説明

耐火ゲート金属を有する高電子移動度トランジスタ(HEMT)

ゲート金属スタックが、HEMT構造内のゲート金属スタックとショットキー障壁層との間の接合部に、モリブデン(Mo)または白金(Pt)など耐火金属の追加の薄層を含むInP高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造。耐火金属層は、ゲート金属と障壁層との間のショットキー接合の長期劣化を減少し、またはなくし、それにより、ディスクリートデバイスとして使用されるにせよ、集積回路内で使用されるにせよ、InP HEMTの長期信頼性を劇的に改善し、しかしHEMT性能を犠牲にしない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造に関し、より詳細には、リン化インジウム(InP)および関連の材料を使用するHEMTに関する。
【背景技術】
【0002】
HEMTは、ソースおよびドレイン端子と呼ばれる2つの端子間の電流の流れが、ゲート端子に印加される電圧によって制御される電界効果トランジスタ(FET)の1タイプである。HEMTは、様々な用途で幅広く使用され、特に、マイクロ波およびミリメートル波周波数で動作する低雑音増幅器として使用される。HEMTは、宇宙、軍事、および商業用途で、ディスクリートトランジスタとして実装されることがあり、またはマイクロ波モノリシック集積回路(MMIC)など集積回路内に実装されることもある。
【0003】
本発明は、特に、InP HEMTの既知の欠点に関し、InP HEMTは、例えば、InP基板の上に形成されるインジウムガリウム砒素(InGaAs)のチャネル層およびインジウムアルミニウム砒素(InAlAs)の障壁層を含む。簡潔にするために、この構造を、本説明ではInP HEMTまたは0.1μm InP HEMTと呼び、ここで表記「0.1μm」は、構造の最小フィーチャサイズまたは幾何形状を表す。InP HEMTの使用者にとって重要な問題は、長期信頼性である。これは、多くの用途において、修理および交換が実際上の選択肢とならない宇宙または同様の環境でこれらのデバイスが使用されるからである。
【0004】
宇宙および軍事用途のためのInP HEMT MMICの優れたマイクロ波およびミリメートル波性能は実証されており、技術文献で論じられている。さらに、この優れた性能は、例えば44GHz(ギガヘルツ)から183GHz以上までの周波数の範囲にわたって動作する回路に関して実証されている。寿命動作中のInP HEMTの信頼性を保証するために、高温寿命試験にさらされるときのそれらの高い信頼性性能を実証することが重要である。比較的短い期間にわたる高温での試験が、はるかに長い期間にわたる通常動作温度での試験のための許容できる代用法となる。したがって、少なくともすでに1993年以来、ディスクリートトランジスタにせよMMICにせよ、InP HEMTの高温信頼性は、様々な産業界で研究者によって広範に調査されてきた。その結果、高い信頼性性能は、0.07μm、0.1μm InP HEMTに関して、かつメタモルフィックHEMT(MHEMT)に関して実証されている。これらの調査を合わせた結果、InP HEMTおよびMHEMT技術の成熟さ、ならびに宇宙、軍事、および商業用途のためにこれらの技術が整っている度合いが実証される。例えば、フェーズドアレイ用途に関してQバンド(30〜50GHz)で動作する高性能および高信頼性のInP HEMT低雑音増幅器が、最近の刊行物に記載されているように、本発明者の数人によって実証されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】R. Grundbacher, Y. C. Chou, R. Lai, K. lp, S. Kam, M. Barsky, G. Hayashibara, D. Leung, D. Eng, R. Tsai, M. Nishimoto, T. Block, P. H. Liu and A. Oki, "High Performance and High Reliability InP HEMT Low Noise Amplifiers for Phased-Array Applications," Technical Digest of International Microwave Symposium, pp. 157-160, 2004
【非特許文献2】Y. C. Chou et al., "Degradation Analysis of 0.1 μm InP HEMT MMICs Using Low Frequency Noise Characterization," Technical Digest of 16th international Conference of Indium Phosphide and Related Material, pp. 619-622, 2004
【非特許文献3】Y. C. Chou et al., "0.1 μm InGaAs/InAlAs/InP HEMT MIMICs - a Flight Qualified Technology," Technical Digest of IEEE GaAs IC Symposium, pp.77-80, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
InP HEMTの最高の信頼性性能は産業界で実証されているが、信頼性性能が企業ごとに異なることが判明している。信頼性性能のばらつきは、フッ素汚染、オーム接点劣化、ゲート金属スタック、層構造、バイアス依存、ゲートリセス深さのばらつき、およびゲート金属シンキング(sinking)を含めたいくつかの異なる劣化メカニズムに起因される。したがって、信頼性性能および劣化メカニズムは、特定のInP HEMT技術で採用されるプロセス技法に強く依存すると考えられる。したがって、信頼性性能をさらに改善するために、様々な確立されたプロセス技法におけるInP HEMTの劣化原因を特定することが重要である。理想的には、InP HEMT性能劣化の原因を確実に特定することができる場合、InP HEMTの適用分野に関わらず、InP HEMTの信頼性性能を改善するInP HEMT構造を提供する必要性が大きい。本発明は、これらの目的を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、InP HEMTの性能劣化の主要な原因が、HEMT構造内のゲート金属電極とその下にある半導体材料との間に形成されるショットキー接合の物理的な劣化であるという本発明者のうちの1人による認識から発展した。本発明は、ディスクリートデバイスとして実装されるにせよ、MMICなど集積回路内に実装されるにせよ、高温での試験におけるショットキー接合劣化の度合いを劇的に減少し、その結果、それに応じてInP HEMTの長期信頼性を改善するゲート金属電極に関する。
【0008】
より具体的には、本発明は、従来技術のゲート金属構造におけるようにチタン(Ti)、白金(Pt)、および金(Au)の複数の層を備え、しかしさらに、半導体層、具体的にはHEMT構造のInAlAs障壁とのショットキー接合部に、Ti層を覆う耐火金属の薄層を備えるゲート金属構造において具体化される。本発明の開示される実施形態では、耐火金属は、モリブデン(Mo)または白金(Pt)であってよく、したがってゲート金属構造は、Mo(またはPt)、Ti、Pt、およびAuの連続層を含む。
【0009】
簡潔には、本発明の耐火金属層を用いないと、ゲート金属構造内のチタンは、構造が高温に曝されるときに、InAlAs障壁層内に不均一に拡散し、インジウムが多い(indium rich)いくつかの領域と、インジウムが少ない(indium depleted)他の領域とを生み出す。ゲート接合の電気的特性に関して、チタンの相互拡散は、逆ゲート電流/理想係数の増加と、ショットキー障壁高さの減少とをもたらし、その両方が、性能に悪影響を及ぼす。本発明の耐火金属層を適所で用いれば、ショットキー障壁層の劣化が最小限に抑えられ、またはなくなり、高温でさえ優れた信頼性性能が達成される。
【0010】
簡潔に、かつ一般的には、本発明のリン化インジウム(InP)高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造は、半絶縁基板と、基板上に形成され、半導体チャネル層およびその上にある半導体障壁層を備えるエピタキシャル構造と、障壁層内に延在し、障壁層とのショットキー接合を形成する金属ゲート構造とを備えるものと定義することができる。本発明によれば、金属ゲート構造は、障壁層と接触する耐火金属の第1の層と、第1の層の上にある追加の金属層とを備える。金属ゲート構造の第1の層は、ショットキー接合の長期劣化を緩和し、HEMT構造の長期信頼性を改善する。
【0011】
より具体的には、金属ゲート構造内の追加の金属層は、第1の層の上にあるチタン(Ti)の第2の層と、第2の層の上にある白金(Pt)の第3の層と、第3の層の上にある金(Au)の第4の層とを備える。本発明の現在好ましい実施形態では、金属ゲート構造の第1の層は、モリブデン(Mo)または白金(Pt)である。好ましくは、ゲート金属の第1の層は、約20〜80Å(オングストローム)の厚さを有する。
【0012】
本発明がInP HEMT技術における大きな進歩を表すことは、前述のことから理解されよう。特に、ゲート金属構造の簡便であるが重要である変更によって、本発明は、ディスクリートデバイスとして使用されるにせよ、集積回路内で使用されるにせよ、InP HEMTの優れた性能を損なうことなくInP HEMTの長期信頼性を改善する。本発明の他の態様および利点は、添付図面に関連して述べられる以下のより詳細な説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
例示の目的で図面に示されるように、本発明は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関し、より詳細には、リン化インジウム(InP)および関連の材料を採用するHEMTに関する。本発明に先立って、InP HEMTデバイスは、ディスクリートデバイスとして実装されるにせよ、マイクロ波モノリシック集積回路(MMIC)など集積回路内に実装されるにせよ、典型的には、チタン(Ti)、白金(Pt)、および金(Au)の3つの連続する層からなるゲート金属構造を含んでいる。InP HEMTがマイクロ波およびミリメートル波周波数で優れた性能を有することは広く認識されているが、このデバイスの既知の欠点は、長期の使用の間に性能の劣化を示す可能性があることである。
【0014】
従来、InP HEMTの長期性能劣化は、様々な劣化メカニズムに起因されていた。しかし、近年、ゲート金属とその下にある半導体層との間のショットキー接合の劣化がInP HEMTの性能劣化の主要な原因であったことが、本発明者によって示されている(例えば、非特許文献2参照。その開示を参照として本明細書に組み込む)。
【0015】
本発明によれば、InP HEMTは、Ti、Pt、およびAuの従来の3つの層に加えて耐火金属の層を有するゲート金属構造を含む。本発明の現在好ましい実施形態での耐火金属は、モリブデン(Mo)または白金(Pt)である。本発明の構造上の詳細および利点は、以下に続くより詳細な論述から明らかになろう。
【0016】
本発明の現在好ましい実施形態で使用される0.1μm HEMT MMIC技術のプロセスは、他の文献に記載されている(例えば、非特許文献3参照。その開示を参照として本明細書に組み込む)。0.1μm InGaAs/InAlAs/InP HEMTの劣化特性を調べるために、高温寿命試験の前または後に、広範囲にわたるDC(直流)およびRF(無線周波数)測定が、ディスクリートデバイスおよびMMICに対して行われた。さらに、試験されたいくつかの部分を、その後の組成および深さプロファイル解析のための断面作成のために、中間の寿命試験の合間に試験から回収した。使用された解析技法は、「STEM/EDX」として知られており、これは、走査透過電子顕微鏡(STEM)におけるエネルギー分散X線(EDX)マッピングシステムを表す。解析時、断面を作成するために、集束イオンビーム(FIB)が使用された。
【0017】
以下にさらに論じるように、この解析は、ゲート金属と半導体と(Ti−InAlAs)の間のショットキー接合が主要な劣化原因であったことを示す。本発明の新規のゲート金属電極技術は、Ti/Pt/Auゲート金属を有する0.1μm InP HEMTで観察されるショットキー接合劣化を緩和するために開発された。さらに、高温寿命試験は、従来のTi/Pt/Auゲートデバイスと比較して、新規のゲート構造の信頼性性能改善を示す。さらに、本発明に従って構成されたゲート金属スタックを有するInP HEMT低雑音増幅器(LNA)は、従来のTi/Pt/Auゲート金属スタックを有するInP HEMT LNAのものに匹敵するRF性能を示す。
【0018】
図1は、高温で寿命試験を行う前の従来のInP HEMT構造の走査透過電子顕微鏡(STEM)マイクログラフを示し、特に、劣化を受けていないショットキー接合を示す。具体的には、マイクログラフは、基板10を含めたInP HEMTの断面を示し、基板10の上に、インジウムガリウム砒素(InGaAs)のチャネル層12が形成されている。インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)の障壁14が、チャネル層12の上に形成され、キャッピング層18が、障壁の上に形成される。構造内にこれらおよびその他の層を形成するために使用されるエピタキシャル半導体製造プロセスは、従来のものであり、当技術分野でよく知られている。図1が、ゲート金属および隣接する構造を含むInP HEMTの関連部分のみを示すことは、当業者によって理解されよう。ソースおよびドレイン端子を介してチャネル12との電気接触を形成するために必要とされる従来のソースおよびドレインメタライゼーション層は図示されていない。この従来のInP HEMTでは、ゲート金属スタック20は、障壁層14内に延在するチタン(Ti)の層と、チタンの上の白金(Pt)の隣接層と、白金層の上の金(Au)の層とを含む。ゲート金属スタック20は、典型的には、窒化珪素または同様の材料のパッシベーション層22によって取り囲まれる。
【0019】
図2は、寿命試験で高温にされされた後の、図1と同じ従来のInP HEMT構造の走査電子顕微鏡マイクログラフを示す。ゲート金属スタック20内のチタンと障壁14との間のショットキー接合は、寿命試験の結果、非常に明確に劣化される。寿命試験条件は、Vds=1.3VおよびIds=150mA/mmのドレインソース電圧および電流によって提供される電気的ストレスと共に、220℃よりも大きいチャネル温度Tchannelを含んでいた。図2から、劣化が、ゲート金属スタック20のTi金属の下のInAlAsショットキー障壁層14内でのみ現れることは明らかである。ゲートソース領域とゲートドレイン領域との間のアクセス領域の劣化は無視できる。これは、Ti/Pt/Au金属スタック20内のTiゲート金属が、図2に示されるように、観察されるショットキー接合劣化に重要な役割を果たす可能性があることを示唆する。
【0020】
図3に示されるような接合劣化の追加の電気的な特徴付けは、ショットキー接合劣化が、逆ゲート電流/理想係数の増加と、ショットキー障壁高さの減少とからなることを裏付ける。この図では、最も低い曲線30が、図1の、すなわちデバイスの寿命試験前の、従来のHEMTの順バイアスおよび逆バイアスダイオード特性を示す。ダイオード特性は、ゲートソース電圧Vgs(水平軸に沿ってプロットされる)に伴う電流Ig(垂直軸に沿ってプロットされる)の変動を示す。図3における他の3つの曲線32、34、および36は、それぞれ264時間、504時間、および936時間にわたる試験の後の従来デバイスのダイオード特性を示す。劣化が試験時間と共に増大するにつれて、逆バイアス曲線が、漏れ電流の増加を示し、デバイス理想係数の増加を示唆する。同様に、劣化が増大するにつれて、順バイアス曲線も、より高い電流値を示し、ショットキー障壁高さの減少を示唆する。
【0021】
暗い/明るい箇所(図2に示される暗い/明るい箇所)のEDX解析のスペクトル(図4および5に示される)が、Ti相互拡散およびIn0.52Al0.48Asショットキー層劣化の証拠を示す。明るい箇所は、わずかにインジウムが多く、すなわちIn0.52+xAl0.48Asであり、暗い箇所は、わずかにインジウムが少なく、すなわちIn0.52-xAl0.48Asである。したがって、図3に示されるように結果的に生じる電気的ショットキー接合劣化が観察される。より具体的には、図4は、Ti/InAlAsショットキー接合の領域にわたるTiおよびAsの深さプロファイルを示す。水平軸は、公称の接合に関する深さの尺度を提供し、垂直軸は、任意の単位でのEDX信号を表す。本質的に、図4は、図2に示される接合の明領域および暗領域内のTiおよびAsの典型的な相互拡散を示す。曲線40および42は、それぞれ暗領域および明領域内でInAlAs障壁内に延在するTiの存在を示す。曲線44および46は、それぞれ暗領域および明領域内でTi層内に延在するAsの存在を示す。接合に最も近いTi層の部分を、TiAs領域48と呼ぶ。
【0022】
図4と同様に、図5は、劣化された接合を介するTiおよびInの相互拡散を示す。曲線40および42は、ここでもまた、それぞれ暗領域および明領域内でのInAlAs層内へのTiの拡散を示すように図示されている。曲線50および52は、それぞれ暗領域および明領域内でのTi層内へのInの拡散を示している。
【0023】
図6に示されるように、Ti/Pt/Auゲートデバイス内で観察されるショットキー接合の劣化は、新規のゲート金属電極技術を用いたInP HEMTにおいて大幅に緩和された。例示されるゲート金属構造20’は、図1における金属スタック20と同様であるが、重大な例外は、本発明の構造が、Ti層とInAlAs障壁14との間に耐火金属の薄層24も含むことである。劣化を緩和することに加えて、耐火金属層24を有するデバイスはまた、ゲート長、リセスサイズ、およびゲート金属形状の良好な制御性を保つ。その結果、新規のゲート金属電極を有するデバイスは、ベースラインの従来のTi/Pt/Auゲート金属スタックを有するデバイスのものと同様のDCおよびRF性能を依然として保つ。
【0024】
耐火金属層24のための現在好ましい材料は、モリブデン(Mo)または白金(Pt)であり、しかし、場合によっては、高温で安定性を示す他の適切な金属が使用されてもよい。理想的には、耐火金属層24は、比較的薄くすべきである。例えば、20〜80Å(オングストローム)、すなわち0.002〜0.008μmの範囲内の層厚さが、良好な結果を提供する。より大きな厚さは、金属スタック20’内に機械的ストレスをもたらす可能性がある。比較として、従来の3金属Ti/Pt/Auゲート金属スタック内の他の金属層はそれぞれ、典型的には、Ti/Ptに関しては厚さ約400Å(0.04μm)であり、Auに関しては厚さ7000Å(0.7μm)である。
【0025】
高温寿命試験は、図7に示されるように、Ti/Pt/Auゲートデバイスと比較して、新規のゲート金属デバイスを有するInP HEMTの信頼性性能の改善を実現することができることを実証する。図7のグラフは、高温での寿命試験などストレス試験中の、時間の経過に伴う性能劣化の変動をプロットし、この場合には、垂直軸に沿ってdB単位でプロットされた増幅器利得(S21)として測定されている。従来の3金属ゲート構造を使用する低雑音増幅器(LNA)の利得劣化は、曲線70によって示され、試験の最初の100〜200時間にわたって性能の比較的急速な低下を示す。互いにほぼ一致する曲線72および74は、新規のゲート金属構造を組み込むLNAに関する増幅器利得の変動を示す。新規のゲート金属LNAが、試験の1400時間もの長さにわたって、増幅器性能の劣化を実質的に示さないことが観察される。
【0026】
2つの好ましい追加のゲート金属層(MoおよびPt)を使用するデバイスにおいて、ショットキー接合劣化の緩和と信頼性性能との両方に関して、同様の結果が観察された。新規のゲート金属を有する0.1μm InP HEMT MMICのRF性能が悪影響を受けないことを保証するために、新規のゲート金属を有する2ステージバランス(2−stage balanced)Kバンド(18〜26GHz)InP HEMT低雑音増幅器(LNA)が製造され、従来のTi/Pt/Auゲート金属を有するLNAと比較された。測定結果は、好ましい新規のゲート金属のいずれかを有する0.1μm InP HEMT MMICの利得および雑音指数性能が、Ti/Pt/Auゲート金属を有するLNAのものに匹敵することを示した(例えば、35GHzの周波数での、16〜18dB(デジベル)の利得および約2.5dBの雑音指数)。
【0027】
本発明がHEMT技術における大きな進歩を表すことは、前述のことから理解されよう。特に、本発明は、ショットキー接合劣化を軽減し、信頼性を改善し、かつ良好なRF性能を提供する、簡単に製造される0.1μm InP HEMTデバイスを提供する。また、本発明の特定の実施形態を、例示の目的で詳細に例示して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正を加えることもできることを理解されたい。したがって、本発明は、頭記の特許請求の範囲によって以外には限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】試験前の、従来技術のInP HEMTの部分断面を示すマイクログラフの複写である。
【図2】図1と同様であるが、高温での寿命試験中に生じた劣化を示すマイクログラフの複写である。
【図3】寿命試験中の様々な時間での、図1のHEMTの順バイアスおよび逆バイアスダイオード特性を示す1組のグラフである。
【図4】HEMTのゲート金属半導体接合に関するチタン(Ti)および砒素(As)の組成深さプロファイルを示し、特に、接合を介するTiおよびAsの相互拡散の度合いを示す1組のグラフである。
【図5】図4と同様であるが、チタン(Ti)およびインジウム(In)の組成深さプロファイルと、接合を介するTiおよびInの相互拡散の度合いとを示す1組のグラフである。
【図6】本発明によるInP HEMTの部分断面を示すマイクロフォトグラフの複写である。
【図7】従来技術のInP HEMTの長期性能劣化を、本発明のInP HEMTの2つの実施形態の長期性能と比較する1組のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された長期性能を有するリン化インジウム(InP)高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造であって、
半絶縁基板と、
前記基板上に形成され、半導体チャネル層およびその上にある半導体障壁層を備えるエピタキシャル構造と、
前記障壁層内に延在し、前記障壁層とのショットキー接合を形成する金属ゲート構造とを備え、前記金属ゲート構造に印加される電圧は、前記チャネル層内の電流の流れを制御し、前記金属ゲート構造は、
前記障壁層と接触する耐火金属の第1の層と、
前記第1の層の上にある追加の金属層とを備え、
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、前記ショットキー接合の長期劣化を緩和し、前記HEMT構造の長期信頼性を改善する
ことを特徴とするInP HEMT構造。
【請求項2】
前記金属ゲート構造内の前記追加の金属層は、
前記第1の層の上にあるチタン(Ti)の第2の層と、
前記第2の層の上にある白金(Pt)の第3の層と、
前記第3の層の上にある金(Au)の第4の層と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のInP HEMT構造。
【請求項3】
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、モリブデン(Mo)および白金(Pt)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のInP HEMT構造。
【請求項4】
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、モリブデン(Mo)および白金(Pt)からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のInP HEMT構造。
【請求項5】
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、約20〜80Å(オングストローム)の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のInP HEMT構造。
【請求項6】
前記半絶縁基板は、リン化インジウム(InP)からなり、
前記チャネル層は、インジウムガリウム砒素(InGaAs)からなり、
前記障壁層は、インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のInP HEMT構造。
【請求項7】
さらに、
前記障壁層の上に形成されるインジウムガリウム砒素(InGaAs)のキャッピング層を備えることを特徴とする請求項6に記載のInP HEMT構造。
【請求項8】
改善された長期性能を有するリン化インジウム(InP)高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造であって、
リン化インジウム(InP)の半絶縁基板と、
前記基板上に形成され、インジウムガリウム砒素(InGaAs)の半導体チャネル層およびその上にあるインジウムアルミニウム砒素(InAlAs)の半導体障壁層を備えるエピタキシャル構造と、
前記障壁層内に延在し、前記障壁層とのショットキー接合を形成する金属ゲート構造とを備え、前記金属ゲート構造に印加される電圧は、前記チャネル層内の電流の流れを制御し、前記金属ゲート構造は、
前記障壁層と接触する耐火金属の第1の層と、
前記第1の層の上にあるチタン(Ti)の第2の層と、
前記第2の層の上にある白金(Pt)の第3の層と、
前記第3の層の上にある金(Au)の第4の層と
を備え、前記金属ゲート構造の前記第1の層は、前記ショットキー接合の長期劣化を緩和し、前記HEMT構造の長期信頼性を改善する
ことを特徴とするInP HEMT構造。
【請求項9】
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、モリブデン(Mo)であることを特徴とする請求項8に記載のInP HEMT構造。
【請求項10】
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、白金(Pt)であることを特徴とする請求項8に記載のInP HEMT構造。
【請求項11】
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、約20〜80Å(オングストローム)の範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項9に記載のInP HEMT構造。
【請求項12】
前記金属ゲート構造の前記第1の層は、約20〜80Å(オングストローム)の範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項10に記載のInP HEMT構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−503807(P2009−503807A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508841(P2008−508841)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/007735
【国際公開番号】WO2007/078301
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(502270453)ノースロップ グラマン コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】