説明

衛星システム及び対象天体特徴取得方法

【課題】 未知の惑星等の対象天体の位置や3次元形状が高精度、かつ、高速に取得することができるようにする。
【解決手段】 衛星側に配置されて、対象天体の撮影画像における特徴情報を所定数抽出して送信する特徴情報取得ユニット4と、地上側に配置されて、特徴情報取得ユニット4からの特徴情報を受信して蓄積し、蓄積した特徴情報に基づき所定の画像処理及び演算処理を行う情報処理ユニット6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星システム及び対象天体特徴取得方法に関し、特に未知の小惑星や衛星等の対象天体に接近又は着陸するために当該対象天体を追跡する衛星システム及び対象天体特徴取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地表を観測するための観測衛星システムが提案されている。例えば、特開2006−277007号公報においては、地表を撮影した撮影画像と、予め準備した参照画像とを比較して、必要となる領域のみを抽出する技術が開示されている。そして、抽出した領域の画像と参照画像との差分データを送信することにより、伝送効率の効率化を図っている。
【0003】
また、特開2005−78349号公報は、2次元地図上の各箇所を撮影し、予め準備された2次元画像の中から2次元地図上で指定された箇所を撮影したものを選択して、ディスプレイに表示する2次元画像表示手段と、点・線・領域を当該2次元画像と異なる角度から撮影することによって得られた別の2次元画像と、予め準備された2次元画像とのステレオマッチングを行い、点・線・領域の3次元座標を算出する3次元情報計測手段とを備えたシステムを提案している。これにより、測量対象地に行かずに、コンピュータ操作によって精密な測量が行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−277007号公報
【特許文献2】特開2005−78349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2006−277007号公報及び特開2005−78349号公報にかかるシステムでは、予め対象に関する情報(例えば、特開2006−277007号公報にあっては参照画像、特開2005−78349号公報にあっては、予め準備された2次元画像)が必要になり、事前に、これらの画像情報が得られない、又は得ることが困難な未知の小惑星等の対象天体に対しては適用が困難である。
【0006】
従って、これら特開2006−277007号公報及び特開2005−78349号公報にかかるシステムを用いて、衛星を未知の対象天体に誘導したり、衛星に対する対象天体の相対位置等を高精度に求めることができない問題がある。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、対象天体の位置や3次元形状が高精度、かつ、高速に取得することができるようにした衛星システム及び対象天体特徴取得方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
衛星システムにかかる発明は、衛星側に配置されて、対象天体の撮影画像における特徴情報を所定数抽出して送信する特徴情報取得ユニットと、地上側に配置されて、特徴情報取得ユニットからの特徴情報を受信して蓄積し、蓄積した特徴情報に基づき所定の画像処理及び演算処理を行う情報処理ユニットとを備えることを特徴とする。
【0009】
対象天体特徴取得方法にかかる発明は、対象天体を撮影し、その撮影画像の特徴情報を所定数抽出して送信する特徴情報取得手順と、特徴情報取得手順により抽出された特徴情報を受信して蓄積し、蓄積した特徴情報に基づき所定の画像処理及び演算処理を行う情報処理手順と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象天体の特徴点を撮影画像から抽出した特徴情報を複数蓄積するので、対象天体の位置や3次元形状が高精度、かつ、高速に取得することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる衛星システムのブロック図である。
【図2】第1の実施形態にかかる切出領域検出部の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態にかかる画像処理部の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる切出領域検出部の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかる切出領域検出部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態にかかる衛星システム2のブロック図である。この衛星システム2は、衛星に配置されて、未知の惑星等の対象天体の特徴情報を抽出する特徴情報取得ユニット4と、地上局に配置されて特徴情報取得ユニットからの特徴情報に基づき3次元モデルの構築等を行う情報処理ユニット6とを主要構成とする。
【0013】
特徴情報取得ユニット4は、撮影部11、切出領域検出部12、部分画像切出部13及び、衛星側の通信部14を備える。また、情報処理ユニット6は、地上側の通信部21及び、画像処理部22を備える。
【0014】
撮影部11は、CCDカメラ等により対象天体を撮影し、その撮影画像を図示しないメモリに一時記憶する。切出領域検出部12は、切出領域検出処理を行う。この切出領域検出処理は、撮影画像から対象天体の特徴を含む画像領域(抽出画像)を複数抽出し、抽出画像に関するカメラ座標(特徴情報)を部分画像切出部13に出力する。なお、カメラ座標は、撮影画像における抽出画像の座標である。例えば、撮影画像を画素単位で座標表示したとき、抽出画像の中心や左上端の画素の座標を、カメラ座標とする。
【0015】
部分画像切出部13は、切出領域検出部12で取得されたカメラ座標に基づき撮影画像から画像を切出し、衛星側の通信部14に出力する。この切出された画像を部分画像(特徴情報)と記載する。部分画像の数やサイズは、固定としてもよく、可変としてもよい。後述するように、部分画像は地上局の情報処理ユニット6に送信するので、各部分画像の送信時間を一定にする場合には、部分画像の数やサイズを一定にすることが好ましい。衛星側通信部14は、部分画像とカメラ座標とを特徴情報として地上局に伝送する。
【0016】
地上側の通信部21は、衛星側の通信部14から特徴情報を受信する。画像処理部22は、受信した特徴情報を蓄積すると共に、蓄積された特徴情報に基づき所定の画像処理及びデータ処理を行う。画像処理及びデータ処理には、対象天体の3次元モデルの構築、対象天体の観測データの統合、対象天体と衛星との相対的な位置や姿勢の算出、衛星を誘導するための誘導情報に関する補正情報の作成及び、衛星が自律制御する際の情報の補正情報の作成等を行う。特徴情報の蓄積には、地上局に高速、大容量サーバが利用でき、また各種画像処理やデータ処理には、複数の計算機による並列処理が可能である。
【0017】
次に、切出領域検出部12における切出領域検出処理を図2のフローチャートを参照して説明する。切出領域検出処理が開始されると、撮影画像に対してフィルタ処理が行われる(ステップSA1)。このフィルタ処理は、撮影部11で撮影された撮影画像の中で、濃度変化が大きい領域を高輝度に設定する処理で、公知のエッジ抽出(画像微分)フィルタや分散フィルタ等が利用される。例えば、エッジ抽出フィルタを用いてフィルタ処理を行うと、隣接する画素に対応する濃度の微分値が算出される。従って、隣接する画素の濃度変化が大きい場合には、微分値も大きくなる。
【0018】
次に、フィルタ処理が行われた撮影画像に対して輪郭除去処理が行われる(ステップSA2)。輪郭除去処理は、フィルタ処理された撮影画像から対象天体の輪郭を除去する処理である。具体的には、撮影画像を2値化し、拡大フィルタをかけた領域を除外することにより、撮影画像から宇宙空間を除く。例えば、予め設定した閾値より輝度の高い画素領域を「0」、輝度の低い画素領域を「1」に設定する。そして、輝度値が「0」である領域を対象天体とし、輝度値が「1」である領域を宇宙空間とする。このとき、拡大フィルタをかけることで、輝度値が「1」の領域を大きめにして、確実に対象天体の輪郭を除去するようにしている。
【0019】
このように輪郭が除去された撮影画像の中で輝度の最も高い点、即ち撮影画像の最も濃淡変化の大きい点を特徴点として選択する(ステップSA3)。濃度変化の最も大きい点は、例えばエッジ抽出フィルタを用いた場合には、画素の輝度が最も大きい点である。このとき、撮影画像に対象天体の輪郭が含まれていると、輪郭部分が輝度の高い領域となる。しかし、ステップS2の輪郭除去処理により、この輪郭領域は除外されているため、輪郭領域は特徴点とならない。即ち、輪郭除去処理は、輪郭領域が特徴点とならないようにするための前処理となっている。 そして、このような特徴点の抽出数Numが、予め設定された数Nに達したか否かが判断される(ステップSA4)。達した場合には、抽出された特徴点のカメラ座標が部分画像切出部13に出力される(ステップSA5)。一方、未達の場合にはステップS6に進む。
【0020】
ステップSA6では、ステップSA3におけるフィルタ輝度最高点選択処理で選択され特徴点を中心に一定サイズの領域を除去する部分領域除去処理が行われ(ステップSA6)、その後ステップSA3に戻る。近接した特徴点は、類似した情報を多く含んでいる場合が多いので、このような特徴点の抽出を避けることにより、情報の有効性を高めるためである。従って、次の特徴点の抽出処理は、部分領域除去処理が行われた撮影画像に対して行なわれる。除去する領域のサイズは部分画像切出部13で切出す画像サイズと同じサイズに設定しても良く、それ以上のサイズに設定しても良い。本実施形態においては、部分画像切出部13で切出す画像の個数、サイズは予め設定した固定値とする。
【0021】
このようにして、切出座標処理が完了すると、ステップSA5において特徴点のカメラ座標が部分画像切出部13に出力される。部分画像切出部13では、カメラ座標に基づき撮影画像から所定サイズの部分画像を切り出す。切り出された部分画像とカメラ座標は特徴情報として、衛星側の通信部14から地上側の通信部21に送信され、蓄積・画像処理等が行われる。
【0022】
上述したように、本実施形態によれば、撮影した撮影画像を地上局に伝送するのではなく、特徴的な部分画像を切出して伝送するので、衛星から地上局に送る情報量を少なくすることができる。
【0023】
なお、上記説明では、特徴点を撮影画像から抽出し、そのカメラ座標から部分画像を抽出した。従って、カメラ座標は、抽出された特徴点に応じて異なる。
【0024】
しかし、本実施形態においては、このような方法に限定せず、例えば、部分画像切出部13において切出される部分画像のカメラ座標を予め複数指定又は設定することが可能である。また、地上局からカメラ座標を指示する方法や、撮影毎に一定の領域範囲内(撮影画像の領域内)で一定ピッチ又は予め設定されたピッチにおけるカメラ座標の部分画像を切出すようにしても良い。
【0025】
このような方法は、対象天体の観測を網羅的に行う目的のために有効な方法である。また、対象天体の特徴点に基づく3次元モデルの構築、対象天体と衛星との相対的な位置、衛星の姿勢の算出を行う際に、衛星上では画像の特徴点の抽出を行わずに、地上局側で受信した部分画像を統合して特徴点の抽出を行うことになるので、かかる特徴点の抽出に必要なリソースを衛星に設ける必要が無くなり、衛星の小型化が実現できる。
【0026】
次に、画像処理部22における画像処理の手順を図3に示すフローチャートを参照して説明する。以下においては、対象天体の3次元モデル、特に特徴点の集合体としての3次元モデルを構築する場合を例に説明する。
【0027】
先ず、地上側の通信部21から得られた複数の部分画像に基づき各々の部分画像から特徴となる代表点1点を抽出して、抽出された点の座標をカメラ座標とするカメラ座標算出処理を行う(ステップSD1)。
【0028】
なお、衛星側の通信部14から地上側の通信部21に送信される特徴情報には、部分画像とカメラ座標とが含まれている。そこで、カメラ座標算出処理によるカメラ座標の抽出を行わずに、特徴情報に含まれるカメラ座標を用いることが可能である。
【0029】
しかし、特徴情報に含まれるカメラ座標は必ずしも部分画像内で最も代表的な特徴点でない場合がある。このような場合には、上述したように部分画像に基づき改めて最も代表的な特徴点を抽出することができるようになっている。例えば、最も代表的な特徴点として、岩の鋭角部分の先端や、クレータの中心点等が例示できる。画像処理部22で新たに特徴点を抽出する方法は、部分画像切出部13において切出される部分画像のカメラ座標を予め複数指定又は設定する場合に特に有効である。これは、カメラ座標を予め複数指定又は設定する場合は、切出領域検出部12において特徴点の抽出が行われないからである。
【0030】
複数の撮影が行われた場合、同じ特徴点であっても、各撮影画像におけるカメラ座標は異なる。従って、どの特徴点が同じ特徴点であるかを同定する必要が生じる。このために、特徴点の同定を行う特徴点同定処理が行なわれる(ステップSD2)。この特徴点同定処理は、部分画像間の相関や特徴点間の相対位置関係に基づき判断される。
【0031】
次に、特徴点と衛星との間の距離を算出する距離算出処理が行われる(ステップSD3)。特徴点の同定処理により、同じ特徴点に対するカメラ座標の変化量が分かるので、公知のステレオマッチング又はモーションステレオの方法を用いて各特徴点と衛星との実際の距離を算出することができる。
【0032】
このとき衛星にカメラが2台以上搭載されている場合は、ステレオマッチングを演算するためのキャリブレーション情報を予め用意する。また、2回以上撮影した撮影画像に基づきモーションステレオを演算するためには、衛星を推進、回転等させる速度、加速度の誘導指令情報、ジャイロ、スタートラッカ等の衛星の姿勢情報、レーダ等の高度計情報、衛星の運動情報から衛星の移動距離等の情報を入力できるようにすることが好ましい。
【0033】
次に、距離算出処理の結果である各特徴点と衛星との距離を用いて、3次元座標を算出して、特徴点の集合体としての3次元モデルを構築する3次元マッピング処理を行う(ステップSD4)。
【0034】
そして、特徴点の追加補充を行い、撮影が進むに従い、新たに入力される特徴点の情報を追加補充していく特徴点追加補充処理を行う(ステップSD5)。即ち、対象天体に対する衛星の位置が変化すると、追跡できない特徴点が発生する。また、衛星に搭載されているカメラに多少のノイズがあったり、特徴情報取得ユニット4における各種の処理に軽微なエラーがあったり、受信した特徴情報に含まれる部分画像に多少のノイズがあったりした場合には、追跡できない特徴点が発生することが想定される。このような場合には、追跡できなくなった特徴点を補充するならば、追跡精度の維持又は向上が可能になる。
【0035】
次に、補充された特徴点に対して特徴点間の相対位置関係を再構築して3次元モデルの精度を上げる特徴点補充処理を行う(ステップSD6)。
【0036】
このように、状況に応じて特徴点の補充を行うため、衛星に搭載するカメラの数を減らしたり、高画素数、高解像度、高耐性ノイズ特性に対する要求が緩和でき、衛星システムのコストダウンが可能になる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する。本実施形態は、切出領域検出部12における切出領域検出処理の他の方法に関している。
【0037】
図4は、本実施形態にかかる切出領域検出処理のフローチャートである。切出領域検出処理が開始されると、撮影部11から入力された撮影画像にエッジ抽出(画像微分)フィルタを行い、濃淡変化の大きい領域を高輝度に設定するエッジ抽出処理を行う(ステップSB1)。
【0038】
次に、エッジ抽出処理で得られた画像において、予め設定された基準値より輝度の高い領域を「1」、輝度の低い領域を「0」に変換する2値化処理を行う(ステップSB2)。
【0039】
そして、2値化処理で得られた輝度の大きい「1」の領域を連結成分毎に抽出する公知のラベリング処理を行う(ステップSB3)。このラベリング処理により、輝度の大きい領域が、一塊毎にラベルとして抽出される。
【0040】
次に、ラベリング処理で得られた各ラベルの円形度、面積、中心座標、外接矩形の面積、座標等を計測する計測処理が行われる(ステップSB4)。円形度は楕円のハフ変換を用いてもよく、穴埋め後のラベル輪郭の周囲長と面積比で計算してもよい。
【0041】
そして、計測処理により得られた各ラベルの計測結果を比較し、部分画像切出部13で切出す領域の候補を複数選択する選択処理を行う(ステップSB5)。対象天体の地表に存在する特徴点として、クレータや岩石が例示できる。このようなクレータや岩石を含む領域を切出すためには、円形度の高いラベルを選択することが可能である。また、部分画像切出部13で切出す部分画像のサイズの上限値を予め設定し、外接矩形の面積が上限値より大きいラベルは除外することが可能である。
【0042】
選択処理で選択した各ラベルのカメラ座標を部分画像切出部13に出力する(ステップSB6)。部分画像切出部13で切出す部分画像の個数、サイズは予め設定した値に固定しても良く、また可変としても良い。部分画像の個数やサイズを固定にした場合、各ラベルの中心座標を部分画像切出部13に出力する。一方、可変にした場合は、各ラベルの外接矩形の座標(中心座標、或いは左上端の座標等)に外接矩形サイズを追加して部分画像切出部13に出力する。
【0043】
以上説明したように、衛星から地上局に送る情報量が少なくなるので、航法誘導のための情報等の更新や補正等が短時間で行うことが可能になり、衛星に搭載する回路規模を小さくしながら、航法誘導、観測データ等の高精度化及び、衛星の小型化、低コスト化が実現できる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する。本実施形態は、切出領域検出部12における切出領域検出処理の他の方法に関している。
【0044】
本実施形態では、一度抽出した特徴点を次回以降の撮影でテンプレートマッチングにより追尾し、追尾に失敗すると特徴点の抽出を再度行い、補充する。
【0045】
このような切出領域検出処理を図5に示すフローチャートに従い説明する。先ず、切出領域検出処理が初回の処理であるか否かの判断が行われる(ステップSC1)。初回の処理の場合は、切出領域検出処理が開始されると、撮影画像に対してフィルタ処理が行われる(ステップSC2)。このフィルタ処理は、撮影部11で撮影された撮影画像の中で、濃淡変化の大きい領域を高輝度に設定する処理で、公知のエッジ抽出(画像微分)フィルタや分散フィルタ等が利用される。
【0046】
次に、フィルタ処理が行われた撮影画像に対して輪郭除去処理が行われる(ステップSC3)。輪郭除去処理は、フィルタ処理された撮影画像から対象天体の輪郭を除去する処理である。
【0047】
そして、再度、切出領域検出処理が初回の処理であるか否かの判断が行われる(ステップSC4)。初回の処理の場合はステップSC6に進み、画像の中で輝度の最も高い点、即ち撮影画像の内で最も濃淡変化の大きい点を特徴点として選択する(ステップSC6)。
【0048】
特徴点が選択されると、この特徴点を中心とした一定サイズの画像をテンプレート画像とするテンプレート作成処理が行われる(ステップSC7)。
【0049】
テンプレート画像のサイズは、部分画像切出部13で切出す部分画像と同一サイズでも良く、異なるサイズでもよい。テンプレートを切出す親画像は、撮影部11から入力された撮影画像でもよく、フィルタ処理が行われた撮影画像でもよい。このようにして作成されたテンプレート画像の数、即ち特徴点の抽出数Numが、予め設定された数Nに達したか否かが判断される(ステップSC8)。
【0050】
特徴点の抽出数Numが、予め設定された数Nに達した場合は、特徴点のカメラ座標が出力される(ステップSC9)。一方、特徴点の抽出数Numが、予め設定された数Nに達していない場合は、フィルタ輝度最高点選択処理で選択した特徴点を中心に一定サイズの領域を除去する部分領域除去処理が行われ(ステップSC10)、ステップSC6に戻る。
【0051】
なお、ステップSC4で切出領域検出処理が初回の処理でないと判断した場合は、ステップSC5に進む。切出領域検出処理が初回の処理でないことは、予め設定された数N以上のテンプレート画像が作成されていることを意味する。そこで、ステップSC5では、前回作成したテンプレート画像を撮影画像から除くテンプレート領域除去処理を行う(ステップSC5)。
【0052】
一方、ステップSC1で、切出領域検出処理が初回の処理でないと判断した場合には、検索領域抽出処理が行われる(ステップSC11)。即ち、この段階では、所定数の特徴点及びテンプレート画像が抽出されている。そこで、既に抽出された特徴点のカメラ座標を中心に所定サイズの画像領域(検索画像)を抽出する。
【0053】
検索画像の抽出を行う親画像は、撮影画像又はフィルタ処理後の撮影画像の何れでもよく、テンプレート画像の作成に使用した種類の画像と同じ画像とする。また、検索画像のサイズは、テンプレート画像のサイズより大きく取る。
【0054】
そして、抽出した検索画像とテンプレート画像との相関を算出する相関算出処理を行う(ステップSC12)。相関算出処理は、検索領域抽出処理で得た検索画像とテンプレート画像との相関算出処理を行い、相関の最も高い点のカメラ座標と相関値とを出力する。その後、このような検索領域抽出処理及び相関算出処理が、全ての特徴点に対して行われたか否かを判断する(ステップSC13)。
【0055】
検索領域抽出処理及び相関算出処理が、全ての特徴点に対して行われた場合には、相関値の高い特徴点に対しては追尾が成功したと判断してステップSC15に進み、相関値の低い特徴点に対しては追尾に失敗した又は追尾の信頼性が低いと判断してステップSC2に戻る。なお、相関値が高いか低いかの判断は、予め設定された相関値判断基準と相関値との比較により行う。
【0056】
ステップS2に戻ることは、既に抽出した該当する特徴点及びテンプレート画像を放棄して、再度抽出を行って補充することを意味する。この際、ステップSC5のテンプレート領域除去処理において、放棄されたテンプレート領域が除去されているので、再度特徴点を抽出しても、放棄する特徴点と同じ特徴点が抽出されることがない。
【0057】
一方、全ての特徴点の相関値が高い場合、即ち追尾が成功した場合には、テンプレート画像及びカメラ座標の更新処理が行われ、部分画像切出部13に座標が出力される(ステップSC15,SC16)。
【0058】
以上説明したように、対象天体の撮影画像に含まれる特徴点を抽出し、この特徴点に基づきテンプレート画像を作成する。そして、このテンプレート画像を用いて新たに撮影された撮影画像中の特徴点を抽出することで、対象天体を追尾するので、テンプレート画像等の参照する画像を予め準備したり、指定したりする構成に比べて、少ないリソースで、航法誘導のための情報等の更新や補正等が短時間で行うことが可能になる。また、衛星に搭載する回路規模を小さくしながら、航法誘導、観測データ等の高精度化及び、衛星の小型化、低コスト化が実現できる。
【符号の説明】
【0059】
2 衛星システム
4 特徴情報取得ユニット
6 情報処理ユニット
11 撮影部
12 切出領域検出部
12 切出領域検出部
13 部分画像切出部
14 衛星側の通信部
21 地上側の通信部
22 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象天体を撮影して該対象天体の特徴情報を取得する衛星システムであって、
衛星側に配置されて、対象天体の撮影画像における特徴情報を所定数抽出して送信する特徴情報取得ユニットと、
地上側に配置されて、特徴情報取得ユニットからの特徴情報を受信して蓄積し、蓄積した特徴情報に基づき所定の画像処理及び演算処理を行う情報処理ユニットと、を備えることを特徴とする衛星システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星システムであって、
前記特徴情報取得ユニットは、前記撮影画像から前記対象天体の特徴点を所定数抽出する切出領域検出部と、
前記特徴点を含む画像を部分画像として前記撮影画像から切出して、前記特徴情報に前記部分画像を含めて出力する部分画像切出部と、
前記特徴情報を送信する衛星側の通信部と、を備えることを特徴とする衛星システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の衛星システムであって、
前記情報処理ユニットは、前記衛星側の通信部から前記特徴情報を受信する地上側の通信部と、
前記地上側の通信部により受信された前記特徴情報を順次蓄積すると共に、蓄積された前記特徴情報に基づき所定の画像処理を行う画像処理部と、を備えることを特徴とする衛星システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の衛星システムであって、
前記切出領域検出部は、前記撮影画像の中から前記対象天体を抽出し、抽出された前記対象天体の画像の内で画素の濃度の高い領域を前記特徴点として、該特徴点を含む所定範囲の画像領域を前記部分画像として切り出すことを特徴とする衛星システム。
【請求項5】
請求項4に記載の衛星システムであって、
前記切出領域検出部は、所定数の前記特徴点を抽出する際に、抽出された前記特徴点を含む前記部分画像を、前記撮影画像から除去することを特徴とする衛星システム。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の衛星システムであって、
前記切出領域検出部は、前記撮影画像に対して抽出した前記特徴点を含む画像をテンプレート画像とし、次に撮影された前記撮影画像において前記特徴点の追跡を前記テンプレート画像を用いて追跡することを特徴とする衛星システム。
【請求項7】
請求項6に記載の衛星システムであって、
前記テンプレート画像により追跡できない特徴点が存在する場合には、新たな前記特徴点を抽出することを特徴とする衛星システム。
【請求項8】
対象天体を撮影して該対象天体の特徴情報を取得する対象天体特徴取得方法であって、
衛星側に配置されて、対象天体の撮影画像における特徴情報を所定数抽出して送信する特徴情報取得手順と、
地上側に配置されて、特徴情報取得手順により抽出された前記特徴情報を受信して蓄積し、蓄積した前記特徴情報に基づき所定の画像処理及び演算処理を行う情報処理手順と、を含むことを特徴とする対象天体特徴取得方法。
【請求項9】
請求項8に記載の対象天体特徴取得方法であって、
前記特徴情報取得手順は、前記撮影画像から前記対象天体の特徴点を所定数抽出する切出領域検出手順と、前記特徴点を含む画像を切出して、該切り出された画像の座標と前記特徴点とを特徴情報とする部分画像切出手順と、前記特徴情報を送信受信する通信手順と、を含み、
前記画像処理手順は、前記特徴情報を順次蓄積すると共に、蓄積された前記特徴情報に基づき所定の画像処理を行う画像処理手順を含むことを特徴とする対象天体特徴取得方法。
【請求項10】
請求項9に記載の対象天体特徴取得方法であって、
前記切出領域検出手順は、前記撮影画像に対して抽出した前記特徴点を含む画像をテンプレート画像として作成する手順と、
撮影された前記撮影画像において前記特徴点の追跡を行う際に、前記テンプレート画像を用いてマッチングを行う手順と、
前記テンプレート画像を用いて前記特徴点が追跡できない場合に、新たな前記特徴点を抽出して、新たなテンプレート画像を作成する手順と、を含むことを特徴とする対象天体特徴取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−18040(P2012−18040A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154699(P2010−154699)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】