説明

被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の作製方法、及び、新規ポリマー

【課題】水溶液による現像が可能で、且つ、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れた被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供すること。また、基板との密着性に優れた金属パターンを、水溶液による現像を用いて簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及び、被めっき組成物に有用な新規ポリマーを提供する。
【解決手段】めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーを含有する被めっき層形成用組成物、及び、これを用いた金属パターン材料の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の作製方法、及び、該被めっき組成物に有用な新規ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決するため、基板の表面にプラズマ処理を行い、基板表面に重合開始基を導入し、その重合開始基からモノマーを重合させて、基板表面に極性基を有する表面グラフトポリマーを生成させるという表面処理を行うことで、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
また、基材との密着性に優れた金属パターン(めっき膜)を得る方法として、基材上に、該基材と結合したグラフトポリマーを生成させてポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、特許文献1記載のめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と重合性基とを有するポリマーが用いられており、このポリマーは水溶液に対する親和性が低いため、硬化後の現像において有機溶媒を使用する必要があり、取り扱い上または環境上負荷であった。なお、高アルカリ水溶液を使用すれば剥離現像が不可能ではないが、長い時間を要するという欠点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第08/050715号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載の方法では、グラフトポリマーを形成するための化合物として、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と重合性基とを有するポリマーが用いられており、このポリマーは水溶液に対する親和性が低いため、基材上に形成されるポリマー層を部分的に水溶液で現像する際には高アルカリ水が必要であり、かつ、長い時間を要する。
そこで、本発明は、この技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
【0009】
即ち、本発明の第1の目的は、水溶液による現像が可能で、且つ、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れた被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、基板との密着性に優れた金属パターンを、水溶液による現像を用いて簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
即ち、本発明の被めっき層形成用組成物は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーを含有することを特徴とする。
本発明において、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーは、下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
上記式(A)〜(C)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。なお、本明細書において有機基とは、炭素を有する置換基を指す。
【0013】
式(A)で表されるユニットにおいて、Y及びZは、それぞれ独立に、エステル基、アミド基、フェニレン基(−C−)が好ましい。Lは炭素数1〜10の、置換もしくは無置換の2価の有機基であることが好ましい。
式(B)で表されるユニットにおいて、Wはシアノ基又はエーテル基であることが好ましい。また、XおよびLはいずれも単結合であることが好ましい。
また、式(C)で表されるユニットにおいて、Vはカルボン酸基であることが好ましく、また、Vがカルボン酸基であり、且つ、LがVと連結する部分において4員〜8員の環構造を含む態様が好ましく、更に、Vがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子である態様も好ましい。
更に、式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びLが単結合であることも好ましい態様の1つである。なかでも、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びLのいずれも単結合である態様が最も好ましい。
【0014】
また、上記共重合体の好適な態様として、下記式(A)で表されるユニット、下記式(B−1)で表されるユニット及び下記(C−1)で表されるユニットを含むポリマーが挙げられる。このポリマーは、新規化合物であり、前記本発明の被めっき層形成用組成物に有用である。
【0015】
【化2】

【0016】
上記式(A)、式(B−1)及び式(C−1)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、R、R、R、及びRは水素原子、又はメチル基であることが好ましく、R、Rは水素原子であることが好ましい。
Y、及びZは、夫々独立して、単結合、フェニレン基(−C−)、エステル基、又はアミド基を表し、Lは、単結合、又は無置換の炭素数1〜10の2価の有機基を表す。
は、単結合、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜10の二価の有機基を表す。
なお、前記ポリマーにおいて、前記式(A)で表されるユニットは、下記(A−0)で表されるユニットから誘導されたユニット、水酸基を有するユニットとイソシアネート基を有するオレフィン化合物との反応により誘導されたユニットから選択されるユニットであることが好ましい。
さらなる好ましい態様としては、式Yがアミド基を表す態様が挙げられ、最も好ましくは下記(A−0)で示されるユニットから合成されるユニットである。
【0017】
【化3】

【0018】
(上記式(A−0)中、A、Bのいずれか一方は水素原子であり、他方はハロゲン原子、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、エーテル基、又はチオエーテル基を表す。R〜R、Z、及びLは、夫々前記式(A)におけるのと同義である。)
なかでも、A、Bのいずれかが、ハロゲン原子またはスルホン酸エステル基であることが(A)で表されるユニットへの変換反応性の観点で好ましい。
【0019】
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(1)基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、(2)前記基板上の前記被めっき層形成用組成物の未硬化部を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、(3)該パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(4)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の金属パターンの作製方法において、基板上への被めっき層形成用組成物の接触は、基板上に前記被めっき層形成用組成物を含有する塗布液を塗布することにより行うことが好ましい。
また、被めっき層形成の効率向上の観点から、前記基板上に密着補助層を形成するのが好ましく、更に好ましくは、作業性の観点からラテックスからなる水分散樹脂組成物を塗布することにより密着補助層を形成し、そこに被めっき層形成用組成物を接触させることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水溶液による現像が可能で、且つ、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れた被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、基板との密着性に優れた金属パターンを、水溶液による現像を用いて簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
<被めっき層形成用組成物>
本発明の被めっき層形成用組成物は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーを含有することを特徴とする。
以下、本発明に用いられるめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーを、適宜、「特定ポリマー」と称して説明する。
【0023】
〔特定ポリマー〕
本発明における特定ポリマーは、その分子内に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(以下、相互作用性基と称する。)、ラジカル重合性基、及び、イオン性極性基を有することを特徴としている。
特定ポリマー中の相互作用性基としては、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。
【0024】
前記非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましく、具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、水酸基、カーボネート基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基、チオフェン基、チオール基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、ホスフォート基、ホスフォロアミド基、フォスフィン基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、及び不飽和エチレン基等が挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。更には、例えば、シクロデキストリンや、クラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
【0025】
一般的に、高極性になるほど吸水率が高くなる傾向であるが、シアノ基は被めっき層中にて互いに極性を打ち消しあうように相互作用しあうため、膜が緻密になり、且つ、被めっき層全体としての極性が下がるため、高極性にもかかわらず吸水性が低くなる。また、被めっき層の良溶剤にて触媒を吸着させることで、シアノ基が溶媒和されてシアノ基間の相互作用がなくなり、めっき触媒と相互作用できるようになる。以上のことから、シアノ基を有する被めっき層は低吸湿でありながら、めっき触媒とはよく相互作用をする、相反する性能を発揮する点で、好ましい。
また、本発明における相互作用性基としては、アルキルシアノ基であることが更に好ましい。これは、芳香族シアノ基は芳香環に電子を吸引されており、めっき触媒等への吸着性として重要な不対電子の供与性が低めになるが、アルキルシアノ基はこの芳香環が結合していないため、めっき触媒等への吸着性の点で好ましい。
【0026】
このような相互作用性基は、相互作用性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、イオン性極性基及びラジカル重合性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。これらのなかでも、合成が簡便であるという点からは、相互作用性基がペンダントされたモノマーを共重合させることにより、相互作用性基を特定ポリマー中に導入する態様をとることが好ましい。
【0027】
また、特定ポリマー中のラジカル重合性基は、エネルギー付与により直接、又は、共存するラジカル発生剤から発生したラジカルにより重合しうる官能基であれば特に制限されないが、具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基などが挙げられる。中でも、ラジカル重合反応性、合成汎用性の点から、(メタ)アクロリロイル基、(メタ)アクリルアミド基が好ましく、耐アルカリ性の観点から更に好ましくは(メタ)アクリルアミド基である。
【0028】
上記のような共重合体の態様を有する特定ポリマーは、以下のように合成できる。
合成方法としては、下記のi)〜iii)が挙げられる。
i)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーと、を共重合する方法、
ii)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、
iii)非解離性の相互作用性基を有するモノマー及びイオン性極性基を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基を有するポリマーに、該ポリマー中の反応性基と反応しうるラジカル重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法。
特定ポリマーの合成方法については、以下に改めて詳述する。
【0029】
特定ポリマー中のイオン性極性基としては、特定ポリマーの水溶性への現像性を付与しうるものであれば特に限定されず、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましく、電気配線として必要な低吸水性と、を両立するという観点で、特に、ポリマー主鎖に直接結合しているカルボン酸基、脂環構造と直接結合しているカルボン酸基(脂環式カルボン酸基)、ポリマー主鎖から離れたカルボン酸基(長鎖カルボン酸基)が好ましく、最も好ましくは、ポリマー主鎖に直結しているカルボン酸基である。
【0030】
このようなイオン性極性基は、以下に説明する、相互作用性基とラジカル重合性基を有するポリマーの一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入していてもよいし、また、上記のようなイオン性極性基がペンダントされたモノマーを共重合することで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0031】
本発明における特定ポリマーは、下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0032】
【化4】

【0033】
上記式(A)〜(C)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。
【0034】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
更に、特定ポリマーの柔軟性の観点から、R、R、及びRはいずれも水素原子であることが好ましい。
【0035】
X、Y、Z、及びUが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
X、Y、Z、及びUは、好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、アミド基であり、X、Z、及びUにおいては、最も好ましくは、単結合、エステル基であり、さらに、Yに関しては、前記単結合及びエステル基以外に、アミド基も最も好ましいものの1つとして挙げることができる。
【0036】
また、L、L、及びLは、それぞれ、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L、L、及びLはそれぞれ総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。L及びLの場合も同様である。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシル基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0037】
なお、前記ユニット(A)におけるLにおける総炭素数は、1〜10であることがより好ましく、Lで表される二価の有機基は直鎖状であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。また、Lに導入可能な置換基としては、エステル基、アミド基、ハロゲン原子、ホウ素原子、エーテル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、及び、チオール基が挙げられ、これらをその構造中に1つ以上有していてもよい。なお、形成される被めっき層の疎水性を維持するという観点からは、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボン酸基、リン酸基などの置換基を有することは好ましくない。
特に、Lとしては、その連結基の構造中に実質的に水酸基を有しない態様が好ましい。Lに水酸基を有しない場合、水酸基を含む構造に比較して、架橋部に無電解めっき液(アルカリ水)を含有し難く、めっき液に起因する膜強度の低下や、それに伴う形成された金属膜の密着力低下がより抑制される。
【0038】
特に、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、LのVとの連結部に4員〜8員の環構造を有することが好ましい。ここで、4員〜8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。即ち、この態様では、式(C)で表されるユニットの末端が脂環式カルボン酸基となる。
また、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子であることが好ましい。ここで、Lの鎖長とは、式(C)中のUとVとの距離を表し、UとVとの間が6原子〜18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。Lの鎖長として、より好ましくは、6原子〜14原子であり、更に好ましくは、6原子〜12原子である。
【0039】
一方、式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びLが単結合であることも好ましい態様の1つである。
この態様であると、ポリマー主鎖でカルボン酸基が遮蔽されると予想され、その結果、疎水化でき、金属パターン形成直後において、基板と金属パターンとの密着性を高めることができ、また、被めっき層の水に対する耐性を高めることができる。
【0040】
式(B)で表されるユニットにおいて、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、この非解離性官能基としては前述したものが挙げられる。中でも、Wは、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いといった点で、シアノ基又はエーテル基であることが好ましい。
なかでも、下記式(B−1)で表されるユニットであることが好ましい。なお、下記式(B−1)において、Rは前記式(B)で表されるユニットにおけるRと同義である。式(B)で表されるユニットとして、下記(B−1)で表されるユニットを選択することで、ポリマーの重量あたりに含まれるシアノ基の数が多くなり、被めっき層形成用組成物の単位重量あたりのめっき触媒等の吸着効率がより向上する。
【0041】
【化5】

【0042】
式(C)で表されるユニットにおいて、Vはイオン性極性基を表し、このイオン性極性基としては前述したものが挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、前述のように、カルボン酸基が好ましい。
特に、下記式(C−1)で表されるユニットであることが好ましい。なお、下記式(C−1)において、R及びLは前記したのと同義である。
【0043】
【化6】

【0044】
式(A)で表されるユニットは、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜40mol%である。
式(B)で表されるユニットは、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性、合成のしやすさの観点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜40mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜35mol%である。
式(C)で表されるユニットは、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜70mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20mol%〜60mol%である。特に好ましくは30mol%〜50mol%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0045】
なお、特定ポリマーのイオン性極性価(イオン性極性基がカルボン酸基の場合は酸価)としては、1.5mmol/g〜7.0mmol/gが好ましく、2.0mmol/g〜5.0mmol/gがより好ましく、3.0mmol/g〜4.5mmol/gが特に好ましい。イオン性極性価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が上記範囲に入ることを優先とする。
【0046】
本発明における特定ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。例えば、後述するユニット(A),(B−1)及び(C−1)を含む特定ポリマーの具体例として挙げた各種ポリマーもまた、本発明の特定ポリマーとして好適に挙げることができる。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜150000の範囲である。
【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
(特定ポリマーの合成方法)
以下、本発明の特定ポリマーの合成方法について説明する。
本発明における特定ポリマーは、前述の非解離性の相互作用性基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーであれば特に限定されないが、相互作用性基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基のそれぞれを側鎖に有するポリマーであることが好ましい。本発明における特定ポリマーは、式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体のような、相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びイオン性極性基を有するユニットを含む共重合体であることが好ましい。
以下、この相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びイオン性極性基を有するユニットを含む共重合体の態様を有する特定ポリマーと、その合成方法について説明する。
【0056】
上記のような共重合体の態様を有する特定ポリマーは、既述のように、以下のように合成できる。
合成方法としては、下記のi)〜iii)が挙げられる。
i)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーと、を共重合する方法、
ii)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、
iii)非解離性の相互作用性基を有するモノマー及びイオン性極性基を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基を有するポリマーに、該ポリマー中の反応性基と反応しうるラジカル重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法
これらの中でも、好ましいのは、合成適性の観点から、ii)の方法、及び、iii)の方法である。その中でも特に合成適性の観点からii)の方法が好ましい。
以上のように、ラジカル重合性基は、ラジカル重合性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、イオン性極性基及び相互作用性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。
それぞれの合成方法について詳述する。
【0057】
なお、合成方法i)〜iii)において特定ポリマーを合成する際には、得られる特定ポリマーの吸水性を低下させるため、また、疎水性を向上させるために、他のモノマーを共重合成分として用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な、ラジカル重合系のモノマーが用いられ、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0058】
上記の合成方法i)〜iii)で用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、前記した非解離性官能基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0059】
即ち、非解離性官能基を有するモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、シアノエチルアクリレート、1−メチル−シアノメチルアクリレート、2−ニトロ−エチルアクリレート、2−シアノ−エチルアクリルアミド、1−メチル−シアノメチルメタクリルアミド、4−シアノ−フェニルアクリレート、N−シアノエチル−N−エチル−アクリルアミド、3−シアノ−プロピルアクリレート、2−シアノ−2−メチル−エチルアクリレート、4−シアノ−ブチルアクリレート、5−シアノ−ペンチルアクリレート、6−シアノ−ヘキシルアクリレート、1−シアノ−メチルアクリレート、1−シアノ−シクロヘキシルアクリレート、p−シアノ−スチレン、4−シアノ−2,2−ジエチル−ブチルメタクリレート、更に、下記の化合物が挙げられる。
【0060】
【化15】

【0061】
【化16】

【0062】
また、合成方法i)〜iii)で用いられるイオン性極性基を有するモノマーとしては、前記したイオン性極性基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、又はボロン酸基を有するモノマーが用いられ、より具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0063】
即ち、イオン性極性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、フマル酸、メタクリル酸、4−安息香酸ビニル、更に、下記の化合物が挙げられる。
【0064】
【化17】

【0065】
また、カルボキシル基含有のモノマーとして、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーヨン(株)製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学(株)製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどを用いることもできる。
【0066】
前記i)の合成方法で用いられるラジカル重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
【0067】
【化18】

【0068】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、下記式(a)で表される化合物などが挙げられる。
【0069】
【化19】

【0070】
上記式(a)中、Aは重合性基を有する有機原子団、R〜Rは、夫々独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するもの、あるいは塩基の作用によりBが引き抜かれ、Cが脱離するものである。前者の場合、Bはアニオンとして、且つ、Cはカチオンとして脱離するものが好ましく、後者の場合、Cはアニオンとして、且つ、Bはカチオンとして脱離するものが好ましい。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0071】
【化20】

【0072】
【化21】

【0073】
【化22】

【0074】
【化23】

【0075】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0076】
【化24】

【0077】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
【0078】
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
【0079】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(B、Cで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
【0080】
前記iii)の合成方法において用いられるポリマーは、相互作用性基を有するモノマー、イオン性極性基を有するモノマー、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成される。このとき、イオン性極性基と反応性基は同一であってもよい。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0081】
カルボキシル基含有のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーヨン製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学(株)製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
ヒドロキシル基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレートのメチルエステル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、1−メチル−2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルフタル酸、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH
(R=H又はMe、n=1〜5)
【0082】
なお、ヒドロキシル基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いる場合、高分子量体のポリマーを合成するといった観点から、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートを除去した原料を用いることができる。
精製の方法としては、蒸留、カラム精製が好ましい。更に好ましくは、下記(I)〜(IV)の工程を順次経ること精製される方法である。
(I)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートと、を含む混合物を、水に溶解する工程
(II)得られた水溶液に、水と分離する第1の有機溶剤を加えた後、該第1の有機溶剤と前記2官能アクリレートとを含む層を水層から分離する工程
(III)前記水層に、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する工程
(IV)前記水層に第2の有機溶剤を加えて、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する工程
【0083】
また、エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、iii)の合成方法において用いられるポリマーは、更に他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0084】
前記iii)の合成方法において、反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、ポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
上記のような官能基を有するモノマーとして、具体的には、アクリル酸、グリシジルアクリレート、サイクロマーA(ダイセル化学製)、カレンズAOI(昭和電工製)、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、サイクロマーM(ダイセル化学製)、カレンズMOI(昭和電工製)を使用することができる。
【0085】
以上のようにして合成された本発明における特定ポリマーは、共重合ユニット全体に対し、相互作用性基含有ユニット、重合性基含有ユニット、イオン性極性基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、相互作用性基含有ユニット〔たとえば、ユニット(B)〕は、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜40mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜35mol%である。
また、ラジカル重合性基含有ユニット〔ユニット(A)〕は、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜40mol%である。
イオン性極性基含有ユニット〔ユニット(C)〕は、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜70mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20mol%〜60mol%である。特に好ましくは30mol%〜50mol%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0086】
なお、特定ポリマーのイオン性極性価(イオン性極性がカルボン酸基の場合は酸価)としては、1.5mmol/g〜7.0mmol/gが好ましく、2.0mmol/g〜5.0mmol/gがより好ましく、3.0mmol/g〜4.5mmol/gが特に好ましい。酸価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が上記範囲に入ることを優先とする。
【0087】
ただし、前述iii)の合成方法のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第4のユニットとなる可能性もある。
【0088】
本発明に係る特定ポリマーの特に好ましい例として、下記式(A)で表されるユニット、下記式(B−1)で表されるユニット及び下記(C−1)で表されるユニットを含むポリマーが挙げられる。
【0089】
【化25】

【0090】
上記式(A)、式(B−1)及び式(C−1)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、R、R、R、及びRは水素原子、又はメチル基であることが好ましく、R、Rは水素原子であることが好ましい。
Y、及びZは、夫々独立して、単結合、フェニレン基(−C−)、エステル基、アミド基、を表し、Lは、単結合、又は無置換の炭素数1〜10の2価の有機基を表す。
は、単結合、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜10の二価の有機基を表す。
このようなポリマーのうち、前記式(A)で表されるユニットが、(i)下記(A−0)で表されるユニットから誘導されたユニットであるか、および、(ii)水酸基を有するユニットとイソシアネート基を有するオレフィン化合物との反応により誘導されたユニットから選択されるユニットであることが好ましい。
さらなる好ましい態様としては、式Yがアミド基を表す態様が挙げられ、最も好ましくは下記(A−0)で示されるユニットから合成されるユニットである。
当該ポリマーは新規ポリマーであり、単位重量あたりのめっき触媒又はその前駆体の吸着効率の観点から、前記本発明の被めっき層形成用組成物へ好適に使用しうる。
【0091】
【化26】

【0092】
(上記式(A−0)中、A、Bのいずれか一方は水素原子であり、他方はハロゲン原子、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、エーテル基、又はチオエーテル基を表す。R〜R、Z、及びLは、夫々前記式(A)におけるのと同義である。)
なかでも、A、Bのいずれかが、ハロゲン原子またはスルホン酸エステル基であることが反応性の観点で好ましい。
前記ユニット(A),(B−1)及び(C−1)を含む特定ポリマーの具体例としては、以下に示すポリマーが挙げられる。
【0093】
【化27】

【0094】
【化28】

【0095】
【化29】

【0096】
【化30】

【0097】
【化31】

【0098】
【化32】

【0099】
【化33】

【0100】
【化34】

【0101】
【化35】

【0102】
本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、3000以上15万以下が好ましく、更に好ましくは5000以上10万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。更には、光硬化させて得られる被めっき層の膜厚を厚くし、めっき触媒又はその前駆体をより多く吸着させるといった観点から、重量平均分子量は60000以上であることが最も好ましい。なお、合成中のゲル化抑制の観点から分子量の上限値は15万であることが好ましく、さらに好ましくは10万以下である。
なお、ここで記載の重量平均分子量とは、GPC(使用溶媒:N−メチルピロリドン)を用いてポリスチレン換算により測定される値であり、例えば、次の条件で測定することができる。
・カラム:ガードカラム TOSOH TSKguardcolum Super AW-H
分離カラム TOSOH TSKgel Super AWM-H(サイズ6.0mm×15cmを3本連結)
・溶離液:N−メチルピロリドン(LiBr10mM含有)
・流速:0.35mL/min
・検出方法:RI
・温度:カラム40℃、インレット40℃、RI40℃
・サンプル濃度:0.1wt%
・注入量:60μL
また、本発明における特定ポリマーの重合度としては、20量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは30量体以上のものである。また、1500量体以下が好ましく、1000量体以下がより好ましい。
【0103】
本発明の被めっき層形成用組成物は、溶剤として有機溶剤のみを用いた場合は、上述の特定ポリマーを、組成物全体に対して、0.01質量%〜50質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましい範囲は、0.01質量%〜30質量%である。
また、後述するように、本発明の被めっき層形成用組成物に溶剤として水と水溶性有機溶剤との混合液を使用する場合は、特定ポリマーの最適な濃度範囲としては、組成物全体に対して、0.01質量%〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜15質量%である。
【0104】
〔溶剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、前述の特定ポリマーの他に、この特定ポリマーを溶解しうる溶剤を含有することが好ましい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
また、相互作用性基としてシアノ基を有する特定ポリマーを含有する組成物を塗布する場合は、取り扱い安さから沸点が50℃〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0105】
−水溶性有機溶剤−
本発明の被めっき層形成用組成物において、イオン性極性基を塩基で中和し、親水性を上げることで、溶剤として水を使用することもできる。なお、塗布時の塗布性を考えると溶剤として水と水溶性有機溶剤とを併用することが好ましく、その際の有機溶剤の含有量は、全溶剤に対して、0.1質量%〜40質量%であることが好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、上記の含有量の範囲において水と溶解しうるものを意味する。このような性質を有している有機溶剤であれば、特に限定されず、組成物の溶剤として用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などが好ましく用いられる。
【0106】
ケトン系溶媒としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
【0107】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0108】
エーテル系溶媒としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2−(2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
【0109】
グリコール系溶媒としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
アミン系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
チオール系溶媒としては、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0110】
その他にも、水溶性有機溶媒として、下記表1に記載の溶媒も使用することができる。
【0111】
【表1】

【0112】
本発明における水溶性有機溶剤の沸点は蒸散のし易さの観点から、70℃〜150℃が好ましく、65℃〜120℃がより好ましい。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール(沸点:78℃)、イソプロピルアルコール(沸点:82℃)、n−プロピルアルコール(沸点:97℃)、THF(沸点:66℃)、1−メトシキ−2−プロパノール(沸点:119℃)、MEK(沸点:80℃)などが好ましく挙げられる。
【0113】
また、上述のように、水と水溶性有機溶剤の混合液を用いる場合、作業のし易さの観点から、その引火点としては30℃以上のものが好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
なお、本発明における引火点は、JIS−K2265に準拠するタグ密閉式によって得られた測定値を意味する。
【0114】
−水−
本発明の被めっき層形成用組成物に使用される水は、不純物を含まないことが好ましく、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などが好ましく、脱イオン水や蒸留水がより好ましい。
【0115】
−特定ポリマーの溶解性を高めるための添加剤−
本発明の被めっき層形成用組成物に水と水溶性有機溶剤との混合液を使用する場合は、特定ポリマーの溶解性を高めるために添加剤を使用することができる。
例えば、溶質である特定ポリマーがカルボン酸基などの酸性基を有する場合は、この酸性基をカルボン酸ナトリウムなどの塩とすることで、この特定ポリマーは、水と水溶性有機溶剤との混合液に溶解し易くなる。カルボン酸基をカルボン酸ナトリウムに変換するために使用する添加剤としては、塩基性の化合物が使用することができ、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア、DBU、DBNなどが使用できる。特に好ましくは水溶性化の度合い、最適な塩基性度の観点から、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0116】
〔ラジカル発生剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、エネルギー付与に対する感度を高めるために、ラジカル発生剤を含有することが好ましい。
使用されるラジカル発生剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、ピリジウム類化合物等が挙げられる。
【0117】
〔増感剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、エネルギー付与が露光で行われる場合、その露光に対する感度をより高める目的で、前記ラジカル発生剤に加え、増感剤を含有させることもできる。
増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、ラジカル発生剤と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
【0118】
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から露光波長に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられ、他に、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
【0119】
ラジカル発生剤と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
本発明においては、トリアジン系の光重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤と、の組合せが好ましく挙げられる。
【0120】
その他、増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などを用いることもできる。
【0121】
これらの増感剤は、本発明の被めっき層形成用組成物中、特定ポリマーの質量に対して、1質量%〜30質量%程度の量で含有させることが好ましい。
【0122】
〔界面活性剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
本発明に用いられる界面活性剤は、前述の溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0123】
〔可塑剤〕
また、本発明の被めっき層形成用組成物には、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0124】
〔重合禁止剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。
【0125】
〔硬化剤、硬化促進剤〕
また、後述のように、本発明の被めっき層形成用組成物を用いて密着補助層上に被めっき層を形成する場合、密着補助層の硬化を進めるために、被めっき層形成用組成物に硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。例えば、密着補助層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアーリルヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
【0126】
これらの硬化剤及び/又は硬化促進剤は、被めっき層形成用組成物の塗布性、基板やめっき膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0〜50質量%程度まで添加することが好ましい。
なお、硬化剤及び/又は硬化促進剤は密着補助層に添加してもよく、その場合は、密着補助層に添加した量と被めっき層形成用組成物中に添加した総和量で上記範囲を満たすことが好ましい。
【0127】
〔その他の添加剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、水溶性物質(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のミネラル成分)、溶解性低分子物質(例えば、εカプロラクタム、ポリエチレングリコール等のポリアルキルグリコール)などを添加してもよい。また、これらの添加剤は必要に応じて密着補助層に添加してもよい。
【0128】
本発明の被めっき層形成用組成物として、特定ポリマーと各種の添加剤とを適宜混合した組成物を用いることで、形成された被めっき層の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。特に、破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましい。
得られた被めっき層は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができ、例えば、熱分解に関しては、200℃環境に1時間曝した場合の質量減少が20%以下であると、十分に熱耐久性を有していると評価できる。
【0129】
<積層体>
本発明の積層体は、基板上に、前記本発明の被めっき層形成用組成物からなる被めっき層形成用組成物層を有することを特徴とする。このような積層体を用いることで、任意の基板上に、密着性に優れた金属パターンを容易に形成しうる。
以下、本発明の被めっき層形成用組成物や本発明の積層体を用いた金属パターン材料の作製方法について説明する。
【0130】
<金属パターン材料の作製方法>
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(1)基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、(2)前記基板上の前記被めっき層形成用組成物の未硬化部を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、(3)該パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(4)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
以下、この(1)〜(4)の各工程について説明する。
【0131】
〔(1)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(1)工程では、基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる。
本発明においては、被めっき層中の、特定ポリマーが、分子内のラジカル重合性基により基板に結合していることが好ましい態様である。
【0132】
本発明の被めっき層形成用組成物を基板に接触させる場合には、その塗布量は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点からは、固形分換算で、0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
なお、基板上に、特定ポリマーを含有する組成物を塗布し、乾燥させて、特定ポリマーを含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20℃〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0133】
本発明の被めっき層形成用組成物と基板との接触は、基板を、該被めっき層形成用組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、被めっき層形成用組成物からなる層を基板表面(密着補助層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
なお、基板が樹脂フィルムであって、この樹脂フィルムの両面に対して被めっき層を形成する場合にも、被めっき層を両面同時に形成し易いといった観点から、塗布法を用いることが好ましい。
【0134】
(エネルギー付与)
本工程では、基板に本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、この被めっき層形成用組成物に対し、エネルギー付与を行う。
エネルギー付与には、加熱や露光などが用いられることが好ましく、パターン像の形成容易性の観点からは、露光が用いられることが好ましい。
露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
露光時間としては、特定ポリマーの反応性及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0135】
なお、エネルギー付与として加熱を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。
エネルギー付与の方法として、パターン状に加熱を行う場合、赤外線や遠赤外線による露光が用いられる。
【0136】
上記のようなエネルギー付与が行われると、その領域でのみ特定ポリマーの硬化反応が生起する。その結果、基板上では、本発明の被めっき層形成用組成物のエネルギー付与領域のみが硬化することとなる。
【0137】
(基板)
本工程で用いられる基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、前述の特定ポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基材上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設け、この基材と中間層とで基板が構成されていてもよい。
【0138】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、特定ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0139】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0140】
また、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0141】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0142】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0143】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252−1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0144】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0145】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0146】
本発明における絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0147】
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0148】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10質量%〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
【0149】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0150】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や密着補助層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0151】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(1)工程を施し、後述する(2)工程を経れば、樹脂フィルムの両面に被めっき層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面に被めっき層が形成された場合には、更に、後述する(3)工程、及び(4)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された金属パターン材料を得ることができる。
【0152】
以下、本発明における密着補助層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に密着補助層を形成してもよい。密着補助層としては、特定ポリマーが光硬化時に化学結合を生じるものが好ましい。このような化学結合を生じる密着補助層には、光開始剤を導入することが好ましい。また、密着補助層は作業性の観点から水分散ラテックスを用いて形成されることが好ましい。
【0153】
本発明における密着補助層は、基板と被めっき層との密着を確保する中間層であり、この層は基板と被めっき層に親和性があるものでもよく、硬化時に特定ポリマーと反応し、化学結合を形成してもよい。
密着補助層としては、基材との密着性が良好な樹脂組成物、及び、露光によりラジカルを発生しうる化合物を用いて形成されることが好ましい。なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、ラジカルを発生しうる部位を有する場合には、ラジカルを発生しうる化合物を別途添加する必要はない。
【0154】
本発明における密着補助層としては、例えば、基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、若しくはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基材との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂からなり、密着補助層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
【0155】
密着補助層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
また、これ以外の成分として、密着補助層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機若しくは有機の粒子を添加してもよい。
【0156】
なお、本発明において、密着補助層に使用される絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0157】
また、密着補助層に用いられる絶縁樹脂としては、めっき触媒受容性の感光性樹脂組成物と相互作用を形成し得る活性点を発生させる骨格を有する樹脂を用いることもできる。例えば、特開2005−307140号公報の段落番号〔0018〕〜〔0078〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドが用いられる。
【0158】
密着補助層の形成には、ポリマーラテックスを使用してもよい。ポリマーラテックスとは、水に不溶なポリマーの微粒子が水に分散したものである。詳細には、例えば「高分子ラテックスの化学」室井宗一著、高分子刊行会発行、昭和48年)に記載されている。
前記ポリマーラテックスとしては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア/ウレタン、SBR(スチレン−ブタジエン系)、MBR(MMA/ブタジエン、アクリル/ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)、NR(天然ゴム)、アクリルゴム、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、VP(SBR/ジビニルピリジン)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)及びこれらの共重合体からなるポリマーラテックスなどが挙げられる。特に、シアノ基を含むポリマーラテックスが好ましく、具体的には、Nipol 1561(日本ゼオン(株))、Nipol 1562(日本ゼオン(株))、Nipol 1577K(日本ゼオン(株))、LX 531(日本ゼオン(株))、LX 531B(日本ゼオン(株))、Nipol SX1503A(日本ゼオン(株))、NK−300(日本エイアンドエル(株))が挙げられる。
また、前記ポリマーラテックスには、種類の異なるポリマーラテックスを併用することもできる。併用できるポリマーラテックスとしては、例えば、SBRとNR、IRとNR、CRとNR、NBRでニトリル量が異なるもの、SBRでスチレン量が異なるもの、SBRとVP、NBRとMBR、SBRとNBR、SBRとMBR、BRとCR、NBRとVP、CRとVPなどが挙げられる。
密着補助層をポリマーラテックスにより形成する場合には、ポリマーラテックス分散液を塗布し、乾燥すればよい。
【0159】
本発明における密着補助層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0160】
また、本発明における密着補助層には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0161】
更に、この密着補助層には、必要に応じて、一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。
【0162】
また、更にこの密着補助層には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種又は二種以上添加してもよい。
【0163】
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0質量%〜80質量%の範囲で添加される。密着補助層と隣接する基材とが、熱や電気に対して同じ若しくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を、樹脂に対して200質量%を超える範囲で用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0164】
密着補助層には、前述のように、樹脂組成物と露光によりラジカルを発生しうる化合物が用いられることが好ましい。
ここで、露光によりラジカルを発生しうる化合物としては、従来公知の光重合開始剤が用いられる。
この光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロフォスフェートなどのスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムサルフェートなどのヨードニウム塩などが挙げられる。
【0165】
密着補助層に含有させる光重合開始剤(露光によりラジカルを発生しうる化合物)の量は、固形分で0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1.0質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0166】
本発明における密着補助層の厚みは、一般に、0.1μm〜10μmの範囲であり、0.2μm〜5μmの範囲であることが好ましい。密着補助層を設ける場合、厚みが上記一般的な範囲であれば、隣接する基材や、被めっき層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。
【0167】
また、本発明における密着補助層の表面は、形成されるめっき金属膜の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが3μm以下であるものが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。密着補助層の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、平滑性が高い状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
【0168】
密着補助層は基材表面に、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成される。
密着補助層は、所望により、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)や、現像法(例えば、湿式エッチング、乾式エッチング、アブレーション、光による硬化・可塑化(ネガ型/ポジ型)など)などでパターン化されてもよい。
【0169】
また、密着補助層は基材上に形成された後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理を行ってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、本実施形態においては熱又は光が一般的であり、熱の場合は、100℃〜300℃の熱を5分〜120分加えることが好ましい。また、加熱硬化の条件は、基材の材料の種類、密着補助層を構成する樹脂組成物の種類等で異なり、これらの素材の硬化温度にもよるが、120℃〜220℃で20分〜120分の範囲で選択されることが好ましい。
【0170】
この硬化処理は密着補助層の形成後すぐに行ってもよく、密着補助層形成後に5分〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
【0171】
密着補助層の形成後、その表面に形成される被めっき層に対する密着性向上の目的で、乾式及び/又は湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0172】
〔(2)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(2)工程では、前記(1)工程後、基板上の被めっき層形成用組成物の未硬化部を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する。
【0173】
(水溶液による現像)
本工程で用いられる水溶液としては、酸性水溶液、中性水溶液、アルカリ性水溶液が挙げられる。
酸性水溶液としては、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液が用いられる。
また、中性水溶液としては水に界面活性剤を溶解させたものが用いられアニオン性、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を使用することができる。
中でも、アルカリ水溶液が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムの水溶液が用いられる。
これらの水溶液の濃度は0.01質量%〜10質量%である。濃度はイオン性極性性基のpKaや所望とする現像時間により決められる。
【0174】
また、現像方法としては、シャワー洗浄、浸漬法などが使用できる。また、現像液を攪拌して、そこへ基板を浸漬して現像することもできる。
現像条件としては、現像温度は室温〜50℃が好ましく、現像時間は5秒〜10分が好ましい。
【0175】
上記のような現像により、基板上には、パターン状の被めっき層が形成される。
得られた被めっき層は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、膜厚が、0.2μm〜1.5μmであることが好ましく、0.3μm〜1.5μmがより好ましく、0.6μm〜1.2μmが特に好ましい。
【0176】
〔(3)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(3)工程では、前記(2)工程において形成された被めっき層に、めっき触媒又はその前駆体を付与する。
本工程においては、被めっき層を構成する特定ポリマーが有する相互作用性基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述する(4)工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、(4)工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
【0177】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、ものであり、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、さらに具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0178】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0179】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0180】
本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)又はその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0181】
パラジウム塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物などが挙げられる。なかでも、取り扱いやすさと溶解性の点で、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)が好ましい。
パラジウム錯体としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体などが挙げられる。
パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。パラジウムコロイドは、必要に応じて、他の金属を含んでいてもよく、他の金属としては、例えば、スズなどが挙げられる。パラジウムコロイドとしては、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどが挙げられる。なお、パラジウムコロイドは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を使用してもよい。例えば、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、パラジウムイオンを還元することによりパラジウムコロイドを作製することができる。
【0182】
また、本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体としては、選択的に被めっき層に吸着させることができるといった観点から、銀、及び銀イオンが好ましい別の例として挙げられる。
めっき触媒前駆体として銀イオンを用いる場合、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。銀化合物の具体例としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硝酸銀が好ましい。
【0183】
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩を被めっき層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液を被めっき層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中に被めっき層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0184】
また、前記(1)工程において、基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒又はその前駆体を添加する方法を用いてもよい。つまり、特定ポリマーと、無電解めっき触媒又はその前駆体と、を含有する組成物(本発明の被めっき層形成用組成物)を、基板上に接触させて、パターン状に露光・現像を行うことにより、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっきパターン(パターン状の被めっき層)を形成することができる。なお、この方法を用いれば、エッチング工程を施しことなく金属パターンを形成することができる。
【0185】
なお、基板として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムの両面に対して被めっき層が形成されている場合には、その両面の被めっき層に対して同時に無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させるために、上記の浸漬法を用いることが好ましい。
【0186】
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、被めっき層中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。
また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0187】
なお、無電解めっき触媒又はその前駆体を含有する溶液、分散液、或いは組成物にパラジウム化合物を用いる場合、パラジウム化合物は、溶液、分散液、或いは組成物の全量に対して、0.001質量%〜10質量%の範囲で用いることが好ましく、0.05質量%〜5質量%で用いることがより好ましく、更に0.10質量%〜1質量%で用いることが好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体を含有する溶液に銀化合物を用いる場合、銀化合物は、溶液の全量に対して、0.1質量%〜20質量%の範囲で用いることが好ましく、0.1質量%〜20質量%の範囲で用いることがより好ましく、更に0.5質量%〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。
どちらの化合物を用いる場合であっても、含有量が少なすぎると後述するめっきの析出がし難くなり、含有量が多すぎると、所望とされない領域までめっきが析出してしたり、エッチング残渣除去性が損なわれたりすることがある。
【0188】
被めっき層のめっき触媒又はその前駆体の吸着量に関しては、使用する無電解めっき触媒又はその前駆体の種類にもよるが、例えば、銀イオンの場合は、無電解めっきの析出性の観点から、300mg/m以上が好ましく、500mg/m以上がより好ましく、600mg/m以上が更に好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層の銀イオンの吸着量は1000mg/m以下であることが好ましい。
また、パラジウムイオンの場合、被めっき層の吸着量は、無電解めっきの析出性の観点から、5mg/m以上が好ましく、10mg/m以上がより好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層のパラジウムイオンの吸着量は1000mg/m以下であることが好ましい。
【0189】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(4)工程において、被めっき層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、相互作用性基(シアノ基・エーテル基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0190】
(有機溶剤、及び水)
上記のようなめっき触媒又は前駆体は、前述のように、分散液や溶液(触媒液)として被めっき層に付与される。
本発明における触媒液には、有機溶剤や水が用いられる。
この有機溶剤を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒又は前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
【0191】
本発明における触媒液には、水を用いてもよく、この水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。
【0192】
めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0193】
また、その他の有機溶剤としては、ダイアセトンアルコール、γブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0194】
特に、めっき触媒又はその前駆体との相溶性、及び被めっき層への浸透性の観点では水溶性の有機溶剤が好ましく、アセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0195】
更に、本発明における触媒液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。
他の添加剤としては、例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類等の有機化合物など)や、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性及び低分子性又は高分子性など)などが挙げられる。
【0196】
以上説明した(3)工程を経ることで、被めっき層中の相互作用性基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0197】
〔(4)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(4)工程では、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、めっきを行うことで、めっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(3)工程において、被めっき層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、被めっき層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0198】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜30質量%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒又はその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒又はその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌或いは揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0199】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0200】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0201】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0202】
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が選択される。
例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。
また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0203】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm〜2μmであることがより好ましい。
ただし、無電解めっきによるめっき膜を導通層として、後述する電気めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていればよい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0204】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき層は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により、被めっき層中にめっき触媒やめっき金属からなる微粒子が高密度で分散していること、また更に被めっき層上にめっき金属が析出していることが確認される。被めっき層とめっき層との界面は、樹脂複合体と微粒子とのハイブリッド状態であるため、被めっき層(有機成分)と無機物(めっき触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、1mmの領域でRaが1.5μm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0205】
(電気めっき)
本工程おいては、前記(3)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0206】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0207】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、又は、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、得られた金属パターン材料を一般的な電気配線などに適用する場合の金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm〜30μmがより好ましい。
なお、電気配線の厚みは、電気配線の線幅が狭くなる、すなわち微細化するほどアスペクト比を維持するために薄くなる。従って、電気めっきによって形成されるめっき層の層厚は、上記に限定されず、任意に設定できる。
【0208】
上述のめっき膜の他の製造方法としては、上述の(a)工程において被めっき層を形成する際、被めっき層形成用組成物にめっき触媒又はその前駆体を予め混合しておき、上述の塗布法、押出成形法、ラミネート法を用いて、基板上に被めっき層を積層する方法も挙げられる。
この方法の場合、上述の(c)工程を実施することなく、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっき層をひとつの工程で作製することができ、作業効率及び生産性の観点から好ましい。
【0209】
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料の作製方法の各工程を経ることで金属パターン材料を得ることができる。
なお、本発明の金属パターン材料の作製方法において、基板として樹脂フィルム等を用いれば、その樹脂フィルムの両面に金属パターンが形成された金属パターン材料を得ることができる。
本発明に係る金属パターン材料は、基板に対する金属パターンの密着力に優れる。
【0210】
本発明に係る金属パターン材料は、表面の凹凸が500nm以下5nm以上(より好ましくは100nm以下)の基板上の局所的に、めっき膜を設けたものであることが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が碁盤の目試験で100目中10目以下であることが好ましく、特に0目であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0211】
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下5nm以上であることが好ましい。
【0212】
本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【0213】
なお、本発明の被めっき層形成用組成物は前述の如く水溶液による現像が可能であることを特徴とするものであり、金属パターン材料の作製に好適に用いられるが、形成される被めっき層はめっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れるため、この用途に限定されず、現像してパターンを形成する必要のない用途、例えば、基板表面の全面に被めっき層を形成し、その後、金属膜を形成する表面金属膜材料の作製にも好適に用いられることは言うまでもない。表面金属膜材料の作製に用いる場合には、(1’)基板上に、前記本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対して、基板の全領域に、エネルギーを付与して当該被めっき層形成用組成物を硬化させて被めっき層を得る工程とを実施した後、前記本発明の金属パターン材料の作製方法における(3)工程、即ち、該被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、前記(4)工程、即ち、該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を順次実施すればよい。
【実施例】
【0214】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0215】
[合成例1:特定ポリマーAの合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド10gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、下記構造のモノマーM:6.61g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)9.01g、脂環式カルボン酸を有するモノマーであるHOA−HH(下記構造、共栄社化学(株)製)15.14g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.32gのN,N−ジメチルアセトアミド10g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド51gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0216】
【化36】

【0217】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.06g、トリエチルアミン22.26gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液29g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーA(重量平均分子量4.2万)を19g得た。得られた特定ポリマーAの酸価を電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマーAの酸価は1.95mmol/gであった。
【0218】
[合成例2:特定ポリマーB1の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド18gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)12.5g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)21.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド91gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0219】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、トリエチルアミン101.2gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液150g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーB1(重量平均分子量9.5)を25g得た。得られた特定ポリマーB1の酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーB1の酸価は6.0mmol/gであった。
【0220】
[合成例3:特定ポリマーB2の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)20.5g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)14.4g、V−65(和光純薬工業(株)製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド91gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0221】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、トリエチルアミン75.9gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液112g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーB2(重量平均分子量7.4万)を25g得た。得られた特定ポリマーB2の酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーB2の酸価は4.0mmol/gであった。
【0222】
[合成例4:特定ポリマーB3の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド22gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)13g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)10.8g、V−65(和光純薬工業(株)製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド22g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド109gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0223】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、トリエチルアミン50.6gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液75g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーB3(重量平均分子量8.4万)を35g得た。得られた特定ポリマーB3の酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーB3の酸価は3.2mmol/gであった。
【0224】
[合成例5:特定ポリマーCの合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド28gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:13.3g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)4.0g、アロニックスM5300(ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、下記構造:東亞合成製)67.28g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.626gのN,N−ジメチルアセトアミド28g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド141gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0225】
【化37】

【0226】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.11g、トリエチルアミン72.9gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液98g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーC(重量平均分子量3.5)を30g得た。得られた特定ポリマーCの酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーCの酸価は2.83mmol/gであった。
【0227】
[合成例6:特定ポリマーDの合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド13.4gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:13.22g、3−シアノプロピルアクリレート(東京化成工業(株)製)17.80g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)9.23g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.63gのN,N−ジメチルアセトアミド13g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド67gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0228】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.11g、トリエチルアミン48.6gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液72g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーD(重量平均分子量5.8万)を23g得た。得られた特定ポリマーDの酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーDの酸価は3.72mmol/gであった。
【0229】
〔実施例1〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA:0.2g、炭酸ナトリウム:0.04g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0230】
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、密着補助層として9質量%のABS樹脂(Aldrich社製)のシクロヘキサン溶液をスピンコート法(条件:250rpmで5秒、その後、750rpmで20秒)にて塗布し、乾燥して基板A1を得た。
【0231】
[被めっき層の形成]
調製された被めっき層形成用組成物を、前記基板A1の密着補助層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。
その後、被めっき層形成用組成物に対し、UV露光機(型番:(株)三永電機製作所製 型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cmの照射パワー(ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、フォトマスクを通じて300秒間、パターン露光を行った。
露光後の基板を、1質量%NaCO水溶液中に5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、パターン状の被めっき層を有する基板A2を得た。
【0232】
[めっき触媒の付与]
被めっき層を有する基板A2を、10質量%硝酸銀水溶液に、10分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
【0233】
[無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与された被めっき層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、26℃で10分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.1μmであった。
【0234】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 774g
・ATSアドカッパーIW−A(奥野製薬工業(株)製) 45mL
・ATSアドカッパーIW−M(奥野製薬工業(株)製) 72mL
・ATSアドカッパーIW−C(奥野製薬工業(株)製) 9mL
・NaOH 1.98g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
【0235】
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
これにより、実施例1の金属パターン材料を得た。
【0236】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0237】
(密着性評価)
実施例1で得られためっき膜に対して、JIS K5600に準拠して碁盤目剥離試験(クロスカット試験)にて、100マス剥離試験を行なったところ、100目中剥離は0目であり、1目の剥離も見られなかった。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.7kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を70℃95RH%で2.5週間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中1目の剥離も見られなかった。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中15目の剥離がみられた。
【0238】
〔実施例2〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマーB1:0.2g、炭酸ナトリウム:0.057g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0239】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例2の金属パターン材料を得た。
【0240】
(密着性評価)
実施例2で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.8kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中10目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中10目の剥離がみられた。
【0241】
〔実施例3〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマーB2:0.2g、炭酸ナトリウム:0.037g、水1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0242】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例3の金属パターン材料を得た。
【0243】
(密着性評価)
実施例3で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.8kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中8目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中8目の剥離がみられた。
【0244】
〔実施例4〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマーB3:0.2g、炭酸ナトリウム:0.04g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0245】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例4の金属パターン材料を得た。
【0246】
(密着性評価)
実施例4で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.8kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
【0247】
〔実施例5〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーC:0.2g、炭酸ナトリウム:0.03g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0248】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例5の金属パターン材料を得た。
【0249】
(密着性評価)
実施例5で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.6kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を70℃95RH%で3週間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中17目の剥離がみられた。
【0250】
〔実施例6〕
実施例1の[基板の作製]において、9質量%のABS樹脂(Aldrich社製)のシクロヘキサン溶液に、該ABS樹脂に対して10質量%のIRG184(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製)を添加した以外は、実施例1と同様にして基板A1’を得た。 この基板A1’を用い、実施例1の[被めっき層の形成]において、露光時間を300秒から250秒に変えてパターン露光を行い、パターン状の被めっき層を有する基板A2’を得た。
このように露光時間を短くしても、パターン状の被めっき層は良好に形成されていた。
【0251】
[めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
その後、基板A2’を用いて、実施例1と同様にして、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例6の金属パターン材料を得た。
【0252】
(密着性評価)
実施例6で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.75kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を70℃95RH%で3週間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中13目の剥離がみられた。
【0253】
〔実施例7〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマーD:0.2g、炭酸水素ナトリウム:0.062g、水1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0254】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例7の金属パターン材料を得た。
【0255】
(密着性評価)
実施例7で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.8kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中3目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中3目の剥離がみられた。
【0256】
〔実施例8〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマーB2:1g、及び炭酸ナトリウム:0.17gを水3gで溶解させた後、メタノール:7gを添加し、その後、混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0257】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例8の金属パターン材料を得た。
【0258】
(密着性評価)
実施例8で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.8kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中8目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中8目の剥離がみられた。
【0259】
〔比較例1〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
後述の合成法で得られた比較ポリマーE:0.2g、及びアセトン:1.8gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0260】
[比較ポリマーEの合成]
500mlの三口フラスコに、エチレングリコールジアセテートを10mL入れ、80℃まで昇温し、その中に、ヒドロキシエチルアクリレート3.72g、2−シアノエチルアクリレート16.01g、V−601(和光純薬工業(株)製)0.3684g、及びエチレングリコールジアセテート10mLの混合液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.16g、U−600(日東化成製)0.32g、カレンズAOI(昭和電工製)9.6g、及びエチレングリコールジアセテート9.6gを加え、55℃で6時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、比較ポリマーE(重量平均分子量6万)を18g得た。
【0261】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を、前記基板A1の密着補助層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。
その後、被めっき層形成用組成物に対し、UV露光機(型番:UVX−02516S1LP01、USHIO電機社製)を用い、23mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、フォトマスクを通じて300秒間、パターン露光を行った。
露光後の基板を、1質量%NaCO水溶液中に5分間浸漬したが、未露光部(未硬化部)の比較用ポリマーEを除去することができなかった。
【0262】
[合成例7:特定ポリマーFの合成]
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mL追加して反応を停止させた。その後、酢エチ層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥し酢酸エチルを留去する事で原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに原料Aを47.4g、ピリジンを22g、酢酸エチルを、150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへアクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節をして滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mL追加し反応を停止させた。その後、酢エチ層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥し酢酸エチルを留去し、カラムクロマトグラフィーにてモノマーFを精製し20g得た。
【0263】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記で得たモノマーF:14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーF(重量平均分子量5.3万)を12g得た。得られた特定ポリマーFの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマーFの酸価は3.9mmol/gであった。
【0264】
得られたポリマーFの同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.8−8.1ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.3−3.5ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=25:28:47(mol比)であることが分かった。
【0265】
[合成例8:特定ポリマーGの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド9.4gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成製):5.8g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.8g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)9.0g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.5gのN,N−ジメチルアセトアミド9.4g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド56gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、カレンズMOI7.6g、U−600(日東化成製)0.2g、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.08gを加え、45℃に加熱し6時間反応させた。その後、メタノール1.6gを加え1.5時間反応させ反応を終了した。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーG(重量平均分子量4.2万)を14g得た。得られた特定ポリマーGの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーGの酸価は2.7mmol/gであった。
【0266】
得られたポリマーGについて、ポリマーFと同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.4−7.0ppm(1H分)、6.1−6.0ppm(1H分)、5.7−5.6ppm(1H分)、4.2−3.95ppm(6H分)、3.35−3.2ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=19:28:53(mol比)であることが分かった。
【0267】
[合成例9:特定ポリマーHの合成]
500mLの三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール28.7gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製):5.9g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)18.7g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.74gの1−メトキシ−2−プロパノール28.7g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、1−メトキシ−2−プロパノール41gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシ−TEMPO0.06g、トリエチルベンジルクロライド(東京化成工業(株)製)1.7g、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)8.16gを加え、95℃に加熱し4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーH(重量平均分子量2.7万)を21g得た。得られた特定ポリマーHの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーHの酸価は5.4mmol/gであった。
【0268】
得られたポリマーHについてポリマーFと同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが6.1−6.0ppm(1H分)、5.7−5.6ppm(1H分)、4.2−3.95ppm(4H分)、3.5−3.7ppm(1H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=21:28:51(mol比)であることが分かった。
【0269】
〔実施例9〜11〕
〔基板の作製〕
ガラスエポキシ基板(日立化成(株)製MCL−E679W)を用い、その表面に密着補助層を形成し、基板B1を得た。密着補助層の形成は、NBRラテックス(日本ゼオン(株)製Nipol1561)を用いた。Nipol1561(固形分濃度が40.5質量%の水分散液)を用い、前記基板上にスピンコート法により塗布し、120℃にて30分間乾燥することで造膜させ、厚さ4μmの密着補助層を有する基板B1を得た。
[被めっき層形成用組成物の調製]
前記合成法で得られた特定ポリマーFを用い、固形分濃度7質量%の水溶液を調製した実施例9の被めっき層形成用組成物を得た。
同様に、特定ポリマーGを用いて、実施例10の被めっき層形成用組成物を、特定ポリマーHを用いて、実施例11の被めっき層形成用組成物を、それぞれ調製した。
【0270】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
得られた前記各被めっき層形成用組成物を、前記基板B1の密着補助層上にスピンコート法により塗布し、石英マスクを介して254nmにてパターン露光を行なった。その後、1%重曹水に10分間浸漬して未露光部の組成物を除去し、幅2cm、長さ5cmの直線状の被めっき層パターンを形成した。
(無電解めっき)
被めっき層パターンを形成した基板B1を、1%硝酸銀水溶液に10分間浸漬してめっき触媒を付与し、水洗した後、無電解銅めっきを行った。
無電解めっきはOPCカッパーT(奥野製薬工業(株)製)用い、30℃の無電解めっき液に20分浸漬させることで銅皮膜を形成した。この時、無電解めっき液に投入し、5分処理後、および10分処理後のめっき析出の状態を目視で観察した。
【0271】
〔金属パターンの評価とその結果〕
得られた金属パターン材料を以下のように評価した。結果を下記表2に示す。
1.碁盤目剥離試験
得られためっき膜を実施例1と同様にして碁盤目剥離試験(JIS K5600)にて、2回連続して剥離試験を行ない、以下の基準にて評価した。なお、95目以上の残存で実用上使用できるレベルである。
◎:100目中、98目以上の残存
○:95目以上の残存
×:94目以下の残存
2.耐湿熱性試験
得られためっき膜を75℃95RH%で2.5週間保存経時させて、同様の碁盤目剥離試験(JIS K5600)にて、100目剥離試験を行ない、以下の基準にて評価した。なお、95目以上の残存で実用上使用できるレベルである。
◎:100目中、99目以上の残存
○:98目以上の残存
△:95目以上の残存
×:94目以下の残存
3.めっき析出性の評価
前記無電解めっき液に5分間浸漬後、および10分浸漬後目視で銅膜が形成しているかを確認した。
○:5分浸漬後、目視で銅色になっている(銅膜が形成されている状態を示す)
×:5分浸漬では、黒色(銅膜が未形成である状態を示す)だが10分浸漬後は目視で銅色になっている
【0272】
【表2】

【0273】
上記表2に明らかなように、本発明に係る実施例9〜11の被めっき層形成用組成物により形成された金属パターン材料は、基板と金属膜との密着性に優れていることがわかる。なお、実施例9〜11より、本発明における新規ポリマーである特定ポリマーF、G及びHを用いた場合には、優れた高温高湿経時後の基板と金属膜との密着性が得られることがわかる。なお、既述の特定ポリマーA〜Dを用いた場合でも、実施例1と同様に、無電解めっき液への浸漬時間を10分間とすることで、均一な銅膜が形成されることが確認されているが、特定ポリマーF、G及びHでは、無電解めっき液への浸漬が5分間程度で金属膜の析出が確認されることから、新規な構造を有するこれら特定ポリマーでは、無電解めっき効率が向上し、より短時間で金属膜画像形成されることが確認された。
【0274】
[合成例10:特定ポリマーJの合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド6gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、モノマーM:10.3g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.0g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)6.5g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド7g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド35gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.1g、トリエチルアミン53gを加え、室温で5時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液52g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーJ(重量平均分子量4.5万)を13g得た。得られた特定ポリマーJの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーJの酸価は4.8mmol/gであった。
【0275】
得られたポリマーJについて、ポリマーFと同様にIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるメタクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが重合性基含有ユニットに相当するピークが6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(8H分)にブロードに観察され、にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=25:28:47(mol比)であることが分かった。
【0276】
[合成例11:特定ポリマーKの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:12.4g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.03g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)5.76g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド7.4g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド37gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.1g、1,8−ジアザビシクロウンデセン53.3gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液52g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーK(重量平均分子量3.2万)を10g得た。得られた特定ポリマーKの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーKの酸価は4.2mmol/gであった。
得られた特定ポリマーKについて、特定ポリマーJと同じ同定方法で解析を行ったところ、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=29:30:41(mol比)であることが分かった。
【0277】
[合成例12:特定ポリマーLの合成]
1Lの三口フラスコに酢酸エチル300mL、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30g、ピリジン19.8gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ2−ブロモイソ酪酸ブロミド57gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mL追加して反応を停止させた。その後、酢エチ層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥し酢酸エチルを留去し、カラムクロマトグラフィーにてモノマーを精製し25g得た。
【0278】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド28gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、上記で合成したモノマー:20.9g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)5.0g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)8.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.49gのN,N−ジメチルアセトアミド11.5g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド173gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.13g、1,8−ジアザビシクロウンデセン66.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液65g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーL(重量平均分子量6.2万)を20g得た。得られた特定ポリマーLの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーLの酸価は3.2mmol/gであった。
【0279】
得られたポリマーLについて、特定ポリマーFと同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるメタクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが重合性基含有ユニットに相当するピークが6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−6.0ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(8H分)にブロードに観察され、にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=31:32:37(mol比)であることが分かった。
【0280】
[合成例13:特定ポリマーMの合成]
1Lの三口フラスコに酢酸エチル300mL、2−ヒドロキシエチルアクリレート28g、ピリジン19.8gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ2−ブロモイソ酪酸ブロミド57gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mL追加して反応を停止させた。その後、酢エチ層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥し酢酸エチルを留去し、カラムクロマトグラフィーにてモノマーを精製し20g得た。
【0281】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド11gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、上記で合成したモノマー:8.3g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.0g、下記構造のモノマー21.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド11g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド57gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.07g、1,8−ジアザビシクロウンデセン53.3gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液52g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、下記構造の特定ポリマーM(重量平均分子量3.5万)を22g得た。得られた特定ポリマーMの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーMの酸価は3.5mmol/gであった。
【0282】
【化38】

【0283】
得られたポリマーMについて、ポリマーFと同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるメタクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとして上記構造のモノマーに由来するユニットが導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−6.0ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(7H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=21:29:50(mol比)であることが分かった。
【0284】
[合成例14:特定ポリマーNの合成]
1Lの三口フラスコに酢酸エチル500mL、p−クロロメチル−スチレン50gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ2−ブロモイソ酪酸57gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させ、更に、ピリジンを28g加え、50℃で3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mL追加して反応を停止させた。その後、酢エチ層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥し酢酸エチルを留去し、カラムクロマトグラフィーにてモノマーを精製し30g得た。
【0285】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド5gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、上記で合成したモノマー:6.8g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)2.4g、メタクリル酸5.2g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.24gのN,N−ジメチルアセトアミド5g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド24gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.04g、1,8−ジアザビシクロウンデセン32gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液35g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーN(重量平均分子量2.5万)を8g得た。得られた特定ポリマーNの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーNの酸価は4.9mmol/gであった。
【0286】
得られたポリマーNについてポリマーFと同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるメタクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてメタクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが3.0−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが6.8−7.3ppm(4H分)、5.5−5.2ppm(2H分)、3.0−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが3.0−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=20:30:50(mol比)であることが分かった。
【0287】
[合成例15:特定ポリマーOの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド10gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、モノマーF:10.6g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.0g、ビニル安息香酸14.8g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド10g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド49gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.07g、1,8−ジアザビシクロウンデセン53gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液55g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーO(重量平均分子量2.9万)を20g得た。得られた特定ポリマーOの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーOの酸価は3.7mmol/gであった。
【0288】
得られたポリマーOについてポリマーFと同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるメタクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてビニル安息香酸が導入されていることが分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが3.0−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.8−8.1ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.3−3.5ppm(2H分)、3.0−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが7.4−6.9ppm(4H分)、3.0−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=20:28:52(mol比)であることが分かった。
【0289】
〔実施例12〜17〕
実施例9において、被めっき層形成用組成物の調製に、前記合成法で得られた特定ポリマーJ〜特定ポリマーOを用いた他は、実施例9と同様にして、被めっき層形成用組成物を得て、実施例9と同様にして実施例12〜実施例17の被めっき層パターンを形成した。
1.現像性の評価
実施例9と同様の手法で密着補助層上に被めっき層形成用組成物を塗布・乾燥した後にパターン露光を行なった。その後、1質量%重曹水に10分浸漬しパターン形状を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表3に示す。
○:パターンが目視で確認できる
×:現像できずにパターンが目視で確認できない
【0290】
2.めっき析出性の評価
得られた被めっき層パターンに対し、実施例9と同様の手法で、1%硝酸銀水溶液に10分間浸漬してめっき触媒を付与し、水洗した後、同様の無電解めっき液を用いて、10分間浸漬し、目視で観察し、以下の基準で、銅膜が形成しているかを確認した。結果を下記表2に示す。
○:目視で銅色になっている(銅膜が形成されている状態を示す)
×:目視で黒色になっている(銅膜が未形成である状態を示す)
【0291】
【表3】

【0292】
表2より、本発明の特定ポリマーを用いて得られた被めっき層形成用組成物は、現像性が良好でパターン形成性に優れ、且つ、めっき受容性が良好であることがわかる。
【0293】
[合成例16:特定ポリマーPの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド11gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記で得たモノマーF:26.4g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.7g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)2.2g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド11g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド55gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、DBU50gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーP(重量平均分子量3.6万)を17g得た。得られた特定ポリマーPの酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーPの酸価は1.3mmol/gであった。
【0294】
[合成例17:特定ポリマーQの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド10gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記で得たモノマーF:21.1g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.7g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)3.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド10g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド49gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、DBU50gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液50g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーQ(重量平均分子量3.8万)を20g得た。得られた特定ポリマーQの酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーQの酸価は2.0mmol/gであった。
【0295】
[合成例18:特定ポリマーRの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド7gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記で得たモノマーF:12.2g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)2.7g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)8.2g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド11g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド55gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、DBU 65gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液70g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーR(重量平均分子量4.2万)を14g得た。得られた特定ポリマーRの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーRの酸価は6.3mmol/gであった。
【0296】
[合成例19:特定ポリマーSの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド7gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記で得たモノマーF:7.9g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.4g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)8.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド11g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド55gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、DBU60gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液60g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーS(重量平均分子量4.5万)を10g得た。得られた特定ポリマーSの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーSの酸価は7.7mmol/gであった。
【0297】
〔実施例18〜21〕
実施例9において、被めっき層形成用組成物の調製に、特定ポリマーP〜特定ポリマーSを用いた他は、実施例9と同様にして、被めっき層形成用組成物を得て、実施例9と同様にして実施例18〜実施例21の被めっき層パターンを形成した。また、対照例として、実施例9で用いた特定ポリマーFによる同様の評価結果を併記した。
1.現像性の評価
実施例9と同様の手法で密着補助層上に被めっき層形成用組成物を塗布・乾燥した後にパターン露光を行なった。その後、1質量%重曹水に浸漬しパターン形状を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表4に示す。
○:浸漬時間10分以内にパターンが目視で確認できる
△:浸漬時間10分以上20分未満にパターンが目視で確認できる
×:20分以上の浸漬でもパターンが目視で確認できない
【0298】
2.耐湿熱性試験
得られためっき膜を70℃95RH%で2.5週間保存経時させて、同様の碁盤目剥離試験(JIS K5600)にて、100目剥離試験を行ない、以下の基準にて評価した。結果を下記表4に示す。
○:100目中、98目以上の残存
△:100目中、95目以上の残存
×:100目中、94目以下の残存
3.めっき析出性の評価
得られた被めっき層パターンに対し、実施例9と同様の手法で、1%硝酸銀水溶液に10分間浸漬してめっき触媒を付与し、水洗した後、同様の無電解めっき液を用いて、10分間浸漬し、目視で観察し、以下の基準で、銅膜が形成しているかを確認した。結果を下記表2に示す。
○:目視で銅色になっている(銅膜が形成されている状態を示す)
×:目視で黒色になっている(銅膜が未形成である状態を示す)
【0299】
【表4】

【0300】
表4より、本発明の特定ポリマーを用いて得られた被めっき層形成用組成物は、特定ポリマーの酸化を適切な範囲に維持することで、現像性、耐湿熱性、及び、めっき受容性の一層の向上が達成されることがわかる。
【0301】
[合成例20:特定ポリマーTの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド11gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーF:10.6g、アクリル酸2−(2−エトシキエトキシ)エチル 15.1g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)5.8g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド11g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド50gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.08g、1,8−ジアザビシクロウンデセン48gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液50g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、相互作用性基として、ニトリル基に変えてエーテル基を有する特定ポリマーT(重量平均分子量4.3万)を18g得た。得られた特定ポリマーTの酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーTの酸価は3.0mmol/gであった。
〔実施例22〕
得られた特定ポリマーTを用いて、実施例9と同様にして、パターン状の非めっき層を形成し、同様にして評価したところ、結果は、碁盤目剥離試験「○」、耐熱性試験「○」、めっき析出性「○」であり、相互作用性基としてニトリル基を有するものに比較し、碁盤目剥離試験はやや低いものの、いずれの評価結果も、実用上十分なレベルであった。
【0302】
[合成例21:特定ポリマーUの合成]
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド9gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーF:13.7g、2−シアノエチルアクリレート 6.5g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)6.9g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド11g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド50gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.08g、1,8−ジアザビシクロウンデセン60gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液50g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーU(重量平均分子量4.9万)を15g得た。得られた特定ポリマーUの酸価を、合成例7と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマーUの酸価は4.0mmol/gであった。
この合成例では、特定ポリマーFの合成において、アクリロニトリルをシアノエチルアクリレートに変えた他は、同様の方法で合成することで、ニトリルユニットが(メタ)アクリロニトリルである、ほぼ同酸価のポリマーを得たものである。
【0303】
〔実施例23〕
1.めっき触媒吸着性の評価
得られた特定ポリマーUを実施例9と同様の手法で塗布・全面露光・現像し、1%硝酸銀水溶液に10分浸漬させて、銀吸着膜を得た。得られた銀吸着膜に対し、蛍光X線分析装置((株)リガク製)を用いてXRFを行った。検量線は既知量が塗布された銀分散ゼラチンで作成した。銀吸着量を解析したところ、特定ポリマーUの銀吸着量は0.5g/mであった。
同様の評価を、実施例9で用いた特定ポリマーFで行ったところ、銀吸着量は0.7g/mであり、ニトリルユニット〔ユニット(B)〕として、メタクリロニトリル基由来のユニットを有する特定ポリマーFでは、単位重量当たりのニトリル量が増え、その結果、等量のポリマーを用いた場合、この構造のユニット(B)を有しない場合に比較して、めっき触媒の吸着量が増加することが確認された。
【0304】
[合成例22:特定ポリマー(A−2)の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド10gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、下記構造のモノマーM:6.61g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)9.01g、脂環式カルボン酸を有するモノマーであるHOA−HH(下記構造、共栄社化学(株)製)15.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.32gのN,N−ジメチルアセトアミド10g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド51gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0305】
【化39】

【0306】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.06g、トリエチルアミン24.26gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70wt%メタンスルホン酸水溶液29g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマー(A−2)(重量平均分子量4.1万)を18g得た。得られた特定ポリマー(A−2)の酸価を電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマー(A−2)の酸価は2.0mmol/gであった。
【0307】
得られたポリマー(A−2)の同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるシアノエチルアクリレートがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてHOA−HHが導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが4.3−4.05ppm(2H分)、2.9−2.8ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが6.4−6.3ppm(1H分)、6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−6.0ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが4.4−4.0ppm(4H分)、3.6−3.8ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(11H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=19:40:41(mol比)であることが分かった。
【0308】
[合成例23:特定ポリマー(B1−2)の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド18gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)12.5g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)22.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド91gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0309】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、トリエチルアミン110.2gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液150g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマー(B1−2)(重量平均分子量9.3)を23g得た。得られた特定ポリマー(B1−2)の酸価を、合成例22と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマー(B1−2の酸価は6.2mmol/gであった。
【0310】
得られたポリマー(B1−2)の同定をポリマー(A−2)と同様の手法でIR測定により行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるシアノエチルアクリレートがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが4.3−4.05ppm(2H分)、2.9−2.8ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが6.4−6.3ppm(1H分)、6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−6.0ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=17:23:60(mol比)であることが分かった。
【0311】
[合成例24:特定ポリマー(B2−2)の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)20.5g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)16.1g、V−65(和光純薬工業(株)製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド91gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0312】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、トリエチルアミン79gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液112g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマー(B2−2)(重量平均分子量7.3万)を23g得た。得られた特定ポリマー(B2−2)の酸価を、合成例22と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマー(B2−2)の酸価は4.1mmol/gであった。
【0313】
得られたポリマー(B2−2)について、ポリマー(B1−2)と同様の手法で解析を行ったところ、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=19:34:47(mol比)のポリマーであることがわかった。
【0314】
[合成例25:特定ポリマー(B3−2)の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド22gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)13g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)11.5g、V−65(和光純薬工業(株)製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド22g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド109gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0315】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.17g、トリエチルアミン54gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液75g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマー(B3−2)(重量平均分子量8.1万)を34g得た。得られた特定ポリマー(B3−2)の酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマー(B3−2)の酸価は3.4mmol/gであった。
得られたポリマー(B3−2)について、ポリマー(B1−1)と同様の手法で解析を行ったところ、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=26:35:39(mol比)のポリマーであることがわかった。
【0316】
[合成例26:特定ポリマー(C−2)の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド28gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:13.3g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)4.0g、アロニックスM5300(下記構造:東亞合成製)70g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.626gのN,N−ジメチルアセトアミド28g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド141gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0317】
【化40】

【0318】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.11g、トリエチルアミン75gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液98g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマー(C−2)(重量平均分子量3.5)を30g得た。得られた特定ポリマー(C−2)の酸価を、合成例22と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマー(C−2)の酸価は2.9mmol/gであった。
【0319】
得られたポリマー(C−2)について、ポリマー(A−2)と同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるシアノエチルアクリレートがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアロニックスM5300が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが4.3−4.05ppm(2H分)、2.9−2.8ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが6.4−6.3ppm(1H分)、6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−6.0ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが4.0−3.8ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(19H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=19:10:71(mol比)であることが分かった。
【0320】
[合成例27:特定ポリマー(D−2)の合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド13.4gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記モノマーM:13.22g、3−シアノプロピルアクリレート(東京化成工業(株)製)17.80g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)9.7g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.63gのN,N−ジメチルアセトアミド13g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド67gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0321】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.11g、トリエチルアミン52.6gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液72g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマー(D−2)(重量平均分子量5.6万)を20g得た。得られた特定ポリマー(D−2)の酸価を、合成例22と同様の手法で測定したところ、この特定ポリマー(D−2)の酸価は3.8mmol/gであった。
【0322】
得られたポリマー(D−2)についてポリマー(A−2)と同様の手法でIR測定による解析を行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるシアノプロピルアクリレートがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが4.3−4.05ppm(2H分)、2.9−2.8ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが6.4−6.3ppm(1H分)、6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−6.0ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=20:36:44(mol比)であることが分かった。
【0323】
〔実施例24〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマー(A−2):0.2g、炭酸ナトリウム:0.04g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0324】
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、密着補助層として9質量%のABS樹脂(Aldrich社製)のシクロヘキサン溶液をスピンコート法(条件:250rpmで5秒、その後、750rpmで20秒)にて塗布し、乾燥して基板A1´を得た。
【0325】
[被めっき層の形成]
調製された被めっき層形成用組成物を、前記基板A1´の密着補助層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。
その後、被めっき層形成用組成物に対し、UV露光機(型番:(株)三永電機製作所製 型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cmの照射パワー(ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、フォトマスクを通じて300秒間、パターン露光を行った。
露光後の基板を、1質量%NaCO水溶液中に5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、パターン状の被めっき層を有する基板A2´を得た。
【0326】
[めっき触媒の付与]
被めっき層を有する基板A2´を、10質量%硝酸銀水溶液に、10分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
【0327】
[無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与された被めっき層を有する基板A2´に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、26℃で10分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.1μmであった。
【0328】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 774g
・ATSアドカッパーIW−A(奥野製薬工業(株)製) 45mL
・ATSアドカッパーIW−M(奥野製薬工業(株)製) 72mL
・ATSアドカッパーIW−C(奥野製薬工業(株)製) 9mL
・NaOH 1.98g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
【0329】
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
これにより、実施例24の金属パターン材料を得た。
【0330】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0331】
(密着性評価)
実施例24で得られためっき膜に対して、JIS K5600に準拠して碁盤目剥離試験(クロスカット試験)にて、100マス剥離試験を行なったところ、100目中剥離は0目であり、1目の剥離も見られなかった。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.68kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を70℃95RH%で2.5週間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中1目の剥離も見られなかった。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中16目の剥離がみられた。
【0332】
〔実施例25〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマー(B1−2):0.2g、炭酸ナトリウム:0.057g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0333】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例25の金属パターン材料を得た。
【0334】
(密着性評価)
実施例25で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.78kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中10目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中11目の剥離がみられた。
【0335】
〔実施例26〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマー(B2−2):0.2g、炭酸ナトリウム:0.037g、水1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0336】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例25と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例26の金属パターン材料を得た。
【0337】
(密着性評価)
実施例26で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.79kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中9目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中8目の剥離がみられた。
【0338】
〔実施例27〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマー(B3−2):0.2g、炭酸ナトリウム:0.04g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0339】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例27の金属パターン材料を得た。
【0340】
(密着性評価)
実施例27で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.80kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
【0341】
〔実施例28〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマー(C−2):0.2g、炭酸ナトリウム:0.03g、水:1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0342】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例28の金属パターン材料を得た。
【0343】
(密着性評価)
実施例28で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.6kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を70℃95RH%で3週間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中18目の剥離がみられた。
【0344】
〔実施例29〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマー(D−2):0.2g、炭酸水素ナトリウム:0.062g、水1.5g、及びアセトニトリル:0.3gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0345】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例25と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例29の金属パターン材料を得た。
【0346】
(密着性評価)
実施例29で得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜に対して、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフ)を用いて、5mm幅、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.79kN/mであった。
更に、得られためっき膜(金属パターン材料)を60℃85RH%で10日間保存した後、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中3目の剥離がみられた。
加えて、得られためっき膜(金属パターン材料)を水に1日浸漬し、上記と同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中4目の剥離がみられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーを含有する被めっき層形成用組成物。
【請求項2】
前記めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーが、下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体である請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【化1】


(上記式(A)〜(C)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。)
【請求項3】
前記式(B)で表されるユニットにおいて、Wがシアノ基又はエーテル基である請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項4】
前記式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基である請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項5】
前記式(B)で表されるユニットが下記式(B−1)で表されるユニットであり、且つ、前記式(C)で表されるユニットが下記式(C−1)で表されるユニットである請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物。
【化2】


(上記式(B−1)〜(C−1)中、R、R及びLは、前記式(B)及び(C)におけるのと同義である。)
【請求項6】
前記式(A)で表されるユニットが、下記(A−0)で表されるユニットから誘導されたユニットである請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物。
【化3】


(上記式(A−0)中、A、Bのいずれか一方は水素原子であり、他方はハロゲン原子、スルホン酸エステル基、エーテル基、又はチオエーテル基を表す。R〜R、Z、及びLは、夫々前記式(A)におけるのと同義である。)
【請求項7】
前記式(A)で表されるユニットが、水酸基を有するユニットとイソシアネート基を有するオレフィン化合物との反応により誘導されたユニットであるか、または、イソシアネート基を有するユニットと水酸基を有するオレフィン化合物との反応により誘導されたユニットである請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項8】
前記式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びLが単結合である請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項9】
前記式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、LのVとの連結部に4員〜8員の環構造を有する請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項10】
前記式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子である請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項11】
前記ポリマーのイオン性極性価が1.5mmol/g〜7.0mmol/gの範囲である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項12】
基板上に、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物からなる被めっき層形成用組成物層を有する積層体。
【請求項13】
(1)基板上に、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対してパターン状にエネルギーを付与して、エネルギー付与領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、
(2)基板上の該被めっき層形成用組成物のうちエネルギーの未付与領域を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、
(3)該パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(4)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する金属パターン材料の作製方法。
【請求項14】
前記基板上への被めっき層形成用組成物の接触を、基板上に前記被めっき層形成用組成物を含む塗布液を塗布することにより行う請求項13記載の金属パターン材料の作製方法。
【請求項15】
前記基板上に、ラテックスからなる水分散樹脂組成物を塗布することにより形成された密着補助層を有する請求項13又は請求項14に記載の金属パターン材料の作製方法。
【請求項16】
下記式(A)で表されるユニット、下記式(B−1)で表されるユニット及び下記(C−1)で表されるユニットを含むポリマー。
【化4】


(上記式(A)、式(B−1)及び式(C−1)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y、及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)

【公開番号】特開2010−248464(P2010−248464A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223220(P2009−223220)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】