説明

自動車用内装部品及びその製造方法

【課題】自動車用内装部品としての発泡射出成形品の外観を向上させるとともに、製造コストを低減する。
【解決手段】固定型11と、可動型12と、この可動型12に備えられる可動治具16と、を有する射出成形装置10を用いてドアトリム基材40を製造する。先ず、前記固定型11と前記可動型12との間に形成されるキャビティ13内に非発泡樹脂41を射出して固化させる。次に、前記可動治具16により前記非発泡樹脂41が前記固定型11に接触した状態を保持しながら前記可動型12を退避させる(選択図)。次に、前記可動治具16を前記固定型11から退避させ、前記可動型12及び前記可動治具16の退避により形成される空間内に発泡樹脂を射出する。その後、可動型12と可動治具16を退避させることにより発泡樹脂を膨張させ、非発泡樹脂41と一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂を備える自動車用内装部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車用内装部品として発泡樹脂が広く使われている。この発泡射出成形は、軽量化は勿論、樹脂の収縮によるヒケ防止、寸法精度の向上等の利点がある。
【0003】
しかしながら、自動車用内装部品に使う場合、発泡成形は表面に気泡の跡が残って外観が良好でないために意匠部品に用いることはできず、仮に意匠部品に使う場合は表面を塗装する必要がある。
【0004】
この点、特許文献1は、以下のような発泡樹脂成形品の製造方法を開示する。即ち、流路に蒸気を流してキャビティ内壁面を成形用樹脂の熱変形温度以上に加熱した状態で、射出成形機からキャビティに、超臨界液体が混入された樹脂を射出する。所定量の樹脂の射出が完了したら、直ちに流路への上記の供給を停止し、流路への冷却水の供給を開始する。これによって、キャビティ内壁面の近傍は加熱状態から冷却状態に急激に切り替えられ、樹脂が冷却固化される。
【0005】
特許文献1は、これによって、表面に破泡跡のない良好な外観の成形品が得られるとする。
【特許文献1】特開2005−7589号公報(要約等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の方法では、金型温度を高温にして樹脂を射出しているため、樹脂が冷却しにくく、結果として成形サイクルタイムが長くなってしまう。また、サイクル毎に金型の急加熱及び急冷却を繰り返すため、金型の膨張・収縮が反復されて金型割れや成形寸法精度の低下が発生する恐れがある。
【0007】
更に、金型を短時間で昇温、冷却する必要があるために多量のエネルギーを必要とし、省エネルギーの観点からも改善の余地が残されている。また、金型を上記のように短時間で昇温及び冷却するには型面のすぐ近くに前記流路を設定する必要があり、特殊な型の製作費用が生じて、製造コストの上昇要因になってしまう。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、低コストで良好な外観を有する発泡射出成形品としての自動車用内装部品を得ることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、自動車用内装部品において、車室側には非発泡樹脂を射出成形し、その裏面側には発泡樹脂を射出成形した、自動車用内装部品が提供される。
【0011】
この構成により、軽量化等の発泡射出成形の利点を有するとともに、車室側に良好な外観の意匠面を備える自動車用内装部品を得ることができる。
【0012】
前記の自動車用内装部品においては、前記非発泡樹脂を射出成形した後、前記裏面側に相当する金型を退避させて前記発泡樹脂を射出し、更に前記金型を退避させて前記発泡樹脂を膨張させて一体成形することが好ましい。
【0013】
この構成により、裏面側の金型を退避させる容易な方法で発泡樹脂を膨張させることが可能であり、製造コストを低減できる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、以下のような自動車用内装部品の製造方法が提供される。この製造方法に使用される射出成形装置は、固定型と、可動型と、この可動型に備えられる可動治具と、を有する。前記製造方法は、前記固定型と前記可動型との間に形成されるキャビティ内に非発泡樹脂を射出して固化させる工程と、前記可動治具により前記非発泡樹脂が前記固定型に接触した状態を保持しながら前記可動型を退避させる工程と、前記可動治具を前記固定型から退避させる工程と、前記可動型及び前記可動治具の退避により形成される空間内に発泡樹脂を射出する工程と、前記可動型を退避させることにより前記発泡樹脂を膨張させ、前記非発泡樹脂と一体成形する工程と、を含む。
【0015】
この方法により、可動治具によって非発泡樹脂を固定型に接触させた状態で可動型を退避させるので、非発泡樹脂を可動型に追従させることなく可動型だけを退避させることができる。従って、非発泡樹脂の裏面側に発泡樹脂の射出のための空間を容易かつ確実に確保できる。
【0016】
本発明の第3の観点によれば、以下のような、自動車用内装部品の製造方法が提供される。可動型と固定型の間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出して成形する工程を含む。前記キャビティの輪郭は、前記キャビティへの非発泡樹脂の射出後前記可動型が前記固定型から離れるときに当該可動型とともに退避する第1面と、前記可動型が前記固定型から離れるときに前記非発泡樹脂を押さえる第2面と、を含んでいる。前記製造方法は、前記固定型と前記可動型との間に形成されるキャビティ内に非発泡樹脂を射出して固化させる工程と、前記第2面で前記非発泡樹脂を押さえながら前記可動型とともに前記第1面を退避させる工程と、前記第2面を退避させる工程と、前記第1面及び前記第2面と前記非発泡樹脂との間の空間内に発泡樹脂を射出する工程と、前記第1面及び前記第2面を退避させることにより前記発泡樹脂を膨張させ、前記非発泡樹脂と一体成形する工程と、を含む。
【0017】
この方法により、前記第2面によって非発泡樹脂を固定型に押さえた状態で可動型を退避させるので、非発泡樹脂を可動型に追従させることなく可動型だけを退避させることができる。従って、非発泡樹脂の裏面側に発泡樹脂の射出のための空間を容易かつ確実に確保でき、発泡樹脂を非発泡樹脂と適切に一体成形することができる。
【0018】
前記の自動車用内装部品の製造方法においては、前記可動型側に可動治具を備え、この可動治具の先端に前記第2面が備えられていることが好ましい。
【0019】
この方法により、可動治具を固定/移動させることで、前記第2面で非発泡樹脂を押さえたり、非発泡樹脂から退避させることを容易に行うことができる。
【0020】
前記の自動車用内装部品の製造方法においては、前記キャビティ内に非発泡樹脂を射出して固化させた後、前記可動型を前記固定型から退避させる工程のときに、前記可動治具が前記固定型に対し相対移動不能に連結されることが好ましい。
【0021】
この方法により、可動型を退避させるときに、前記第2面で非発泡樹脂を固定型側へ確実に押さえつけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るドアトリム基材を製造するための射出成形装置の模式図である。また、図2から図6までには、ドアトリム基材を製造する工程が順を追って示されている。
【0023】
図1には射出成形装置の概略図が示されており、この射出成形装置10は、ドアトリム(自動車用内装部品)を構成する意匠部品としてのドアトリム基材を成形するためのものである。この射出成形装置10は、固定型(キャビティ型)11と、可動型(コア型)12とを備えており、前記固定型11と可動型12との間にはキャビティ13が形成されている。そして前記射出成形装置10においては、前記キャビティ13内に溶融状態の合成樹脂を供給して冷却・固化させた後、型開きして離型し、前記ドアトリム基材を得るように構成されている。
【0024】
前記キャビティ13の輪郭を形成する面のうち、固定型11側の型面30には任意の模様(例えば皮シボ等のシボパターン)が形成されている。この模様は、ドアトリム基材の成形工程において当該ドアトリム基材の車室側の表面に転写されて、意匠性を高めるように構成されている。
【0025】
可動型12には貫通状の保持孔14が垂直方向に形成されるとともに、この保持孔14に接続するように、水平方向のスライド孔15が複数形成されている。このスライド孔15は、前記可動型12の型面(キャビティ13を形成する面)に開口される。
【0026】
また、可動型12には可動治具16が移動自在に備えられる。この可動治具16は、上下方向に配設されるとともに前記保持孔14に挿入される基部17と、この基部17から前記キャビティ13に向けて突設されるとともに、前記スライド孔15にそれぞれ摺動自在に挿入される複数の細長い凸部18と、を備えている。
【0027】
この構成で、図1の型閉じ状態においては、棒状の前記凸部18の先端面(第2面32)は、可動型12の型面(第1面31)と面一となっている。この状態で前記キャビティ13へ溶融状態の非発泡樹脂が射出されることになる。
【0028】
前記基部17の上下端は固定型11に近づく向きに垂直に折り曲げられ、この先端に形成された連結孔19に、固定型11から突設されたピン20が挿通されている。このピン20は、必要に応じて固定型11内に退避するように移動し、連結孔19から抜脱できるように構成されている。また、可動治具16には、当該可動治具16を移動させるための図略のアクチュエータが連結されている。
【0029】
以上の構成で、図1に示す型閉じ状態において、溶融状態の非発泡樹脂41を図略のゲートからキャビティ13内に供給して固化させ、図2の状態とする。この工程で、固定型11の型面30に形成されているシボパターンが非発泡樹脂41の表面(車室側の表面)に転写される。そして図2の状態では、凸部18の先端面32は非発泡樹脂41の内面に接触し、非発泡樹脂41を固定型11側に押さえ付けた状態となっている。
【0030】
次に、連結孔19及びピン20によって可動治具16を固定型11に固定した状態で、可動型12を固定型11から離れる向きに所定の距離退避させる(コアバック)。
【0031】
これにより、図3に示すように可動型12の型面(第1面31)は当該可動型12とともに固定型11から離れる。一方で、可動治具16は、その連結孔19が固定型11側の前記ピン20によって固定(ロック)されているので、可動治具16は固定型11に対して相対移動することはない。従って、可動治具16の先端面(第2面32)は固定型11から離れる方向に移動しない(退避距離はゼロである)。この結果、凸部18の先端面32は非発泡樹脂41を固定型11側に押さえ付けた状態を維持するので、可動型12の型面31と非発泡樹脂41との間には適宜の隙間(空間)34が形成される。
【0032】
ここで仮に可動型12とともに可動治具16が退避した場合、固化した非発泡樹脂41は、樹脂の収縮により可動型12に追従して移動し、キャビティ13内で非発泡樹脂41が傾いたり位置ズレしたりする恐れがある。これは、後に射出される発泡樹脂42が固定型11側の型面30へ回り込んでしまったり、非発泡樹脂41に形成されたシボパターンが型面30と擦れて損傷する原因になる。しかしながら、本実施形態では可動治具16を固定型11に対して連結した状態で可動型12だけを退避させるので、非発泡樹脂41を固定型11の型面30へ隙間なく接触させて位置決めした状態を保ちつつ、可動型12の型面(第1面)31を非発泡樹脂41の内面から剥がして離間させ、両者の間に隙間(空間)34を確実に形成することができる。
【0033】
次に、ピン20を退避させて可動治具16と固定型11との連結を解除し(アンロック)、可動治具16を退避させる。このとき、可動型12の型面31と非発泡樹脂41の内面との間は既に離間しているので、可動治具16の退避とともに非発泡樹脂41が傾いたり位置ズレしたりすることはない。なお、本実施形態では可動治具16の退避距離は第1面31が第2面32と面一になるまでとされるが、これに限定されない。
【0034】
そして、上記の状態で、非発泡樹脂41の裏面側の空間34に図示しないゲートから溶融状態の発泡樹脂42を射出し、図4の状態とする。そして、溶融樹脂が固化する前に可動型12と可動治具16の双方を更に退避させて、前記隙間34を減圧して樹脂を発泡・膨張させる(図5)。
【0035】
そして、この状態で冷却・固化させることで、ドアトリム基材40が図6のように得られ、その後は型開きされ、ドアトリム基材40が取り出される。こうして形成されるドアトリム基材40は、裏面側の発泡樹脂42により軽量化が図られるとともに、車室側に非発泡樹脂41による綺麗な意匠面を備えることとなり、良好な品質の自動車用内装部品となっている。
【0036】
以上の知見は、本願の発明者が行った以下の確認実験でも裏付けられている。この実験で用いられる射出成形装置10は、自動車用内装部品を想定して、略椀状の形状を備えるキャビティ13とした。また、固定型11側の型面30には皮シボを形成し、この型面によりドアトリム基材40の車室側の面(意匠面)を形成することとした。
【0037】
先ず、非発泡樹脂41としてのPPC(ポリプロピレン樹脂にタルク20%を充填したもの)を、キャビティ13内に0.7mmの厚さで射出し、冷却・固化させた(図2)。
【0038】
次に、可動治具16を固定型11に連結固定したまま、可動型12を固定型11から1.5mm退避させた。これにより、非発泡樹脂41の意匠面は固定型11側の型面30に接触した状態を保持し、一方で、非発泡樹脂41の内面と可動型12との型面31の間に1.5mmの隙間34が形成された(図3)。
【0039】
続いて、可動治具16と固定型11との連結を解除し、可動治具16を退避させた。この結果、非発泡樹脂41の内面と可動治具16の凸部18の先端面32との間にも1.5mmの隙間が形成された。なおこのとき、非発泡樹脂41と固定型11の型面30とは接触した状態が維持された。
【0040】
この状態で、上記PPCに化学発泡剤(永和化成工業製のEE275F)を3部添加した発泡樹脂42を射出した(図4)。そして、射出後直ちに、前記可動型12と可動治具16を、10mm/secの速度で固定型11から退避させた(図5)。これにより、車室側の表層には0.7mm厚の無発泡層を有し、裏面側には2.1mm厚の1.4倍発泡の層を有する成形品を得ることができた(図6を参照)。この無発泡層の表面には、固定型11の型面の皮シボが綺麗に再現され、良好な外観とすることができた。
【0041】
以上に示すように、本実施形態のドアトリム基材40は、車室側には非発泡樹脂41を射出成形し、その裏面側には発泡樹脂42を射出成形した構成になっている。
【0042】
従って、車室側に良好な外観の意匠面を備える発泡成形品としての自動車用内装部品を得ることができる。また、射出成形装置10において金型の急加熱や急冷却を行わないので、消費エネルギーを低減でき、また金型の負担も小さく、成形品の寸法精度の向上を実現できる。
【0043】
また、上記ドアトリム基材40は、非発泡樹脂41を射出成形した後、前記裏面側に相当する金型である可動型12を退避させて前記発泡樹脂42を射出し、更に可動型12を退避させて前記発泡樹脂42を膨張させて一体成形している。
【0044】
従って、裏面側の可動型12を退避させる容易な方法で発泡樹脂42を膨張させることができ、製造コストを低減できる。
【0045】
また、本実施形態で使用される射出成形装置10は、固定型11と、可動型12と、この可動型12に備えられる可動治具16と、を有する。そして、上記の製造方法は、固定型11と可動型12との間に形成されるキャビティ13内に非発泡樹脂41を射出して固化させる工程(図2)と、前記可動治具16により前記非発泡樹脂41が前記固定型11に接触した状態を保持しながら前記可動型12を退避させる工程(図3)と、前記可動治具16を前記固定型11から退避させる工程と、前記可動型12及び前記可動治具16の退避により形成される隙間34内に発泡樹脂42を射出する工程(図4)と、少なくとも前記可動型12を退避させることにより前記発泡樹脂42を膨張させ、前記非発泡樹脂41と一体成形する工程(図5、図6)と、を含む。
【0046】
従って、図3に示すように可動治具16によって非発泡樹脂41を固定型11に接触させた状態で可動型12を退避させるので、非発泡樹脂41を可動型12に追従させることなく可動型12だけを退避させることができる。この結果、非発泡樹脂41の傾きや位置ズレを回避でき、正確な寸法のドアトリム基材40を得ることができるとともに、車室側の意匠面の外観の低下も回避できる。
【0047】
また、上記の製造方法は、可動型12と固定型11の間に形成されるキャビティ13に溶融樹脂を射出して成形する工程を含む。また、前記キャビティ13の輪郭は、前記キャビティ13への非発泡樹脂41の射出後前記可動型12が前記固定型11から離れるときに当該可動型12とともに退避する当該可動型とともに離れる型面(第1面31)と、前記可動型12が前記固定型11から離れるときに前記非発泡樹脂41を押さえる可動治具16の先端面(第2面32)と、を含んでいる。また、ドアトリム基材40の製造方法は、固定型11と可動型12との間に形成されるキャビティ13内に非発泡樹脂41を射出して固化させる工程(図2)と、第2面32で前記非発泡樹脂41を押さえながら前記可動型12とともに前記第1面31を退避させる工程(図3)と、前記第2面32を退避させる工程と、前記第1面31及び前記第2面32と前記非発泡樹脂41との間の隙間34内に発泡樹脂42を射出する工程(図4)と、前記第1面31及び前記第2面32を退避させることにより前記発泡樹脂42を膨張させ、前記非発泡樹脂41と一体成形する工程(図5、図6)と、を含む。
【0048】
従って、前記第2面32によって非発泡樹脂41を固定型11に押さえた状態で可動型12を退避させるので、非発泡樹脂41を可動型12に追従させることなく可動型12だけを退避させることができる。この結果、非発泡樹脂41の裏面側に発泡樹脂42の射出のための隙間34を容易かつ確実に確保でき、発泡樹脂42を非発泡樹脂41と適切に一体成形することができる。
【0049】
また、上記の製造方法は、前記可動型12側に可動治具16を備え、この可動治具16の先端に前記第2面32が備えられている。
【0050】
従って、前記第2面32で非発泡樹脂41を押さえたり、非発泡樹脂41から退避させることを、可動治具16を固定/移動させることで容易に行うことができる。
【0051】
また、上記の製造方法においては、キャビティ13内に非発泡樹脂41を射出して固化させた後、可動型12を固定型11から退避させる工程の時に、図3に示すように可動治具16が前記固定型11に対し相対移動不能に連結されている。
【0052】
従って、可動型12を退避させるときに、前記第2面32で非発泡樹脂41を固定型11側へ確実に押さえつけることができる。
【0053】
以上に本発明の好適な実施形態及び変形例を示したが、上記の構成は一例であって、例えば以下のように変更することができる。
【0054】
可動治具16を固定型11に連結する機構は、連結孔19とピン20によるものに限らず、他の様々な固定機構を採用することができる。
【0055】
非発泡樹脂41及び発泡樹脂42としては、例示したポリプロピレン樹脂のほか、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂等から適宜選択することができる。また発泡樹脂42は、化学発泡させて膨張させることに限らず、例えばガス発泡させることができる。
【0056】
上記の製造方法は、椀状のほか、任意の形状のキャビティ13を有する射出成形装置10に適用することができる。また、ドアトリム基材40以外の他の自動車用内装部品、例えばインストルメントパネル等を製造する際に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係るドアトリム基材を製造するための射出成形装置の模式図。
【図2】図1の状態から溶融状態の非発泡樹脂をキャビティに供給して固化させた様子を示す図。
【図3】図2の状態から、可動治具を固定型側に固定しつつ可動型を退避させた様子を示す図。
【図4】非発泡樹脂の裏面側に溶融状態の発泡樹脂を供給した様子を示す図。
【図5】図4の状態から可動型及び可動治具を退避させ、発泡樹脂を発泡させる様子を示す図。
【図6】図5の状態から発泡樹脂を固化させた様子を示す図。
【符号の説明】
【0058】
11 固定型
12 可動型
13 キャビティ
14 保持孔
15 スライド孔
16 可動治具
17 基部
18 凸部
19 連結孔
20 ピン
30 固定型の型面(シボパターン面、ドアトリム基材の車室側の面に相当する面)
31 可動型の型面(第1面)
32 可動治具の先端面(第2面)
34 隙間(空間)
40 ドアトリム基材(自動車用内装部品)
41 非発泡樹脂
42 発泡樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用内装部品において、車室側には非発泡樹脂を射出成形し、その裏面側には発泡樹脂を射出成形したことを特徴とする自動車用内装部品。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用内装部品であって、前記非発泡樹脂を射出成形した後、前記裏面側に相当する金型を退避させて前記発泡樹脂を射出し、更に前記金型を退避させて前記発泡樹脂を膨張させて一体成形したことを特徴とする自動車用内装部品。
【請求項3】
自動車用内装部品の製造方法において、
この製造方法に使用される射出成形装置は、固定型と、可動型と、この可動型に備えられる可動治具と、を有し、
前記製造方法は、
前記固定型と前記可動型との間に形成されるキャビティ内に非発泡樹脂を射出して固化させる工程と、
前記可動治具により前記非発泡樹脂が前記固定型に接触した状態を保持しながら前記可動型を退避させる工程と、
前記可動治具を前記固定型から退避させる工程と、
前記可動型及び前記可動治具の退避により形成される空間内に発泡樹脂を射出する工程と、
前記可動型を退避させることにより前記発泡樹脂を膨張させ、前記非発泡樹脂と一体成形する工程と、
を含むことを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項4】
可動型と固定型の間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出して成形する工程を含む自動車用内装部品の製造方法において、
前記キャビティの輪郭は、前記キャビティへの非発泡樹脂の射出後前記可動型が前記固定型から離れるときに当該可動型とともに退避する第1面と、前記可動型が前記固定型から離れるときに前記非発泡樹脂を押さえる第2面と、を含んでおり、
前記製造方法は、
前記固定型と前記可動型との間に形成されるキャビティ内に非発泡樹脂を射出して固化させる工程と、
前記第2面で前記非発泡樹脂を押さえながら前記可動型とともに前記第1面を退避させる工程と、
前記第2面を退避させる工程と、
前記第1面及び前記第2面と前記非発泡樹脂との間の空間内に発泡樹脂を射出する工程と、
前記第1面及び前記第2面を退避させることにより前記発泡樹脂を膨張させ、前記非発泡樹脂と一体成形する工程と、
を含むことを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車用内装部品の製造方法であって、前記可動型側に可動治具を備え、この可動治具の先端に前記第2面が備えられていることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車用内装部品の製造方法であって、
前記キャビティ内に非発泡樹脂を射出して固化させた後、前記可動型を前記固定型から退避させる工程のときに、前記可動治具が前記固定型に対し相対移動不能に連結されることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−223104(P2007−223104A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44995(P2006−44995)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(304053957)三ツ星化成品株式会社 (46)
【Fターム(参考)】