説明

表面上での結晶性化合物パターン形成方法

少なくとも一つの有機半導体化合物を用い、基板表面にパターン形成する方法において、(a)規定した凹凸パターンを形成された多数の凹部を含む表面を有するスタンプが提供され、前記凹部は、スタンピング表面と隣接し、スタンピングパターンを規定し、(b)基板表面と結合することができ、且つ少なくとも一つの有機半導体化合物(S)と結合することができる、少なくとも一つの化合物(C1)で前記のスタンピング表面を被覆し、(c)基板表面の少なくとも一部分が前記のスタンピング表面と接して基板上に前記の化合物(C1)の堆積が可能になり、(d)スタンピング表面を離して、基板表面上に結合サイトのパターンを提供し、(e)基板表面に有機半導体化合物(S)の多数の微結晶を適用し、適用した微結晶の少なくとも一部分が、基板表面上の結合サイトの少なくとも一部分と結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも一つの結晶性化合物で基板表面にパターン形成を行う方法に関する。
【0002】
マイクロエレクトロニクスの分野において、可能な最小の不具合率で、都合よく且つ割安に再生産され得る、より小さい素子要素の開発は常に必要とされている。現代のデジタル集積回路は、電界効果トランジスタ(FET)に基づいており、電界で半導体材料中の"チャネル"の導電性を制御することに依存している。有機電界効果トランジスタ(OFET)によって、大きな活性化領域を有する集積回路用のフレキシブルあるいは割れない基板の製造が可能になる。OFETは複雑な回路の製造を可能にするため、それらは広範囲の潜在的な用途(例えばピクセルディスプレイの駆動回路内)がある。
【0003】
集積回路(IC)の製造のためのリソグラフィー技術は、当該技術分野内ではよく知られている。しかしながら、素子が小さくなるほど、製造がより困難になり、従ってそれはより高価になる。その上、分子スケールの半導体製造において、リソグラフィー的なアプローチは、解像度とアライメントによって課されるリソグラフィーの制約のために失敗する可能性がある。それゆえに、原子を所望の形に組織化する駆動力を使用する技術(電子回路部品の自己組織化)によるICの製造が望ましい。
【0004】
基板の上にマイクロ物体を自己組織化する様々な方法が知られている。最初の方法は、流体的な自己組織化であり、ここでは、デバイスユニットあるいは"ブロック"は、基板内にエッチングされているレセプターサイトあるいは"孔"に合致するように形作られている。前記ブロックは、キャリア液体の中に懸濁しており、基板上で小分けにされる。ブロックはレセプターサイトに向かって落ちていき、そして液体の流れおよび/または音響振動の力を借りて孔内に自己配向するか、あるいは基板から離れて再循環する。この組織化方法の背景にある駆動力は重力である。流体的自己組織化の発現は、毛細管力に基づいている。
【0005】
Benjamin R.Martin, Donna C. Furnange, Thomas N.Jackson, Thomas E.Mallouk, およびTheresa S.Mayerは、Adv.Funct.Mater.2001、11、381−386において、ウェハー−大気界面における毛細管力を用いてパターン形成したウェハーの自己配列について記述している。それらの毛細管力の相互作用が、ガラスウェハにシリコンウェハを配列するのに用いられる。シリカ表面は、マイクロメータースケールの金のアライメントマークを中央にして取り囲む金のミリメータースケール境界でパターン形成された。パターンの金の部分は、長鎖アルカンチオールから形成された自己組織化した単分子層によって疎水性が付与された。水が表面に滴下され、前記のパターンで規定された親水性のシリカ領域が選択的に濡らされた。相補型の疎水/親水パターンの2枚のウェハーが圧着されたとき、これらの閉じこめられた液滴がアライメントを引き起こした。
【0006】
さらなる自己組織化技術は、パターン形成された表面を使用する。Fengqiu FanとKathleen J.Stebeは、Langmuir、2004、20、3062−3067において、疎水性パターンを有する表面における蒸発によるコロイド粒子の組織化について記載している。化学的修飾を得るために、表面を金で被覆したシリコンウェハ基板に、マイクロ接触プリンティングを用いて疎水/親水領域のパターンが形成された。親水性の自己組織化単分子層(SAM)を製造するため、HS(CH215COOH溶液が、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)スタンプを用いて、金表面と接触させられた。続いて、基板がHS(CH217CH3溶液に浸され、疎水性のSAMの表面の残りが覆われた。随意に正に帯電したアミジン基あるいは負に帯電したスルフェート基で官能化された、コロイド状ポリスチレン粒子が水に分散され、懸濁した粒子を含む液滴が基板表面上に置かれ、それらの吸着挙動が調査された。
【0007】
US6,887,332 B1号は、パターン形成された自己組織化単分子層の下層を有する基板表面上への薄膜形成方法について教示している。前記下層は、基板表面と相互作用しうるヘッド官能基と、マイクロスタンプによって被覆された表面におけるパターン形成領域とパターンが形成されていない領域とを化学的に区別するためのテイル官能基を有する有機分子種によって表面を被覆することによって製造される。前記薄膜は下層上に、スピンあるいは液浸コートなどの、溶液ベースの技術によって堆積される。本文献は、特定の相を含む懸濁液による下層の塗布について教示していない。
【0008】
さらなる自己組織化技術は、パターン形成された電荷を使用する。このアプローチによれば、基板表面は正および/または負に帯電した領域にパターン形成される。表面修飾によって電荷で機能化されたマイクロ物体も、静電気的相互作用によって選択された領域にパターン形成することができる。
【0009】
さらなる自己組織化技術は、パターン形成された構造を使用する。記述:本方法の主要な戦略は、テンプレートアレイ(円柱状の孔など)でパターン形成された基板上でのコロイド分散液のディウェッティングである。この分散液がゆっくりとディウエットするのを可能にする場合、毛細管力がテンプレート内のコロイド粒子の組織化をもたらす。
【0010】
さらなる自己組織化技術は、電界あるいは磁界の印加による物体のパターン形成の使用である。電気的あるいは磁気的に接触した基板が前もって製造される。外部電界あるいは磁界の印加により、物体を基板上の特定の領域に配列あるいは設置できる。
【0011】
マイクロ流体的自己組織化技術によれば、1−D物体を含有する溶液が、毛細管作用あるいは液体の流れによってマイクロチャネルを満たすことができる。前記溶剤の蒸発中あるいは液体が流れている間に、物体は基板上に配列することができる。
【0012】
US6,828,582号B1には、基板上に積層された、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、半導体膜および保護膜を含む薄膜トランジスタについて記載されており、ここにおいて半導体膜は有機半導体分子の凝集物から構成され、絶縁膜表面上のゲート電極を作製する予定の領域に形成された半導体膜の有機半導体分子は、その領域の外に形成された半導体膜よりも高い配向度を有している。有機半導体膜は、絶縁膜表面上に自己組織化単分子層を選択的に配置し、そしてその上に絶縁膜の自己組織化単分子層の配向度を利用して、半導体膜を形成することによって形成される。部分的にフッ素あるいは水素原子で終端された炭素鎖を有する撥水の単分子層が、前記の自己組織化単分子層膜として用いられる。
【0013】
WO2004/114371号A2は、化合物を使用した自己組織化単分子層の形成、特に半導体部品用に使用される化合物であって、前記単分子層の安定化のために他の同類の化合物および/または異なる化合物とπ−π相互作用しうる分子基によって特徴付けられる化合物を開示している。
【0014】
WO2005/001952号A1は、自己編成化単分子層を形成、特に有機電界効果トランジスタの層構造の形成するための化合物について開示しており、前記化合物は、a)基板、特に電極材料に分子を結合するための少なくとも一つのアンカー基、b)少なくとも一つの誘電性基、およびc)少なくとも一つの半導体基によって特徴付けられる。
【0015】
Y.ZhaoおよびJ.Fangは、Langμmuir、2006(インターネット上で出版)において、パターン形成した金基板の脂質チューブ溶液からの引き上げによる1,2−ビス(トリコサ−10,12−ジイノイル)−syn−グリセロ−3−ホスホコリンの自己組織化チューブの位置規定と配列方法について記載している。
【0016】
US2004/0061104号A1は、有機半導体微結晶が有機半導体素子の活性チャネルとして機能する集積回路(IC)の製造方法について開示している。前記の方法は、表面上に配置された有機半導体の微結晶が吸着することができる吸着サイトの予備選択パターンを有する表面を有した基板を提供することを含む。本文献はマイクロ接触プリンティング("スタンピング")の利用で基板表面に半導体パターンを形成することは教示していない。
【0017】
先行技術による、前記のパターン形成方法は、少なくとも一つの以下の欠点を示す。
【0018】
高いコスト(例えば、流体的自己組織化技術は基板パターンを製造するためにリソグラフィーあるいはエッチングを必要とする)
低いスループット(特に基板構造でテンプレートした組織化は、工程が遅い)
複雑性(例えば、電界あるいは磁界の印加によるパターン形成)
一般的な応用性がない(例えばマイクロ物体表面特性の高い要求、例えば流体による組織化、静電気による自己組織化、など。一般に、特性を変えずに有機単結晶を機能化するに際しては問題が多い。)
物体間の間隔および/または物体上部の配向の制御性があまりない(特に静電気力による自己組織化によって)
発明の要約
第一の側面においては、本発明は少なくとも一つの結晶性化合物で基板表面にパターン形成する方法において、基板表面と結合でき、且つ少なくとも一つの結晶性化合物と結合できる少なくとも一つの化合物(C1)および/または基板表面と結合でき、且つ結晶性化合物の結合を阻止することのできる少なくとも一つの化合物(C2)を、基板表面上に堆積する工程を含む方法を提供する。
【0019】
第一の実施態様は、少なくとも一つの結晶性化合物で基板表面にパターン形成する方法であり、
(a)表面内に形成された、凹凸パターンを規定する複数の凹部を有するスタンプを提供し、その際、前記の凹部はスタンピング表面と隣接し、且つスタンピングパターンを規定する
(b)基板表面と結合でき且つ少なくとも一つの結晶性化合物と結合できる、少なくとも一つの化合物(C1)で前記のスタンピング表面を被覆し、
(c)基板表面の少なくとも一部分と前記のスタンピング表面とを接触させて、基板上に前記化合物(C1)を堆積させ、
(d)前記のスタンピング表面を離して、基板表面上に結合サイトのパターンを与え、
(e)基板表面に結晶性化合物を適用し、適用した結晶の少なくとも一部分が基板表面上の少なくとも一部分の結合サイトと結合することを可能にする
段階を含む。
【0020】
第二の実施態様は、少なくとも一つの結晶性化合物で基板表面にパターン形成する方法において、
(a)表面内に形成された、凹凸パターンを規定する複数の凹部を有するスタンプを提供し、その際、前記の凹部はスタンピング表面と隣接し、且つスタンピングパターンを規定する
(b)基板表面と結合でき且つ結晶性化合物の結合を阻止できる、少なくとも一つの化合物(C2)で前記のスタンピング表面を被覆し、
(c)基板表面の少なくとも一部分と前記のスタンピング表面とを接触させて基板上に前記化合物(C2)を堆積させ、
(d)前記のスタンピング表面を離して、基板表面上に結晶性化合物の結合を阻止するサイトのパターンを与え、
(e)基板表面に結晶性化合物を適用し、適用した結晶の少なくとも一部分が(C2)によって被覆されていない基板表面の少なくとも一部分に結合することを可能にする
段階を含む。
【0021】
段階d)で得られる基板の使用していない表面領域は、修飾しないままにしておいてもよいし、例えば基板表面と結合でき且つ少なくとも一つの結晶性化合物と結合できる、少なくとも一つの化合物(C1)で被覆してもよい。
【0022】
さらなる側面では、本発明は有機電界効果トランジスタのパターンを含む基板であって、それぞれのトランジスタが、
基板上に配置された有機半導体(S)の微結晶と、
微結晶のチャネル部の導電性を制御するために設置されたゲート構造と、
チャネル部の対向する端に配置された導電性のソースおよびドレイン電極とを含む基板の製造方法において、
微結晶の位置規定が、
(a)表面内に形成された、凹凸パターンを規定する複数の凹部を有するスタンプを提供し、その際、前記の凹部はスタンピング表面と隣接し、且つスタンピングパターンを規定する
(b)基板表面と結合でき且つ少なくとも一つの有機半導体化合物(S)と結合できる、少なくとも一つの化合物(C1)で前記のスタンピング表面を被覆し、
(c)基板表面の少なくとも一部分と前記のスタンピング表面とを接触させて基板上に前記化合物(C1)を堆積させ、
(d)前記のスタンピング表面を離して、基板表面上に結合サイトのパターンを与え、
(e)基板表面に有機半導体化合物(S)の多数の微結晶を適用し、適用した微結晶の少なくとも一部分が基板表面上の少なくとも一部分の結合サイトと結合することを可能にする段階を含む方法を提供する。
【0023】
第二の実施態様においては、微結晶の位置規定は、
(a)表面内に形成された、凹凸パターンを規定する複数の凹部を有するスタンプを提供し、その際、前記の凹部はスタンピング表面と隣接し、且つスタンピングパターンを規定する
(b)基板表面と結合でき且つ少なくとも一つの有機半導体化合物(S)の結合を阻止できる、少なくとも一つの化合物(C2)で前記のスタンピング表面を被覆し、
(c)基板表面の少なくとも一部分と前記のスタンピング表面とを接触させて、基板上に前記化合物(C2)を堆積させ、
(d)前記のスタンピング表面を離して、基板表面上に結晶性化合物の結合を阻止するサイトのパターンを与え、
(e)基板表面に有機半導体化合物(S)の多数の微結晶を適用し、適用した微結晶の少なくとも一部分が(C2)によって被覆されていない基板表面の少なくとも一部分に結合することを可能にする
段階を含む。
【0024】
段階d)で得られる基板の、使用していない表面領域は、修飾しないままにしておいてもよいし、例えば基板表面と結合でき且つ少なくとも一つの結晶性化合物と結合できる、少なくとも一つの化合物(C1)で被覆してもよい。
【0025】
図面の簡単な説明
図1は、ヘキサデカンチオールでパターン形成された金基板上の銅フタロシアニン(CuPc)結晶を示し、結晶は水を懸濁媒体として適用されている。
図2は、金基板上のCuPc結晶を示し、結晶は水/メタノールを懸濁媒体として適用されている。
図3は、金基板上のCuPc結晶を示し、結晶はスピンコーティングを用いて適用されている。
図4は、金基板上のCuPc結晶を示し、結晶はピペット操作で適用されている。
図5は、金基板上のルブレン(2〜10μm)の単結晶を示し、結晶は水を懸濁媒体として適用されている。
図6は、ヘキサデカンチオールでパターン形成された、NH3+Cl-基板上のCuPc結晶を示す。
図7aおよび図7bは、異なる種類のパターンを有する基板上のCuPc結晶を示す。
図8は、ヘキサデカンチオールおよび3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸のナトリウム塩でパターン形成された、金基板上のCuPcの針状結晶を示す。
図9aおよび図9bは、(ビス(t−ブチル)フェニルビチオフェンフェニル)結晶の自己組織化で得られたOFETのトランジスタ性能を示す。
図10aおよび図10bは、(ビス(t−ブチル)フェニルビチオフェンフェニル)結晶の自己組織化で得られたOFETの結晶パターンを示す。
【0026】
本発明の好ましい実施態様の詳細な記述
本願の目的では、"結合"の用語は広義に理解される。これは化合物(C1)および/または化合物(C2)と基板表面の間の全ての種類の結合相互作用、および化合物(C1)と結晶性化合物の間の全ての種類の結合相互作用をそれぞれ含む。結合相互作用のタイプは、化学結合(共有結合)、イオン結合、配位性相互作用、ファンデルワールス相互作用(例えば双極子と双極子との相互作用)等、およびそれらの組み合わせを含む。一つの好ましい実施態様においては、化合物(C1)と、基板表面と結晶性化合物の間の少なくとも一つの結合相互作用は付着性相互作用である。
【0027】
適した化合物(C2)は、未処理の基板あるいはもし存在するならば(C1)よりも、結晶性化合物への親和性が低い化合物である。基板が少なくとも一つの化合物(C1)のみで被覆されている場合、(C2)および基板と結晶性化合物との結合相互作用の強さが、結晶性化合物が本質的に(C2)でパターン形成されていない基板領域上に堆積されるのに充分な程度に異なっていることが決定的に重要である。基板が少なくとも一つの化合物(C1)および少なくとも一つの化合物(C2)で被覆されている場合、(C1)および(C2)の結晶性化合物との結合相互作用の強さが、結晶性化合物が本質的に(C1)でパターン形成された領域に堆積されるのに充分な程度に異なっていることが決定的に重要である。好ましい実施態様において、(C2)と結晶性化合物との間の相互作用は、反発性相互作用である。本願の目的で、"反発性相互作用"の用語は、広義に理解され、化合物(C2)でパターン形成された基板領域上の結晶性化合物の堆積を阻止する全ての種類の相互作用を含む。
【0028】
多様な結晶性化合物が本発明においての使用に適している。主に電気的に伝導性のある、電気的に伝導性のないあるいは電気的に半導体性であり、室温で固体結晶層を形成する任意の材料が用いられ得る。好ましくは、少なくとも一つの有機半導体化合物(S)の微結晶が結晶性化合物として用いられる。
【0029】
それに応じて、本発明は少なくとも一つの自己組織化段階を用いて、少なくとも一つの有機半導体化合物で基板表面にパターン形成する方法を提供する。本方法は、表面上に配置される結合サイトの予備選択されたパターンを表面に有する基板の提供を含む。結合サイトは、半導体化合物(S)の微結晶に結合することが可能である。
【0030】
従って、本発明は、予め準備した微結晶がそれ自身で組織化し、"自己組織化"によってマイクロ電子素子になる方法を提供する。マイクロプリンティングによって付着サイトの予備選択パターンを準備することによって、本方法では素子、特に、OFETの微細なパターンを基板上に製造することが可能であり、ここで前記素子の活性チャネルは微結晶によって予備形成される。有利なことに、本発明の方法においては、液体媒体中の固体半導体粒子の懸濁液を、有機半導体(S)の微結晶の基板表面への適用に用いることができる。分子同士および基板表面との局所的な結合相互作用などの、基板上の微結晶の自己組織化の背景にある駆動力は、原子スケールである。本発明の使用により、有機半導体素子上のOFETの位置規定のために、リソグラフィー技術工程の使用が不要となる。さらには、半導体微結晶を基板に適用するためにマイクロプリント技術の使用が不要である。本発明の方法では、好ましくも、外的な駆動力あるいは界、たとえばDC界、AC界、磁界などを使用しない。
【0031】
本発明のさらなる側面は、OFETのアレイを有する基板に関する。それぞれのOFETは、独立した有機半導体の微結晶、ゲート構造、および微結晶のチャネル部の対向する端に配置された導電性のソースおよびドレイン電極を含む。前記の微結晶は基板上に配置されており、微結晶材料の連続した経路によって他のトランジスタの微結晶と接続されていない、即ち、異なるOFETの微結晶はそれぞれ独立している。ゲート構造は、微結晶のチャネル部の導電性を制御するように位置付けられている。
【0032】
本発明による方法は、以下の利点を有している:
a)本方法は、一般的に、サイズ、表面特性、およびモフォロジーに関わらず、様々な材料のパターン形成物に使用できる。
b)本方法は、主要な段階(スタンピングおよびスピンコーティングあるいはディップコーティング)が高スループット工程なので、高スループットを可能にする。
c)本方法は、単純であり、且つ経済的である(ややこしい設計が要らず、且つ高価な結晶懸濁液は再利用できる)。
d)本方法は、結晶で100%までパターンが被覆され得るので、高い歩留まりが可能である。
e)結晶配向の潜在的制御(例えば、適切な形状のパターン、適切な寸法の結晶の選択によって、および/または微結晶懸濁液の流れの方向の制御によって)結晶の配列が実現され得る。
f)本方法は、水あるいは主要量の水を含む液体媒体が結晶の分散に使われ得るため、汚染の低減が可能である
少なくとも一つの化合物(C1)で表面にパターン形成できる任意の材料が基板として使用できる。好ましい基板は、半導体素子の製造に適した材料から選択される。適した基板は、例えば、金属(好ましくは周期律表の第8、9、10あるいは11族の金属、たとえばAu、Ag、Cu)、酸化物材料(ガラス、石英、セラミクス、SiO2など)、半導体(ドープしたSi、ドープしたGe)、金属合金(例えば、Au、Ag、Cuなどをベースとする)、半導体合金、ポリマー(例えば、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、ポリエチレンおよびポリプロピレンなど、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアルキル(メタ)アクリレート)、ポリスチレンおよびそれらの混合物および複合物)、無機固体(例えばアンモニウムクロリド)およびそれらの組み合わせを含む。それらの基板は、所望の用途の要求によって、曲面または平面の形状のフレキシブルあるいはフレキシブルでない固体基板であってもよい。
【0033】
半導体素子の典型的な基板は、基材(水晶あるいはポリマー基材)および随意に誘電性の最表面層(例えばSiO2)を含む。基板は一般的に、OFETのドレイン、ソース電極などの電極を含み、それらは通常、基板上に配置されている(例えば、誘電体最表面層の非導電性表面上に堆積)。前記基板は、典型的には最表面誘電層(即ちゲート誘電体)の下に位置するOFETの導電性ゲート電極も含む。特別な実施態様によれば、ドレインおよびソース電極を、基板の上だけではなく、有機半導体結晶の上に部分的に堆積する。当然、前記の基板は、絶縁体、抵抗構造、キャパシタ構造、金属配線などの、半導体素子あるいはICに通常用いられるさらなる部品を含んでいてもよい。
【0034】
化合物(C1)は通常、基板表面と相互作用し得る少なくとも一つの官能基、および半導体化合物と相互作用し得る少なくとも一つの官能基を有する。基板表面と相互作用し得る官能基は、半導体化合物と相互作用し得る官能基と同一であってもよい。選択的に、化合物(C1)は、2つの異なる種の官能基を含むことができ、一つは基板との相互作用のため、もう一つは(S)との相互作用のためである。
【0035】
以下において、"炭化水素基"の用語は、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびそれらの組み合わせを含む。
【0036】
以下において、"アルキル"の表現は、直鎖および分岐アルキル基を含む。それらの基は、好ましくは直鎖あるいは分岐C1−C20アルキル基、より好ましくはC1−C12アルキル基、特に好ましくはC1−C8アルキル基およびより好ましくはC1−C4アルキル基である。アルキル基の例は、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。適した長鎖C8−C30アルキルあるいはC8−C30アルケニル基は、直鎖および分岐アルキルあるいはアルケニル基である。オクチル(エン)、ノニル(エン)、デシル(エン)、ウンデシル(エン)、ドデシル(エン)、トリデシル(エン)、テトラデシル(エン)、ペンタデシル(エン)、ヘキサデシル(エン)、ヘプタデシル(エン)、オクタデシル(エン)およびノナデシル(エン)など。
【0037】
"アルキル"および"アルキレン"の表現は、シクロアルキル、アリール、ヘタリール、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、NE12、NE123、COOH、カルボン酸塩、−SO3Hおよびスルホネートから選択される、1,2,3,4あるいは5つの置換基、好ましくは1,2あるいは3つの置換基および特に好ましくは1つの置換基を一般的に有してよい置換アルキル基も含む。
【0038】
"シクロアルキル"は好ましくは、C5−C8−シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルあるいはシクロオクチルである。
【0039】
本発明の目的では、用語" ヘテロシクロアルキル"は、一般に4〜7個の、好ましくは5もしくは6個の環原子を有する飽和の脂環式基であって、その環炭素原子の1もしくは2個が、酸素、窒素、及び硫黄の元素から選択されたヘテロ原子によって置き換えられており、かつ場合により置換されてよい基を含み、その際、置換されている場合には、前記の複素脂環式基は、アルキル、アリール、COORa、COO-+およびNE12、好ましくはアルキルから選択される1,2もしくは3個の、好ましくは1もしくは2個の、特に好ましくは1個の置換基を有してよい。
【0040】
挙げることのできる脂環式基の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリジニル、チアゾジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルおよびジオキサニルである。
【0041】
"アリール"は、非置換および置換のアリール基および好ましくはフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、および特にフェニル、トリル、キシリルあるいはメシチルを含む。
【0042】
"ヘタリール"は好ましくは、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、インドリル、カルバゾリル、ピリジル、キノリニル、アクリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルあるいはピラジニルである。
【0043】
NE12基は、好ましくは、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジイソプロピルアミノ、N,N−ジ−n−ブチルアミノ、N,N−ジ−t−ブチルアミノ、N,N−ジシクロヘキシルアミノあるいはN,N−ジフェニルアミノである。
【0044】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、あるいはヨウ素である。
【0045】
第一の好ましい実施態様において、化合物(C1)は基板表面および/または結晶性化合物(特に(S)共有結合性相互作用を介して)と結合している。本実施態様によれば、前記化合物(C1)は、基板および/または結晶性化合物の相補型官能基と反応できる、少なくとも1つの官能基を含む。本発明の文脈において、"相補型官能基"とは、共有結合の形成の下で、互いに反応できる一対の官能基を意味する。好ましくは、前記の相補型官能基は、縮合あるいは付加反応で互いに反応する。
【0046】
共有結合性相互作用に適した官能基は、好ましくはヒドロキシル、第一級および第二級アミノ、チオール、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、カルボン酸無水物、スルホン酸、スルホン酸エステル、イソシアネート、ブロックトイソシアネート、ウレタン、ウレア、エーテル、およびエポキシ基から選択される。
【0047】
適した反応対の例は、一方では、例えばアルコール、第一級および第二級アミン、およびチオール基を含有する化合物から選択される活性水素原子を有する化合物であり、他方では、それと反応性の、例えばカルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、カルボン酸無水物、イソシアネート、ウレタン、ウレア、アルコール、エーテルおよびエポキシ基から選択される、基を有する化合物である。適した対のさらなる例は、一方がエポキシ基、他方がカルボン酸基を含有する化合物である。一般的に、どの官能基の対が化合物(C1)を運ぶか、およびどの基板あるいは結晶性化合物かは重要ではない。
【0048】
表1は適した相補型官能基の対を例示する。
【0049】
【表1】

【0050】
得られる共有結合は、好ましくはエステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、イミノ結合、アミジノ結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオウレタン結合、チオウレア結合、スルフィド結合、スルホニル結合、エーテル結合およびアミノ結合から選択される。
【0051】
適した相補型官能基は、ラジカル重合可能なC=C二重結合であり、上述の(メタ)アクリレート基に加えて、ビニルエーテルおよびビニルエステルも含む。
【0052】
第二の好ましい実施態様において、化合物(C1)は、基板表面および/または結晶性化合物(特に(S))とイオン性相互作用を介して結合している。本実施態様によれば、化合物(C1)は、基板表面および/または化合物(S)とイオン性の相互作用をし得る少なくとも一つの官能基を含む。
【0053】
第三の好ましい実施態様において、化合物(C1)は、基板表面および/または結晶性化合物(特に(S))と双極子相互作用、例えばファンデルワールス力を介して結合している。
【0054】
(C1)と基板の間および/または(C1)と結晶性化合物の間の相互作用は、好ましくは親水−親水相互作用の引力あるいは疎水−疎水相互作用の引力である。親水−親水相互作用および疎水−疎水相互作用は、なかでも、イオン対あるいは水素結合の形成を含むことができ、さらなるファンデルワールス力を含んでいてもよい。
【0055】
親水性あるいは疎水性は、水に対する親和性によって定義される。ほとんどの親水性の化合物あるいは材料表面は、水、および一般に他の親水性の化合物あるいは材料表面と高レベルの相互作用を有し、一方で、ほとんどの疎水性の化合物あるいは材料は、水あるいは水性の液体によって、濡れないあるいはほんのわずかだけ濡れる。基板表面の親水/疎水特性の適した評価方法は、それぞれの表面上での水の接触角の測定である。一般的な定義によれば、"疎水表面"は、水の接触角が90゜より大きい表面である。"親水表面"は、水の接触角が90゜より小さい表面である。親水基で修飾された化合物あるいは材料表面は、修飾されない化合物あるいは材料よりも小さい接触角を有している。疎水基で修飾された化合物あるいは材料表面は、修飾されない化合物あるいは材料よりも大きな接触角を有している。
【0056】
化合物(C1)(同様に(C2)および/または(S))に適した親水基は、イオノゲン基、イオン性基、および非イオン性親水基から選択されるものである。イオノゲンあるいはイオン性基は、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、窒素含有基(アミン類)、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、および/または第四級化あるいはプロトン化された窒素含有基である。適した非イオン性親水基は、例えばポリアルキレンオキシド基である。化合物(C1)(同様に(C2)および/または(S))に適した非イオン性疎水基は、上述の炭化水素基から選択されるものである。それらは、好ましくは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、あるいはアリール基であり、前記基は、随意に、例えば1、2、3、4、5あるいは5つより多くのフッ素原子で置換されてもよい。
【0057】
化合物(C1)のさらなる適した官能基は、基板および(S)との追加的な配位結合を形成できる配位金属イオンが可能なリガンド基でもある。リガンドとして適した官能基は、例えばカルボン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、SH基、オキシム基、アルデヒド基、ケト基、およびピリジン、キノリン、イミダゾールあるいはオキサゾールなどの複素環式基である。
【0058】
基板表面を大量の官能基で修飾するために、酸あるいは塩基で活性化することができる。さらには、基板表面は酸化、電子線照射あるいはプラズマ処理で活性化できる。さらには、官能基を含む物質を基板表面に化学気相成長(CVD)で適用することができる。
【0059】
基板との相互作用に適した官能基は、以下のものを含む:
シラン、ホスホン酸、カルボン酸、およびヒドロキサム酸:
シラン基を含む、適した化合物(C1)は、n−(オクタデシル)トリクロロシラン(OTS)などのアルキルトリクロロシラン、トリアルコキシシラン基の化合物、例えばトリエトキシアミノプロピルシランおよびN[(3−トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどのトリアルコキシアミノアルキルシラン、トリエトキシプロピル−3−グリシジルエーテルシランなどのトリアルコキシアルキル−3−グリシジルエーテルシラン、アリルトリメトキシシランなどのトリアルコキシアリルシラン、トリアルコキシ(イソシアナトアルキル)シラン、1−トリエトキシシリル−3−アクリルオキシプロパンなどのトリアルコキシシリル(メタ)アクリオキシアルカンおよびトリアルコキシシリル(メタ)アクリルアミドアルカン
(これらの基は好ましくはシリコン二酸化物、アルミニウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物、インジウム錫酸化物およびニッケル酸化物などの金属酸化物表面との結合に用いられる。)
アミン、ホスフィン、および硫黄含有官能基、特にチオール:
(これらの基は好ましくは金、銀、パラジウム、プラチナ、および銅などの金属基板、およびシリコン、ガリウムヒ素などの半導体基板との結合に用いられる。)
好ましい実施態様において、化合物(C1)はC8−C30−アルキルチオールから選択され、特にヘキサデカンチオールである。これらの化合物は、より疎水性の基板、例えばAu(水の接触角65゜)並びにより親水性の基板、例えばNH4Cl(水の接触角49゜)の表面に、有機半導体化合物(S)の微結晶を適用することを可能にする。
【0060】
さらなる好ましい実施態様において、化合物(C1)はメルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸およびそれらのアルカリ金属あるいはアンモニウム塩から選択される。それらの化合物の例は、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属あるいはアンモニウム塩、例えばナトリウムあるいはカリウム塩である。それらの化合物は、より疎水性の基板表面の親水化に適している。
【0061】
さらなる好ましい実施態様において、化合物(C1)は、アルキルトリクロロシランから選択され、特にn−(オクタデシル)トリクロロシラン(OTS)である。これらの化合物は、有機半導体化合物(S)の微結晶を、SiO2(水の接触角100゜より上)などのより疎水性の基板表面に適用するのを可能にする。
【0062】
基板上の前記化合物(C1)の堆積に加えて、あるいはその代わりとして、基板は、基板表面と結合することができ、並びに有機半導体化合物(S)と相互作用して化合物(C1)でパターン形成されていない基板領域上で(S)の堆積を阻止できる、少なくとも1つの化合物(C2)と接触できる。
【0063】
第一の実施態様によれば、化合物(C2)は上述の化合物(C1)の群から選択され得る。特定の化合物が(C1)として、あるいは(C2)として作用するかどうかは、結晶性化合物との相互作用の強さに依存している。(C1)および(C2)の(S)との結合相互作用の強さが、本質的に(S)が(C1)でパターン形成された基板領域上に堆積されるのに充分な程度に異なっていることが決定的に重要である。
【0064】
さらなる実施態様によれば、化合物(C2)は、(S)と反発性の親水−疎水相互作用をする化合物から選択される。特定の化合物(S)と反発性の相互作用をする、適した官能基は、炭化水素基および(部分的または完全に)ハロゲン化された炭化水素基である。前記炭化水素あるいはハロゲン化された炭化水素は、純粋に脂肪族または芳香族であってよく、あるいは脂肪族および芳香族基の組み合わせを有することができる。ハロゲン化された炭化水素は、以下のハロゲン基の1つあるいは1つより多く(例えば2、3、4、5あるいは5つより多く)を有してよい:フッ素、塩素、臭素、ヨウ素あるいはそれらの組み合わせ。好ましくは、部分的または完全にハロゲン化された炭化水素は、部分的または完全にフッ化された炭化水素あるいはクロロフルオロカーボンである。前記の炭化水素あるいはハロゲン化された炭化水素は、随意にハロゲンに加えてさらなる置換基を有してもよい。
【0065】
前述のように、第一の実施態様において、本発明は、基板表面を少なくとも1つの結晶性化合物でパターン形成する方法において、基板表面と結合でき、且つ少なくとも一つの結晶性化合物と結合できる少なくとも一つの化合物(C1)を基板表面上に堆積する段階を含む方法を提供する。本実施態様によれば、好ましくは少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%、特に少なくとも99質量%の、基板表面に結合している結晶性化合物が、(C1)でパターン形成されている表面領域(且つ、基板のパターン形成されていない部分、もし存在すれば(C2)で被覆された基板領域には結合されない)に結合される。
【0066】
第二の実施態様は、少なくとも1つの結晶性化合物で基板表面にパターン形成する方法において、基板表面と結合でき、且つ結晶性化合物の結合を阻止することのできる少なくとも一つの化合物(C2)を、基板表面上に堆積する段階を含む方法である。本実施態様によれば、好ましくは少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%、特に少なくとも99質量%の、基板表面に結合している結晶性化合物が、(C2)でパターン形成されていない表面領域(即ち、基板のパターン形成されてない領域、あるいはもし存在すれば、(C1)で被覆された領域)に結合される。
【0067】
有用な有機半導体化合物(S)は、原則として当業者には公知である。それらはアントラセン、テトラセン、ペンタセン、および置換されたアセンなどのアセンを含む。好ましいアセンは、ルブレン(5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン)である。本発明における有機半導体として有用な置換アセン化合物は、好ましくは、電子供与性の置換基(例えば、アルキル、アルコキシ、エステル、カルボン酸塩、あるいはチオアルコキシ)、電子求引性の置換基(例えば、ハロゲン、ニトロあるいはシアノ)あるいはそれらの組み合わせから成る基から選択される、少なくとも1つの置換基を含む。有用な置換ペンタセンは、例えばアルキル基が1から12の炭素を有する2,9−ジアルキルペンタセンおよび2,10−ジアルキルペンタセン、2,10−ジアルコキシペンタセン、および1,4,8,11−テトラアルコキシペンタセンである。適した置換ペンタセンは、米国出願公開第2003/0100779号、および米国特許第6,864,396号に記載されている。さらなる有用な有機半導体の例は、ペリレン、フラーレン、フタロシアニン、オリゴチオフェン、およびそれらの置換誘導体を含む。適したオリゴチオフェンは、クアテルチオフェン、キンクチオフェン、セキシチオフェン、α,ω−ジ(C1−C8)−アルキルオリゴチオフェン、例えばα,ω−ジヘキシルクアテルチオフェン、α,ω−ジヘキシルキンクチオフェンおよびα,ω−ジヘキシルセキシチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)、例えばポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ビス(ジチエノチオフェン)、アントラジチオフェンおよびジアルキルアントラジチオフェン、例えばジヘキシルアントラジチオフェン、フェニレン−トリオフェン(P−T)オリゴマーおよびそれらの誘導体であって、特にtert−ブチル−P−T−T−P−tertなどのα,ω−アルキル置換されたフェニレン−トリオフェンオリゴマーを含む。さらなる有用な有機半導体の例は、ポリアセチレン、ポリチエニレンビニレン、C60を含む。特に好ましいのは、銅(II)フタロシアニンおよびルブレンである。
【0068】
(C1)との結合相互作用および/または(C2)との反発性相互作用のために、半導体(S)は、反応を受け、かかる相互作用をし得る官能基を導入できる。共有結合、イオン結合、ファンデルワールス、配位および他の相互作用に適した官能基は、構成要素(C2)の上述の基である。
【0069】
これらの基は、例えば縮合反応あるいは付加反応が可能な(S)の官能基及び前記の(S)と相補型の少なくとも1つの基を有する化合物から選択される少なくとも1つの化合物であって、(C1)および/または(C2)と相互作用し得る少なくとも1つの官能基も有する化合物と反応させることによって、成分(S)の中に導入することができる。多くの場合に、半導体(S)は官能化を受ける必要はない。それというのも、基板表面および(S)と相互作用し得る化合物(C1)と、場合により(C2)を容易に利用できるためである。ゆえに、例えば上述のC8−C30−アルキルチオール(C1)および特にヘキサデカンチオールが炭化水素基、例えば芳香環あるいはアルキル鎖を有する化合物(S)を引きつけることができる。
【0070】
本発明によれば、有機半導体化合物(S)は、微結晶の形態で用いられる。本発明の目的では、"微結晶"の用語は、最大寸法5ミリメートルの小さい単結晶とする。例示的な微結晶は、最大寸法1mmあるいはそれ未満を有し、好ましくはより小さい寸法(しばしば500μm未満、特に200μm未満、例えば0.01〜150μmの範囲、好ましくは0.05〜100μmの範囲)であるため、前記の微結晶は基板上で微細なパターンを形成できる。ここで、個々の微結晶は単結晶ドメインを有しているが、前記のドメインは、1つ以上のクラックを含んでよいが、但し、そのクラックは、前記微結晶を1つより多くの結晶ドメインに分割しない。規定の微結晶の粒子サイズおよび結晶学的特性は、直接X線分析によって測定できる。
【0071】
半導体化合物(S)の粒子は、規則的あるいは不規則な形状であってもよい。例えば、前記粒子は、球状、または実質的に球状の形態、あるいは針状の形態で存在しうる。
【0072】
好ましくは、有機半導体(S)は、粒子の形態で用いられ、長さ/幅の比(L/W)は少なくとも1.05、より好ましくは少なくとも1.5、特に少なくとも3である。
【0073】
有機電界効果トランジスタ(OFET)において、単一の有機半導体結晶で製造されたチャネルは、典型的には、有機半導体の多結晶で製造されたチャネルよりも移動度が高い。移動度が高いのは、単結晶チャネルには粒界がない事実に起因する。粒界は、多結晶有機半導体膜で製造されたOFETチャネルの導電性および移動度を低下させる。
【0074】
例えば1〜10ミクロンあるいはそれ以上の直径の有機半導体微結晶が直ちに利用可能である。前記の有機半導体微結晶は、R.A.Laudiseらが"有機半導体の物理気相成長"Journal of Crystal Growth 187 (1998) 449−454ページ内、および"α−ヘキサチオフェンのセンチメートルサイズ結晶の物理気相成長"Journal of Crystal Growth 182 (1997) 416−427ページ内に記述した方法によって製造できる。Laudiseらのこれら両方の文献は、参照をもって、その全体が開示されたものとする。Laudiseらが記述した方法は、有機半導体が蒸発するのに充分なほど高い温度に維持して、有機半導体基板上に不活性ガスを通過させることを含む。Laudiseらが記述した方法は、有機半導体で飽和したガスを冷却して、自発的な有機半導体微結晶の凝縮を引き起こすことも含む。前記の有機半導体微結晶もまた市販である。例えば、3000 Continental Drive−North、Mount Olive、N.J.07828−1234のBASF社は、有機半導体のピグメントの微結晶を販売している。1つの前記の微結晶は、銅フタロシアニンで形成されている。有機半導体微結晶がすぐに使用可能であることが、高品質チャネルのOFETの製造を可能にする。
【0075】
本発明による方法の、工程a)において、表面に形成された凹凸のパターンを規定する多数の凹部を含む表面を有し、前記の凹部がスタンピング表面と隣接し、規定したスタンピングパターンを規定するスタンプが提供される。
【0076】
本発明において有用なスタンプは、当該技術分野において公知であり、市販である。一般的に、それらのスタンプはポリマー材料を、所望のパターンを有するモールドに流し込むことで製造できる。スタンプ形成に選定される特定の材料は、本発明では重要ではないが、一定の物理的性質を満足していなければならない。好ましい実施態様においては、スタンプはエラストマーである。スタンプ形成において用いるのに適したポリマー材料は、直鎖あるいは分岐骨格を有していてもよく、架橋しているか、あるいは架橋していなくてもよく、それは特定のポリマーおよびスタンプの所望の成形性の程度による。様々なエラストマーポリマー材料が前記の製造に適しており、特にシリコーンポリマー、エポキシポリマーおよびアクリレートポリマーの一般的な類のポリマーである。スタンプとして用いるのに適したシリコーンエラストマーの例は、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、およびフェニルクロロシランおよびその類、などのクロロシランを含む前駆体から形成されるものを含む。特に好ましいシリコーンエラストマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。例示的なシリコーンポリマーは、GE Advanced MaterialsによってRTVの商標の下で販売されるもの、およびDow Chemical Company、Midland、Mich.によってSlygardの商標の下で販売されるものを含み、特にSlygard 182、Slygard 184、およびSlygard 186である。
【0077】
スタンプは、凹凸によって規定された種々の特徴を有するスタンピング表面を含む。凹凸の形状および寸法は、基板上に形成される電子デバイスの性質による(例えば、分子サイズのトランジスタ、配線など)。従って、スタンピング表面は、種々の水平方向の寸法を有する特徴を含んでいてもよい。基板上の様々なパターンは、本発明の方法によって得られる。スタンピングパターンを規定するスタンプの隆起は、同一か、あるいは異なった形状であってもよい。好ましくは、凹凸は均一であり、且つ例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11あるいは12の角を有する多角形の形状である。好ましくは、凹凸は、長方形、楕円形、あるいは円形である。それぞれの凹凸は少なくとも50nm、好ましくは少なくとも100nm、より好ましくは少なくとも500nmの最小寸法を有する。それぞれの凹凸は5mmまで、好ましくは1mmまで、より好ましくは500μmの最大寸法を有することができる。典型的な凹凸は、10μm〜100μmの正方形、5〜100μmの線、および10〜100μmのドットである。隣接した2つの凹凸間の距離は、好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは少なくとも100nm、特に少なくとも500nmである。
【0078】
スタンプを製造するのに適した方法は、光分解法である。例えば、スタンプ表面と照射光源との間にマスクを置いてもよく、表面は、マスクを通して予め決められた時間の間、照射される。部分的な表面が、前記の照射によって分解し、前記の分解部分を取り除くことにより、表面に凹部を形成する。本方法によれば、種々のパターンが、種々の利用可能なマスクによって、スタンプに非常に都合よく形成され得る。加えて、光分解法は、モールド表面上の硬化性流体の硬化を含む上記の方法と組み合わせて用いることができる。例えば、硬化性流体をモールド表面と接触させ、硬化させ、予め決められたスタンピング表面を有するスタンプを形成することができる。加えて、予め決められたスタンピング表面を、マスクを通して照射して、スタンピング表面上に追加の造形を創ることができる。本方法によれば、フォトレジストはスタンプ材料そのものとして使用できる。上記の光分解法を用いてパターン形成できる特定のタイプのポリマー、フォトパターン形成に好ましい波長および光分解時間の長さは、当該技術分野では公知である。
【0079】
スタンプの原盤として働くモールド表面は、任意のモフォロジーの特徴を含んでいてもよく、それは望ましくは基板表面上の半導体のパターン形成用のスタンプ製造のためのテンプレートとして働き得る。例えば、ICなどのマイクロ電子素子がテンプレートとして働きうる。モールド表面は、種々の方法によって形成される。1つによれば、モールド表面は金属などの材料から微細加工されたものである。他によれば、モールド表面はリソグラフィーにより、基板を提供し、基板上へ膜を堆積し、露出した材料表面へレジストを塗布し、予め決められたパターンによってレジストを照射し、照射された部分のレジストを材料表面から除去し、材料表面を、そこで化学的に反応させるように選択され、且つ、レジストに関して化学的に不活性であるように選択された作用物質と接触させ、予め決められたパターンに従って材料の部分が分解し、分解した部分を除去し、そしてレジストを除去して予め決められたパターンに従って形成された部分の覆いを除去し、モールド表面を形成することによって形成される。モールド表面形成のための他の手法によれば、基板を提供し、レジストで被覆してもよい。続いて、予め決められた特定のパターンに従ってレジストの部分を照射する。レジストの照射された部分を、その後基板から除去し、予め決められたパターンに従った部分の基板表面を露出してもよく、めっき試薬と接触させ、予め規定されたパターンに従って露出した部分をめっきしてもよい。そこで、レジストを除去して露出した基板の覆いを外し、予め決められたパターンに従ってめっきで縁取られた基板の部分がモールドを形成する。
【0080】
本発明による方法の工程b)においては、スタンピング表面を少なくとも1つの化合物(C1)または(C2)で被覆する(即ち、少なくとも1つの化合物C1あるいはC2でスタンプを"インク付け"する)。前記スタンプを、スタンプに吸着される、化合物(C1)または(C2)を含む溶液でインク付けしてもよい。従って、インク付けは、たとえばスタンプをインクで湿らせた材料(即ち、紙、スポンジ)と接触させること、スタンプ上にインクを直接注ぐこと、適切な塗布器具(例えば綿棒、ブラシ、霧吹き、注射器など)でインクをスタンプに適用すること、あるいは(C1)または(C2)を含む溶液にスタンプ表面を浸すことで実現される。前記化合物は、スタンプ上で乾燥させてもよいし、ブローで乾燥させてもよい。
【0081】
本発明による方法の工程c)においては、基板表面の少なくとも一部分をスタンピング表面と接触させ、基板上に化合物(C1)または(C2)を堆積することができる。
【0082】
インク付けされたスタンプを、その後、化合物(C1)または(C2)が基板表面に移るのに充分な長さの時間、官能化されたポリマー表面と接触させるように置く。スタンピング工程の所要時間の長さは、当然、用いられる化合物(C1)および(C2)、スタンプ材料および基板によって異なる。当業者は、適した長さの時間を規定できる。例えば、スタンピング表面を基板表面におよそ1秒から5分(例えば、5〜60秒)の範囲の時間、接触させることは、一般的に充分な転写を実施するのに適しているが、必要あるいは適正である場合には、より長いあるいはより短い時間、接触を維持してもよい。
【0083】
本発明による方法の工程d)においては、スタンピング表面を離し、基板表面に結合サイトを提供する。それらの結合サイトは、上述のメカニズムによって有機半導体化合物(S)の微結晶を結合できる。
【0084】
本発明の1つの実施態様においては、基板は、例えば基板表面上に異なる型の結合サイトを製造するために、一回より多くスタンプされてもよい。種々の結合サイトの存在は、複雑な回路を組み立てるのに有用であり得る。例えば、種々の結合サイトは異なる化合物(C1)で修飾することができ、ゆえに種々の半導体(S)を基板に結合し得る。
【0085】
結合サイトのパターンを形成された基板が、本発明の第一の実施態様による方法によって、工程d)で得られ、上で定義されたように少なくとも1つの化合物(C2)と随意に接触させてもよい。化合物(C2)は通常、結合サイトを有さない基板領域を被覆するのに用いられる。化合物(C2)は通常、化合物(C1)で形成された結合サイトと反発性相互作用を示し、結合サイトを置き換え、あるいは被覆することができず、それらは適した溶剤中の少なくとも1つの化合物(C2)の溶液と基板表面を接触させることで適用できる。基板表面に(C2)が結合するのに充分な時間範囲の後、前記の溶液を、好ましくは溶剤によって濯ぐことで基板から除去する。当然、基板の定義された領域も、本発明によるパターン形成技術を用いて、少なくとも1つの化合物(C2)でパターン形成できる。
【0086】
結晶性化合物の結合を阻止する表面のパターン形成領域を有する基板は、本発明の第二の実施態様による方法によって工程d)で得られ、少なくとも1つの化合物(C1)と随意に接触させて、化合物(C2)でパターン形成されていない基板領域上に結晶性化合物を堆積できる。前述の通り、化合物(C2)は通常、化合物(C1)と反発性相互作用を示し、化合物(C1)は通常、既に(C2)によって被覆されたサイトを置き換え、あるいは被覆することができない。それゆえに、(C1)は通常、適した溶剤中の少なくとも1つの化合物(C1)の溶液と基板表面を接触させることで、それらの基板に適用できる。基板表面に(C1)が結合するのに充分な時間範囲の後、前記の溶液を、好ましくは溶剤によって濯ぐことで基板から除去する。当然、基板の定義された領域も、(C2)適用のためのパターン形成技術を用いて、少なくとも1つの化合物(C1)でパターン形成できる。
【0087】
好ましくは、液体媒体中の固体半導体粒子の懸濁液が、有機半導体化合物(S)の多数の微結晶を、工程e)で基板表面に適用するのに用いられる。
【0088】
好ましくは、半導体化合物(S)は液体媒体中で、25℃/1013mbarにおいて、10g/l以下、より好ましくは5g/l以下、特に1g/l以下の溶解性を有する。
【0089】
前記の液体媒体は、好ましくは水および水および少なくとも1つの水混和性の有機溶剤の混合物から選択される。水および少なくとも1つの水混和性の有機溶剤の混合物は、好ましくは20質量%以下の有機溶剤を含む。適した水混和性の有機溶剤は、C3−C4−ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン、環状エーテル、例えばジオキサンおよびテトラヒドロフラン、C1−C4−アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、ポリオールおよびそれらのモノ−およびジメチルエーテル、例えばグリコール、プロパンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、グリセリン、C2−C3−ニトリル、例えばアセトニトリルおよびプロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ブチロラクトン、2−ピロリドンおよびN−メチルピロリドンである。液体媒体として好ましいのは、水および少なくとも1つのC1−C4−アルカノールの混合物である。
【0090】
工程e)で用いられる半導体粒子の懸濁液は、半導体粒子を安定化するための少なくとも1つの界面活性剤を含んでいてもよい。前記の界面活性剤は、好ましくは非イオン系界面活性剤である。しかしながら、イオン系界面活性剤、たとえば陰イオン性乳化剤、陰イオン性保護コロイド、陽イオン性乳化剤、陽イオン性保護コロイドおよび両イオン性(ベタイン性)乳化剤もまた適している。好ましい実施態様においては、界面活性剤は用いていない。
【0091】
懸濁液の固体含有量は、一般的に0.001〜20質量%の範囲であり、特に0.1〜10質量%の範囲である。
【0092】
基板に有機半導体化合物の微結晶を適用するために、ピペット操作、スピンあるいは液浸コーティング、即ちディップコーティングなどの溶液ベースの技術を用いることができる。ピペット操作の場合には、半導体微結晶の懸濁液をパターン形成した基板に滴下しながら加える。スピンコーティングの場合には、パターン形成した基板を半導体微結晶の懸濁液で満たし、そして回転させて基板と懸濁物の密な接触を得る。液浸コーティング(ディップコーティング)の場合には、パターン形成した基板を、好ましくは懸濁液をかき混ぜながら、半導体微結晶を含む懸濁液に浸し、そして懸濁液から引き上げる。全ての場合において、好ましくは、適用の後、溶剤で濯ぐことによって、液体媒体を基板から除去する。好ましくは、前記溶剤は微結晶の適用に用いられる懸濁液の液体媒体に一致する。後に、典型的には自然蒸発によって、溶剤を除去する。蒸発速度は、加熱、減圧、通風、およびその種のものなどの、当該技術分野で公知の1つあるいはそれ以上方法で加速できる。
【0093】
添付の図および以下の実施例に基づき、本発明をより詳細に記載する。
【0094】
実施例
一般的な製造方法
わずかに振り混ぜながら、ピグメントの単結晶を水に分散し得た。親水/疎水領域を有する基板は、以下のマイクロ接触プリンティング工程によってパターン形成できた:PDMS前駆体および架橋剤(質量比約10:1、Dow ChemicalのSilguard 184)を、Siの原型に注ぎ、65℃で8時間硬化させて、様々なパターンを有するPDMSスタンプを製造した。得られたPDMSスタンプを、Q−チップで数mMの溶液(例えばチオールあるいはシラン)を叩くことによって、物質(C1)でインク付けし、そして気流によって乾燥させた。基板表面を、約20秒間PDMSスタンプと接触させ、溶剤で濯ぎ、空気中で乾燥させることによってパターン形成することができた。スタンプに接触しなかった領域は、随意に、異なる分子(C2)の1mM溶液に約30分間浸して充填でき、続いて溶剤で濯ぎ、空気中で乾燥させた。半導体化合物(S)の結晶は、ピペット操作、ディップコーティングあるいはスピンコーティングによって、結晶懸濁物から基板上にパターン形成できた。
【0095】
実施例1:
銅フタロシアニン(CuPc)結晶を、懸濁媒体として水を用い、2mg/mlの結晶濃度を有する懸濁液からヘキサデカンチオールでパターン形成した金基板(100μm×100μm角)に適用した。結晶は、ピペット操作によって適用し、パターン形成時間は10分であった。得られたパターンを図1に示す。
【0096】
実施例2
銅フタロシアニン(CuPc)結晶を、懸濁媒体として水:メタノールが3:1の混合物を用い、2mg/mlの結晶濃度を有する懸濁液からヘキサデカンチオールでパターン形成した金基板(100μm×100μm角)に適用した。結晶は、ピペット操作によって適用し、パターン形成時間は20分であった。得られたパターンを図2に示す。
【0097】
実施例3:
銅フタロシアニン(CuPc)結晶を、懸濁媒体として水を用い、10mg/mlの結晶濃度を有する懸濁液からヘキサデカンチオールでパターン形成した金基板(100μm×100μm角)に適用した。結晶は、500rpm(3秒)、そしてその後2000rpm(20秒)で、スピンコーティングによって適用した。得られたパターンを図3に示す。
【0098】
実施例4:
銅フタロシアニン(CuPc)結晶を、懸濁媒体として水を用い、0.2mg/mlより低い結晶濃度を有する懸濁液からヘキサデカンチオールでパターン形成した金基板(100μm×100μm角)に適用した。結晶は、ピペット操作によって適用し、パターン形成時間は20分であった。得られたパターンを図4に示す。
【0099】
実施例5:
ルブレン結晶を、結晶の懸濁液からヘキサデカンチオールでパターン形成した金基板(100μm×100μm角)に適用した。結晶は、ピペット操作によって適用し、パターン形成時間は10分であった。得られたパターンを図5に示す。
【0100】
実施例6:
CuPc結晶を、懸濁媒体として水を用い、2mg/mlの結晶濃度を有する懸濁液からヘキサデカンチオールでパターン形成したNH3+Cl-基板(100μm×100μm角)に適用した。結晶は、ピペット操作によって適用し、パターン形成時間は5分であった。得られたパターンを図6に示す。
【0101】
実施例7:
様々なパターンを有する基板上への結晶の適用
CuPc結晶を、修飾していない金の50μmの縞およびヘキサデカンチオールでパターン形成した50μmの縞を有する金基板に適用した(結晶濃度:2mg/ml;溶剤:水;パターン形成時間:20分)。図7aは、露出した金をヘキサデカンチオールでエッチングした後のAu基板を示す。図7bは、図7aで示された基板上にパターン形成したCuPc結晶を示す。
【0102】
実施例8:
結晶の配列
金基板を3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸のナトリウム塩でパターン形成し、基板表面上に親水/疎水のラインを設計し、50μm〜106μmの間の最大寸法を有するCuPcの針状結晶を水の流れによって、SO3-Na+/20μm HDTパターンの基板上に配列できた。結晶は3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸のナトリウム塩で修飾された領域に結合された。本実施例において、結晶懸濁液の流れの方向は、基板の縞に平行であった。最良の結果は、流れの方向を制御したときに得られるが、流れの方向の制御なしで、結晶を基板の親水領域に配列することも可能である。
【0103】
実施例9:
有機電界効果トランジスタの製造
高ドープのSiをゲート電極、熱成長の二酸化シリコン膜(300nm)を誘電層として用いた基板を準備した。チャネル長4ΨmのAuのコンタクトパッドを、基板上にリソグラフィーを用いてパターン形成した。前記基板は、まずUV/オゾンで30分間処理され、そして溶剤としてトルエンを用いた1mMのn−(オクタデシル)トリクロロシラン溶液に15分間浸した。トルエンで濯いだ後、次に前記基板を、100℃で2時間、ホットプレート上でベイクした。その後、基板をエタノール中、1mMの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸(ナトリウム塩)溶液に20分間浸し、その後、エタノールで数回濯いだ。自己組織化によるOFETの製造のために、tPTTPt(ビス(t−ブチル)フェニルビチオフェンフェニル)の結晶を、懸濁媒体として水を用い、結晶濃度2mg/mlを有する懸濁液から、基板に適用した。結晶はピペット操作で適用し、パターン形成時間は20分であった。得られたトランジスタの特性曲線を図9aおよび9bに示す。得られたパターンを。図10aおよび10bに示す。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】ヘキサデカンチオールでパターン形成された金基板上の銅フタロシアニン(CuPc)結晶を示す図であり、結晶は水を懸濁媒体として適用されている。
【図2】金基板上のCuPc結晶を示す図であり、結晶は水/メタノールを懸濁媒体として適用されている。
【図3】金基板上のCuPc結晶を示す図であり、結晶はスピンコーティングを用いて適用されている。
【図4】金基板上のCuPc結晶を示す図であり、結晶はピペット操作で適用している。
【図5】金基板上のルブレン(2〜10μm)の単結晶を示す図であり、結晶は水を懸濁媒体として適用されている。
【図6】ヘキサデカンチオールでパターン形成されたNH3+Cl-基板上のCuPc結晶を示す図である。
【図7】異なる種類のパターンを有する基板上のCuPc結晶を示す図である。
【図8】ヘキサデカンチオールおよび3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸のナトリウム塩でパターン形成された金基板上のCuPcの針状結晶を示す図である。
【図9】(ビス(t−ブチル)フェニルビチオフェンフェニル)結晶の自己組織化で得られたOFETのトランジスタ性能を示す図である。
【図10】(ビス(t−ブチル)フェニルビチオフェンフェニル)結晶の自己組織化で得られたOFETの結晶パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの結晶性化合物で基板表面にパターン形成する方法において、基板表面と結合でき、且つ少なくとも一つの結晶性化合物と結合できる少なくとも一つの化合物(C1)および/または基板表面と結合でき、且つ結晶性化合物の結合を阻止することのできる少なくとも一つの化合物(C2)を、基板表面上に堆積する工程を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
(a)表面内に形成された、凹凸パターンを規定する複数の凹部を有するスタンプを提供し、その際、前記の凹部はスタンピング表面と隣接し、且つスタンピングパターンを規定している
(b)基板表面と結合でき且つ少なくとも一つの結晶性化合物と結合できる、少なくとも一つの化合物(C1)で前記のスタンピング表面を被覆し、
(c)基板表面の少なくとも一部分と前記のスタンピング表面を接触させて、基板上に前記化合物(C1)を堆積させ、
(d)前記のスタンピング表面を離して、基板表面上に結合サイトのパターンを与え、
(e)基板表面に結晶性化合物を適用し、適用した結晶の少なくとも一部分が基板表面上の少なくとも一部分の結合サイトと結合することを可能にする段階を含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
(a)表面内に形成された、凹凸パターンを規定する複数の凹部を有するスタンプを提供し、その際、前記の凹部はスタンピング表面と隣接し、且つスタンピングパターンを規定している
(b)基板表面と結合でき且つ結晶性化合物の結合を阻止できる、少なくとも一つの化合物(C2)で前記のスタンピング表面を被覆し、
(c)基板表面の少なくとも一部分と前記のスタンピング表面を接触させて基板上に前記化合物(C2)を堆積させ、
(d)前記のスタンピング表面を離して、基板表面上に結晶性化合物の結合を阻止するサイトのパターンを与え、
(e)基板表面に結晶性化合物を適用し、適用した結晶の少なくとも一部分が(C2)によって被覆されていない基板表面の少なくとも一部分に結合することを可能にする段階を含む方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、
結晶性化合物が少なくとも一つの有機半導体化合物(S)の複数の微結晶から成ることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
有機半導体(S)が、5ミリメートルあるいはそれ未満、好ましくは1mmあるいはそれ以下、および特に500μmあるいはそれ未満の最大寸法を有する粒子の形態で用いられることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4あるいは5記載の方法において、
有機半導体(S)が、長さ/幅の比が少なくとも1.05、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも3である粒子の形態で用いられることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、
段階d)で得られた結合サイトのパターンを有する基板を、少なくとも一つの化合物(C2)と接触させ、化合物(C1)でパターン形成されていない基板領域上での結晶性化合物の堆積を阻止することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
化合物(C2)が炭化水素基、好ましくはフッ化処理された炭化水素基を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法において、
段階d)で得られた、表面に結晶性化合物の結合を阻止するサイトのパターンを有する基板を、少なくとも一つの化合物(C1)と接触させ、化合物(C2)でパターン形成されていない基板領域上に結晶性化合物を堆積できることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、
液体媒体中の固体の半導体粒子の懸濁物を、基板表面への有機半導体(S)の微結晶の適用に用いることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
半導体が、液体溶剤中で、25℃/1013mbarにおいて10g/l以下の溶解性があることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10あるいは11に記載の方法において、
液体媒体が、水および水と少なくとも一つの水混和性のある有機溶剤との混合物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法において、
結晶性化合物の適用を、ピペット操作、ディップコーティング、あるいはスピンコーティングで行うことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において、
少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、特に少なくとも99質量%の、基板表面に結合させた結晶性化合物を、(C1)でパターン形成された表面領域に結合させることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法において、
少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、特に少なくとも99質量%の、基板表面に結合させた結晶性化合物を、(C2)でパターン形成されていない表面領域に結合させることを特徴とする方法。
【請求項16】
有機電界効果トランジスタのパターンを含む基板の製造方法において、
それぞれのトランジスタが、
基板上に配置された有機半導体(S)の微結晶と、
微結晶のチャネル部の導電性を制御するために設置されたゲート構造と、
チャネル部の対向する端に配置された導電性のソースおよびドレイン電極とを含む基板の製造方法において、
微結晶の位置規定が、請求項1から15までのいずれか1項で定義された少なくとも一つの結晶性化合物による基板表面のパターン形成を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
有機電界効果トランジスタのパターンが、基板中に配置されたゲート電極を含むゲート構造を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16あるいは17に記載の方法において、
有機電界効果トランジスタのパターンが、基板上に配置された導電性ソース電極および/またはドレイン電極を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【公表番号】特表2009−526911(P2009−526911A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554775(P2008−554775)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051455
【国際公開番号】WO2007/093622
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【Fターム(参考)】