説明

試料表面形状検査装置及び試料表面形状検査方法

【課題】試料上にレジスト材料が形成されていても、その表面形状を、ミラー電子プロジェクション式検査装置によって検出可能にするパターン検査技術を提供する。
【解決手段】試料7のレジスト材料表面に照射することでその表面の電気伝導度を上げることのできる波長(160〜250nm)の紫外光を、紫外光源30より試料表面に対して全反射する角度(試料水平方向に対して約10度以下)以下で入射させることにより、試料表面のみを導電性にするよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料(半導体デバイス等)の表面状態を検査する試料表面形状検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコンデバイスの製造ラインでは、工程途中のウェハを検査することが必要不可欠である。工程途中のウェハを検査することで、欠陥を早期に発見し、欠陥の発生原因となるプロセスを特定する判断材料となるからである。検査結果をプロセス条件にフィードバックすれば、欠陥数を低減し、ウェハ1枚から取得できるチップ数、歩留まりを改善することができる。
【0003】
ウェハを検査し欠陥を発見する装置として、主に光学式検査装置と電子線式検査装置が用いられている。光学式検査装置は、原理としては光学顕微鏡であり、異物、パターン欠陥などの形状欠陥を発見することができる。しかし、設計ルールの微細化が進展し、光学式検査装置では検出できない微小な形状欠陥や電気的欠陥が問題となっている。そこで、光学式検査装置では検出できない欠陥も検出することができる電子線式検査装置が注目されており、開発が進められている。
【0004】
電子線式検査装置には、ウェハ表面の像を得る方式として、SEM方式とプロジェクション方式の二方式が実用化されている。
【0005】
SEM方式とは、点状に絞った電子ビームでウェハを走査し、2次電子像を比較検査することにより欠陥を検出する方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、プロジェクション方式とは、平面状に整形した電子ビームをウェハに照射し、反射電子や2次電子、または逆電界によりウェハに照射されずに反射される電子(ミラー電子)を電子レンズによって結像し、その像から欠陥を検出する方式である。この原理のため、通常の電子顕微鏡観察時に電子線照射によって損傷を受ける試料であっても、この方式では電子線が試料に照射されないため、損傷なく観察することが可能となる(例えば、特許文献2参照)。また、特に、ミラー電子プロジェクション式検査装置は、逆電界によりウェハに照射されずに反射されるミラー電子を結像し、ミラー電子像から欠陥を検出する検査装置である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−164451号公報
【特許文献2】特開2003−202217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のミラー電子プロジェクション式検査装置では、下記の技術課題を有する。
【0009】
ミラー電子プロジェクション方式では、試料表面近傍で反射されるミラー電子を用いて結像するため、試料表面に不均一な帯電が生じている場合、その電界によってミラー電子の軌道が曲げられ、本来の試料表面形状を反映した結像が得られなくなる。そこで、この方式で正しい試料表面形状を得るためには、試料表面の不均一帯電を除去する工程(不均一帯電除去)が不可欠となる。この帯電除去のためには、従来、例えば予め試料に電子ビームを照射し、不均一帯電を均一化したり、紫外光(UV)の照射により帯電を除去したりする方式がとられていた。
【0010】
しかしながら、この従来の不均一帯電除去工程では、レジスト材料を表面に被覆した試料の場合、電子線もしくは紫外光照射によってレジスト材料の縮みや膨張などの変形が生じ、これによって試料表面が損傷してしまうという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の点に着目してなされたものであり、試料上にレジスト材料が形成されていても、その表面形状を、ミラー電子プロジェクション式検査装置によって検出可能にする試料表面形状検査技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、レジスト材料表面に照射することでその表面の電気伝導度を上げることのできる波長の紫外光を、試料表面に対して全反射する角度で入射させることにより、試料表面のみを導電性にするよう構成する。
【0013】
本発明では、試料表面に対して全反射する角度で入射させ、かつ、試料表面のみにその電気伝導度を上げることのできる波長(160〜250nm)で紫外光を照射するため、レジスト材料の縮みや膨張などの変形を防ぐことと、試料表面の不均一帯電除去を同時に行うことができる。これによって、ミラー電子プロジェクション式検査装置を用いて正確な試料表面形状の観察が可能となる。ここで、試料表面に全反射条件で紫外光を入射させた場合、試料表面から深さ方向の極薄い領域(およそ波長程度)のみに近接場光が生じ、これによって試料表面のみが導電性となり、これによって表面に局所的に存在する帯電の除去が可能となる。
【0014】
本発明では、試料表面での紫外光の全反射を利用しているため、試料に対して入射させる紫外光の入射角度を全反射条件とする必要がある。全反射される条件は、試料と紫外光の波長で決まるが、試料水平方向に対して約10度以下であるため、紫外光を10度以下の低角度で入射させることにより上記課題は解決できる。
【0015】
以下、本発明の代表的な構成例を列挙する。
【0016】
(1)本発明の試料表面形状検査装置は、試料を載置する試料ステージと、前記試料に対して電子ビームを照射する照射光学系と、前記試料に照射した電子の一部もしくは全てが前記試料の最表面付近で反射されるような電界を発生する手段と、前記電界により反射された電子を結像させて前記電子ビームの照射領域の像を形成する結像光学系と、得られた前記像を画像信号として検出する画像信号検出手段と、得られた前記画像信号を処理して前記試料の表面状態を検査する画像信号処理手段とを備えた試料表面形状検査装置において、波長160nmから250nmの紫外光を試料表面で全反射照射できる光源を有し、前記試料に前記紫外光を照射して前記試料表面の不均一帯電を除去する予備帯電制御手段を具備することを特徴とする。
【0017】
(2)前記(1)の試料表面形状検査装置において、前記光源は、前記紫外光を前記試料の水平方向に対して10度以下の照射角度に設置できる紫外光源で構成されていることを特徴とする。
【0018】
(3)前記(2)の試料表面形状検査装置において、前記紫外光源は、前記紫外光が前記試料に照射される電子ビームの照射領域に照射されるよう設置されていることを特徴とする。
【0019】
(4)前記(1)の試料表面形状検査装置において、前記光源は、前記試料表面の所望の領域を検査する前に、前記所望の領域に異なった角度方向から紫外光を照射できるように、前記試料ステージの移動するX、Y方向のそれぞれに少なくとも1個設置された紫外光源であることを特徴とする。
【0020】
(5)前記(4)の試料表面形状検査装置において、前記X、Y方向のそれぞれに設置される前記紫外光源は、お互いに異なる波長域を有することを特徴とする。
【0021】
(6)本発明の試料表面形状検査方法は、前記(1)の試料表面形状検査装置を用い、前記試料を搭載する前記試料ステージが一方向に連続的に移動している動作条件において、前記試料の検査対象領域に前記紫外光を照射し、前記検査対象領域の欠陥を検査するようにしたことを特徴とする。
【0022】
(7)前記(6)の試料表面形状検査方法において、前記紫外光を前記試料の水平方向に対して10度以下の角度で入射するようにして、前記検査対象領域の欠陥を検査することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、試料上にレジスト材料が形成されていても、その表面形状を、ミラー電子プロジェクション式検査装置によって検出可能にするパターン検査技術を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【0025】
(実施例1)
図1は、本発明の一実施例の構成を示す。本実施例では、試料に特定の波長(160nm〜250nm)の紫外光を照射し、試料表面の不均一帯電を除去する紫外光源を備えた、ミラー電子プロジェクション式欠陥検査装置について説明する。
【0026】
電子光学系カラム91の照射光学系において、電子源1から放出された電子線は、収束レンズ2、アライナ4を通って、ビームセパレータ3により試料(例えば、ウェハ)7に垂直な光軸方向に偏向され、アライナ5を通って対物レンズ6によりウェハ表面に垂直な方向にそろった面状の入射電子線51が形成される。試料室92内のウェハ7には、電子線の加速電圧とほぼ同じ負の電位が試料印加電源9によって印加されている。試料印加電源9は、円孔レンズ電極41とウェハ7の間の電位差を設定できるようになっており、円孔レンズ電極41とウェハ7の間の減速電界を可変できるような構成である。入射電子線51は、円孔レンズ電極41とウェハ7との間で急激に減速されて、ウェハ7の表面に形成されたレジストパターン形状を反映した電界により、試料の直上で向きを変えて反射電子線52となる。
【0027】
電子光学系カラム91の結像光学系において、反射電子線52は、拡大レンズ13、14、絞り12によりシンチレータ15上に結像し、光ファイバー16を通して固体撮像素子(CCD)17でミラー電子像を電子データに変換する。電子データに変換されたミラー電子プロジェクション像は、画像信号処理系93の画像記憶部18に転送され、演算部19で、例えば設計値のレジストパターンとの差異を判定し、試料の表面状態を検査する。その結果を、ディスプレイ20に表示する。この演算部19には、例えばCADナビシステムを用いることで、設計値と実測値との差異を判別してもよい。紫外光源30は、入射電子線51と同一の領域に照射できるように取り付けられており、試料水平方向に対する照射角度10度以下で自由に制御できるようになっている。紫外光源30は、紫外光源制御装置26により紫外光の波長と入射角度が制御される。
【0028】
なお、図中、23は電子源1から放出される電子線を加速するための加速電源、25は対物レンズ6に印加する対物レンズ電源、27は試料ステージ8をX、Y方向に制御するためのステージ制御系、28は電子ビームを制御するビーム制御系、29は検査システムを全体にわたって制御するための検査システム制御系である。
【0029】
この装置で、ウェハ上のホールの形成されたレジスト膜表面形状を観察する場合について、説明する。図2に、レジスト膜表面が不均一帯電していない場合と不均一帯電している場合の断面図を示す。
【0030】
図2(a)は、シリコン基板203上に形成されたシリコン酸化膜202で構成された開口ホール205の表面が帯電していない状態であり、開口ホール205の直上に発生する等電位面201は開口ホール205の間で差はない。
【0031】
図2(a)の場合におけるミラー電子プロジェクション像は、図3(a)のようになり、ウェハ上に開口ホール205の均一な表面形状が観察される。
【0032】
次に、レジスト表面に不均一帯電が生じている場合の等電位面とミラー電子プロジェクション像について説明する。この場合、図2(b)に示されるように、不均一帯電により等電位面が歪むため、ホール直上に発生する等電位面207は荷電ホール208、非荷電ホール209の間に差が生じる。図中、206は電子を示す。そのため、図3(b)に示すように、ミラー電子プロジェクション像において、荷電ホール208、非荷電ホール209に対応してホール観察に差異が生じる。この像の差異は、レジスト表面形状を正確には表しておらず、ミラー電子プロジェクション方式では正確な形状情報が得られないことになる。
【0033】
そこで、本発明では、波長を160nmから250nmに限定した紫外光をレジスト表面で全反射する条件、すなわち、試料水平方向に対する照射角度10度以下で入射させることにより、レジスト表面を導電化し、これによって不均一帯電の原因となる局所帯電を緩和させることが可能となる。この処理により、ホール206直上の等電位面は、図2(a)と同様となり、ミラー電子プロジェクション像も正しい表面形状を示すことが可能となる。
【0034】
(実施例2)
図4、5は、本発明の別の実施例の構成を示す。本実施例は、ミラー電子プロジェクション方式の入射電子線51と紫外光が試料上の同一箇所に照射される構成の実施例1と異なり、入射電子線51と紫外光は異なる領域に照射される構成について説明する。図1に示す入射電子線51の光軸とは異なる領域に紫外光を照射できる構成としている。
【0035】
図4は、紫外光源30の取り付け角度を示す図であり、ウェハ7に対する紫外光源30の取り付け角度αは、紫外光が全反射される角度(約10°以下)としている。紫外光源30の取り付け角度αを、この角度に限定する理由は、実施例1で説明したように、試料表面領域だけを導電化できる条件だからである。
【0036】
図5(a)は、紫外光源30の電子光学系カラムに対する取り付け位置を示す図であり、電子光学系光軸401を中心として試料(ウェハ)ステージ8が移動するXY方向に異なる波長域を有する紫外光源30を取り付ける構成(本例では、各方向に2個載置)としている。ウェハ7を検査する際、ウェハステージ8をX方向もしくはY方向に移動させつつ、ミラー電子プロジェクション像を取得する。この位置に紫外光源30を取り付けることにより、ミラー電子プロジェクション像を取得する直前に、ウェハ7を帯電させることができる。
【0037】
検査と同時進行で、試料表面の不均一帯電を除去できるため、検査のスループットを低下させないという効果がある。ここでは、電子光学系カラム91を原点とし、ウェハステージ8の移動方向をXY軸として、XY方向に紫外光源30を取り付けたが、同様の効果が得られる構成として、図5(b)に示すリング状の光源402を用いる構成も考えられる。
【0038】
以上詳述したように、本発明によれば、上述したような手段を実現することで、試料表面の不均一帯電を除去することができ、これにより通常の電子線や紫外光の照射による損傷を受ける試料でも、損傷を受けることなくミラー電子プロジェクション式検査装置で検査することが可能となり、半導体装置などの工業製品の生産・検査設備に適用してその効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例の構成を説明する図。
【図2】試料のレジスト膜表面が不均一帯電していない場合(a)と不均一帯電している場合(b)を示す図。
【図3】図2の(a)、(b)のそれぞれに対応するミラー電子プロジェクション像を示す図。
【図4】本発明の別の実施例の構成を説明する図。
【図5】図4における紫外光源の電子光学系カラムに対する取り付け位置を説明する図。
【符号の説明】
【0040】
1…電子源、2…収束レンズ、3…ビームセパレータ、4…アライナ、5…アライナ、6…対物レンズ、7…ウェハ、8…ウェハステージ、12…絞り、13…拡大レンズ、14…拡大レンズ、15…シンチレータ16…光ファイバー、17…CCD、18…画像記憶部、19…演算部、20…ディスプレイ、23…加速電源、25…対物レンズ電源、26…紫外光源制御装置、27…ステージ制御系、28…ビーム制御系、29…検査システム制御系、30…紫外光源、41…円孔レンズ電極、51…入射電子線、52…反射電子線、91…電子光学系カラム、92…試料室、93…画像信号処理系、200…ホール、201…等電位面、202…シリコン酸化膜、203…シリコン基板、204…非開口ホール、205…開口ホール、206…電子、207…等電位面、208…荷電ホール、209…非荷電ホール、301…ウェハ、302…開口ホール、303…非開口ホール、401…電子光学系光軸、402…リング状光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する試料ステージと、前記試料に対して電子ビームを照射する照射光学系と、前記試料に照射した電子の一部もしくは全てが前記試料の最表面付近で反射されるような電界を発生する手段と、前記電界により反射された電子を結像させて前記電子ビームの照射領域の像を形成する結像光学系と、得られた前記像を画像信号として検出する画像信号検出手段と、得られた前記画像信号を処理して前記試料の表面状態を検査する画像信号処理手段とを備えた試料表面形状検査装置において、波長160nmから250nmの紫外光を試料表面で全反射照射できる光源を有し、前記試料に前記紫外光を照射して前記試料表面の不均一帯電を除去する予備帯電制御手段を具備することを特徴とする試料表面形状検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料表面形状検査装置において、前記光源は、前記紫外光を前記試料の水平方向に対して10度以下の照射角度に設置できる紫外光源で構成されていることを特徴とする試料表面形状検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の試料表面形状検査装置において、前記紫外光源は、前記紫外光が前記試料に照射される電子ビームの照射領域に照射されるよう設置されていることを特徴とする試料表面形状検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の試料表面形状検査装置において、前記光源は、前記試料表面の所望の領域を検査する前に、前記所望の領域に異なった角度方向から紫外光を照射できるように、前記試料ステージの移動するX、Y方向のそれぞれに少なくとも1個設置された紫外光源であることを特徴とする試料表面形状検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の試料表面形状検査装置において、前記X、Y方向のそれぞれに設置される前記紫外光源は、お互いに異なる波長域を有することを特徴とする試料表面形状検査装置。
【請求項6】
請求項1に記載の試料表面形状検査装置を用い、前記試料を搭載する前記試料ステージが一方向に連続的に移動している動作条件において、前記試料の検査対象領域に前記紫外光を照射し、前記検査対象領域の欠陥を検査するようにしたことを特徴とする試料表面形状検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の試料表面形状検査方法において、前記紫外光を前記試料の水平方向に対して10度以下の角度で入射するようにして、前記検査対象領域の欠陥を検査することを特徴とする試料表面形状検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−192560(P2007−192560A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8493(P2006−8493)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】