説明

薄膜積層体の製造装置

【課題】製造装置の小型化を図り、基板の汚染を防ぎ、かつ基板のシワの発生を防止可能とする薄膜積層体の製造装置を提供する。
【解決手段】フィルム基板2の表面に薄膜形成するための成膜部と、搬送されるフィルム基板を成膜部内でガイドするように、フィルム基板の成膜面2aに当接して配設される少なくとも1本のガイドロール8とを備え、ガイドロールにおける長手方向の中央部8aの直径が、その長手方向の両端部8bの直径よりも小さく形成され、ガイドロールの両端部とフィルム基板とが当接し、ガイドロールの近傍でフィルム基板の幅方向の両端部にそれぞれ当接して配設されるテンションロール9,10が、フィルム基板に前記幅方向の張力を加えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
帯状可撓性のフィルム基板(以下、「基板」という)の表面に薄膜形成可能に構成された薄膜積層体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜積層体の製造装置は、基板表面への薄膜形成に用いられている。薄膜積層体の製造装置は、特に薄膜太陽電池の製造などに用いられており、例えば、基板には高分子材料、ステンレス箔のような金属材料などが用いられ、薄膜にはa−Siなどを主材料とした光電変換層などが用いられている。このような製造装置には、成膜を行なうための成膜室が設けられており、この成膜室内には、互いに対向する高周波電極と接地電極とが設けられることが多い。この場合、基板の搬送経路については、基板が高周波電極と接地電極との間を通過するように設けられており、成膜室内に処理ガスを導入して高周波電極と接地電極との間に高周波を印加し、基板に薄膜形成する構成となっている。また、基板の搬送経路は、巻出しコアに巻かれた基板を複数の成膜室から成る成膜部に向けて送り出して、成膜部で基板に薄膜形成した後に、この基板を巻取りコアによって巻き取る構成となっている。
【0003】
従来の薄膜積層体の製造装置では、特許文献1に示されるように、基板の搬送経路は、基板を巻出しコアと巻取りコアとの間で略直線状に搬送し、この略直線状の基板に沿って配置された複数の成膜室内の高周波電極と接地電極との間で、それぞれ基板に薄膜形成する構成となっている。
【0004】
特許文献2の薄膜積層体の製造装置では、基板の搬送経路は、基板を巻出しコアと巻取りコアとの間で複数のガイドロールによって複数箇所で180°方向転換して蛇行させながら搬送する構成となっている。さらに、高周波電極および接地電極が、ガイドロール同士の間に位置する基板に対向して配置されており、高周波電極および接地電極から成る複数の電極対が互いに平行となるように並列に配置されている。このような複数の電極対間で、それぞれ基板に薄膜形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4126810号公報
【特許文献2】特許3560134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の薄膜積層体の製造装置では、複数の薄膜を基板表面に形成する場合、その薄膜の数に応じて複数の成膜室を設ける必要がある。そのため、薄膜の数が多いと、成膜室の数が増えて巻出しコアと巻取りコアとの間の距離が長くなり、製造装置が大型化する。
【0007】
さらに、特許文献1および特許文献2の薄膜積層体の製造装置では、薄膜形成した基板表面がガイドロールの外周表面に当接するので、基板表面がガイドロールの外周表面に付着した不純物などによって汚染されるおそれがある。また、特許文献2の薄膜積層体の製造装置では、基板が複数のガイドロールによって複数箇所で方向転換されるので、基板にシワが発生し易くなっている。このような基板の汚れやシワは、基板表面に形成された薄膜積層体の特性を低下させるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造装置の小型化を図り、基板の汚染を防ぎ、かつ基板のシワの発生を防止可能とする薄膜積層体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために本発明の薄膜積層体の製造装置は、帯状可撓性のフィルム基板の表面に薄膜形成するための成膜部と、搬送される前記フィルム基板を前記成膜部内でガイドするように、前記薄膜形成したフィルム基板の表面に当接して配設される少なくとも1本のガイドロールとを備える薄膜積層体の製造装置であって、前記ガイドロールにおける長手方向の中央部の直径が、その長手方向の両端部の直径よりも小さく形成され、前記ガイドロールの両端部と前記フィルム基板とが当接し、前記ガイドロールの近傍で前記フィルム基板の幅方向の両端部にそれぞれ当接して配設されるテンションロールが、前記フィルム基板に前記幅方向の張力を加えるように構成されている。
【0010】
薄膜積層体の製造装置では、前記ガイドロールの回転軸が、前記幅方向に沿って配置され、前記テンションロールの回転軸が、該回転軸の前記幅方向の中央側を前記ガイドロールの回転軸に対して前記フィルム基板の搬送方向側に傾けるように配置されている。
【0011】
薄膜積層体の製造装置では、対になった前記テンションロールが、前記フィルム基板を挟むように配置されている。
【0012】
薄膜積層体の製造装置では、前記対になったテンションロールが、前記ガイドロールに対して前記フィルム基板の搬送方向の上流側および下流側の少なくも一方に配置されている。
【0013】
薄膜積層体の製造装置では、前記テンションロールが、前記フィルム基板を前記ガイドロールの端部に押付けて配置されている。
【0014】
薄膜積層体の製造装置では、薄膜太陽電池を製造可能としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薄膜積層体の製造装置によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の薄膜積層体の製造装置は、帯状可撓性のフィルム基板の表面に薄膜形成するための成膜部と、搬送される前記フィルム基板を前記成膜部内でガイドするように、前記薄膜形成したフィルム基板の表面に当接して配設される少なくとも1本のガイドロールとを備える薄膜積層体の製造装置であって、前記ガイドロールにおける長手方向の中央部の直径が、その長手方向の両端部の直径よりも小さく形成され、前記ガイドロールの両端部と前記フィルム基板とが当接し、前記ガイドロールの近傍で前記フィルム基板の幅方向の両端部にそれぞれ当接して配設されるテンションロールが、前記フィルム基板に前記幅方向の張力を加えるように構成されている。
また、前記ガイドロールの回転軸が、前記幅方向に沿って配置され、前記テンションロールの回転軸が、該回転軸の前記幅方向の中央側を前記ガイドロールの回転軸に対して前記フィルム基板の搬送方向側に傾けるように配置されている。
そのため、前記ガイドロールの両端部が前記フィルム基板の両端部に接触する一方で、前記ガイドロールの中央部が前記フィルム基板の表面にて薄膜形成した中央部と接触し難くなり、前記フィルム基板の汚染を防止できる。前記テンションロールは、前記フィルム基板の両端部に当接するので、前記フィルム基板の表面にて薄膜積層体を形成した中央部と接触し難くなっており、前記フィルム基板の汚染を防止できる。さらに、前記テンションロールによって、前記フィルム基板の両端部が引っ張られるので、前記フィルム基板には、前記幅方向の張力が加えられる。従って、前記フィルム基板が、前記ガイドロールの中央部と当接しないことに起因する前記フィルム基板の中央部の撓みを防止できる。よって、前記フィルム基板の汚染を防止しながら確実に前記フィルム基板へのシワの発生を防止できる。
【0016】
本発明の薄膜積層体の製造装置では、対になった前記テンションロールが、前記フィルム基板を挟むように配置されている。また、前記対になったテンションロールが、前記ガイドロールに対して前記フィルム基板の搬送方向の上流側および下流側の少なくも一方に配置されている。
そのため、前記ガイドロールにより方向転換される直前のフィルム基板、または方向転換された直後のフィルム基板に、前記幅方向の張力が確実に加えられ、より確実に前記フィルム基板へのシワの発生を防止できる。
【0017】
本発明の薄膜積層体の製造装置では、前記テンションロールが、前記フィルム基板を前記ガイドロールの端部に押付けて配置されており、前記ガイドロールにより方向転換されている途中のフィルム基板に、前記幅方向の張力が確実に加えられ、より確実に前記フィルム基板へのシワの発生を防止できる。
【0018】
本発明の薄膜積層体の製造装置は、薄膜太陽電池の製造装置に適用可能である。この場合、前記フィルム基板の汚染を防止でき、かつ前記フィルム基板へのシワの発生を防止できるので、前記フィルム基板の表面に形成された薄膜積層体の特性が低下し難い。よって、高品質の薄膜太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における薄膜積層体の製造装置を模式的に示す断面平面図である。
【図2】本発明の実施形態に用いられるガイドロールを示す概略斜視図である。
【図3】図1のB部を拡大して見た概略斜視図である。
【図4】(a)は、図1の矢印Cから見た図であり、(b)は、図1の矢印Dから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態における薄膜積層体の製造装置(以下、「装置」という)について以下に説明する。
本発明の実施形態の一例として図1に示すように、装置1では、帯状可撓性のフィルム基板(以下、「基板」という)2が、その幅方向を鉛直方向に沿って配置した縦置き状態となっており、さらに矢印Aで示す方向を向いて搬送される。すなわち、装置1には縦置き搬送方式が採用されている。この装置1には、基板2を巻出すための巻出室3と、基板2を巻き取るための巻取室4とが設けられており、基板2は、巻出室3から巻取室4に向かって搬送される。巻出室3と巻取室4との間には成膜部5が設けられており、この成膜部5の内部で基板2の表面に薄膜形成される。
【0021】
巻出室3の内部には、巻かれた状態の基板2を巻出す巻出しコア3aが、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転可能に配設されている。また、巻出室3の内部には、基板2の搬送駆動、張力制御などのためのロール3b,3c,3dが、巻出しコア3aより搬送方向下流側で鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転可能に配設されている。
【0022】
巻取室4の内部には、基板2を巻取る巻取りコア4aが、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転可能に配設されている。また、巻取室4の内部には、基板2の搬送駆動、張力制御などのためのロール4b,4c,4dが、巻取りコア4aより搬送方向上流側で鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転可能に配設されている。
【0023】
成膜部5は、その内部に処理ガスを供給可能になっており、さらに成膜部5の内部には、複数の高周波電極および接地電極が設けられている。ここでは一例として、3つの高周波電極6a,6b,6cおよび3つの接地電極7a,7b,7cが設けられた場合について説明する。
3つの高周波電極6a〜6cおよび3つの接地電極7a〜7cは、装置1の手前側から奥側に向かって、第1の接地電極7a、第1の高周波電極6a、第2の高周波電極6b、第2の接地電極7b、第3の接地電極7c、第3の高周波電極6cの順に、互いに平行となるように並列に配置されている。基板2は、第1の高周波電極6aと第1の接地電極7aとの間の区間、第2の高周波電極6bと第2の接地電極7bとの間の区間、第3の高周波電極6cと第3の接地電極7cとの間の区間という順で通過するように配置されている。ここで説明する一例では、基板2の一方の表面(以下、「成膜面」という)2aのみに薄膜形成される。
【0024】
第1の高周波電極6aおよび第1の接地電極7aの搬送方向下流側で、かつ第2の高周波電極6bおよび第2の接地電極7bの搬送方向上流側には、2つの第1のガイドロール8が設けられている。2つの第1のガイドロール8は、装置1の奥行き方向に互いに間隔を空けて配置されている。第1のガイドロール8は、成膜面2aに当接しながら基板2の搬送方向を変える。また、第1のガイドロール8の近傍には、基板2を挟む対の第1のテンションロール9が設けられている。さらに、基板2を第1のガイドロール8に押付ける第2のテンションロール10が設けられている。
【0025】
第2の高周波電極6bおよび第2の接地電極7bの搬送方向下流側で、かつ第3の高周波電極6cおよび第3の接地電極7cの搬送方向上流側には、2つの第2のガイドロール11が設けられている。2つの第2のガイドロール11は、装置1の奥行き方向に互いに間隔を空けて配置されている。第2のガイドロール11は、基板2の成膜面2aと反対側の表面である非成膜面2bに当接しながら基板2の搬送方向を変える。
【0026】
ここで、図2を参照して、第1のガイドロール8の構造を説明する。第1のガイドロール8では、その長手方向の中央部8aの直径が、その長手方向の両端部8bの直径よりも小さく形成されている。そのため、第1のガイドロール8の中央部8aは基板2の幅方向の中央部と当接せず、第1のガイドロール8の両端部8bのみが成膜面2aの両端部と当接する。第1のガイドロール8では、中央部8aの範囲が、基板2の成膜面2aに薄膜形成した範囲に対応しているとよく、両端部8bが、基板2の成膜面2aにて薄膜形成されない両端部のみと当接するとよい。
【0027】
次に、図1、図3、図4(a)および図4(b)を参照して、一対の第1のテンションロール9および第2のテンションロール10の構造を説明する。2つの第1のガイドロール8より搬送方向上流側および搬送方向下流側で、対になった第1のテンションロール9が、基板2の幅方向の上端部および下端部を挟むように配置されている。第1のテンションロール9の回転軸9aは、該回転軸9aの基板2の幅方向中央側を搬送方向(矢印Aで示す)側に傾けるように配置されている。
【0028】
また、2つの第1のガイドロール8では、第2のテンションロール10が、基板2の幅方向の上端部および下端部を第1のガイドロール8の両端部8bに押し付けて配置されている。また、第1のテンションロール9と同様に、第2のテンションロール10の回転軸10aは、該回転軸10aの基板2の幅方向中央側を基板2の搬送方向側に傾けるように配置されており、鉛直方向に対して角度θ°傾いている。
【0029】
このような装置1においては、例えば、帯状可撓性のフィルム基板を用いた薄膜太陽電池などの製品を製造できる。
【0030】
本発明の実施形態における装置1の動作を説明する。
巻出室3内にて、巻出しコア3aに巻かれた基板2が、ロール3b〜3dによって搬送かつガイドされて巻き出される。基板2は、巻出室3を出て、成膜部5に搬送される。成膜部5内で、基板2が第1の高周波電極6aと第1の接地電極7aとの間の区間を通過し、このとき、基板2に第1層目の薄膜が形成される。基板2は、第1の高周波電極6aと第1の接地電極7aとの間の区間を通過後、2つの第1のガイドロール8によって180°方向転換される。基板2は、2つのガイドロール8の周辺を通過する際に、第1のテンションロール9および第2のテンションロール10によって幅方向に引っ張られ、基板2に幅方向の張力が加えられる。
【0031】
次に、基板2が第2の高周波電極6bと第2の接地電極7bとの間の区間を通過し、このとき、基板2に第2層目の薄膜が形成される。基板2は、第2の高周波電極6bと第2の接地電極7bとの間の区間を通過後、2つの第2のガイドロール11によって180°方向転換される。さらに、基板2は、第3の高周波電極6cと第3の接地電極7cとの間の区間を通過し、この際、基板2に第3層目の薄膜が形成される。基板2は、第3の高周波電極6cと第3の接地電極7cとの間の区間を通過後、巻取室4内に搬送される。巻取室4内では、基板2が、ロール4b〜4dによって搬送かつガイドされた後、巻取りコア4aに巻き取られる。
【0032】
さらに、本発明の実施形態の詳細な構成および動作について、好ましい形態を例示して説明する。なお、以下に説明する例以外の構成および動作とすることも可能である。
基板2は、フィルムの両側表面に金属電極を形成したものであると好ましい。フィルムの素材は、ポリイミド、PET、PEN、PEI、ポリイミドアミドなどの樹脂フィルム、またはステンレス箔、アルミ箔などの金属フィルムなどであると好ましい。薄膜は、a−Si、μc−Si、a−Siおよびμc−Siの両方を含むもの、a−Siおよびμc−Siの合金などから主に構成されていると好ましい。基板2の搬送方式は、ロールツーロール方式、ステッピングロール方式などであると好ましい。基板の幅は1mとしたが、好適には50cm〜2mの範囲であると良い。
【0033】
処理ガスは、シランガスおよび水素ガスにバンドギャップ制御材料およびドーピング材料を加えた原料ガスであると好ましい。装置1の成膜方式は、容量結合型のプラズマCVD、誘導結合型のCVD、表面波CVD、ECR、CATなどのCVD方式、スパッタ方式、イオンプレーティング方式、蒸着方式などであると好ましい。また、装置1が、エッチング、表面化改質などに用いられる構成であってもよい。プラズマCVD方式の場合、高周波電極6a〜6cと接地電極7a〜7cとの間に印加する電圧の周波数は、13MHz〜100MHzの範囲であると好ましい。第1のテンションロール9の傾斜角度θおよび第2のテンションロール10の傾斜角度θは、0.1°〜6°の範囲であると好ましい。基板2に加えられる幅方向の張力は、長手方向に加えられる張力、基板の厚さ、基板の幅などにもよるが、30N〜200Nの範囲であると好ましい。
【0034】
以上のように本発明の実施形態によれば、第1のガイドロール8の両端部8bが基板2の両端部に接触する一方で、第1のガイドロール8の中央部8aが薄膜形成した基板2の表面の中央部と接触し難くなり、基板2における薄膜形成した部分の汚染を防止できる。第1のテンションロール9および第2のテンションロール10は、基板2の両端部に当接するので、薄膜形成した基板2の表面の中央部と接触し難くなっており、基板2の汚染を防止できる。さらに、第1のテンションロール9および第2のテンションロール10によって、基板2の両端部が引っ張られるので、基板2には、その幅方向の張力が加えられる。よって、基板2が第1のガイドロール8の中央部8aと当接しないことに起因する基板2の中央部の撓みを防止でき、さらに基板2の汚染を防止しながら確実に基板2へのシワの発生を防止できる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、対になった第1のテンションロール9が、基板2の上端部および下端部を挟み、かつ2つの第1のガイドロール8より搬送方向上流側および下流側にそれぞれ配置されている。そのため、第1のガイドロール8によって方向転換される直前の基板2、または方向転換された直後の基板2に、確実に基板2の幅方向に張力を加えることができて、より確実に基板2のシワの発生を防止できる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、第2のテンションロール10が、基板2を第1のガイドロール8の両端部8bに押付けて配置されている。そのため、第1のガイドロール8によって方向転換されている途中の基板2に、確実に基板2の幅方向の張力を加えることができて、より確実に基板2のシワの発生を防止できる。
【0037】
本発明の実施形態によれば、装置1は薄膜太陽電池の製造装置に適用可能である。その場合、基板2の汚染が防止され、かつ基板2にシワが発生することが防止されるので、基板2の表面に形成された薄膜積層体の特性が低下し難い。よって、高品質の薄膜太陽電池を提供できる。
【0038】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0039】
例えば、本発明の実施形態の第1変形例として、高周波電極および接地電極から成る電極対は3組以外であってもよく、電極対の数に対応して、第1のテンションロール9の数または第2のテンションロール10の数を変更してもよい。本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
本発明の実施形態の第2変形例として、装置1にて、基板2がその幅方向を水平方向に沿わせて配置された状態で搬送されていてもよい。すなわち、装置1が平置き搬送方式となっていてもよい。本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
本発明の実施形態の第3変形例として、装置1に、第1のテンションロール9および第2のテンションロール10のいずれか一方のみが設けられていてもよい。本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
本発明の実施形態の第4変形例として、装置1が基板2の両方の表面2a,2bに薄膜形成可能である場合には、第2のガイドロール11を、第1のガイドロール8と同様に構成し、かつ第2のガイドロール11の周辺に第1のテンションロール9および第2のテンションロール10の少なくとも一方を、第1のガイドロール8と同様に配設してもよい。本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
本発明の実施形態の第5変形例として、成膜工程について、成膜部5の内部に処理ガスを充填して、それぞれの高周波電極6a〜6cと接地電極7a〜7cとの間で第1層目の薄膜を基板2の表面に同時に薄膜形成し、その後、成膜部5の内部に別途処理ガスを充填し、それぞれの高周波電極6a〜6cと接地電極7a〜7cとの間で第2層目の薄膜を基板2の表面に同時に薄膜形成してもよい。
また、基板2の全体を搬送方向(図1の矢印Aで示す)に搬送して、成膜部5内で第1層目の薄膜を基板2に形成し、基板2を巻取室4内に搬送して巻取りコア4aに巻き取った後に、再び巻取りコア4aから基板2を巻出して、基板2の全体を搬送方向と反対方向に搬送し、成膜部5内で第2層目の薄膜を基板2に形成してもよい。
このような工程を繰り返すことによって基板2に複数の薄膜を形成して、薄膜積層体を形成できる。なお、この場合、テンションロール10の向きを基板2の搬送される方向に合わせて、矢印Aで示した搬送方向と異なる向きに切り替えることも可能である。これらの第5変形例の構成によって本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
[実施例1]
本発明の実施例1について説明する。実施例1では、薄膜積層体の製造装置を薄膜太陽電池の製造装置とした。高周波電極は一辺1mの正方形とし、この高周波電極と接地電極とから成る電極対を4組設けた。さらに、基板2の搬送経路については、第1のテンションロール9および第2のテンションロール10のうち第1のテンションロール9のみを設ける構成とした。また、基板2の幅を1010mmとし、基板2の全長を300mとした。このような装置にて、基板2を20本搬送し、基板2の成膜面2aにおけるシワの発生の有無を確認した。
【0045】
[実施例2]
本発明の実施例2について説明する。実施例2では、薄膜積層体の製造装置の基本的な構成を実施例1と同様とし、基板2の搬送経路については、第1のテンションロール9および第2のテンションロール10のうち第2のテンションロール10のみを設けて、実施例1と異なる構成とした。このような装置にて、基板2を20本搬送して、基板2の成膜面2aにおけるシワの発生の有無を確認した。
【0046】
[比較例]
本発明の比較例について説明する。比較例では、基本的な構成を実施例1および実施例2と同様とし、基板2の搬送経路について、第1のテンションロール9および第2のテンションロール10を設けずに、実施例1および実施例2と異なる構成とした。このような装置にて、基板2を20本搬送して、基板2の成膜面2aに発生するシワの有無を確認した。
【0047】
本発明の実施例1および実施例2では、基板2の成膜面2aにシワが発生せず、薄膜太陽電池の品質不良は発生しなかった。一方、本発明の比較例では、基板2の成膜面2aにシワが発生して、薄膜太陽電池の品質不良が発生した。
よって、本発明の実施形態のように、第1のテンションロール9および第2のテンションロール10の少なくとも一方を設けた構成によって、基板2へのシワの発生を防止でき、基板2に形成された薄膜積層体の特性の低下を防止できることが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
1 薄膜積層体の製造装置(装置)
2 フィルム基板(基板)
2a 成膜面
2b 非成膜面
5 成膜部
8 第1のガイドロール
8a 中央部
8b 端部
9 第1のテンションロール
9a 回転軸
10 第2のテンションロール
10a 回転軸
11 第2のガイドロール
A,C,D 矢印
θ,θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状可撓性のフィルム基板の表面に薄膜形成するための成膜部と、
搬送される前記フィルム基板を前記成膜部内でガイドするように、前記薄膜形成したフィルム基板の表面に当接して配設される少なくとも1本のガイドロールと
を備える薄膜積層体の製造装置であって、
前記ガイドロールにおける長手方向の中央部の直径が、その長手方向の両端部の直径よりも小さく形成され、
前記ガイドロールの両端部と前記フィルム基板とが当接し、
前記ガイドロールの近傍で前記フィルム基板の幅方向の両端部にそれぞれ当接して配設されるテンションロールが、前記フィルム基板に前記幅方向の張力を加えるように構成されている、薄膜積層体の製造装置。
【請求項2】
前記ガイドロールの回転軸が、前記幅方向に沿って配置され、
前記テンションロールの回転軸が、該回転軸の前記幅方向の中央側を前記ガイドロールの回転軸に対して前記フィルム基板の搬送方向側に傾けるように配置されている、請求項1に記載の薄膜積層体の製造装置。
【請求項3】
対になった前記テンションロールが、前記フィルム基板を挟むように配置されている、請求項2に記載の薄膜積層体の製造装置。
【請求項4】
前記対になったテンションロールが、前記ガイドロールに対して前記フィルム基板の搬送方向の上流側および下流側の少なくも一方に配置されている、請求項3に記載の薄膜積層体の製造装置。
【請求項5】
前記テンションロールが、前記フィルム基板を前記ガイドロールの端部に押付けて配置されている、請求項2に記載の薄膜積層体の製造装置。
【請求項6】
薄膜太陽電池を製造可能とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄膜積層体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38162(P2011−38162A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187646(P2009−187646)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】