説明

自動安定化ヒータ制御発振トランジスタ

【課題】発振トランジスタの発振周波数安定化装置を提供する。
【解決手段】 発振トランジスタ(22)を含む周波数安定化発振装置(120)である。加熱素子が発振トランジスタ(22)の近傍に設けられている。温度センサ(30)が発振トランジスタ(22)の近傍に設けられている。温度制御装置(105)が発振トランジスタ(22)の温度に依存した可変信号を供給し、この可変信号が加熱素子の動作を制御する。この加熱素子は、1以上の抵抗性パッチ(R1−R7)からなるか、又は十分な加熱をなすようにバイアスされた1以上の加熱トランジスタからなる。発振装置は、IC技術又はMMIC技術によって形成され、また、シリコン基板又はGaAs基板が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振トランジスタの周波数安定装置に関し、特に、発振トランジスタの近傍に配設されたローカル温度センサによって一体的に搭載されたヒータ素子を制御して発振トランジスタの温度を制御して、発振トランジスタの周波数特性を調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路は、一般に、個別部品(ディスクリート)回路、集積回路(IC)、あるいはミノリシックマイクロウェーブ集積回路(MMIC)に分類される。IC技術は単一のドーピングされた結晶からなるチップを含んでいる。シリコンは、高周波IC回路に良く用いられ、時には、より高い周波数のマイクロ波周波数の回路にも用いられる。ガリウムヒ素基板は、マイクロウェーブ周波数に対してはより適しており、MMICを製造するためにはしばしば用いられる。
【0003】
MMIC技術における(他のIC技術も同様)最近の技術進歩は良く知られており、通信や航空電子工学のような種々の分野に応用されている。MMIC及びIC技術における基本的部品の1つが発振トランジスタであり、DC入力をAC出力に変換するようにバイアスされたトランジスタ素子として定義され得、特に、周波数発生回路に特に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、この発振トランジスタの問題点は、素子の局所的(local)温度変化が生成される信号の周波数を変化させることである。もし、所望の周波数が維持されるべきであるならば、発振周波数の温度を狭い温度範囲に維持するのが通常である。温度変化は、電子回路それ自身においては生ずる熱や飛行機の高度変化によって生ずるような周囲温度の変化によって生ずるような周囲温度の変化によって生ずる。発振トランジスタの温度を一定に維持して正確な周波数安定化をなす技術は、多くのIC及びMMIC回路において望まれる技術である。なお、発振トランジスタの温度を維持することは、本発明の多くの実施例において好ましいとされるが、全ての場合にこれが必要とされる訳ではない。
【0005】
発振トランジスタの温度変化を補償するいくつかの技術が知られている。いくつかの技術においては、発振トランジスタの動作温度が低出力周波数となるように変化せしめられる。発振トランジスタへの入力を変化させて温度変化を補償することも出来る。発振トランジスタの出力を調整する技術は、ほぼ実時間で作動する複雑なフィードバックシステムを必要とする。
【0006】
ある従来技術の発振トランジスタは、トランジスタに加熱素子を所定の狭い動作温度範囲を設定する。しかし乍ら、これらの発振トランジスタは温度センサを含まず、あるいは加熱素子が分散して設けられているのではない。
【0007】
加熱制御発振FETが、1992年7月2日に公告された日本国特許04−185106(フミアキ)に開示されている。この日本国特許においては、加熱素子が発振トランジスタにちりばめられている訳ではない。もし、この日本国特許の発振FETが十分な電力を生ずるようになされた場合、発振トランジスタの部分は極めて大きくなってしまう。発振FETが大きくなった場合、発振FETを均等に加熱することが困難となり、FETの動作の信頼性が低下する。例え、発振トランジスタと同じチップ上に加熱素子が搭載されていても、発振FETのサイズが大きいと、発振FETの温度を望み通りに制御することは出来ないであろう。従って、従来のヒータ付発振トランジスタは、所望の温度範囲への維持を十分になすことが出来ない。また、比較的大なる発振トランジスタの温度を正確に検知することも困難である。従って、かかる回路の信頼性及び予測性はサイズの増大と共に低下する。更に、チップ上の部品への配線(バス)の存在故に発振トランジスタの近傍に加熱素子を配置することは容易ではない。
【0008】
上記したことからも明らかなように、発振トランジスタの局所的温度を高信頼度にて維持する装置が望まれ、これが実現すれば従来技術に対する大きな改善となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発振トランジスタを含む周波数安定化発振装置を提供する。1つの加熱素子が発振トランジスタに設けられている温度センサが発振トランジスタの温度を検知することが出来る。温度制御装置が、発振トランジスタの局所的温度に依存した可変信号を加熱素子に供給する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示での異なった実施例間において、同一の参照符号は同一の機能を成す要素に適用される。本明細書で使用される温度、電流及び電圧等へのいくつかの参照は、実例を詳しく説明するのに意図されており、本範囲に限られたものではない。本開示において、チップ(chip)内の周囲の温度条件はそのチップが通常に動作し、全ての通常の電流がチップに供給される時の平均温度として定義される。その通常の動作温度は加熱素子のどれかによって供給される熱を含めたものではない。
【0011】
図1は、複数の周波数安定化MMIC発振トランジスタ22、複数の加熱素子R1〜R7、及び温度センサ30を有する本発明による電気回路20(周波数安定化発振装置の1部分)の1実施例を示している。好ましい実施例において、温度センサ30は、可変電圧を制御回路105に供給する単一のダイオードから形成される。その温度センサによって供給される電圧は、温度センサの温度に基づいて変化し、近接して設置されたMMIC発振トランジスタ22の温度に大きく依存する。熱センサに適したいくつかのタイプが、本発明の範囲内にある。ヒータ端子部分96と供給電源98もまた図1の実施例に含まれる。制御回路105は、以下に説明するように、加熱素子R1〜R7に供給される電流、または電圧を制御する。
【0012】
本開示において、参照符号22は単一または複数のMMIC発振トランジスタの両方を参照している。たとえ、本発明の開示における多くの素子がMMIC装置として説明され、示されていても、これは実際の説明をするのに意図されており、本範囲に限られたものではない。そのことは、ICがMMICの代わりに使用できることをが考えられる。しかしながら、シリコンICやガリウム・ヒ素のMMICの熱特性が異なるため、その設計者は、適切なほぼ最適な回路を設計する場合において、装置の熱特性を考慮に入れなければならない。
【0013】
図1に示されたような各MMIC発振トランジスタ22は、ソース42、ドレイン44、及びゲート46を有する。MMIC発振トランジスタ22は、FET(電界効果型トランジスタ)として示されているが、替わりに、BJT(バイポーラ接合型トランジスタ)、または、他の適した型のトランジスタであってもよい。しかしながら、本開示の目的のために、FETという用語は、トランジスタの異なった部分を参照するときに使用される。MMIC発振トランジスタ22は、適当にバイアスされた従来のトランジスタである。発振の周波数と振幅はMMIC発振トランジスタ22の温度に依存して変化する。
【0014】
本開示において、"マニホールド(manifold)"という用語は、トランジスタの参照符号を付けられた素子に接続される電気バス(electrical bus)として定義される。例えば、"マニホールド"はゲートへ供給される電気的接続のことである。各MMIC発振トランジスタ22のゲート部46に接続されたゲートマニホールド50がある。各MMIC発振トランジスタ22のドレイン部44に接続されたドレインマニホールド52がある。また、各MMIC発振トランジスタ22のソース部42に接続されたソースマニホールド54がある。ドレインコンタクト70はドレインマニホールド52との接触をなし、ゲートコンタクト72はゲートマニホールド50とのコンタクトをなし、また、前記ソースマニホールド54とのコンタクトをなすソースコンタクト56がある。他の装置は、ドレインコンタクト70、ゲートコンタクト72及びソースコンタクト56と接触している。
【0015】
好ましくは、図1の実施例の抵抗性パッチ(resistive patch)R1〜R7の形態をとる少なくとも1の加熱素子が、各発振トランジスタ22の近傍に置かれる。抵抗性パッチR1〜R7は、好ましくは隣接したMMIC発振トランジスタ22対の間に配置される。各抵抗性パッチR1〜R7は、発振トランジスタ22に関連した全ての部分に、十分な熱エネルギーを供給できるような大きさにされ、発振トランジスタの予測最低温度から安定発振に必要な所望の動作温度へと発振トランジスタの温度を上昇させる。抵抗性パッチは、18GHzまででの周波数応答特性を与えるために比較的小さな(長さが100ミクロン以上にならない)大きさにされる。電気回路20は、通常、大きさと構成が異なって(各電気回路20の周波数安定化MMIC発振トランジスタ22の数と大きさが異なって)いるので、各抵抗性パッチR1〜R7の大きさは、各回路のために好ましくは経験的に決定される。抵抗性パッチは、適当な抵抗材料から形成され、好ましくはフォトリソグラフィの工程によって与えられる。ニッケルクロムは、抵抗性パッチを特に効果的に製造できることが解った。
【0016】
更に、抵抗性パッチは準方向バイアスダイオードで形成されてもよい。抵抗性パッチR1〜R7に供給される電流の制御をなすために、供給電源98からヒータ端子96及び抵抗器マニホールド100へと供給される電流を制御するヒータ制御回路105がある。抵抗器マニホールド100は、各抵抗素子R1〜R7の第1端101に接続される。前記第1端101と隔たった各抵抗素子R1〜R7の第2端102は、電気的に取り付けられる。加熱素子R1〜R7は、必須のMMIC発振トランジスタの加熱セクション120を形成するMMIC発振トランジスタ22の近傍に配置される。
【0017】
ヒータ端子96は、抵抗素子R1〜R7のそれぞれに供給できる電流または電圧のための接触をなす。制御回路105からの電圧は、ヒータ端子96へ供給される。制御回路105は、温度センサ30(単一のダイオードとして形成されてもよく、もっと複雑な構成が供給されてもよい)から入力信号を受け取る。MMIC発振トランジスタ22の温度の高信頼度の検知のために、MMIC発振トランジスタの近傍に温度センサ30を位置することが望まれる。制御回路105の動作は、一般に電子制御の技術においてよく知られている。制御回路105の構成要素の大きさ決めは、回路のある要素(例えば、抵抗性パッチの大きさ)の関数であり、ここではこれ以上説明しない。
【0018】
ヒータ端子96及びヒータマニホールド100は、抵抗性パッチR1〜R7以外のチップ上に配置された熱生成及びエネルギー消費を制限する高導電性材料から形成される。抵抗性パッチR1〜R7の温度(T)は、方程式T=K×(Vh× Ih)+Tsincに従うと、DC動作バイアス電圧Vh及び電流Ihの生成に直接に関係する。ここで、Kはパッチの熱抵抗で、Tsincはチップの裏側の主要なヒートシンクの温度である。
【0019】
電流は全て熱に変換されるものと仮定すると、加熱素子に供給される最大の電力は(−50℃の最小周囲温度を想定し、回路は100℃で維持される)以下の式で表される。すなわち、最大ヒータ電力=(T max−T min)/Kである。ここで、Kは熱定数で、この例においては、50℃/Wであると仮定される。Kは抵抗性パッチの温度(deg/watt)を上昇させるのに必要な電力に関係し、抵抗性パッチで使用される材料の特性(断熱係数)に依存しており、以下の式となる。すなわち、最大ヒータ電力=(100℃−(−50℃))/50℃/W=3.0Wである。
【0020】
抵抗性パッチR1〜R7は、少なくとも電気エネルギーと同量なエネルギーを必要とする最大のヒータ電力となる熱に変換できるような大きさにされなければならない。
【0021】
温度センサ30に組み入れられたダイオードは、チップ温度を発するヒータに影響される。抵抗性パッチ(または加熱装置)によって生成された熱は、その周囲(例えば、発振トランジスタ能動装置)によって吸収され、一定期間後、周囲の温度及び回路の熱特性に依存し、その温度はダイオードの温度を上昇させることになる。そのダイオードは図4に示されたような機能を果たし、制御回路105に供給される電圧に対応する変換を与える。制御回路105に供給された変換された電圧は、ヒータからの調節された熱出力となり、発振トランジスタのための安定した温度を供給する。
【0022】
図1に示されたような抵抗性パッチを使用する本発明の実施例は、比較的高い電力密度を分散させることができるという利点を有している。それ故に、抵抗性パッチは、非常に低い周囲の温度の装置に適している。抵抗性パッチR1〜R7の接続は、加熱素子の有効性の変更を可能としている(抵抗器が直列に接続されるような)。同量の電流ばかりでなく電圧もまた、抵抗器が並列に接続される時以外に、同一出力をなすために必要とされる。抵抗性パッチの大きさは変更され、MMIC発振トランジスタ22が直面しそうな周囲温度に依存したヒータの電力の要求を変化させる。
【0023】
本発明の他の実施例は、図2に図示されている。図2の例に基づく2つの回路の配置は図3及び図7にそれぞれ示されている。図3及び図7の実施例における各MMIC発振トランジスタ22は、図1の例と構造上同一である。図3及び図7の実施例と図1の実施例との主な違いは、図3及び図7の実施例におけるヒータ機能が加熱トランジスタ200によって与えられることである。発振トランジスタ22に類似した加熱トランジスタ200は好ましくはFETがよいが、適したトランジスタのいくつかのタイプであってもよい。
【0024】
図3及び図7において、ソースは加熱トランジスタ200及びMMIC発振トランジスタ22の両方によって割り当てられる。図3の各トランジスタは、ソース対(1つはドレインの上に、もう1つはドレインの下に置かれる)で囲まれたドレインによって形成される。
【0025】
図3及び図7の語句の問題として、加熱トランジスタの部分のみを形成するドレインのいづれかは、"ドレイン H"のラベルを付される。MMIC発振トランジスタ22の部分のみを形成するドレインのいづれかが、"ドレイン O"のラベルを付される。MMIC発振トランジスタ22の部分を形成するソースのいづれかが、"ソース O"のラベルを付される。加熱トランジスタ200のためのソースとして使用されるソースのいづれかが、"ソース H"のラベルを付される。MMIC発振トランジスタ22のためのソースとしても加熱トランジスタ22のためのソースとしても利用されるソースのいづれかが、"ソース H, O"か"ソース O, H"のどちらかのラベルを付され、1番目の文字は図中においてソースの上に位置したドレインで形成されたトランジスタを定義し、2番目の文字はソースの下に位置したドレインで形成されたトランジスタのタイプを定義している。
【0026】
図3及び図7の実施例において、各ソースH、各ソースO、各ソースH, O、そして各ソースO, Hは、発振器及びヒータ源140と電気的な通信をしている。各ソース位置に異なった電圧を与えるいくつかの理由があるならば、全く異なったソース電圧が用いられてもよい。しかしながら、単純に、発振FETと加熱FETの両方のために同じ電圧源を使用することが望まれる。
【0027】
図3及び図7の実施例に含まれる他の電力源は、電圧を各ドレインOに与える発振ドレイン電圧源143を含んでいる。ヒータ電圧源145は、各ドレインHに電圧を与える。発振ゲート146は、発振トランジスタ22の各ゲート144のための電圧を供給する。
【0028】
図3及び図7の各ヒータゲート142は、共にヒータトランジスタ200を形成するソースHとドレインHの両方に囲まれている。同様に、発振器ゲート144は、共にMMIC発振トランジスタ22を形成するソースOとドレインOの両方で囲まれている。
【0029】
図2において、ノードBでの電圧は、図3及び図7の実施例に適用される温度制御部220によって制御される。以下に、図3の10個のダイオードD1〜D10(または図7の9個のダイオードD1〜D9)及び温度制御部220の抵抗器R8の選択及び大きさ決めを説明する。使用されるダイオードの番号は、特別な適用やダイオードの特性に基づく設計的事項である。
【0030】
温度制御部220の周囲の温度がその範囲における最低温度(例えば、−50℃)である時、ノードBでの電圧は、ゼロボルトになり、"通常オン"の加熱トランジスタ200は加熱トランジスタ200のドレインHからソースHへと通過する最大の電流量をもたらして動作される。このことは、加熱トランジスタが供給可能な最大の熱出力を与えることになる。比較すると、加熱部220の周囲の温度はその範囲における最大温度(例えば、100℃)である時、減少モードヒータトランジスタ200は、オフにされる。このことは、どの電流をもドレインHとソースHの間に通過させないようにする。故に、熱は加熱トランジスタ200によって生成されない。
【0031】
図2、3及び7に示された実施例は、1つかそれ以上の加熱トランジスタを利用し、MMICパッケージ内の完全自制ヒータ回路を表している。図1の実施例の抵抗性パッチR1〜R7と同量の熱を生成する加熱トランジスタ200を供給することは困難であるかもしれない。故に、特別な適用は、図1の実施例か図2の実施例かどちらがより適しているかどうかを決定する前に慎重に考慮されなければならない。
【0032】
図3の実施例の温度制御部は、直列に配置され、定電流でバイアスされた準方向バイアスダイオードD1〜D10の複数と、分圧器を共に形成する抵抗器R8からなる。準方向バイアス(V+)ダイオードD1〜D10間の電圧降下は、ダイオードの局所的な温度の関数となる。図4の曲線125a、125b及び125cの組は、図2、3、5及び7に示された準方向バイアスダイオードD1〜D10のいくつかの特有の電流ー電圧ー温度の関係を示している。グラフに続いて、ある温度で、0.1mAの定電流における準方向バイアス電圧(Vf)の値は表1に示されている。
【0033】
【表1】

【0034】
−50℃から100℃までの電圧変化は、この範囲において、表のように0.3ボルトとなり、ほぼ線形な電圧対温度関係を示している。ダイオード回路での電圧降下の総計は、各ダイオード個々における電圧降下の和である。たとえば、ダイオードD1〜D8での電圧降下の総変化は2.4ボルトである。この大きさの電圧降下は、加熱素子を正確に制御するのに十分である。
【0035】
図5で示された温度制御部220は、V+電圧源とV−電圧源に亘って接続された8つのダイオード及び1つの80キロオームの抵抗器を含んでいる。温度制御部220は、−50℃で、示されたような各ノードでの電圧を表している。この回路は、図6で示されたようなノードBで、ほぼ線形な電圧対温度のプロットを生成する。
【0036】
図5の温度制御部220において、ノードBにおける電圧は、加熱トランジスタ200のゲートに供給される。例えば、もし、温度制御部220の周囲の温度が、−50℃であるなら、VB(ノードBにおける電圧)は図6で示すようにゼロになる。このことは、加熱トランジスタ200のゲート142に供給される電圧の増加を引き起こし、それによって電流量を増加させ、加熱トランジスタ200の温度を上昇させる。代わりに、温度制御部30の局所的な周囲の温度が100℃である時、図6においてはV。が−2.4ボルトになることを示している。この電圧が、ゲート142に供給され、ソースとドレイン142の間を流れる電流はほぼゼロに減少せしめられる。MMIC発振トランジスタ加熱セクションの温度は、それゆえに、おおよそ100℃の状態のままとなる。温度制御部220の温度が−50℃と100℃の間にある時、上記の電圧値は、上述したゼロと−2.4ボルトの間に比例して定められる。
【0037】
この方法において、MMIC発振トランジスタヒータセクション120の温度は、安定なMMIC周波数動作に起因する所望のレベルで一定に維持される。温度範囲における最高レベル(100℃)は、回路が動作時に到達するような最高の温度になるように選択される。それは、高温度によって、ヒータが正常動作しなくなるからである。
【0038】
図5の構成に必要とされるダイオードの実際の数を決定するために、以下のような計算結果(特別な用途のために修正されている)が導かれる。
【0039】
すなわち、Nd=ダイオードの数=|Vp−Vmax|/(Vf[cold]−Vf[hot])である。ここで、Vp=ノードB(図5参照)の電圧(高温の場合)=−2.4V、Vmax=ノードB(図5参照)の電圧(低温の場合)=0V、Vf[低温]=低温時のダイオードの準方向電圧=0.8V、Vf[高温]=高温時のダイオードの準方向電圧=0.5V、Nd=|−2.4−0|/(0.8−0.5)=2.4/0.3=8個のダイオード、と仮定している。
【0040】
故に、上記の仮定に基づいて、発振トランジスタの温度を十分に検知できるように、図5においては、少なくとも8個のダイオードD1〜D8が示されているのである。温度特性がどの大きさのダイオードにとっても同じである点において、これらのダイオードの大きさは回路の動作を生じない。しかしながら、ダイオードは、回路で使用されるバイアス電流の量を確実に処理するのに十分大きくなければならない。電流のこの値は、使用されるのに非常に小さなダイオードを許容しているので、かなり小さくすることができる。
【0041】
図5での抵抗器R8の大きさは、直列に接続され、Vf対温度特性が維持されることを保証するダイオードD1〜D8にほぼ一定の電流を供給するのに十分大きくなるように選択される。100μAの定電流が、穏当な値である。電源電圧(V+)は、抵抗器R8に上限を与えている。すなわち、R8=(V+)/Icである。ここで、V+=8V及びIc=100μAを選択すると仮定しており、R8=8/(0.0001)=80キロオームとなる。
【0042】
図3及び図7の分散したヒータトランジスタ200及び発振トランジスタ22の構成は、共通のソースH, OまたはソースO, Hを有する。本開示において、"分散した(interspersed)"という語句は、少なくとも1つの発振トランジスタが抵抗器構成またはトランジスタ構成の2つの加熱素子によって囲まれる構成として定義される。分散した構成は、先行技術におけるものより発振トランジスタのそれぞれに亘って、より均一な温度制御を与える。本発明の加熱素子の構成において、発振トランジスタは図1、3及び7に示されるように加熱素子と互い違いにされるのが好ましい。発振トランジスタ及び加熱トランジスタ200の動作は、図3と図7の実施例の間で一致する。発振FETの間に分散した加熱素子は、先行技術より優れてかなりの改善を示している。なぜなら、発振FETの温度は、先行技術よりもかなり正確に制御されることができるからである。本発明において、加熱素子を有する発振FETの分散化は、各発振FETの大きさを所望の大きさに減少させることを可能とする一方、単一のチップ上の発振FETの合計電力を所望のレベルへと維持する。もし、全体の電力が、単一のチップ上の発振FETの全てから供給されることを必要とするならば、発振FETを数多く、並列に配列され得る。各発振FETの動作温度で正確に所定に維持され得る。発振FETが小さければ小さいほどFETの温度の不均一性は小さくなる。この構成は、所望の電気出力が達成されることによる技術を与える一方、発振FETの温度は、動作特性が予測できるように正確に維持される。
【0043】
温度制御部220は図3と図7の実施例の間で異なっている。図3の実施例において、ダイオードD1〜D10は、加熱トランジスタ200及び発振トランジスタ22の近傍(ではあるが分散していない)に置かれる。図7の実施例において、比較すると、ダイオードD1〜D9は加熱トランジスタ200と発振トランジスタ22の間に分散されている。この図7の実施例は、ダイオードを配置させるためにトランジスタのいくつかの間に供給される空間を必要とする。図3の構成の利点は、トランジスタが高密度でパッキング(packing)していることである。一方、図7の構成の利点は、発振トランジスタの一定の局所的な加熱及び熱検知である。どちらの構成もその特性に依存した特別な適用に適しており、設計的事項である。発振FETを伴う加熱素子を分散させることで得られる他の改善は、加熱素子の電力要求が減少させられ、発振FETの加熱応答時間は減少させられている。
【0044】
加熱FET及び発振FETの大きさは、その技術を利用する設計者及び設計規則に依存してかなり変化させられる。しかしながら、通常の設計において、発振FETのソース及びドレインの最大中央間隔(図1、3及び7に垂直な方向で測定される)は、通常10μmである。
【0045】
たとえ、発振FET及び加熱FETが上記実施例に示されていても、どれかの適したトランジスタまたは装置を、これらの装置のどちらかにおいて、使用することは本発明の範囲以内である。上記したことは、本発明の1実施例を説明している。そのことは、請求の範囲の制限を考慮し、発明の範囲を緩和した本発明の範囲内となっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】加熱パッチ(R1ないしR7)の近傍に配置された周波数安定化発振トランジスタを含む本発明による電子回路の実施例の平面図である。
【図2】本発明のいくつかの実施例に共通な回路の全体図である。
【図3】図2の回路に基づいた本発明による周波数制御発振装置の一実施例を示し、ダイオードD1〜D10及び抵抗R8は、温度制御部として働くと共に発振トランジスタの加熱部の近傍に配設されている。
【図4】温度コントローラの単一ダイオードについて、3つの温度をパラメータとした電圧−電流特性を示している。
【図5】図2の温度制御部(220)の全体を示す図である。
【図6】図5の温度制御部におけるノードBの電圧と温度との関係を示すグラフである。
【図7】図2の回路に基づいて本発明による周波数制御発振装置の他の実施例を示し、温度検知に関連したダイオードD1〜D9が加熱発振部に設けられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた周波数安定化装置であって、
ソース電極と別個のドレイン電極とを有し、互いに近接して前記基板上に配設されている発振トランジスタと加熱トランジスタとの対の少なくとも1対と、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、少なくとも1つの前記発振トランジスタの温度を検知して、検知した温度を示す信号を生成する温度検知手段と、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、前記温度検知手段と結合して前記温度検知手段からの前記信号に応答して、少なくとも1つの前記発振トランジスタの局所的温度に応じた可変信号を前記複数の加熱素子の各々に供給する温度制御手段と、
を含み、
前記ソース電極同士が電気的に接続されていて、前記発振トランジスタと前記加熱トランジスタとが交互のパターンで配列されて前記ドレイン電極が1対のソース電極で囲まれていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求の範囲第1項記載の周波数安定化発振装置であって、前記温度検知手段は、分圧器からなることを特徴とする周波数安定化装置。
【請求項3】
請求の範囲第2項記載の周波数安定化発振装置であって、前記分圧器は少なくとも1つのダイオードを含むことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求の範囲第2項記載の周波数安定化発振装置であって、前記分圧器が直列接続された複数のダイオードを含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求の範囲第2項記載の周波数安定化発振装置であって、前記分圧器は抵抗を含むことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求の範囲第1項記載の周波数安定化発振装置であって、MMIC技術を用いていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求の範囲第1項記載の周波数安定化発振装置であって、前記発振トランジスタはIC技術を用いて形成されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求の範囲第1項記載の周波数安定化発振装置であって、前記発振トランジスタはMMIC技術を用いて形成されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求の範囲第1項記載の周波数安定化発振装置であって、前記基板はシリコンからなることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求の範囲第1項記載の周波数安定化発振装置であって、前記基板はガリウムヒ素からなることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求の範囲第1項記載の周波数安定化発振装置であって、少なくとも1つの前記加熱トランジスタは、少なくとも1つの前記発振トランジスタの近傍に形成されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
基板上に設けられた周波数安定化発振装置であって、
ソース電極と別個のドレイン電極とを有し、互いに近接して前記基板上に配設されている発信トランジスタと加熱トランジスタとの対の少なくとも1対と、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、少なくとも1つの前記発振トランジスタの温度を検知して、検知した温度を示す信号を生成することの出来る温度センサと、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、前記温度センサに結合して前記温度センサからの信号に応じて、前記発振トランジスタの局所的温度に依存した可変電流を前記複数の加熱パッチの各々の両端に供給する温度制御手段と、
を含み、
前記ソース電極同士が電気的に接続されていて、前記発振トランジスタと前記加熱トランジスタとが交互のパターンで配列されて前記ドレイン電極が1対のソース電極で囲まれていることを特徴とする装置。
【請求項13】
基板上に形成された周波数安定化発振装置であって、
ソース電極と別個のドレイン電極とを有し、互いに近接して前記基板上に配設されている発振トランジスタと加熱トランジスタとの対の少なくとも1対と、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、少なくとも1つの前記発振トランジスタの温度を検知して、検知した温度を示す信号を生成することの出来る温度センサと、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、前記温度センサに結合して、前記温度センサからの信号によって動作が調整されて、前記発振トランジスタの局所的温度に依存した可変信号を前記複数の加熱トランジスタの各々に供給する温度制御手段と、
を含み、
前記ソース電極同士が電気的に接続されていて、前記発振トランジスタと前記加熱トランジスタとが交互のパターンで配列されて前記ドレイン電極が1対のソース電極で囲まれ、前記加熱トランジスタ及び発振トランジスタは共通の電源の下で動作することを特徴とする装置。
【請求項14】
基板上に形成された周波数安定化発振装置であって、
ソース電極と別個のドレイン電極とを有し、互いに近接して前記基板上に配設されているMMIC発振トランジスタと加熱トランジスタとの対の少なくとも1対と、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、少なくとも1つの前記MMIC発振トランジスタの温度を検知して、検知温度を示す信号を生成する温度センサと、
少なくとも1つの前記発振トランジスタに近接して前記基板上に配設されていて、前記温度センサに結合して前記温度センサからの信号を受けて、少なくとも1つの前記MMIC発振トランジスタの局所的温度に依存した可変信号を複数の加熱素子の各々に供給する温度制御手段と、
を含み、
前記ソース電極同士が電気的に接続されていて、前記発振トランジスタと前記過熱トランジスタとが交互のパターンで配列されて前記ドレイン電極が1対のソース電極で囲まれていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−344983(P2006−344983A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185491(P2006−185491)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【分割の表示】特願平8−521654の分割
【原出願日】平成7年12月6日(1995.12.6)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】