説明

自動車用パワートレイン

本発明は、少なくとも回転可能な駆動軸(3)と電気機械(10)とから成る自動車用パワートレインであって、前記電気機械がハウジングに固定されたステータ(11)と前記駆動軸(3)に連結された回転可能なロータ(12)とを含み、前記ロータ(12)が少なくとも2部分で構成されており、第1ロータ部分(12A)が前記駆動軸(3)と直接連結されており、第2ロータ部分(12B)が前記ステータ(11)で直接駆動可能であり、前記第1ロータ部分(12A)がトルク伝達可能かつ互いに傾動可能に前記第2ロータ部分(12B)と連結されているものに関する。本発明によれば、ハウジングに固定されたロータ支承部(13)によって前記第2ロータ部分(12B)が回転可能に支えられかつ前記ステータ(11)に対して位置合せされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも回転可能な駆動軸と電気機械とから成る自動車用パワートレインに関する。その際、電気機械はハウジングに固定されたステータと少なくとも2部分で実施されたロータとを含み、第1ロータ部分は駆動軸と直接連結されており、第2ロータ部分はステータで直接駆動可能である。第1ロータ部分はトルク伝達可能かつ互いに傾動可能に第2ロータ部分と連結されている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(DE19631384C1)により2分割ロータを有するパワートレインが公知であり、そこではロータ部分の間に振動絶縁部が配置されており、この振動絶縁部は駆動側で生成されたトルク変動が出力側に伝達されるのを十分に防止する。パワートレインはさらに内燃エンジンとして作動する原動機を備えており、原動機のクランク軸は支持体を介して、ステータによって駆動可能なロータ部分と直接結合されている。周知の如くにこのような原動機によって生成される振動はこうして電気機械に直接伝達され、これにより、ステータに対してロータを位置合せしたとき電気機械の性能に否定的作用を及ぼす振動が発生することがある。
【0003】
特許文献2(EP1243788A1)は他の自動車用パワートレインを開示しており、電気機械のロータは単一部分で実施され、ハウジングに固定されたロータ支承部を介して回転可能に支承されている。それに加えてロータは副変速機の駆動軸と直接連結されており、この駆動軸は2つの軸支承部を介してハウジング内で回転可能に支えられている。駆動軸はこうして3つの支承部を介して過剰静定で、つまり両方の軸支承部とロータ支承部とを介して支えられている。そのことからパワートレインの動作中、駆動軸から変速機副軸へのトルク伝達によって駆動軸が弾力的に曲がり、これにより傾動力がロータに作用するとき,ロータ支承部の機械的負荷が強まることがある。
【0004】
特許文献3(DE19943037A1)によりさらに電気機械のロータ装置を有する車両パワートレインが公知であり、このロータ装置は駆動軸の揺動運動下でも電気機械のステータ装置に対して自動的に位置合せされる。このためロータ装置は弾性結合装置を介して駆動軸と結合されている。しかしこのような弾性結合装置は振動系であり、そのため駆動軸の振動はステータ装置に対するロータ装置の自動的位置合せを乱すことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許発明第19631384号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1243788号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19943037号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、導入された振動と駆動軸の撓みに対して不感である前記種類のパワートレインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は第1請求項の特徴によるパワートレインによって解決される。第1請求項は、ハウジングに固定されたロータ支承部によって第2ロータ部分が回転可能に支えられかつステータに対して位置合せされているとの技術的教示を含む。
【0008】
こうして提案されたロータ支承部によって第2ロータ部分がステータに対して固定され、そのことから電気機械に対する振動の作用が低減され、両方のロータ部分の傾動可能な連結によって駆動軸の傾動は第2ロータ部分とその支承部とに作用せず、同時にロータ部分間のトルク伝達が可能である。それゆえに、これによって提供されるパワートレインは振動と駆動軸の撓みに対してきわめて不感である。
【0009】
基本的に、第1ロータ部分と第2ロータ部分は専ら一体に実施された部材と理解すべきではない。むしろ第1ロータ部分および/または第2ロータ部分は、特にねじ結合、溶接結合またはリベット結合を介して互いに直接結合された複数の部材でそれぞれ構成することもできる。
【0010】
好ましくは、パワートレインは電気機械の他に電気的または熱力学的に作動する原動機を有し、そのためパワートレインは2つの冗長駆動系によって駆動可能であり、またはハイブリッドパワートレインの意味で駆動可能である。この場合熱力学的に作動する原動機として理解できるのは熱力学的効果を利用して運動エネルギーまたはトルクを発生するあらゆる種類の原動機、例えばガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはそれらの混合態様、または蒸気タービンまたはガスタービンである。電気的に作動する原動機または電気機械はこの場合、電気効果または電磁効果を利用して運動エネルギーまたはトルクを発生するあらゆる種類の原動機とすることができる。それゆえに電気的原動機、電気機械は例えば三相モータ、交流モータまたはステッピングモータとすることができる。その際強調すべき点として、電気機械は好ましくは電動機としても発電機としても作動することができ、これによりパワートレインは電気機械を介して駆動モード時に運動エネルギーを供給可能であると共に、回生モード時に運動エネルギーを取り出し、後の駆動モード用にこの運動エネルギーをエネルギー蓄積器に蓄積することもできる。
【0011】
原動機と駆動軸との間にクラッチ、好ましくは発進クラッチを設けておくことができ、このクラッチは係合状態において原動機のトルクを駆動軸に伝達し、解放状態のときには原動機から駆動軸へとトルクを伝達せず、これにより原動機は残りのパワートレインから分離可能である。選択的に、例えば内燃エンジンとして作動する原動機のクランク軸を駆動軸と直接結合しまたは駆動軸と一体に実施することによって、原動機は駆動軸と直接連結しておくこともできる。
【0012】
本発明の好ましい一構成において電気機械のロータ内にねじり振動ダンパが配置されており、このねじり振動ダンパは電気機械の不規則回転またはピークトルクが駆動軸に伝達される前にそれらを弱め、または駆動軸の不規則回転またはピークトルクが完全に電気機械に導入される前にそれらを弱める。両方の事例においてパワートレインの機械的負荷が低減し、これによりパワートレインの寿命が肯定的に高まる。
【0013】
本発明の他の有利な諸構成では両方のロータ部分が少なくとも1つの結合要素、他の1つの結合要素、フレックスプレート、歯列またはゴム弾性部材を介して連結される。
【0014】
以下、図面を基に本発明を詳しく説明するが、図面からは他の有利な諸構成を読み取ることができる。図はそれぞれ略図である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】クラッチを介して原動機が駆動軸と連結されているパワートレインを示しており、駆動軸は副変速機形式の変速機の入力軸として役立ち、ロータ部分は結合要素を介して互いに連結されている。
【図2】図1のロータ部分の連結部の正面図である。
【図3】歯列を介した第1ロータ部分と第2ロータ部分との連結部の正面図である。
【図4】駆動軸が撓んだ図1のパワートレインを示す。
【図5】2分割ロータを有するパワートレインを示しており、ロータのロータ部分は図2による結合要素と他の結合要素とを介して連結されている。
【図6】図5の第1ロータ部分と第2ロータ部分との連結部の正面図である。
【図7】フレックスプレートを介してロータ部分が連結された2分割ロータを有するパワートレインを示す。
【図8】原動機が駆動軸と直接連結され、電気機械のロータがねじり振動ダンパを備えているパワートレインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において原動機1は摩擦接合式発進クラッチとしての役割を果たすクラッチ2を介して駆動軸3と連結されている。よってクラッチ2の係合状態において、原動機1によって発生されるトルクは原動機出力軸4からクラッチ2を介してパワートレインの駆動軸3に伝達される。それに対して解放状態のときにはクラッチ2を介して原動機1から駆動軸3にトルクは伝達可能でない。駆動軸3はハウジングに固定された2つの軸支承部5A、5Bを介して回転可能に支承され、副変速機形式の変速機6の入力軸として役立つ。このため駆動軸3上に歯車7が相対回転不能に配置されており、この歯車7は駆動軸3から変速機6の副軸9の歯車8にトルクを伝達する。
【0017】
駆動軸3の周囲に電気機械10が配置されており、この電気機械はハウジングに固定されたステータ11と2分割ロータ12とを備えている。第1ロータ部分12Aは少なくとも相対回転不能に駆動軸3と直接連結されている。第2ロータ部分12Bはステータ11で直接駆動可能であり、ハウジングに固定されたロータ支承部13を介して回転可能に支えられ、ステータ11に対してその位置で固定されている。それとともに第2ロータ部分12Bは使用される電気機械10の種類に応じて永久磁石、コイルまたは電気導体を備えており、これらはステータ11と一緒に第2ロータ部分12Bを直接駆動する。ロータ支承部13と軸支承部5A、5Bは任意に選択することができ、滑り軸受または転がり軸受を使用するのが好ましく、これらの軸受は浮動配置、X配置、О配置または固定‐浮動配置で応用することができる。第1ロータ部分12Aと駆動軸3との連結は任意に、但しトルク伝達式に、例えばこれに適した公知の軸ハブ結合を介して、実施しておくことができる。第1ロータ部分12Aが素材接合式または摩擦接合式に駆動軸3と結合されていると、特別安価であるので特別有利である。さらに、第1ロータ部分12Aは駆動軸3と一体に実施しておくことができ、これにより駆動軸3と第1ロータ部分12Aはやはり特別安価に共通の製造プロセスにおいて、例えば型鍛造によって製造することができる。
【0018】
ロータ部分12A、12Bは図1において円筒形結合要素14を介して互いに傾動可能かつトルク伝達可能に連結されており、そのうち1つの結合要素が図2に詳しく示してある。その際、図2は図1に破線円で印を付けた領域の正面図である。
【0019】
図2は第1ロータ部分12Aの外周面を示しており、この外周面が第2ロータ部分12Bの内周面に対向している。内周面と外周面との間に遊隙があり、この遊隙は第1ロータ部分12Aが第2ロータ部分12Bに対して限定的に傾動しかつ第1ロータ部分12Aが第2ロータ部分12Bに対して図示平面に沿って移動することを可能とする。第1ロータ部分12Aはその外周面に第1凹部15Aを有し、この凹部は第2ロータ部分12Bの内周面の第2凹部15Bに対向している。凹部15A、15B内に突出する結合要素14が凹部15A、15Bに対して遊隙を有する。それに加えて、結合要素14が凹部15A、15Bから転がり出ることのないように、結合要素は凹部15A、15Bを覆う円板状末端16を備えている。凹部15A、15B内での結合要素14の遊隙によってロータ部分12A、12Bは引き続き相互に傾動し、図示平面に沿って相互に移動することができる。相対向する凹部15A、15Bの一方に関してのみ結合要素14が遊隙を有していれば基本的に十分であり、それゆえに結合要素は例えば凹部15A、15Bの一方に圧入されていることによってロータ部分12A、12Bの一方と強固に結合しておくこともできる。
【0020】
例えばパワートレインを駆動するためのトルクおよび回転運動が電気機械10によって発生されて第2ロータ部分12Bが第1ロータ部分12Aに対して相対運動するとき、第2ロータ部分12Bは第1ロータ部分12Aに対して同心またはほぼ同心で回転し、これにより結合要素14は、第1ロータ部分12Aの凹部15Aの側面と、第2ロータ部分12Bの凹部15Bの結合要素14を通して前記側面に点対称に対向する側面とに当接し、これに基づいてロータ部分12A、12Bの間でトルク伝達が可能である。それに応じて、駆動軸3に由来するトルクは特に電気機械10の発電機モード用に第2ロータ部分12Bに伝達することもできる。ロータ部分12A、12Bの間の遊隙と、結合要素14と凹部15A、15Bとの間の遊隙は、パワートレインの動作条件のもとで第2ロータ部分12Bに対する第1ロータ部分12Aの最大傾動時にロータ部分12A、12Bがまだ直接には互いに当接せず、ロータ部分12A、12Bの相互傾動によるだけでは結合要素14が凹部15A、15B内で強固に締付けられないように選択すべきであろう。
【0021】
図3は図2と同じ領域のパワートレインを示しており、但しこのパワートレインは図1、図2のパワートレインと比較すると、遊隙を伴う歯列17を介して第1、第2ロータ部分12A、12Bが互いに連結されている点が相違している。その際、第2ロータ部分12Bがその内周面に歯17Aを有し、この歯は第1ロータ部分12Aの外周面の窪み17B内に遊隙をもって係合する。任意数の歯17Aおよび窪み17Bを互いに係合するようにロータ部分12A、12Bに配置しておくことができる。ここでやはり当業者には明白なことであるが、両方のロータ部分12A、12Bおよび歯列17の遊隙は、パワートレインの動作条件のもとで第2ロータ部分12Bに対する第1ロータ部分12Aの最大傾動時にロータ部分12A、12Bが歯列17を介してのみ互いに直接当接するように設計されていなければならない。歯17Aの形状もしくは窪み17Bの形状は任意に選択することができ、例えば台形状、インボリュート状、コンコイド状またはサイクロイド状とすることができる。
【0022】
図2、図3による本発明の諸実施の好ましい1構成では、両方のロータ部分12A、12Bの間に弾性物質、好ましくは弾性減衰物質が配置されており、この物質が遊隙を少なくとも部分的に満たす。これにより有利なことに両方のロータ部分12A、12Bの間の相対回転時にトルクの伝達は、ロータ部分12A、12Bが互いに衝突する時点以降、もしくはロータ部分12A、12Bが結合要素14に衝突する時点以降もはや突然起きるのでなく、弾性物質が衝撃を吸収および/または減衰するのでトルクの伝達は連続的に起きる。弾性物質が嵌合式に両方のロータ部分12A、12Bに当接すると、ロータ部分12A、12Bの間のトルク伝達がこうしてロータ部分12A、12Bの相対回転時点に直ちに始まるので特別好ましい。弾性物質は例えば射出成形法でロータ部分12A、12Bの間に導入することができる。弾性物質は特に結合要素14の周りに筒状に配置しておくことができ、結合要素14とロータ部分12A、12Bとの間の遊隙を少なくとも部分的に満たす。
【0023】
弾性物質は特別好ましくはゴムまたはゴム状材料、例えば合成ゴムから成る。
【0024】
図4は駆動軸3が撓んだ動作状態における図1のパワートレインを示す。その際トルクは原動機1および/または電気機械10から駆動軸3に伝達され、駆動軸はそれ自身歯車7、8を介して変速機6の副軸9にこのトルクを伝達する。駆動軸3の歯車7から副軸9の歯車8にトルクを伝達するとき、歯車7、8を離反させる力が発生する。この力が駆動軸3の撓みを引き起こし、ハウジングに固定された支え部によって両方の軸支承部5A、5B内に曲げ振幅は存在しない。次に駆動軸3の撓みに基づいて、駆動軸に直接連結された第1ロータ部分12Aが第2ロータ部分12Bに対して傾動するが、しかし両方のロータ部分12A、12B自体の傾動可能な連結によって第2ロータ部分には傾動力が加えられないかまたはごく僅かに加えられるだけである。こうして第2ロータ部分12Bのロータ支承部13は付加的に負荷されず、第2ロータ部分12Bはステータ11に対して位置合せされたままとなる。場合によってパワートレイン中に現れる振動は、ステータ11に対する第2ロータ部分12Bの固定的位置合せによって、電気機械10に対して否定的作用を及ぼさない。ロータ部分12A、12Bの傾動中、トルクを伝達するその連結を介して、電動機または発電機の意味で電気機械10の円滑な動作がこうして可能である。
【0025】
図5が切断した半分を示すパワートレインはロータ支承部13と駆動軸3と電気機械10とを有し、電気機械はステータ11と両方のロータ部分12A、12Bを有するロータ12とから成り、第1ロータ部分12Aは図6に示す結合要素14と他の結合要素18とを介して傾動可能かつトルク伝達可能に第2ロータ部分12Bと連結されている。
【0026】
図6は図5に破線で印を付けた領域の正面図であり、この領域には1つの結合要素14と他の2つの結合要素18が配置されている。ロータ部分12A、12Bの間に配置される前記他の結合要素18を介して、ロータ部分12A、12Bの間の相対回転は前記他の結合要素18の構成に応じて減衰または吸収される。その際、結合要素14と凹部15A、15Bは配置、形状および機能が図2の結合要素14および凹部15A、15Bに類似している。場合によっては結合要素14を省くこともでき、これによりロータ部分12A、12Bは専ら前記他の結合要素18を介してトルク伝達可能かつ相互に傾動可能に連結される。
【0027】
第1ロータ部分12Aは図6に示すように少なくとも2つの鼻端状凸部19Aを有し、これらの凸部19Aの間に第2ロータ部分12Bの他の鼻端状凸部19Bが突出している。凸部19A、19Bの間で前記他の結合要素18がロータ部分12A、12Bの周方向に作用し、ロータ部分12A、12Bの凸部19A、19Bの側面に当接配置されている。例えば第2ロータ部分12Bに対する駆動軸3および第1ロータ部分12Aの回転に基づいてロータ部分12A、12Bが相対回転するとき、前記他の結合要素18のそれぞれ少なくとも1つが圧縮される。それに対して、前記他の結合要素18が凸部19A、19Bと強固に結合されている場合、前記他の結合要素18の別の1つは伸長される。前記他の結合要素18が減衰要素として形成されている場合ロータ部分12A、12Bの相対回転はこうして減衰され、または前記他の結合要素18がばね要素として形成されている場合ロータ部分12A、12Bの相対回転は吸収される。減衰要素として働く前記他の結合要素18は特に公知の液圧ダンパとして実施しておくことができ、ばね要素として働く前記他の結合要素18は特に圧縮コイルばね、環状ばねまたは皿ばねとして実施しておくことができる。例えば液圧ダンパを圧縮コイルばねと組み合わせることによって、または前記他の結合要素18を少なくとも部分的に弾性減衰ゴムまたは弾性減衰ゴム状材料、例えば合成ゴムで構成することによって、前記他の結合要素18は複合ばね減衰要素として実施しておくこともできる。前記他の結合要素18は、それが少なくともばね要素として実施されている場合、ロータ部分12A、12Bの間に配置されるねじりばね系の意味で働く。このねじりばね系は両方のロータ部分12A、12Bの間の不規則回転またはトルク衝撃を吸収し、こうして有利なことにパワートレインの部材負荷を軽減する。それに対して前記他の結合要素18が少なくとも減衰要素として実施されている場合、前記他の結合要素18はねじり振動ダンパの意味で働き、両方のロータ部分12A、12Bの間の不規則回転またはトルク衝撃を減衰し、こうしてやはり有利なことにパワートレインの部材負荷を軽減する。選択的に、ねじりばね系の意味で働く少なくとも1つの渦巻ばねを第1、第2ロータ部分12A、12Bの間に配置しておくこともできる。
【0028】
図7は図5によるパワートレインを示しており、両方のロータ部分12A、12Bは、結合要素14および前記他の結合要素18を介してではなくフレックスプレート(撓みプレート)20を介して連結されている。このようなフレックスプレートは例えば車両パワートレイン内で原動機と変速機との間の軸オフセットまたは軸交差を補償するためのものとして知られており、このようなフレックスプレートを介して原動機から変速機へとトルクは伝達可能である。フレックスプレートは単一部分でも多部分でも実施しておくことができる。図7に示すフレックスプレート20は単一部分で皿状に形成されており、内側領域20Aに設けられた凹部で第1ロータ部分12Aと少なくとも相対回転不能に結合され、また外側領域20Bで縁部を介して第2ロータ部分12Bと少なくとも相対回転不能に結合されている。フレックスプレート20とロータ部分12A、12Bとの結合は特にねじ止め、リベット止めまたは溶接部を介して行うことができる。駆動軸3の傾動時、従って第1ロータ部分12Aが第2ロータ部分12Bに対して傾動するとき、フレックスプレート20の内側領域20Aが一緒に傾動し、外側領域20Bは第2ロータ部分12Bと共にロータ支承部13を介して固定されており、これによりフレックスプレート20は弾性変形する。内側領域20Aが外側領域20Bに対して傾動することによって第1ロータ部分12Aから第2ロータ部分12Bへとごく僅かな傾動力が伝達されるだけであり、これによりロータ支承部13が第2ロータ部分12Bに対する第1ロータ部分12Aの傾動によって僅かに負荷されるだけであるように、フレックスプレート20の柔軟性は設計されている。
【0029】
フレックスプレート20の代わりに、第1、第2ロータ部分12A、12Bはゴム弾性部材を介して連結しておくこともでき、このゴム弾性部材はロータ部分12A、12Bと結合されており、トルク伝達能力と同時に第2ロータ部分12Bに対する第1ロータ部分12Aの傾動を可能とする。このようなゴム弾性部材は好ましくは射出成形技術でロータ部分12A、12Bの間の空隙内に導入され、こうして例えばリングを形成する。このリングは第1ロータ部分12Aの外周面と第2ロータ部分12Bの内周面との間にある。ロータ部分12A、12Bとゴム弾性部材との間のトルク伝達を改善するためにロータ部分12A、12Bは好ましくは、互いに係合しない歯列を備えており、この歯列がゴム弾性部材によって取り囲まれており、これによりゴム弾性部材はロータ部分12A、12Bと嵌合結合されている。ゴム弾性部材は、図2、図3、図6に示す結合要素14および他の結合要素18に比べて有する利点として、射出成形によって容易に製造可能、またロータ部分12A、12B間に導入可能であり、好ましくはやはりゴムまたはゴム状物質、例えば合成ゴムから成る。
【0030】
図8に示すパワートレインは図4のパワートレインに相応して原動機1と電気機械10とを備えており、電気機械はステータ11と2つのロータ部分12A、12Bから成るロータ12とから成り、ロータの第2ロータ部分12Bはロータ支承部13でステータ11に対して固定的に位置合せされている。パワートレインはさらに、軸支承部5A、5Bで支承された駆動軸3を備えている。しかし図1のパワートレインとは異なり、ここに示すパワートレインでは原動機1が駆動軸3と直接結合されており、ここで駆動軸1は同時に原動機1の原動機出力軸4として役立つ。クラッチ2は出力側で電気機械10の下流側に配置されており、これにより原動機1は電気機械10と共に、図示しない残りのパワートレインから分離可能である。こうしてクラッチ2の解放時、原動機1は専ら電気機械10の駆動に利用することができ、その場合電気機械は原動機1によって発生される運動エネルギーを図示しないエネルギー蓄積器、例えば電池に回生的に蓄積する。そうする代わりに電気機械10は専ら、クラッチ2の解放時に主に始動のために原動機1を駆動する。
【0031】
図8において第1ロータ部分12Aは、特に摩擦接合式発進クラッチまたは特許文献3により公知のねじり振動ダンパ21を備えており、このねじり振動ダンパはパワートレインの動作時に電気機械10内に発生するピークトルクを減衰する。こうしてここで第1ロータ部分12Aは少なくとも2つの半片と両方の半片を互いに結合するねじり振動ダンパとから成る。
【0032】
図8のパワートレインの図示しない一構成では原動機1と駆動軸3が第2クラッチを介して互いに連結可能に形成され、このクラッチは図1のクラッチ2に相応してパワートレイン内に配置されている。これにより出力側で電気機械10の下流側に配置される残りのパワートレインは選択的に、電気機械10を一緒に牽引しながらクラッチ2と第2クラッチとを係合させて原動機1のみで駆動可能であり、またはクラッチ2と第2クラッチとをやはり係合させて原動機1および電気機械10で駆動可能であり、またはクラッチ2を解放しかつ第2クラッチを係合させて電気機械10のみで駆動可能である。
【0033】
図1〜図8にはそれぞれインナロータ型の電気機械10が示してあるが、しかし当業者には明白なことであるが、本発明はアウタロータ型の電気機械10にも及ぶ。特にその場合第2ロータ部分12Bは図2、図3または図6による本発明の1構成においてそこに示された内周面の代わりに、そこに示された第1ロータ部分12Aのものに相応して外周面も有することができる。それに応じて第1ロータ部分12Aは図2、図3または図6による本発明の1構成においてそこに示された外周面の代わりに、そこに示された第2ロータ部分12Bのものに相応して内周面も有することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 原動機
2 クラッチ
3 駆動軸
4 原動機出力軸
5A 軸支承部
5B 軸支承部
6 変速機
7 歯車
8 歯車
9 副軸
10 電気機械
11 ステータ
12 ロータ
12A 第1ロータ部分
12B 第2ロータ部分
13 ロータ支承部
14 結合要素
15A 第1凹部
15B 第2凹部
16 結合要素14の末端
17 歯列
17A 歯
17B 窪み
18 他の結合要素
19A 凸部
19B 他の凸部
20 フレックスプレート
20A フレックスプレート20の内側領域
20B フレックスプレート20の外側領域
21 ねじり振動ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも回転可能な駆動軸(3)と電気機械(10)とから成る自動車用パワートレインであって、前記電気機械がハウジングに固定されたステータ(11)と前記駆動軸(3)に連結された回転可能なロータ(12)とを含み、前記ロータ(12)が少なくとも2部分で構成されており、第1ロータ部分(12A)が前記駆動軸(3)と直接連結されており、第2ロータ部分(12B)が前記ステータ(11)で直接駆動可能であり、前記第1ロータ部分(12A)がトルク伝達可能かつ互いに傾動可能に前記第2ロータ部分(12B)と連結されているものにおいて、
ハウジングに固定されたロータ支承部(13)によって前記第2ロータ部分(12B)が回転可能に支えられかつ前記ステータ(11)に対して位置合せされていることを特徴とするパワートレイン。
【請求項2】
前記パワートレインが電気的または熱力学的に作動する原動機(1)を有し、前記原動機を介して前記駆動軸(3)が駆動可能であることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。
【請求項3】
前記パワートレインが前記原動機(1)と前記駆動軸(3)との間に配置されるクラッチ(2)を有し、前記クラッチ(2)の係合状態において前記原動機(1)のトルクが前記クラッチ(2)を介して前記駆動軸(3)に伝達可能であることを特徴とする請求項2記載のパワートレイン。
【請求項4】
前記原動機(1)が前記駆動軸(3)と直接連結されていることを特徴とする請求項2記載のパワートレイン。
【請求項5】
前記第1ロータ部分(12A)が素材接合式または摩擦接合式に前記駆動軸(3)と結合されまたは前記駆動軸(3)と一体に実施されていることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。
【請求項6】
両方の前記ロータ部分(12A、12B)の一方が外周面に少なくとも1つの凹部(15A、15B)を有し、前記両方のロータ部分(12A、12B)の他方が前記一方のロータ部分(12A、12B)の前記外周面に対向する内周面にやはり少なくとも1つの凹部(15A、15B)を有し、前記凹部が前記一方のロータ部分(12A、12B)の前記少なくとも1つの凹部(15A、15B)に対向しており、相対向する前記凹部(15A、15B)内に結合要素(14)が突出しており、前記結合要素が前記対向する凹部(15A、15B)の少なくとも一方に対して遊隙を有することを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。
【請求項7】
遊隙を伴う歯列(17)を介して前記第1ロータ部分(12A)と前記第2ロータ部分(12B)が互いに連結されていることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。
【請求項8】
前記遊隙が少なくとも弾性な物質で少なくとも部分的に満たされていることを特徴とする請求項6または7記載のパワートレイン。
【請求項9】
前記ロータ(12)内にねじり振動ダンパ(21)が配置されていることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。
【請求項10】
前記第1、第2ロータ部分(12A、12B)の間にねじりばね系が配置されていることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。
【請求項11】
前記第1ロータ部分(12A)と前記第2ロータ部分(12B)との間にフレックスプレート(20)が配置されており、前記レックスプレートがそれぞれ少なくとも相対回転不能に前記第1、第2ロータ部分(12A、12B)と結合されていることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。
【請求項12】
前記第1、第2ロータ部分(12A、12B)が少なくとも1つのゴム弾性部材を介して互いに連結されていることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−511463(P2012−511463A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539992(P2011−539992)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065352
【国際公開番号】WO2010/066545
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】