説明

薄膜形成方法及び多層構造体の製造方法

【課題】例えば、スパッタリング法を用いて薄膜を形成する際の生産性を向上させる。
【解決手段】形成すべき一方の薄膜が、Al/Nd薄膜である場合には、出力パワーは、5.0〜30.0W/cm□に設定され、チャンバ内の圧力は、0.1〜1.0Paに設定される(スパッタ条件A)。続く、スパッタ条件A下で薄膜を形成する際、Arガスのプラズマ及びAlイオンが第1ターゲット部材(91)及び第2ターゲット部材(92)の両方に衝突し、Al原子及びNd原子の夫々がターゲット(3)から叩き出され、基板に付着する。これにより、基板にAl/Nd合金からなる薄膜が形成される。一方、形成すべき一方の薄膜が、Al薄膜である場合には、出力パワーは、2.0〜5.0W/cm□に設定され、チャンバ内の圧力は、1.0〜2.0Paに設定される(スパッタ条件B)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スパッタリング法を用いた薄膜形成方法、及びそのような薄膜形成方法を応用して形成され、且つ互いに異なる組成を有する複数の配線層を含む半導体装置等の多層構造体を製造可能な多層構造体の製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング法は、スパッタ現象を利用して半導体ウェハ、ガラス基板などの被成膜対象である基板に薄膜を形成可能な薄膜形成方法である。スパッタリング法によって薄膜を形成可能なスパッタ装置によれば、スパッタリング法を実行する際に、真空中にAr等の不活性原子の放電用ガスを導入し、電極に電圧を加えるとグロー放電が起こる。このとき、プラズマ中のArイオンが陰極のターゲットに衝突してターゲット原子を叩き出す(スパッタする)。スパッタされた原子は、陽極側に置かれたウェハ等の基板上に沈着し、薄膜を形成する。スパッタ装置によれば、ターゲット材料を選ぶことであらゆる材料の成膜が可能であり、例えば、大型液晶ディスプレイ装置の製造プロセスにおいて、ITO等の透明導電材料で構成される画素電極を形成することが可能である。特許文献1によれば、合金としての組成比が容易にコントロール可能なスパッタリング用のターゲットが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−269940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、合金からなる薄膜と、当該合金を構成する単体の金属からなる薄膜との夫々をスパッタリング法を用いて形成する場合、これら薄膜に応じたターゲットを用いなければならない。より具体的には、例えば、当該合金からなるターゲットを用いてスパッタリングを実行することによって合金からなる薄膜を形成し、その後、ターゲットを取り換え、或いは別のスパッタ装置を用いて、単体の金属からなる薄膜を形成することになる。即ち、一種類のターゲットを用いて形成できる薄膜は、一種類である。したがって、基板上に相互に異なる組成の薄膜を形成する際には、ターゲットを取り換えて、或いは別のスパッタ装置でこれら薄膜を形成することになり、薄膜を形成する際の生産性を高めることが困難になる製造プロセス上の問題点がある。加えて、半導体装置では、基板上に相互に異なる組成を有する配線層が複数形成されるため、半導体装置における配線層の積層構造が複雑化するほど生産性を向上させることが困難となり、半導体装置の生産コストを増大させてしまう問題点もある。
【0005】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、スパッタリング法を用いて薄膜を形成する際の生産性を向上させることが可能な薄膜形成方法、及びそのような薄膜形成方法を応用した、半導体装置等の多層構造体を製造するための多層構造体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薄膜形成方法は上記課題を解決するために、第1ターゲット材料からなる第1ターゲット部材と、該第1ターゲット部材の表面より窪んだ段差部を構成し、前記第1ターゲット材料より大きい質量数を有する第2ターゲット材料からなる第2ターゲット部材とを備えたターゲットをスパッタリング法に用いた薄膜形成方法であって、前記第1ターゲット材料及び前記第2ターゲット材料の一方からなる第1薄膜と、前記第1ターゲット材料及び前記第2ターゲット材料からなる第2薄膜とのうち形成すべき一方の薄膜に対応した圧力及び出力パワーの条件を選択する第1工程と、該選択された条件下で前記スパッタリング法を実行することによって、前記一方の薄膜を形成する第2工程とを備え、
前記一方の薄膜が第2薄膜である場合、前記出力パワーは、前記第1薄膜を形成する際の出力パワーより高い出力パワーであり、前記圧力は、前記第1薄膜を形成する際の圧力より低い圧力である。
【0007】
本発明に係る薄膜形成方法によれば、形成すべき薄膜を構成する原子を供給するターゲットは、互いに異なる質量数を有する2種類のターゲット材料から構成されている。加えて、ターゲットは、相対的に質量数の大きい原子で構成された第2ターゲット材料からなる第2ターゲット部材の表面が、第1ターゲット部材の表面より窪んだ構造である段差部を有する点に構造上の特徴がある。後述するように、ターゲット材料の質量数の相違及び段差部の存在に加え、圧力及び出力パワーの条件を便宜設定することによって、一枚のターゲットで相互に異なる薄膜を同一のスパッタ装置内に形成し分けることが可能になる。
【0008】
第1工程では、前記第1ターゲット材料及び前記第2ターゲット材料の一方からなる第1薄膜と、前記第1ターゲット材料及び前記第2ターゲット材料からなる第2薄膜とのうち形成すべき一方の薄膜に対応した圧力及び出力パワーの条件を選択する。より具体的には、例えば、第1ターゲット材料がAl(アルミニウム)で構成され、第2ターゲット材料がAlより質量数の大きい原子であるNd(ネオジム)で構成されている場合、形成すべき一方の薄膜は、Al薄膜或いはAl/Nd合金薄膜である。ここで、圧力とは、スパッタリングを実行する際の、薄膜の形成先である基板及びターゲットが収容されチャンバ内の圧力をいう。出力パワーとは、薄膜の形成先である基板及びカソードユニット間に印加される電圧と、当該基板及びカソードユニット間において当該電圧に応じて流れる電流、即ち、プラズマ及びターゲットから叩き出されたイオンの流れとによって規定された電力をいう。第1工程では、例えば、スパッタ装置の動作時にスパッタリングを制御する制御装置の制御下で、形成すべき一方の薄膜に応じて圧力及び出力パワーが選択される。
【0009】
第2工程では、該選択された圧力及び出力パワーの条件下で前記スパッタリング法を実行することによって、前記一方の薄膜を形成する。
【0010】
本発明に係る薄膜形成方法によれば、前記一方の薄膜が第2薄膜である場合、前記出力パワーは、前記第1薄膜を形成する際の出力パワーより高い出力パワーであり、前記圧力は、前記第1薄膜を形成する際の圧力より低い圧力である。より具体的は、例えば、形成すべき薄膜が、Al/Nd合金薄膜である場合、相対的に質量数がNdより小さいAlからなるAl薄膜を形成する場合に比べて、出力パワーは相対的に高い出力パワーに設定され、前記圧力は、相対的に低い圧力に設定される。逆に言えば、形成すべき一方の薄膜が、Al/Nd薄膜の一部を構成する原子であるNdより質量数が小さいAlから構成されるAl薄膜である場合、Al/Nd薄膜等の第2薄膜を形成する場合に比べて、出力パワーが相対的に低く設定され、圧力は高く設定される。尚、第1ターゲット材料が、例えば、Cu(銅)、或いはAg(銀)である場合には、第2ターゲット材料は、Cu或いはAgより質量数が大きいTi(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Y(イットリウム)であってもよい。
【0011】
このように、本発明に係る薄膜形成方法によれば、ターゲットの段差部の存在を前提にして、形成すべき一方の薄膜に応じて、圧力及び出力パワーの条件を選択し、且つ当該設定された条件下でスパッタリングを実行することによって、同一のスパッタ装置及び同一のターゲットを用いて、相互に異なる種類の組成を有する第1薄膜及び第2薄膜を形成し分けることが可能である。したがって、本発明に係る薄膜形成方法によれば、形成すべき薄膜毎にターゲットを入れ換えることなく、一枚のターゲットで複数の種類の薄膜を形成可能であるため、薄膜形成プロセスにおける生産性を向上させることが可能である。
【0012】
本発明に係る薄膜形成方法によれば、前記第2ターゲット部材は、平面視で縦横に直交する所定の幅を有する直線状に前記第1ターゲット部材の中に配置されることを特徴とする。これにより、通常のターゲット部材に対し、複雑な作成方法を用いることなくターゲット部材が実現可能なため、生産性を落とすことなく薄膜を形成することが可能となる。
【0013】
本発明に係る薄膜形成方法によれば、前記第2ターゲット部材の前記直交する箇所は所定の大きさで前記第1のターゲット部材に重なっていることを特徴とする。これにより、均一に第2薄膜を形成することが可能になる。
【0014】
本発明に係る薄膜形成方法によれば、前記第2ターゲット部材は、所定の直径を有する円状に前記第1ターゲット部材の中に配置されていることを特徴とする。これにより、均一に第2薄膜を形成することが可能になる。
【0015】
本発明に係る多層構造体の製造方法は上記課題を解決するために、上述の薄膜形成方法を用いて、前記第1薄膜及び前記第2薄膜を同一チャンバ内で順次形成する。
【0016】
本発明に係る多層構造体の製造方法によれば、一枚のターゲットを用いて相互に同じチャンバ内で第1薄膜及び第2薄膜を順次形成できるため、例えば、これら薄膜で構成された配線を含む多層構造を備えた半導体装置等の多層構造体の生産性を向上させることが可能である。加えて、例えば、Al薄膜より酸化され難いAl/Nd薄膜でAl薄膜を保護するように多層構造を形成することよって、半導体装置等の多層構造体における配線の耐熱性を高めることが可能である。加えて、半導体装置等の多層構造体の生産コストを低減できる利点もある。
【0017】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る薄膜形成方法及び多層構造体の製造方法の各実施形態を説明する。尚、本実施形態では、薄膜形成方法の実施形態として、マグネトロンスパッタ装置を用いたスパッタリング法を例に挙げるが、本発明に係る薄膜形成方法は、マグネトロンスパッタ方式以外の他のスパッタリング方式を採用するスパッタ装置についても適用可能である。
【0019】
<1:薄膜形成方法>
先ず、図1乃至図7を参照しながら、本発明に係る薄膜形成方法の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係る薄膜形成方法を実行するために用いられるスパッタ装置1の概略構成を示した構成図である。図2は、ターゲットの構成を示した平面図であり、図3は図2のIII−III´断面図である。
【0020】
図1において、スパッタ装置1は、チャンバ2、カソードユニット5、ターゲット3、及びクライオポンプ14を備えて構成されている。
【0021】
カソードユニット5は、薄膜8が成膜されるべき被成膜対象物である基板9に向かい合うようにチャンバ内2に配置されている。カソードユニット5は、その内部にマグネットを備えている。即ち、スパッタ装置1によれば、その動作時に、言い換えれば、薄膜を形成するためにスパッタ装置1が動作状態にある際に、制御装置100の制御下で駆動される電源200によってカソードユニット5及び基板9間に電圧を印加し、磁力線に沿って電子を螺旋状に運動させることによって、電子の周囲にArガスのプラズマを発生させることが可能である。
【0022】
ターゲット3は、カソードユニット5における基板9に臨む側の面において、相互に離して配置されている。より具体的には、ターゲット3は、カソードユニット5における基板9に臨む側に配置された裏板6の表面、即ち、裏板6の基板9に臨む側の面に配置されている。スパッタ装置1の動作時、即ち、薄膜8を形成する際には、基板9に向かってターゲット3の夫々から原子が叩き出される。これら原子は、マスク7の開口部を介して、基板9の表面に所定のパターン形状にパターニングされた状態で成膜される。
【0023】
排気経路部11の途中には、バルブ13が設けられている。チャンバ2内のArガスは、スパッタ装置1がスタンバイ状態にある際、制御装置100の制御下で駆動されるクライオポンプ14の動作に応じて排気経路部11を介しても排出される。
【0024】
ここで、図2及び図3を参照しながら、ターゲット3の構成を説明する。
【0025】
図2に示すように、ターゲット3は、本発明の「第1ターゲット材料」の一例であるAlで構成された第1ターゲット部材91と、本発明の「第2ターゲット材料」の一例であるNdで構成された第2ターゲット部材92とから構成されている。
【0026】
第2ターゲット部材92の夫々は、平面的に見て矩形状であり、図中X方向に沿って延びている。第2ターゲット部材92の夫々は、幅Wは1.0mm以内で、且つその間隔Dは2.0cm以内であるほうが好ましい。加えて、第2ターゲット部材92の夫々は、ターゲット3内で平面的に見て均一に配置されており、例えば、第2ターゲット部材91の長軸が相互に交差する交差領域Cは、その直径φが5.0mmになるように第2ターゲット部材91相互を隔てている。
【0027】
図3に示すように、第2ターゲット部材92の表面は、第1ターゲット部材91の表面より窪んでおり、各表面の高さの違いに応じて段差部93が形成されている。段差部93によれば、スパッタリングが実行された際に、Arガスのプラズマ、或いはターゲット3から叩き出されたイオンが、第1ターゲット部材91及び第2ターゲット部材92の夫々に衝突する角度等の衝突条件が部材相互で異なる。このような衝突条件の違い及び後述するスパッタ条件の違いに応じて、一枚のターゲット3を用いてAl薄膜及びAl/Nd合金薄膜を選択的に形成することが可能である。
【0028】
次に、図4乃至図6を参照しながら、本実施形態に係る薄膜形成方法を説明する。図4は、本実施形態に係る薄膜形成方法の主要な工程を順に示したフローチャートである。図5は、相互に異なるスパッタ条件で叩き出される原子を概念的に示した概念図である。図6は、多層構造を有する薄膜8の断面構造を図式的に示した図式的断面図である。
【0029】
図4に示すように、形成すべき薄膜に応じて、スパッタ条件を選択する(ステップS1)。より具体的には、図5に示すように、形成すべき一方の薄膜が、本発明の「第2薄膜」の一例であるAl/Nd薄膜である場合には、出力パワーは、5.0〜30.0W/cm□に設定され、チャンバ2内の圧力は、0.1〜1.0Paに設定される(図5(a)のスパッタ条件A)。続く、薄膜形成工程(ステップS2)がスパッタ条件A下で実行された場合、Arガスのプラズマ及びAlイオンが第1ターゲット部材91及び第2ターゲット部材92の両方に衝突し、Al原子及びNd原子の夫々がターゲット3から叩き出され、基板9に付着する。これにより、基板8にAl/Nd合金からなる薄膜8が形成される。
【0030】
一方、形成すべき一方の薄膜が、本発明の「第1薄膜」の一例であるAl薄膜である場合には、ステップS1において、出力パワーは、2.0〜5.0W/cm□に設定され、チャンバ2内の圧力は、1.0〜2.0Paに設定される(図5(b)のスパッタ条件B)。続くステップS2における薄膜形成がスパッタ条件B下で実行された場合、Arガスのプラズマ及びAlイオンが第1ターゲット部材91にのみ衝突し、Al原子がターゲット3から叩き出され、基板9に付着する。これにより、基板8にAlからなる薄膜8が形成される。
【0031】
即ち、本実施形態に係る薄膜形成方法によれば、Alより質量数が大きいNdを含むAl/Nd薄膜を形成する際には、Al薄膜を形成する場合に比べて、相対的に出力パワーを大きく設定し、且つ圧力を低く設定した条件下でスパッタリングが実行される。逆に言えば、形成すべき一方の薄膜が、Al/Nd薄膜の一部を構成する原子であるNdより質量数が小さいAlから構成されるAl薄膜である場合、Al/Nd薄膜等の第2薄膜を形成する場合に比べて、出力パワーが相対的に低く設定され、圧力が高く設定される。
【0032】
このように、本実施形態に係る薄膜形成方法によれば、ターゲット3の段差部93の存在を前提にして、形成すべき一方の薄膜に応じて、圧力及び出力パワーの条件を選択し、且つ当該設定されたスパッタ条件下でスパッタリングを実行することによって、同一のスパッタ装置1及び同一のターゲット3を用いて、相互に異なる種類の組成を有するAl薄膜及びAl/Nd合金薄膜を形成し分けることが可能である。したがって、本実施形態に係る薄膜形成方法によれば、形成すべき薄膜毎にターゲット3を入れ換えることなく、一枚のターゲット3で複数の種類の薄膜を形成可能であるため、薄膜形成プロセスにおける生産性を向上させることが可能である。
【0033】
尚、第1ターゲット材料が、例えば、Cu(銅)、或いはAg(銀)である場合には、第2ターゲット材料は、Cu或いはAgより質量数が大きいTi(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Y(イットリウム)であってもよい。
【0034】
次に、図6を参照しながら、同一のスパッタ装置1によって、Al薄膜及びAl/Nd薄膜を順次成膜することによって形成された多層構造を有する薄膜8を説明する。
【0035】
図6に示すように、薄膜8は、上述の薄膜形成方法を応用して、順次スパッタ条件を変更することによって、相互に同一のターゲット3を用いて同一のスパッタ装置1によって基板9上に形成されたAl/Nd薄膜8a、Al薄膜8b及びAl/Nd薄膜8aから構成されている。このような薄膜8は、Al薄膜8bの部分の存在によって電気抵抗が低減され、且つその両側に形成されたAl/Nd薄膜8bによって耐熱性が高められている。
このような多層構造を有する薄膜8をディスプレイ等の半導体装置に応用することによって、当該装置の電気的特性を向上させることが可能であると共に、製造プロセスにおける配線の劣化を低減でき、当該装置の信頼性の向上及び製造時の歩留まりの低下を抑制できる利点がある。
【0036】
次に、図7(a)及び(b)を参照しながら、本実施形態に係る薄膜形成方法に用いることが可能なターゲットの変形例を説明する。図7は、ターゲット3の変形例であるターゲット13の平面図である。
【0037】
図7(a)に示すように、ターゲット13は、第1ターゲット部材91aと、所定の直径を有する円状に前記第1ターゲット部材の中に配置されている前記第2ターゲット部材92aとを有している。より具体的には、ターゲット13は、Al等で構成された第1ターゲット部材91aと、平面的に見て各々が点状に形成され、且つNd等で構成された複数の第2ターゲット部材92aとを備えて構成されており、ターゲット3と同様に、第1ターゲット部材91a及び第2ターゲット部材92aの夫々の高さの違い応じて形成された段差部を有している。第2ターゲット部材92aは、平面的に見た場合の直径φが1.0mm以内である。複数の第2ターゲット部材92a相互の間隔Dは2.0cmであるほうが好ましい。
【0038】
このようなターゲット13を用いて上述の薄膜形成方法を実行した場合でも、ターゲット3を用いた場合と同様に、Al薄膜及びAl/Nd合金薄膜を形成し分けることが可能である。
【0039】
次に、図7(b)に示すように、第2ターゲット部材92bは、平面視で図中X方向及びY方向に直交する所定の幅を有する直線状に第1ターゲット部材91bの中に配置されていてもよい。これにより、通常のターゲット部材に対し、複雑な作成方法を用いることなく第1ターゲット部材91b及び第2ターゲット部材92bを形成可能である。したがって、生産性を落とすことなく薄膜を形成することが可能となる。加えて、図中X方向及びY方向に延びる第2ターゲット部材92bのうちX方向及びy方向に延びる部分が相互に重なる部分、即ち相互に直交する箇所は、所定の大きさであればよい。これにより、均一に第2薄膜を形成することが可能になる。
【0040】
このようにターゲット13は、図2に示す交差領域Cが設けられていなくてもよい。より具体的には、例えば、第2ターゲット部材92bが第1ターゲット部材91bに重なり、第1ターゲット部材91bに埋め込まれていてもよい。このような第1ターゲット部材91b及び第2ターゲット部材92bの配置関係によれば、ターゲット13を作成するのがより簡単になる。尚、このような配置においても、第1ターゲット部材91b及び第2ターゲット部材92bの夫々の表面の位置の違いに応じた段差部は確保されている。
【0041】
<2:多層構造体の製造方法>
次に、図8乃至図13を参照しながら、本実施形態に係る多層構造体の製造方法を説明する。以下では、多層構造体の一例として液晶装置を例に挙げる。図8は、本実施形態に係る液晶装置の平面図である。図9は、図8のIX−IX´断面図である。図10は、液晶装置の画像表示領域における回路図である。図11は、画素部の構成を詳細に示した平面図である。図12は、図11のXII−XII´断面図である。図13は、液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示したフローチャートである。
【0042】
図8及び図9を参照しながら、液晶装置500の具体的構成を説明する。
【0043】
図8及び図9において、液晶装置500では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素が配置された画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0044】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。したがって、液晶装置500は、例えば、ヘッドアップディスプレイのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
【0045】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられていてもよい。
【0046】
画像表示領域10aの周辺に広がる周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。この一辺に沿ったシール領域よりも内側に、サンプリング回路17が額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。
【0047】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これら上下導通端子106により、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。TFTアレイ基板10上には、外部回接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
【0048】
図9において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、図示しない配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に図示しない配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0049】
尚、図8及び図9に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等が形成されていてもよい。
【0050】
次に、図10を参照して、液晶装置500の回路構成及び動作について説明する。
【0051】
図10において、液晶装置500の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素には夫々、画素電極9aと当該画素電極9aに印加される電圧をスイッチング制御するための画素スイッチング用素子であるTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給されても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給されてもよい。
【0052】
TFT30のゲートにゲート電極3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線11a及びゲート電極3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように液晶装置500は構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。
【0053】
液晶に画素電極9aを介して書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板20に形成された対向電極21との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置500からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0054】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に保持容量70が付加されている。保持容量70は、走査線11aに並んで設けられ、固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量電極300を含んでいる。
【0055】
次に、図11乃至図12を参照しながら、液晶装置500における画素部の具体的な構成を詳細に説明する。図11は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図12は、図11のXII−XII´断面図である。尚、図11及び図12においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0056】
図11において、液晶装置500のTFTアレイ基板10上には、X方向及びY方向に対してマトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a´により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。
【0057】
半導体層1aのうち図11中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a´に対向するように走査線3aが配置されている。このように、走査線3aとデータ線6aとが交差する個所の夫々には画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0058】
データ線6aは、その上面が平坦化された第2層間絶縁膜42を下地として形成された下地膜42aa上に形成されており、コンタクトホール81を介してTFT30の高濃度ソース領域に接続されている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又は、Al単体から構成されたAl層と、Al/Nd合金層或いはTiN層等との多層膜からなる。データ線6aは、TFT30を遮光する機能を有している。尚、本実施形態では、上述の薄膜形成方法を、多層構造を有するデータ線6aを形成する形成方法に応用可能である。
【0059】
蓄積容量70は、高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての下部容量電極71と、固定電位側容量電極としての上部容量電極300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0060】
図11及び図12に示すように、上部容量電極300は、例えば金属又は合金を含む上側遮光膜(内蔵遮光膜)としてTFT30の上側に設けられている。上部容量電極300は、固定電位側容量電極としても機能する。上部容量電極300は、例えば、Al層と、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、等の金属のうちの少なくとも一つとAlとの合金薄膜からなる多層構造を有ししている。即ち、上部容量電極300を形成する工程においても、データ線6aと同様に、上述の薄膜形成方法を用いることが可能である。
【0061】
下部容量電極71は、例えば導電性のポリシリコン膜や、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pd、Al等の金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなり画素電位側容量電極として機能する。下部容量電極71を形成する工程にも、データ線6a、及び上部容量電極300と同様に、上述の薄膜形成方法を用いることが可能である。
【0062】
下部容量電極71は、画素電位側容量電極としての機能の他、上側遮光膜としての上部容量電極300とTFT30との間に配置される、光吸収層或いは上側遮光膜の他の例としての機能を持ち、更に、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能を持つ。
【0063】
容量電極としての下部容量電極71と上部容量電極300との間に配置される誘電体膜75は、例えばHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。
【0064】
上部容量電極300は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延びており、定電位源と電気的に接続されて固定電位とされる。
【0065】
TFT30の下側には、下地絶縁膜12が形成さされている。下側遮光膜11aは、TFTアレイ基板10上に形成された、下地絶縁膜120に形成されている。下側遮光膜11aは、下地絶縁膜12及び120間に平面的に見て格子状に設けられており、TFTアレイ基板10側から装置内に入射する戻り光からTFT30のチャネル領域1a´及びその周辺を遮光する。下側遮光膜11aは、上部容量電極300と同様に、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pd、Al等の金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。
【0066】
下地絶縁層12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。画素電極9aは、下部容量電極71を中継することにより、コンタクトホール83及び85を介して半導体層1aのうち高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続されている。
【0067】
下地絶縁膜12は、下地絶縁膜120がSiO2、或いはガラス等の絶縁膜で構成されている場合、これら絶縁膜より熱伝導率が高いSiNからなる熱伝導膜12aと、絶縁膜12bとを有している。熱伝導膜12aによれば、下地絶縁膜12上に形成されるTFT30に半導体層1aを形成するためにレーザ照射等の結晶化手段を用いてポリシリコン等の半導体膜を結晶化する際に、レーザ照射によって発生した熱を熱伝導膜12aを介して逃がすことができる。加えて、熱勾配を緩和できる。したがって、下側遮光膜11a及び下地絶縁膜120の界面に作用する熱応力を低減することができ、これら膜に生じる膜はがれ等の不具合を低減することが可能である。下側遮光膜11a、及び熱伝導膜12aを備えた下地絶縁膜12によれば、膜はがれが低減された信頼性の高い液晶装置を提供できる。
【0068】
図11及び図12に示すように、液晶装置500は、透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。
【0069】
TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。例えば、画素電極9aはITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電性膜からなり、配向膜16は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
【0070】
対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性膜からなる。配向膜22は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
【0071】
対向基板20には、格子状又はストライプ状の遮光膜を設けるようにしてもよい。このような構成を採ることで、上部容量電極300として設けられた上側遮光膜と併せ、TFTアレイ基板10側からの入射光のチャネル領域1a´ないしその周辺への侵入を阻止するのをより確実に阻止することができる。
【0072】
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。
【0073】
図11において、画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、ゲート電極3a2、走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a´、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2a、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1c、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eは、半導体層1aの不純物領域を構成しており、チャネル領域1a´の両側にミラー対称に形成されている。
【0074】
ゲート電極3a2は、ポリシリコン膜等の導電膜や、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pd、Al等の金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等によって形成されており、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに重ならないように絶縁膜2を介してチャネル領域1a´上に設けられている。したがって、TFT30では、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eとゲート電極3a2とのオフセットが十分に確保されている。
【0075】
尚、ゲート電極3a2の縁は、平面的に見て低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cとチャネル領域1a´との境界に重なっており、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cと、ゲート電極3a2との間に生じる寄生容量が低減されている。これにより、TFT30トランジスタの高速動作が可能となり、液晶装置500の表示性能が高められている。
【0076】
加えて、液晶装置500では、ゲート電極3a2上にTFT30を覆うように形成された上部容量電極300によって、ゲート電極3a2のみによって遮光する場合に比べて効果的に低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを遮光できる。
【0077】
このように、液晶装置500によれば、光リーク電流が低減されたTFT30を用いて、フリッカ等の画像表示を行う際に発生する不具合を低減でき、高品位で画像を表示できる。加えて、TFT30は、LDD構造を有しているため、TFT30の非動作時において低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに流れるオフ電流が低減され、且つTFT30の動作時に流れるオン電流の低下が抑制されている。よって、液晶装置500によれば、LDD構造の利点及び光リーク電流が殆ど流れないことを利用して高品位で画像を表示できる。
【0078】
下側遮光膜11a上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール81及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール83が各々開孔された第1層間絶縁膜41が形成されている。第1層間絶縁膜41上には下部容量電極71及び上部容量電極300が形成されており、これらの上には、コンタクトホール81及び85が各々開孔された第2層間絶縁膜42が形成されている。
【0079】
本実施形態における第2層間絶縁膜42は、例えばアクリル樹脂膜からなり、加熱による流動化状態を経ることによって上面が平坦化されている。即ち、その成膜時の上面には、下層側の蓄積容量70やTFT30、走査線3a、更には下地遮光膜11aの存在によって段差が生じているが、一旦流動化されることで、上面は段差による凹凸が均された状態となっている。尚、上部容量電極300が、Al薄膜及びAl/ND合金薄膜を含む多層構造を有している場合には、下地絶縁膜42を流動化させる際の熱によって、上部容量電極300のAl薄膜部分が劣化することを低減できる。
【0080】
更に、データ線6aの上から第2層間絶縁膜42の全面を覆うように、コンタクトホール85が形成された第3層間絶縁膜43が、例えばアクリル樹脂膜により形成されている。画素電極9a及び配向膜16は、第3層間絶縁膜43の上面に設けられている。
【0081】
次に、図13及び図14を参照しながら、液晶装置500を製造する製造方法を主要な工程を順に説明する。図13は、液晶装置の製造方法を主要な工程を順に示したフローチャートである。図14は、上部容量電極300の構成を示した断面図である。
【0082】
図13及び図14に示すように、TFTアレイ基板10上に誘電体膜75までが形成された構造体を、上述のスパッタ装置1内に搬入し、ターゲット3を用いて順にAl/Nd合金薄膜300a、Al薄膜300b、及びAl/Nd合金薄膜300aを順に形成する。
【0083】
より具体的には、先ず、スパッタ装置1において、制御装置100の制御下でスパッタ条件A(図5参照)を選択する(ステップS10)。次に、スパッタ条件A下で、誘電体膜75上にAl/Nd合金薄膜300aを形成する(ステップS20)。次に、制御装置100の制御下で、スパッタ条件Bを選択する(ステップS30)。次に、スパッタ条件B(図5参照)下で、Al/Nd合金薄膜300a上にAl薄膜300aを形成する(ステップS40)。次に、制御装置100の制御下でスパッタ条件A(図5参照)を選択する(ステップS50)。次に、スパッタ条件A下で、Al薄膜300a上にAl/Nd合金薄膜300aを形成する(ステップS60)。このようにステップS10乃至ステップS60までの工程が、同一のスパッタ装置1において、同一のターゲット3を用いて実行されるため、相互に異なる層を別のターゲットを用いて上部容量電極300を形成する場合に比べて、液晶装置500の生産効率を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る薄膜形成方法を実行可能なスパッタ装置の概略構成を示した構成図である。
【図2】ターゲットの構成を示した平面図である。
【図3】図2のIII−III´断面図である。
【図4】本実施形態に係る薄膜形成方法の主要な工程を順に示したフローチャートである。
【図5】相互に異なるスパッタ条件で叩き出される原子を概念的に示した概念図である。
【図6】多層構造を有する薄膜の断面構造を図式的に示した図式的断面図である。
【図7】ターゲットの変形例の平面図である。
【図8】本実施形態に係る液晶装置の平面図である。
【図9】図8のIX−IX´断面図である。
【図10】液晶装置の画像表示領域における回路図である。
【図11】画素部の構成を詳細に示した平面図である。
【図12】図11のXII−XII´断面図である。
【図13】液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示したフローチャートである。
【図14】上部容量電極の構成を示した断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1・・・スパッタ装置、2・・・チャンバ、3,3a・・・ターゲット、5・・・カソードユニット、14・・・クライオポンプ、300・・・上部容量電極、8a,300a・・・Al/Nd合金薄膜、8b,300b・・・Al薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ターゲット材料からなる第1ターゲット部材と、該第1ターゲット部材の表面より窪んだ段差部を構成し、前記第1ターゲット材料より大きい質量数を有する第2ターゲット材料からなる第2ターゲット部材とを備えたターゲットをスパッタリング法に用いた薄膜形成方法であって、
前記第1ターゲット材料及び前記第2ターゲット材料の一方からなる第1薄膜と、前記第1ターゲット材料及び前記第2ターゲット材料からなる第2薄膜とのうち形成すべき一方の薄膜に対応した圧力及び出力パワーの条件を選択する第1工程と、
該選択された条件下で前記スパッタリング法を実行することによって、前記一方の薄膜を形成する第2工程とを備え、
前記一方の薄膜が第2薄膜である場合、前記出力パワーは、前記第1薄膜を形成する際の出力パワーより高い出力パワーであり、前記圧力は、前記第1薄膜を形成する際の圧力より低い圧力であること
を特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記第2ターゲット部材は、平面視で縦横に直交する所定の幅を有する直線状に前記第1ターゲット部材の中に配置されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記第2ターゲット部材の前記直交する箇所は所定の大きさで前記第1のターゲット部材に重なっていることを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
前記第2ターゲット部材は、所定の直径を有する円状に前記第1ターゲット部材の中に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄膜形成方法を用いて、前記第1薄膜及び前記第2薄膜を同一チャンバ内で順次形成すること
を特徴とする多層構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−270153(P2009−270153A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121490(P2008−121490)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】