説明

表面形状測定機

【課題】 プローブの他端を鏡面として、鏡面の位置変化を干渉計で検出する表面形状測定機において、プローブの振れを簡単な構造で検出可能にする。
【解決手段】 ステージ7と、ステージの移動位置を検出する検出器9,11と、第3の軸方向に移動可能な移動台22と、移動台に対して第3の軸方向に移動可能に保持され、一端が被測定物の表面に接触し、他端に鏡面34を有するプローブ25と、プローブの鏡面と基準平面との距離を検出する距離検出器とを備える表面形状測定機において、鏡面に斜めに入射する平行ビームを出射するビーム源35,36と、反射ビームを分割するビーム分割手段38と、分割されたビームの一方が入射される第1のビーム位置検出器39と、他方が入射される集束手段40と、集束ビームが入射される第2のビーム位置検出器41と、第1及び第2のビーム位置検出器の検出信号から、鏡面34の傾斜を検出する演算回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージに載置された被検査物の表面形状を高精度に測定する表面形状測定機に関し、特に、プローブの一端が略一定の測定圧で被検査物の表面に接触し、プローブの他端の鏡面の位置をレーザ干渉計で高精度に検出する表面形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面形状を高精度に測定する表面形状測定機は、第1の軸(X)方向及び第2の軸(Y)方向に移動可能なステージと、第3の軸(Z)方向に移動可能なプローブとを有し、ステージに被測定物を載置して表面にプローブの一端を接触させた状態でステージを移動させた時のプローブの他端のZ方向の変位を検出する構成を有する。プローブは、支点を回転軸にして円弧運動(ピボット運動)するものもあるが、比較的広い測定範囲で高精度の測定が行える測定機では、直線運動するものが使用される。
【0003】
特許文献1は、直線運動するプローブを有する表面形状測定機を記載している。特許文献1に記載された表面形状測定機では、エアー軸受けでZ方向に移動可能に支持されたプローブを使用し、プローブの被検査物の表面に接触する一端と反対側の他端を鏡面として、鏡面の位置変化を干渉計で検出する構成を記載しているが、小さな一定の測定圧を得るために、エアー軸受けが取り付けられる光プローブ(移動台)をZ方向に移動可能にして、プローブが移動台に対して所定の位置関係になるようにフィードバック制御することが行われている。具体的には、プローブの他端の鏡面に光ビームを集束し、反射ビームから集束状態を検出してオートフォーカス信号を生成するオートフォーカス機構を移動台に設け、オートフォーカス信号に基づいてフィードバック制御を行う。特許文献1は、プローブの振れについては記載していない。
【0004】
特許文献2は、直線運動するプローブとして使用されるエアシリンダを記載している。特許文献2によれば、芯材と支持部材の接合部分を隙間なく一体的に固定した構造とすることにより、芯材の振れを低減した構造を記載している。
【0005】
しかし、直線運動するプローブは、隙間がないと移動できないため、支持部材との間に微小な隙間が必要である。そのため、プローブに横方向から力がかかると、プローブが傾き、プローブの先端と被測定物の表面との接触位置に誤差を生じ、測定精度が低下するという問題を生じる。
【0006】
特許文献3は、触針プローブの他端の振れを検出して補正する構成を記載している。特許文献3によれば、プローブの軸に垂直な2方向の振れを検出するために、2個の被接触式センサが設けられる。
【0007】
【特許文献1】特開平6−265340号公報
【特許文献2】特開2002−162220号公報
【特許文献3】特開平5−60542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、直線運動するプローブは、横方向から力がかかると、プローブが傾き、測定精度が低下するので、プローブの振れを検出して補正する必要がある。正確な補正を行うには、プローブの振れを、プローブの軸に垂直な2方向で、例えば、プローブの軸をZ軸とすると、X軸とY軸に対する回転として検出する必要があり、2個の被接触式センサを用いている。しかし、2個の被接触式センサを設けるとコスト増になるだけでなく、プローブの支持部分が大きくなるという問題がある。
【0009】
また、被接触式センサとして、光センサを用いる場合、プローブの2つの側面を鏡面として、2つの検出ビームを発生する2つの光源を設ける必要がある。プローブの2つの側面を鏡面とするため、プローブを大きくする必要があり、プローブの移動質量が増加し、プローブの運動性能(追従性)が低下するという問題を生じる。また、2つの光源を設けるため、コスト増になるだけでなく、プローブの支持部分が大きくなるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、プローブの他端を鏡面として、鏡面の位置変化を干渉計で検出する表面形状測定機において、プローブの振れを簡単な構造で検出可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を実現するため、本発明の表面形状測定機は、プローブの変位を検出するためにプローブの他端に設けられた鏡面を、プローブの振れの検出にも利用し、1個の光源からの平行ビームをこの鏡面に斜めに入射させ、反射ビームを2つに分割して、一方のビームで鏡面の振れによる変化を検出し、他方のビームで鏡面の位置と振れによる変化を検出し、2つの検出結果を合わせてプローブの振れを検出する。
【0012】
すなわち、本発明の表面形状測定機は、第1及び第2の軸方向に移動可能なステージと、前記ステージの前記第1及び第2の軸方向の移動位置を検出する第1及び第2の軸方向位置検出器と、第3の軸方向に移動可能な移動台と、前記移動台に対して、前記第3の軸方向に移動可能に保持され、一端が前記ステージ上に載置された被測定物の表面に接触し、他端に前記第3の軸方向に垂直な鏡面を有するプローブと、前記プローブの前記鏡面と前記第3の軸方向に垂直な基準平面との距離を検出する第3の軸方向距離検出器とを備える表面形状測定機において、前記プローブの前記鏡面に斜めに入射する平行ビームを出射するビーム源と、前記鏡面で反射された前記平行ビームを分割するビーム分割手段と、前記ビーム分割手段で分割された前記平行ビームの一方が入射され、入射位置を検出する第1のビーム位置検出器と、前記ビーム分割手段で分割された前記平行ビームの他方が入射される集束手段と、前記集束手段で集束される他方の前記平行ビームが入射され、前記平行ビームの入射位置を検出する第2のビーム位置検出器と、前記第1及び第2のビーム位置検出器の検出信号から、前記鏡面の前記第1及び第2の軸方向に垂直な方向を軸とする傾斜を検出する演算回路とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、プローブの変位を検出するためにプローブの他端に設けられた鏡面を利用してプローブの振れを検出するため、プローブの側面を鏡面とする必要がなく、プローブを小さくできる。また、平行ビームを鏡面に斜めに入射させることにより、反射ビームにはプローブの振れ、すなわち、プローブの軸(第3の軸)方向に垂直な2方向を軸とする回転による変化が含まれるので、その変化を分離して検出することにより、1個の光源からの1つのビームでプローブの2方向の振れを検出できる。このように、本発明によれば、プローブに新たに鏡面を設ける必要がなく、プローブの2方向の振れを1つのビームで検出するので、構成が簡単である。
【0014】
プローブの鏡面の第3の軸方向の位置は非常に高精度に検出する必要があるので、第3の軸方向距離検出器は、例えば、干渉計などを使用して基準平面との距離を検出する。
【0015】
演算回路の検出した鏡面の傾斜に対応するプローブの傾斜に基づいて、プローブの一端の位置を補正する。補正方法については、特許文献3に記載された方法と同様の方法が適用できる。
【0016】
プローブの被測定物の表面に対する接触圧を一定にするために、プローブの他端の移動台に対する相対位置をできるだけ一定にするように、移動台の第3の軸方向の移動を制御する移動台制御部を備えることが望ましい。
【0017】
移動台制御部の制御方法には各種の方法があり、例えば、被測定物の表面の形状データに基づいて、ステージの移動に伴う被測定物の表面の第3の軸方向の位置を算出して、移動台の第3の軸方向の移動を制御したり、第3の軸方向距離検出器の検出したプローブの鏡面の第3の軸方向の位置に応じて、移動台の前記第3の軸方向の移動を制御したり、演算回路がプローブの振れを算出する過程で算出するプローブの鏡面の第3の軸方向の位置に応じて、移動台の第3の軸方向の移動を制御する。
【0018】
第1のビーム位置検出器は、2分割光検出器で実現でき、第2のビーム位置検出器は、4分割光検出器で実現できる。また、第1及び第2のビーム位置検出器は、ポジションセンサで実現することもできる。
【0019】
また、本発明の表面形状測定機のような非常な高精度で表面形状を測定する場合、被測定物を含めて周囲環境を安定させる必要があり、表面形状測定機を覆うカバーを設ける必要があるが、その場合、プローブと被測定物の表面の接触部分を確認することが難しくなるので、プローブの他端付近を照明する照明手段と、プローブの他端付近を撮影するTVカメラとを設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、プローブの他端を鏡面として、鏡面の位置変化を干渉計で検出する表面形状測定機において、プローブの振れを簡単な構造で検出できる。また、プローブの可動質量を小さくできるので、プローブの運動性能(追従性)が低下しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施例の表面形状測定機の全体構成を示す図であり、(A)が上面図を、(B)が側面図を示す。図1の(A)の上面図では、カバー29を除いている。
【0022】
図1に示すように、実施例の表面形状測定機は、防振台で支持されたベース1と、ベース1上に設けられたアーチ型の支持部材3、4と、ベース1上に設けられたY(第2)移動軸5と、Y移動軸5の上をY軸方向に移動可能に設けられたX(第1)移動軸6と、X移動軸6の上をX軸方向に移動可能に設けられたステージ7と、支持部材4に設けられたZ(第3)軸方向検出部8と、カバー29とを有する。
【0023】
ステージ7は、X軸方向とY軸方向に移動可能である。X移動軸6及びY移動軸5は、例えば、ボールネジと平行ガイドを組み合わせた移動機構で実現できる。ステージ7のY軸方向の移動量は、ベース9に設けられたY軸レーザ干渉ヘッド9により検出され、ステージ7のX軸方向の移動量は、支持部材3に設けられたX軸レーザ干渉ヘッド11により検出される。Y軸レーザ干渉ヘッド9から出射されたレーザビーム10は、ステージ7の側面に設けられた平面ミラーでY軸レーザ干渉ヘッド9に反射され、Y軸レーザ干渉ヘッド9と平面ミラーの間の距離変化が検出される。同様に、X軸レーザ干渉ヘッド11から出射されたレーザビーム12は、ステージ7の側面に設けられた平面ミラーでX軸レーザ干渉ヘッド11に反射され、X軸レーザ干渉ヘッド11と平面ミラーの間の距離変化が検出される。X軸レーザ干渉ヘッド11は、基準ビームと、基準ビームとY軸方向の位置が異なる第2ビームと、基準ビームとZ軸方向の位置が異なる第3ビームとを出力し、ステージのX軸方向の移動量と共に、Z軸を中心とする回転(ヨーイング)及びY軸を中心とする回転(ピッチング)を検出する。Y軸レーザ干渉ヘッド9は、基準ビームと、基準ビームとZ軸方向の位置が異なる第2ビームとを出力し、ステージのY軸方向の移動量と共に、X軸を中心とする回転(ピッチング)を検出する。
【0024】
更に、移動に伴って、ステージ7のZ軸方向の位置が変化するので、ステージ7に設けた干渉計13により、ステージ7と後述するZ基準平面ミラー28との間の距離変化を測定して補正を行う。
【0025】
ステージの移動機構は、広く知られているので、これ以上の説明は省略する。
【0026】
Z軸方向検出部8は、Z(第3)移動軸21と、Z移動軸21上を移動可能に設けられた移動台22と、レーザ干渉計23と、移動台22に設けられたプローブ支持部材24と、プローブ支持部材24に設けられたZ方向移動可能なプローブ25と、レーザ干渉計23からのビーム26を反射するミラー27と、Z基準平面ミラー28とを有する。
【0027】
図2は、Z軸方向検出部8の詳細な構成を示す図である。移動台22には、プローブ支持部材24と、プローブ25の振れ(傾き)を検出するための光学系33と、プローブ25の一端(先端)を照明するLED51と、プローブ25の先端部の画像を撮影する小型TVカメラ52とが設けられる。プローブ支持部材24及びプローブ25は、例えば、特許文献2に記載されたエアシリンダであり、プローブ25をZ軸方向に移動可能に支持し、プローブ25の先端がステージ7上に載置された被測定物100の表面に接触する時の接触圧をZ軸方向の比較的広い範囲で略一定に保持する。プローブ25の他端にはミラー34が設けられている。プローブ支持部材24及びプローブ25の詳細な構成は、特許文献2に記載されているので、ここでは説明を省略する。
【0028】
レーザ干渉計23は、レーザ光源と、光検出器などを含むレーザ干渉ユニット31と、ビームスプリッタ32とを有する。レーザ干渉ユニット31から出射されたレーザビームはビームスプリッタ32で2つのビームに分割され、一方のビーム42はプローブ25のミラー34に入射して反射され、逆の経路を通って再びビームスプリッタ32を通過する。他方のビーム26は前述のミラー27で反射された後、Z基準平面ミラー28に入射して反射され、逆の経路を通って再びビームスプリッタ32で反射され、プローブ25のミラー34で反射されたビームと干渉する。干渉した光の強度変化をカウントすることにより、ミラー34とZ基準平面ミラー28の相対距離の変化を検出することができ、Z基準平面ミラー28は固定であるので、ミラー34の移動量、すなわちプローブ25の移動量を検出できる。前述のように、移動台22は、Z移動軸21上を移動するが、レーザ干渉計23、ミラー27及びZ基準平面ミラー28は固定であるので、プローブ25の移動及び移動台22の移動を合わせたミラー34の絶対位置が検出できる。レーザ干渉計の構成は広く知られているので、ここでは説明を省略する。
【0029】
光学系33は、半導体レーザ(LD)又はLEDなどの光源35と、光源35からの光ビームを平行光にするコリメータレンズ36と、ミラー34で反射された平行ビームを反射するミラー37と、ミラー37で反射された平行ビームを2つのビームに分割するビームスプリッタ(ハーフミラー)38と、分割された一方の平行ビームが入射する2分割光検出器39と、分割された他方の平行ビームを集束するレンズ40と、レンズ40を通過した集束ビームが入射する4分割光検出器41とを有する。2分割光検出器39及び4分割光検出器41については、広く知られているので説明は省略する。また、これらの検出器の代わりに、正方形の受光部の中心及び4辺に電極を有し、4辺の各電極に流れる電流から光ビームの照射位置を検出するポジションセンサを使用することも可能である。
【0030】
実施例の表面形状測定機は、例えばレンズなどの表面形状を非常な高精度で測定する装置であり、精密な測定を行うには被測定物を含めた表面形状測定機の測定部分全体を一定の温度条件などに保持する必要がある。そのため、図1の(B)に示すように、カバー29が設け、内部を安定した状態にしている。なお、カバー29を閉めた後、安定した測定が行えるようになるのは数十分間を要する場合もある。測定を行う場合には、被測定物の所定部分にプローブを接触させるなどの動作が必要であるが、カバー29で覆うと内部を観察できず、このような動作を行うことができない。そこで、LED51でプローブ25の先端を照明し、小型TVカメラ52でプローブ25の先端部の画像を撮影することにより、カバー29を開けなくても観察が行えるようにしている。これにより、カバー29を開けずに上記の動作が行え、内部の安定状態が持続されるので、安定状態まで待機する必要がなくなり、測定のスループットが向上する。
【0031】
図3は、光学系33の構成を説明する図である。図3に示すように、LD又はLEDなどの光源35から広がる光ビームはコリメータレンズ36で平行ビームにされ、ミラー34で反射される。反射された平行ビームはビームスプリッタ38で2つのビームに分割され、一方は2分割光検出器39に垂直に入射し、他方は集束レンズ40で集束ビームに変換されて4分割光検出器41に垂直に入射する。平行ビームは、X軸又はY軸とZ軸とのなす平面内を進むように配置され、2分割光検出器39の2つの受光部を分割する線が、この平面に垂直になるように配置される。4分割光検出器41は、4つの受光部を分割する2本の線の一方がこの平面に垂直になるように配置される。
【0032】
図4は、光学系33の検出原理を説明する図であり、(A)はミラー34がZ軸方向に変位した場合の2分割光検出器39及び4分割光検出器41でのビーム位置の変化を示し、(B)はミラー34がZ軸に垂直な方向を中心として回転した場合の2分割光検出器39及び4分割光検出器41でのビーム位置の変化を示す。
【0033】
図4の(A)に示すように、ミラー34がZ軸方向に変位すると、2分割光検出器39へのビームの入射位置がリニアに変化する。入射位置の変化は、ミラー34への入射角をθ、ミラー34のZ軸方向の変位をDとすると、Dsinθで表される。集束レンズ40への入射高さが変化しても集束位置は変化しないので、4分割光検出器41へのビームの入射位置は変化しない。
【0034】
図4の(B)に示すように、ミラー34が紙面に垂直な軸を中心として回転すると、2分割光検出器39へのビームの入射位置はほぼリニアに変化する。2分割光検出器39への入射位置の変化は、ミラー34から2分割光検出器39までの距離に回転角度の2倍を乗じた量である。また、4分割光検出器41へのビームの入射位置も変化する。4分割光検出器41への入射位置の変化は、レンズ40の焦点距離、レンズ40に対するミラー34及び4分割光検出器41の入射面の位置関係で決定されるが、入射位置はほぼリニアに変化する。図4の(B)ではミラー34が紙面に垂直な軸を中心として回転する場合を示したが、ミラー34が紙面内の軸を中心として回転する場合も同様であるが、2分割光検出器39はこの方向の変位を検出することはできない。4分割光検出器41は、各受光部の出力信号を加減算することにより、2方向の回転に対応するビームの入射位置の変化を検出できる。
【0035】
図5は、2分割光検出器39及び4分割光検出器41の各受光部の出力を演算する演算回路の構成を示す図である。A、B、C、D、E、Fは受光部と、その出力信号を表す。図5に示すように、演算回路は、各受光部の出力信号の増幅回路と、4分割光検出器41の4つの受光部の信号のAとB、CとD、AとC、BとDの和を演算する第1から第4の加算回路と、第1加算回路と第2加算回路の差を演算する第1減算回路と、第3加算回路と第4加算回路の差を演算する第2減算回路と、2分割光検出器39の2つの受光部の出力信号E、Fの差を演算する第3減算回路と、第1減算回路と第3減算回路の差を演算する第4減算回路とを有する。第1減算回路からは信号(A+B)−(C+D)が、第2減算回路からは信号(A+C)−(B+D)が、第3減算回路からは信号(E+F)−(A+B)−(C+D)が出力される。配置に応じて、例えば、信号(A+B)−(C+D)はX軸を中心とする回転(傾き)を、信号(A+C)−(B+D)はY軸を中心とする回転(傾き)を、信号(E+F)−(A+B)−(C+D)はZ軸方向の変位を表す。実際には、光学系の配置に応じて、各種係数を乗じることが必要である。
【0036】
以上説明したように、光学系33により、プローブの他端に設けられたミラー34の傾き、すなわちプローブ25の振れが検出できる。
【0037】
被測定物、例えば非球面レンズの表面形状を測定する場合には、被測定物を載置したステージ7を、X軸方向の位置を固定してY軸方向に移動させた時の、干渉計23によるプローブのZ軸方向の変位を測定する。このような測定をX軸方向の位置を変えて繰り返すことにより、被測定物の表面形状が測定できる。なお、この時光学系33により検出したプローブの傾き(振れ)に応じてプローブの先端のX軸方向及びY軸方向の誤差を算出して位置を補正する。これについては、特許文献3に記載されているので説明を省略する。
【0038】
上記のように、エアシリンダは、プローブ25の被測定物との接触圧をZ軸方向の比較的広い範囲で略一定に保持することが可能であるが、形状測定機の測定範囲に比べれば変位可能な範囲は狭い。そのため、被測定物の表面位置に応じて移動台22を移動させて、プローブ25がプローブ支持部材24に対して所定の範囲内に位置するように制御する必要がある。この制御方法を説明する。
【0039】
1つの方法は、被測定物の表面形状の設計データがあらかじめ分かっており、実際の形状はそれから大きく変動することがない場合である。このような場合には、図6の(A)のように、X軸又はY軸方向の移動に伴うZ軸方向の変位を設計データに従って算出し、算出した変位から移動台22の移動軌跡Tを算出し、移動軌跡Tに従って移動台22を移動させる。この時、実際の測定データはPのように変化する。前述のように、移動台22を移動しても干渉計23が検出するミラー34、すなわちプローブ25の先端位置はZ基準平面ミラーに対する距離として検出されるので、正確な測定が可能である。
【0040】
被測定物の表面形状の設計データが得られない時には、例えば、図6の(B)に示すように、干渉計23が検出するミラー34、すなわちプローブ25の先端位置に基づいて、プローブ25とプローブ支持部材24の相対位置を算出し、相対位置の差が所定値以上になった時には、相対位置の差を小さくするように、移動台22の位置を制御する。図6の(B)において、Pが干渉計23が検出するミラー34、すなわちプローブ25の先端位置を表し、Tが移動台22の制御軌跡を表す。
【0041】
なお、干渉計23が検出するミラー34の位置の代わりに、光学系33の演算回路の第4の減算回路の出力する信号(E+F)−(A+B)−(C+D)を使用して制御を行うことも可能である。
【0042】
また、測定中にミラー34の傾きが所定値以上大きくなった時には、プローブに側方から過負荷がかかっていると考えられるので、測定を直ちに停止する。これにより、プローブ25、プローブ支持部材24などの破損を防止することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例を説明したが、各種の変形例が可能であることはいうまでもない。例えば、実施例では、プローブとしてエアシリンダを使用したが、図7に示すような支持部材62にボールベアリングを介してZ軸方向に移動可能に保持されたプローブ61を使用し、プローブ61の自重を相殺するバネ64を設けて、微小な接触圧が得られるようにしたプローブを使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、プローブの他端に設けたミラーの位置を検出することにより表面形状を測定する表面形状測定機であればどのようなものにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例の表面形状測定機の全体構成を示す図である。
【図2】Z軸方向検出部の詳細な構成を示す図である。
【図3】ミラーの回転(傾き)を検出する光学系の構成を示す図である。
【図4】ミラーの回転(傾き)を検出する光学系の検出原理を説明する図である。
【図5】ミラーの回転(傾き)を検出する光学系の出力信号の演算回路の構成を示す図である。
【図6】測定時の移動台の移動制御を説明する図である。
【図7】プローブの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
7 ステージ
8 Z軸方向検出部
21 Z移動軸
22 移動台
23 干渉計
24 プローブ支持部材
25 プローブ
33 プローブ振れ検出光学系
34 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の軸方向に移動可能なステージと、
前記ステージの前記第1及び第2の軸方向の移動位置を検出する第1及び第2の軸方向位置検出器と、
第3の軸方向に移動可能な移動台と、
前記移動台に対して、前記第3の軸方向に移動可能に保持され、一端が前記ステージ上に載置された被測定物の表面に接触し、他端に前記第3の軸方向に垂直な鏡面を有するプローブと、
前記プローブの前記鏡面と前記第3の軸方向に垂直な基準平面との距離を検出する第3の軸方向距離検出器とを備える表面形状測定機において、
前記プローブの前記鏡面に斜めに入射する平行ビームを出射するビーム源と、
前記鏡面で反射された前記平行ビームを分割するビーム分割手段と、
前記ビーム分割手段で分割された前記平行ビームの一方が入射され、入射位置を検出する第1のビーム位置検出器と、
前記ビーム分割手段で分割された前記平行ビームの他方が入射される集束手段と、
前記集束手段で集束される他方の前記平行ビームが入射され、集束ビームの入射位置を検出する第2のビーム位置検出器と、
前記第1及び第2のビーム位置検出器の検出信号から、前記鏡面の前記第1及び第2の軸方向に垂直な方向を軸とする傾斜を検出する演算回路とを備えることを特徴とする表面形状測定機。
【請求項2】
前記演算回路の検出した前記鏡面の傾斜に対応する前記プローブの傾斜に基づいて、前記プローブの一端の位置を補正する請求項1に記載の表面形状測定機。
【請求項3】
前記プローブの他端の前記移動台に対する相対位置が一定になるように、前記移動台の前記第3の軸方向の移動を制御する移動台制御部を備える請求項1又は2に記載の表面形状測定機。
【請求項4】
前記移動台制御部は、被測定物の表面の形状データに基づいて、前記ステージの移動に伴う前記被測定物の表面の前記第3の軸方向の位置を算出して、前記移動台の前記第3の軸方向の移動を制御する請求項3に記載の表面形状測定機。
【請求項5】
前記移動台制御部は、前記第3の軸方向距離検出器の検出した前記プローブの鏡面の前記第3の軸方向の位置に応じて、前記移動台の前記第3の軸方向の移動を制御する請求項3に記載の表面形状測定機。
【請求項6】
前記移動台制御部は、前記演算回路の検出した前記プローブの鏡面の前記第3の軸方向の位置に応じて、前記移動台の前記第3の軸方向の移動を制御する請求項3に記載の表面形状測定機。
【請求項7】
前記第1のビーム位置検出器は、2分割光検出器である請求項1から6のいずれか1項に記載の表面形状測定機。
【請求項8】
前記第2のビーム位置検出器は、4分割光検出器である請求項1から7のいずれか1項に記載の表面形状測定機。
【請求項9】
前記第1及び第2のビーム位置検出器の少なくとも一方は、ポジションセンサである請求項1から7のいずれか1項に記載の表面形状測定機。
【請求項10】
当該表面形状測定機を覆うカバーと、前記プローブの他端付近を照明する照明手段と、プローブの他端付近を撮影するTVカメラとを備える請求項1から9のいずれか1項に記載の表面形状測定機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−64670(P2007−64670A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247822(P2005−247822)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】