説明

表面改質を伴った半導体ナノ粒子

本発明は半導体ナノ粒子に関する。本発明のナノ粒子は1以上のII、III、IV、VおよびVI族の単一元素または元素化合物を含む。ナノ粒子は1 nmないし500nmの範囲内のサイズを有し、および0.1ないし20原子百分率の酸素または水素を含む。ナノ粒子は一般的にバルク高純度シリコンの粉砕によって形成される。ナノ粒子の1つの応用例としては、活性層または半導体機器の構造を容易な印刷方法によって明確にするのに利用されるインクの調整がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電子および電気的応用、特に半導体特性を要する応用に使用され得る、半導体特性を有するナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
数ナノメートルから数百ナノメートルの特徴的サイズを持つ半導体ナノ粒子は広く研究された種類の物質であり、そこでは、サイズ効果がバルク材の特性を支配する。一般的に、特定の物質およびその適用に依存して、3つの異なるサイズに関する現象が、ナノ粒子における電子的、光学的、熱および機構的な特性を変化し得る:
1.既知のバルク相と比較して異なる構造および組成;
2.表面の状態および過程を支配させる、より高い体積に対する表面比;および
3.物体のサイズが、波長および基本励起(電子状態、光学波長またはフォノン励起)の可干渉距離と同様または小さい場合の、量子閉じこめの効果。
【0003】
また、むき出しで終端のないシリコン表面は、超高真空状態の場合のみ安定していることも理解されている。上記の論点、およびナノテクノロジーは高価で、最先端技術という選択であり、複雑な合成および取扱技術を要するものであるという認識は、実用的な電気および電子デバイスへのこのような技術の導入を限定する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用に適したナノ粒子、特に、そのような適用における装置同様、電気および電子的応用における使用に適したナノ粒子を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、1以上のII、III、IV、VおよびVI族の単一元素または元素化合物を含むナノ粒子が提供され、該ナノ粒子は、半導体特性かつ1nmないし500nmの範囲のサイズを有し、かつ0.1ないし20原子百分率の酸素または水素よりなる群から選択された置換基を含む。
【0006】
本明細書における「半導体特性」という言葉は、電荷担体、特に電子および/または正孔の、粒子への、粒子からの、および粒子を通っての輸送を意味する。電荷の流れは粒子本体を通るものであり得、またはその表面領域に制限され、および2つの隣接した粒子間または粒子および外部の電気的接続間で起こり得る。
【0007】
好ましくは、ナノ粒子は30nmないし200nmの範囲のサイズを有する。
【0008】
1つの好ましい実施形態として、ナノ粒子は60nmの平均直径を有し得る。
【0009】
他の好ましい実施形態として、ナノ粒子は数十nmないし400nmで、最大寸法の中央値が200nmの範囲である、比較的広いサイズの分布を有する。
【0010】
更に好ましい実施形態として、ナノ粒子はおよそ100nmである平均のサイズを有し得る。
【0011】
ナノ粒子は真性シリコンを含み得る。好ましい実施形態として、シリコンは金属級のシリコンであり得、例えば98%の純度を有する。
【0012】
あるいは、ナノ粒子はドープされたシリコンを含み得る。
【0013】
シリコンはアンチモンまたはリン等のVまたはVI族元素でドープされ、およびn型の特性を有する。
【0014】
あるいは、シリコンはホウ素等IIまたはIII族元素でドープされ、p型の特性を有する。
【0015】
あるいは、ナノ粒子はとりわけ、Ge、GaAs、AlGaAs、GaN、InP、SiCおよびSiGe合金を含み得る。
【0016】
酸素または水素を含む置換基は、各ナノ粒子の表面に位置し得る。
【0017】
各ナノ粒子の表面は、ナノ粒子が含む元素の少なくとも1つの酸化物によって全体的または部分的に、覆われ得る。
【0018】
酸化物は効果的に、ナノ粒子の表面におけるパッシベーション層を規定する。
【0019】
酸化物は自然酸化物または、熱的または化学的に合成された酸化物のいずれかであり、それを通して電荷の輸送が可能となるよう修飾され得るものである。
【0020】
例えば、酸化物をエッチングして、その厚みを低下させおよび/またはその気孔率を増加させることができる。
【0021】
あるいは、物質は合成の間に酸化物中に含めて、酸化物に半導体特性を与えることができる。
【0022】
よって、本発明における表面パッシベーションは、安定した粒子構造を作り出す化学的過程であって、例えば、ルミネセントに必要とされる電気的表面安定化処理ではないと理解されるべきである。電荷輸送に対する絶縁隔壁(厚い酸化物コーティングによって達成されることが知られている)、または電荷担体を局在する状態に飽和して(完全に)トラッピングすることの両者とも存在しない。
【0023】
各ナノ粒子の表面は、部分的にまたは全体的に酸素または水素でもって終了し得る。あるいは、各ナノ粒子の表面は部分的にまたは全体的にヒドロキシル(OH)基でもって終了し得る。
【0024】
各ナノ粒子の表面が部分的にまたは全体的に酸素、水素および水酸基の組合せでもって終了し得ることは可能である。
【0025】
さらに本発明によれば、上記で定義したナノ粒子およびバインダーを含む印刷可能な組成物が提供される。
【0026】
バインダーは無機バインダーであってよく、導体、半導体または絶縁体であり得る。
【0027】
あるいは、バインダーはポリマーバインダーであってよく、導体、半導体または絶縁体であり得る。
【0028】
さらにあるいは、バインダーはナノ粒子の物質と反応してその半導体特性を供する成分を有する、化学的に活性なバインダーであり得る。
【0029】
さらにあるいは、本発明によれば、上記で定義したナノ粒子およびナノ粒子が分散された固体マトリックス含む複合材料が提供される。
【0030】
ナノ粒子はマトリックス内に、ランダムにまたは規則的配置で分散され得る。
【0031】
さらに本発明によれば、相互接続ネットワークまたは緻密体を形成する上記で定義したナノ粒子を含む複合材料が提供される。
【0032】
本発明は、上記で定義したナノ粒子および上記で定義した印刷可能な組成物または上記で定義した複合材料を組み込んだ、活性な半導体層または構造にまで及ぶ。
【0033】
本発明はさらに、少なくとも1つのこのような半導体層または構造を含む半導体機器、構成要素または回路素子にまで及ぶ。
【0034】
本発明はさらに、少なくともこのような半導体機器の1つを含んでいる電気または電子回路または、電子部品の組立品にまで及ぶ。
【0035】
本発明のさらなる経緯によれば、ナノ粒子の製法が提供され、該製法は1以上のII、III、IV、V、およびVI族の単一元素または元素化合物を含む原料物質を酸素および/または水素の存在下で粉砕して、n型またはp型の半導体特性、1nmないし500nmの範囲のサイズを有し、および0.1ないし20原子百分率の酸素および水素よりなる群から選択される置換基を含むナノ粒子を得る工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の好ましい実施形態として、原料物質はドープされたまたは真性シリコンから成る。
【0037】
好ましくは、原料物質の粉砕は空気の存在下で行われる。
【実施例】
【0038】
本発明は、以下に記載しおよび実証するように、一般に電子および電気的応用における半導体特性を有するナノ粒子の使用に関し、および具体的には半導体特性が要求される場合のこれらの適用に関する。ナノ粒子は好ましくは真性またはドープされたシリコンから形成されるが、他のGe、GaAs、AlGaAs、GaN、InP、SiC、およびSiGe合金を含む、他の元素または化合物の半導体物質も使用され得る。
【0039】
基礎科学の研究においては、安定し、よく特徴付けられた表面がナノ粒子には要求され、これがナノテクノロジーは高価で、最先端技術という選択であり、複雑な合成および取扱技術を要するものであると見られるようにした。むき出しの、装飾されていないシリコン表面は超高真空状態の場合のみ安定である。湿式化学合成によって生産された多くのナノ粒子、例えばBaldwin等(Chemical Communications 1822 (2002))によって記載されたシリコン粒子は、長アルキル鎖で終了し、界面活性剤として働いて凝集およびより大きな粒子の成長を防止する。
【0040】
LiuおよびKauzlarich (Materials Science & Engineering B 96 72 - 75 (2002))によって報告された、シリコン量子ドットの湿式化学合成に由来する水素終端を例外として、酸素および水素を含む、元素および化合物半導体における自然表面改質が回避されてきた。これは従来の半導体処理を利用するにも拘わらず、そうである。水素パッシベーションは、通常はフッ化水素酸浸漬を経て達成されるが、シリコンデバイス製造において重要な中間ステップである。熱および自然酸化皮膜は依然としてシリコン技術におけるほとんどの誘電体の基板である。しかしながら、ナノ粒子の適用において、酸化物は一般に半導体粒子そのものとして、色素太陽電池として、あるいは結晶または石英ガラスマトリックスもしくはカプセル化としてのみ生じる。厚い酸化物でのカプセル化はルミンセント粒子を電気的に不動態するのに適用されてきて、ゆえにその発光特性が安定化され(Korgel, USP6,918,946)、さらにエッチング過程としてシリコンコア(Swihart, US2004/0229447)のサイズを制御する。ナノ粒子の電子物性に関する限り、しかしながら、空気および水分の両者への暴露、ゆえに酸化および水和過程が、体系的に回避されてきた。
【0041】
重要なこと、かつ対照的なことは、本発明においてナノ粒子の表面は修飾形態であっても、粒子の半導体の半導体機能性を維持するような方法で、酸素、水素または両者の混合の存在により修飾される。表面の水素および酸素は薄い自然酸化物という形で存在可能であり、または架橋酸素基、ヒドロキシル基、および水素として、図1(b)ないし(e)に示すように存在可能である。
【0042】
図1(a)ないし図1(e)の図面は結晶性シリコンナノ粒子の略図であり、異なるあり得る表面修飾として、(111)結晶面を通して切断面を示している。4つのシリコン結合のうち3つのみが示され、4番目のものは図の面に対して垂直状態である。破線の曲線はおおよその粒子の遊離面を示す。
【0043】
図1(a)は終端のないナノ粒子を示しているが、しかし再配列したシリコン表面である。灰色の円は付加的なシリコン原子を表し、および破線はこれらの原子への付加的な結合を表す。構造は非常にひずんでおり、およびそのような表面は一般に、超高真空状態を除いて不安定である。
【0044】
図1(b)は酸素終端表面を有するナノ粒子を示す。白丸は酸素原子であり、各々が終端のないシリコン原子に対し2結合を有する。
【0045】
図1(c)は水素終端表面を有するナノ粒子を示し、水素原子はより小さな黒円として示す。
【0046】
図1(d)は水酸基終端表面を有するナノ粒子を示し、ヒドロキシル基は終端のないシリコン結合をふさいでいる。シリコン構造はひずまず、およびこの表面は安定化が望まれる。
【0047】
図1(e)はナノ粒子表面における非晶性シリコン酸化物の薄い層を示し、2本の折れ線の曲線間で示された領域内がそうである。この場合、酸化物層はおよそ1単分子層となる。
【0048】
バルクシリコン表面上では、熱酸化物は数十、または数百、ミクロンの厚さであり、および温度および湿度に依存して、自然酸化物は普通厚さ5ないし10nmまで成長する。この厚さの層は明らかにいかなるナノ粒子も絶縁し、およびその電気的性質を決定づける。本発明においては、関連元素を含みおよび一定のサイズ領域内であるナノ粒子における酸化は自己限定的であり、1単分子層またはそれ以下で、および安定した表面を形成するという発明者の観察結果を適用する。これらの観察結果は、例えばOkada et al (Appl. Phys. Lett. 58 (15), 15 April 1991, pp 1662 - 1663)およびOstraat et al (Solid State Sciences 7 (2005) pp 882 890)等のナノ構造の、シリコンの酸化についての文献内におけるいくつかの基礎科学研究によって指示されているが、今までこうした知識は厚いシリコン酸化物の合成技術の開発にのみ応用されてきた。
【0049】
電気伝導性は、直接堆積するシリコンナノ粒子層において、Ostraat et alによってまた観察されるように、相互接続粒子間において妨げられることなく起こり得る。しかしながら、これらの著者は、電気伝導性は、外部環境から保護される粒子および基板への接触面の間の接点におけるダイレクトシリコン-シリコン接続を引き起こす、酸化物の存在が無い結果であるとした。-以下に示す実施例2および3において空気中の機械的摩擦によって生産された遊離ナノ粉末に関する本願発明において、-そのような状況は希であり、我々は表面の終端それ自身が電荷の通過を可能としているという結論をださなければいけない。
【0050】
酸素、または酸化物の存在は、これらは直ちに終端のないシリコンおよび他の半導体表面上に吸収されるが、ヒドロキシル(-OH)、水素(-H)およびアルキル基(-(CH2)nH)において優先吸着部位を提供し、それゆえ競合する表面修飾を形成する。酸素を含めた、全てのこれらの基はダングリングボンドを終結させ、バンドギャップおよび表面上で形成される局在状況を防止する。分散粒子において、それらは界面活性剤として働き、およびさらに表面を安定させる。
【0051】
バインダーと共にナノ粒子から生産されたインクまたは同様の組成物のような複合材料において、表面の基はバインダーと相互作用し、分散または粒子の集塊を導き得る。粒子の相互接続ネットワークが要求される場合、表面修飾は隣接する粒子間の電荷の移動を妨げてはならない。電荷輸送は、しかしながら表面の状態を経た伝導によって修飾され得る。
【0052】
一般のナノテクノロジー適用として、粒子は1ないし500nmの範囲のサイズ内でなければいけないが、ここに上げる例となる適用においては、30ないし200nmのサイズが好ましい。一般に、ナノ粒子は明らかに定義できるコアおよび表面領域を有する程十分な大きさであるべきだが、バルク材とはっきり異なる特性を有する程十分に小さくもなければならない。結晶シリコンの場合は、最低限の大きさである1nmの直径は、全原子の60%が表面部位を占める一方で、ミクロン規模の粒子はバルク様構造を有し、および厚い酸化物を成長させ得る。今回の場合はまた、10nm薄片において、単一量子状態を避けることが好ましいが、しかしそれでもなお、明らかな表面の寄与を有する程に十分小さく粒子の大きさを保つことも好ましい。また、大きな粒子は相互接続粒子の緻密層へパッキングするにはさらに適さなくなる。
【0053】
付加的な利点が、ナノ粒子の製造または利用における工業工程における費用対効果、または安定性にすら影響を与える、健康、安全性、および取り扱いの点から生ずる。2003年のUK Institute of Physics Mayneord Phillips Summer SchoolにおけるJ. Heyderによる、German National Research Centre for Environment and Health (GSF)の研究によれば、100nmの範囲内の粒子が最もヒトの気道内に沈殿しにくい。サイズがおよそ10 nm未満の粒子は、皮膚およびほとんどの細胞膜を通して吸収され得る。より大きな粒子は、ミクロンの範囲において、より組織内でカプセル化される。
【0054】
以下の実施例は本発明の様々な特性および利点を説明する。
【0055】
実施例1:

半導体インクはMTI Crystals Corpの市販の真性シリコンナノ粉末から準備した。初期粉末はシランガスのレーザー分解によって、無酸素環境において生産される。これは通常、保証酸素濃度が1ないし2 %である乾燥窒素雰囲気内で出荷される。水素濃度は特定せず、および他の不純物は検出されない。
【0056】
製造業者は、それらの分析試験成績書において、”シリコンナノ粉末は非常に空気に弱い。粉末は爆発およびO2コンタミネーションを避けるため、不活性ガス環境下で開封され、保存され、および取り扱われなければならない。”と記載している。彼らはさらに酸素を排除するために”粉末は真空または窒素内において120℃で1時間焼く”ことを勧める。本願発明は、それにもかかわらず、外気にさらすことが望ましい酸素および水素表面終端を有する安定した粉末を産みだし、有機ポリマーバインダーを有するナノ粒子半導体材料において好適であることを究明した。ポリスチレンおよび酢酸酪酸セルロース(CAB)は、クロロホルムを含む様々な溶媒を使用することで、バインダーとしてうまく利用されてきたポリマーの例である。
【0057】
従って、シリコンナノ粉末を空気にさらし、かつナノ粉末内の水素および酸素濃度を、弾性反跳粒子検出法(ERDA)およびラザフォード後方散乱各々によって時々決定した。空気へさらした後の最初の数時間は、水素および酸素濃度は各々1および2原子%とした。1週間後、これらは1.2原子%水素および5原子%酸素で一定に保った。X線解析は粒子が結晶シリコンであり、結晶酸化物はないことを示した。
【0058】
Siナノ粉末および異なる不活性バインダーを用いて生産された印刷層は、通常は全てが供給された粉末は真正であるが、ホール効果測定によって軽度のn形伝導性を示した。印刷層の走査形電子顕微鏡による観察は、粒子がフラクタル幾何学と共に、相互接続クラスタのネットワークを形成するのを示す。
【0059】
図2の走査形電子顕微鏡に示されるように、個々の粒子は、平均直径60nmを有する球状である。擬似球状クラスタは数百ナノメートル、数ミクロン、および数十ミクロンの直径での大きさを形成する。エネルギー分散型蛍光X線は、クラスタ表面ではより高い分布となる、約5%の平均酸素濃度を示す。直径60nmにおいて、酸化物表面の形での5%の酸素とは、2.5オングストロームの厚さを有する。
【0060】
上記のインクは、国際特許出願第WO 2004/068536号に記載された方法によると、単純接合型電界効果トランジスタおよびフォトダイオードの印刷に利用された。デバイスの電気的特性は上記で決定した物質の特性と一致した。
【0061】
上記技術および物質を組み込んだ電子デバイスの例としては、図3(a)および(b)において示すように、ハイブリッド無機/有機絶縁ゲート型電界効果トランジスがある。デバイスはペーパー(紙)基板12上に印刷された活性ナノ粒子半導体層10を含む。印刷シルバーインクソースおよびドレインコンタクト14および16が層10に重複し、およびそれらの近接した最深部間の中心ゲート領域18を決定する。ゲート絶縁物または誘電体層20はソースおよびドレインコンタクト終端より内部に印刷され、および半導体層の中心領域10、およびシルバーインクゲートコンタクト22は、半導体層10およびソースおよびドレインコンタクトを避けて、誘電体層20上に印刷される。得られたデバイスは絶縁ゲート(金属絶縁体半導体)電界効果トランジスタまたはMISFETである。
【0062】
半導体層10は、溶媒としてクロロホルムを有するCABバインダー内において、上記のSi粉末を構成する。この場合のゲート誘電体はCAB印刷層であり、および金属電極は、デュポンマイクロサーキットマテリアル(Du Pont Microcircuit Materials)のシルバー5000コンダクタが印刷される。
【0063】
上記で述べたように製作されたMISFETのソース・ドレイン特性を図4に示す。
【0064】

実施例2:

半導体機能をもつナノ粒子の第2の実施例は、上記で定義したように、チョクラルスキー結晶成長によるドープされた単結晶シリコンウエハーの機械的摩耗によって作成されたナノ粒子シリコンに関する。これらは、ウエハーにおける自然酸化物を前もって除去することなしに、空気中で1時間、高スピードで環状粉砕機によって粉砕した。従って高酸素濃度が期待されるが、これは未確認のままである。得られた粒子は不規則な形であり、最大寸法の中央値が200nmで、数十ナノメートルから400nmに渡る、広いサイズ分布を有する。平均サイズの粒子は遠心分離機によって分離され、エタノールの懸濁液により沈殿した。
【0065】
空気中で乾燥後、実施例1と同じ方法で、各々バインダーおよび溶媒として、CABおよびクロロホルムを使用して、インクはアンチモンドープのn-型およびボロンドープのp型シリコンナノ粉末から製造された。ホール効果測定は、バルクシリコンに比べて若干変化したキャリアモビリティーを有する、nまたはp型の伝導性があることを示した。今まで述べてきたインクは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタおよびフォトダイオードにおいて半導体層を印刷するために主に使用されてきた。図3に示されたそれと同様のトランジスタ設計用のソース・ドレインカーブを、しかしp型シリコンナノパウダーを使用しているが、図4において示す。
【0066】
実施例3

半導体機能性を有するナノ粒子の第3の実施例は、上記で定義したように、南アフリカ共和国、ポロクワネのSilicon Smelters (Pty) Ltdによって提供された、98%純度の金属級のシリコンの機械的摩擦によって生産されたナノ粒子シリコンに関する。シリコン原料は5日間、空気中でロータリーボール粉砕機において粉砕し、15mm直径のイットリウム安定化ジルコニアを粉砕媒体(Inframat Incによる提供)、およびエタノールを潤滑油として使用した。得られた粒子のサイズは2時間の粉砕に環状粉砕機を使用し作成した同物質由来の粉末と比較して、およそ100nmと見積もられた。シリコンにおける前処理は適用されず、およびシリコンウエハーより生産された粉末(実施例2)に対して、同様の酸素および水素濃度を有することが明らかとなった。91%の粉末両画分を有する、ナノ粒子インクで、両方法によって粉砕された粉末を使用して生産されたものは、比抵抗が2.2 MΩ cmのn型である、同様な電気的特性を有する。
【0067】
実施例1ないし3での方法によって生産された異なるタイプの粉末におけるホール効果測定のデータで、いくつかの場合における同バインダーでの異なる体積比のものを、下記の表1に示す。
表1

【0068】
本発明の潜在用途は、単一電子素子(量子ドット);フォトニックアレイ;電場発光物質および色素増感太陽電池(DSC)を含む。さらなる応用として、有機および無機半導体インク、印刷された半導体層および印刷機器を含む。応用によっては、単一粒子はマトリックス内で不規則に分散し(量子ドット、OLEDs、太陽電池、有機半導体インク)、規則的に配列し(フォトニックアレイ)、または相互接続構造(無機半導体インク)を形成する。後者はおそらく細密構造、ランダムネットワークまたは異なるサイズのクラスタによるフラクタル凝集体である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1(a)ないし図1(e)の図面は、(a)終端のない表面; (b)酸素終端表面; (c)水素終端表面; (d)水酸基終端表面;および(e)酸化物表面を含む、異なるありうる表面変形を示す、(111)結晶面の切断面の単結晶シリコンナノ粒子の略図である;
【図2】図2は、印刷ナノ粒子シリコン材料の走査電子顕微鏡写真であり、フラクタル幾何学を有するナノ粒子の相互接続ネットワークを示す;
【図3】図3(a)および(b)は、本発明に関するナノ粒子半導体層および高分子誘導体を含む絶縁ゲート(金属・絶縁体半導体)電界効果トランジスタの側面および平面図である;
【図4】図4は、実施例1の方法によって製作された図3(a)および3(b)のトランジスタのソース・ドレイン特性を示すグラフであり;および
【図5】図5は、実施例2の方法によって製作された同様のトランジスタのソース・ドレイン特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のII、III、IV、V、およびVI族の単一元素または元素化合物を含むナノ粒子であって、半導体特性、1nmないし500nmの範囲のサイズを有し、および0.1ないし20原子百分率の酸素および水素よりなる群から選択した置換基を含むナノ粒子。
【請求項2】
30nmないし200nmの範囲のサイズを有する、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
およそ60nmの平均直径を有する、請求項2記載のナノ粒子。
【請求項4】
20nmないし400nmの範囲のサイズ分布を有し、最大寸法の中央値がおよそ200nmである、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項5】
およそ100nmの平均サイズを有する、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項6】
真性シリコンを含む、請求項1ないし5のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項7】
半導体は金属級のシリコンである、請求項1ないし5のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項8】
ドープされたシリコンを含む、請求項1ないし5のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項9】
シリコンがVまたはVI族元素でドープされ、およびn型の特性を有する、請求項8記載のナノ粒子。
【請求項10】
シリコンがアンチモンまたはリンでドープされた、請求項9記載のナノ粒子。
【請求項11】
シリコンがIIまたはIII族元素でドープされ、およびp型の特性を有する、請求項8記載のナノ粒子。
【請求項12】
シリコンがホウ素でドープされた、請求項11記載のナノ粒子。
【請求項13】
Ge、GaAs、AlGaAs、GaN、InP、SiC、およびSiGe合金の1以上を含む、請求項1ないし5のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項14】
酸素又は水素を含む置換基が各ナノ粒子の表面に位置する、請求項1ないし13のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項15】
各ナノ粒子の表面が少なくとも部分的に、少なくとも元素の1つがナノ粒子に含まれている酸化物で覆われた、請求項1ないし14のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項16】
酸化物が自然酸化物である、請求項15記載のナノ粒子。
【請求項17】
酸化物が熱的または化学的合成によって生産され、および続いて電荷の流れが起こるよう修飾された、請求項15記載のナノ粒子。
【請求項18】
酸化物がエッチングされて、その厚みを低下させおよび/またはその気孔率を増加させた、請求項17記載のナノ粒子。
【請求項19】
物質が合成中の酸化物に含ませて、酸化物に半導体特性をもたらす、請求項17記載のナノ粒子。
【請求項20】
各ナノ粒子の表面が部分的または全体的に酸素または水素で終了する、請求項1ないし14のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項21】
各ナノ粒子の表面が部分的または全体的にヒドロキシル(OH)基で終了する、請求項1ないし14のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項22】
各ナノ粒子の表面が部分的または全体的に酸素、水素およびヒドロキシル基の組合せで終了する、請求項1ないし14のいずれか1記載のナノ粒子。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれか1記載のナノ粒子およびバインダーを含む印刷可能な組成物。
【請求項24】
バインダーが導体、半導体または絶縁体である、無機バインダーである、請求項23記載の印刷可能な組成物。
【請求項25】
バインダーが導体、半導体または絶縁体である、ポリマーバインダーである、請求項23記載の印刷可能な組成物。
【請求項26】
バインダーが、ナノ粒子の物質と反応をしてその半導体特性を供する成分を有する、化学的に活性なバインダーである、請求項23記載の印刷可能な組成物。
【請求項27】
請求項1ないし22のいずれか1記載のナノ粒子、およびナノ粒子が分散した固体マトリックスを含む複合材料。
【請求項28】
ナノ粒子がマトリックス内でランダムに分散した、請求項27記載の複合材料。
【請求項29】
ナノ粒子がマトリックス内で規則的配置で分散された、請求項27記載の複合材料。
【請求項30】
請求項1ないし22のいずれか1記載のナノ粒子を含み、ここにナノ粒子は相互接続ネットワークまたは緻密体を形成する複合材料。
【請求項31】
請求項23ないし26のいずれか1記載の印刷可能な組成物または請求項27ないし30のいずれか1記載の複合材料を含む、活性な半導体層または構造。
【請求項32】
請求項31記載の少なくとも1つの半導体層または構造を含む、半導体機器、構成要素または回路素子。
【請求項33】
少なくとも1つの請求項32記載の半導体機器を含む電気もしくは電子回路または、電子部品の組立品。
【請求項34】
1以上のII、III、IV、V、およびVI族の単一元素または元素化合物を含む原料物質を酸素および/または水素の存在下で粉砕して、n型またはp型の半導体特性、1nmないし500nmの範囲のサイズを有し、および0.1ないし20原子百分率の酸素および水素よりなる群から選択される置換基を含むナノ粒子を得る工程を含む、ナノ粒子の製法。
【請求項35】
原料物質がドープされた、または真性シリコンを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
原料物質の粉砕が空気の存在下で行われる、請求項34または請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−500272(P2009−500272A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519005(P2008−519005)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001788
【国際公開番号】WO2007/004014
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504425406)ユニバーシティ・オブ・ケープ・タウン (9)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF CAPE TOWN
【Fターム(参考)】