説明

絶縁膜形成用塗布液、絶縁膜の製造方法および絶縁膜

【課題】 半導体基板に対する密着性が高い絶縁膜を形成し得る絶縁膜形成用塗布液を提供すること。ほか
【解決手段】 以下の成分(A)および(B)を含有する絶縁膜形成用塗布液。ほか
成分(A):非極性であり、かつ分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有するか、炭素−炭素三重結合を2個以上有するか、もしくは炭素−炭素二重結合を少なくとも1個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1個有する熱反応性化合物、または該熱反応性化合物を重合して得られるポリマー。
成分(B):式(1)〜(3)で示されるシラン化合物からなる群から選ばれる化合物を重縮合して得られる重合体。


(式中、R1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R2はアルキル基またはアリール基を表し、R3はアルキル基またはアリール基を表し、R4はアルキル基、アシル基またはアリール基を表し、Xは2価の基を表し、mは2または3を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁膜形成用塗布液、絶縁膜の製造方法および絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスは配線微細化に伴って、電子信号の伝達速度が遅くなる、いわゆる配線遅延が問題となっている。配線遅延を解決するためには、絶縁膜の性能を向上して配線間の干渉を低減することが必要であることから、低誘電率の絶縁膜の開発が試みられている。
低誘電率の絶縁膜の材料としてポリアリーレンが着目されているが、これは分子内に極性基を有しないため、絶縁膜とした場合、シリコン、酸化シリコン、アルミニウム、銅、窒化シリコン等の半導体基板に対して密着性が低いという問題があった。
【0003】
この問題を解決する方法として、ビニル基を有するシランカップリング剤を部分加水分解してポリシロキサンとした添加剤をポリアリーレンに添加した塗布液が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2002−523549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら該特許文献1記載の塗布液から得られる絶縁膜は、基板に対する密着性がまだ十分なものとは言えなかった。本発明の目的は、半導体基板に対する密着性が高い絶縁膜を形成し得る絶縁膜形成用塗布液、ならびに、半導体基板に対する密着性が高い絶縁膜およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、以下の成分(A)および(B)を含有する絶縁膜形成用塗布液にかかるものであり、また本発明は、該塗布液を基板に塗布し、空気中、大気圧下、80〜250℃でベーク処理を行った後、250〜400℃で熱硬化処理をする絶縁膜の製造方法、ならびに、該製造方法により得られる絶縁膜にかかるものである。
成分(A):非極性であり、かつ分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有するか、炭素−炭素三重結合を2個以上有するか、もしくは炭素−炭素二重結合を少なくとも1個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1個有する熱反応性化合物、または該熱反応性化合物を重合して得られるポリマー。
成分(B):式(1)〜(3)で示されるシラン化合物からなる群から選ばれる化合物を重縮合して得られる重合体あるいは式(1’)〜(3’)で示される構造からなる群から選ばれる繰り返し構造単位よりなる重合体。

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R4は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアシル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Xは2価の基を表し、mは2または3を表す。)

(式中、R3、R4、Xおよびmはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R5は水素原子または1価の有機基を表し、R6は1価の有機基を表す。)

(式中、R3、R4、Xおよびmはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R7は炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。)

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R9は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表すか、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数1〜4のアシルオキシ基または炭素原子数6〜20のアリールオキシ基を表し、Xは2価の基を表す。)

(式中、R9およびXはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R5は水素原子または1価の有機基を表し、R6は1価の有機基を表す。)

(式中、R9およびXはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R7は炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体基板に対する密着性が高い絶縁膜を形成し得る絶縁膜形成用塗布液、ならびに、半導体基板に対する密着性が高い絶縁膜およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における成分(A)は、非極性であり、かつ分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有するか、炭素−炭素三重結合を2個以上有するか、もしくは炭素−炭素二重結合を少なくとも1個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1個を有する熱反応性化合物、または該熱反応性化合物を重合して得られるポリマーである。
ここで、非極性とは、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基、スルホン基、ホスホン基、ホスフィン基等の炭素原子および水素原子以外の原子を有する極性基が分子内に存在しないことをいう。
【0009】
非極性の化合物としては、直鎖炭化水素、分岐炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ノルボルナン、キュバン、アダマンタン、ジアダマンタン等の脂肪族環状炭化水素、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、アズレン環、ペンタレン環、アヌレン環、フラーレン環等の芳香環の骨格を持つ芳香族炭化水素が挙げられる。本発明で用いられる熱反応性化合物は、そのような非極性の化合物であって、かつ、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有するか、炭素−炭素三重結合を2個以上有するか、もしくは炭素−炭素二重結合を少なくとも1個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1個を有する化合物であり、好ましくは、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有するか、炭素−炭素三重結合を2個以上有するか、もしくは炭素−炭素二重結合を少なくとも1個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1個を有する炭化水素である。
【0010】
本発明で用いられる熱反応性化合物は、アダマンタン骨格を有する化合物が好ましい。アダマンタン骨格は熱力学的にも安定な骨格であるため、耐熱性も良好であり、半導体製造プロセスで使用される洗浄剤、レジスト剥離剤等の薬剤に対する安定性も高く、工業的にも入手容易であるため好ましく用いられる。
【0011】
成分(A)は、式(7)で示される化合物、または該化合物を重合して得られるポリマーであることがより好ましい。

(式中、Arは芳香環を有する基を表し、R8は式(8)または式(9)で示される基を表し、xは1〜3の整数を表し、xが2以上の場合、複数のR8は互いに同一でも異なっていてもよく、yは1〜3の整数を表し、yが2以上の場合、複数のArおよび複数のR8はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、x×yは2〜9の整数を表す。)
【0012】

(式中、Q1〜Q3はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)

(式中、Q4は水素原子または炭化水素基を表す。)
【0013】
ここで、Q1〜Q4における炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等の炭化水素から誘導される基であり、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルキニル基または炭素原子数6〜10のアリール基が好ましい。
炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
炭素原子数2〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ブタジニル基が挙げられる。
炭素原子数2〜4のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基が挙げられる。
炭素原子数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0014】
1〜Q4として好ましくは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、特に好ましくは水素原子またはフェニル基である。
【0015】
式(8)で示される基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、スチレニル基等が挙げられる。
【0016】
式(9)で示される基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0017】
式(7)中のArとしては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、およびこれらの基の芳香環が1〜2個のメチル基またはエチル基で置換された基などの極性基を含有しない芳香環1〜3個で構成される基などが挙げられる。Arとして特に好ましくは、フェニレン基である。
【0018】
式(7)で示される化合物の製造方法は特に限定されないが、以下の方法を挙げることができる。
アダマンタン骨格を有する化合物の橋かけメチン基を塩素、臭素、ヨウ素等によりハロゲン化した後、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化スズ、臭化アンチモン、臭化チタン等のルイス酸を触媒とし、ブロモベンゼン、ブロモナフタレン、ブロモアントラセン、ブロモビフェニル、ブロモターフェニル、ジブロモベンゼン、ジブロモナフタレン、ジブロモアントラセン、トリブロモベンゼン、トリブロモナフタレン、トリブロモアントラセン、ヨードベンゼン、ヨードナフタレン、ヨードアントラセン、ヨードビフェニル、ヨードターフェニル、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードアントラセン、トリヨードベンゼン、トリヨードナフタレン、トリヨードアントラセン等の芳香族ハロゲン化物とカップリング反応させて、ハロゲン化アリール基をアダマンタン骨格のメチン基に結合させる。また、そのようにして得たハロゲン化アリール基がアダマンタン骨格のメチン基に結合した化合物をトリス(トリフルオロメチル)ボロン、フッ化アンチモン等で処理して異性化させることでアダマンタン骨格のメチレン基にハロゲン化アリール基を転移させる。
このようにして得られた、ハロゲン化アリール基が結合したアダマンタン骨格を有する化合物を更に、式(10)または式(11)で示される化合物と薗頭カップリング反応させることにより、アリール基に結合しているハロゲン原子と式(10)または式(11)で示される化合物の水素原子とを脱離させ、式(7)で示される化合物が得られる。

式中、Q1〜Q3は前記と同じ意味を表す。

式中、Q4は前記と同じ意味を表す。
【0019】
式(8)のQ1〜Q3のいずれか1つまたは式(9)のQ4が水素原子である式(7)で示される化合物を製造しようとする場合は、式(10)または式(11)におけるQ1〜Q4としての水素原子をトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、トリメチルスズ基、トリエチルスズ基、トリブチルスズ基等の保護基に置き換えた化合物を用いて、前記薗頭カップリング反応を行い、その薗頭カップリング反応後、前記保護基を常法により水素原子に置換する方法も採用できる。
【0020】
8 が式(9)で示される基であると、ベーク処理および熱硬化処理を施すことによって、耐熱性により優れた絶縁膜が得られることから好ましい。また、式(9)で示される基は、エチニル基またはフェニルエチニル基であることがより好ましい。
【0021】
式(7)で示される化合物の具体例としては、例えば、

【0022】

【0023】

【0024】

などが挙げられ、式(7)で示される化合物としてはこれらのうちのいずれかであることが好ましい。
【0025】
前記熱反応性化合物を重合する方法は、公知の重合方法を採用することが可能であり、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤によるラジカル重合、硫酸、リン酸、トリエチルアルミニウム、塩化タングステン等の触媒によるカチオン重合、リチウムナフタレン等の触媒によるアニオン重合、光照射等の光ラジカル重合、溶媒中での加熱による熱重合などを挙げることができ、溶媒中で100℃〜150℃(より好ましくは120℃〜150℃)に加熱することによる熱重合が特に好ましい。通常、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等では触媒残渣等、光ラジカル重合法でも増感剤等を除去する工程が必要となる。
【0026】
熱重合時に前記熱反応性化合物を溶解させるのに用いる有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤;アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤;メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤などが工業的に入手可能であり、これらの中から、熱重合を行うのに好適な温度以上の沸点を有するものを選択することが好ましい。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。塗布液中に含む有機溶剤と同じものを使用することにより、塗布液を作成するときの溶媒留去等の手間を省くことができる。
【0027】
重合は、通常、炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合同士が反応することにより進行する。得られるポリマーの具体例としては、ポリ(ジエチニルアダマンタン)、ポリ(トリエチニルアダマンタン)、ポリ(テトラエチニルアダマンタン)ポリ(ビス(エチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(トリス(エチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(ビス(ジエチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(トリス(ジエチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(ビス(エチニルフェニルエチニル)アダマンタン)、ポリ(トリス(エチニルフェニルエチニル)アダマンタン)等が挙げられる。
【0028】
前記熱反応性化合物を重合して得られるポリマーは、GPCによるポリスチレン換算平均分子量が1000以上500000以下であることが好ましい。ここで、GPCによるポリスチレン換算平均分子量は、公知の方法で測定することができる。このGPCによるポリスチレン換算平均分子量は、2000以上400000以下であることがより好ましく、3000以上200000以下であることがさらに好ましい。GPCによるポリスチレン換算平均分子量が小さい場合、後述の成分(C)を含有させて、空孔を形成させる際、空孔径が十分に小さくならない場合がある。GPCによるポリスチレン換算平均分子量が大きい場合、塗布液としたときの粘度が上がり、操作性が悪くなる場合がある。
【0029】
前記熱反応性化合物を重合する際に、前記熱反応性化合物が残存していてもよい。
【0030】
成分(B)は、式(1)〜(3)で示されるシラン化合物からなる群から選ばれる化合物を重縮合して得られる重合体である。

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R4は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアシル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Xは2価の基を表し、mは2または3を表す。)
【0031】
ここで、炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
炭素原子数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜4のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
【0032】
Xは、2価の有機基を表し、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。Xとして好ましくは、炭素原子数1〜8のアルキレン基または炭素原子数6〜20のアリーレン基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、特に好ましくはトリメチレン基である。
【0033】
式(1)で示される化合物としては、例えば、N−メチルアミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ジフェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N−トルイルアミノエチルトリメトキシシラン、N−(ジメチルフェニル)アミノエチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、N−エチルアミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ジフェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N−トルイルアミノエチルトリエトキシシラン、N−(ジメチルフェニル)アミノエチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルメチルジエトキシシラン、N−メチルアミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノエチルトリブトキシシラン、N−メチルアミノエチルトリヘキソキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリプロポキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリブトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリヘキソキシシランなどが挙げられ、これらのうちのいずれかであることが好ましい。
【0034】

(式中、R3、R4、Xおよびmはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R5は水素原子または1価の有機基を表し、R6は1価の有機基を表す。)
【0035】
1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基等のアリール基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基等のアルコキシ基等の炭化水素オキシ基で置換されたアルキル基等の炭化水素基、アセチルメチル基、アセチルエチル基、アセチルブチル基、プロピオニルメチル基、ブチリルメチル基等のアシル基で置換されたアルキル基等の炭化水素基が挙げられる。1価の有機基として好ましくは、アシル基もしくは炭化水素オキシ基で置換されていてもよい炭化水素基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換された炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜4のアシル基で置換された炭素原子数1〜6のアルキル基、または炭素原子数1〜4のアシル基で置換された炭素原子数6〜20のアリール基であり、さらに好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数1〜4のアシル基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基であり、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、アセチルメチル基、プロピオニルメチル基、ブチリルメチル基、または2−アセチルエチル基が選ばれる。特に、R5が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R6が炭素原子数1〜4のアシル基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基であると、経時安定性が優れるため好ましい。
【0036】
式(2)で示される化合物としては、例えば、

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

等が挙げられ、これらのうちのいずれかであることが好ましい。
【0041】

(式中、R3、R4、Xおよびmはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R7は炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。)
【0042】
炭素原子数3〜8のアルキレン基としては、例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、メチルペンタメチレン基、エチルペンタメチレン基、メチルヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0043】
式(3)で示される化合物としては、例えば、

【0044】

等が挙げられ、これらのうちのいずれかであることが好ましい。
【0045】
成分(B)としては、式(2)で示されるシラン化合物および/または式(3)で示されるシラン化合物を重縮合して得られる重合体が好ましく用いられる。
【0046】
式(2)または式(3)で示される化合物は、式(4)で示された化合物と式(5)または式(6)で示される化合物とをそれぞれ縮合することにより得られる。

(R3、R4、Xおよびmはそれぞれ前記と同じ意味を表す。)

(式中、R5およびR6はそれぞれ前記と同じ意味を表す。)

(式中、R7は前記と同じ意味を表す。)
【0047】
式(4)で示される化合物としては、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリプロポキシシラン、アミノメチルトリブトキシシラン、アミノメチルトリフェノキシシラン、アミノメチルトリアセトキシシラン、アミノメチルトリプロピオニルオキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノエチルトリプロポキシシラン、アミノエチルトリブトキシシラン、アミノエチルトリブトキシシラン、アミノエチルトリフェノキシシラン、アミノエチルトリアセトキシシラン、アミノエチルトリプロピオニルオキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリブトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリプロポキシシラン、アミノフェニルトリブトキシシラン、アミノナフチルトリメトキシシラン、アミノナフチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリブトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリフェノキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリアセトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリプロピオニルオキシシラン、
アミノエチルメチルジメトキシシラン、アミノエチルメチルジエトキシシラン、アミノエチルメチルジアセトキシシラン、アミノエチルエチルジメトキシシラン、アミノエチルエチルジエトキシシラン、アミノエチルエチルジアセトキシシラン、アミノエチルフェニルジメトキシシラン、アミノエチルフェニルジエトキシシラン、アミノエチルフェニルジアセトキシシラン、
アミノエチルジメチルエトキシシラン、アミノエチルジエチルエトキシシラン、アミノエチルメチルフェニルエトキシシラン、アミノエチルエチルメチルエトキシシラン、アミノエチルメチルフェニルエトキシシラン、アミノエチルエチルフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
これらの中で、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリアセトキシシラン、または3−アミノプロピルトリアセトキシシランが、入手が容易であるため好ましく使用される。
【0049】
式(5)で示される化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、アセトフェノン、メチルトルイルケトン、メチルエチルフェニルケトン、メチルプロピルフェニルケトン、メチルナフチルケトン、3−ヘキサノン、3−ヘプタノン、エチルヘキシルケトン、エチルフェニルケトン、4−オクタノン、ブチルフェニルケトン、ヘキシルフェニルケトン、ジブチルケトン、ジペンチルケトン、ジヘキシルケトン、ベンゾフェノン、アセトアルデヒド、プロピオニルアルデヒド、ブチリルアルデヒド、ヘキサノイルアルデヒド、ベンズアルデヒド、メトキシアセトン、4−メトキシブタン−2−オン、1−メトキシブタン−2−オン、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、1−フェニル―1,3−ブタンジオン等が挙げられ、これらのうちのいずれかであることが好ましい。
【0050】
式(6)で示される化合物としては、例えば、以下に示す化合物などが挙げられ、これらのうちのいずれかであることが好ましい。

【0051】
式(5)または式(6)で示される化合物としては、工業的に入手も容易であり、低毒性かつ高揮発性であるため、メチルエチルケトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、またはアセチルアセトンであることがより好ましい。
【0052】
式(4)で示される化合物と式(5)または式(6)で示される化合物との反応は、式(2)または式(3)で示される化合物が得られる限り、特に限定されないが、例えば、以下の方法により実施することができる。式(4)で示される化合物の1級アミノ基に対して、0.1〜10倍モル当量、好ましくは1〜5倍モル当量のケトン(式(5)または式(6)で示される化合物)を混合し、反応温度−20℃〜150℃、好ましくは0〜100℃、反応時間は0.1〜50時間、好ましくは1〜10時間反応させる。反応は系中の水分を除去する方が好ましく、例えば、トルエン等、水と共沸する溶媒を混合し還流脱水する方法、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、シリカゲル、ゼオライト等の脱水剤を混合する方法を用いることができる。反応溶媒としては使用しても、使用しなくてもよいが、使用する場合は、アミノ基に対して不活性な溶媒が選択され、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類が例示される。
式(4)で示される化合物と式(5)または式(6)で示される化合物との反応方法について、さらに例示すれば、特開平7−247294号公報に開示されている共沸脱水を併用する方法、特開平7−247295号公報に開示されている無水硫酸塩共存下で反応させる方法などが挙げられる。
【0053】
式(1)〜(3)で示されるシラン化合物からなる群から選ばれる化合物を重縮合する方法としては、式(1)〜(3)で示されるシラン化合物に対して、0.01〜10倍モル量、より好ましくは0.1〜4倍モル当量の水を混合し(このとき酢酸や塩酸等の酸または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基を(より好ましくは塩基を)ともに混合するのが好ましい)、反応温度−20℃〜100℃、より好ましくは0〜50℃、反応時間は0.1〜50時間、より好ましくは1〜10時間反応させる方法が好適に採用される。反応溶媒としては使用しても、使用しなくてもよく、使用する場合は、前記式(4)で示される化合物と式(5)または式(6)で示される化合物との反応で例示した溶媒と同様のものを挙げることができる。
【0054】
なお、式(4)で示される化合物として、−O−R4がメトキシ基であるような特に反応性の高い化合物を原料に用いる場合には、式(5)または式(6)で示される化合物との前記反応の際に、同時に重縮合も起こって、式(2)または式(3)で示される化合物が得られることがある。このように同時に重縮合も行うときは、還流脱水したり脱水剤を混合したりしないほうが好ましい。
【0055】
このような一連の反応の過程では、式(5)や式(6)で示される化合物が一部脱離して元の−NH2となったり等することもある。
【0056】
このようにして、式(1)〜(3)で示されるシラン化合物からなる群から選ばれる化合物を重縮合して得られる重合体は通常、式(1’)〜(3’)で示される構造からなる群から選ばれる繰り返し構造単位よりなる重合体となる。

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R9は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表すか、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数1〜4のアシルオキシ基または炭素原子数6〜20のアリールオキシ基を表し、Xは2価の基を表す。)

(式中、R9およびXはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R5は水素原子または1価の有機基を表し、R6は1価の有機基を表す。)

(式中、R9およびXはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R7は炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。)
【0057】
かかる式(1’)〜(3’)で示される構造からなる群から選ばれる繰り返し構造単位よりなる重合体は、式(4)で示される化合物を重縮合させた後に、得られた重縮合体と式(5)または式(6)で示される化合物とを縮合させて得ることも可能である。
【0058】
式(1’)〜(3’)で示される構造からなる群から選ばれる繰り返し構造単位よりなる重合体の好ましい具体例としては、以下の構造のものが挙げられる。

【0059】
成分(B)の使用量は成分(A)100重量部に対して、0.01〜40重量部であることが好ましく、0.1〜20重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることがさらに好ましい。成分(B)の使用量が少ないと、半導体基板との密着性が低下する傾向があり、多すぎると、比誘電率が悪化し、更に絶縁膜をドライエッチング等で加工する上で、いわゆるグラスフォーメーションと呼ばれるエッチング残渣が多量に発生し、洗浄工程での負荷が高くなるため半導体デバイス製造上の操作が煩雑となる傾向がある。
【0060】
本発明の絶縁膜形成用塗布液は、成分(A)および成分(B)を有機溶剤に溶解することによって得ることができる。
【0061】
使用される有機溶剤は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤;アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤;メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤などが工業的に入手可能であり、安全であるため溶剤として好適であり、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
本発明の絶縁膜形成用塗布液は、空孔形成用化合物(C)をさらに含有することが好ましい。空孔形成用化合物を含有させることにより、基板への塗布後、絶縁膜の硬化の段階で、揮発または分解し、絶縁膜中に微細な空孔を形成し、より誘電率の低下をはかることができる。
【0063】
成分(C)としては、例えば、オレフィン誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリアルキレンオキシド誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリアルキレングリコール誘導体、ポリオキシエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中で、ポリスチレン誘導体またはポリアルキレンオキシド誘導体が好ましく使用される。
ポリスチレン誘導体としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリα−メチルスチレン、ポリα−メチルビニルトルエン、ポリα−メチルビニルキシレン、ポリα−エチルスチレン、ポリα−エチルビニルトルエン、ポリα−エチルビニルキシレンなどが挙げられ、これらの中で、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリα−メチルスチレン、ポリα−メチルビニルトルエンが好ましく、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンがより好ましい。
ポリアルキレンオキシド誘導体としては、例えば、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシイソプロピレンなどが挙げられ、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが好ましく使用される。
【0064】
成分(C)は、2種以上のモノマー類を重合させた共重合体であってもよい。該共重合体としては、例えば、ポリオキシメチレン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン共重合体、スチレン−メタアクリレート共重合体などが挙げられる。
【0065】
成分(C)は、成分(A)との相溶性が良好に維持できる範囲で任意に選択することが可能であり、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
成分(C)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は、50000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。
該分子量が50000を超えると、形成される空孔が大きくなる傾向がある。
【0067】
成分(C)には、成分(A)との相溶性をさらに向上させるために、重合反応に用いられる重合開始剤、変成剤、反応停止剤を適宜選択することができる。
重合開始剤としては、例えば、金属アリール化合物、金属アルキル化合物等の有機金属化合物、トリフェニルメチルカルボニウムイオンの塩、芳香環を有する過酸化物、芳香族環を有するアゾ化合物などが挙げられる。
変成剤としては、例えば、1,1−ジフェニルエチレン、1,2−ジフェニルエチレン(シス体、トランス体)、1,1,2−トリフェニルエチレン、1−ナフチル−1−フェニルエチレンなどが挙げられる。
反応停止剤としては、例えば、水、メタノール、ハロゲン化アルキル化合物、カルボニル化合物などが挙げられる。
【0068】
本発明の絶縁膜形成用塗布液中の成分(A)と成分(C)との重量比は、99:1〜1:99であることが好ましく、より好ましくは95:5〜30:70である。
この成分(A)の重量比が多いと、形成される空孔が少なくなり、十分に比誘電率が低下しない傾向があり、少ないと、成分(A)と成分(C)との相溶性が悪化し、形成される空孔が大きくなる傾向がある。
【0069】
塗布液として用いる場合、[(成分(A)配合量+成分(B)配合+成分(C)配合量)/(成分(A)配合量+成分(B)配合+成分(C)配合量+有機溶剤配合量)]×100は、5〜50%であることが好ましい。該濃度は、塗布膜の膜厚や段差埋め込み性改良等の目的に応じて適宜調整することができる。
【0070】
また、本発明の絶縁膜形成用塗布液には、塗布性等の性能を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、非イオン界面活性剤、フッ素系非イオン界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシド、ペンチルパーオキシド、ヘキシルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、オクチルポリエチレンオキシド、デシルポリエチレンオキシド、ドデシルポリエチレンオキシド、オクチルポリプロピレンオキシド、デシルポリプロピレンオキシド、ドデシルポリプロピレンオキシド等が挙げられる。
フッ素系非イオン界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0071】
絶縁膜は、スピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により、本発明の絶縁膜形成用塗布液を基板に塗布した後、空気中、大気圧下、80〜250℃でベーク処理を行い、250〜400℃で熱硬化処理して得られる。基板としては、例えば、ガラス、石英、金属、セラミック、シリコン、GaAs、SiO2、SiN、SiCなどの基板が挙げられる。熱硬化処理は、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン等の不活性気体中あるいは0.1気圧以下の減圧下でのホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用して実施される。
【0072】
加熱処理によって炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合同士がカップリングし、3次元構造を形成した結果、機械的強度、耐熱性に優れた絶縁膜が形成されると考えられる。最終的な加熱温度は、200〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃であり、加熱時間は、通常、1分間〜10時間である。
【0073】
本発明の絶縁膜形成用塗布液から得られる絶縁膜は、比誘電率が低く、耐熱性に優れ、半導体基板との密着性にも優れていることから、半導体素子等における層間絶縁膜、パッシベーション膜、半導体デバイス保護膜として好適に使用し得る。
【実施例】
【0074】
本発明を実施例に基いてさらに詳細に説明するが、本発明が実施例により限定されるものではないことは言うまでもない。
【0075】
製造例1
化合物Aの製造
50mLの3つ口フラスコ中で3gの1,3−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンを27gのアニソールに溶解させた。窒素気流下で約150℃、10時間攪拌を行った。次いで、一旦115℃まで温度を低下させた後、徐々に昇温し、135℃まで昇温させ、合計20時間で反応を止めた。得られた樹脂のGPCによるポリスチレン換算平均分子量は57000であった。このとき、GPCの面積強度で42%がモノマーとして残存していた。これを化合物Aとする。
【0076】
製造例2
空孔形成用化合物Bの製造
窒素置換したフラスコに、テトラヒドロフラン 284重量部、α−メチルスチレン 72重量部を仕込んだ。攪拌下、濃度1.6Mのn−ブチルリチウム溶液 54重量部をフラスコに滴下した。次いでフラスコを−60℃まで冷却し、30分間攪拌した。次いで1,1−ジフェニルエチレンの20%テトラヒドロフラン溶液 165重量部をフラスコに滴下し、30分間攪拌した。最後にメタノール 6重量部を仕込み反応を停止させた。室温まで昇温し、得られた樹脂溶液を4000重量部のメタノールに滴下し、樹脂を沈殿させ、ろ過して取り出した。末端をジフェニルエチレンで修飾した重量平均分子量1300のポリα−メチルスチレンが得られた。これを空孔形成用化合物Bとする。
【0077】
製造例3
ケイ素化合物重合体Cの製造
500mL四つ口フラスコにアセチルアセトン 27.9g、硫酸ナトリウム 13.9gおよび市販トルエン 150mLを投入し、氷浴で5℃まで冷却し、約30分攪拌した。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシラン 50gを約1時間かけて滴下した。1時間冷却しながら攪拌し、その後、室温まで昇温させ、15時間攪拌した。不溶塩をろ別し、ろ液からトルエンを減圧下に留去し、エタノール 150gで希釈した。次いで、Duolito UP−7000(混床イオン交換樹脂、ロームアンドハース社製)に通液することで残留ナトリウムイオンを除去した。通過液からエタノールを留去し、下式に示す繰り返し構造単位からなるケイ素化合物重合体を得た。
GPCによるポリエチレングリコール換算重量平均分子量は550であった。
1H−NMR(溶媒 CDCl3)による同定・・・a,d,g,e;σ1.8−2.0(m,11H)、b;σ0.67(m,2H)、c;σ1.67(m,2H)、f;σ3.27(s、2H)

【0078】
製造例4
シラン化合物Dの製造
特表2002−523549号公報実施例1記載の方法によりビニルトリアセトキシシランの部分加水分解縮合物を得た。これをシラン化合物Dとする。
【0079】
塗布液の調製
塗布液1の調製
製造例1で得られた化合物Aと製造例2で得られた空孔形成用化合物Bの重量比率がA:B=55:45となるよう、またAとBとの合計の濃度が15重量%となるようにアニソール中に配合、溶解させた。さらに、化合物Aの5重量%に相当する量のケイ素化合物重合体C(製造例3で得られたもの)を配合し、溶解させた。この溶液を、0.1μmPTFEフィルターで公知の方法により濾過し、塗布液を調製した。
塗布液2の調製
製造例3で得られたCの代わりに製造例4で得られたシラン化合物Dを用いた以外は塗布液1に準拠して塗布液を調整した。
【0080】
実施例1および比較例1
調製された塗布液1または2を、4インチシリコンウェハー上に約1ml滴下した。その後、このウェハーを500rpmで3秒間スピンさせてから、2000rpmの速度で15秒間スピンさせた。コーティングしたウェハーを150℃で1分間焼き付けた。次いで、その焼き付けたウェハーを炉内で、窒素雰囲気中、400℃に30分保持することにより硬化させ、空孔形成用化合物を分解させた。また、得られた硬化膜の密着性は、QUAD GROUP社製Sebastian V型を用い測定した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

実施例1は比較例1に比べ、ボイドを発生させること無く、高い密着性が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および(B)を含有する絶縁膜形成用塗布液。
成分(A):非極性であり、かつ分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有するか、炭素−炭素三重結合を2個以上有するか、もしくは炭素−炭素二重結合を少なくとも1個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1個有する熱反応性化合物、または該熱反応性化合物を重合して得られるポリマー。
成分(B):式(1)〜(3)で示されるシラン化合物からなる群から選ばれる化合物を重縮合して得られる重合体。

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R4は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアシル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Xは2価の基を表し、mは2または3を表す。)

(式中、R3、R4、Xおよびmはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R5は水素原子または1価の有機基を表し、R6は1価の有機基を表す。)

(式中、R3、R4、Xおよびmはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R7は炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
mが3である請求項1記載の塗布液。
【請求項3】
式(2)で示されるシラン化合物を必須として重縮合して得られ、R5が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R6が炭素原子数1〜4のアシル基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基である請求項1または2記載の塗布液。
【請求項4】
以下の成分(A)および(B)を含有する絶縁膜形成用塗布液。
成分(A):非極性であり、かつ分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有するか、炭素−炭素三重結合を2個以上有するか、もしくは炭素−炭素二重結合を少なくとも1個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1個有する熱反応性化合物、または該熱反応性化合物を重合して得られるポリマー。
成分(B):式(1’)〜(3’)で示される構造からなる群から選ばれる繰り返し構造単位よりなる重合体。

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R9は炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基を表すか、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数1〜4のアシルオキシ基または炭素原子数6〜20のアリールオキシ基を表し、Xは2価の基を表す。)

(式中、R9およびXはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R5は水素原子または1価の有機基を表し、R6は1価の有機基を表す。)

(式中、R9およびXはそれぞれ前記と同じ意味を表し、R7は炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。)
【請求項5】
式(2’)で示される繰り返し構造単位を有し、R5が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R6が炭素原子数1〜4のアシル基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基である請求項4記載の塗布液。
【請求項6】
成分(B)の割合が、成分(A)100重量部に対して0.01〜10重量部である請求項1〜5のいずれかに記載の塗布液。
【請求項7】
成分(A)が、アダマンタン骨格を有する熱反応性化合物、または該熱反応性化合物を重合して得られるポリマーである請求項1〜6のいずれかに記載の塗布液。
【請求項8】
成分(A)が、式(7)で示される化合物、または該化合物を重合して得られるポリマーである請求項1〜6のいずれかに記載の塗布液。

(式中、Arは芳香環を有する基を表し、R8は式(8)または式(9)で示される基を表し、xは1〜3の整数を表し、xが2以上の場合、複数のR8は互いに同一でも異なっていてもよく、yは1〜3の整数を表し、yが2以上の場合、複数のArおよび複数のR8はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、x×yは2〜9の整数を表す。)

(式中、Q1〜Q3はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)

(式中、Q4は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項9】
式(7)で示される化合物が、Arがアダマンタン骨格のメチン基に結合した化合物である請求項8記載の塗布液。
【請求項10】
8が式(9)で示される基である請求項8または9記載の塗布液。

(式中、Q4は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項11】
8がエチニル基またはフェニルエチニル基である請求項8または9記載の塗布液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の塗布液を基板に塗布し、空気中、大気圧下、80〜250℃でベーク処理を行った後、250〜400℃で熱硬化処理をする絶縁膜の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の製造方法により得られる絶縁膜。

【公開番号】特開2006−104375(P2006−104375A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294690(P2004−294690)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】