説明

自律移動装置

【課題】特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、特定の人の安全を確保するように移動することが可能な自律移動装置を提供する。
【解決手段】自律移動装置1は、主人のそばについて自律的に移動しつつ、カメラ10及び通信機12などが認識した周囲環境に物体が存在した場合に、主人に対する物体の危険度を危険度検出部24が検出し、この危険度に基づいてアクチュエータ制御部26及び電動モータ34が当該自律移動装置を移動させる。これにより、自律移動装置1は、主人のそばについて自律的に移動するとともに、主人に対する危険度を検出してこの危険度に基づいて移動するため、この危険度を考慮して主人の安全を確保する移動を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送物を自動的に目的地まで運搬するための自動搬送ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の自動搬送ロボットでは、搬送物をロボットの収納部に収納してロック部をロックした状態で指定目的位置に移動させ、指定目的位置へのロボットの到達確認と取扱登録者の確認が行われた場合に、ロック部の解除が行われる。これにより、取扱登録者は、ロボットの収納部内に収納してある搬送物を、指定目的位置で確実に取り出すことができる。
【特許文献1】特開2001−287183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の自動搬送ロボットによれば、搬送物を自動的に目的地まで運搬することができる。しかしながら、人のそばについて移動しつつ、その人の安全を確保するように移動するということに関してはなんら考慮されていない。
【0004】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、特定の人の安全を確保するように移動することが可能な自律移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る自律移動装置は、特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、特定の人、及びその周囲の環境を認識する周囲環境認識手段と、周囲環境認識手段により認識された周囲環境に物体が存在した場合に、特定の人に対する当該物体の危険度を検出する危険度検出手段と、危険度検出手段により検出された危険度に基づいて、当該自律移動装置を移動させる移動手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る自律移動装置によれば、特定の人のそばについて自律的に移動しつつ、周囲環境認識手段が認識した周囲環境に物体が存在した場合に、特定の人に対する当該物体の危険度を危険度検出手段が検出し、この危険度に基づいて、移動手段が当該自律移動装置を移動させる。これにより、自律移動装置は、特定の人のそばについて自律的に移動するとともに、特定の人に対する危険度を検出してこの危険度に基づいて移動する。このため、自律移動装置は、この危険度を考慮して、特定の人の安全を確保する移動を行うことができる。
【0007】
また、本発明に係る自律移動装置では、周囲環境認識手段により認識された周囲環境に物体が存在した場合に、当該物体と特定の人とが接触する可能性を有する危険位置を予測する危険位置予測手段を備え、移動手段は、危険位置予測手段により予測された危険位置に基づいて、当該自律移動装置を移動させるのが好ましい。
【0008】
これにより、周囲環境認識手段が認識した周囲環境に物体が存在した場合に、移動手段は、危険位置予測手段が予測した危険位置に基づいて、当該自律移動装置を移動させる。このため、自律移動装置は、この危険位置を考慮して、特定の人の安全をより確実に確保する移動を行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る自律移動装置では、危険位置予測手段により予測された危険位置の平均と、危険度検出手段により検出された当該物体の危険度の平均と、を算出する平均算出手段を備え、移動手段は、平均算出手段により算出された危険位置の平均と危険度の平均とに基づいて、当該自律移動装置を移動させるのが好ましい。
【0010】
これにより、危険位置予測手段が予測した危険位置の平均と、危険度検出手段が検出した物体の危険度の平均と、に基づいて、移動手段は当該自律移動装置を移動させる。このため、自律移動装置は、危険位置の平均と物体の危険度の平均とを考慮して、特定の人の安全を確保する移動を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る自律移動装置では、移動手段は、基本位置として予め設定された特定の人に対する相対位置に基づいて、当該自律移動装置を移動させるのが好ましい。
【0012】
これにより、基本位置として予め設定された特定の人に対する相対位置に基づいて、移動手段は当該自律移動装置を移動させる。このため、自律移動装置は、予め設定された相対位置を基本位置としながら、特定の人のそばについて自律的に移動して、特定の人の安全を確保する移動を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る自律移動装置では、移動手段は、危険度検出手段により検出された当該物体の危険度が低くなるほど基本位置に近くなるように、当該自律移動装置を移動させるのが好ましい。
【0014】
これにより、移動手段は、当該物体の危険度が低くなるほど基本位置に近くなるように、当該自律移動装置を移動させる。このため、自律移動装置は、特定の人にとっての危険度がより低い場合、特定の人にとっての基本位置として設定された相対位置により近い位置で、移動することができる。
【0015】
また、本発明に係る自律移動装置では、周囲環境認識手段は、特定の人の視野域を推定して認識し、移動手段は、周囲環境認識手段により認識された特定の人の視野域と、危険度検出手段により検出された特定の人に対する当該物体の危険度と、に基づいて、当該自律移動装置を移動させるのが好ましい。
【0016】
これにより、移動手段は、特定の人の視野域と特定の人に対する当該物体の危険度とに基づいて、当該自律移動装置を移動させる。このため、自律移動装置は、特定の人の視野域と物体の危険度とを考慮して、特定の人の安全を確保する移動を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る自律移動装置では、移動手段は、危険度検出手段により検出された危険度が所定危険度より高い物体と、特定の人との間に、当該自律移動装置を移動させるのが好ましい。
【0018】
これにより、移動手段は、危険度が所定危険度より高い物体と特定の人との間に、当該自律移動装置を移動させる。このため、自律移動装置は、危険度が所定危険度より高い物体が特定の人と接触することを防止して、特定の人の安全を確保する移動を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る自律移動装置では、周囲環境認識手段は、物体と特定の人とが接触するまでの時間を推定して認識し、危険度検出手段は、周囲環境認識手段により認識された接触するまでの時間に基づいて、危険度を検出するのが好ましい。
【0020】
これにより、危険度検出手段は、周囲環境認識手段により認識された接触するまでの時間に基づいて、危険度を検出する。このため、自律移動装置は、物体と特定の人とが接触するまでの推定された時間を考慮して、特定の人の安全を確保する移動を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特定の人のそばについて自律的に移動しつつ、この特定の人の安全を確保するように移動することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0023】
(1)自律移動装置の構成
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る自律移動装置1の構成について説明する。図1は、自律移動装置1の構成を示すブロック図である。自律移動装置1は、この自律移動装置1を使用する特定の人(以下「主人」という)のそばについて、主人に追従するように、または主人を誘導するように自律的に移動する。また、自律移動装置1は、カメラ10及び通信機12などによって取得される情報から、主人及びその周囲環境を認識するとともに、認識された周囲環境に物体が存在した場合、主人に対するこの物体の危険度を検出する。そして、検出された危険度に基づいて、主人が物体と接触しそうな危険領域に進入するのを防止するように、自律移動装置1が主人のそばで移動する。なお、物体と主人とが接触しそうな危険な状況にあると判断された場合には、例えばスピーカ30から警告音を発したり、バックライト32を点灯させたりして主人やその周囲に注意を喚起しながら、車輪36を駆動してこの物体と主人との間に移動する。
【0024】
カメラ10は、主人やその周囲環境の画像を取得する一対のCCDカメラと、取得した画像を画像処理することによって主人及びその周囲の障害物や道路標識など(即ち周囲環境)を認識する画像処理部とを有している。この画像処理部では、一対のCCDカメラで取得した画像からエッジ抽出やパターン認識処理などによって主人やその周囲の障害物や道路標識などを抽出して認識する。これにより、周囲環境に物体が存在するか否かの認識も可能となる。また、左右の取得画像中における主人などの対象物位置の違いを基にして三角測量方式により対象物との距離及び横変位を求め、前フレームで求めた距離に対する変化量から相対速度を求める。これにより、物体と主人とが接触するまでの時間の推定も可能となる。カメラ10と後述する電子制御装置(以下「ECU」という)20とは通信回線で接続されており、カメラ10により取得された情報は、この通信回線を介してECU20に伝送される。
【0025】
通信機12は、送信機13及び受信機14を含んで構成され、例えば、自律移動装置1の周囲にある他の自律移動装置、車両、及び交差点に設置されている信号機や道路に設置されているカメラ、レーダなどのインフラストラクチャとの間で情報を送受信するものである。送信機13は、例えば、主人の位置・主人の視点の高さ・カメラ10により推定された主人の視野域や視野角・主人の移動方向・移動速度・加速度などの情報を、他の自律移動装置や周辺を走行する車両などに送信する。
【0026】
一方、受信機14は、例えば、主人が携行する加速度センサやジャイロといったセンシング(検出)装置から送信された主人の移動状態に関する情報、他の自律移動装置から送信された他の歩行者の位置・主人の視点の高さ・カメラ10により推定された主人の視野域や視野角・主人の移動方向・移動速度・加速度などの情報、周辺を走行する車両から送信された走行車両の位置・移動方向・移動速度・操作状態などの情報、周辺に停車されている車両から送信された停車車両の位置などの情報、及び、上述したインフラストラクチャから送信された信号機の点灯状態や交通状態などの情報を受信する。なお、通信機12は、例えば半径約100mの範囲で情報の送受信を行うことが可能に設定されている。
【0027】
通信機12とECU20とは、通信回線で接続されることにより、相互に情報の交換が可能となるように構成されている。ECU20で生成された送信情報はこの通信回線を介してECU20から送信機13に伝送される。一方、受信機14によって受信された各種の周囲環境情報は、この通信回線を介してECU20に伝送される。
【0028】
このように、本実施形態では、カメラ10及び通信機12などによって主人及びその周囲の環境が認識される。より詳細には、例えば、主人の位置・主人の視点の高さ・主人の視野域や視野角・主人移動方向・移動速度・加速度、他の歩行者、主人と物体とが接触するまでの推定された時間、自転車や自動車などの位置・形状・移動方向・移動速度・加速度・操作状態、停車車両、電柱や落下物などの障害物の位置・形状、及び、信号機の点灯状態や道路標識などの交通状態などの周囲環境が認識される。また、例えば、物体の種類、質量や重量や材質などに関する属性も認識される。ここで、物体の種類に関する属性としては、例えば、大型車、小型車、二輪車、自転車などの分類が挙げられる。質量や重量に関する属性としては、重いか軽いか、また、材質に関する属性としては、表面が軟らかいか硬いかなどが挙げられる。すなわち、カメラ10及び通信機12は特許請求の範囲に記載の周囲環境認識手段として機能する。
【0029】
ここで、主人であるか否かの認識は、例えば、主人−自律移動装置1間通信の通信情報に主人であることを示す個人ID情報を乗せることにより、または、撮像された人物が着ている衣服の形状や模様が予め学習させておいた主人のものと一致するか否かを判断することにより行うことができる。さらに、指紋や虹彩による認証技術などを組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ECU20は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムなどを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAMなどにより構成されている。そして、上記構成によって、ECU20の内部には、危険位置予測部22、危険度検出部24、平均算出部25、及びアクチュエータ制御部26が構築されている。アクチュエータ制御部26は、スピーカ30、バックライト32、電動モータ34、ディスプレイ44などを駆動する。また、主人は、入力手段としての入力装置42からアクチュエータ制御部26に対して、後述の基本位置を予め入力して設定することができる。
【0031】
まず、危険度検出部24は、カメラ10及び通信機12などが認識した周囲環境に物体が存在したとカメラ10及び通信機12やECU20によって判断された場合に、主人に対するこの物体の危険度を検出する。ここで、物体の危険度とは、カメラ10及び通信機12などによって認識された、主人Bが接触した場合にこの物体によって与えられる危害の大きさを示すものである。物体の危険度は、例えば上記した物体の種類、質量や重量や材質などに関する属性に基づいて、検出される。
【0032】
また、危険位置予測部22は、カメラ10及び通信機12などが認識した周囲環境に物体が存在したとカメラ10及び通信機12やECU20によって判断された場合に、危険位置を予測する。ここで、危険位置とは、この物体と主人とが接触して交通事故などが発生する可能性を有する位置のことである。危険位置は、後述するように、例えば主人と物体との距離と主人に対する物体の相対的な移動速度とから、危険位置予測部22によって予測される。
【0033】
また、平均算出部25は、平均危険位置と平均危険度を算出する。平均危険位置とは、危険位置予測部22により物体ごとに予測された危険位置の平均のことである。また、平均危険度とは、危険度検出部24により物体ごとに検出された当該物体の危険度の平均のことである。平均算出部25による平均危険位置と平均危険度の算出方法については後述する。
【0034】
すなわち、ECU20を構成する危険度検出部24は特許請求の範囲に記載の危険度検出手段として機能する。また、危険位置予測部22は特許請求の範囲に記載の危険位置予測手段として機能する。また、平均算出部25は特許請求の範囲に記載の平均算出手段として機能する。また、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は特許請求の範囲に記載の移動手段として機能する。
【0035】
また、アクチュエータ制御部26は、危険位置予測部22により予測された危険位置に基づいて、また、危険度検出部24により検出された危険度に基づいて、主人が物体と接触しそうな危険領域に進入するのが防止するように、自律移動装置1を移動させる。これにより、危険位置や危険度を考慮して、主人の安全を確保するように自律移動装置1を移動させることができる。更に、アクチュエータ制御部26は、平均算出部25により算出された危険位置の平均と危険度の平均とにも基づいて、自律移動装置1を移動させてもよい。これにより、認識された物体を全て考慮して、主人の安全を確保するように自律移動装置1を移動させることができる。
【0036】
また、アクチュエータ制御部26は、後述するように、基本位置として予め設定された、主人に対する相対位置にも基づいて、自律移動装置1を移動させてもよい。この基本位置の入力は、上述の入力装置42から主人によって予め行われ、この入力された基本位置に関する情報はアクチュエータ制御部26に伝達される。これにより、通常時、自律移動装置1を、基本位置として予め設定された相対位置で移動させることができる。更に、アクチュエータ制御部26は、危険度検出部24により検出された当該物体の危険度が低くなるほど基本位置に近くなるように、自律移動装置1を移動させてもよい。これにより、主人に危険が迫っていない場合は、基本位置として予め設定された相対位置により近い位置で移動させることができる。即ち、主人に危険が迫っていない場合は、主人の好みに応じた相対位置により近い位置で移動させることができる。
【0037】
また、アクチュエータ制御部26は、後述するように、主人の視野域や視野角にも基づいて、自律移動装置1を移動させてもよい。主人の視点域や視野角は、カメラ10などにより推定されて認識される。これにより、自律移動装置1は、例えば主人の視野域外や視野角外で移動することにより、主人が気づかない物体と主人との接触を防止するように移動して、主人の安全を確保することができる。更に、アクチュエータ制御部26は、危険度検出部24により検出された危険度が所定危険度より高い物体と主人との間に、自律移動装置1を移動させてもよい。これにより、物体と主人との接触を防止するように移動して、主人の安全を確保することができる。
【0038】
スピーカ30はECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26から出力される制御信号に応じて、警告音や音声情報などを発することによって主人や周囲に注意を促す。バックライト32もECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26により駆動され、例えば危険度に応じた色の光を発することによって主人や周囲に注意を促す。また、電動モータ34もECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26により駆動され、電動モータ34に取り付けられている車輪36を回転させることによって自律移動装置1を移動させる。さらに、ECU20には、ボタンやタッチパネルといった入力装置42が接続されており、主人が後述の基本位置を入力してECU20に対して設定することができる。
【0039】
(2)自律移動装置の動作の全体的な概要
次に、図2を併せて参照して、主人の安全を確保するように移動する自律移動装置1内部の動作の流れについて説明する。図2は、自律移動装置1において行われる処理手順の流れを示すフローチャートである。図2のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、自律移動装置1の電源がオンされて開始してからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0040】
まず、最初のステップS1では、主人の位置・移動速度・加速度などを含む主人の状況およびその周囲環境が、カメラ10及び通信機12などによって認識される。そしてステップS2に進む。
【0041】
ステップS2では、ステップS1で認識された周囲環境に物体が存在した場合に、危険位置予測部22によって各物体ごとに危険位置が予測され、また、危険度検出部24によって各物体ごとに危険度が算出される。そしてステップS3に進む。
【0042】
ステップS3では、ステップS2で検出された危険位置の平均である平均危険位置と、危険度の平均である平均危険度とが、平均算出部25によって算出される。そしてステップS4に進む。
【0043】
ステップS4では、ステップS3で算出された平均危険位置と平均危険度とに基づいて、主人に対する相対的な移動方向をECU20が決定する。主人に対する相対的な移動方向の決定方法については後述する。そしてステップS5に進む。
【0044】
ステップS5では、ステップS3で算出された平均危険度から、自律移動装置1が主人との間で保つ離間距離をECU20が算出する。この離間距離の算出方法については後述する。そしてステップS6に進む。
【0045】
ステップS6では、ステップS4で算出された移動方向と、ステップS5で算出された主人との離間距離とに基づいて、主人に対する相対位置にアクチュエータ制御部26が自律移動装置1を移動させる。移動方向と距離とに基づく移動については後述する。そしてステップS1に戻る。
【0046】
(3)平均危険位置と平均危険度の算出方法
次に、図3を併せて参照して、平均危険位置と平均危険度の算出方法の一例について説明する。主人Bに対する基本位置に、自律移動装置1が位置している。また、この主人Bの周辺に、例えば3つの物体M1,M2,M3が位置しており、カメラ10及び通信機12などがこれら物体の存在を認識している。物体M1と主人Bとが接触する可能性を有する危険位置、すなわち主人Bからみた物体M1の相対位置P1を、(x,y)と表す。なお、主人が移動する面をxy平面として仮想し、主人から見て真正面の方向をy軸とし、主人から見て真横の方向をx軸としている。同様に、主人Bからみた物体M2の相対位置P2を(x,y)と表し、主人Bからみた物体M3の相対位置P3を(x,y)と表す。また、危険度検出部24によって検出された物体M1,M2,M3のそれぞれの危険度は、D,D,Dである。
【0047】
ここで、自律移動装置1は、平均危険位置Paに平均危険度Daの仮想物体Maが存在すると認識して自律的に移動する。仮想物体は、主人Bの周辺の物体全ての危険位置および危険度が考慮された仮想の物体である。危険度検出部24によって検出される危険度D〜Dの平均危険度Daは数式(1)によって求められる。通常、iに1が代入され、Nに物体の総数(ここでは3)が代入される。また、平均算出部25によって算出される平均危険位置Paを(x,y)と表すとすると、(x,y)は数式(2)によって求められる。更に、ステップS5でECUが離間距離dを算出する際に用いられる、各物体との平均距離Laは数式(3)によって求められる。
【数1】



【数2】



【数3】



【0048】
(4)主人の移動状態を考慮した算出方法
次に、図4を併せて参照して、主人Bの移動状態を考慮した平均危険位置と平均危険度の算出方法の一例について説明する。移動中または停止中の主人Bに対する相対的な基本位置に、自律移動装置1が位置している。また、この主人Bの周辺に、仮想物体Mbが相対的に位置しているとする。仮想物体は、主人Bの周辺の物体(図示せず)全ての危険位置および危険度が考慮された仮想の物体である。主人Bの移動状態の一例として、図4に示す白矢印の方向に移動しているとする。ここで、主人Bの相対的な移動の速度ベクトル(又は加速度ベクトル)をV(加速度ベクトルの場合はA)とする。
【0049】
仮想物体Mbに対する主人Bの相対的な移動状態を考慮した平均危険位置を算出する場合は、速度ベクトルV(又は加速度ベクトルA)を主人Bから見て仮想物体Mb方向に分解した分解成分Cbを用いる。主人Bに対して仮想物体Mbが図4に示す位置関係にあるとき、仮想物体Mb方向の分解成分Cbは物体Mbに近づく方向にある。同様に、主人Bに対して仮想物体Mcが図4に示す位置に相対的に位置する場合、仮想物体Mc方向の分解成分Ccは物体Mcから遠ざかる方向にある。
【0050】
ここで、カメラ10及び通信機12などが、速度ベクトルV(又は加速度ベクトルA)の分解成分Cbを用いて、仮想物体Mbと主人Bとが接触するまでの時間を推定する。例えば、主人Bの速度ベクトルの大きさが一定であれば、この接触するまでの時間は、各物体との平均距離Lbをこの速度ベクトルVの大きさで除した値となる。そして、危険度検出部24は、算出されたこの接触するまでの時間に基づいて、危険度を検出してもよい。例えば、危険度検出部24は、算出されたこの接触するまでの時間が短くなるほど、それに比例して高い危険度を検出するようにしてもよい。
【0051】
(5)主人との間で保つ離間距離の算出方法
次に、図5を併せて参照して、自律移動装置1が主人Bとの間で保つ離間距離dの算出方法について説明する。離間距離dは、平均危険度Daが高くなるほど短くなるように、平均危険度Daの高さによって一意に決定される。即ち、主人Bに対する危険度が高くなるほど、自律移動装置1は主人Bとの間の距離を短くして、主人Bに注意を喚起するとともに主人Bの安全を確保するように移動する。
【0052】
より詳しくは、平均危険度Daが所定の第一平均危険度Dbより低い場合、平均危険度Daが低くなるほど、自律移動装置1は基本位置に近くなるように移動する。また、平均危険度Daが第一平均危険度Dbである場合、離間距離dは、上記の平均距離Laとなる。また、平均危険度Daが、第一平均危険度Dbと第一平均危険度Dbより高い所定の第二平均危険度Dcとの間にある場合、離間距離dは、平均危険度Daが高くなるほど緩やかに短くなっていく。なお、平均危険度Daが第二平均危険度Dcである場合、離間距離dは、カメラ10及び通信機12などによって推定されて認識された主人Bの視野域や視野角に基づいて決まっている。即ち、この場合の離間距離dは、(h1−h2)/tanΘによって求められる。ここで、h1は、主人Bの視点の高さであり、h2は、自律移動装置1の高さである。また、主人Bが真正面方向を向いた場合の視野域のうち、真正面方向から移動面方向への視野域までの視野角をΘとしている。この結果、平均危険度Daが第二平均危険度Dcより低い場合、自律移動装置1は、真正面方向を向いた主人Bの視野域内にある。
【0053】
また、平均危険度Daが、第二平均危険度Dcより高い場合、離間距離dは、平均危険度Daが高くなるほど急激に短くなるとともに、所定の限界接近距離dmin近傍では限界接近距離dminに近づくほど緩やかに短くなっていく。このとき、自律移動装置1は、真正面方向を向いた主人Bの視野域外に位置する。ここで、限界接近距離dminとは、自律移動装置1が主人Bに接近可能な限界の距離のことである。言い換えれば、限界接近距離dminとは、自律移動装置1が主人Bに接近した場合に主人Bの歩行の邪魔にならない距離と邪魔になる距離との境界の距離のことである。なお、限界接近距離dminなどは、主人によって上述の入力装置42から自律移動装置1に予め入力されていてもよく、また、距離の変更は可能としてもよい。
【0054】
(6)主人に対する相対的な移動方向の決定方法
次に、図6および図7を併せて参照して、主人Bに対する自律移動装置1の相対的な移動方向の決定方法の一例について説明する。まず、図6(a)に示すように、移動中または停止中の主人Bに対する基本位置に、自律移動装置1が位置している。また、主人Bの周辺に、例えば3つの物体M3,M4,M5が位置しており、カメラ10及び通信機12などがこれら物体の存在を認識している。また、危険度検出部24によって検出された物体M3,M4,M5それぞれの危険度は全て、D(丸印で表されている)である。危険度Dは比較的低い危険度であるため、自律移動装置1は基本位置の比較的近くに位置している。
【0055】
ここで、図6(b)に示すように、物体M3,M4,M5それぞれの危険度が高くなり、全ての危険度がD(三角印で表されている)となったとする。ここで、物体M3,M4,M5のそれぞれの危険位置が予測される。そして、平均危険位置と平均危険度とが算出される。なお、算出された平均危険度はDであり、これは、図5で示される平均危険度DbとDcとの間の高さである。次に、この平均危険度Dに対応する離間距離dが算出される。そして、平均危険位置と主人Bとの間であるとともに、主人Bとの距離が離間距離dとなる相対位置が算出される。そして、算出された、主人Bに対する相対位置に自律移動装置1が移動する。
【0056】
なお、自律移動装置1が移動する位置は、真正面方向を向いた場合の主人Bの視野域VA内にある。自律移動装置1が主人Bの視野域VA内にあるため、自律移動装置1と主人Bとの間の離間距離dは比較的長い。これにより、主人Bが自分の意志で移動できるエリアを増やすことができる。この結果、主人Bは、自律移動装置1がごく間近に存在することから生じる煩わしさを感じることなく、移動することができる。また、自律移動装置1が主人Bの視野域VA内で移動することにより、危険度が比較的高まっていることを主人Bは認識できる。この結果、より重大な事故に陥る危険性を低くすることができる。
【0057】
そして、図6(c)に示すように、物体M4の危険度のみが更に高くなり、D(星印で表されている)となると、物体M3,M4,M5のそれぞれの危険位置が予測される。そして、平均危険位置と平均危険度とが算出される。なお、算出された平均危険度は、図5で示される第二平均危険度Dcよりも高い危険度である。次に、この平均危険度に対応する離間距離dが算出される。ここで算出された離間距離dは、図6(b)のときよりも短くなっている。そして、平均危険位置と主人Bとの間であるとともに、主人Bとの距離が離間距離dとなる相対位置が算出される。そして、算出された、主人Bに対する相対位置に自律移動装置1が移動する。なお、自律移動装置1が移動する位置は、真正面方向を向いた場合の主人Bの視野域VA外にある。
【0058】
ここで、平均危険度が更に高くなった場合についてより詳細に説明する。まず、仮想物体Maの平均危険度Daが、図5で示される平均危険度DbとDcとの間の高さになったとする。この場合、図7(a)に示すように、自律移動装置1は物体M5と主人Bとの間に移動する。言い換えれば、自律移動装置1は、物体M5と主人Bとを結ぶ線上に移動する。そして、平均危険度Daが、図5で示される第二平均危険度Dcよりも高い危険度になったとする。この場合、図7(b)に示すように、主人Bとの間の離間距離dが短くなるように、自律移動装置1は主人Bに近い距離に相対的に移動する。この結果、主人Bの移動を抑制することになり、接触事故を未然に防ぐことができる。なお、この離間距離dは常に、上記した限界接近距離dminよりも長い。これにより、主人Bの歩行の邪魔にならない程度に接近しつつ、主人Bの移動を抑制することができる。
【0059】
(7)基本位置が取り得る領域
次に、図8および図9を併せて参照して、自律移動装置1に設定された基本位置が取り得る領域の一例を説明する。基本位置が取り得る領域には、図8に示すように、例えば、先行領域A1と、右並走領域A2と、後追領域A3と、左並走領域A4とがある。これらの領域A1〜A4のそれぞれは、主人Bを中心とした移動面上の円を、中心角がほぼ90°である4つの扇形に分割したもののそれぞれに対応している。なお、先行領域A1は主人Bの真正面に位置する領域であり、右並走領域A2は主人Bから見て右側に位置する領域であり、後追領域A3は主人Bから見て真後ろに位置する領域であり、左並走領域A4は主人Bから見て左側に位置する領域である。
【0060】
ここで、自律移動装置1は、物体ごとの危険位置の予測および危険度の検出を行い、上記した方法でこれらの平均を求め、平均危険位置に平均危険度Daの仮想物体Maが存在すると認識して自律的に移動する。このとき、自律移動装置1は、平均危険度Daの高さに応じて、主人Bに対する相対的な移動位置を変更する。例えば、平均危険度Daが所定危険度よりも低い場合は、上記した基本位置を含む領域を超えることなく移動する。なお、右並走領域A2から左並走領域A4に移動するなど左右の並走領域の変更は許容してもよい。
【0061】
より詳しくは、自律移動装置1は、図9(a)に示すように、主人Bの右前方に仮想物体Maの存在を認識した場合、基本位置が含まれている右並走領域A2から他の領域に移動することなく、右並走領域A2内で移動する。また、自律移動装置1は、図9(b)に示すように、主人Bの左後方に仮想物体Maの存在を認識した場合、基本位置が含まれている右並走領域A2から左並走領域A4内の後方側に移動する。更に、自律移動装置1は、図9(c)に示すように、主人Bの左前方に仮想物体Maの存在を認識した場合、基本位置が含まれている右並走領域A2から左並走領域A4の前方側に移動する。また、自律移動装置1は、図9(d)に示すように、主人Bの後方に仮想物体Maの存在を認識した場合、基本位置が含まれている右並走領域A2から左並走領域A4の後方側に移動する。
【0062】
(8)自律移動装置が主人と移動する具体的な様子
次に、図10を併せて参照して、自律移動装置1が主人Bと移動する際の具体的な様子を説明する。まず、図10(a)に示すように、歩行中の主人Bの進行方向の先に走行中の自動車Cが存在する場合、自律移動装置1は、自動車Cの危険度を検出して、常に主人Bの前方を移動するとともに、自動車Cに近づくほど移動速度を減速して主人Bに相対的に近づく。これにより、主人Bの歩行速度を減速させて速度の調節をすることが可能となる。結果的に、主人Bに注意を喚起するとともに、主人Bと自動車Cとの衝突などの交通事故を未然に回避することができる。
【0063】
また、図10(b)に示すように、歩行中の主人Bが、歩道から、自動車Dが走行中の車道に飛び出そうとする場合、自律移動装置1は、自動車Dの危険度を検出して、自動車Dと主人Bとの間に割り込みながら移動する。結果的に、主人Bと装置1とが接触してでも、主人Bの車道への飛び出しを防止することができる。ここでは、自動車Dが車道を走行中であったため、主人Bと自動車Dとの衝突などの交通事故を未然に回避することもできる。なお、このとき、自律移動装置1は、例えばスピーカ30から警告音を発したり、バックライト32を点灯させたりして、主人やその周囲に注意を喚起しながら移動してもよい。
【0064】
また、図10(c)に示すように、歩行中の主人Bの進行方向前方から主人Bに向かって走行する自転車などの移動障害物Eが存在する場合、自律移動装置1は、移動障害物Eの危険度を検出して、主人Bと移動障害物Eとを結ぶ線上で移動障害物Eに向かって移動する。これにより、移動障害物Eに進路の変更を促すことができる。なお、自律移動装置1は、移動障害物Eと接触してでも、主人Bと移動障害物Eとの接触や衝突などの交通事故を未然に防止しながら、主人Bを誘導することができる。
【0065】
また、図10(d)に示すように、自律移動装置1は、歩行中の主人Bの脇の車道で走行中の自動車Fを含む移動物体の危険度を検出して、歩行中の主人Bとこの車道との間に常に相対的に位置するように移動する。即ち、自律移動装置1は、主人Bから見て車道側などの危険度が検出された側を移動する。結果的に、主人Bが、自動車Fが走行中の車道にはみ出してしまうのを防止することができる。更に、車道を主人Bが無謀に横断しようとするのも防ぐことができる。ここでは、自動車Fが車道を走行中であったため、主人Bと自動車Fとの衝突を回避することもできる。
【0066】
(9)本実施形態による作用効果
自律移動装置1によれば、図6(b)に示すように、主人Bのそばについて自律的に移動しつつ、カメラ10及び通信機12などが認識した周囲環境に物体M4が存在した場合に、主人Bに対する物体M4の危険度を危険度検出部24が検出し、この危険度に基づいて、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34が自律移動装置1を移動させる。
【0067】
これにより、自律移動装置1は、主人Bのそばについて自律的に移動するとともに、主人Bに対する物体M4の危険度を検出してこの危険度に基づいて移動する。物体の危険度とは、主人Bが接触した場合にこの物体によって与えられる危害の大きさを示すものである。自律移動装置1は、この危険度を考慮して、主人Bの物理的な安全を確保する移動を行うため、交通事故などを未然に防ぐことができる。なお、ディスプレイを用いた警告メッセージの表示のみや、スピーカを用いた警告音の鳴動のみの注意喚起の場合では主人Bは気づかないこともあるが、装置1が危険度に基づいて移動することにより、主人Bが危険なエリアに進入することを物理的に防止できるため、効果的である。
【0068】
また、カメラ10及び通信機12が認識した周囲環境に物体M4が存在した場合に、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は、危険位置予測部22が予測した危険位置に基づいて、自律移動装置1を移動させる。この危険位置とは、交通事故などが発生する可能性があるエリアのことである。自律移動装置1は、この危険位置を考慮して、主人Bが危険エリアに進入することを防ぐように移動し、主人Bの安全をより確実に確保する。このため、交通事故などをより確実に未然に防ぐことができる。
【0069】
また、危険位置予測部22が予測した平均危険位置と、危険度検出部24が検出した物体の平均危険度とに基づいて、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は自律移動装置1を移動させる。このため、自律移動装置1は、主人Bの周辺の全ての物体の平均危険位置と平均危険度とを考慮して、主人Bの安全を確保する移動を行うことができるため、装置1一台で主人Bの安全を確保することが可能となる。
【0070】
また、入力装置42を用いて基本位置として予め入力設定された主人Bに対する相対位置に基づいて、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は自律移動装置1を移動させる。このため、自律移動装置1は、主人によって予め設定された相対位置を基本位置としながら、主人Bのそばについて自立的に移動する。これにより、自律移動装置1は、主人Bが望む相対的なエリアに位置して利便性を向上させながら、主人Bの安全を確保する移動を行うことができる。
【0071】
また、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は、物体の危険度が低くなるほど基本位置に近くなるように、自律移動装置1を移動させる。このため、自律移動装置1は、主人Bにとっての危険度がより低い場合、主人Bにとっての基本位置として設定された相対位置により近い位置で、移動することができる。これにより、主人Bにとっての危険度が比較的低い状況にある場合、ディスプレイ44を用いた警告メッセージの表示のみや、スピーカ30を用いた警告音の鳴動のみや、ハプティック(触覚)装置(図示せず)を用いた警告のみによって主人Bに警告すれば、主人Bの安全を確保できる。また、自律移動装置1は基本位置で移動するため、主人Bは、比較的自由な移動を行うことができ、快適性や利便性といったメリットを享受することができる。
【0072】
同様に、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は、物体の危険度が高くなるほど基本位置から動き得る距離が長くなるように、自律移動装置1を移動させる。このため、自律移動装置1は、主人Bにとっての危険度がより高い場合、主人Bにとっての基本位置として設定された相対位置から遠ざかった位置で、移動することもできる。
【0073】
また、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は、図5に示すように、主人Bの視野域や視野角Θと主人Bに対する物体の危険度、例えば平均危険度Daとに基づいて、自律移動装置1を移動させる。このため、自律移動装置1は、主人Bの視野域や視野角Θと物体の危険度、例えば平均危険度Daとを考慮して、主人Bの安全を確保する移動を行うことができる。より詳しくは、平均危険度Daが第一平均危険度Dbと第二平均危険度Dcとの間にある場合、自律移動装置1は主人Bから所定距離以上離れて移動するが、平均危険度Daが第二平均危険度Dcより高い場合、自律移動装置1は主人Bから所定距離未満で近づきながら移動する。
【0074】
また、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は、図6(b)に示すように、平均危険度Daが第一平均危険度Dbと第二平均危険度Dcとの間にある場合、平均危険度Daの仮想物体と主人Bとの間に、自律移動装置1を移動させる。言い換えれば、自律移動装置1は、仮想物体と主人Bとを結ぶ線上に移動する。このため、自律移動装置1は、主人Bの周辺の物体が主人Bと接触することを防止して、主人Bの安全を確保することができる。また、自律移動装置1は、主人Bと周辺の物体とが接触する可能性の高い上記の位置に事前に移動しておくことで、自律移動装置1がこの位置に移動するのが間に合わず接触事故が発生してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0075】
また、危険度検出部24は、カメラ10及び通信機12により認識された、主人Bと物体が接触するまでの時間に基づいて、危険度を検出する。このため、自律移動装置1は、物体と主人Bとが接触するまでの推定された時間を考慮して、主人Bの安全を確保することができる。例えば、物体と主人Bとが接触するまでの推定された時間が短くなるほど、それに比例して高い危険度を検出してもよい。この結果、主人Bの進行方向に存在する危険エリアにおける危険度の重みをより高くすることができるため、接触事故が短時間で発生しそうな状況でも接触などの交通事故をより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態に係る自律移動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】自律移動装置において行われる処理手順の流れを示すフローチャートである。
【図3】平均危険位置と平均危険度の算出方法を説明する説明図である。
【図4】主人の移動状態を考慮した平均危険位置と平均危険度の算出方法を説明する説明図である。
【図5】自律移動装置が主人との間で保つ離間距離の算出方法を説明する説明図である。
【図6】主人に対する自律移動装置の相対的な移動方向の決定方法を説明する説明図である。
【図7】主人に対する自律移動装置の相対的な移動方向の決定方法を説明する説明図である。
【図8】自律移動装置に設定された基本位置が取り得る領域を説明する説明図である。
【図9】自律移動装置の移動を説明する説明図である。
【図10】自律移動装置が主人と移動する具体的な様子を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1…自律移動装置、10…カメラ、12…通信機、20…ECU、22…危険位置予測部、24…危険度検出部、25…平均算出部、26…アクチュエータ制御部、30…スピーカ、32…バックライト、34…電動モータ、36…車輪、42…入力装置、44…ディスプレイ、A…加速度ベクトル、A1〜A4…領域、B…主人、C,D,F…自動車、Cb,Cc…分解成分、d…離間距離、dmin…限界接近距離、E…移動障害物、La,Lb…平均距離、M1〜M5…物体、Ma〜Mc…仮想物体、V…速度ベクトル、VA…視野域、Θ…視野角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、
前記特定の人、及びその周囲の環境を認識する周囲環境認識手段と、
前記周囲環境認識手段により認識された周囲環境に物体が存在した場合に、前記特定の人に対する当該物体の危険度を検出する危険度検出手段と、
前記危険度検出手段により検出された危険度に基づいて、当該自律移動装置を移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
前記周囲環境認識手段により認識された周囲環境に物体が存在した場合に、当該物体と前記特定の人とが接触する可能性を有する危険位置を予測する危険位置予測手段を備え、
前記移動手段は、前記危険位置予測手段により予測された前記危険位置に基づいて、当該自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記危険位置予測手段により予測された前記危険位置の平均と、前記危険度検出手段により検出された当該物体の危険度の平均と、を算出する平均算出手段を備え、
前記移動手段は、前記平均算出手段により算出された前記危険位置の平均と前記危険度の平均とに基づいて、当該自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項2に記載の自律移動装置。
【請求項4】
前記移動手段は、基本位置として予め設定された前記特定の人に対する相対位置に基づいて、当該自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記危険度検出手段により検出された当該物体の危険度が低くなるほど前記基本位置に近くなるように、当該自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項4に記載の自律移動装置。
【請求項6】
前記周囲環境認識手段は、前記特定の人の視野域を推定して認識し、
前記移動手段は、前記周囲環境認識手段により認識された前記特定の人の視野域と、前記危険度検出手段により検出された前記特定の人に対する当該物体の危険度と、に基づいて、当該自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記危険度検出手段により検出された危険度が所定危険度より高い物体と、前記特定の人との間に、当該自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項8】
前記周囲環境認識手段は、前記物体と前記特定の人とが接触するまでの時間を推定して認識し、
前記危険度検出手段は、前記周囲環境認識手段により認識された前記接触するまでの時間に基づいて、前記危険度を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自律移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−307658(P2008−307658A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159444(P2007−159444)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】