:ばりが発生することなく1m以上、5m未満加工可能
×:1m未満の加工によりばりが発生
【0151】
(6.積層プレス時のはみ出し量)
PETシートと、該PETシート上に形成された絶縁シートとを有する積層シートを13cm×5cmの平面形状を有するように切り出した後、該絶縁シートをPETシートから剥離した。また、13cm×5cmの平面形状を有するアルミニウム板(エンジニアリングテストサービス社製、JIS H 4000 A5052P、最大高さ粗さRz1.1)と、13cm×5cmの平面形状を有する銅箔(福田金属箔粉工業社製、電解銅箔、CT−T8)とを用意した。
【0152】
アルミニウム板の粗面と銅箔の粗面との間に絶縁シートを挟み積層体を得た後、温度120℃及び圧力4MPaで10分間加熱プレスした。プレス後に積層体の側面からはみ出た絶縁シートの重量を測定し、下記の式により絶縁シートのはみ出し量を求めた。
【0153】
はみ出し量=(プレス後に積層体の側面からはみ出た絶縁シートの重量)/(プレス前の絶縁シートの重量)×100
結果を下記の表1〜3に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【符号の説明】
【0158】
1…積層構造体
2…導電層
2a…表面
3…絶縁層
4…熱伝導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる絶縁シートであって、
芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、
芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1)及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2)の内の少なくとも一方のモノマー(B)と、
硬化剤(C)と、
無機フィラー(D)と、
有機フィラー(E)とを含有し、
前記無機フィラー(D)を20〜60体積%の範囲内で、前記有機フィラー(E)を3〜40体積%の範囲内で、かつ前記無機フィラー(D)と前記有機フィラー(E)とを合計で100体積%未満の割合で含有することを特徴とする、絶縁シート。
【請求項2】
前記有機フィラー(E)が、コアシェル構造を有する、請求項1に記載の絶縁シート。
【請求項3】
前記有機フィラー(E)が、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物と、有機物とを含む複合フィラーである、請求項1または2に記載の絶縁シート。
【請求項4】
前記ポリマー(A)がフェノキシ樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁シート。
【請求項5】
前記フェノキシ樹脂のガラス転移温度Tgが95℃以上である、請求項4に記載の絶縁シート。
【請求項6】
前記硬化剤(C)が、多脂環式骨格を有する酸無水物、もしくはテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁シート。
【請求項7】
前記硬化剤(C)が、下記式(1)〜(3)のいずれかで表される酸無水物である、請求項6に記載の絶縁シート。
【化1】

【化2】

【化3】

上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又は水酸基を示す。
【請求項8】
前記硬化剤(C)が、メラミン骨格もしくはトリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁シート。
【請求項9】
熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されており、該絶縁層が、請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁シートを硬化させて形成されていることを特徴とする、積層構造体。
【請求項10】
前記熱伝導体が金属であることを特徴とする、請求項9に記載の積層構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−44998(P2010−44998A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209914(P2008−209914)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】