説明

自動焦点調節機構及び光学画像取得装置

【課題】検査対象試料に形成されるパターンの依存性が低減される自動焦点調節機構及びこの自動焦点調節機構を備える光学画像取得装置を提供する。
【解決手段】自動焦点調節機構においては、パターンが形成された検査対象試料10が載置部12に載置され、検査対象試料10のパターン形成面に視野絞り16に形成されたスリット20を通過した観察用光ビームが照射される。反射して生じた反射光ビームが分岐される。分岐された反射光ビームの夫々の光路上には、略菱形状の開口26が形成された焦点調整用開口絞り24A,24Bが配置されている。略菱形状の開口26を通過した夫々の反射光ビームの光量が焦点調整用受光器28A,28Bで検出される。検出された検出光量の差に基づいて載置部12の位置が焦点調節装置36によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点を調節する自動焦点調節機構並びにこの自動焦点調節機構を備え、マスク等の検査対象試料の表面に形成されたパターンの光学画像を取得する光学画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板に回路パターンを転写するリソグラフィ装置及び半導体集積回路のパターンを検査する欠陥検査装置等の光学装置においては、回路パターンサイズと同一或いは回路パターンサイズ以下の高い解像度で光学像が取得されることが必要とされる。このように高い解像度での光学像の取得を実現するためには、半導体基板等の検査対象試料及び対物レンズ間の距離を一定に保ち、検査対象試料上に焦点を合わせる自動焦点調節機構が必須となり、この自動焦点調節機構の高精度化が要請されている。
【0003】
自動焦点調節機構には、種々の方式があり、例えば、特許文献1には、光梃子方式による自動焦点調節機構が開示されている。この方式では、検査対象試料の表面に対して斜め方向から光ビームが照射され、検査対象試料の表面で反射された反射光ビームが受光センサで検出される。受光センサからの検出出力が光軸に沿った検査対象試料の表面位置に依存して変化されることを利用して焦点が調整される。即ち、この検出出力は、検査対象試料の表面位置の変位情報を含み、従って、この検出出力から検査対象試料の表面の高さ位置に相関する焦点誤差信号が導出される。焦点誤差信号は、制御回路にフィードバックされ、検査対象試料が載置される載置部が制御されて撮像位置(所謂フォーカス位置)に高精度で配置される。その結果として、検査対象試料は、主光学系としての撮像光学系に対して常に高精度で焦点が合わされるようにその表面位置を維持させることができる。
【0004】
しかしながら、この方式では、パターンを撮像する為の光源に加えてフォーカス用のレーザビームを発生する光源が必要とされ、光学系が複雑化する問題がある。また、光学系が複雑化するに伴い装置のコストが上昇する問題がある。また、装置の光学系を設計する上で制約が加わる問題がある。コストを抑制するために、パターン撮像用光源よりも長い波長の光源を使用すると、その波長の相違が焦点調整誤差に繋がる虞がある。
【0005】
また、特許文献2には、差動ピンホール方式による自動焦点調節機構、並びに、特許文献3及び特許文献4には、差動スリット方式による自動焦点調節機構が開示されている。これらの方式では、検査対象試料の表面に向けて光ビームが照射され、検査対象試料の表面で反射された反射光ビームがビームスプリッタによって2つの光路に分岐されている。夫々の光路における反射光ビームの光量が検出され、これらの検出光量に基づいて焦点が調整される。
【0006】
特許文献4に開示される焦点を調節する方法では、載置部に載置された検査対象試料の表面に細長い長方形のスリット像が投影され、検査対象試料の表面で反射された反射光ビームが対物レンズ及び再結像光学系により集光される。この反射光ビームは、ビームスプリッタにより第1及び第2の光路に分岐される。第1の光路には、スリット像が結像レンズによって結像される結像面を基準に検査対象試料側(前方側)に焦点調整用開口絞り及び焦点調整用受光器が設置されている。また、第2の光路には、スリット像が結像レンズによって結像される結像面を基準に検査対象試料とは反対側(後方側)に焦点調整用開口絞り及び焦点調整用受光器が設置される。各焦点調整用開口絞りの開口は、適切な幅に設定された細長い長方形状に形成されている。焦点誤差が発生すると、第1及び第2の光路の一方においては、焦点調整用受光器上のスリット像が広がり、第1及び第2の光路の他方においては、焦点調整用受光器上のスリット像が狭まる。その結果、第1及び第2光路に配置された焦点調整用受光器からの出力信号は、一方が増加し、他方が減少される。従って、この焦点調整用受光器で検出される光量が等しくなるように載置部の位置を制御することで、対物レンズを検査対象試料上に焦点合わせすることができる。
【0007】
特許文献4に開示される方式においては、検査対象試料の撮像に使用する光源とは異なる光源を設けることが不要とされる。また、これらの方式では、マスク面にパターンが形成されない、或いは、マスク面に形成されたパターンが比較的粗い場合には、第1及び第2の光路の夫々において、スリット像の光量分布が変化される短手方向の主要部分が焦点調整用開口絞りの開口に含まれるように焦点調整用開口絞りが設置されることで高感度に焦点誤差を検出することができる。
【0008】
しかしながら、この方式においては、検査対象試料(マスク面)上に投影されたスリット像が、検査対象試料上に存在するマスクパターンによって回折作用を受け、焦点調整用開口面における光量分布が乱される虞があり、焦点検出が困難になる問題がある。検査対象試料上に存在するパターンが非常に細かい場合には、パターンによる回折効果が大きくなり、この問題が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−102011号公報
【特許文献2】特開平5−297262号公報
【特許文献3】特開2007−306013号公報
【特許文献4】特開2007−225311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、検査対象試料の表面に形成されたパターンが微細になると、検査対象試料の表面で反射される光ビームが回折される問題がある。この回折を原因として、焦点調整用開口面におけるスリット像の光量分布が変化され、かつ、広がりを有するようになる。特に、焦点調整用開口絞りが長方形状の開口に形成される自動焦点調節機構では、焦点調整用受光器で検出される光量が極端に減少する問題がある。また、焦点調整用開口絞りの開口端部における光量分布が低減されると、正常に焦点誤差を検出することができない問題がある。これらは、検査対象試料の表面に形成されるパターンによる回折作用によって生じる。しかしながら、パターンは、検査対象の試料毎に異なり、回折による光量変化を予め想定することができない問題がある。従って、検査対象試料の表面に形成されるパターンに依存することなく、確実に焦点誤差を検出することができる自動焦点調節機構及びこの自動焦点調節機構を備えた光学画像取得装置の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、検査対象試料の表面に形成されるパターンに依存することなく、確実に焦点調節することができる自動焦点調節機構及びこの自動焦点調節機構を備えた光学画像取得装置を提供することにある。
【0012】
本発明によれば、
パターン形成面を有する検査対象試料を光軸に沿って移動可能に載置保持する載置部と、
前記パターン形成面上の第1の領域に第1の観察用光ビームを照射し、長手方向及び短手方向を有する略矩形状に定められる前記パターン形成面上の第2の領域に第2の観察用光ビームを照射する光源と、
前記第1の領域から反射あるいは透過された第1の反射光ビームを検出して前記パターン形成面を撮像する光学画像取得部と、
前記第2の領域から反射された第2の反射光ビームを第1及び第2の分岐光ビームに分岐し、この第1及び第2の分岐光ビームを夫々第1及び第2光路に導き、前記パターン形成面が前記光学画像取得部の撮像位置に位置されて焦点合わせされた際に、前記第1及び第2の分岐光ビームが第1及び第2の結像面に結像される焦点合わせ光学系と、
前記第1光路において、前記第1の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料の側に離間して配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第1の中心軸及びこの第1の中心軸に直交する第1の直交軸を有する第1の開口を備える第1の開口絞りであって、
前記第1の中心軸に沿って第1の開口長を定め、当該第1の開口長が前記中心軸から前記第1の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第1の開口絞りと、
前記第2光路において、前記第2の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料から離間する方向に配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第2の中心軸及びこの第2の中心軸に直交する第2の直交軸を有する第2の開口を備える第2の開口絞りであって、
前記第2の中心軸に沿って第2の開口長を定め、当該第2の開口長が前記中心軸から前記第2の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第2の開口絞りと、
前記第1及び第2の開口を通過した前記第1及び第2の分岐光ビームを検出して第1及び第2の検出信号を出力する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記載置部の位置を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする光学画像取得装置。
【0013】
また、本発明によれば、
パターン形成面を有する検査対象試料を光軸に沿って移動可能に載置保持する載置部と、
前記検査対象試料に前記パターン形成面と対向する面側から入射され、パターン形成面上の第1の領域を透過する第1の観察用光ビームを照射する第1の光源と、
長手方向及び短手方向を有する略矩形状に定められる前記パターン形成面上の第2の領域に第2の観察用光ビームを照射する第2の光源と、
前記第1の領域を透過した透過光ビームを検出して前記パターン形成面を撮像する光学画像取得部と、
前記第2の領域から反射された反射光ビームを第1及び第2の分岐光ビームに分岐し、この第1及び第2の分岐光ビームを夫々第1及び第2光路に導き、前記パターン形成面が前記光学画像取得部の撮像位置に位置されて焦点合わせされた際に、前記第1及び第2の分岐光ビームが第1及び第2の結像面に結像される焦点合わせ光学系と、
前記第1光路において、前記第1の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料の側に離間して配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第1の中心軸及びこの第1の中心軸に直交する第1の直交軸を有する第1の開口を備える第1の開口絞りであって、
前記第1の中心軸に沿って第1の開口長を定め、当該第1の開口長が前記中心軸から前記第1の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第1の開口絞りと、
前記第2光路において、前記第2の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料から離間する方向に配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第2の中心軸及びこの第2の中心軸に直交する第2の直交軸を有する第2の開口を備える第2の開口絞りであって、
前記第2の中心軸に沿って第2の開口長を定め、当該第2の開口長が前記中心軸から前記第2の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第2の開口絞りと、
前記第1及び第2の開口を通過した前記第1及び第2の分岐光ビームを検出して第1及び第2の検出信号を出力する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記載置部の位置を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする光学画像取得装置が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、
パターン形成面を有する検査対象試料を光軸に沿って移動可能に載置保持する載置部と、
長手方向及び短手方向を有する略矩形状に定められる前記パターン形成面上の領域に観察用光ビームを照射する光源と、
前記領域から反射された反射光ビームを第1及び第2の分岐光ビームに分岐し、この第1及び第2の分岐光ビームを夫々第1及び第2光路に導き、焦点合わせされた際に、前記第1及び第2の分岐光ビームが第1及び第2の結像面に結像される焦点合わせ光学系と、
前記第1光路において、前記第1の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料の側に離間して配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第1の中心軸及びこの第1の中心軸に直交する第1の直交軸を有する第1の開口を備える第1の開口絞りであって、
前記第1の中心軸に沿って第1の開口長を定め、当該第1の開口長が前記中心軸から前記第1の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第1の開口絞りと、
前記第2光路において、前記第2の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料から離間する方向に配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第2の中心軸及びこの第2の中心軸に直交する第2の直交軸を有する第2の開口を備える第2の開口絞りであって、
前記第2の中心軸に沿って第2の開口長を定め、当該第2の開口長が前記中心軸から前記第2の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第2の開口絞りと、
前記第1及び第2の開口を通過した前記第1及び第2の分岐光ビームを検出して第1及び第2の検出信号を出力する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記載置部の位置を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする自動焦点調節装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動焦点調節機構においては、検査対象試料の表面に形成されるパターンに依存することなく、安定して焦点誤差が検出され正確に焦点を調節することができる。また、本発明の光学画像取得装置においては、この自動焦点調節機構を利用することによって検査対象試料に焦点を合わせて検査対象試料の光学画像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動焦点調節機構を備えた光学画像取得装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した開口絞りを示す模式図である。
【図3】(a)は、図1に示した焦点調節用開口絞りを示す模式図であり、(b)は、(a)に示した開口における開口関数を示すグラフである。
【図4】(a)は、図1に示した焦点調節用開口絞りが配置される焦点調節用開口面における反射光ビームの光量分布を等高線で示す模式図であり、(b)は、(a)に示した光量分布を示すグラフである。
【図5】図3(a)に示した開口を通過する反射光ビームの光量を示す模式図である。
【図6】近視野領域及び遠視野領域における光ビームの一般的な性質を説明する為の説明図である。
【図7】(a)は、従来技術の焦点調節用開口絞りを示す模式図であり、(b)は、(a)に示した開口を通過する反射光ビームの光量を示す模式図であり、(c)は、(a)に示した開口における開口関数を示すグラフである。
【図8】図7に示した開口を通過する透過光ビームのx軸に平行な直線上における光量分布を示すグラフである。
【図9】図1に示した焦点調整用開口絞りの開口形状における他の例を示す模式図である。
【図10】図1に示した焦点調整用開口絞りの開口形状における他の例を示す模式図である。
【図11】図1に示した焦点調整用開口絞りの開口形状における他の例を示す模式図である。
【図12】図1に示した焦点調整用開口絞りの開口形状における他の例を示す模式図である。
【図13】図1に示した焦点調整用開口絞りの開口形状における他の例を示す模式図である。
【図14】図1に示した焦点調整用開口絞りの開口形状における他の例を示す模式図である。
【図15】(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る自動焦点調整機構の焦点調整用開口絞りを示す模式図であり、(b)は、(a)に示した開口形状の一部を構成する曲線を示すグラフであり、(c)は、(a)に示した開口における開口関数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る自動焦点調節機構を備える光学画像取得装置を説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る自動焦点調節機構を備える光学画像取得装置の概略構成を示している。この光学画像取得装置は、図1に示されるように、検査対象試料10、例えば、マスクが載置部12に載置されている。この検査対象試料10に形成されたパターンは、光学像受光部22によって撮像される。この光学画像取得装置に設けられる自動焦点調節機構は、検査対象試料10の表面に対物レンズ52の焦点を合わし、焦点が合った状態で両者間の距離を一定に保持するように、検査対象試料10が載置された載置部12の光軸上の位置を調節している。自動焦点調節機構では、後に説明されるように、観察用光源14から射出された観察用光ビームが検査対象試料10の表面で反射され、反射された反射光ビームの光量が焦点調整用受光器28A,28Bによって検出される。自動焦点調節機構は、焦点誤差に相当する検出光量の光量差に基づいてフィードバック処理を実施する。即ち、自動焦点調節機構は、載置部12の光軸上位置に応じて変化する検出光量に応じて載置部12の位置を調整し、載置部12を合焦位置に調節している。検査対象試料10が載置される載置部12が合焦位置に自動焦点調節装置によって維持されることから、光学像受光部22で焦点が合った検査対象試料10の表面の光学画像が撮像される。撮像された光学画像データは、パターン検査装置(図示せず)等へ出力され、このパターン検査装置によって検査対象試料の欠陥等が検査される。
【0019】
検査対象試料10には、例えば、微細な回路パターンをウエハ及びガラス等の感光性基板上に焼き付け転写する為のレクチル及びフォトマスク等の原版、並びに、これらの原版上のパターンが転写されたウエハ及びガラス等の基板が挙げられる。本発明の実施の形態の説明では、説明を簡略とする為に、検査対象試料10としてマスクが載置部12に載置される例を説明するが、当然にマスクに限定されるものではなく、他の検査対象試料10にも適用することができることは明らかである。また、パターンが形成されたマスクの表面(マスク面)は、単にパターン形成面と称して説明を簡略化していることも注意されたい。
【0020】
図1に示される光学画像取得装置は、載置部12に載置されたマスク10に向けて観察用光ビームを照射する観察用光源14を備え、観察用光源14から発生された観察用光ビームは、観察用開口18及び焦点調節用スリット20が形成された視野絞り16に向けられる。この視野絞り16を通過した観察用光ビームは、投光レンズ50に向けられる。この投光レンズ50を通過した観察用光ビームは、ビームスプリッタ54に向けられ、このビームスプリッタ54で反射されて対物レンズ52に導かれている。対物レンズ52を通過しした観察用光ビームは、集光されて検査対象試料10上のパターン形成面に照射される。この検査対象試料10は、載置部12に載置され、載置部12は、パターン形成面に入射する観察用光ビームの光軸に沿って移動可能に設けられている。焦点調整装置36によって載置部12がこの光軸に沿って変位され、パターン形成面に対物レンズ52が焦点合わせされて焦点が合わされた状態で両者間の距離が一定に維持される。また、載置部12は、光軸に直交する平面上を移動可能に設けられ、微動機構(図示せず)によって載置部12がこの平面内で微動されてパターン形成面上の撮像領域が変更される。観察用光源14と検査対象試料10との間の光学系において、視野絞り16は、載置部12に載置されたマスク10のパターン形成面に共役な面に配置されている。
【0021】
図2は、視野絞り16の形状の一例を示している。この視野絞り16には、図2に示されるように、検査対象試料10上の観察領域を定める矩形状の観察用開口18及び検査対象試料10上に焦点調整用の投影パターンを形成する細長い矩形状の焦点調節用スリット20が形成されている。観察用開口18は、観察用光ビームがパターン形成面上に照射されて撮像領域を形成するように観察用光ビームの照射範囲を制限し、焦点調整用スリット20は、観察用光ビームがパターン形成面上の焦点調節用領域に照射されるように観察用光ビームの照射範囲を制限する。従って、焦点調整領域には、細長い矩形状のスリット像が焦点調整用スリット20を通過した観察用光ビームによって投影される。
【0022】
図1に示される光学画像取得装置においては、マスク面に形成されたパターンが次のように撮像される。観察用開口18を通過した観察用光ビームは、投光レンズ50を通過し、ビームスプリッタ54で反射される。ビームスプリッタ54で反射された照射観察用ビームは、対物レンズ52によってマスク10のパターン形成面上の撮像領域に導かれる。パターン形成面で反射された反射光ビームは、結像光学系により光学像受光部22へ導かれる。結像光学系は、例えば、対物レンズ52、チューブレンズ56、視野分離ミラー58、コリメータレンズ60及び結像レンズ62を備え、パターン形成面上のパターンのパターン像が光学像受光部22に結像される。パターン形成面で反射された反射光ビームは、対物レンズ52、ビームスプリッタ54及びチューブレンズ56を介してパターン像の結像面に到達する。反射光ビームは、この結像面に配置された視野分離ミラー58によってその光路が変更され、コリメータレンズ60及び結像レンズ62を介して光学像受光部22に入射され、反射光ビームのパターン像が光学像受光部22で撮像される。光学像受光部22は、例えば、受光画素が2次元配列されているCCDイメージセンサ等のエリアセンサから構成される。
【0023】
視野分離ミラー58は、パターン形成面に定められる視野領域内の特定領域(撮像領域)で反射された反射光ビームを選択的に反射させるように配置される。即ち、視野分離ミラー58は、観察用開口18を通過してパターン形成面で反射された反射光ビームを反射し、反射観察用スリット20を通過してパターン形成面で反射された反射光ビームを透過させる。この視野分離ミラー58は、例えば、反射光ビームの光軸に対して反射光ビームの光路を90°変更している。
【0024】
尚、図1に示される光学画像取得装置は、マスク10のパターン形成面に対向して透過観察用光源32が配置され、マスク10のパターン形成面に透過観察用光ビームを照射しても良い。この透過観察用光源32からの、透過観察用ビームは、マスク10を透過し、マスク10パターン形成面上の撮像領域から対物レンズ52に向けて射出され、光学結像系を介して光学像受光部22に導かれ、パターン形成面に形成されたパターンが撮像されても良い。
【0025】
次に、上述した光学画像取得装置における対物レンズ52の焦点をマスク10のパターン形成面に合わせる自動焦点調節機構について説明する。自動焦点調節機構では、図1に示されるように、視野絞り16に形成された焦点調節用スリット20を通過した観察用光ビームは、投光レンズ50を通過し、ビームスプリッタ54で反射される。ビームスプリッタ54で反射された観察用光ビームは、対物レンズ52によってパターン形成面上に焦点調整用の投影パターンを形成する。焦点調整用の投影パターンは、焦点調節用スリット20の形状に対応して細長い矩形状のスリット像として形成される。これらの観察用光源14、視野絞り16、ビームスプリッタ54及び対物レンズ52は、パターン形成面上にスリット像を形成するスリット像形成装置を構成している。
【0026】
スリット20を通過した観察用光ビームは、パターン形成面で反射される。パターン形成面のスリット像が投影された領域、即ち、焦点調節用領域から反射された反射光ビームは、視野分離ミラー58を透過し、再結像光学系64へ導かれる。再結像光学系64に到達した反射光ビームは、再結像光学系64によって再結像面に再結像される。再結像光学系64及び再結像面間であって、再結像面に比較的近い空間には、入射する反射光ビームを略等分に分離するハーフミラー66が配置されている。再結像光学系64から入射される反射光ビームは、ハーフミラー66によって第1及び第2の分岐光ビームに分岐され、第1及び第2の分岐光ビームは、夫々第1及び第2光路に進行される。第1光路には、再結像光学系64で定められる再結像面を基準に前方(ハーフミラー66の側)に焦点調整用開口絞り24Aが配置され、この絞り24Aを通過した第1の反射光ビームを検出する焦点調整用受光器28Aが設けられている。即ち、第1光路においては、再結像光学系64で定められる再結像面と焦点調整用受光器28Aとの間に焦点調整用開口絞り24Aが配置される。また、第2光路には、再結像光学系64で定められる再結像面68を基準に後方(ハーフミラー66とは反対の側)に焦点調整用開口絞り24Bが配置され、この絞り24Aを通過した第2の反射光ビームを検出する焦点調整用受光器28Bが設けられている。即ち、第2光路においては、再結像光学系64で定められる再結像面68と焦点調整用受光器28Bとの間に焦点調整用開口絞り24Bが配置される。ここで、再結像光学系64で定められる再結像面とは、パターン形成面の位置が撮像光学系の撮像位置に調整されている場合においてパターン形成面上に投影されたスリット像が再結像光学系64によって結像される像面に相当している。
【0027】
再結像光学系64は、入射される反射光ビームを結像できればどのように構成されても良い。自動焦点調節機構における結像光学系は、図1に示される光学系おいて、対物レンズ52、チューブレンズ56、再結像光学系64及びハーフミラー66から構成される。焦点調整用受光器28A,28Bは、例えば、受光画素を2次元配列したCCDイメージセンサ等のエリアセンサから構成される。
【0028】
焦点調整用開口絞り24Aは、第1光路における再結像面を基準に前方に距離dだけ離間して配置されている。即ち、距離dは、ハーフミラー66から再結像面までの距離から、ハーフミラー66から焦点調整用開口絞り24Aまでの距離を引いた値に等しい。第1光路に導かれた反射光ビームは、焦点調整用開口絞り24Aに向けられ、焦点調整用開口絞り24Aに形成された開口26を通過した反射光ビームの光量分布が焦点調整用受光器28Aによって検出される。また、焦点調整用開口絞り24Bは、第2光路における再結像面68の後方に距離dだけ離間して配置されている。即ち、距離dは、再結像面68から焦点調整用開口絞り24Bまでの距離を示している。第2光路に導かれた反射光ビームは、焦点調整用開口絞り24Bに向けられ、焦点調整用開口絞り24Bに形成された開口26を通過した反射光ビームの光量分布が焦点調整用受光器Bによって検出される。
【0029】
図3(a)には、焦点調整用開口絞り24A,24Bに形成される開口26の形状の一例が模式的に示されている。焦点調整用開口絞り24A,24Bの開口26は、図3(a)に示されるように、略菱形状に形成されている。図3(a)において、開口26の中心点が原点に定められ、開口26の長手方向にy軸(光軸に直交する中心軸)及び開口26の短手方向にx軸(光軸及び中心軸に直交する直交軸)を定める。位置xにおいてy軸と平行な直線が開口26内側に含まれる線分の長さを断面長の総和(または開口関数)と称し、関数g(x)と表わす。ここで、開口26の短手方向の対角線は、長さsを有する。この関数g(x)は、図3(b)に示されるように、x=0において最大値をとり、−s/2≦x<0において単調増加し、0<x≦s/2において単調減少する。
【0030】
このxy座標系は、焦点調整用開口絞り24A,24Bが配置される焦点調整用開口面上に定められる座標系であって、他の図においても同様に定められる。
【0031】
焦点調整用開口絞り24A及び焦点調整用開口絞り24Bに形成される開口26の形状は、互いに同一形状に形成される場合に限らず、後に説明されるような形状に形成されれば、互いに異なる形状であってもよい。この開口26の形状が異なる形状に定められる場合には、開口26の形状に応じて信号が処理されるように信号処理部34の設定が変更されればよい。
【0032】
図4(a)は、焦点調整用開口絞り24A,24Bが配置される焦点調整用開口面におけるスリット像の光量分布の典型的な例を等高線表示で示している。図4(a)において、図3(a)に示した焦点調整用開口絞り24A,24Bと同様に、x軸及びy軸が定められる。図4(b)は、図4(a)に示されるx軸上におけるスリット像の光量分布を示している。焦点調整用開口面と再結像面との距離dが後述するある一定範囲の距離にあるときには、このx軸上における光量分布は、開口26の形状等に応じて定まる関数f(x)及び焦点調整用開口面と再結像面との距離dを使用してf(x/d)/dと表わされる。スリット像は、再結像面において鮮明に形成される。即ち、再結像面では、図2に示したスリット20と同様な略矩形状のスリット像が形成される。しかしながら、焦点調整用開口面では、スリット像は、図4(a)及び図4(b)に示されるように、ボケて、スリット像の光量分布は、広がりを有する。
【0033】
図5は、図4(a)に示したスリット像の光量分布に図3(a)に示した焦点調整用開口絞り24A,24Bの開口26を重ね合わせて示している。焦点調節用開口絞りにスリットを通過する反射光ビームの光量、即ち、図5に示されるように、開口26の内側に分布している全光量が焦点調整用受光器28A,28Bによって検出される。
【0034】
焦点調節用開口絞り24A,24Bを通過した反射光ビームの夫々の光量は、焦点調整用受光器28A,28Bによって検出される。焦点調整用受光器28A,28Bは、検出光量に応じた光量検出信号を出力し、この光量検出信号は、信号処理部34へ伝達される。信号処理部34において、2つの光量検出信号は、差動増幅回路を通過し、適切な周波数応答を有する増幅回路を経て、光量差信号が算出される。この光量差信号に応じたフィードバック量を有するフィードバック信号が焦点誤差信号として焦点調節装置36へ伝達される。焦点調節装置36は、伝達されたフィードバック信号(焦点誤差信号)に応じて照射光ビームの光軸に沿った方向に載置部12の位置を調整変更する。
【0035】
パターン形成面の位置が所望の位置に調節されていない場合、即ち、パターン形成面及び対物レンズ52間の距離が所定の距離(撮像距離)に保持されていない場合には、パターン形成面の位置に応じた焦点誤差が発生する。この場合、再結像光学系64によって再結像されるスリット像は、スリット像が再結像されるべき再結像面から反射光ビームの光路上における前方または後方に形成される。スリット像の再結像面が所望の再結像面からずれた位置に形成されると、焦点調整用受光器28A及び焦点調整用受光器28Bで検出される光量は、一方では増加し、他方では減少される。
【0036】
例えば、反射光ビームの光路上においてスリット像の再結像面が所望の再結像面の前方に形成される場合、第1光路では、再結像面及び焦点調整用開口絞り24A間の距離が小さくなる。この場合、焦点調整用開口面における光量分布の広がりが小さくなることから、焦点調整開口絞り24Aに形成される開口26を通過する透過光ビームの光量は、増加する。また、第2光路では、再結像面68及び焦点調整用開口絞り24B間の距離が大きくなり、焦点調整用開口面における光量分布の広がりが大きくなる。このため、焦点調整開口絞り24Bに形成される開口26を通過する透過光ビームの光量は、減少する。従って、焦点調整用受光部28A,28Bの夫々によって検出される光量が一致するように(焦点誤差信号が零となるように)フィードバック制御されてパターン形成面の位置が所望の位置に調節される。従って、このように載置部12が制御されることによって常に焦点調節された状態でマスク面の画像を撮像することができる。
【0037】
なお、信号処理部34及び焦点調節装置36は、次のように光量検出信号を処理して載置部12の位置を制御してもよい。即ち、信号処理部34は、焦点調整用受光器28A,28Bの夫々で検出された光量に応じた光量検出信号IA,IBに対して、信号ノイズを除去し、加算回路、減算回路及び除算回路により、(IA−IB)/(IA+IB)を演算する。ここで、差(IA−IB)は、焦点調整用開口絞り28A,28Bで検出される反射光ビームの光量の差に応じた値を表わす。この演算結果は、和(IA+IB)で除算することで規格化されている。信号処理部34は、光量差信号と予め設定されるフィードバック目標値との差を監視する。その差がパターン形成面を想定した所定の閾値を超えた場合、信号処理部34は、その値に応じて載置部の位置を調整するよう焦点調節装置36に指令をする。
【0038】
次に、焦点調整用開口絞り24A,24Bが配置される領域について説明する。
【0039】
パターン形成面に投影されるスリット像と共役な再結像面には、幅a及び高さbを有するスリット像が再結像される。ここで、幅a及び高さbは、a<bを満たす。第1光路において、所望の再結像面から第1光路上に沿って距離d離間した前方に焦点調整用開口絞り24Aが配置されている。また、第2光路において、所望の再結像面68から第2光路上に沿って距離d離間した後方に焦点調整用開口絞り24Bが配置されている。この距離dは、反射観察用光源14が射出する光ビームの波長λに対して、a/2λ<d<b/2λを満たすように定められる。再結像光学系64によって結像されるスリット像は、再結像面から離れるに従ってボケ(焦点誤差が生じ)、その光量分布も変形する。
【0040】
図6を参照して、近視野領域及び遠視野領域におけるコヒーレントな光ビームのビーム径及び光量分布を一般的に説明し、スリット像の再結像面と焦点調整用開口絞り24A,24Bとの距離dを設定する方法を説明する。図6は、レンズ(図示せず)によって収束された光ビームがスリット80を通過する様子を模式的に示している。波長λを有するコヒーレントな光ビームは、図6に示されるように、矢印方向へ進行している。光ビームのビームウエスト(ビームが一番細くなる位置)には、幅cのスリット80が配置されている。結像面から距離d1離間し、結像面に平行な平面Aは、d1<c/2λを満たす領域に定められている。d1<c/2λを満たす領域は、スリットの幅方向に関して回折理論における近視野領域(フレネル回折領域)にあたる。また、結像面から距離d2離間し、結像面に平行な平面Bは、d2>c/2λを満たす領域に定められる。d2>c/2λを満たす領域は、スリットの幅方向に関して遠視野領域(フラウンホーファ回折領域)にあたる。
【0041】
近視野領域では、平面Aが光ビームの進行方向に変位してもビーム径は、略cに保持される。平面Aにおける光ビームの断面形状は、平面Aが光ビームの進行方向への微小な変位に対して、干渉効果によって大きく変形し、或いは、波打つ。このような近視野領域に対して、遠視野領域では、光ビームは、ある1点を中心に略円錐形状に広がって進行する。即ち、ビームウエストからの距離d2に比例してビーム径が増大する。また、平面Bにおける光ビームの略断面形状は、距離d2に応じて拡大された相似形状となる。
【0042】
また、インコヒーレントな光ビームの場合には、瞳面上の各点毎に上述の分布形状が重ね合わされた状況となる。そのため、コヒーレントな光ビームの場合と同様に、遠視野領域においては、光ビームのビーム径は、ビームウエストからの距離に比例して増大し、光ビームの断面形状は、ビームウエストからの距離に比例して拡大された略相似形状となる。近視野領域においては、ビーム径は、略cに保持され、断面形状は、光ビームの進行方向への微小な変位に対して、干渉効果によって大きく変形する。
【0043】
本実施の形態では、図6に示したスリット80(ビームウエスト)の位置は、スリットの再結像面に対応する。焦点調整用開口24A,24Bが再結像面に比較的近接した領域(d<a/2λ)に配置されるとすると、この領域は、スリット像の幅方向に関して回折理論における近視野領域(フレネル回折領域)にあたる。反射観察用光源にコヒーレント光源が採用される場合、再結像面からの距離が離れるに従って光量分布は、干渉効果によって複雑に変形する一方、光量分布全体としての分布の広がり幅は、ほとんど変化しない。即ち、この領域(d<a/2λ)では、スリット像の光量分布における幅方向の広がりは、再結像面からの距離の依存性が小さい。従って、この領域に焦点調整用開口絞り24A,24Bを配置すると、焦点調整用受光部28A,28Bによって検出される光量は、焦点位置のずれに対する依存性が小さくなる。即ち、光量分布の広がり幅が再結像面と焦点調整用開口との距離dに応じて変化しないことから、焦点誤差検出におけるSN比が向上しない。このことは、程度の差は、生じるものの、反射観察用光源14にインコヒーレント光源が採用される場合にも、同様である。
【0044】
また、焦点調整用開口24A,24Bが再結像面からの距離dがa/2λ<d<b/2λを満たす領域に配置されるとすると、この領域は、スリット像の光量分布の幅方向に関して遠視野領域(フラウンホーファ回折領域)となる。この領域では、再結像面に平行なある平面における反射光ビームの光量分布は、図4(b)に示されるように、幅方向の広がりを有する。この光量分布は、前述したように、f(x/d)/dで表わされ、再結像面からの距離dに依存する。即ち、光量分布の形状は、再結像面からの距離dに比例して幅方向に単純な相似拡大となる。光量分布は、距離dが大きくなるに従って幅方向に拡大し、光量分布の強度値は、少される。
【0045】
また、この領域(a/2λ<d<b/2λ)は、長さ方向に関して近視野領域にあたる。即ち、再結像面からの距離dがd<b/2λを満たす領域において、スリット像の長手方向の光量分布は、両端部付近を除き略一様な分布を有する。従って、焦点調整用開口位置における幅方向に沿った光量分布は、焦点調整用開口位置のどの幅方向に対しても同様な分布を有する。この領域におけるスリット像の光量分布に関しては、反射観察用光源14にコヒーレント光源が採用される場合に限らず、インコヒーレント光源であっても同様な光量分布となる。従って、再結像面からの距離dがa/2λ<d<b/2λを満たす領域に焦点調整用開口24A,24Bが配置されることで、焦点誤差を安定して検出できる。
【0046】
次に、図7(a)から図8を参照して、焦点調整用開口絞りの開口が単純な矩形形状に形成されている例を比較例として説明する。
【0047】
図7(a)は、開口96が単純な矩形に形成されている焦点調整用開口絞り94を模式的に示している。焦点調整用開口絞り94の開口96は、図7(a)に示されるように、幅aを有して略長方形状(矩形形状)に形成されている。この焦点調整用開口絞り94を利用した自動焦点調節装置では、焦点調整用開口絞り94に形成される略長方形状の開口96を通過する光量が検出される。この光量は、焦点誤差によってスリット像の再結像面が所望の再結像面からずれた位置に形成され、スリット像の再結像面から焦点調整用開口位置までの距離に依存して変化される。焦点調整用開口絞りが図7(a)に示される矩形状の開口に形成される場合、パターン形成面における回折作用によって焦点誤差を検出するのに充分な光量検出信号が得られない虞がある。パターン形成面に投影されたスリット像は、パターン形成面で反射される際に、マスク面に形成されるパターンによって回折される。このスリット像の回折パターンによっては、焦点調整用開口を通過する光量が低減される。
【0048】
スリット像の再結像面からの距離dがa/2λ<d<b/2λを満たす領域では、幅方向の光量分布は、上述したように、距離dに対してf(x/d)/dのように変化する。図8に示されるように、開口96の両端(x=±a/2)において、分布形状の微分値がゼロ、或いは、開口96の内側から外側に向かって強度が上昇するような分布の場合には、信号処理部34から出力される光量差信号が本来の値と逆符号となることがある。従って、このような場合、正常に焦点位置を調節することができない虞がある。また、光量検出信号が本来の値と逆符号とならないまでも、パターンに依存して光量検出信号が様々に変化すると、フィードバック量(焦点誤差信号値)を適切に設定することが困難になる。
【0049】
これに対して、本実施の形態に係る自動焦点調節機構では、焦点調節用開口絞り24A,24Bの開口26は、図3に示すような略菱形状に形成されている。図3に示される開口26の最大幅は、対物レンズ52の瞳面の両端夫々から再結像面のスリット像の中央に至る光路が焦点調整用開口面と交差する2点間の距離よりも大きく形成される。即ち、開口26の最大幅は、焦点調整用開口面におけるスリット像の短手方向の光量分布の主要部分が含まれるように形成される。このように開口26の最大幅が定められることにより、対物レンズで解像可能な最大限細かなパターンがマスク面上に形成されたとしても、焦点調節用開口絞り24A,24Bによってスリット像を確実に捉えることができる。また、焦点誤差に対する光量検出信号の変化量がパターンにほとんど依存しないように設計することが可能となり、焦点調節装置36へ伝達されるフィードバック信号(焦点誤差信号)のフィードバック量を容易に設定することができるようになる。
【0050】
焦点調整用開口絞り24A,24Bの開口26は、図3に示したように略菱形状に形成される場合に限らず、開口26を略等分するスリット像の長手方向に対応する方向に沿った中心線(y軸)から外側に行くに従って開口26の大きさが徐々小さくなればよい。図9から図14には、焦点調整用開口絞り24A,24Bにおける開口26の形状の変形例が示されている。焦点調整用開口絞り24A,24Bの開口26は、図9に示されるように、複数の正方形が対角線を一致させて(または、複数の菱形にあっても対角線を一致させて)スリット像の長手方向に沿って並列させた形状に形成されてもよい。また、図10に示されるように、複数の三角形(2等辺三角形)がその頂点を開口像の中心軸上に配置されるように長手方向に沿って並列させてもよく、図11に示されるように、複数の三角形及び長方形を組み合わせた形状であってもよい。さらに、図12に示されるように、開口像の中心軸に関して対称に形成されていない形状であってもよい。このように、開口26を複数の小さな正方形または三角形等の形状に形成すると、焦点調整用開口絞りの強度を高めることができ、調整が容易になる等の効果も考えられる。
【0051】
また、焦点調整用開口絞りの開口は、図13に示されるように、略菱形形状に形成され、その菱形の上下の頂点部分が切断されて形成される六角形状に形成されてもよい。マスク面にパターンが形成されていない場合においても、焦点調整用開口面におけるスリット像は、最小限ある程度の広がり幅を有している。開口26をこのような菱形の上下の頂点部分を切断して形成することによってフィードバック量の調整が容易になり、安定性を増すことができる。
【0052】
さらにまた、図14に示されるように、開口26を定める開口26の周囲の境界線(開口26の外形線)は、曲線状に定められてもよい。このように、中心線から外側にいく従って開口26の大きさが非線形関数に従って減少するような形状でもよい。自動焦点調整機構のシステム構成によっては、このように非線形性を加えることによって、最終的に差動増幅回路から出力される信号(焦点誤差信号)の焦点誤差に対するリニアリティを向上することができる。
【0053】
図3(a)及び図9から図14に示される開口26の形状は、中心線から外側に向かって徐々に開口26の大きさが小さくなる条件を満たす。即ち、中央に原点を定め、スリット像の短手方向に対応する方向にx軸を定め、位置xにおける開口26の長手方向の断面長の総和をg(x)とした場合、このg(x)は、xが原点から離れるに従って減少する。この条件を満たす開口26であれば、上述した例に限られず、本発明の範囲に含まれることは、明らかである。
【0054】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る自動焦点調節機構を備える光学画像取得装置は、第1の実施の形態と同様の構成を備えている。第2の実施の形態では、焦点調整用開口絞り24A,24Bの開口26の形状は、図15(a)に示されるように、開口26を定める境界線(開口26の外形線)が直線及び曲線を組み合わせた形状に形成されている。この開口26を定める各曲線は、図15(b)に示されるような対数関数を上下或いは左右方向に圧縮した曲線によって定められる。図15(a)において点線で囲まれた部分に示される開口26を定める境界線は、図15(a)において点線で囲まれた部分に示される曲線の形状に従って定められている。
【0055】
焦点調整用開口面上において、開口26の中心点を原点に定め、開口26の短手方向にx軸及び開口26の長手方向にy軸を定める。位置xにおいてy軸と平行な直線が開口26内側に含まれる線分の長さを断面長の総和(または、開口関数)と称し、関数g(x)と表わす。この開口関数g(x)は、図15(c)に示されるように、xがゼロを基準として増大または減少するに従って減少する。
【0056】
次に、図15(a)に示される開口26の形状を定める方法を説明する。焦点調整用開口面は、所望の再結像面及び焦点調整用開口面間の距離dがa/2λ<d<b/2λを満たす領域に配置されている。x軸上における光量分布は、開口26の形状等に応じた関数f(x)によってf(x/d)/dと表わされる。このとき、焦点調整用開口絞り24A,24Bの開口26を通過する光量I(d)は、下記式となる。
【数1】

【0057】
この数式1において、g(x)は、ある値xmaxに対して|x|>xmaxのときg(x)=0となるような関数であるとする。従って、積分区間を−∞から+∞までとしても−xmaxからxmaxまでとしても同じである。
【0058】
焦点誤差に応じてdが変化すると、光量I(d)の変化量I´(d)は、下記式で表わされる。
【数2】

【0059】
この数式2において、f´及びg´は、夫々f及びgの一階の微分関数を表わす。わずかな焦点誤差によってdがわずかに変化したときに、2つの焦点調整用受光器28A,28Bで検出される光量検出信号の差を演算して得られる光量差信号は、dの変化量にこのI´(d)を掛けたものに比例する。
【0060】
ここで、マスク面に形成されるパターンによって焦点調整用開口面における光量分布が変化されるとする。即ち、パターン面によって関数f(x)の関数形が変化されるとする。光量分布が変化されたとしても、瞳内の全体としての光量、即ち、開口26を通過する反射光ビームの光量は、大きく変化しないことが想定できる。従って、この場合にも、下記式の関係が保たれるとしてよい。
【数3】

【0061】
数式3で表わされる関係が保たれる場合、xg´(x)=constを満たす関数g(x)を定めることで、関数f(x)の関数形が変化しても光量検出値の微分値I´(d)を不変に保つことができる。即ち、xg´(x)=constとなるような関数g(x)を定めると、焦点誤差による光量の検出量の変化量は、パターン面に形成されるパターンに依存しない。このような関数g(x)は、例えば、
g(x)=A−Blog(|x|) 数式4
と定めることができる。従って、図15(a)に示される開口26は、この数式4に従った曲線で形成されればよい。しかしながら、この関数は、x→0でー∞に発散する。図15(b)に示されるように、開口26の上端及び下端が関数f(x/d)/dの変化に対して充分細い幅になるようにg(x)が有限の値を有する範囲を定め、この範囲における曲線に従って開口26の境界線を定める。これにより、実用的な開口26形状を得ることができる。図15(a)に示されるように、開口26は、上端及び下端が直線状に切り取られた形状に形成される。図14(a)に示される破線状の長方形に含まれる開口26の境界線は、図14(b)に示される破線状長方形を上下及び左右に拡大及び縮小して、上辺及び左辺が、夫々x軸及びy軸に接するように対応づけられて定められる。
【0062】
このような開口形状を焦点調整用開口絞り24A,24Bに形成することで、マスク面上にいかなるパターンが形成される場合にも、焦点調整用受光器28A,28Bによって検出される光量検出信号から演算される光量差信号は、焦点誤差に対して一定の出力値を出力することが可能となり、信号処理部34がこの光量差信号に応じて焦点調整装置36にフィードバック信号を返すことでより安定したフィードバック制御が可能となる。
【0063】
以上のように、焦点調整用開口絞り24A,24Bの開口26形状を対数関数に従った曲線によって定めることで光量検出信号のマスク面に形成されるパターン依存性を低減できる。また、対数関数に従った開口26形状としなくても、単に開口26中心に対して凸となるような曲線を組み合わせた開口26形状、例えば、図13に示した開口26形状であっても、同様にパターン依存性を低減できる。
【符号の説明】
【0064】
10…検査対象試料(マスク)、12…載置部、14…反射観察用光源、16…視野絞り、18…観察用開口、20,80…スリット、22…光学画像受光部、24A,24B,94…焦点調整用開口絞り、26,96…開口、28A,28B…焦点調整用受光器、32…透過観察用光源、34…信号処理部、36…焦点調節装置、52…対物レンズ、54…ビームスプリッタ、56…チューブレンズ、58…視野分離ミラー、60…コリメータレンズ、62…結像レンズ、64…再結像光学系、66…ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成面を有する検査対象試料を光軸に沿って移動可能に載置保持する載置部と、
前記パターン形成面上の第1の領域に第1の観察用光ビームを照射し、長手方向及び短手方向を有する略矩形状に定められる前記パターン形成面上の第2の領域に第2の観察用光ビームを照射する光源と、
前記第1の領域から反射あるいは透過された第1の反射光ビームを検出して前記パターン形成面を撮像する光学画像取得部と、
前記第2の領域から反射された第2の反射光ビームを第1及び第2の分岐光ビームに分岐し、この第1及び第2の分岐光ビームを夫々第1及び第2光路に導き、前記パターン形成面が前記光学画像取得部の撮像位置に位置されて焦点合わせされた際に、前記第1及び第2の分岐光ビームが第1及び第2の結像面に結像される焦点合わせ光学系と、
前記第1光路において、前記第1の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料の側に離間して配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第1の中心軸及びこの第1の中心軸に直交する第1の直交軸を有する第1の開口を備える第1の開口絞りであって、
前記第1の中心軸に沿って第1の開口長を定め、当該第1の開口長が前記中心軸から前記第1の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第1の開口絞りと、
前記第2光路において、前記第2の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料から離間する方向に配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第2の中心軸及びこの第2の中心軸に直交する第2の直交軸を有する第2の開口を備える第2の開口絞りであって、
前記第2の中心軸に沿って第2の開口長を定め、当該第2の開口長が前記中心軸から前記第2の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第2の開口絞りと、
前記第1及び第2の開口を通過した前記第1及び第2の分岐光ビームを検出して第1及び第2の検出信号を出力する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記載置部の位置を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする光学画像取得装置。
【請求項2】
パターン形成面を有する検査対象試料を光軸に沿って移動可能に載置保持する載置部と、
前記検査対象試料に前記パターン形成面と対向する面側から入射され、パターン形成面上の第1の領域を透過する第1の観察用光ビームを照射する第1の光源と、
長手方向及び短手方向を有する略矩形状に定められる前記パターン形成面上の第2の領域に第2の観察用光ビームを照射する第2の光源と、
前記第1の領域を透過した透過光ビームを検出して前記パターン形成面を撮像する光学画像取得部と、
前記第2の領域から反射された反射光ビームを第1及び第2の分岐光ビームに分岐し、この第1及び第2の分岐光ビームを夫々第1及び第2光路に導き、前記パターン形成面が前記光学画像取得部の撮像位置に位置されて焦点合わせされた際に、前記第1及び第2の分岐光ビームが第1及び第2の結像面に結像される焦点合わせ光学系と、
前記第1光路において、前記第1の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料の側に離間して配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第1の中心軸及びこの第1の中心軸に直交する第1の直交軸を有する第1の開口を備える第1の開口絞りであって、
前記第1の中心軸に沿って第1の開口長を定め、当該第1の開口長が前記中心軸から前記第1の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第1の開口絞りと、
前記第2光路において、前記第2の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料から離間する方向に配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第2の中心軸及びこの第2の中心軸に直交する第2の直交軸を有する第2の開口を備える第2の開口絞りであって、
前記第2の中心軸に沿って第2の開口長を定め、当該第2の開口長が前記中心軸から前記第2の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第2の開口絞りと、
前記第1及び第2の開口を通過した前記第1及び第2の分岐光ビームを検出して第1及び第2の検出信号を出力する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記載置部の位置を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする光学画像取得装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号とが一致するように前記載置部の位置を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学画像取得装置。
【請求項4】
前記第2の観察用光ビームが波長λを有し、前記パターン形成面が前記光学画像取得部の撮像位置に位置されて焦点合わせされた際に、前記第1及び第2の結像面には、夫々前記第1及び第2の直交軸に沿って短手方向長a及び前記第1及び第2の中心軸に沿って長手方向長bを有する第1及び第2の結像が結像され、前記所定の距離がa/2λ<d<b/2λを満たす距離dに定められることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光学画像取得装置。
【請求項5】
前記光学結像系は、少なくとも前記載置部に対抗して配置される対物レンズを備え、
前記第2の観察用光ビームの光軸が前記第2の領域と第1の交点で交差し、前記第1の交点から前記対物レンズの前記短手方向に沿った両再外周点に向けて進む前記第2の反射光ビームの各々が、第1光路において、前記第1の開口絞りが配置される第1の平面と第2及び第3の交点で交差し、第2光路において、前記第2の開口絞りが配置される第2の平面と第4及び第5の交点で交差し、
前記第1及び第2の開口の各々が前記第1及び第2の直交軸に沿って第1及び第2の最大幅を有し、当該第1及び第2の最大幅が前記第2及び第3の交点間の距離、並びに前記第4及び第5の交点間の距離と比較して大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光学画像取得装置。
【請求項6】
パターン形成面を有する検査対象試料を光軸に沿って移動可能に載置保持する載置部と、
長手方向及び短手方向を有する略矩形状に定められる前記パターン形成面上の領域に観察用光ビームを照射する光源と、
前記領域から反射された反射光ビームを第1及び第2の分岐光ビームに分岐し、この第1及び第2の分岐光ビームを夫々第1及び第2光路に導き、焦点合わせされた際に、前記第1及び第2の分岐光ビームが第1及び第2の結像面に結像される焦点合わせ光学系と、
前記第1光路において、前記第1の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料の側に離間して配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第1の中心軸及びこの第1の中心軸に直交する第1の直交軸を有する第1の開口を備える第1の開口絞りであって、
前記第1の中心軸に沿って第1の開口長を定め、当該第1の開口長が前記中心軸から前記第1の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第1の開口絞りと、
前記第2光路において、前記第2の結像面から所定の距離だけ前記検査対象試料から離間する方向に配置され、前記第2領域の像の長手方向に沿って延出される第2の中心軸及びこの第2の中心軸に直交する第2の直交軸を有する第2の開口を備える第2の開口絞りであって、
前記第2の中心軸に沿って第2の開口長を定め、当該第2の開口長が前記中心軸から前記第2の直交軸に沿って離間するのに従って減少される第2の開口絞りと、
前記第1及び第2の開口を通過した前記第1及び第2の分岐光ビームを検出して第1及び第2の検出信号を出力する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記載置部の位置を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする自動焦点調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−230405(P2010−230405A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76753(P2009−76753)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】