説明

触媒化学気相成長装置

【課題】大電流が触媒線に流された場合でも、触媒線又は触媒線と接続された接続端子からの放電を抑制することができる触媒化学気相成長装置を提供すること。
【解決手段】触媒線6、接続端子12、及び電源回路8を有する触媒線発熱回路20を、接地された真空チャンバ3に対して電気的にフローティング状態となるように設ける。仮に触媒線発熱回路20の電位がグランド電位であると、触媒線6に電力が印加される際に、触媒線6又は接続端子12から、真空チャンバ3の外壁内面等に向けて放電が発生してしまうことが懸念される。しかしながら、触媒線発熱回路20はフローティング状態であるので、その電位がグランド電位となることはなく、電源回路8により大電流が触媒線6に流された場合でも、触媒線6又は接続端子12からの放電を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒CVD法(CAT−CVD:Catalytic-Chemical Vapor Deposition)により、成膜を行う触媒化学気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒CVD法は、反応容器内に設置された高温の触媒線に反応ガスを供給し、触媒線に接触した反応ガスが活性化あるいは分解されることで生成する堆積種を、基板面内に堆積させる成膜法である。触媒線は反応容器外に設置された電源に接続され、この電源により通電されることで抵抗加熱し高温状態となる(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで、上記触媒線と電源との接続には、通常、接続端子が用いられる。この接続端子と触媒線とが反応容器内で接続され、この接続端子を介して触媒線が通電される。一般的には、触媒線、電源及び接続端子により構成される回路及び反応容器は接地される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−327995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接地された反応容器及び回路は基準電位が共にグランド電位となり等しい。従って反応容器内で触媒線が通電された場合、反応容器と、触媒線又は接続端子との間で放電が発生することが懸念される。成膜する基板が大きくなり、そのために触媒線に加えられる電力が大きくなると、さらに上記放電が発生する可能性が高くなる。この放電により、触媒線の溶断、反応容器の損傷等が引き起こされてしまう。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、大電流が触媒線に流された場合でも、触媒線又は触媒線と接続された接続端子からの放電を抑制することができる触媒化学気相成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る触媒化学気相成長装置は、チャンバと、触媒線発熱回路とを具備する。
前記チャンバは、電気的に接地される。
前記触媒線発熱回路は、触媒線と、接続端子と、電源回路とを有し、前記チャンバに対して電気的にフローティング状態にある。
前記触媒線は前記チャンバ内に設けられ、前記接続端子は前記触媒線に接続される。
前記電源回路は、前記チャンバ内に導入された原料ガスの分解温度に前記触媒線を発熱させるために前記接続端子を介して前記触媒線に電力を印加する。
【0008】
本発明の別の形態に係る触媒化学気相成長装置は、チャンバと、触媒線ユニットと、電源回路と、絶縁トランスとを具備する。
前記チャンバは、電気的に接地される。
前記触媒線ユニットは、前記チャンバ内に設けられた触媒線と、前記触媒線に接続される接続端子とを有し、前記チャンバに対して電気的にフローティング状態にある。
前記電源回路は、前記チャンバ内に導入された原料ガスの分解温度に前記触媒線を発熱させるために前記接続端子を介して前記触媒線に電力を印加する。
前記絶縁トランスは、前記電源回路と前記触媒線ユニットとの間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略構成図であり、触媒化学気相成長装置を側方から見た図である。
【図2】図1に示す触媒化学気相成長装置と90度異なる角度から見た概略構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略的なブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略的な図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る触媒化学気相成長装置は、チャンバと、触媒線発熱回路とを具備する。
前記チャンバは、電気的に接地される。
前記触媒線発熱回路は、触媒線と、接続端子と、電源回路とを有し、前記チャンバに対して電気的にフローティング状態にある。
前記触媒線は前記チャンバ内に設けられ、前記接続端子は前記触媒線に接続される。
前記電源回路は、前記チャンバ内に導入された原料ガスの分解温度に前記触媒線を発熱させるために前記接続端子を介して前記触媒線に電力を印加する。
【0011】
触媒線発熱回路がチャンバに対して電気的にフローティング状態なので、触媒線発熱回路の電位がグランド電位になるということはない。従って、大電流が触媒線に流された場合でも、触媒線又は触媒線と接続された接続端子からの放電を抑制することができる。
【0012】
前記触媒化学気相成長装置は、通信装置と、保護回路とをさらに具備してもよい。
前記通信装置は、制御機器との間で通信する。
前記保護回路は、前記電源回路と前記通信装置との間に接続され、前記電源回路からのサージ電流を遮断する。
これにより、通信装置がサージ電流により破壊されてしまうことが防がれる。
【0013】
前記触媒化学気相成長装置は、前記電源回路と、前記電源回路に電力を供給する外部電源との間に設けられた絶縁トランスをさらに具備してもよい。
【0014】
本発明の別の実施形態に係る触媒化学気相成長装置は、チャンバと、触媒線ユニットと、電源回路と、絶縁トランスとを具備する。
前記チャンバは、電気的に接地される。
前記触媒線ユニットは、前記チャンバ内に設けられた触媒線と、前記触媒線に接続される接続端子とを有し、前記チャンバに対して電気的にフローティング状態にある。
前記電源回路は、前記チャンバ内に導入された原料ガスの分解温度に前記触媒線を発熱させるために前記接続端子を介して前記触媒線に電力を印加する。
前記絶縁トランスは、前記電源回路と前記触媒線ユニットとの間に設けられる。
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
<触媒化学気相成長装置の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略構成図であり、触媒化学気相成長装置を側方から見た図である。図2は、図1に示す触媒化学気相成長装置と90度異なる角度から見た概略構成図である。
【0016】
これらの図に示すように、触媒化学気相成長装置10は、真空チャンバ3を有する。真空チャンバ3は、防着板5により区画された反応室2を内部に有し、反応室2を所定の真空度に真空排気可能な真空ポンプ4が真空チャンバ3に接続されている。
【0017】
真空チャンバ3は、電気的に接地され真空チャンバ3に電荷が溜まるのが防止される。上記の防着板5も真空チャンバ3と同電位(グランド電位)となるように設けられている。
【0018】
真空チャンバ3には、例えばタンタル、タングステン、モリブデン、イリジウム等の高融点金属からなる複数の触媒線6が設置されている。各複数の触媒線6は、防着板5の天面に形成された通し穴(図示せず。)を貫通して、反応室2内を垂直方向(本実施形態では重力方向とする。)に垂下し、反応室2内の下部の領域で垂直方向に折り返されるようにして真空チャンバ3に吊り下げられる。これら複数の触媒線6は、互いに所定の間隔をあけて一直線上に列設される。なお、以下の説明において、複数の触媒線6の列設方向を「X軸方向」、垂直方向を「Z軸方向」、これらに直交する方向を「Y軸方向」と呼ぶものとする。
【0019】
なお、この触媒線6は例えば8ユニット程度設けられるが、図1では説明をわかりやすくするため3ユニットの触媒線6が列設された様子を示している。各触媒線6の両端部は、接続端子12を介して、真空チャンバ3の外部に設置されている電源回路8に接続されている。接続端子12は、例えば真空チャンバ3の隔壁に、図示しない絶縁物を介して、真空チャンバ3と絶縁されるように設けられる。接続端子12は、真空チャンバ3内であって隔壁から離れて設けられていてもよい。
【0020】
電源回路8は、例えば商用電源等の外部電源11に接続されており、触媒線6の両端部に電力を印加することで、触媒線6を反応室2に導入される原料ガス(後述する。)の分解温度に発熱させることが可能である。ここで外部電源11は接地されていないものが用いられる。
【0021】
以後、触媒線6、接続端子12、及び電源回路8を有する回路を触媒線発熱回路20という。触媒線発熱回路20は、電源回路8や接続端子12等で接地されることはなく、また上記したように外部電源11も接地されないので、接地された真空チャンバ3に対して電気的にフローティング状態となる。
【0022】
反応室2の外壁部には、複数のガス導入配管7が設置されている。ガス導入配管7には、原料ガスを噴出可能な複数の原料ガス噴出孔(図示せず。)が設けられており、反応室2に原料ガスを導入可能である。ガス導入配管7は、ガス供給ラインを介して真空チャンバ3の外部に設置された原料ガス供給部9に接続されている。
【0023】
反応室2の内部には、例えば基板Sを保持可能なフレーム状のホルダ1が設けられる。ホルダ1は触媒線6を挟んでY軸方向で対向するように2つ設けられている。基板Sは、例えばディスプレイに用いられるガラス基板である。基板Sの大きさは、一辺が1mより小さいものまたは大きいものなど、様々なタイプがある。ホルダ1は、基板SをX軸とZ軸とがなす平面上に立てた状態で保持可能である。このように保持された基板Sの間の空間には、ガス導入配管7から噴出した原料ガスが導入される。ホルダ1は、基板Sの温度調節を行うためのヒータを内蔵するが、これに限定されず、ホルダ1の近傍にヒータを設けてもよい。ガス導入配管7及びホルダ1も、真空チャンバ3と同電位(グランド電位)となるように設けられる。
【0024】
上記のような触媒化学気相成長装置10では、グランド電位である真空チャンバ3の内面と触媒線6との距離は、典型的には10mm〜120mmの範囲である。また、真空チャンバ3と接続端子12との距離も同様の範囲である。真空チャンバ3と同じグランド電位である防着板5等と触媒線6との距離も同様である。この程度の接近距離であると、仮に触媒線発熱回路20の電位がグランド電位であると、触媒線6に電力が印加される際に、触媒線6又は接続端子12から、真空チャンバ3の外壁内面や防着板5等に向けてアーク放電やグロー放電が発生してしまうことが懸念される。
【0025】
しかしながら、本実施形態の触媒化学気相成長装置10では、触媒線発熱回路20が、真空チャンバ3に対して電気的にフローティング状態なので、触媒線発熱回路20の電位がグランド電位となることはない。従って、電源回路8により大電流が触媒線6に流された場合でも、触媒線6又は接続端子12からの放電を抑制することができる。
【0026】
近年では、液晶ディスプレイの大型化等で、大型の基板を成膜処理することが必要とされている。大型の基板を成膜処理するためには、より大きな電力を触媒線6に印加する必要があり、上記の放電が発生する可能性が高くなる。しかしながら本実施形態の触媒化学気相成長装置10では、放電が抑制されるので、大型の基板を成膜処理する際に有利である。
【0027】
なお、触媒線発熱回路20にスイッチを有する接地回路を設けて、例えば触媒線6に電力が印加されていない時に、触媒線発熱回路20を接地させてもよい。これにより、触媒線発熱回路20で電荷が溜まり電源回路8等に不具合が出てしまうのを抑制することができる。
【0028】
<触媒化学気相成長装置の動作>
以上のように構成された触媒化学気相成長装置10を用いて、次のように触媒化学気相成長法が行われる。
【0029】
まず、真空ポンプ4を作動させて真空チャンバ3の内部を真空排気し、反応室2を所定の真空度(例えば1Pa)に減圧する。
【0030】
次に、電源回路8により両端部間に直流又は交流電力を印加して各触媒線6に電流を供給し、触媒線6を所定温度(例えば2000℃)以上に発熱させる。触媒線6の発熱温度は、原料ガスが熱分解が可能な程度の温度とされる。また、基板Sをヒータにより所定温度(例えば300℃程度)に加熱する。
【0031】
次に、原料ガス供給部9から、ガス導入配管7を介して、反応室2内の互いに対向配置された2枚の基板Sの間の空間に原料ガスを導入する。この原料ガスは、発熱した触媒線6に接触する。これにより、触媒反応もしくは熱分解反応により生成された反応ガスの分解種が基板S上に堆積して成膜される。
【0032】
原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH)ガスと水素(H)の混合ガスを用いて、基板Sの表面にシリコン(Si)膜を成膜する。なお、基板Sの表面に形成する膜は、シラン、水素、アンモニア(NH)を用いて成膜した窒化シリコン膜(SiN)、トリシリルアミン((SiHN)、アンモニア、水素を用いて成膜した窒化シリコン膜、ヘキサメチルジシラザン((CHSiNHSi(CH、略してHMDS)を用いて成膜した窒化シリコン膜、シラン、水素と酸素(O)又は一酸化二窒素(NO)を用いて成膜した酸化シリコン膜(SiO)、シランと正珪酸四エチル(Si(OC、略してTEOS)を用いて成膜した酸化シリコン膜、シラン、水素とホスフィン(PH)又はジボランを用いて成膜したリンドープシリコン膜(n型)やボロンドープシリコン(p型)、シラン、水素とアセチレン又はメタンを用いて成膜した炭化シリコン膜、シラン、水素、ゲルマンを用いて成膜したシリコンゲルマニウム膜、シラン、ヘキサフルオロプロピレンオキサイド(略してHFPO)を用いて成膜したポリテトラフルオロエチレン(「テフロン(登録商標)」)膜等であってもよい。なお、水素ガスを使用した水素処理を行った場合には、シリコン膜の膜中欠陥の終端や自然酸化膜除去という目的を達成できる。また、アンモニアガスを使用した窒化処理を行った場合には、シリコンの窒化を図ることができる。
【0033】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略的なブロック図である。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した触媒化学気相成長装置10における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0034】
本実施形態の触媒化学気相成長装置50は通信装置52を有している。この通信装置52は、電源回路8を制御する制御装置51との間で通信するものである。また、触媒化学気相成長装置50は、通信装置52と電源回路8との間に接続された保護回路53を有している。
【0035】
制御装置51としては、例えばシーケンス制御により、電源回路8のみならず、真空ポンプ4、原料ガス供給部9等も制御するPLC(Programmable Logic Controller)等が用いられる。
【0036】
通信装置52は、制御装置51からの制御信号を受信し、その制御信号を保護回路53を介して電源回路8に出力する。また、電源回路8の動作状態を示す動作信号を電源回路8から受信し、制御装置51にフィードバックする。
【0037】
この動作信号の例としては、以下のようなものもある。例えば、触媒線6が断線した場合、触媒線6の抵抗値は無限大となるが、その状態を示す動作信号が電源回路8から通信装置52に出力される。通信装置52は動作信号を制御装置51に送信し、これを受信した制御装置51は電源回路8による触媒線6への電力印加を停止させる制御信号を通信装置52に送信する。通信装置52は、受信した制御信号を電源回路8に出力し、これにより電源回路8による触媒線6への電力印加が停止される。この他にも動作信号の例として、単に電源回路8のON/OFF動作を示す信号もある。
【0038】
このようにして、電源回路8が制御装置51により制御される。制御装置51と通信装置52との通信方法は、無線でも有線でもよい。通信媒体としては、例えば光や電波等が用いられる。
【0039】
保護回路53は、通信装置52と電源回路8との間を流れる電流を絶縁させながら、通信装置52と電源回路8との間での信号の送受信を可能とするものである。このようなものとしては、例えば絶縁型のDC−DCコンバータ等が用いられる。本実施形態では、エム・システムの直流入力変換器(アナログ形)(形式M2VS)が用いられる。この保護回路53により、フローティング状態にある触媒線発熱回路20からサージ電流が通信装置52に流れ込み、通信装置52が破壊されてしまうことを防止できる。
【0040】
なお、通信装置52は接地されていてもよい。通信装置52が接地されていても、通信装置52と電源回路8との間が保護回路53により絶縁されているので、触媒線発熱回路20はフローティング状態となる。
【0041】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略的な図である。本実施形態の触媒化学気相成長装置100は、外部電源111と電源回路108との間に設けられた絶縁トランス115を有する。
【0042】
外部電源111としては、例えば商用電源等の交流電力を出力するものが用いられ、外部電源111からの交流電力が絶縁トランス115を介して電源回路108に出力される。外部電源111から交流電力を受けた電源回路108は、接続端子112へ電力を印加する。電源回路108から接続端子112へ印加される電力、すなわち電源回路108から出力される電力は、交流でも直流でもよく、またはパルスでもよい。
【0043】
このように本実施形態では、外部電源111と電源回路108との間に絶縁トランス115が設けられる。これにより触媒線106、接続端子112及び電源回路108からなる触媒線発熱回路120が、図示しない真空チャンバに対して電気的にフローティング状態となる。図4では、真空チャンバに対して電気的にフローティング状態となる範囲が破線で示されている。
【0044】
上記したように、図1及び図2に示した第1の実施形態の触媒線発熱回路20は、接地されない外部電源11に接続される。これにより触媒線発熱回路20が、真空チャンバ3に対して電気的にフローティング状態となる。一方本実施形態では外部電源111が接地されても、絶縁トランス115により、触媒線発熱回路120が真空チャンバに対して電気的にフローティング状態となる。従って外部電源111が接地されているか否かにかかわらず、本実施形態の触媒化学気相成長装置100を用いることができる。
【0045】
[第4の実施形態]
図5は、本発明の第4の実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略的な図である。本実施形態の触媒化学気相成長装置200は、触媒線206及び接続端子212を有する触媒線ユニット230を含み、この触媒線ユニット230が図示しない真空チャンバに対して電気的にフローティング状態となる。
【0046】
図5に示すように、一点鎖線で囲まれた触媒線ユニット230と、電源回路208との間に絶縁トランス215が設けられる。電源回路208は外部電源211と接続されている。
【0047】
本実施形態の電源回路208は、交流電力またはパルス電力を出力するものが用いられ、電源回路208からの交流電力が絶縁トランス215を介して触媒線ユニット230に印加される。図5では外部電源211として、例えば商用電源等の交流電力を出力するものが図示されているが、電源回路208に直流電力を出力するものが用いられてもよい。
【0048】
以上のように本実施形態では、触媒線ユニット230と電源回路208とが絶縁トランス215を介して接続されることで、触媒線ユニット230が真空チャンバに対して電気的にフローティング状態となる(図5で示す破線参照)。これにより電源回路208により大電流が触媒線ユニット230に流された場合でも、触媒線206又は接続端子212からの放電を抑制することができる。また本実施形態では、電源回路208や外部電源211を接地させることができ、電源回路208や外部電源211に電荷が溜まるのを防ぐことができる。
【0049】
<変形例>
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更され得る。
【0050】
例えば上記の各実施形態では、触媒線6が反応室2内の下部の領域で垂直方向に折り返されるようにして真空チャンバ3に設けられている。しかしながら、触媒線6が折り返されることなく真空チャンバ3に設けられてもよい。例えば、通し穴が設けられた防着板5と対向する防着板5にも通し穴が形成される。そして、両通し穴を貫通するように触媒線6が設けられ、触媒線6の各端部が、真空チャンバ3の対向する2つの面において接続端子12と接続されてもよい。このような場合でも、触媒線発熱回路20を真空チャンバ3に対してフローティング状態とすることで、触媒線6及び接続端子12からの放電を抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
3…真空チャンバ
6、106、206…触媒線
8、108、208…電源回路
9…原料ガス供給部
10、50、100、200…触媒化学気相成長装置
11、111、211…外部電源
12、112、212…接続端子
20、120…触媒線発熱回路
51…制御装置
52…通信装置
53…保護回路
115、215…絶縁トランス
230…触媒線ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に接地されたチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた触媒線と、前記触媒線に接続される接続端子と、前記チャンバ内に導入された原料ガスの分解温度に前記触媒線を発熱させるために前記接続端子を介して前記触媒線に電力を印加する電源回路とを有し、前記チャンバに対して電気的にフローティング状態にある触媒線発熱回路と
を具備する触媒化学気相成長装置。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒化学気相成長装置であって、
制御機器との間で通信する通信装置と、
前記電源回路と前記通信装置との間に接続され、前記電源回路からのサージ電流を遮断する保護回路と
をさらに具備する触媒化学気相成長装置。
【請求項3】
請求項1に記載の触媒化学気相成長装置であって、
前記電源回路と、前記電源回路に電力を供給する外部電源との間に設けられた絶縁トランスをさらに具備する触媒化学気相成長装置。
【請求項4】
電気的に接地されたチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた触媒線と、前記触媒線に接続される接続端子とを有し、前記チャンバに対して電気的にフローティング状態にある触媒線ユニットと、
前記チャンバ内に導入された原料ガスの分解温度に前記触媒線を発熱させるために前記接続端子を介して前記触媒線に電力を印加する電源回路と、
前記電源回路と前記触媒線ユニットとの間に設けられた絶縁トランスと
を具備する触媒化学気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−82201(P2011−82201A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230652(P2009−230652)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】