説明

膜厚測定方法

【課題】予めパターンが形成された基板の全面に塗布された塗布膜の膜厚を十分な精度で測定できる膜厚測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ガラス基板等からなる基板1上にブラックマトリクス2とカラーフィルタ(3R、3G、3B)パターンとからなるパターン4と非パターン領域に膜厚測定用パターン5を形成し、処理基板10を作製する。さらに、スリットコート方式等により処理基板10上に塗布膜6を形成し膜厚測定用基板10aを作製し、分光干渉法で膜厚測定用パターン5上の塗布膜6の膜厚測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーフィルタ等のパターンが形成された塗布基板の塗布膜厚を非接触で測定する膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELなどに使用されるカラーフィルタの膜厚は分光透過率に対する影響が大きく、ディスプレイの表示特性に大きく影響する因子であるため、膜厚変動に対する寄与が最も高い塗布工程で、基板内の複数ポイントを膜厚測定して規定値内に入っているかどうかをモニタリングしている。
【0003】
塗布膜の膜厚を測定する際に、従来は塗布膜の一部を刃物で掻き取ってガラス面を出して、触針式段差計にてガラス面と膜面の段差部を測定して膜厚を測定していた。
この場合、破壊計測になるので、測定に使用した塗布基板はロスになる。しかし、最近では測定ロスを出さないために非接触で膜厚を測定できる分光干渉式膜厚測定が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
これは、塗布膜に光を照射し、膜表面からの反射光と膜を通過して膜と基板境界面で反射して戻ってくる光を分光器で捕らえ、前者と後者の光の位相差により生ずる干渉を測定する分光干渉方式はシンプルな測定ヘッド、振動などに対するロバスト性、1.5μm程度の膜厚測定に対して繰り返し精度10nm以下と必要十分な測定精度を持つことなどからこの分野で多用されている。
【0005】
液晶ディスプレイ用のカラーフィルタではブラックマトリクス、Redフィルタ、Greenフィルタ、Blueフィルタ等のカラーフィルタパターンを形成後、最近ではカラーフィルタの表面を平滑化する目的でOC(Over Coat)、カラーフィルタとTFT基板間のギャップを一定に保つためカラーフィルタに突起を設けるPS(Photo Spacer)、液晶分子の向きを変えて視野角を広げるためにカラーフィルタに突起を設けるMVA(Multi domain Vertical Alignment)等を設けている。
【0006】
これらのパターンを形成するには、基板全面に塗膜を形成した後、パターン露光、現像等のフォトリソグラフィ技術を用いるのが一般的である。
すでにカラーフィルタパターンが形成された基板上の塗布膜の膜厚を上記分光干渉方式で測定する場合、カラーフィルタパターンのセルサイズが50μmから200μm程度であるため、カラーフィルタパターン内で測定しようとすると測定スポットサイズも数十μm以下に絞る必要がある。スポットサイズを絞ると焦点深度が浅くなるため、測定前にフォーカシングを実行し、測定スポット位置も正確に位置決めする必要がありコスト、測定時間の増大につながる。
従って、実際のスポット径は数mm程度としてフォーカシング不要で精密位置決め不要なカラーフィルタパターン以外の領域を測定している。塗布膜厚変動を把握するにはこれで十分だからである。
【0007】
ここでOC膜、PS膜やMVA膜の光学定数は消衰係数kがほとんど0で屈折率nが1.54程度とガラス基板に非常に近いため、OC膜、PS膜やMVA膜とガラス基板界面での反射が極わずかで膜表面での反射光との間で生ずる干渉の強度が微弱であるため、分光干渉方式による精度の高い膜厚測定ができないという問題がある。
【特許文献1】特開2003−042722号公報
【特許文献2】特開2005−201634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、予めパターンが形成された基板の全面に塗布された塗布膜の膜厚を十分な精度で測定できる膜厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に於いて上記問題を解決するために、本発明では、パターンが形成された基板上の塗布膜の膜厚を非接触で測定する膜厚測定方法であって、前記パターンが形成された基板の非パターン部に塗布膜と異なる光学定数を有する膜厚測定用パターンを成した後塗布膜を形成し、前記膜厚測定用パターン上の塗布膜を分光干渉法で測定することを特徴とする塗布膜の膜厚測定方法としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、予めパターンが形成された基板の非パターン部に測定したい膜と異なる光学定数を持つ膜厚測定用パターンを設け、膜厚測定用パターン上の塗布膜の膜厚を分光干渉法で測定することで、光学定数が基板と近い値を持つ塗布膜であっても十分な精度で膜厚の測定が可能となる。
また、膜厚測定用パターン上の塗布膜の膜厚を分光干渉法で測定することで、工程数を増やさずに分光干渉法を適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき説明する。
図1(a)は、基板1上にブラックマトリクス2とカラーフィルタ(3R、3G、3B)パターン等からなるパターン4と膜厚測定用パターン5を形成した処理基板10の模式平面図を、図1(b)は、処理基板10をA−A’線で切断した模式構成断面図を、図1(c)は、処理基板10上にOC膜からなる塗布膜6を形成した膜厚測定用基板10aの模式構成断面図をそれぞれ示す。
ここで、OC膜からなる塗布膜6はブラックマトリクス2とカラーフィルタ(3R、3G、3B)パターン形成後、表面の平滑性を上げるために形成されているものである。
【0012】
ここで、パターン4以外の領域Bに形成された塗布膜6の膜厚測定について説明する。図4は、ガラス基板からなる基板1上に形成されたOC膜からなる塗布膜6に光を照射した時の光学反射特性の一例を示す説明図である。
屈折率n1の塗布膜6から屈折率n2の基板1への垂直入射時の膜界面での振幅反射率rと、反射強度Rとは以下のように表せるのでn1とn2の差が小さいと反射はほとんど生じない。
r=(n1−n2)/(n1+n2)、R=r2となる。
ここで、塗布膜6の光学定数はガラス基板の屈折率n=1.52と0.02程度しか違わないため、塗布膜6表面側から光を入射したとき、塗布膜6と基板1界面とでの反射がわずかとなり、塗布膜6表面で反射する光との間で生ずる位相のずれによる干渉がほとんど生じないので、測定誤差が発生する。
【0013】
そこで、図1(a)に示すように、ブラックマトリクス2を形成する時にカラーフィルタ(3R、3G、3B)パターン等からなるパターン4の形成領域外に複数の膜厚測定用パターン5を形成するようにする。
これにより、膜厚測定用基板10aでは、膜厚測定用パターン5上に塗布膜6が形成され
た構成になり、塗布膜6と膜厚測定用パターン5界面で生じる反射により塗布膜6表面での反射光との間で干渉が生じる。
【0014】
図3は、ガラス基板からなる基板1上に形成された塗布膜6と、膜厚測定用パターン5上に形成された塗布膜6とに白色光を垂直入射しその反射強度を近赤外域の分光器で計測し分光反射率を計算した結果である。膜厚測定用パターン5上に形成された塗布膜6では十分な干渉強度が得られている。
【0015】
以下、本発明の膜厚測定方法について具体的に説明する。
図5は本発明の膜厚測定方法で用いた測定装置の構成例を示す。
まず、ガラス基板等からなる基板1上にブラックマトリクス2とカラーフィルタ(3R、3G、3B)パターンとからなるパターン4と非パターン領域に膜厚測定用パターン5を形成し、処理基板10を作製する(図1(a)及び(b)参照)。
ここで、膜厚測定用パターン5は、ブラックマトリクス形成時に同時に非パターン領域に形成される。
膜厚測定用パターン5の位置、個数については塗布膜の塗布方法等によりモニタリングしたいポイントが異なるので塗布方式に合わせて適宜設定される。
また、膜厚測定用パターン5の大きさは測定ステージの移動誤差、膜平坦性を考慮し、膜厚測定スポットサイズより数mm程度大き目に設定すれば良い。
図1(a)の膜厚測定用パターン5の配置例は、塗布膜の塗布方式としてスリットコート方式を用いた場合の一例である。
【0016】
次に、基板中央に膜材料を滴下した後基板を回転させて膜を基板全面に広げるスピンコート方式、スリットダイから膜材料を流しながらこれを走査して塗布するスリットコート方式等により処理基板10上に塗布し、OC膜からなる塗布膜6を形成し、膜厚測定用基板10aを作製する(図1(c)参照)。
ここでは、膜厚測定用パターン5上の塗布膜6としてOC膜の例を示したが、これはあくまでも一例であって、これに限定されるものではない。
【0017】
次に、膜厚測定用基板10aを図5に示す膜厚測定装置の測定ステージ60上に載置し、光学干渉法により膜厚測定用パターン5上の塗布膜6の膜厚測定を行う。
ここで使用した膜厚測定装置は測定ヘッド20と、分光器30と、光源40と、制御ユニット50と、測定ステージ60とで構成されている。
【0018】
測定ヘッド20は、コリメートレンズ21、ショートカットフィルタ22、ミラー23、ハーフミラー24及び集光レンズ25で構成されている。
測定に使用する波長域は可視域でも可能であるが、近赤外域を使用すると可視域では吸収のある着色レジストも近赤外域では吸収がなくなる。その場合、光学定数の屈折率nを実部、消衰係数kを虚部とする複素数として計算すべきところがk=0として扱えるので膜厚計算が単純になる。
【0019】
また、厚膜の測定を行う場合でも近赤外域に優位性があるので光源40は近赤外域の光を効率よく放出する光源、例えばハロゲン電球を使用する。光源の出射効率を更に高めるため、金コーティングリフレクタを使用するのが望ましい。光源40から光ファイバ31aで測定ヘッド20と接続する。光ファイバ31a及び31bは近赤外光を透過するようにGe(ゲルマニウム)ドープしたものなどを使用する。光ファイバ31aの端部より放出される光はコリメートレンズ21により平行光となり、ショートカットフィルタ22を経てミラー23で90度向きを変える。
【0020】
ショートカットフィルタ22は観測波長以下の波長光をカットすることでパターン露光
前のレジストが変化するのを防止すると同時に分光器の高次光が受光素子に入るのを防ぐために用いる。ミラー23で90度向きを変えた光はハーフミラー24で再度90度向きを変えて集光レンズ25にて集光され、膜厚測定用基板10aに入射する。
【0021】
膜厚測定用基板10aの塗布膜6に垂直入射した光は塗布膜6表面での反射成分と膜厚測定用パターン5の界面で反射する成分が合わさって集光レンズ25に戻り、ハーフミラー24及びコリメートレンズ21を経由して光ファイバ31bの端面に入射し分光器30に取り込まれる。
このような光学系を採ることでサイズの大きい分光器と光源を分離して光ファイバ31a及び31bで接続した小型の測定ヘッド20のみをXYに移動させることで駆動系への負荷を軽減しコストも低く高速なヘッド移動を実現している。また、基板1のたわみを考慮して焦点深度が深いように設計することでZ方向の移動を省略している。
【0022】
ここでは、ハーフミラーを用いた光学系の例を示したが出射側と反射側の光ファイバを途中でバンドルしたY分岐ファイバを使用することも可能である。
【0023】
分光器30で得られた波長毎の反射強度データは制御ユニット50内のコンピュータにて計算処理され、塗布膜6の膜厚が表示される。
【0024】
また、膜厚測定ポイントでは図2に示すように塗布膜6と基板1の間に膜厚測定用パターン5の層が入る。塗布膜6表面で反射する光R1、塗布膜6を透過して膜厚測定用パターン5との界面で反射して戻ってくる光R2、塗布膜6と膜厚測定用パターン5とを透過して基板1との界面で反射して戻ってくる光R3のそれぞれに位相差が生じることで干渉が発生する。なお、界面で反射して戻る光は上層との界面で再度一部が反射することを繰り返すので多重反射を考慮した計算処理が行われる。
膜厚測定用パターン5にブラックマトリクスを使用した場合、吸収が大きいのでR3はゼロとして扱うことが可能で、計算が単純化され、塗布膜6と膜厚測定用パターン5の屈折率差も十分あるので干渉が観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、膜厚測定用パターンが形成された処理基板の一例を示す模式平面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した処理基板の模式構成断面図である。(c)は、本発明の膜厚測定法に用いる膜厚測定用基板の一例を示す模式構成断面図である。
【図2】基板1、膜厚測定用パターン5及び塗布膜6に光を照射した時の光学反射特性の一例を示す説明図である。
【図3】基板1上に形成された塗布膜6と、膜厚測定用パターン5上に形成された塗布膜6とに白色光を垂直入射したときの反射強度を示す説明図である。
【図4】基板1及び塗布膜6に光を照射した時の光学反射特性の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の膜厚測定法に用いた光学膜厚測定装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1……基板
2……ブラックマトリクス
3R、3G、3B……カラーフィルタパターン
4……パターン
5……膜厚測定用パターン
6……塗布膜
10……処理基板
10a……膜厚測定用基板
20……測定ヘッド
21……コリメートレンズ
22……ショートカットフィルタ
23……ミラー
24……ハーフミラー
25……集光レンズ
30……分光器
31……光ファイバ
40……光源
50……制御ユニット
60……ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された基板上に塗布された塗布膜の膜厚を非接触で測定する膜厚測定方法であって、前記パターンが形成された基板の非パターン部に塗布膜と異なる光学定数を有する膜厚測定用パターンを予め形成した後塗布膜を形成し、前記膜厚測定用パターン上の塗布膜を分光干渉法で測定することを特徴とする塗布膜の膜厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−133626(P2009−133626A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257031(P2006−257031)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】