説明

表示装置の製造方法および表示装置

【課題】 感光性絶縁膜を露光、現像して形成された絶縁層を有する液晶表示パネルにおける周期的な外観むらを低減する。
【解決手段】 複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルの製造過程において、感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、前記感光性絶縁膜の露光は、一度に露光可能な領域を第1の方向に移動させる第1の動作と、前記一度に露光可能な領域を前記第1の方向と直交する第2の方向に移動させる第2の動作とを繰り返し、かつ、一度に露光可能な領域を所定の幅だけ重複させながら行う表示装置の製造方法であって、前記感光性材料膜の露光は、感光させない領域のうちの、前記一度に露光可能な領域が二度以上通る重複領域の外側の領域に対して、前記重複領域に照射される漏れ光の強度の総量と同じ強度の光を照射する表示装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法および表示装置に関し、特に、感光性材料膜を露光、現像して得られる絶縁層を有する液晶表示パネルの製造方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造方法は、TFT基板を製造する工程、対向基板を製造する工程、およびTFT基板と対向基板とを張り合わせるとともに液晶層を封入する工程を有する。このとき、TFT基板を製造する工程では、感光性材料膜を露光、現像する工程を複数回行う。
【0003】
TFT基板を製造する工程における感光性材料膜の露光、現像は、通常、たとえば、走査信号線を形成する工程、映像信号線を形成する工程、および画素電極を形成する工程や、TFT素子の半導体層を形成する工程などで行われる。このとき行う感光性材料膜の露光、現像は、導電膜または半導体膜をエッチングする際のマスク(エッチングレジスト)を形成するために行われる工程である。そのため、感光性材料膜を露光、現像して得られるマスクは、通常、エッチング後に除去される。
【0004】
また、TFT基板を形成する工程には、絶縁基板上に形成された絶縁層に、たとえば、TFT素子のソース電極と画素電極とを接続するためのコンタクトホール(貫通穴)を形成する工程がある。このコンタクトホールを形成する工程は、従来、感光性材料膜を露光、現像して得られるマスクを用いたエッチングで形成されていた。
【0005】
しかしながら、近年のTFT基板の製造方法では、前記コンタクトホールを有する絶縁層を、たとえば、感光性有機絶縁膜で形成する方法が適用されている。この方法では、感光性有機絶縁膜を露光、現像するだけで前記コンタクトホールを有する絶縁層を形成することができ、形成時間の短縮、材料費の節減などの効果が得られる。
【0006】
TFT基板の製造方法において感光性材料膜を露光するときには、従来、フォトマスクを用いて行うのが一般的である。
【0007】
しかしながら、ある一組のレイアウトデータに基づいて液晶表示パネルを製造するときには、たとえば、複数の製造ラインで並行して製造することも多い。そのため、フォトマスクを用いて感光性材料膜を露光する場合は、少なくとも、製造ラインと同数のフォトマスクが必要になる。
【0008】
また、フォトマスクを用いて感光性レジストを露光する場合は、たとえば、レイアウトデータに変更があると、変更されたレイアウトデータに基づいてフォトマスクを作り直す必要がある。特に、近年の液晶表示パネルは、高精細化などによりTFT素子の微細化が進んでおり、たとえば、前記コンタクトホールの形成位置や寸法に高い精度が要求されている。そのため、前記コンタクトホールの形成位置や寸法にずれが生じ、そのずれが液晶表示パネルの動作に影響する場合は、たとえば、当該コンタクトホールを有する絶縁層を形成する際に行う露光で使用するフォトマスクを作り直す必要がある。
【0009】
以上のようなことから、近年の液晶表示パネルの製造方法では、フォトマスクを用いないで感光性材料膜を露光する方法(以下、マスクレス露光という。)が検討されている。マスクレス露光としては、たとえば、レイアウトデータに基づく数値制御により感光性材料膜に照射する光のパターンを生成する光変調部品(空間光変調素子)を用いて露光する方法が知られている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−294373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
マスクレス露光で使用する光変調部品は、たとえば、生成する光のパターンを0.5μm単位以下で制御する必要がある。そのため、光変調部品の制御性を考慮すると、マスクレス露光で一度に露光可能な領域は、感光性材料膜の露光対象領域全体(すなわちマザーガラスの面積)に比べて非常に小さい。したがって、マスクレス露光で感光性材料膜を露光するときには、たとえば、一度に露光可能な領域を第1の方向に移動させながら露光する第1の動作と、一度に露光可能な領域を第1の方向と直交する第2の方向に移動させる第2の動作とを繰り返して、感光性材料膜の全体を露光する。
【0012】
また、上記のような第1の動作と第2の動作とを繰り返して行う感光性材料膜の露光方法は、別の言い方をすると、当該感光性材料膜を複数の帯状領域に分割し、帯状領域毎に順次露光する方法といえる。そのため、このような感光性材料膜の露光方法では、隣接する2つの帯状領域の間に、露光されない領域が生じないよう、当該2つの帯状領域の境界に、一度に露光可能な領域が二度通る重複領域を設けている。
【0013】
しかしながら、上記のように、2つの帯状領域の境界に、一度に露光可能な領域が二度通る重複領域を設けた場合、現像して得られるパターンの表面のうちの、当該重複領域と対応する位置に、段差が生じる。前記重複領域は、隣接する2つの帯状領域の境界に設けられるので、当該段差は、たとえば、帯状領域の幅(第2の方向の寸法)と等間隔で縞状に生じる。
【0014】
すなわち、ポジ型の感光性有機絶縁膜を露光、現像してコンタクトホールを有する絶縁層を形成する場合、現像後に形成される絶縁層(感光性有機絶縁膜)の表面には、たとえば、段差(具体的には溝)が縞状に生じる。
【0015】
この絶縁層の表面に縞状に生じる溝の間隔は、一度に露光可能な領域の幅(第2の方向の寸法)と概ね等しく、たとえば、1mmから50mm程度である。
【0016】
また、この絶縁層の表面に縞状に生じる溝は、液晶表示装置の動作には影響しないものの、たとえば、液晶表示装置を観察したときに縞状の外観むらが発生するという問題がある。この縞状の外観むらは、たとえば、絶縁層の表面に生じた溝の部分における光の反射や屈折の影響で生じる。そのため、このような液晶表示パネルでは、たとえば、表示されている映像や画像に、画素サイズよりも大きい周期の縞状のむらが生じるおそれがある。
【0017】
本発明の目的は、たとえば、感光性絶縁膜を露光、現像して形成された絶縁層を有する液晶表示パネルにおける周期的な外観むらを低減することが可能な技術を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概略を説明すれば、以下の通りである。
【0020】
(1)複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルを有し、当該表示パネルは、複数の絶縁層を有し、当該複数の絶縁層のうちの1つ以上の絶縁層は、貫通穴を有し、かつ、他の絶縁層との界面に、複数の溝が、前記画素の寸法よりも大きな間隔で縞状に並んでいる表示装置であって、前記絶縁層の前記溝は、深さが10nm以下である表示装置。
【0021】
(2)前記(1)の表示装置において、前記絶縁層の前記溝は、深さが5nm以下である表示装置。
【0022】
(3)前記(1)の表示装置において、前記表示パネルは、液晶表示パネルである表示装置。
【0023】
(4)複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルの製造過程において、感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、前記感光性絶縁膜の露光は、一度に露光可能な領域を第1の方向に移動させる第1の動作と、前記一度に露光可能な領域を前記第1の方向と直交する第2の方向に移動させる第2の動作とを繰り返し、かつ、一度に露光可能な領域を所定の幅だけ重複させながら行う表示装置の製造方法であって、前記感光性材料膜の露光は、感光させない領域のうちの、前記一度に露光可能な領域が二度以上通る重複領域の外側の領域に対して、前記重複領域に照射される漏れ光の強度の総量と同じ強度の光を照射する表示装置の製造方法。
【0024】
(5)複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルの製造過程において、感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、前記感光性絶縁膜の露光は、一度に露光可能な領域を第1の方向に移動させる第1の動作と、前記一度に露光可能な領域を前記第1の方向と直交する第2の方向に移動させる第2の動作とを繰り返し、かつ、一度に露光可能な領域を所定の幅だけ重複させながら行う表示装置の製造方法であって、前記感光性材料膜の露光は、感光させない領域に対して、感光させる領域に照射する光の強度に比べて十分に小さい強度の光を照射し、かつ、当該感光させない領域のうちの、前記一度に露光可能な領域が二度以上通る重複領域に対して照射される光の強度の総量と、前記重複領域の外側の領域に対して照射する光の強度とを等しくする表示装置の製造方法。
【0025】
(6)前記(4)または(5)の表示装置の製造方法において、前記一度に露光可能な領域は、その外周部に、常時、前記漏れ光のみが照射される領域を有する表示装置の製造方法。
【0026】
(7)前記(4)または(5)の表示装置の製造方法において、前記感光性材料膜の露光は、前記第1の動作を行っている最中に行い、前記一度に露光可能な領域は、前記第2の方向の寸法が前記画素の寸法よりも大きい表示装置の製造方法。
【0027】
(8)前記(4)または(5)の表示装置の製造方法において、前記感光性材料膜の露光は、あらかじめ用意されたレイアウトデータに基づいて作成された描画データによる数値制御で前記感光性材料膜に照射する光のパターンを生成する光変調素子を有する露光装置を用いて行う表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明の表示装置および表示装置の製造方法によれば、たとえば、感光性絶縁膜を露光、現像して形成された絶縁層を有する液晶表示パネルを備える液晶表示装置における周期的な外観むらを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1(a)】本発明に関わる液晶表示パネルにおける画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。
【図1(b)】図1(a)のA−A’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。
【図2(a)】マスクレス露光の露光手順の一例を示す模式平面図である。
【図2(b)】図2(a)の領域AR1を拡大して示した模式平面図である。
【図2(c)】図2(b)のB−B’線上における露光の一例を示す模式断面図である。
【図2(d)】隣接する2つの帯状領域の境界の露光方法の一例を示す模式平面図である。
【図2(e)】図2(d)のC−C’線の位置を感光させないときの光量の一例を示す模式図である。
【図2(f)】図2(d)のC−C’線の位置を感光させるときの光量の一例を示す模式図である。
【図2(g)】従来のマスクレス露光を用いて第2の絶縁層を形成したときの問題点の一例を示す模式断面図である。
【図3】絶縁層の表面に生じる溝の深さと液晶表示パネルに生じるむらのレベルとの関係の一例を示す模式図である。
【図4】本発明による実施例1の感光性材料膜の露光方法を説明するための模式図である。
【図5】実施例1の露光方法の変形例の一例を説明するための模式図である。
【図6(a)】図4に示した露光方法において起こりうる現象の一例を示す模式グラフ図である。
【図6(b)】図5に示した露光方法において起こりうる現象の一例を示す模式グラフ図である。
【図7(a)】従来のマスクレス露光における帯状領域の境界の露光方法の別の一例を示す模式平面図である。
【図7(b)】図7(a)のD−D’線の位置を感光させないときの光量の一例を示す模式図である。
【図7(c)】図7(a)のD−D’線の位置を感光させるときの光量の一例を示す模式図である。
【図8】本発明による実施例2の感光性材料膜の露光方法を説明するための模式図である。
【図9(a)】実施例2の露光方法の第1の変形例を説明するための模式図である。
【図9(b)】実施例2の露光方法の第2の変形例を説明するための模式図である。
【図10】実施例1の露光方法の別の変形例を説明するための模式図である。
【図11】実施例1の露光方法のさらに別の変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
図1(a)および図1(b)は、本発明に関わる液晶表示パネルにおける画素の概略構成の一例を示す模式図である。
図1(a)は、本発明に関わる液晶表示パネルにおける画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。
【0032】
本発明は、感光性の絶縁膜を露光、現像して得られる絶縁層を有する表示パネルの製造方法に関する。本明細書では、そのような表示パネルの製造方法の一例として、液晶表示パネルの製造方法を挙げる。また、本明細書では、液晶表示パネルの一例として、IPS方式のアクティブマトリクス型TFT液晶表示パネル(以下、単に液晶表示パネルという)を挙げる。
【0033】
またさらに、本明細書で例示する液晶表示パネルの構成および動作は周知である。そのため、本明細書では、液晶表示パネルの構成のうちの本発明と直接関係のない構成や、動作に関する詳細な説明は省略する。
【0034】
液晶表示パネルは、たとえば、図1(a)および図1(b)に示すように、TFT基板1、対向基板2、液晶層3、第1の偏光板4、および第2の偏光板5を有する。
【0035】
TFT基板1は、ガラス基板などの第1の絶縁基板6と、当該第1の絶縁基板6の上に形成された第1の薄膜積層体(図示しない)とからなる。第1の薄膜積層体は、たとえば、走査信号線7、第1の絶縁層8、TFT素子の半導体層9、映像信号線10、ソース-ドレイン電極11、第2の絶縁層12、共通電極13、第3の絶縁層14、画素電極15、および第1の配向膜16を有する。
【0036】
このとき、画素電極15は、図1(b)に示したように、第2の絶縁層12に形成された貫通穴22aおよび第3の絶縁層14に形成された貫通穴22b(コンタクトホール)により、ソース-ドレイン電極11と接続している。また、本発明に関わる液晶表示パネルにおける第2の絶縁層12および第3の絶縁層14は、それぞれ、感光性絶縁膜を露光、現像して形成されている。
【0037】
一方、対向基板2は、ガラス基板などの第2の絶縁基板17と、当該第2の絶縁基板17の上に形成された第2の薄膜積層体(図示しない)とからなる。第2の薄膜積層体は、たとえば、ブラックマトリクス18、カラーフィルタ19、平坦化層20、および第2の配向膜21などを有する。
【0038】
液晶表示パネルの製造方法は、TFT基板1を形成する工程、対向基板2を形成する工程、TFT基板1と対向基板2とを張り合わせるとともに液晶層3を封入する工程、そして第1の偏光板4および第2の偏光板5を張り合わせる工程を有する。
【0039】
また、本発明は、主として、これらの工程のうちのTFT基板1を形成する工程に関わり、たとえば、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14を形成する際の露光方法に関わる。そのため、本明細書では、まず、第2の絶縁層12および第3の絶縁層14の、従来の形成方法について簡単に説明する。
【0040】
第2の絶縁層12を形成するときには、まず、半導体層9、映像信号線10、およびソース-ドレイン電極11などが形成された第1の絶縁層8の上に、たとえば、ポジ型の感光性有機絶縁膜を形成(成膜)する。次に、感光性有機絶縁膜を露光し、貫通穴22aを形成する領域のみに光を照射し、当該領域を感光させる。その後、現像し、ベーク(加熱処理)などを行うと、貫通穴22aを有する第2の絶縁層12が得られる。
【0041】
また、第3の絶縁層14も、第2の絶縁層12と同様の方法で形成する。
【0042】
さて、第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光は、従来、フォトマスクを用いて行うのが一般的であった。しかしながら、フォトマスクを用いる場合、たとえば、貫通穴22a,22bの形成位置や寸法に許容範囲を超えるずれが生じたり、形成位置や寸法を変更したりすると、そのたびに、フォトマスクを作り直す必要がある。そのため、フォトマスクを用いる露光方法では、貫通穴22a,22bの形成位置や寸法の修正または変更に、柔軟に対応することが難しいという問題がある。
【0043】
このようなことから、近年の液晶表示パネルの製造方法では、フォトマスクを使用しない露光方法(マスクレス露光)の適用が検討されている。マスクレス露光は、フォトマスクの変わりに、レイアウトデータに基づいて作成した描画データによる数値制御で感光性絶縁膜に照射する光のパターン(すなわち露光パターン)を生成する光変調部材を用いる露光方法である。すなわち、マスクレス露光は、描画データ(レイアウトデータ)の数値を変えるだけで、照射する光のパターンを変更することができる。そのため、第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光にマスクレス露光を適用すれば、貫通穴22a,22bの形成位置や寸法の修正または変更に、柔軟に対応することができる。
【0044】
しかしながら、第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光にマスクレス露光を適用する場合、従来のマスクレス露光では、たとえば、以下に説明するような問題が生じる。
【0045】
図2(a)乃至図2(g)は、マスクレス露光の原理と従来のマスクレス露光における問題点の一例を説明するための模式図である。
図2(a)は、マスクレス露光の露光手順の一例を示す模式平面図である。図2(b)は、図2(a)の領域AR1を拡大して示した模式平面図である。図2(c)は、図2(b)のB−B’線上における露光の一例を示す模式断面図である。図2(d)は、隣接する2つの帯状領域の境界の露光方法の一例を示す模式平面図である。図2(e)は、図2(d)のC−C’線の位置を感光させないときの光量の一例を示す模式図である。図2(f)は、図2(d)のC−C’線の位置を感光させるときの光量の一例を示す模式図である。図2(g)は、従来のマスクレス露光を用いて第2の絶縁層を形成したときの問題点の一例を示す模式断面図である。
【0046】
マスクレス露光で用いる光変調部品は、たとえば、感光性絶縁膜に照射する光の光量(強度)を制御する光量制御素子が線状または行列状に配置されている。そして、描画データを用いて、それぞれの光量制御素子の状態を制御することで、感光性絶縁膜に照射する光の二次元パターンを形成する。
【0047】
第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光において、感光性絶縁膜に照射する光のパターンは、たとえば、0.5μm単位で制御する必要がある。そのため、光変調部品の制御性を考慮すると、マスクレス露光で一度に露光可能な領域(以下、露光領域という)は、感光性絶縁膜の露光対象領域全体に比べて非常に小さくなる。
【0048】
したがって、マスクレス露光で感光性絶縁膜を露光するときには、たとえば、図2(a)に示すように、感光性絶縁膜23上における露光領域ERの位置を第1の方向(v軸方向)に移動させながら露光する第1の動作と、露光領域ERを第1の方向と直交する第2の方向(u軸方向)に移動させる第2の動作とを繰り返して、感光性絶縁膜23の全体を露光する。この露光方法は、別の言い方をすると、感光性絶縁膜23を複数の帯状領域に分割し、帯状領域毎に順次露光する方法といえる。このとき、1回の第1の動作で露光される帯状領域Qの幅WQ(u軸方向の寸法)は、たとえば、1mmから50mm程度である。またこのとき、第1の動作および第2の動作は、それぞれ、たとえば、露光領域ER(光変調部品)を固定しておき、感光性絶縁膜23が形成された基板24をv軸方向およびu軸方向に移動させるのが一般的である。
【0049】
なお、液晶表示パネル(TFT基板1)を製造するときには、多面取りと呼ばれる、一枚のマザーガラスを用いて複数枚のTFT基板1を一括して製造する方法をとるのが一般的である。この場合、図1(a)に示したTFT基板1におけるx軸方向およびy軸方向と、感光性絶縁膜23を露光するときのu軸方向およびv軸方向との関係には、2通りある。すなわち、TFT基板1におけるx軸方向と感光性絶縁膜23を露光するときのu軸方向とが平行になる場合と、TFT基板1におけるx軸方向と感光性絶縁膜23を露光するときのv軸方向とが平行になる場合の2通りである。
【0050】
また、1回の第1の動作に着目すると、当該動作により露光する帯状領域Qは、たとえば、図2(b)および図2(c)に示すように、多数の微細帯状領域Rに分割し、微細帯状領域R毎に独立して露光する。このとき、微細帯状領域Rの幅W(u軸方向の寸法)は、たとえば、0.5μm程度である。
【0051】
またこのとき、光変調部品25の光量制御素子25aは、たとえば、第2の動作で移動する方向、すなわち感光性絶縁膜23の短辺方向(u軸方向)に並んでいる。そのため、それぞれの光量制御素子25aの状態(照射する光の光量)を制御することで、露光領域ERには、図2(c)に示したように、感光した領域と、感光していない領域とを作ることができる。なお、図2(c)に示した感光性絶縁膜23は、ドットパターンを付した部分が露光により感光した領域であり、白地の部分が感光していない領域である。
【0052】
また、それぞれの光量制御素子25aの状態は、レイアウトデータに基づいて作製される描画データにより制御する。この描画データは、数値データであり、たとえば、光を照射する領域の位置や、照射する光の光量などが指定されている。
【0053】
このようなマスクレス露光は、前述のように、感光性絶縁膜23を複数の帯状領域Qに分割し、帯状領域Q毎に順次露光する方法といえる。そのため、このようなマスクレス露光では、隣接する2つの帯状領域Qの境界に、露光されない領域が生じないようにする必要がある。したがって、このようなマスクレス露光では、たとえば、図2(d)に示すように、1回の第1の動作で露光する帯状領域Qの幅WQを、露光領域ERの幅WERよりも狭くし、隣接する2つの帯状領域Qの境界BLQに幅WCO1の重複領域、すなわち一度に露光可能な領域ERが2度通る領域を設ける。なお、図2(d)は、図2(a)の領域AR2を拡大して示した図である。また、図2(d)では、中央の境界BLQを挟んで隣接する2つの帯状領域Qを区別するために、符号Qに添え字nおよびn+1を付している。
【0054】
ところで、このようなマスクレス露光により感光性絶縁膜23を露光する場合、光量制御素子25aの状態は、通常、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量(強度)の光を照射する状態と、光を照射しない状態の2通りである。
【0055】
すなわち、図2(d)に示したC−C’線の位置を感光させない場合は、境界BL_{ Q }の左側の帯状領域Qnを露光するときも、右側の帯状領域Qn+1を露光するときも、当該位置と対応する光量制御素子25aをオフの状態(光を照射しない状態)にする。
【0056】
しかしながら、光変調部品25を用いて感光性絶縁膜23を露光する場合、たとえば、オフの状態(光を照射しない状態)にしている光量制御素子25aからも若干の光が漏れ、感光性絶縁膜23に照射される。そのため、図2(d)に示したC−C’線の位置を感光させない場合の、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係は、たとえば、図2(e)に示した太線P1,P2,P3ような関係になる。
【0057】
なお、図2(e)において、IRn、IRn+1、およびIRTは、それぞれ、光の強度の相対値であり、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量を1としている。また、横軸Cuは、u軸方向の座標を表しており、座標U1から座標U4の区間が、図2(d)のC−C’線の区間に相当する。
【0058】
すなわち、図2(d)に示したC−C’線の位置を感光させない場合、隣接する2つの帯状領域Qn,Qn+1の境界BLQにある重複領域(座標U2から座標U3までの区間)は、上記のような光の漏れにより、強度ILOFFの光(以下、漏れ光という)が二度照射されるので、重複領域の外側に比べて露光量が約2倍になる。
【0059】
漏れ光の強度ILOFFは、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の1%程度である。そのため、感光性絶縁膜23に強度ILOFFの漏れ光が照射されても、表面がわずかに感光するだけである。
【0060】
しかしながら、感光性絶縁膜23の感光される量(深さ)は、照射される光の強度(光量)が大きくなるにつれて多くなる(深くなる)。そのため、図2(e)に示したように、部分的に照射される光の強度が大きくなる箇所があると、その箇所だけ、感光される量が多くなる。したがって、感光性材料膜23がポジ型の場合、露光後に現像して得られる絶縁層の表面には、照射された漏れ光の強度の差を反映した段差を有する溝が生じる。
【0061】
ちなみに、図2(d)に示したC−C’線の位置を感光させる場合の、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係は、たとえば、図2(f)に示した太線P1’,P2’,P3’のような関係にする。
【0062】
なお、図2(f)において、IRn、IRn+1、およびIRTは、それぞれ、光の強度の相対値であり、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量を1としている。また、横軸Cuは、u軸方向の座標を表しており、座標U1から座標U4の区間が図2(d)のC−C’線の区間に相当し、座標U2から座標U3の区間が重複領域に相当する。
【0063】
すなわち、図2(d)に示したC−C’線の位置を感光させる場合、隣接する2つの帯状領域Qn,Qn+1の境界BLQにある重複領域(座標U2から座標U3までの区間)に照射される光の強度の総量は、上記のような光の漏れにより、重複領域の外側に比べて強度ILOFFだけ多くなる。しかしながら、感光性絶縁膜23のうちの、照射される光の強度の相対値が1または1よりも大きい値の領域は、その強度の値に関係なく完全に感光する。そのため、図2(d)に示したC−C’線の位置を感光させる場合は、重複領域に照射される光の強度の総量の相対値が1以上であっても問題ない。
【0064】
このようなことから、図1(a)および図1(b)に示したような構成の画素を有する液晶表示パネルの第2の絶縁層12を、ポジ型の感光性有機絶縁膜を用い、かつ、従来のマスクレス露光を適用して形成すると、たとえば、図2(g)に示すように、第2の絶縁層12の表面には、幅WCO1、深さdの溝26が縞状に生じる。この溝26は、隣接する2つの帯状領域Qの境界BLQに生じるので、溝26の間隔は、帯状領域Qの幅WQになる。
【0065】
また、図2(g)に示したように、TFT基板1におけるx軸方向と感光性有機絶縁膜を露光するときのu軸方向とが平行になる場合、複数の溝26は、液晶表示パネルの表示領域において走査信号線7の延びる方向に並ぶ。
【0066】
またさらに、帯状領域Qの幅WQは、前述のように、1mm〜50mm程度である。これに対し、画素のx軸方向の寸法は、数十μm程度である。したがって、第2の絶縁層12の表面に生じる縞状の溝26は、画素の寸法よりも十分に大きい間隔で並んでいることになる。
【0067】
また、TFT基板1におけるx軸方向と感光性有機絶縁膜を露光するときのv軸方向とが平行になる場合、複数の溝26は、液晶表示パネルの表示領域において映像信号線10の延びる方向に並ぶ。画素のy軸方向の寸法も数十μm程度であるので、この場合も、第2の絶縁層12の表面に生じる縞状の溝26は、画素の寸法よりも十分に大きい間隔で並んでいることになる。
【0068】
また、第3の絶縁層14を形成するときにも、ポジ型の感光性有機絶縁膜を用い、かつ、従来のマスクレス露光を適用すると、第3の絶縁層14の表面には、第2の絶縁層12と同様の溝26が縞状に生じる。
【0069】
ポジ型の感光性有機絶縁膜を用い、かつ、従来のマスクレス露光を適用して形成された第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に生じる縞状の溝26は、画素の動作への影響はほとんどないものの、たとえば、外観を検査したときに、縞状のむらとして観測される。本願発明者らが調べた結果では、この縞状のむらは、映像や画像を表示しているときには観測されないが、使用していないときには肉眼でも観測できる。すなわち、上記の縞状のむらは、現在のところ、表示品質への影響は無いと考えられるが、使用していないときにこのようなむらが生じることにより、液晶表示装置としての品位を下げてしまう。
【0070】
また、使用していないときにこのような縞状のむらが観測される場合、たとえば、映像や画像を低輝度(低階調)で表示しているときに、表示している映像や画像に縞状のむらが重なり、表示品質を低下させる原因になるおそれがある。またさらに、このような縞状のむらは、主として、外光が第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面で反射することにより生じる。そのため、反射型や半透過型の液晶表示装置では、このような縞状のむらにより表示品位が低下する可能性が高い。
【0071】
なお、上記のような縞状のむらは、図1(a)および図1(b)に示したような構成の画素を有する液晶表示パネルに限らず、従来のマスクレス露光を適用して形成された絶縁層を有する液晶表示パネル全般に生じる。
【実施例1】
【0072】
図3および図4は、本発明による実施例1の感光性絶縁膜の露光方法を説明するための模式図である。
図3は、絶縁層の表面に生じる溝の深さと液晶表示パネルに生じるむらのレベルとの関係の一例を示す模式図である。図4は、本発明による実施例1の感光性材料膜の露光方法を説明するための模式図である。
【0073】
マスクレス露光を適用して形成された第2の絶縁層12や第3の絶縁層14を有する液晶表示パネルにおいて、上記のような縞状のむらが観測されるのは、それらの絶縁層の表面に生じた溝と他の平坦な部分とで外光反射輝度に差があるからだと考えられる。また、上記の外光反射輝度の差は、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面の溝が深くなるほど大きくなる。そのため、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面の溝が深くなるほど、上記の縞状のむらが強くなる。したがって、縞状のむらが観測されないようにするには、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に、マスクレス露光に起因する溝が生じないようにすることが望ましい。しかしながら、マスクレス露光の場合、上記のように、露光領域ERが二度通る重複領域と、一度しか通らない領域とがあるため、これらの領域における露光量を一致させることは難しい。
【0074】
そこで、本願発明者らは、まず、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に生じる溝26の深さdと液晶表示パネルに生じるむらの目視判定レベルとの関係を調べた。その結果を、図3に示す。なお、図3は、横軸が溝26の深さd(nm)、縦軸がむらの目視判定レベルULVのグラフ図である。また、目視判定レベルULVは、数値が大きいほどむらが弱く、4または5の場合はむらを視認できないレベル(合格レベル)であり、目視レベルが1乃至3の場合はむらが視認できるレベル(不合格レベル)である。また、目視判定レベルULVの数値とむらの強さとの関係は、具体的に言うと、下記の通りである。
【0075】
まず、マスクレス露光に起因する縞状のむらが視認できない場合、具体的には散乱光強度で0.1%未満の場合の目視判定レベルULVを5としている。また、むらが散乱光強度として確認できる場合の目視判定レベルULVは、0.1%以上0.2%未満であれば4とし、0.2%以上0.4%未満であれば3とし、0.4%以上0.6%未満であれば2とし、0.6%以上であれば1としている。
【0076】
図3からわかるように、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に生じる溝26の深さdが10nm以下であれば、目視判定レベルULVが4または5になり、マスクレス露光に起因するむらが観測されなくなる。特に、溝26の深さdが5nm以下の場合は、目視判定レベルULVが5になり、マスクレス露光に起因するむらが視認できない。したがって、実施例1の露光方法では、マスクレス露光に起因する溝26の深さdが10nm以下(望ましくは5nm以下)になるようにすることを目標にする。
【0077】
ポジ型の感光性有機絶縁層をマスクレス露光で露光して、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14を形成する場合、光を照射する必要があるのは、コンタクトホール22a,22bを形成する領域のみである。このとき、その他の部分には光が照射されないようにするが、当該その他の部分には、前述のように、漏れ光が照射される。
【0078】
図2(d)に示したC−C’線の位置がコンタクトホール22a,22bを形成する領域に含まれない場合、すなわち当該位置に漏れ光が照射される場合、実施例1の感光性絶縁膜の露光方法では、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係が、たとえば、図4に示した太線P4,P5,P6のような関係になるようにする。
【0079】
なお、図4において、IRn、IRn+1、およびIRTは、それぞれ、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度の相対値、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度の相対値、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量の相対値を表している。また、横軸Cuは、u軸方向の座標を表しており、座標U1から座標U4の区間が図2(d)のC−C’線の区間に相当し、座標U2から座標U3の区間が重複領域に相当する。また、光の強度の相対値IRn、IRn+1、およびIRTは、それぞれ、感光性材料膜23を感光させるのに必要十分な光量を1としている。
【0080】
すなわち、図2(d)に示したC−C’線の位置を感光させない場合、実施例1の露光方法では、まず、隣接する2つの帯状領域Qn,Qn+1の境界BLQにある重複領域(座標U2から座標U3までの区間)の露光を担う光量制御素子25aを、光を照射しない状態にし、強度ILOFFの漏れ光のみが照射されるようにする。
【0081】
また、重複領域の外側の領域、すなわち露光領域ERが一度しか通らない領域は、漏れ光の強度ILOFFの2倍に相当する強度ILAOの光が照射されるようにする。すなわち、露光領域ERが一度しか通らない領域の露光を担う光量制御素子25aは、強度ILAOの光が照射されるような状態にする。
【0082】
こうすると、重複領域およびその外側の領域に照射される光の強度の総量IRTは、一定の値ILAOになる。そのため、コンタクトホール22a,22bを形成する領域を除く他の領域に照射される光の強度は概ね一定になり、感光する量(深さ)も概ね一定になる。したがって、現像後に得られる第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面には、マスクレス露光に起因する縞状の溝26が生じないと考えられる。
【0083】
しかしながら、実際には、重複領域のように強度ILOFFの光を2回照射した場合と、強度ILAO(=2×ILOFF)を1回照射した場合とでは、感光する量(深さ)に差が生じることがある。また、光量制御素子25aを介して照射される光の強度には、光量制御素子25a毎に若干のばらつきがある。そのため、照射される光の強度の総量IRTは、実際には、図4に示した太線P6のような一定の値にはならず、重複領域と、その外側の領域とで、わずかな差が生じることがある。したがって、図4に示したような制御をした場合でも、マスクレス露光に起因する縞状の溝26が生じることが多い。
【0084】
そこで、本願発明者らが、TFT基板1を形成する工程のうちの、第2の絶縁層12および第3の絶縁層14を形成する工程において、図4に示したような条件を満たす描画データを用いてマスクレス露光を行い、表面に生じる溝26の深さdを測定したところ、その平均値は8nmであった。また、上記のTFT基板1を用いた液晶表示パネルを作製し、外観の検査をしたところ、マスクレス露光に起因する縞状のむらの目視判定レベルULVは4(合格レベル)であった。
【0085】
すなわち、実施例1の露光方法では、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に、マスクレス露光に起因する縞状の溝26が生じることもある。しかしながら、実施例1の露光方法を適用して形成された第2の絶縁層12および第3の絶縁層14を有する液晶表示パネル(液晶表示装置)では、当該縞状の溝26による縞状のむらを観測できなくなる。したがって、実施例1の露光方法を適用して形成された液晶表示パネル(液晶表示装置)では、縞状の溝26による外観品位の低下、表示品位の低下を防ぐことができる。
【0086】
以上説明したように、実施例1の露光方法を適用して形成された液晶表示パネル(液晶表示装置)は、マスクレス露光に起因する外観品位の低下、表示品位の低下を防ぐことができる。
【0087】
また、実施例1では、重複領域の外側に照射する光の強度ILAOを、機械的に、重複領域に照射される漏れ光の強度ILOFFの2倍にしている。しかしながら、重複領域の外側に照射する光の強度ILAOは、これに限らず、たとえば、重複領域に照射される漏れ光の強度の総量をより正確に測定し、当該総量と等しい強度になるように設定してもよいことはもちろんである。またさらに、重複領域の外側に照射する光の強度ILAOは、たとえば、現像したときの重複領域の膜厚の減少量を測定し、重複領域の外側における膜厚の減少量が、重複領域における減少量と等しくなるような強度に設定してもよいことはもちろんである。
【0088】
図5は、実施例1の露光方法の変形例の一例を説明するための模式図である。
【0089】
実施例1の露光方法の一例として、図4に挙げた方法は、描画データの基になるレイアウトデータにおいて感光させないように指定されている領域全体に、重複領域に照射される漏れ光の強度ILOFFの2倍の光が照射されるようにすることで、マスクレス露光に起因する縞状の溝26の深さdを小さくしている。また、図4に挙げた方法では、重複領域のうちの感光させない部分に、強度ILOFFの漏れ光のみが照射されるようになっており、1回の第1の動作に着目すると、当該露光領域ERが一度しか通らない領域と重複領域との境界で、照射される光の強度が不連続に変化している。
【0090】
しかしながら、マスクレス露光に起因する縞状の溝26の深さdを小さくする方法は、このような方法に限らず、別の方法であっても構わないことはもちろんである。すなわち、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係は、たとえば、図5に示した太線P4’,P5’,P6’のような関係にしてもよい。
【0091】
図5に示した露光方法では、重複領域の外側には強度ILAO(=2・ILOFF)の光を照射し、重複領域には、露光領域ERの外側に向かうにつれて、強度ILAOから強度ILOFFへと段階的に減少する光を照射する。
【0092】
このようにしても、重複領域のうちの、レイアウトデータにおいて光を照射しないように指定されている領域に照射される光の強度の総量IRTは、太線P6’のように、概ね均一の値(ILAO)になる。そのため、現像後に残る感光性絶縁膜23の表面に生じる溝26の深さdは、液晶表示パネル(液晶表示装置)の外観品位や表示品位を低下させない程度まで小さくなると考えられる。
【0093】
そこで、本願発明者らが、TFT基板1を形成する工程のうちの、第2の絶縁層12および第3の絶縁層14を形成する工程において、図5に示したような条件を満たす描画データを用いてマスクレス露光を行い、表面に生じる溝26の深さdを測定したところ、その平均値は4nmであった。また、上記のTFT基板1を用いた液晶表示パネルを作製し、外観の検査をしたところ、マスクレス露光に起因する縞状のむらの目視判定レベルULVは5(合格レベル)であった。
【0094】
すなわち、図5に示したような露光方法にすると、図4に示した露光方法に比べ、マスクレス露光に起因する液晶表示パネル(液晶表示装置)の縞状のむらを軽減する効果が高いと考えられる。
【0095】
図6(a)および図6(b)は、実施例1の変形例における別の作用効果の一例を説明するための模式図である。
図6(a)は、図4に示した露光方法において起こりうる現象の一例を示す模式グラフ図である。図6(b)は、図5に示した露光方法において起こりうる現象の一例を示す模式グラフ図である。
【0096】
実施例1の露光方法は、前述のように、露光領域ERを第1の方向(v軸方向)に移動させながら露光する第1の動作と、露光領域ERを第1の方向と直交する第2の方向(u軸方向)に移動させる第2の動作を繰り返す露光方法である。このとき、第1の動作および第2の動作は、それぞれ、たとえば、絶縁基板6(マザーガラス)を搭載したステージを数値制御により移動させて行う。
【0097】
このとき、第2の動作は、たとえば、図4に示したように、左側の帯状領域Qnを露光するときの露光領域ERの端の座標U3と、右側の帯状領域Qn+1を露光するときの露光領域ERの端の座標U2との距離が、所定の値(WCO1)になるように行われる。
【0098】
しかしながら、第2の動作をするときには、たとえば、図6(a)に示すように、右側の帯状領域Qn+1を露光するときの露光領域ERの端が座標U2’にずれ、座標U3との距離が所定の値よりもΔWだけ小さくなることもある。
【0099】
この場合、照射される光の強度の総量IRTの分布は、図6(a)に示した太線P6のようになり、隣接する帯状領域の境界BLQに、照射される光の強度の総量が半分になる区間が生じる。この場合、感光性絶縁膜23を現像すると、現像後に残る絶縁膜の表面には、たとえば、二重線状の段差が、帯状領域Qの幅WQで縞状に並ぶことになる
【0100】
一方、変形例の露光方法において第2の動作をしたときに、たとえば、図6(b)に示すように、右側の帯状領域Qn+1を露光するときの露光領域ERの端が座標U2’にずれ、座標U3との距離が所定の値よりもΔWだけ小さくなると、照射される光の強度の総量は、太線P6’のようになる。すなわち、重複領域には、ずれΔWによって照射される光の強度の総量が減少する区間が生じるものの、その減少量は、図6(a)に示した場合に比べて少ない。そのため、図6(a)に示した場合に比べて、現像後に残る感光性絶縁膜23の表面に生じる段差による液晶表示パネル(液晶表示装置)の外観品位や表示品位の低下を防ぐ効果が高いと考えられる。
【実施例2】
【0101】
図7(a)乃至図7(c)は、従来のマスクレス露光における帯状領域の境界の露光方法の別の一例を示す模式図である。
図7(a)は、従来のマスクレス露光における帯状領域の境界の露光方法の別の一例を示す模式平面図である。図7(b)は、図7(a)のD−D’線の位置を感光させないときの光量の一例を示す模式図である。図7(c)は、図7(a)のD−D’線の位置を感光させるときの光量の一例を示す模式図である。
【0102】
実施例1では、マスクレス露光における帯状領域の境界の露光方法として、図2(d)乃至図2(f)に示したような方法を挙げている。すなわち、実施例1の露光方法は、光変調部品25の有する全ての光量制御素子25aが、露光領域ERの露光に関与する露光方法である。
【0103】
しかしながら、マスクレス露光に用いる光変調部品25の中には、露光領域ERの露光に関与する光量制御素子25aの外側に、たとえば、光量の検査や調整をするときにだけ使用される光量制御素子(以下、ダミー素子という)が配置されているものもある。
【0104】
このようなダミー素子を有する光変調部品25を用いて感光性絶縁膜23を露光する場合、当該ダミー素子は、常時、光を照射しない状態に設定されている。
【0105】
しかしながら、ダミー素子は、露光に関与する光量制御素子25aと同等の構成であるため、光を照射しない状態にしていても、当該ダミー素子を介して前述のような漏れ光が感光性絶縁膜23に照射される。
【0106】
そのため、ダミー素子を有する光変調部品25を用いて感光性絶縁膜23を露光する場合は、たとえば、図7(a)に示したように、露光領域ERの両端に、幅WDの、常時漏れ光が照射される領域ER’が存在する。
【0107】
したがって、図7(a)に示したD−D’線の位置を感光させない場合の、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係は、たとえば、図7(b)に示した太線P7,P8,P9のような関係になる。すなわち、強度ILOFFの漏れ光が二度照射される領域の幅WCO2(=WCO1+2・WD)が、図2(e)に示した場合よりも広くなり、現像後に表面に生じる溝26の幅が広くなる。
【0108】
また、図7(a)に示したD−D’線の位置を感光させる場合の、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係は、たとえば、図7(c)に示した太線P7’,P8’,P9’のような関係になる。なお、図7(a)に示したD−D’線の位置を感光させる場合は、前述のように、重複領域に照射される光の強度の総量IRTの相対値が1以上であっても問題ない。
【0109】
実施例2では、このような光変調部品25を用いたマスクレス露光において、当該マスクレス露光に起因する縞状の溝26の発生を抑える方法について簡単に説明する。
【0110】
図8は、本発明による実施例2の感光性材料膜の露光方法を説明するための模式図である。
【0111】
実施例2の感光性絶縁膜23の露光方法では、図7(a)に示したD−D’線の位置を感光させない場合の、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係を、たとえば、図8に示した太線P10,P11,P12のような関係にする。
【0112】
すなわち、実施例2の露光方法では、まず、隣接する2つの帯状領域Qn,Qn+1の境界BLQにある重複領域(座標U5から座標U6までの区間)の露光を担う光量制御素子25aを、光を照射しない状態にし、強度ILOFFの漏れ光のみが照射されるようにする。
【0113】
このとき、左側の帯状領域Qnの露光では、座標U3から座標U6までの区間は、常時漏れ光が照射される領域ER’である。そのため、左側の帯状領域Qnの露光では、座標U5から座標U3までの区間の露光を担う光量制御素子25aを、光を照射しない状態にし、強度ILOFFの漏れ光のみが照射されるようにする。
【0114】
また、右側の帯状領域Qn+1の露光では、座標U5から座標U2までの区間は、常時漏れ光が照射される領域ER’である。そのため、右側の帯状領域Qn+1の露光では、座標U2から座標U6までの区間の露光を担う光量制御素子25aを、光を照射しない状態にし、強度ILOFFの漏れ光のみが照射されるようにする。
【0115】
また、常時漏れ光が照射される領域ER’を含む重複領域の外側にある領域は、漏れ光の強度ILOFFの2倍に相当する強度ILAOの光が照射されるようにする。
【0116】
こうすると、重複領域およびその外側の領域に照射される光の強度の総量IRTは、一定の値ILAOになる。そのため、コンタクトホール22a,22bを形成する領域を除く他の領域に照射される光の強度は概ね一定になり、感光する量(深さ)も概ね一定になる。したがって、現像後に得られる第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面には、マスクレス露光に起因する縞状の溝26が生じないと考えられる。
【0117】
しかしながら、図8に示したような制御をした場合でも、実施例1で説明したような理由により、マスクレス露光に起因する縞状の溝26が生じることが多い。
【0118】
そこで、本願発明者らが、TFT基板1を形成する工程のうちの、第2の絶縁層12および第3の絶縁層14を形成する工程において、図8に示したような条件を満たす描画データを用いてマスクレス露光を行い、表面に生じる溝26の深さdを測定したところ、その平均値は8nmであった。また、上記のTFT基板1を用いた液晶表示パネルを作製し、外観の検査をしたところ、マスクレス露光に起因する縞状のむらの目視判定レベルULVは4(合格レベル)であった。
【0119】
すなわち、実施例2の露光方法でも、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に、マスクレス露光に起因する縞状の溝26が生じることがある。しかしながら、実施例2の露光方法を適用して形成された第2の絶縁層12および第3の絶縁層14を有する液晶表示パネル(液晶表示装置)では、当該縞状の溝26による縞状のむらを観測できなくなる。したがって、実施例2の露光方法を適用して形成された液晶表示パネル(液晶表示装置)では、縞状の溝26による外観品位の低下、表示品位の低下を防ぐことができる。
【0120】
以上説明したように、実施例2の露光方法を適用して形成された液晶表示パネル(液晶表示装置)は、マスクレス露光に起因する外観品位の低下、表示品位の低下を防ぐことができる。
【0121】
また、実施例2では、重複領域の外側に照射する光の強度ILAOを、機械的に、重複領域に照射される漏れ光の強度ILOFFの2倍にしている。しかしながら、重複領域の外側に照射する光の強度ILAOは、これに限らず、たとえば、重複領域に照射される漏れ光の強度の総量をより正確に測定し、当該総量と等しい強度になるように設定してもよいことはもちろんである。またさらに、重複領域の外側に照射する光の強度ILAOは、たとえば、現像したときの重複領域の膜厚の減少量を測定し、重複領域の外側における膜厚の減少量が、重複領域における減少量と等しくなるような強度に設定してもよいことはもちろんである。
【0122】
図9(a)および図9(b)は、実施例2の露光方法の変形例を説明するための模式図である。
図9(a)は、実施例2の露光方法の第1の変形例を説明するための模式図である。図9(b)は、実施例2の露光方法の第2の変形例を説明するための模式図である。
【0123】
実施例2の露光方法の一例として、図8に挙げた方法は、描画データの基になるレイアウトデータにおいて感光させないように指定されている領域全体に、重複領域に照射される漏れ光の強度ILOFFの2倍の光が照射されるようにすることで、マスクレス露光に起因する縞状の溝26の深さdを小さくしている。
【0124】
しかしながら、実施例1でも述べたように、マスクレス露光に起因する縞状の溝26の深さdを小さくする方法は、このような方法に限らず、別の方法であっても構わないことはもちろんである。すなわち、実施例2の露光方法における左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係は、たとえば、図9(a)に示した太線P10’,P11’,P12’のような関係にしてもよい。
【0125】
図9(a)に示した露光方法では、重複領域(常時漏れ光が照射される領域ER’を含む)の外側には強度ILAO1(=3・ILOFF)の光を照射し、重複領域には、二度の露光により照射される光の強度の総量がILAO1(=3・ILOFF)になるような強度の光を照射する。
【0126】
このとき、左側の帯状領域Qnの露光では、座標U3から座標U6までの区間が、常時漏れ光が照射される領域ER’である。また、座標U5から座標U2までの区間は、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに漏れ光が照射される領域である。そのため、左側の帯状領域Qnの露光では、座標U5から座標U2までの区間の露光を担う光量制御素子25aを、光量ILAO2(=2・ILOFF)が照射される状態に制御する。また、座標U2から座標U3までの区間の露光を担う光量制御素子25aは、露光領域ERの外側に向かうにつれて、強度ILAO2(=2・ILOFF)から強度ILOFFへと段階的に減少するような状態に制御する。
【0127】
一方、右側の帯状領域Qn+1の露光では、座標U5から座標U2までの区間が、常時漏れ光が照射される領域ER’である。また、座標U3から座標U6までの区間は、左側の帯状領域Qnを露光するときに漏れ光が照射される領域である。そのため、右側の帯状領域Qn+1の露光では、座標U3から座標U6までの区間の露光を担う光量制御素子25aを、光量ILAO2(=2・ILOFF)が照射される状態に制御する。また、座標U2から座標U3までの区間の露光を担う光量制御素子25aは、露光領域ERの外側に向かうにつれて、強度ILAO2(=2・ILOFF)から強度ILOFFへと段階的に減少するような状態に制御する。
【0128】
こうすると、照射される光の強度の総量IRTは、太線P12’のように、均一の値(ILAO1)になる。そのため、現像後に残る感光性絶縁膜23の表面に生じる溝26の深さdは、液晶表示パネル(液晶表示装置)の外観品位や表示品位を低下させない程度まで小さくなると考えられる。
【0129】
そこで、本願発明者らが、TFT基板1を形成する工程のうちの、第2の絶縁層12および第3の絶縁層14を形成する工程において、図9(a)に示したような条件を満たす描画データを用いてマスクレス露光を行い、表面に生じる溝26の深さdを測定したところ、その平均値は4nmであった。また、上記のTFT基板1を用いた液晶表示パネルを作製し、外観の検査をしたところ、マスクレス露光に起因する縞状のむらの目視判定レベルULVは5(合格レベル)であった。
【0130】
すなわち、図9(a)に示したような露光方法にすると、図8に示した露光方法に比べ、マスクレス露光に起因する液晶表示パネル(液晶表示装置)の縞状のむらを軽減する効果が高いと考えられる。
【0131】
ところで、図9(a)に示した露光方法では、レイアウトデータにおいて感光させないように指定されている領域に対し、漏れ光の約3倍の光量の光が照射される。そのため、現像したときの絶縁膜の減少量が多くなる。そのため、当該減少量分を考慮して感光性絶縁膜を形成するときの膜厚を厚くする必要があり、たとえば、材料費の増大の要因になる。
【0132】
したがって、重複領域に対する光量を段階的に変化させる場合は、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係を、たとえば、図9(b)に示した太線P10’,P11’,P12’のような関係にしてもよい。
【0133】
図9(b)に示すように、露光領域ERのみが一度だけ通る領域の光量をILAO(=2・ILOFF)、露光領域ER,ER’が一度だけ通る領域の光量をILAO’(=1.5・ILOFF)、
にし、重複領域の光量をILAO’からILOFFに段階的に減少させれば、感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTはILAO(=2・ILOFF)になる。すなわち、図8に示した露光方法において感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTと等しくなる。そのため、現像時の絶縁膜の減少量を抑えながら、表面の縞状の段差の発生も防ぐことができるという点では、図9(a)に示した露光方法よりも、図9(b)に示した露光方法のほうが望ましいと言える。
【0134】
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
【0135】
たとえば、実施例1および実施例2では、図1(a)および図1(b)に示した構成の画素を有する液晶表示パネルにおける第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の形成方法を例に挙げた。しかしながら、本発明の露光方法は、これに限らず、他の構成の画素を有する液晶表示パネル(TFT基板1)の絶縁層の形成方法にも適用できることはもちろんである。
【0136】
また、実施例1および実施例2では、感光性絶縁膜を露光するときに、当該感光性絶縁膜を複数の帯状領域Qに分割し、第1の動作を行う最中のみに露光している。しかしながら、本発明の露光方法における露光領域ERの移動方法は、感光性絶縁膜の全体を走査する方法であればよく、本明細書で挙げた方法に限らず、適宜変更可能であることはもちろんである。したがって、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14などの表面に生じる複数の溝26は、縞状に限らず、環状(同心円状)や渦巻き状などになる場合もあることはもちろんである。
【0137】
また、本発明の露光方法が、液晶表示パネル(TFT基板1)の絶縁層の形成方法に限らず、たとえば、有機EL材料を用いた自発光型の表示パネルの絶縁層の形成方法などにも適用できることはもちろんである。
【0138】
またさらに、実施例2の露光方法の変形例として図9(a)および図9(b)に示したような露光方法が、実施例1の露光方法にも適用できることはもちろんである。
【0139】
図10は、実施例1の露光方法の別の変形例を説明するための模式図である。図11は、実施例1の露光方法のさらに別の変形例を説明するための模式図である。
【0140】
実施例1の露光方法の変形例として図5に示した露光方法では、重複領域に対して照射する光の強度が、その外側に対して照射する光の強度ILAOから漏れ光の強度ILOFFに段階的に減少している。しかしながら、重複領域に対して照射する光の強度を段階的に変化させる場合、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係を、たとえば、図10に示した太線P4’,P5’,P6’のような関係にしてもよいことはもちろんである。すなわち、露光領域ERが一度しか通らない領域と重複領域との境界部分において、たとえば、照射する光の強度が不連続な変化をさせてもよい。このような場合でも、重複領域とその外側の領域において、感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTが一定になるような条件(光量)で露光すれば、現像後の絶縁膜の表面に縞状の段差が生じないようにすることができる。
【0141】
また、図10に示した露光方法では、感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTがILAO1(=3・ILOFF)になる。したがって、重複領域とその外側の領域との境界部分において光量を不連続に変化させる場合は、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射する光の強度IRn、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射する光の強度IRn+1、および感光性絶縁膜23に照射される光の強度の総量IRTの関係を、たとえば、図11に示した太線P4’,P5’,P6’のような関係にしたほうが望ましいといえる。
【符号の説明】
【0142】
1 TFT基板
2 対向基板
3 液晶層
4 第1の偏光板
5 第2の偏光板
6 第1の絶縁基板
7 走査信号線
8 第1の絶縁層
9 (TFT素子の)半導体層
10 映像信号線
11 ソース-ドレイン電極
12 第2の絶縁層
13 共通電極
14 第3の絶縁層
15 画素電極
16 第1の配向膜
17 第2の絶縁基板
18 ブラックマトリクス
19 カラーフィルタ
20 平坦化層
21 第2の配向膜
22a,22b コンタクトホール
23 感光性絶縁膜
24 基板
25 光変調部品
25a 光量制御素子
26 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルを有し、
当該表示パネルは、複数の絶縁層を有し、
当該複数の絶縁層のうちの1つ以上の絶縁層は、貫通穴を有し、かつ、他の絶縁層との界面に、複数の溝が、前記画素の寸法よりも大きな間隔で縞状に並んでいる表示装置であって、
前記絶縁層の前記溝は、深さが10nm以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記絶縁層の前記溝は、深さが5nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルの製造過程において、
感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、
前記感光性絶縁膜の露光は、一度に露光可能な領域を第1の方向に移動させる第1の動作と、前記一度に露光可能な領域を前記第1の方向と直交する第2の方向に移動させる第2の動作とを繰り返し、かつ、一度に露光可能な領域を所定の幅だけ重複させながら行う表示装置の製造方法であって、
前記感光性材料膜の露光は、感光させない領域のうちの、前記一度に露光可能な領域が二度以上通る重複領域の外側の領域に対して、前記重複領域に照射される漏れ光の強度の総量と同じ強度の光を照射することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項5】
複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルの製造過程において、
感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、
前記感光性絶縁膜の露光は、一度に露光可能な領域を第1の方向に移動させる第1の動作と、前記一度に露光可能な領域を前記第1の方向と直交する第2の方向に移動させる第2の動作とを繰り返し、かつ、一度に露光可能な領域を所定の幅だけ重複させながら行う表示装置の製造方法であって、
前記感光性材料膜の露光は、感光させない領域に対して、感光させる領域に照射する光の強度に比べて十分に小さい強度の光を照射し、かつ、当該感光させない領域のうちの、前記一度に露光可能な領域が二度以上通る重複領域に対して照射される光の強度の総量と、前記重複領域の外側の領域に対して照射する光の強度とを等しくすることに特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記一度に露光可能な領域は、その外周部に、常時、前記漏れ光のみが照射される領域を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記感光性材料膜の露光は、前記第1の動作を行っている最中に行い、
前記一度に露光可能な領域は、前記第2の方向の寸法が前記画素の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記感光性材料膜の露光は、あらかじめ用意されたレイアウトデータに基づいて作成された描画データによる数値制御で前記感光性材料膜に照射する光のパターンを生成する光変調素子を有する露光装置を用いて行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の表示装置の製造方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【図2(g)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−123271(P2011−123271A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280495(P2009−280495)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】