説明

表示装置

容量性ディスプレイ(H1)とさらなるディスプレイH2とを含む表示装置の駆動回路。駆動回路は、使用時において、駆動回路が繰返し充電および放電されるように、低電圧電源からの第1の高電圧の交流駆動信号をエレクトロルミネセントディスプレイなどの容量性ディスプレイに与えるために配置されている。さらに、容量性ディスプレイの放電時に、該ディスプレイからの放電電流が第2のより低い電圧でさらなるディスプレイへ供給されるように、駆動回路が配置されている。その際、容量性ディスプレイからのエネルギーは、廃棄されるよりむしろ、さらなるディスプレイの駆動に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的にはエレクトロルミネセントディスプレイであるが、これに限らない容量性ディスプレイを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセント(EL)ディスプレイには、情報を表示するための選択的に照光可能な領域を有することのできるものがある。そのようなディスプレイは、競合技術に対して、大型化可能で柔軟性があり、かつ、比較的安価であるという利点がある。
【0003】
一般的にELディスプレイは、2つの電極間にドープ硫化亜鉛粉末などの蛍光体材料の層を含む。通常、少なくとも1つの電極は、ポリエステルまたはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの透明基板上に設けられたインジウム錫酸化物(ITO)などの透明材料で構成されている。ディスプレイは、例えば、スクリーン印刷により基板上に電極層および蛍光体層を積層することにより形成してもよい。その場合、不透明電極は、導電性インク、例えば銀入りインクで形成してもよい。ここに述べたようなEL装置の例は、国際公開第00/72638号パンフレットおよび国際公開第99/55121号パンフレットに記載されている。
【0004】
上述の一般型のELディスプレイは、ランプの電極間に、典型的には数十ヘルツの適切な周波数の交流電圧を印加して蛍光体を励起することにより照光する。通例、ELディスプレイにおいて用いられる蛍光体は、数百ボルトの電圧を必要とする。
【0005】
同様に、高分子分散型液晶(PDLC)ディスプレイもまた、容量性であり、かつ、約42Vの比較的高い電圧の交流電源を必要とする。
【0006】
典型的に、(ELまたはPDLC)ディスプレイは、100pFから1μFの範囲の静電容量を有する。典型的に用いられる周波数において、これは、ディスプレイを充電するために小さな電流しか必要でないことを意味するので、「フライバック変換器」により、低い電圧の直流電源から比較的高い駆動電圧を生成できる。そのような変換器は、国際公開第02/069674号パンフレットに記載されており、その一部を添付書類Aとしてここに添付している。コイルや変圧器などの誘導性素子と直列に配置された発振スイッチにより、より高電圧(HV)の直流信号を発生できる。
【0007】
次いで、このHV直流信号は、Hブリッジなどにより交流信号に変換可能である。Hブリッジとはすなわち、ディスプレイの1つの電極を該HV直流信号または基準電位(典型的には接地電位)のいずれかに選択的に接続する一対のスイッチを二対形成する4つのスイッチである。したがって、ディスプレイは、第1の電極がHV直流電源に接続され、第2の電極が接地されている状態と、第1の電極が接地され、第1の電極がHV直流電源に接続されている状態との間で切り替え可能である。したがって、交流は、ディスプレイの両端で発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上に述べたような電源により、ELディスプレイを例えば2本の標準単3電池によって駆動できる。しかしながら、同じ装置における異なる種類のディスプレイを同じ電源から動作させることが望まれることがある。典型的な一例は、約5Vの交流で動作する単純な液晶(LC)ディスプレイである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、容量性ディスプレイと、さらなるディスプレイと、低電圧電源から前記ディスプレイに第1の高電圧の交流駆動信号を与えるための駆動回路とを含む表示装置であって、使用時において、前記容量性ディスプレイが繰返し充電および放電し、前記ディスプレイの放電時に、前記ディスプレイからの放電電流が第2のより低い電圧で前記さらなるディスプレイへ供給されるように、前記駆動回路が配置されていることを特徴とする表示装置が提供される。
【0010】
これにより、そうでなければ廃棄されるであろうディスプレイからのエネルギーを用いて、さらなる電圧発生が可能となる。よって、エネルギーがより効率的に用いられ、かつ、さらなるディスプレイのための別個の電源の必要性がなくなるか、または、減じられる。好適な実施形態において、前記第2の電圧は、前記低電圧電源の電圧とは異なり、典型的にはこれより高い。
【0011】
典型的には、前記さらなるディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)であろう。このことは、とりわけ都合がよいことが分かっている。というのも、そのようなLCDに必要とされる電圧領域の4Vから9Vの電圧は、典型的なELディスプレイから放電される電流から得ることができると分かっているからである。あるいは、前記さらなるディスプレイは、発光ポリマー(LEP)ディスプレイ、コレステリックLCD、電気泳動ディスプレイ、高輝度LED(HBLED)や有機LED(OLED)を含む発光ダイオード(LED)などであってもよい。
【0012】
前記さらなるディスプレイへ供給される放電電流は、一般的に、直流信号を含むだろう。いくつかのLCDなどのディスプレイには、交流を必要とするものがあるので、前記放電電流を交流に変換するために、Hブリッジなどの直流−交流変換器を設けてもよい。
【0013】
前記駆動回路は、フライバック変換器を含んでいてもよく、フライバック変換器は、直列に配置された誘導性素子およびスイッチを含んでいてもよい。前記フライバック変換器はまた、使用時において、前記フライバック変換器からの電流が前記容量性ディスプレイへ単一方向のみに流されるように配置されたダイオードを含んでいてもよい。
【0014】
ある場合には、放電電流により発生した電圧を制限することが望ましい。よって、前記駆動回路は、使用時において、前記さらなるディスプレイへ供給される電圧を制限するツェナーダイオードなどの電圧リミッタをさらに含んでいてもよい。前記電圧は、4Vか5Vか12Vの大まかにいずれかの電圧に制限されてもよい。
【0015】
本発明の第2側面によると、容量性ディスプレイの駆動方法であって、第1の高電圧を有する交流信号を用いて前記容量性ディスプレイを繰返し充電および放電し、前記容量性ディスプレイの放電時に、こうして発生した放電電流を用いて、第2のより低い電圧で、典型的にはさらなるディスプレイであるさらなる装置を駆動することを特徴とする容量性ディスプレイの駆動方法が提供される。
【0016】
前記さらなるディスプレイへ供給される放電電流は、一般的に、直流信号を含むだろう。いくつかのLCDなどのディスプレイには、交流を必要とするものがあるので、前記方法は、前記放電電流を交流に変換する工程をさらに含んでいてもよい。
【0017】
前記さらなる装置は、発光ポリマー(LEP)ディスプレイ、コレステリックLCD、電気泳動ディスプレイ、高輝度LED(HBLED)や有機LED(OLED)を含む発光ダイオード(LED)などであってもよい。あるいは、音響器などであってもよい。
【0018】
本発明の第1側面の特徴のいずれを本発明の第2側面に適用してもよく、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の駆動回路を示す回路図である。
【図2】図2aおよび図2bは、本発明で用いられるフライバック変換器の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、添付の図面を参照して、単なる例として、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の駆動回路を示す回路図であり、かつ、
図2aおよび図2bは、本発明で用いられるフライバック変換器の動作を示す。
【0022】
図1に示す回路図において、低電圧源VDDは、直列に配置されたインダクタLおよびFETスイッチQ1により形成されるフライバック変換器に接続されており、該インダクタは、FETQのドレインに接続されている。低電圧源VDDは、スイッチにではなく、インダクタの端子に接続されており、FETのソースは、接地されている。ダイオードD1は、その第1端子(アノード)において、スイッチQ1とインダクタLとの間の点に接続されている。ダイオードD1は、ダイオードとして作用するよう接続された他のいかなる装置、一般的には半導体装置であってもよい。
【0023】
フライバック変換器の動作は、よく知られており、かつ、国際公開第02/069674号パンフレットに具体的に説明されている。図2aおよび図2bは、容量性負荷を高電圧まで充電するためのフライバック変換器の配列を示す。本発明において、図2のダイオードDの下流にある構成要素Cは、図1に示したHブリッジを有するエレクトロルミネセント素子である。簡略化のため、容量性負荷Cは、Hブリッジなしで図2に示している。
【0024】
図2aに示すように、フライバック変換器は、インダクタLおよびスイッチSと直列に配置された直流電源を含む。スイッチSは、インダクタと接地電位との間に接続されている。実際の配列においては、スイッチSは、電界効果トランジスタである出力FETにより与えられる。しかしながら、明確化のため、図2aおよび図2bにおいては、スイッチSを単純なスイッチとして示している。
【0025】
スイッチSと並列に、容量性負荷Cと直列に配置されたダイオードDが設けられている。容量性負荷Cは、ダイオードと接地電位との間に配置されている。
【0026】
スイッチSは、図2aに示すように経時的に変化するスイッチ電圧Vにより制御されている。スイッチ電圧Vが高いとき、スイッチSは、閉鎖されて導通する。この状態は、図2aに示されている。スイッチ電圧Vが低いとき、スイッチSは、開放されて導通しない。この状態は、図2bに示されている。
【0027】
図2aおよび図2bに示す回路は、以下のように動作する。図2aに示すようにスイッチ電圧Vが高い間、電流Iは、直流電源からインダクタLおよび閉鎖されたスイッチSを通ってアースへと流れる。
【0028】
容量性負荷Cにかかる電圧が直流電源電圧より高いとすると、ダイオードDには電流が流れない。
【0029】
スイッチ電圧Vが低くなると、図に示すように、開放されたスイッチSによりSが遮断される。しかしながら、インダクタLに伴う磁界において保存されたエネルギーにより、電流Iが流れ続け、かつ、インダクタLが十分に高い電圧を発生するため、電流Iは、ダイオードDを流れて容量性負荷Cを充電する。このように、スイッチ電圧Vが高電圧から低電圧へ遷移するごとに、図2bに示すように、容量性負荷Cにかかる電圧Vが増大する。ダイオードDは、容量性負荷Cからアースへ、または、スイッチSが閉鎖されているときは直流電源への電流の逆流を防ぐ。
【0030】
したがって、スイッチSに交流スイッチ電圧Vsを印加することにより、容量性負荷CLをいかなる所望の電圧までも充電可能であることが分かるだろう。図におけるスイッチQ1または図2におけるSを繰返し切り替えることで、ダイオードD1の第2端子(カソード)において高電圧(HV)直流(ただし可変)信号が発生するという効果が生じる。コンデンサC1は、この直流信号を平滑化するためにダイオードの第2端子に設けられる。
【0031】
このようにして発生された平滑化HV直流信号は、反対側の端子において接地されている第1HブリッジH1に与えられる。容量性ELディスプレイCELは、Hブリッジの両端に接続されている。Hブリッジは、ディスプレイの1つの電極を該HV直流信号または接地のいずれかに選択的に接続する一対のスイッチを二対(S、SおよびS、S)形成する4つのスイッチ(S、S、S、S)である。Hブリッジのスイッチを対にして動作させることにより、ELディスプレイが平滑化HV直流電源に接続される極性を繰返し変更し、これにより、ELディスプレイの両端でHV交流信号を発生することができる。
【0032】
スイッチQの切り替えは、そのゲートにANDゲート10から印加される信号により制御される。これは、スイッチQ1がどのように切り替わるかの制御に使用可能なパルス幅変調信号PWMを入力とする。PWM信号の周波数および衝撃係数を変化させることにより、動作、ゆえに、HV直流信号の出力電圧および波形を制御することができる。ANDゲートへの他方の入力は、反転されている。これは、「DISCHARGE」信号に接続されている。関連する入力が反転されている場合、DISCHARGE信号は、スイッチQ1の切り替えを抑止するので、DISCHARGE信号が高くなると、フライバック変換器によるHV直流信号の発生を停止する。
【0033】
DISCHARGE信号はまた、トランジスタカスケードT1、T2に接続されている。NPNトランジスタであるT1のベースは、放電信号と直接接続されており、DISCHARGE信号が高くなると導通するよう切り替わる。抵抗器R1は、T1のエミッタと接地との間に接続されており、かつ、抵抗器R2は、T1のコレクタとHV直流信号との間に接続されている。T1が、一方の側の接地および抵抗器R1と他方の側の抵抗器R2およびHV直流信号との間に接続されている場合、T1が導通すると、R1およびR2が分圧器を形成する。カスケード内の第2トランジスタT2のベースは、この電圧により駆動されるので、トランジスタT1が導通すると、トランジスタT2は導通する。
【0034】
T2が導通すると、ELディスプレイCELから補助電源VAUXへと導通経路が設けられる。コンデンサC2は、こうして発生した信号を平滑化するために、この補助電源と接地との間に設けられる。逆接続されたツェナーダイオードD2は、コンデンサC2と並列に設けられることにより、VAUXにおける電圧をダイオードに依存した値、典型的には12Vに制限する。この補助電源VAUXは、さらなるHブリッジH2により、さらにLCDディスプレイCLCDに接続される。
【0035】
そこで、ELディスプレイを充電するために、DISCHARGE信号は低く保たれ、かつ、PWM信号はスイッチQ1を繰返し開放および閉鎖する。これにより、HブリッジH1を介してELディスプレイCELへと与えられるHV直流信号が発生する。ELディスプレイCELを放電するために、DISCHARGE信号は高くなり、PWM信号はスイッチQ1の切り替えを抑止され、かつ、T2は切り替えられ、これにより、電流が流れ、ELディスプレイはT2を通じてさらなるLCDディスプレイCLCDへ放電する。この直流放電は、第2HブリッジH2により交流へ変換される。こうして発生した電圧は、典型的には4Vから9Vであり、LCDディスプレイの動作に十分である。
【0036】
ここで説明している実施形態において、放電中のELディスプレイCELから発生する電圧を用いて第2のディスプレイCLCDに電力供給しているが、この電圧を用いて他のいかなる装置に電力供給することもでき、または、実際に他のいかなる装置への電力供給にも寄与可能であろう。すなわち、いくつかの実施形態において、装置に完全に電力供給するのに十分な電力がELディスプレイCELから回収できないかもしれず、そのような実施形態においては、回収された電力を用いてそのさらなる装置の電力供給を補助してもよい。例えば、放電中のELディスプレイCELから回収された電力を用いて、LCD、(OLEDおよびHBLEDを含む)LED、コレステリックLCD、電気泳動ディスプレイなどのいずれに電力供給してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性ディスプレイと、さらなるディスプレイと、低電圧電源から前記容量性ディスプレイに第1の高電圧の交流駆動信号を与えるための駆動回路とを含む表示装置であって、使用時において、前記容量性ディスプレイが繰返し充電および放電し、前記容量性ディスプレイの放電時に、前記容量性ディスプレイからの放電電流が第2のより低い電圧で前記さらなるディスプレイへ供給されるように、前記駆動回路が配置されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第2の電圧は、前記低電圧源の電圧とは異なる請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記さらなるディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)である請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記さらなるディスプレイは、発光ポリマー(LEP)ディスプレイ、コレステリックLCD、電気泳動ディスプレイまたは発光ダイオードである請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記さらなるディスプレイへ供給される放電電流は、直流信号を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記放電電流を交流に変換するための直流−交流変換器をさらに含む請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、フライバック変換器を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記フライバック変換器は、直列に配置された誘導性素子およびスイッチを含む請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記フライバック変換器は、使用時において、前記フライバック変換器からの電流が前記容量性ディスプレイへ単一方向のみに流されるように配置されたダイオードを含む請求項7または請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記駆動回路は、使用時において、前記さらなるディスプレイへ供給される電圧を制限するツェナーダイオードなどの電圧リミッタを含む請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記電圧は、4V、5Vまたは12Vに制限される請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
容量性ディスプレイの駆動方法であって、第1の高電圧を有する交流信号を用いて前記容量性ディスプレイを繰返し充電および放電し、前記容量性ディスプレイの放電時に、こうして発生した放電電流を用いて、第2のより低い電圧でさらなる装置を駆動することを特徴とする容量性ディスプレイの駆動方法。
【請求項13】
前記さらなる装置は、さらなるディスプレイである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記さらなる装置へ供給される放電電流は、直流信号を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記さらなるディスプレイ装置は、LCDである請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記放電電流を交流に変換する工程をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ディスプレイは、発光ポリマー(LEP)ディスプレイ、コレステリックLCD、電気泳動ディスプレイまたは発光ダイオード(LED)である請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記さらなる装置は、音響器である請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2009−537854(P2009−537854A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510539(P2009−510539)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001799
【国際公開番号】WO2007/132240
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(503183640)ペリコン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】