説明

荷電粒子線装置

【課題】試料の所望の領域の所望の層を短時間で一括加工し、荷電粒子線による検査、解析、微細加工等を実現する荷電粒子線装置を提供する。数百ミクロン以上の所望領域を高速に一括加工可能な機能が従来の荷電粒子線装置には無かった。
【解決手段】荷電粒子線装置内にプラズマのガス供給源とプラズマ電源に繋がった電極を所望領域近傍に設置できる構成とし、局所的なプラズマ加工と荷電粒子線による検査、解析、微細加工等の複合機能を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス等の検査、解析を行う荷電粒子線装置や解析用試料作製を行う荷電粒子線装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
微細化が進む半導体デバイスの検査、解析に対するニーズが高まっている。その中でも不良原因を特定するための不良解析においては、解析できる形態に所望の位置を正確に加工することが必須技術となっている。すなわち、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下SEM)で断面を観察するためには所望位置を断面にして正確に穴加工を行う必要があり、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、以下TEM)で解析する場合には所望位置を含む0.1μm程度の厚さの薄膜を形成する必要がある。これらの加工に近年有効に利用されているのが、集束イオンビーム(Focused Ion Beam、以下FIB)加工装置である。FIBとは一般的にガリウムの陽イオンを加速し、サブミクロン以下に集束したビームを用いて、所望位置を正確に加工できるものである。このFIBはサブミクロン以下の正確な加工は可能であるが、そのためには加工するデバイスの加工目標が正確に認識できる必要がある。例えば、他の検査装置において不良位置のウェーハ座標が特定したとしても、最近のデバイスの微細化に伴い0.1μmレベルで位置決めする必要がある。しかし現実的には試料ステージ等の駆動誤差を考えるとウェーハ座標のみによる位置決めは大変困難である。このため、実際の位置決めはFIBのイオンビーム走査による二次電子像(Scanning Ion Microscope、以下SIM)を利用して、ウェーハ表面のデバイスパターンを認識することにより行われている。しかし、ウェーハ表面に必ず目標位置を決めるためのパターンが観察できるとは限らない。この場合、認識できるパターンが存在する層まで上層材料を除去する手法が取られる。FIBは上記の通り物理スパッタによる加工が可能であるから、目標位置の近傍領域を走査して上層材料を除去することで所望パターンを露出させることができる。
【0003】
また従来のFIB加工よりも加工速度を速くするために、化学的反応を利用したFIBアシストエッチング法が例えば[特許文献1]に示されている。ここでFIBアシストエッチング法とは試料表面に対してエッチング用アシストガスを供給し、エッチングガスが表面に吸着したところにFIBを照射することにより、FIB照射位置のみが化学反応を起こし、従来のFIB加工に比べ高速な加工が行えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2619435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のFIB加工において、微細加工に適する集束条件を有するイオンビーム光学系においては、大電流ビームを形成することはレンズ形状制限等から困難である。従って従来のFIB加工で使用できるビーム電流は大きくても一般的には数10nA程度である。ここで半導体の代表的なデバイスであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)の加工時間を例に取ると、200μm四方の領域を20nAのFIBで0.5μmの深さ加工する場合には約1時間もの加工時間を要する。
【0006】
そこでFIBアシストエッチング法によるFIBアシストエッチングを行えば増速加工が可能であるが、それでも一般的には1桁程度の増速に過ぎない。また、さらに広い面積を加工する場合には面積の増加に比例して加工時間が増加する。このようにFIBは微細なビーム走査による加工であるため、微細な加工には大変有効ではあるが、大面積の一括加工にはあまり適さない。
【0007】
また特定材料の層を除去する場合に、化学的反応を用いるFIBアシストエッチングは有効ではあるが、実際には30kV程度で加速されたガリウムイオンが表面に照射されるため、物理スパッタによる影響は避けられない。すなわち、例えば除去したい上層の材料に反応するアシストガスが、露出させたい(残したい)層の材料と化学的反応をしない場合でも、物理スパッタにより露出させたい層も加工ダメージを受けることとなる。
【0008】
このため、これらの問題点を解決し、所望の面積を短時間で一括加工し、所望の層のみ除去可能な加工機能が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの課題を解決する手段として、本発明では、試料を載置する試料台と、前記試料台を少なくとも格納する容器と前記試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線光学系と、荷電粒子アシストエッチングガスまたは荷電粒子アシストデポジションガス、及びプラズマ用のエッチングガスの供給を切り替えるガス種の切替手段と、前記切替手段により切り替えられたガス種を前記試料の表面に供給するガス種共通のガス供給源と、前記ガスをプラズマ化する電圧を前記試料台と前記ガス供給源の間に印加可能な電源とを有し、前記ガス供給源が、荷電粒子線照射時のガス圧よりも前記プラズマによるエッチング時のガス圧を高く切り替えるガス圧切替え機能を有することによって試料の局所的一括加工を可能にする技術を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料の加工領域以外においてイオンビーム照射により生じる損傷が少なく、かつ広い面積の化学的な一括加工を実現できる。このため短時間での不良解析が実現でき、半導体プロセスでの歩留向上にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による荷電粒子線装置の構成例を示す図
【図2】ガス供給源先端の詳細を示す図
【図3】ガス供給装置のプラズマ電源への接続例を示す図
【図4】閉じ込め型の先端容器構成を示す図
【図5】上面コイルを有する誘導結合型プラズマ用先端容器の構成を示す図
【図6】側面コイルを有する誘導結合型プラズマ用先端容器の構成を示す図
【図7】プラズマ電極マニピュレータ駆動型の荷電粒子線装置の構成例を示す図
【図8】本発明によるデバイス解析例を示す図
【図9】本発明による走査電子顕微鏡を用いた加工装置の構成例を示す図
【図10】電子線照射に適したガス供給源先端の詳細を示す図
【図11】ガスカートリッジを備えたガス供給源の構成例を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
荷電粒子加工装置にプラズマによる局所的一括加工を実現可能な機能を複合した具体的実施例について以下説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施例では本発明による実際の荷電粒子線装置の構成について説明する。図1は集束イオンビームにプラズマ加工機能を共有する試料加工装置の構成を示す。尚、本実施例では集束イオンビームを用いて説明するが、投射型イオンビームを用いても良い。試料加工装置は、半導体ウェーハ101等の試料基板を載置する可動の試料台102と、ウェーハ101の観察、加工位置を特定するため試料台102の位置を制御する試料位置制御装置103と、ウェーハ101にイオンビーム104を照射して加工を行うイオンビーム光学系105と、ウェーハ101からの2次電子を検出する二次電子検出器106を有する。イオンビーム光学系105はイオンビーム光学系制御装置107により、二次電子検出器106は二次電子検出器制御装置108により制御される。イオンビームアシストエッチングやイオンビームアシストデポジションのために使用するガスを供給するガス供給源109はガス供給源制御装置110により、ガス供給位置、ヒータ温度、バルブ開閉等が制御される。イオンビーム光学系制御装置107、二次電子検出器制御装置108、ガス供給源制御装置110、試料位置制御装置103等は、中央処理装置111により制御される。試料台102、イオンビーム光学系105、二次電子検出器106、ガス供給源109等は真空容器112内に配置される。ここでは試料としてウェーハの場合であり、ウェーハごと観察できることは、観察所望位置のアドレス管理の容易さ、また検査装置からそのまま移送できる点で有利である。ただし、試料はウェーハと限る必要は無く、チップ試料でも良く、試料室や試料台を小さく簡易に形成できる構成としてもよい。この場合は装置コストの面で低価格で製造できることから有利である。上記が主なFIB装置の構成であるが、本実施例では一括加工をするための局所プラズマ発生機能を以下の構成で実現する。すなわち、ガス供給源109はFIBのアシストガスのみならずプラズマ加工用のガスを供給することができる。これは複数のガス源114等を切り替えるガス切替え装置113を有し、このガス切替え装置113はガス供給源制御装置110により制御される。また、このガス切替え装置113は供給するガスの圧力の制御機能も有することができ、プラズマ用とアシストガス用で圧力を切り替えることが可能である。プラズマ加工とアシストガスによるイオンビーム加工にそれぞれ適したガスを選択する可能とすることにより、所望とする加工形状等に応じて最適な加工条件を選択することが可能となる。ここで図1ではボンベ形状のガス供給源109で説明したが、加工する試料の材料により、同じプラズマ用ガスでも多種に亘って選択を必要とする場合には、図11に示すようにガスカートリッジ1101のような着脱自在な形態とすることが有効である。これによりカートリッジ固定具1102に所望のガスの入ったガスカートリッジ1101を接続することで多種の材料に対応可能となる。FIBのアシストエッチング用のガスカートリッジ1103、FIBのアシストデポジション用のガスカートリッジ1104を用意することで、より多様な加工が可能となる。
【0014】
ここでは、プラズマ用ガスとFIBアシスト加工用ガスが異なる場合で切替機能を説明したが、これらのガスが同一の場合もあり、この場合は切替機能が無くても本発明を実現できる。また例えば、ガス源114をガス供給源109の内部に組み込むことも可能である。ここで、プラズマを発生するための電力供給として、ガス供給源109の先端と試料台102の間に電圧を印加する電源115が接続され、プラズマ電圧制御装置116により制御される。このプラズマ電圧制御装置116も中央処理装置111により制御される。プラズマの発生状態は、光学窓117を介して確認することができる。また、光学窓以外にも、真空容器112の内部にCCD素子等を配置することにより、プラズマ発生状態を確認することも可能である。
【0015】
図2にプラズマが発生するガス供給源109先端とウェーハの加工領域の拡大図を示す。ガス供給源109の先端201はノズル状になっており、ガス源114等から供給されるガスがウェーハの試料表面202(1部分を示す)に対してガス203として吹きつけられる構造となっている。また、先端201はチャンバ本体と電気的に絶縁する絶縁構造204を介して構成されることで、電圧印加が可能となっている。絶縁構造204は、例えば碍子や絶縁性樹脂等で構成され、ガス供給用の穴を有する筒状の形状をしている。電圧印加は導線205を介して電源115に接続されている。ここで導線205は例えば同軸ケーブル等である。ここで、導線205に電圧を供給する電源115の回路例を図3に示す。図3では回路の説明を行うため、真空容器112、ガス切替え装置113等は図示上省略しているが実際は存在する。導線205は電流導入端子等を介して電源115に接続される。電源115のもう一方はやはり電流導入端子等を介して試料ステージ102に接続され、試料101に繋がる。本例の場合はウェーハ101側 (試料ステージ102側)を接地とし、印加電圧として高周波電源301を用いており、キャパシタ302を介してガス供給源の先端201に印加される。高周波電源301は例えば13.56MHzの高周波を印加する。キャパシタ302は直流電流阻止の役割を有している。ここで高周波電源301はインピーダンスマッチング機能も有している。ノズル状の先端201からガスを供給しながらこの回路を用いて高周波電圧をイオン化することにより、ノズルの先端201と試料表面202の間にプラズマを発生させることができる。このガスはノズル先端201とそれが吹き付けられる試料表面202の間のみガス圧が高く、この例では数10Pa以上のガス圧としている。これにより平均自由行程から数mm程度のプラズマを発生することができる。即ちこの例の場合は、数mmの領域のみをプラズマ加工することができる。また、このようにウェーハ101を接地電極側とすることで試料表面202側のプラズマからのイオン加速電圧が小さくなるため、イオンの運動量による加工の影響がより小さい化学的エッチングを実現することができる。このため、例えば試料表面のSiO2等の除去には、CF4等のフッ素を含むようなガスを用いることでより選択的な加工を実現することができる。こうすることで、目的とする材質の層だけ除去することが可能となる。
【0016】
逆に試料ステージ102側からキャパシタを介して高周波電源に接続し、ガス供給源109のノズルの先端201側を接地電位とする構成とすることも可能であり、この場合は試料表面202側の自己バイアス電圧を強めることが可能となり、イオンの運動量を利用したスパッタを有効に使うことができるため、材質依存性が比較的少ない異方性エッチングが可能となる。これは、さまざまな構造が入り組んでいるデバイスを比較的均一に加工する場合に有効となる。この場合、化学的反応を抑制するためにはアルゴン等の希ガスをガスとして使用することで、より物理的なスパッタが可能となる。
【0017】
以上は、プラズマ発生に高周波電源を用いる例を説明した。試料が半導体や絶縁体の場合には試料自身が電極とはならないため上記のとおり高周波が必要である。ただし、試料が導体の場合には試料自体を電極としての働きをすることが可能であるため、必ずしも高周波電源が必須というわけではなく、直流や低周波等でのプラズマ発生も可能である。
【0018】
次に図4に閉じ込め型の先端形状を持つガス供給源を用いた例を示す。図4(a)に示すガス供給源401の先端容器402は、箱型の形状をしており試料表面202に対して開放されている。この開放端(図4(a)では下側)を試料表面202に接近させることで、高い圧力でガスを閉じ込めることができる。実際には試料表面202には触れていないので、試料表面を通じてガスは流れ出るが、持続的にガスを供給することでガス圧を高く保つことができる。また、穴403が空いており、この穴を通してイオンビーム104を試料に照射することができる。これによりイオンビームアシストデポジションやアシストエッチングを行うことが可能となる。この構造の詳細を説明するために断面の構造を図4(b)に示す。ガス供給源401の本体は穴406を介して先端容器402にガス経路として繋がっており、ガス407が供給される。この406が接続されている側壁405は絶縁物で構成されている。一方、先端容器402の上面は電極408となっており、導線404から高周波電圧が印加される。このような構成とすることで、プラズマを電極408と試料表面202の間に発生させることができ、試料表面202をプラズマ加工することができる。またガス407をイオンビームアシストエッチング用のXeF2等やイオンビームアシストデポジション用のW(CO)6等とし、イオンビームを穴403から照射することで、イオンビームアシストエッチングやイオンビームアシストデポジションを実現することができる。図4では側壁405が絶縁物と説明したがイオンビーム装置としては絶縁物がイオンビーム照射位置近くにあると帯電によるビームの影響が問題となる場合があるため、導電膜でのコートをすることも可能である。ただし、この場合は電極408や試料表面202に対して電位的に分離されていることが必須である。また、電極408はイオンビーム照射時には接地電位にする方がイオンビームに影響が出ないため良い。この場合、図2の開放型と異なりガス圧を上げることが容易となり、より微細な領域でプラズマを発生することが可能となる。また、内部容器402が閉じ込め型のためプラズマ加工領域を制限することが可能となり、より所望の領域のみを加工することが可能となる。このようにガス供給源の試料表面に対向した断面をデバイス構造に併せた形状とすることで、デバイス構造に適した領域形状の高速加工が実現できる。また、ガス流路先端の開口部と試料台とが略平行であることが加工精度を向上させるためには望ましい。但し、ここでデバイス構造が一般的に矩形であることから矩形の閉じ込め容器の場合を説明したが、矩形の他にも断面が円形や楕円形等でもプラズマ発生は可能であり、同様の効果が得られる。
【0019】
本実施例に記載の荷電粒子線装置を用いることで、プラズマにより局所的一括加工とイオンビームによる微細加工の両方を実現することが可能となる。
【0020】
本実施例ではプラズマによる一括可能と集束イオンビームによる微細加工の複合加工が可能な装置例を説明したが、荷電粒子線が集束イオンビームに限らず、プロジェクションイオンビームでも同様の効果が得られる。即ち、プロジェクションイオンビームは集束イオンビームと比較すると比較的広い面積の一括加工に適してはいるが、それでもプラズマの一括加工ほどの加工速度は得られないためである。また、荷電粒子線を電子ビームとしても充分な効果がある。即ち、電子ビームによる検査、分析時にも上層除去の要請があり、この場合にプラズマによる局所領域の一括加工は有効である。また、イオンビームほどの加工速度はないが、電子ビームの場合もアシストガスを利用した電子ビームアシストエッチングや電子ビームアシストデポジションも利用されるが、これは図1のイオンビームを電子ビームに置き換えた構成で実現することができる。
【0021】
以上のように、荷電粒子線機能と局所的プラズマ加工の複合装置により、検査、分析、加工等が短時間で実現可能となる。また、荷電粒子線を集束イオンビームまたは投射型イオンビームとすることでプラズマによる一括加工とイオンビームによる微細加工を複合することも可能となる。さらに、荷電粒子線照射時のガス圧よりも高周波電圧印加時のガス圧を高く切り替えることが可能なガス圧切替機能を有することで、プラズマ加工とイオンビーム加工にそれぞれ適したガス圧のガスを供給することを可能となる。
【実施例2】
【0022】
本実施例では誘導結合型プラズマを用いた荷電粒子線装置の構成について説明する。
【0023】
実施例1ではプラズマ電源にキャパシタを使用した容量結合型プラズマの発生を基本に説明したが、図5はそれとは異なり誘導結合型プラズマ発生のための装置構成である。ガス供給源501の先端以外の構成は、ほぼ図1と同じであるが、先端形状が実施例1の場合と異なる。先端容器502は図4と似た閉じ込め型の構成を持つが電極は無く、コイル503を先端容器502の上面に有する。ここでは図示の関係上、1巻きで記載しているが、通常は複数巻きの形態を有する。この平面型コイル503は導線504を介して高周波電源に接続される。ここでは、図3の回路とは異なりキャパシタは不要である。ただし、インピーダンスマッチング機能は必要である。また、図4の場合と同様に穴505が先端容器503の上面にあり、この先端容器502を通してイオンビームを試料表面202に照射することが可能であり、イオンビームアシストエッチングやイオンビームアシストデポジションを行うことができる。
【0024】
図5(b)は断面図である。ガス供給源501から供給されるガス506は穴507を介して先端容器502内に供給される。先端容器502はガラス等の絶縁体で構成されている。ただし、コイル503や導線504と電気的に分離されていれば、先端容器502の外側は金属膜を形成することも可能である。この場合は帯電によるイオンビームへの影響を抑制することが可能となる。
【0025】
上記と同じく誘導結合型プラズマの構成としては図6に示す円筒型の先端容器601でも良い。ここでは図6(a)に示すとおりコイル602は先端容器601の外側に巻きつけられた構成を例としている。図6(b)は断面図である。
【0026】
ここで、図5、図6は矩形の先端容器として説明したが、断面が円形等(即ち円筒形等)でも局所的プラズマ加工は実現可能である。
【0027】
このように誘導型プラズマとすることにより、電極をプラズマと接触させる必要が無いため、電極がプラズマによりスパッタされることがなく、汚染とならないというメリットを持つ。また、比較的高密度のプラズマを広い圧力範囲で発生させることが可能となる。
【実施例3】
【0028】
本実施例では、プラズマを発生させるための電極を試料と独立に駆動できる荷電粒子線装置の構成について説明する。
【0029】
図7に装置構成を示す。図1と重なる部分については説明を省略する。マニピュレータ701は先端に電極702を有し、試料台102と独立に電極702を駆動し、所望の位置に移動させることができる。このマニピュレータはマニピュレータ制御装置703に接続されている。また、電極702はプラズマを発生させるための電源704と接続されており、この電源704はプラズマ電圧制御装置705により制御される。マニピュレータ制御装置703、プラズマ電圧制御装置705はその他のイオンビーム光学系等とともに中央処理装置111で制御される。
【0030】
この構成の場合は、ガス供給源706からのガスの供給と、電極702へのプラズマ電圧印加を全く独立に制御することができる。このため、図2に示したようなガス供給源への電気的回路の接続や絶縁構造202の形成等は不要であり、シンプルな構成が実現できる。すなわち、本実施例の場合は、まずガス供給源706からプラズマに使用するガスをウェーハ101の試料表面に供給し、一括加工を所望する位置の上空に電極702を移動し、プラズマ電圧を印加することで電極702とウェーハ101の間にプラズマを発生させ、プラズマ一括加工を実現する。イオンビームで加工する領域は数10μm以下が一般的であるから、プラズマによる加工領域は数mmあれば充分である。また、一般的には1つのチップのサイズは5cm以下であるから、チップサイズ以下の領域の加工を行えばよい。すなわち電極のサイズをチップサイズ以下として加工をすればよい。例えば本実施例で用いている電極702のサイズは1cm四方である。また、ウェーハ101表面と電極702の間の距離は約1cmとしている。これによりほぼ1cm四方の領域を一括加工することができる。もちろん、電極702を更に小さくし、ウェーハ101表面に電極を近づけ、更に局所的な加工もできるが、この場合はプラズマを生成するためにガス圧を上げる必要がある。ここでは、四角の電極の例を説明したが、円形等でも良い。図7の構成の場合は、イオンビームアシストエッチングやイオンビームアシストデポジションをする場合には、電極702をイオンビーム光軸から退避し、切替え装置113により供給ガスをイオンビームアシストエッチングガスやイオンビームアシストデポジションガスに切替え、イオンビームを照射することで実現できる。更にマニピュレータ701の電極702をプローブ(図示せず)に取り替えれば、イオンビーム加工による微小試料摘出にも利用することが可能となる。
【0031】
以上のように、ガス供給源と電極を別構成とすることで、より自在な条件でプラズマを形成することができる。また、チップサイズ以下の微小電極をマニピュレータにより可動に保持し、試料台と微小電極の間に高周波電圧を印加することにより、ガスのノズル形状に依存しない多様な電極形状を使用することが可能となり、プラズマの発生が容易となる。
【実施例4】
【0032】
本実施例では、実際に局所的なプラズマ加工とイオンビーム加工を用いたデバイスの解析例を説明する。
【0033】
図8にデバイス解析のための加工手順を説明する。使用する装置は、図1の構成に図4の先端容器を有するものを例とする。(a)まず、ガス供給源制御装置110によりガス供給源109を駆動し、先端容器402を試料表面202の解析する目標位置を含む領域の上空に移動する。次にガス切替え装置113によりプラズマ加工のためのガスを有するガス源114を選択し、プラズマ加工のためのガス407を先端容器402に流す。実際はガス407は先端容器402内にあるため見えないが、ここでは分かりやすくするために内部のガスを図示している。ここでは試料表面202の除去したい層がSiO2の場合を例としており、ガスはCF4等を例とする。ここに、プラズマ電位を電極に印加することでプラズマが先端容器402内で発生する。このプラズマにより表面のSiO2が除去される。加工終了は一般的には時間管理を行う。すなわちデバイスとして除去すべき膜の厚さが判明している場合は加工速度から見積もることができる。特に上層膜と残すべき下層膜の材質が違う場合には上層膜のみに反応するガスをプラズマ加工に用いることで、上層を正確に除去することができる。上層の除去材料と同じ材料が下層に存在する場合は、時間で管理し下層のパターンをイオンビーム照射によるSIM像観察により確認するか、スパッタされた下層材料を分析で検出することにより下層への到達を確認することができる。上層除去加工ができたらプラズマ電圧印加を止め、ガスの供給を止め、ガス供給源109の先端容器402を退避する。(b)プラズマ加工により除去された領域801の下に下層パターンを見ることができる。ここでは図の中で分かりやすくするためにパターン802を大きく図示しているが、一般的には除去した領域のサイズが数mm〜1cm程度に対して、パターンはサブミクロン程度であることが多い。ただし、このパターンの集合体は数百ミクロン程度のサイズである。解析目標位置の指定は、このパターンの集合体の端から数えて何個目という指定をされることが多く、このため少なくともこの集合体の端までが露出するように加工することが望まれる。こうして露出したパターンをSIM像取得等によるパターンカウント等により解析目標パターン802を同定する。またデバイスのCADデータ等とSIM像を比較することにより目標位置の位置合わせを行うことも可能である。(c)次に同定したパターンが分かるようにイオンビーム104によるスパッタ加工を用いてその領域にマーク803をマーキングする。(d)次に解析する部分の表面保護のためにデポジション膜を形成する。まず、ガス供給源制御装置110によりガス供給源109を駆動し、先端容器402を試料表面202の解析する目標位置を含む領域の上空に移動する。次にガス切替え装置113によりイオンビームアシストデポジションのためのガスを有するガス源を選択し、イオンビームアシストデポジションガス804を先端容器402に流す。ここで使用するガスは例えばW(CO)6等である。ここに、穴403を通してイオンビーム104を照射する。加工時間は形成したい膜厚により時間で管理するのが一般的である。形成が終了したらイオンビーム104の照射をやめてガス804の供給を止め、ガス供給源109の先端容器402を退避する。(e)以上の工程で保護膜、この場合はタングステン膜805を解析部の上部に形成することができる。(f)最後にイオンビーム104を用いて解析所望位置を1辺とする穴806をスパッタ加工し、所望断面807を形成することにより断面観察が可能となる。断面観察はもっとも容易な形態では試料台102を傾斜し、イオンビーム照射によるSIM像を取得することで可能となる。また、電子ビーム光学系も有する装置構成であればSEM観察も可能となる。また、試料を取り出して他のSEM等での解析も可能となる。更に断面形成後にもう一度(a)のようにプラズマ加工で材質依存の加工を行うことにより、断面構造による凹凸を形成することが可能となり、より構造を見やすくすることが可能となる。さらにイオンビーム加工では断面にダメージ層が形成されるが、(a)のようなプラズマ加工を断面に施すことでダメージ層を減らすことができる。これは断面加工のみならず、TEM用の薄膜加工時にも適用できる。特にTEM試料加工の場合は、実施例3に記載したようにプローブにより微小試料摘出した試料、またはプローブにより微小試料ホルダに載せ変えた摘出試料を先端容器402に挿入してプラズマによるダメージ除去加工をすることも可能になる。この場合は先端容器402は下を向いている必要は無く、横向きでも良い。
【0034】
本実施例によればプラズマ加工とイオンビームによる微細加工を組合わせることが可能となり、短時間でのデバイス解析が実現できる。
【実施例5】
【0035】
本実施例では走査電子顕微鏡による加工装置の構成について説明する。図9は走査電子顕微鏡にプラズマ加工機能を有する装置の構成を示す。本装置は、半導体ウェーハ901等の試料基板を載置する可動の試料台902と、ウェーハ901の観察、加工位置を特定するため試料台902の位置を制御する試料位置制御装置903と、ウェーハ901に電子ビーム904を照射する電子ビーム光学系905と、ウェーハ901からの2次電子を検出する二次電子検出器906を有する。電子ビーム光学系905は電子ビーム光学系制御装置907により、二次電子検出器906は二次電子検出器制御装置908により制御される。プラズマ加工や電子ビームアシストエッチングや電子ビームアシストデポジションのために使用するガスを供給するガス供給源109はガス供給源制御装置910により、その位置、ヒータ温度、バルブ開閉等を制御される。電子ビーム光学系制御装置907、二次電子検出器制御装置908、ガス供給源制御装置910、試料位置制御装置903等は、中央処理装置911により制御される。試料台902、電子ビーム光学系905、二次電子検出器906、ガス供給源909等は真空容器912内に配置される。ただし、試料はウェーハと限る必要は無く、チップ試料でも良い。
【0036】
ここで、本装置も用いた加工・観察方法について説明する。すなわち除去したい上層がある場合、プラズマに使用するガスをガス源114から選択し、ガス供給源109からウェーハ901表面に供給する。ガス供給源の先端構造は例えば図10に示すような形態である。すなわち先端容器1001に電子ビームを通すための穴1002が空いている。図10(b)は断面構造である。こうして先端容器1001内にガスを供給した状態で、電子ビーム904を穴1002を通して照射する。ここでは、通常の走査電子顕微鏡観察の場合よりも電子ビームの電流が多い条件になるように電子ビーム光学系制御装置907で設定している。これにより電子ビームが照射された位置のガス粒子と衝突することによりプラズマを生成する。こうして生成したプラズマによりウェーハ901の表面を加工することができる。この場合は電子ビームが通過する領域に限定してプラズマが発生するためより局所的な加工が可能となる。また、ウェーハを先端容器1001に対してバイアスを掛けることで、プラズマ内のイオンの加速を制御することが可能となり、より自在なプラズマ加工を実現することができる。こうして上層を除去したウェーハの下層デバイス構造を走査電子顕微鏡として観察することができる。より精密な観察をしたい場合にはビーム電流を小さくしてより絞った電子ビームで観察することができる。また、上述したようにガスをプラズマ化するための電子線照射と二次電子像観察のための電子線照射で照射条件を切り替えることでより局所的なプラズマ加工も実現することができる。
【0037】
本実施例によれば電子ビーム照射領域に限定した局所的なプラズマ加工と走査電子顕微鏡観察による解析を組合わせることが可能となり、短時間でのデバイス解析が実現できる。
【0038】
本発明は半導体プロセスの検査、解析に効果を発揮するため、半導体製造メーカでの歩留向上のために利用でき、コスト削減等に大きく寄与できると考える。
【符号の説明】
【0039】
101…ウェーハ、102…試料台、103…試料位置制御装置、104…イオンビーム、105…イオンビーム光学系、106…二次電子検出器、107…イオンビーム光学系制御装置、108…二次電子検出器制御装置、109…ガス供給装置、110…ガス供給源制御装置、111…中央処理装置、112…真空容器、113…ガス切替え装置、114…ガス源、115…電源、116…プラズマ電圧制御装置、117…光学窓201…先端、202…試料表面、203…ガス、204…絶縁構造、205…導線301…高周波電源、302…キャパシタ401…ガス供給源、402…先端容器、403…穴、404…導線、405…側壁、406…穴、407…ガス、408…電極501…ガス供給源、502…先端容器、503…コイル、504…導線、505…穴、506…ガス、507…穴、601…先端容器、602…コイル、701…マニピュレータ、702…電極、703…マニピュレータ制御装置、704…電源、705…プラズマ電圧制御装置、706…ガス供給源、801…領域、802…パターン、803…マーク、804…ガス、805…タングステン膜、806…穴、807…断面、901…ウェーハ、902…試料台、903…試料位置制御装置、904…電子ビーム、905…電子ビーム光学系、906…二次電子検出器、907…電子ビーム光学系制御装置、908…二次電子検出器制御装置、909…ガス供給装置、910…ガス供給源制御装置、911…中央処理装置、912…真空容器、913…ガス切替え装置、914…ガス源、1001…先端容器、1002…穴、1101…ガスカートリッジ、1102…カートリッジ固定具、1102、1103…ガスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する試料台と、
前記試料台を少なくとも格納する容器と
前記試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線光学系と、
荷電粒子アシストエッチングガスまたは荷電粒子アシストデポジションガス、及びプラズマ用のエッチングガスの供給を切り替えるガス種の切替手段と、
前記切替手段により切り替えられたガス種を前記試料の表面に供給するガス種共通のガス供給源と、
前記ガスをプラズマ化する電圧を前記試料台と前記ガス供給源の間に印加可能な電源とを有し、
前記ガス供給源が、荷電粒子線照射時のガス圧よりも前記プラズマによるエッチング時のガス圧を高く切り替えるガス圧切替え機能を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記電源は前記試料台と前記ガス供給源の間に高周波電圧を印加することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷電粒子線装置において、
前記ガス供給源がキャパシタを介して前記電源に接続されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記ガス供給源におけるガス流路の先端部は前記試料の表面に対向して配置されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記ガス供給源は前記先端部の試料表面と対向した面に開口部を有する内部容器を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子線装置において、
前記内部容器の試料表面に対向する面の断面形状が矩形形状であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
試料を載置する可動の試料台と、
前記試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線光学系と、
荷電粒子アシストエッチングガスまたは荷電粒子アシストデポジションガス、及びプラズマ用のエッチングガスの供給を切り替えるガス種の切替手段と、
ガス流路の先端部が前記試料の表面に対向し、該対向した面が開口となる内部容器を有し、前記切替手段により切り替えられたガス種を前記試料の表面に供給するガス種共通のガス供給源と、
前記内部容器の外部に形成された誘導コイルに高周波電圧を印加する電源と、前記試料台を格納する真空容器とを有し、
前記ガス供給源が、荷電粒子線照射時のガス圧よりも前記プラズマによるエッチング時のガス圧を高く切り替えるガス圧切替え機能を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1から8のいずれかに記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線が、集束イオンビームまたは投射型イオンビームであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項8に記載の荷電粒子線装置において、前記集束イオンビームはガリウムイオンビームであることを特徴とする荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−243997(P2011−243997A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158554(P2011−158554)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【分割の表示】特願2005−303834(P2005−303834)の分割
【原出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】