説明

複合シール材

【課題】真空シール性能、耐プラズマ性、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持ち、また、長期にわたり真空シール性能が低下することなく、使用時に、高荷重下でも、金属パーティクルが発生することがない複合シール材を提供する。
【解決手段】シール溝に装着した際に、シール溝の一方の側壁側に位置する第1のシール部材と、シール溝に装着した際に、シール溝の他方の側壁側に位置する第2のシール部材とを備え、第1のシール部材が、弾性部材から構成され、第2のシール部材が、第1のシール部材よりも硬質の材料から構成された複合シール材であって、第2のシール部材が、第1のシール部材と連結する連結部と、シール溝の開口部側に位置し、第1のシール部材から離反する方向へ、連結部から延出する開口部側延出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空、超真空状態で使用される複合シール材に関し、例えば、ドライエッチング装置やCVD装置などの半導体製造装置に使用される複合シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業の発達に伴い、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)などの電子部品の材料となる半導体の製造技術が、特に、パーソナルコンピュータなどのように高精細化、薄型化などに伴って、著しく進歩している。
【0003】
このため、半導体製造装置に使用される部材に対する要求が更に厳しくなってきており、その要求も様々なものになってきている。
例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置に使用されるシール材は、基本的な性能として真空シール性能が必要である。そして、使用される装置やシール材の装着個所によっては、耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能を併せ持つことが要求される。
【0004】
従来、このような真空シール性能と耐プラズマ性、さらには耐腐食ガス性が求められるシール部材として、流体の影響を受けにくいフッ素ゴムが使用されてきた。
しかし、環境が厳しくなるにつれ、フッ素ゴムでも、耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能が不十分で、真空シール性が低下することになり、その結果、新しいシール部材が求められるようになってきている。
【0005】
このため、従来、このような真空シール性能と耐プラズマ性、さらには耐腐食ガス性が求められるシール部材として、本出願人は、既に、特許文献1(国際公開WO2009/038022号公報)、特許文献2(意匠登録第1349982号公報)、特許文献3(意匠登録第1349983号公報)において、図16に示したような、複合シール材100を提案している。
【0006】
すなわち、この複合シール材100は、図16に示したように、例えば、フッ素ゴムからなるゴム製の第1のシール部材102と、それより硬質の材料であり、耐プラズマ性や耐腐食ガス性が良好な、例えば、フッ素樹脂からなる合成樹脂製の第2のシール部材104とから構成される。
【0007】
そして、第1のシール部材102は、環状のシール本体106を備えており、このシール本体106から、第2のシール部材104側に突設された凸部108を備えている。さらに、この凸部108の軸方向の中間部から、第2のシール部材104側にさらに突設された嵌合部110を備えている。
【0008】
一方、第2のシール部材104は、軸方向の中間部に、第1のシール部材102の嵌合部110と略相補的な形状の被嵌合凹部112を備えているとともに、軸方向の両端部に屈曲部114を備えている。
【0009】
そして、第1のシール部材102の凸部108を、第2のシール部材104の被嵌合凹部112に嵌合するとともに、第2のシール部材104の屈曲部114を、第1のシール部材102のシール本体106と凸部108との間に形成される段差部116に当接した状態で、第1のシール部材102と第2のシール部材104とを連結して一体化されるように構成されている。
【0010】
そして、シール溝118の一方の側壁120の側(例えば、大気側)に、第1のシール部材102を配置し、例えば、エッチングガスやプラズマに曝される他方の側壁122の側に、第2のシール部材104を配置している。
【0011】
これにより、第2のシール部材104によって、エッチングガスやプラズマの侵入を防止し、第1のシール部材102の劣化を防止するように構成されている。
このように構成される従来の複合シール材100を、シール溝118に装着すると、シール溝118の一方の側壁120の側に配置されるゴム製の第1のシール部材102により、真空シール性が確保される。また、シール溝118の他方の側壁122の側に配置される合成樹脂製の第2のシール部材104により、第1のシール部材102では十分に発揮することができない耐プラズマ性や耐腐食ガス性が確保されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2009/038022号公報
【特許文献2】意匠登録第1349982号公報
【特許文献3】意匠登録第1349983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図16に示したような従来の複合シール材100は、圧縮時において、図17の部分拡大断面図に示したような状態にある。
ところで、一般に、「耐プラズマ性」とは、「耐ラジカル性」(化学的耐性)と「耐イオン性」(物理的耐性)を合わせたものである。
【0014】
例えば、フッ素樹脂からなる合成樹脂製の第2のシール部材104は、例えば、フッ素ゴムからなるゴム製の第1のシール部材102に比べて、耐ラジカル性も耐イオン性も優れているが、耐イオンには下記のようにエッチングされてしまう。
【0015】
すなわち、図17に示したような圧縮状態で、長期にわたって、エッチングガスなどのイオンに曝されると、第2のシール部材104のシール溝118の開口部側の屈曲部114において、相手部材124との接触面(シール面)が、エッチングガスなどのイオンによって、図17の矢印および点線に示したように、浸食(エッチング)されて消耗しまうことになる。
【0016】
第2のシール部材104の消耗は、イオンによってエッチングされることが原因であり、イオンは直進性を有しているので、図17の矢印で示したように、相手部材124の接触面124aと、第2のシール部材104のシール溝118の開口部側の屈曲部114との隙間から侵入し、第2のシール部材104のシール溝118の開口部側の屈曲部114が消耗することになる。
【0017】
従って、このような消耗により耐プラズマ性や耐不測ガス性が充分に発揮できなくなると、エッチングガスやプラズマが、ゴム製の第1のシール部材102に作用して、真空シール性が低下することになる。
【0018】
本発明は、このような現状に鑑み、真空シール性能、耐プラズマ性、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持ち、長期にわたり真空シール性能が低下することなく、しかも、製造が容易で安価に製造できる複合シール材を提供することを目的とする。
【0019】
さらに、本発明は、半導体製造装置に用いられる、シール溝の底部側の幅が、シール溝の開口部側の幅より広くなった形状のシール溝である特殊な形状のシール溝、いわゆる「あり溝」にも適用可能な複合シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の複合シール材は、
シール溝に装着され、
前記シール溝に装着した際に、シール溝の一方の側壁側に位置する第1のシール部材と、
前記シール溝に装着した際に、シール溝の他方の側壁側に位置する第2のシール部材とを備え、
前記第1のシール部材が、弾性部材から構成され、
前記第2のシール部材が、第1のシール部材よりも硬質の材料から構成された複合シール材であって、
前記第2のシール部材が、
前記第1のシール部材と連結する連結部と、
前記シール溝の開口部側に位置し、第1のシール部材から離反する方向へ前記連結部から延出する開口部側延出部と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
このように構成することによって、複合シール材を圧接した際に、第1シール部材と連結された連結部は、第1シール部材の変形に追随して変形し、連結部から延出する開口部側延出部は、相手部材と接触する。
【0022】
その結果、従来の複合シールに比較して、シール溝の開口部側において、第2のシール部材と相手部材との接触面積が大きくなり、エッチングガスなどのイオンによって、第2のシール部材が浸食(エッチング)されても、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【0023】
また、この状態において、第2のシール部材が、第1のシール部材よりも硬質の材料から構成されているので、第2のシール部材側を、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側であるチャンバー側に配置することができる。
【0024】
これによって、第2のシール部材の連結部による圧接、第2のシール部材の開口部側延出部と相手部材との当接により、弾性部材から構成される第1のシール部材の圧接部であるシール本体部が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、真空シール性が低下することがない。
【0025】
従って、この場合に、厳しい環境側に、第1のシール部材よりも硬質の材料から構成される第2のシール部材が位置することになるので、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性に優れる。
【0026】
これにより、真空シール性能、耐プラズマ性、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持ち、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【0027】
また、本発明の複合シール材は、
前記シール溝の底部側に位置し、第1のシール部材から離反する方向へ、前記連結部から延出する底部側延出部を備えることを特徴とする。
【0028】
このように構成することによって、複合シール材を圧接した際に、第1シール部材と連結された連結部は、第1シール部材の変形に追随して変形し、連結部から延出する底部側延出部は、相手部材と接触する。
【0029】
その結果、従来の複合シールに比較して、シール溝の底部側において、第2のシール部材とシール溝の底部との接触面積が大きくなり、弾性部材から構成される第1のシール部材の圧接部であるシール本体部が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、真空シール性が低下することがない。
【0030】
また、本発明の複合シール材は、
複合シール材を圧接した際に、前記連結部が変形し、
前記開口部側延出部または底部側延出部が、軸方向外側に拡がるように付勢されて、相手部材と接触することを特徴とする。
【0031】
このように構成することによって、複合シール材を圧接した際、第2のシール部材と相手部材との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
従って、従来の複合シールに比較して、シール溝の底部側において、第2のシール部材とシール溝の底部との接触面積が大きくなり、エッチングガスなどのイオンによって、第2のシール部材が浸食(エッチング)されても、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【0032】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1のシール部材が、
前記複合シール材を圧接した際に、圧接されてシール性が付与されるシール本体部と、
前記シール本体部の軸方向の略中央部より、第2のシール部材側に延設された第1の結合部とを備え、
前記第2のシール部材が、
前記連結部の軸方向の両端部より、第1のシール部材側に延設された第2の結合部を備え、
前記第1のシール部材の第1の結合部に、第2のシール部材の第2の結合部を嵌合することによって、第1のシール部材と第2のシール部材とが一体化されていることを特徴とする。
【0033】
このように構成することによって、第2のシール部材の第2の結合部に長時間の押圧によってクリープ現象が生じても、第2のシール部材の第2の結合部の間に、弾性部材から構成される第1のシール部材の第1の結合部が位置することになる。
【0034】
これにより、第1のシール部材の第1の結合部の反発力によって、第2のシール部材の第2の結合部が、第1のシール部材の第1の結合部によって常に押し広げられて、長期にわたり腐食性ガス、プラズマなどの侵入を防止する、プラズマシール性を維持することができ、弾性部材から構成される第1のシール部材全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、真空シール性が低下することがない。
【0035】
さらに、第1のシール部材の第1の結合部に、第2のシール部材の第2の結合部を嵌合することによって、第1のシール部材と第2のシール部材とが一体化されているので、第1のシール部材と第2のシール部材が分離するおそれを確実に防止することができる。
【0036】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1のシール部材の軸方向の両端部近傍に結合凹部が形成され、
前記第2のシール部材の第2の結合部が、第1のシール部材の第1の結合凹部に嵌合することによって、第1のシール部材と第2のシール部材とが一体化されていることを特徴とする。
【0037】
このように構成することによって、複合シール材を圧接した際に、第2のシール部材の第2の結合部がいわゆる力点として作用し、第1のシール部材に連結された連結部が支点となって、てこの原理により低荷重で開口部側延出部が、軸方向外側に拡がるようにより付勢されて、相手部材と接触することになり、第2のシール部材と相手部材との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0038】
また同様に、この連結部の変形によって、連結部のシール溝の底部側の端部から、第1のシール部材から離反する方向に延設された底部側延出部が、軸方向外側に拡がるように付勢されて、シール溝の底部と接触することになり、第2のシール部材とシール溝の底部との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0039】
これにより、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
また、このように、第2のシール部材の第2の結合部が、第1のシール部材の第1の結合凹部に嵌合することによって、第1のシール部材と第2のシール部材とが一体化されているので、第1のシール部材と第2のシール部材が分離するおそれを確実に防止することができる。
【0040】
また、本発明の複合シール材は、前記第2のシール部材の連結部が、予め変形しやすいように、軸方向の略中央部が、第1のシール部材から離反する方向に屈曲した形状に形成されていることを特徴とする。
【0041】
このように構成することによって、第2のシール部材の連結部は、軸方向の略中央部が、第1のシール部材から離反する方向に屈曲した形状に形成されているので、複合シール材を圧接した際に、より低荷重で第1のシール部材に連結された連結部が、その軸方向の略中央部が、第1のシール部材から離反する方向に屈曲することになる。
【0042】
その結果、この連結部の変形によって、連結部のシール溝の開口部側の端部から、第1のシール部材から離反する方向に延設された開口部側延出部が、軸方向外側に拡がるようにより付勢されて、相手部材と接触することになり、第2のシール部材と相手部材との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0043】
また、この連結部の変形によって、連結部のシール溝の底部側の端部から、第1のシール部材から離反する方向に延設された底部側延出部が、軸方向外側に拡がるように付勢されて、シール溝の底部と接触することになり、第2のシール部材とシール溝の底部との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0044】
これにより、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
また、本発明の複合シール材は、前記第1のシール部材と第2のシール部材の連結部との間が接着されていることを特徴とする。
【0045】
このように第1のシール部材と第2のシール部材の連結部との間が接着されていれば、第1のシール部材と第2のシール部材とが接着により一体化されているので、第1のシール部材と第2のシール部材が分離するおそれを確実に防止することができる。
【0046】
なお、この場合、「接着」とは、溶接、融着、接着、一体成形など公知の接合方法が採用可能であり、特に限定されるものではないが、接着剤、好ましくは、耐熱性接着剤にて接合一体化するのが望ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明の複合シール材によれば、複合シール材を圧接した際に、第1のシール部材に連結される第2シール部材の連結部が、変形することになる。
その結果、この連結部の変形によって、連結部のシール溝の開口部側の端部から、第1のシール部材から離反する方向に延設された開口部側延出部が、軸方向外側に拡がるように付勢されて、相手部材と接触することになり、第2のシール部材と相手部材との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0048】
従って、従来の複合シールに比較して、シール溝の開口部側において、第2のシール部材と相手部材との接触面積が大きくなり、エッチングガスなどのイオンによって、第2のシール部材が浸食(エッチング)されても、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【0049】
また、複合シール材を圧接した際に、第2シール部材の連結部が、その軸方向の略中央部において変形するので、従来の複合シール材に比較して、低荷重でシール性を確保することができる。
【0050】
また、この状態において、第2のシール部材が、第1のシール部材よりも硬質の材料から構成されているので、第2のシール部材側を、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側であるチャンバー側に配置することができる。
【0051】
これによって、第2のシール部材の連結部による圧接、第2のシール部材の開口部側延出部と相手部材との当接により、弾性部材から構成される第1のシール部材の圧接部であるシール本体部が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、真空シール性が低下することがない。
【0052】
従って、この場合に、厳しい環境側に、第1のシール部材よりも硬質の材料から構成される第2のシール部材が位置することになるので、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性に優れる。
【0053】
これにより、真空シール性能、耐プラズマ性、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持ち、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明の複合シール材をシール溝であるいわゆる「あり溝」に装着した状態の断面図である。
【図2】図2は、本発明の複合シール材をシール溝に装着して圧接する状態を説明する断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図6】図6は、図6は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図8】図8は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図10】図10は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図11】図11は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図12】図12は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図13】図13は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図14】図14は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【図15】図15は、本本発明の別の実施例の複合シール材の平面図である。
【図16】図16は、従来の複合シール材の断面図である。
【図17】図17は、従来の複合シール材の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0056】
図1は、本発明の複合シール材をシール溝であるいわゆる「あり溝」に装着した状態の断面図、図2は、本発明の複合シール材をシール溝に装着して圧接する状態を説明する断面図である。
【0057】
図1〜図2において、10は、全体で本発明の複合シール材を示しており、この複合シール材10は、略環状(この実施例の場合には、円形)であり、略環状のシール溝12に装着されるものである。
【0058】
このシール溝12は、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置に用いられる、シール溝12の底部14側の幅が、シール溝12の開口部16側の幅より広くなった形状のシール溝である特殊な形状のシール溝、いわゆる「あり溝」となっている。
【0059】
そして、複合シール材10は、図1〜図2に示したように、このようなシール溝12に装着した際に、シール溝12の一方の側壁18の側、すなわち、半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側とは反対側(例えば、大気側)に位置する第1のシール部材20を備えている。
【0060】
また、複合シール材10は、シール溝12に装着した際に、シール溝12の他方の側壁22の側、すなわち、半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側に位置する断面略H字形状の第2のシール部材24を備えている。
【0061】
なお、この実施例では、シール溝12の一方の側壁18の側が、外周側に位置し、外周側に第1のシール部材20が位置し、シール溝12の他方の側壁22の側が内周側に位置し、内周側に第2のシール部材24が位置するように構成されている。
【0062】
そして、第1のシール部材20は、複合シール材10を圧接した際に、圧接されて真空シール性が付与されるシール本体部26を備えている。さらに、第1のシール部材20には、このシール本体部26の軸方向の略中央部より、第2のシール部材24の側に延設され、しかも、シール本体部26の軸方向の長さよりも、軸方向の長さが短い第1の結合部28が形成されている。
【0063】
なお、この場合、軸方向は、図1〜図2において、縦方向、すなわち、シール溝12の底部14から相手部材60の方向を意味する(以下においても同様である)。
この第1の結合部28は、シール本体部26の軸方向の長さよりも、軸方向の長さが短く、第2のシール部材24の側に延設された延出部30と、この延出部30よりも軸方向の長さが短く、第2のシール部材24の側に延設された嵌合突部32から構成されている。
【0064】
また、この嵌合突部32には、図1〜図2に示したように、シール本体部26の側の基端部34から、第2のシール部材24の側の先端部31にかけて、その軸方向の長さが漸次大きくなるように、テーパー傾斜面36、36が形成されている。
【0065】
一方、図1〜図2に示したように、第2のシール部材24は、第1のシール部材に連結された連結部38を備えており、この連結部38の軸方向の両端部は、第1のシール部材20の側に延設された一対の第2の結合部40、40が形成されている。
【0066】
この第2の結合部40は、第1のシール部材20の第1の結合部28と、略相補的な形状を有するように形成されている。
すなわち、第2の結合部40は、軸方向内側に位置する内側結合部42と、この内側結合部42よりも軸方向外側に位置する外側結合部44とから構成されている。
【0067】
そして、内側結合部42には、連結部38の側の基端部46から、第1のシール部材20の側の先端部48にかけて、その軸方向の長さが漸次小さくなるように、内側テーパー傾斜面50、50が形成されている。
【0068】
そして、第1のシール部材20の第1の結合部28に、第2のシール部材24の第2の結合部40を嵌合することによって図1〜図2に示したように、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化される。
【0069】
すなわち、第1のシール部材20の嵌合突部32に、第2のシール部材24の内側結合部42を嵌合することによって、図1〜図2に示したように、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化される。
【0070】
そして、第1のシール部材20の第1の結合部28の延出部30と嵌合突部32とで形成される内側段部52に、第2のシール部材24の第2の結合部40の内側結合部42を係合すればよい。
【0071】
これにより、第1のシール部材20の嵌合突部32のテーパー傾斜面36、36と、第2のシール部材24の内側結合部42の内側テーパー傾斜面50、50が相互に係合して第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化されて分離するのが防止されるようになっている。
【0072】
また、この場合、第1のシール部材20のシール本体部26と、第1の結合部28の延出部30とで形成される外側段部54に、第2のシール部材24の第2の結合部40の外側結合部44を係合するようにすればよい。
【0073】
また、図1〜図2に示したように、第2のシール部材24の第2の結合部40の外側結合部44には、連結部38の側の基端部46から、第1のシール部材20の側の先端部41にかけて、その軸方向の長さが漸次大きくなるように、外側テーパー傾斜面56、56が形成されている。
【0074】
そして、第1のシール部材20と第2のシール部材24とを一体化した際に、この外側テーパー傾斜面56、56から、第1のシール部材20のシール本体部26にかけて、なだらかな曲面形状となるように構成されている。
【0075】
なお、この場合、第1のシール部材20と第2のシール部材24とを接合一体化する方法としては、嵌合だけでも良いが、溶接、融着、接着、一体成形など公知の接合方法が採用可能である。
【0076】
さらに、図1〜図2に示したように、第2のシール部材24には、連結部38のシール溝12の開口部16側の端部から、第1のシール部材20から離反する方向に延設された開口部側延出部62が形成され、その開口部側延出部62は、複合シール材10を圧接した際に相手部材60と接触する。
【0077】
この開口部側延出部62には、連結部38の側の基端部46から、第1のシール部材20と離反する方向に、その軸方向の長さが漸次小さくなるように、外側テーパー傾斜面64が形成されている。
【0078】
なお、この開口部側延出部62の外側テーパー傾斜面64と、第2のシール部材24の第2の結合部40の外側結合部44の外側テーパー傾斜面56とは、連続した直線となるようにしても良く、また、異なる角度のテーパー傾斜面とすることもできる。
【0079】
同様に、第2のシール部材24には、連結部38のシール溝12の底部14側の端部から、第1のシール部材20から離反する方向に延設された底部側延出部66が形成され、その底部側延出部66は、複合シール材10を圧接した際にシール溝12の底部14と接触する。
【0080】
この底部側延出部66には、連結部38の側の基端部46から、第1のシール部材20と離反する方向に、その軸方向の長さが漸次小さくなるように、外側テーパー傾斜面68が形成されている。
【0081】
なお、この底部側延出部66の外側テーパー傾斜面68と、第2のシール部材24の第2の結合部40の外側結合部44の外側テーパー傾斜面56とは、連続した直線となるようにしても良く、また、異なる角度のテーパー傾斜面とすることもできる。
【0082】
そして、この場合、第1のシール部材20が、弾性部材から構成され、第2のシール部材24が、第1のシール部材20よりも硬質の材料から構成されている。
この場合、第1のシール部材20が、弾性部材であるゴムから構成されているのが望ましい。なお、この場合、ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムのいずれも使用可能である。
【0083】
このように、第1のシール部材20を、弾性部材であるゴムから構成することによって、このゴムの弾性力によって。複合シール材10を圧接した際に、第1のシール部材20の第1のシール部材20のシール本体部26が、相手部材60によって圧接されて高い真空シール性を付与することができる。
【0084】
また、この場合、第1のシール部材20を構成するゴムが、フッ素ゴムから構成されているのがさらに望ましい。
このようなフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/トリフルオロクロロエチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン系共重合体等の2元系のフッ化ビニリデン系ゴム、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体等の3元系のフッ化ビニリデンゴムやテトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、熱可塑性フッ素ゴムなどが使用可能である。
【0085】
このように第1のシール部材20を構成するゴムが、フッ素ゴムから構成されているので、万一、第1のシール部材20が,腐食性ガス、プラズマに接触したとしても、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、真空シール性が低下することがない。
【0086】
一方、第2のシール部材24が、合成樹脂から構成されているのが望ましく、好ましくは、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂から選択した1種以上の合成樹脂から構成するのが望ましい。
【0087】
このように、第2のシール部材24が、第1のシール部材20よりも硬質の材料であるこのような合成樹脂から構成されているので、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、しかも、弾性部材から構成される第1のシール部材20の全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性が低下することがない。
【0088】
この場合、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリビニリデンフルオライト(PVDF)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)樹脂、ポリビニルフルオライド(PVF)樹脂などを挙げることができ、この中では、耐熱性、耐腐食性ガス、耐プラズマ性などを考慮すれば、PTFEが好ましい。
【0089】
このように構成することによって、複合シール材10を圧接した際に、弾性部材から構成される第1のシール部材20のシール本体部26が圧接されて真空シール性が付与される。また、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化された連結部において、第2のシール部材24の第2の結合部40が圧接されて、プラズマシール性が付与されることになる。
【0090】
また、図2に示したように、複合シール材10を圧接した際に、第2のシール部材24の連結部38は、軸方向の略中央部の肉薄部58が変形する。
その結果、この連結部38の変形によって、連結部38のシール溝12の開口部16側の端部から、第1のシール部材20から離反する方向に延設された開口部側延出部62が、図2の矢印Aで示したように、軸方向外側に拡がるように付勢される。
【0091】
これにより、開口部側延出部62の外側テーパー傾斜面64が、相手部材60と接触することになり、第2のシール部材24と相手部材60との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0092】
従って、従来の複合シールに比較して、のシール溝12の開口部16側において、第2のシール部材24と相手部材60との接触面積が大きくなり、エッチングガスなどのイオンによって、第2のシール部材24が浸食(エッチング)されても、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【0093】
また、この連結部38の変形によって、連結部38のりシール溝12の底部14側の端部から、第1のシール部材20から離反する方向に延設された底部側延出部66が、図2の矢印Aで示したように、軸方向外側に拡がるように付勢される。
付勢される。
【0094】
これにより、底部側延出部66の外側テーパー傾斜面68が、シール溝12の底部14と接触することになり、第2のシール部材24とシール溝12の底部14との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0095】
従って、従来の複合シールに比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
また、複合シール材10を圧接した際に、第2のシール部材24の連結部38は、軸方向の略中央部の肉薄部58が、第1のシール部材20から離反する方向に変形するので、従来の複合シール材10に比較して、低荷重でシール性を確保することができる。
【0096】
また、この状態において、第2のシール部材24が、第1のシール部材20よりも硬質の材料から構成されているので、第2のシール部材24側を、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側であるチャンバー側に配置することができる。
【0097】
これによって、第2のシール部材24の連結部38による圧接、第2のシール部材24の開口部側延出部62と相手部材60との当接により、弾性部材から構成される第1のシール部材20の圧接部であるシール本体部26が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、真空シール性が低下することがない。
【0098】
従って、この場合に、厳しい環境側に、第1のシール部材20よりも硬質の材料から構成される第2のシール部材24が位置することになるので、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性に優れる。
【0099】
これにより、真空シール性能、耐プラズマ性、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持ち、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【0100】
また、第2のシール部材の第2の結合部40に長時間の押圧によってクリープ現象が生じても、第2のシール部材の第2の結合部40の間に、弾性部材から構成される第1のシール部材20の第1の結合部28が位置することになる。
【0101】
これにより、第1のシール部材20の第1の結合部28の反発力によって、第2のシール部材の第2の結合部40が、第1のシール部材20の第1の結合部28によって常に押し広げられて、長期にわたり腐食性ガス、プラズマなどの侵入を防止する、プラズマシール性を維持することができ、弾性部材から構成される第1のシール部材20全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、真空シール性が低下することがない。
【0102】
さらに、第1のシール部材20の第1の結合部28に、第2のシール部材の第2の結合部40を嵌合することによって、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化されているので、第1のシール部材20と第2のシール部材24が分離するおそれを確実に防止することができる。
【0103】
なお、図1に示したように、上記のような効果を考慮した場合、開口部側延出部62、底部側延出部66の突設距離L1は、シール溝12の幅、形状、真空度、締め付け圧力、所望の寿命期間などに応じて変更すれば良く、特に限定されるものではないが、連結部38の肉薄部58の幅L2に対して、開口部側延出部62の厚みをL3とし、L2×1.5<L3、L1<L3×2となるように設定すれば良い。
【0104】
すなわち、L2が厚くなると、連結部ではなく、延出部が撓むことになるため、接触面積を確保できないからである。
また、L1が長すぎると、力が伝わりにくくなるため、L3の2倍より小さく設定してするのが望ましい。
【0105】
なお、この実施例では、シール溝12の一方の側壁18の側が、外周側に位置し、外周側に第1のシール部材20が位置し、シール溝12の他方の側壁22の側が内周側に位置し、内周側に第2のシール部材24が位置するように構成されているが、これとは逆に、シール溝12の外周側において、耐腐食性や耐プラズマ性が要求される環境となる場合は、内周側に第1のシール部材20が位置し、外周側に第2のシール部材24が位置するようにすることも可能である。
【0106】
また、この実施例では、複合シール材10を、略環状で断面が矩形形状のシール溝12に装着するようにしたが、シール溝の形状は何ら限定されるものではなく、図示しないが、シール溝が略矩形形状のシール溝、シール溝の一方の側壁のみが傾斜して開口部が広がるような形状のいわゆる「片あり溝」などにも適用することができる。
【0107】
さらに、この実施例では、複合シール材10は、円形形状の略環状としたが、例えば、図15に示したように、矩形形状の略環状とすることも可能であり、その形状は、シール溝の形状に合わせればよく、特に限定されるものではない。
【実施例2】
【0108】
図3は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
この実施例の複合シール材10は、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0109】
この実施例の複合シール材10では、図3に示したように、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10において、第2のシール部材24のシール溝12の底部14と接触する底部側延出部66を省略し、相手部材60と接触する開口部側延出部62のみを形成するようにしている。
【0110】
この場合でも、開口部側延出部62の外側テーパー傾斜面64が、相手部材60と接触することになり、第2のシール部材24と相手部材60との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0111】
従って、従来の複合シールに比較して、シール溝12の開口部16側において、第2のシール部材24と相手部材60との接触面積が大きくなり、エッチングガスなどのイオンによって、第2のシール部材24が浸食(エッチング)されても、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材を提供することができる。
【0112】
なお、以下のいずれの実施例3〜実施例8においても、同様に、第2のシール部材24のシール溝12の底部14と接触する底部側延出部66を省略し、相手部材60と接触する開口部側延出部62のみを形成することが可能である。
【実施例3】
【0113】
図4は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
この実施例の複合シール材10は、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0114】
図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10では、第2のシール部材24の開口部側延出部62、底部側延出部66の先端部が平坦な形状であったが、この実施例の複合シール材10では、図4に示したように、第2のシール部材24の開口部側延出部62、底部側延出部66の先端部が丸く曲線状に形成されている。
【0115】
すなわち、第2のシール部材24の開口部側延出部62、底部側延出部66の先端部の形状は、特に限定されるものではなく、この実施例の形状以外にも、例えば、図示しないが、三角形状など様々な形状を採用することができる。
【実施例4】
【0116】
図5は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図、図6は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
この実施例の複合シール材10は、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0117】
図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10において、図5に示した実施例では、第2のシール部材24の連結部38の中央部分の肉薄部58が、予め変形しやすいように、第1のシール部材20から離反する方向に屈曲した形状に形成されている。
【0118】
すなわち、この実施例では、肉薄部58の第1のシール部材20側の面を、第1のシール部材20から離反する方向に屈曲した屈曲面70としている。
また、図6に示した実施例では、さらに、肉薄部58の第1のシール部材20側から離反する側の面を、第1のシール部材20から離反する方向に屈曲した屈曲面72としている。
【0119】
このように構成することによって、第2のシール部材24の連結部38が、予め変形しやすいように、軸方向の略中央部の肉薄部58が、第1のシール部材20から離反する方向に屈曲した形状に形成されているので、複合シール材10を圧接した際に、より低荷重で第1のシール部材20に連結された連結部38が、変形しやすくなる。
【0120】
その結果、この連結部38の変形によって、連結部38のシール溝12の開口部16側の端部から、第1のシール部材20から離反する方向に延設された開口部側延出部62が、軸方向外側に拡がるようにより付勢されて、相手部材60と接触することになり、第2のシール部材24と相手部材60との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0121】
また、この連結部38の変形によって、連結部38のりシール溝12の底部14側の端部から、第1のシール部材20から離反する方向に延設された底部側延出部66が、軸方向外側に拡がるように付勢されて、シール溝12の底部14と接触することになり、第2のシール部材24とシール溝12の底部14との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0122】
これにより、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材10を提供することができる。
【実施例5】
【0123】
図7は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図、図8は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図、図9は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【0124】
この実施例の複合シール材10は、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0125】
図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10において、図7に示した実施例では、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58との結合形状を、略台形形状となるように形成している。すなわち、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58とで形成される空間76が、略台形形状となるように形成している。
【0126】
また、図8に示した実施例では、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58との結合形状を、略三角形状となるように形成している。すなわち、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58とで形成される空間76が、略三角形状となるように形成している。
【0127】
さらに、図9に示した実施例では、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58との結合形状を、略アーチ形状となるように形成している。すなわち、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58とで形成される空間76が、略アーチ形状となるように形成している。
【0128】
すなわち、本発明の複合シール材10では、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58との結合形状が、特に限定されるものではないことを示している。
【実施例6】
【0129】
図10は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
この実施例の複合シール材10は、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0130】
図10に示した実施例では、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10において、第1のシール部材20の第1の結合部28の延出部30を省略してするとともに、嵌合突部32のみとしている。そして、この嵌合突部32に相補的な形状となるように、第2のシール部材24の第2の結合部40において、内側結合部42と外側結合部44を一体とした形状の結合部78としている。
【0131】
このように、第1のシール部材20の第1の結合部28に、第2のシール部材24の第2の結合部40を嵌合することによって、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化され、第1のシール部材20と第2のシール部材24が分離するおそれを確実に防止することができれば、その嵌合形状は特に限定されるものではないことを示している。
【実施例7】
【0132】
図11は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
この実施例の複合シール材10は、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0133】
図11に示した実施例では、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10において、第1のシール部材20の軸方向の両端部近傍に結合凹部80、80が形成され、第2のシール部材24の第2の結合部40が、第1のシール部材20の第1の結合凹部80に嵌合することによって、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化されている。
【0134】
すなわち、この実施例の複合シール材10では、第2のシール部材24の第2の結合部40が表面に露出せず、第1のシール部材20の結合凹部80内に嵌合されている構成である。
【0135】
なお、図11の実施例では、第1のシール部材20のシール本体部26の形状が、溝形状、締め付け圧力、使用環境などに応じて、任意に変更可能なことを示している。
このように構成することによって、複合シール材を圧接した際に、第2のシール部材の第2の結合部がいわゆる力点として作用し、第1のシール部材に連結された連結部が支点となって、てこの原理により低荷重で、開口部側延出部62が、軸方向外側に拡がるようにより付勢されて、相手部材と接触することになり、第2のシール部材24と相手部材との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0136】
また同様に、この連結部38の変形によって、連結部38のりシール溝12の底部14側の端部から、第1のシール部材20から離反する方向に延設された底部側延出部66が、軸方向外側に拡がるように付勢されて、シール溝12の底部14と接触することになり、第2のシール部材24とシール溝12の底部14との接触面積(シール圧接面積)が大きくなる。
【0137】
これにより、従来に比較して、格段と寿命が延びることになり、長期にわたり真空シール性能が低下することがない複合シール材10を提供することができる。
また、このように、第2のシール部材24の第2の結合部40が、第1のシール部材20の第1の結合凹部に嵌合することによって、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが一体化されているので、第1のシール部材20と第2のシール部材24が分離するおそれを確実に防止することができる。
【実施例8】
【0138】
図12は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図、図13は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図、図14は、本発明の別の実施例の複合シール材の図1と同様な断面図である。
【0139】
この実施例の複合シール材10は、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0140】
図12〜図14に示した実施例では、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10において、第1のシール部材20の第1の結合部28の延出部30、嵌合突部32を省略するとともに、第2のシール部材24の第2の結合部40の内側結合部42と外側結合部44を省略した構造としている。
【0141】
その代わりに、第1のシール部材20と第2のシール部材24の連結部38との間が接着されている構造である。
また、図13の実施例の複合シール材10では、図3に示した実施例2の複合シール材10と同様に、図1〜図2に示した実施例1の複合シール材10において、第2のシール部材24のシール溝12の底部14と接触する底部側延出部66を省略し、相手部材60と接触する開口部側延出部62のみを形成するようにしている。
【0142】
さらに、図14の実施例の複合シール材10では、図9に示した実施例では、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58との結合形状を、略アーチ形状となるように形成している。すなわち、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58とで形成される空間76が、略アーチ形状となるように形成している。
【0143】
また、図14の実施例の複合シール材10では、図5〜図6の実施例4の複合シール材10と同様に、開口部側延出部62の軸方向内側の面74と、第2のシール部材24の連結部38との肉薄部58との結合部位に溝部82を形成して、第2のシール部材24の連結部38の中央部分の肉薄部58が、予め変形しやすいように、第1のシール部材20から離反する方向に屈曲した形状に形成されている。
【0144】
このように第1のシール部材20と第2のシール部材24の連結部38との間が接着されていれば、第1のシール部材20と第2のシール部材24とが接着により一体化されているので、第1のシール部材20と第2のシール部材24が分離するおそれを確実に防止することができる。
【0145】
なお、この場合、「接着」とは、溶接、融着、接着、一体成形など公知の接合方法が採用可能であり、特に限定されるものではないが、接着剤、好ましくは、耐熱性接着剤にて接合一体化するのが望ましい。
【0146】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体装置に適用した場合について説明したが、本願発明の複合シール材は、その他の環境の厳しい条件で使用するその他の装置のシール部分にも用いることも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、真空、超真空状態で使用される複合シール材に関し、特に、例えば、ドライエッチング装置やCVD装置などの半導体製造装置に適用され、真空シール性能、耐プラズマ性、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持ち、長期にわたり真空シール性能が低下することなく、しかも、製造が容易で安価に製造できる複合シール材である。
【符号の説明】
【0148】
10 複合シール材
12 シール溝
14 底部
16 開口部
18 一方の側壁
20 第1のシール部材
22 他方の側壁
24 第2のシール部材
26 シール本体部
28 第1の結合部
30 延出部
31 先端部
32 嵌合突部
34 基端部
36 テーパー傾斜面
38 連結部
40 第2の結合部
41 先端部
42 内側結合部
44 外側結合部
46 基端部
50 内側テーパー傾斜面
52 内側段部
54 外側段部
56 外側テーパー傾斜面
58 肉薄部
60 相手部材
62 開口部側延出部
64 外側テーパー傾斜面
66 底部側延出部
68 外側テーパー傾斜面
70 屈曲面
72 屈曲面
74 面
76 空間
78 結合部
80 結合凹部
82 溝部
100 複合シール材
102 第1のシール部材
104 第2のシール部材
106 シール本体
108 凸部
110 嵌合部
112 被嵌合凹部
114 屈曲部
116 段差部
118 シール溝
120 一方の側壁
122 他方の側壁
124 相手部材
124a接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール溝に装着され、
前記シール溝に装着した際に、シール溝の一方の側壁側に位置する第1のシール部材と、
前記シール溝に装着した際に、シール溝の他方の側壁側に位置する第2のシール部材とを備え、
前記第1のシール部材が、弾性部材から構成され、
前記第2のシール部材が、第1のシール部材よりも硬質の材料から構成された複合シール材であって、
前記第2のシール部材が、
前記第1のシール部材と連結する連結部と、
前記シール溝の開口部側に位置し、第1のシール部材から離反する方向へ前記連結部から延出する開口部側延出部と、
を備えることを特徴とする複合シール材。
【請求項2】
前記シール溝の底部側に位置し、第1のシール部材から離反する方向へ、前記連結部から延出する底部側延出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合シール材。
【請求項3】
前記第1のシール部材が、
前記複合シール材を圧接した際に、圧接されてシール性が付与されるシール本体部と、
前記シール本体部の軸方向の略中央部より、第2のシール部材側に延設された第1の結合部とを備え、
前記第2のシール部材が、
前記連結部の軸方向の両端部より、第1のシール部材側に延設された第2の結合部を備え、
前記第1のシール部材の第1の結合部に、第2のシール部材の第2の結合部を嵌合することによって、第1のシール部材と第2のシール部材とが一体化されていることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の複合シール材。
【請求項4】
前記第1のシール部材の軸方向の両端部近傍に結合凹部が形成され、
前記第2のシール部材の第2の結合部が、第1のシール部材の第1の結合凹部に嵌合することによって、第1のシール部材と第2のシール部材とが一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の複合シール材。
【請求項5】
前記第2のシール部材の連結部は、軸方向の略中央部が、第1のシール部材から離反する方向に屈曲した形状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合シール材。
【請求項6】
前記第1のシール部材と第2のシール部材の連結部との間が接着されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合シール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−137103(P2012−137103A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287651(P2010−287651)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】