説明

貫通電極及びこれを用いた微小構造体、並びにそれらの製造方法

【課題】気密性の高い貫通電極及びこれを用いた微小構造体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性を有する基板10の所定領域11を貫通トレンチ20で囲み、周囲から絶縁分離した貫通電極100において、
前記貫通トレンチ内の深さ方向における所定部分を塞ぐように充填された第1の成長膜40と、
前記貫通トレンチの両側面の間を横断する横断部55を含み、該横断部の底面部が前記第1の成長膜の内側に接触するように充填された第2の成長膜50と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通電極及びこれを用いた微小構造体、並びにそれらの製造方法に関し、特に、導電性を有する基板の所定領域を貫通トレンチで囲み、周囲から絶縁分離した貫通電極及びこれを用いた微小構造体、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウエハの第1表面と第2表面との間に絶縁された電気的接続を作る方法であって、導電性又は半導体材料からなるウエハを用意し、ウエハの第1表面から少なくとも一つのトレンチをエッチングしてトレンチが完全にウエハの一部分を囲むようにした後、トレンチを絶縁材料で満たし、トレンチ内の絶縁性材料を露出させるためにウエハを第2表面から薄くし、それによりウエハを貫通して伸びる絶縁された電気的接続を作成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−521022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、トレンチの最深部がウエハの第2表面近くの深い位置に形成されるため、絶縁材料が連続的に最深部を横断するように形成された横断部も、当然ながらウエハの第2表面近くの深い位置に形成される。かかる横断部は、トレンチの深さ方向と交わる方向に横断するので、トレンチの深さ方向のリークパスを遮蔽する役割を果たさせることも可能であるが、特許文献1に記載の構成では、横断部は、ウエハを第2表面から薄くする際に削られてしまう可能性が高い。この場合には、絶縁材料の成長面同士が接触した部分が露出してしまい、成長面同士が接触した部分がリークパスになってしまい、絶縁材料の部分の第1表面と第2表面との間の気密性が低下してしまう。かかる気密性の低下は、例えば、ウエハをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の微小構造体の電極として用い、かつ微小構造体とウエハの間の空間を真空状態に保つ必要がある場合に、当該空間を真空状態に保つことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、気密性の高い貫通電極及びこれを用いた微小構造体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る貫通電極は、導電性を有する基板の所定領域を貫通トレンチで囲み、周囲から絶縁分離した貫通電極において、
前記貫通トレンチ内の深さ方向における所定部分を塞ぐように充填された第1の成長膜と、
前記貫通トレンチの両側面の間を横断する横断部を含み、該横断部の底面部が前記第1の成長膜の内側に接触するように充填された第2の成長膜と、を有することを特徴とする。
【0007】
これにより、トレンチ内部に、トレンチの縦方向の流通を遮る横断部を有する成長膜を確実に設けることができ、貫通電極の気密性を高めることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係る貫通電極において、
前記貫通トレンチの内面には、絶縁層が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これにより、成長膜の電気的特性の如何に関わらず、貫通電極領域を周囲の基板から絶縁することができ、成長膜に、金属等の導電膜や、ポリシリコン等の半導体膜等を用いることができるので、成膜特性に優れた成長膜を用いることにより、気密性を一層高めることができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る貫通電極において、
前記所定部分は、前記貫通トレンチの開口部の一方であることを特徴とする。
【0011】
これにより、第1の成長膜で貫通トレンチの開口部の一方を密封することができ、貫通トレンチの片側を封止することができる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明に係る貫通電極において、
前記第2の成長膜は、前記貫通トレンチの開口部の他方を塞ぐように充填されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、2つの成長膜により貫通トレンチ内部の総てを充填することができ、簡素な構成を採用しながらも、気密性の高い貫通電極とすることができる。
【0014】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明に係る貫通電極において、
前記第1の成長膜及び前記第2の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする。
【0015】
これにより、成長膜の充填のみにより、周囲の基板と貫通電極部分との絶縁分離を行うことも可能となり、簡素な構成で気密性の高い貫通電極に構成することができる。
【0016】
第6の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る貫通電極において、
前記第2の成長膜の、前記第1の成長膜と反対側には、前記貫通トレンチの両側面の間を横断する横断部を含み、該横断部の底面部が前記第2の成長膜に接触するように第3の成長膜が充填されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、貫通トレンチの内部に横断部を二重に設けることができ、更に気密性を高めることができる。
【0018】
第7の発明は、第6の発明に係る貫通電極において、
前記第3の成長膜は、前記貫通トレンチの開口部の他方を塞ぐように充填されていることを特徴とする。
【0019】
これにより、3つの成長膜を用いて2つの横断部を貫通トレンチ内に形成でき、気密性の高い貫通電極を構成することができる。
【0020】
第8の発明は、第6又は第7の発明に係る貫通電極において、
前記第1の成長膜、前記第2の成長膜及び前記第3の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする。
【0021】
これにより、貫通トレンチを充填する成長膜のみで貫通電極の周囲部分との絶縁性と、基板の厚さ方向における気密性を確保することができる。
【0022】
第9の発明は、第1〜8のいずれかの発明に係る貫通電極において、
前記貫通トレンチは、側面が前記基板の表面に対して垂直に形成されたことを特徴とする。
【0023】
これにより、簡素で一般的な垂直トレンチ形状を採用しつつ、貫通電極の気密性を高めることが可能となる。
【0024】
第10の発明は、第1〜8のいずれかの発明に係る貫通電極において、
前記貫通トレンチは、側面がテーパ形状を有することを特徴とする。
【0025】
これにより、トレンチ内部にボイドを発生し難くして成長膜を形成できるため、テーパ形状のトレンチ形状とした場合にも、貫通電極の気密性を高めることができる。
【0026】
第11の発明は、第1又は第2の発明に係る貫通電極において、
前記貫通トレンチは、前記基板の表面から所定深さまで形成された第1の溝幅を有する第1のトレンチと、該第1のトレンチの底面から前記基板の裏面までを貫通し、前記第1の溝幅よりも狭い第2の溝幅を有する第2のトレンチを有し、
前記所定部分は、前記第1のトレンチの底面であり、
前記第2のトレンチは、絶縁層で充填されていることを特徴とする。
【0027】
これにより、第1の成長膜も横断部を有する構成となり、横断部が多重にトレンチ内に存在する構成となり、確実に高い気密性を実現することができる。
【0028】
第12の発明に係る微小構造体は、第1〜11のいずれかの発明に係る貫通電極と、
表面に電極が形成された微小構造体素子基板とを有し、
前記貫通電極と、前記微小構造体素子基板の前記電極が接合されたことを特徴とする。
【0029】
これにより、微小構造体の封止部分の気密性を高めることができ、センサやアクチュエータとして機能する構造体部分の検出精度又は駆動精度を高めることができる。
【0030】
第13の発明に係る貫通電極の製造方法は、導電性を有する基板の所定領域を、貫通トレンチにより周囲から絶縁分離した貫通電極の製造方法であって、
導電性を有する基板に、トレンチを形成するトレンチ形成工程と、
前記トレンチを充填するように、第1の成長膜を形成する第1の成長膜形成工程と、
該第1の成長膜を、前記トレンチの内部までエッチバックする第1のエッチバック工程と、
前記第1の成長膜の上に、前記トレンチを充填するように、第2の成長膜を形成する第2の成長膜形成工程と、
前記第2の成長膜の不要部分を、前記トレンチの両側面を横断する横断部を除去しない範囲でエッチバックにより除去する第2のエッチバック工程と、を含むことを特徴とする。
【0031】
これにより、成長膜のトレンチへの充填とエッチバックの繰り返しという簡素な工程を用いて、気密性の高い貫通電極を製造することができる。
【0032】
第14の発明は、第13の発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記第2のエッチバック工程は、前記第2の成長膜を前記基板の表面と同一面までエッチバックすることを特徴とする。
【0033】
第15の発明は、第13又は第14の発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記第1の成長膜及び前記第2の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする。
【0034】
第16の発明は、第13の発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記第2のエッチバック工程は、前記第2の成長膜を前記トレンチの内部までエッチバックし、
前記第2のエッチバック工程の後に、前記第2の成長膜の上に前記トレンチを充填するように第3の成長膜を形成する工程と、該第3の成長膜の不要部分を、前記トレンチの両側面を横断する横断部を除去しない範囲でエッチバックにより除去する第3のエッチバック工程と、を更に有することを特徴とする。
【0035】
第17の発明は、第16の発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記第3のエッチバック工程は、前記基板の表面と同一面までエッチバックすることを特徴とする。
【0036】
第18の発明は、第16又は第17の発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記第1の成長膜、前記第2の成長膜及び前記第3の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする。
【0037】
第19の発明は、第11〜16にいずれかの発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記トレンチ形成工程と前記第1の成長膜形成工程との間に、前記基板を加熱して前記トレンチの表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を更に有することを特徴とする。
【0038】
第20の発明は、第13〜19のいずれかの発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記トレンチを、前記基板の表面に対して側面が垂直になるように形成することを特徴とする。
【0039】
第21の発明は、第13〜19のいずれかの発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記トレンチを、側面がテーパ形状になるように形成することを特徴とする。
【0040】
第22の発明は、第13の発明に係る貫通電極の製造方法において、
前記トレンチ形成工程は、第1の溝幅を有する第1のトレンチを形成する工程と、
該第1のトレンチを包含する前記第1の溝幅よりも広い第2の溝幅を有する第2のトレンチを形成する工程とを含み、
前記トレンチ工程と前記第1の成長膜工程との間に、前記第1のトレンチを充填するとともに、前記第2のトレンチの内面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を有し、
前記第2のトレンチに対して前記第1の成長膜形成工程以後の工程を行うことを特徴とする。
【0041】
第23の発明に係る微小構造体の製造方法は、表面に電極が形成された微小構造体素子基板を用意する工程と、
請求項13乃至22のいずれか一項に記載された貫通電極の製造方法により製造された貫通電極を、前記微小構造体素子基板の前記電極に接合する工程と、を含むことを特徴とする。
【0042】
これにより、基板で封止した構造体を含む空間の気密性が高い微小構造体を製造することができ、センサやアクチュエータとして検出精度又は駆動精度の高い微小構造体を製造することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、貫通電極の気密性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1に係る貫通電極100の一例を示した断面構成図である。
【図2】実施例1に係る貫通電極100の全体構成の一例を示した斜視断面図である。
【図3】実施例1に係る貫通電極100の製造途中段階の一例を示した図である。
【図4A】実施例1に係る貫通電極100の製造方法のトレンチ形成工程の一例を示した図である。
【図4B】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の絶縁層形成工程の一例を示した図である。
【図4C】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第1の成長膜形成工程の一例を示した図である。
【図4D】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第1のエッチバック工程の一例を示した図である。
【図4E】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第2の成長膜形成工程の一例を示した図である。
【図4F】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第2のエッチバック工程の一例を示した図である。
【図4G】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の上面絶縁層形成工程の一例を示した図である。
【図4H】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の研磨工程の一例を示した図である。
【図4I】実施例1に係る貫通電極100の製造方法の下面絶縁層形成工程の一例を示した図である。
【図5】実施例1に係る微小構造体150の断面構成の一例を示した図である。
【図6】実施例2に係る貫通電極101の断面構成の一例を示した図である。
【図7】実施例2に係る貫通電極101の製造途中段階の一例を示した図である。
【図8】実施例3に係る貫通電極102の一例を示した断面構成図である。
【図9】実施例3に係る貫通電極102の製造途中段階の一例を示した断面構成図である。
【図10A】実施例3に係る貫通電極102の製造方法のトレンチ形成工程の一例を示した図である。
【図10B】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の絶縁層形成工程の一例を示した図である。
【図10C】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第1の成長膜形成工程の一例を示した図である。
【図10D】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第1のエッチバック工程の一例を示した図である。
【図10E】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第2の成長膜形成工程の一例を示した図である。
【図10F】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第2のエッチバック工程の一例を示した図である。
【図10G】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第3の成長膜形成工程の一例を示した図である。
【図10H】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第3のエッチバック工程の一例を示した図である。
【図10I】実施例3に係る貫通電極102の製造方法の研磨工程の一例を示した図である。
【図11】実施例4に係る貫通電極103の一例を示した断面構成図である。
【図12】実施例4に係る貫通電極103の製造途中段階の一例を示した断面図である。
【図13A】実施例4に係る貫通電極103の製造方法の第1のトレンチ形成工程の一例を示した図である。
【図13B】実施例4に係る貫通電極103の製造方法の第2のトレンチ形成工程の一例を示した図である。
【図13C】実施例4に係る貫通電極103の製造方法の絶縁層形成工程の一例を示した図である。
【図14】実施例5に係る貫通電極104の一例の断面構成図である。
【図15】実施例6に係る貫通電極105の一例を示した断面構成図である。
【図16】実施例7に係る貫通電極106の一例の断面構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【実施例1】
【0046】
図1は、本発明の実施例1に係る貫通電極100の一例を示した断面構成図である。図1において、実施例1の係る貫通電極100は、キャップ基板10と、貫通トレンチ20と、絶縁層30と、第1の成長膜40と、第2の成長膜50とを備える。
【0047】
キャップ基板10は、導電性を有する基板である。キャップ基板10は、導電性を有すれば、種々の基板を用いることができるが、例えば、半導体基板を用いてもよい。半導体基板は、不純物を高濃度に注入することにより、導電性を高めることができ、貫通電極100用の基板として利用することができる。なお、キャップ基板10に半導体を利用する場合、用途に応じて、種々の半導体材料からなる基板を用いてよいが、例えば、シリコン基板を用いるようにしてもよい。
【0048】
貫通電極100は、キャップ基板10の厚さ方向に電流が流れる構成の電極であり、キャップ基板10の所定領域を絶縁部70で囲み、周囲から絶縁することで構成される。図1において、キャップ基板10は、絶縁部70により電極領域11と周辺領域12とに区画されている。絶縁部70で両側を挟まれた電極領域11が、貫通電極100の電極部として機能する。なお、絶縁部70は、貫通トレンチ20と、絶縁層30と、第1の成長膜40と、第2の成長膜50とを有する。
【0049】
図2は、本発明の実施例1に係る貫通電極100の全体構成の一例を示した斜視断面図である。図2において、キャップ基板10に貫通電極100が形成されている。図2に示すように、キャップ基板10の電極領域11を絶縁部70で囲み、周辺領域12から絶縁分離することにより、所定の平面形状を有する電極領域11を備えた貫通電極100が構成される。図2においては、長方形の平面形状の電極領域11が形成された貫通電極100が示されている。なお、図2においては、長方形の電極領域11を有する貫通電極100を示したが、用途に応じて、円、楕円、正方形等の所望の形状に電極領域11を構成してよい。
【0050】
図1に戻る。貫通トレンチ20は、キャップ基板10を貫通する溝であり、貫通電極100の電極領域11を、周辺領域12から区画する役割を有する。なお、貫通トレンチ20は、貫通電極100として完成した段階では、キャップ基板10の表面と裏面を貫通する溝として形成されるが、加工途中段階では、キャップ基板10の一方の面からのみエッチングされた、底面を有する溝として形成される。なお、貫通電極100の製造方法については、後述する。
【0051】
貫通トレンチ20は、種々の側面形状に形成することができるが、実施例1に係る貫通電極100においては、キャップ基板10の表面に垂直な側面を有する溝として形成されている。トレンチの形成は、一般的に、基板面に垂直に溝を掘ってゆく加工が最も容易であり、簡素な構成である。よって、実施例1に係る貫通電極100においては、簡素な加工で貫通電極100を簡素に構成することが可能である。
【0052】
貫通トレンチ20の溝幅は、第1の成長膜40及び第2の成長膜50が充填できる範囲内であれば、用途に応じて適宜定められてよいが、例えば、5〜20μm程度の溝幅であってもよい。
【0053】
絶縁層30は、貫通トレンチ20の側面の表面に形成された絶縁膜である。絶縁層30は、種々の方法により形成されてよいが、例えば、キャップ基板10にトレンチを形成した後、キャップ基板10を加熱することにより熱酸化膜として形成されてもよい。例えば、キャップ基板10がシリコン基板で構成されていれば、絶縁層30は、SiO膜となる。
【0054】
絶縁層30を貫通トレンチ20の側面に形成することにより、貫通電極100の電極領域11を周辺領域12から貫通トレンチ20で確実に絶縁分離することができる。
【0055】
第1の成長膜40は、貫通トレンチ20の一方の開口部を塞ぐための成長膜である。貫通電極100が使用される用途は、種々考えられるが、用途の1つとして、MEMS等の微小構造体の電極として利用される場合が考えられる。かかる微小構造体は、微小なセンサやアクチュエータとして構成され、機械的に動作する構造体を含む。このような構造体は、真空封止されて構成される場合も多く、そのような場合には、キャップ基板10を封止用の蓋として用い、貫通電極100で微小構造体との外部との電気的接続を行うような構成をとる。そのような場合には、貫通電極100の絶縁部70を気密構造とする必要があり、そのため、貫通トレンチ20内を密封する必要がある。第1の成長膜30は、貫通トレンチ20の一方の開口部を塞ぐことにより、絶縁部70を密封構造とする。
【0056】
第2の成長膜50は、貫通トレンチ20の内部を充填するとともに、第1の成長膜40の貫通トレンチ20内における内側(上面)に接触し、密着するように設けられた成長膜である。上述のように、第1の成長膜40は、貫通トレンチ20内を充填するが、貫通トレンチ20の両側から成長した2つの膜が中央で対向して密着するような構成となっている。よって、2つの第1の成長膜40の間は、貫通トレンチ20の深さ方向に延在する膜界面41が存在し、この膜界面41から気密性が低下するおそれがある構成となっている。
【0057】
一方、第2の成長膜50は、貫通トレンチ20の両側面の間を横断する横断部55を含むように形成されており、貫通トレンチ20の深さ方向の気密性を担保する。つまり、気体が第1の成長膜40の膜界面41を通過したとしても、第2の成長膜50の横断部55が気体の流通を確実にブロックする。このように、貫通トレンチ20の内部に、貫通トレンチ20の両側の側面を横断する横断部55を含む成長膜を設けることにより、貫通電極100のキャップ基板10の厚さ方向の気密性を非常に高くすることができる。
【0058】
なお、図1に示すように、第2の成長膜50は、横断部55の底面が、第1の成長膜40の内側の面(上面)に密着して接触し、貫通トレンチ20の内部に横断部55が存在する構成となっている。つまり、第2の成長膜50自体も、貫通トレンチ20の他方の開口部側に、中央部で対向する膜界面51を有しているが、この膜界面51も、横断部55がブロックする構成となっている。このように、貫通トレンチ20の内部に横断部55を有する第2の成長膜50を設けることにより、貫通電極100の気密性を確実に高めることができる。
【0059】
また、第2の成長膜50は、貫通トレンチ100の上方の開口部を塞ぐように充填されている。これにより、第1の成長膜40が塞ぐ下方の開口部の反対側の開口部を塞ぐことができ、貫通トレンチ20を下から上まで成長膜40、50で充填した密封構造とすることができる。
【0060】
第1の成長膜40及び第2の成長膜50は、種々の材料から構成されてよい。上述のように、貫通トレンチ20は、絶縁層30で絶縁されているので、第1の成長膜40及び第2の成長膜50は、必ずしも絶縁膜である必要は無く、半導体膜や、金属膜等の導電性を有する成長膜であってもよい。よって、第1の成長膜40及び第2の成長膜50は、絶縁性は考慮する必要がなく、貫通トレンチ20への充填の容易さ、膜成長の効率、膜の密度等の要因を考慮して、用途に応じた適切な材料の成長膜を選択することができる。例えば、半導体のポリシリコン膜や、金属のタングステン膜が用いられてもよい。また、SiO等の絶縁膜が用いられてもよいことは言うまでもない。
【0061】
図3は、実施例1に係る貫通電極100の製造途中段階の一例を示した図である。図3において、キャップ基板10に、貫通していない溝状のトレンチ21が形成され、トレンチ21の底面を含む内面と、キャップ基板10の表面が絶縁層30で覆われている。トレンチ21は、キャップ基板10の表面に垂直な垂直トレンチ形状として形成されている。トレンチ21の内部には、第1の成長膜40が、底面と両側面から成長してトレンチ21の下部を充填している。第1の成長膜40の上方には、第2の成長膜50が、トレンチ21の上方を充填するとともに、キャップ基板10の表面を覆っている。
【0062】
図3に示す状態から、キャップ基板10の表面にある第2の成長膜50の不要部分をエッチバックにより除去し、研磨ラインP1までキャップ基板10を裏面側から研磨して薄板化することにより、図1に示した貫通電極100が完成する。研磨ラインP1は、第1の成長膜40の横断部45よりも上方にあるので、第1の成長膜40の横断部45は、貫通電極100として最終的に構成される段階で除去されてしまう。しかしながら、第2の成長膜50の横断部55は、除去されることなく残るので、トレンチ21が貫通トレンチ20となっても、貫通トレンチ20の深さ方向の気密性を確保することができる。
【0063】
次に、図4A〜図4Iを用いて、実施例1に係る貫通電極100の製造方法について説明する。図4A〜図4Iは、本発明の実施例1に係る貫通電極の製造方法の一例の各工程を示した図である。
【0064】
図4Aは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法のトレンチ形成工程の一例を示した図である。トレンチ形成工程においては、キャップ基板10の表面に、トレンチ21が形成される。トレンチ21は、例えば、キャップ基板10の表面に側面が垂直な、垂直トレンチ形状に形成されてよい。また、トレンチ21の形成は、例えば、ドライエッチング等のエッチング加工により行われてもよい。
【0065】
図4Bは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の絶縁層形成工程の一例を示した図である。絶縁層形成工程においては、トレンチ21の内面に、絶縁層30が形成される。絶縁層30は、トレンチ21を充填しない程度に、トレンチ21の内表面を被覆する薄膜として形成される。絶縁層30は、化学気相成長(CVD、Chemical Vapor Deposition)法等の種々の方法で形成することができるが、例えば、キャップ基板10を加熱し、トレンチ21の内面を含む基板表面に熱酸化膜を形成するようにしてもよい。熱酸化膜は、キャップ基板10を加熱すれば形成することができるので、簡素な設備とプロセスで形成することができる。なお、絶縁層30は、キャップ基板10がシリコン基板である場合には、SiO膜が形成されることになる。
【0066】
図4Cは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第1の成長膜形成工程の一例を示した図である。第1の成長膜形成工程においては、トレンチ21を充填するように、第1の成長膜40が成膜される。第1の成長膜40の成膜は、エピタキシャル成長法等、種々の成長による成膜方法により行ってよいが、例えば、化学気相成長法により行ってもよい。化学的気相成長法は、トレンチ21を充填するレベルの厚さを有する膜の形成に適している。第1の成長膜形成工程により、トレンチ21は充填され、底面を含むトレンチ21の内部は、第1の成長膜40により塞がれることになる。
【0067】
第1の成長膜40に用いられる材料の導電性は問わず、任意の導電性の膜が形成されてよい。絶縁層30により、トレンチ21を境界とするキャップ基板10の左右の領域の絶縁性は保つことができるからである。第1の成長膜40は、例えば、半導体のポリシリコン膜、導体のタングステン膜、絶縁体のSiO膜等、種々の成膜材料を利用することができる。
【0068】
図4Dは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第1のエッチバック工程の一例を示した図である。第1のエッチバック工程においては、第1の成長膜40が、トレンチ21の内部までエッチングにより除去される。これにより、トレンチ21の内部に、更に成膜充填が可能なスペースを作ることができる。
【0069】
第1のエッチバック工程は、種々のエッチング方法により行われてよく、ドライエッチングでもウェットエッチングであってもよい。エッチングを行うことにより、第1の成長膜40がキャップ基板10の表面側からエッチングされる。そして、絶縁層30がマスクの役割を果たし、キャップ基板10の表面はエッチングされず、第1の成長膜40のみがトレンチ21の内部までエッチバックされることになる。
【0070】
図4Eは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第2の成長膜形成工程の一例を示した図である。第2の成長膜形成工程においては、エッチバックされた第1の成長膜40の上に、トレンチ21を充填するように第2の成長膜50が成膜される。第2の成長膜50も、種々の成膜方法を用いて形成することができるが、例えば、化学気相成長法により成膜を行ってもよい。
【0071】
第2の成長膜50は、横断部55が、トレンチ21の内部に含まれるように形成する。よって、図4Dにおいて説明した第1のエッチバック工程において、第2の成長膜50の横断部55がトレンチ21の内部に含まれる程度のスペースを空けるように、第1の1エッチバック工程を行うようにする。第2の成長膜50の横断部55がトレンチ21内に形成されるようにすることにより、第1の成長膜40の膜界面41と交わるように第2の成長膜50の横断部55が形成され、トレンチ21の深さ方向の気密性を担保することができる。
【0072】
第2の成長膜50は、第1の成長膜40と同様に、種々の導電性レベルの材料を用いることができ、例えば、半導体のポリシリコン膜、導体のタングステン膜、絶縁体のSiO膜等を用いることができる。また、第2の成長膜50は、第1の成長膜40と異なる材料を用いることも可能であるが、材料が異なると、熱応力がトレンチ21の上下で異なるので、第1の成長膜40と同じ材料を用いることが好ましい。
【0073】
図4Fは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の第2のエッチバック工程の一例を示した図である。第2のエッチバック工程においては、第2の成長膜50の不要部分がエッチバックにより除去される。実施例1に係る貫通電極100の製造方法においては、第2の成長膜50は、キャップ基板10の表面とほぼ同一の水平面までエッチングされる。
【0074】
第2のエッチバック工程におけるエッチングも、キャップ基板10の表面側から行われ、第2の成長膜50がキャップ基板10の表面と同一面までエッチングされた段階で、エッチングを終了するようにしてよい。エッチングは、第1のエッチバック工程と同様に、ドライエッチングにより行われても、ウェットエッチングにより行われてもよい。
【0075】
図4Gは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の上面絶縁層形成工程の一例を示した図である。上面絶縁層形成工程においては、第2の成長膜50の上に、絶縁層31が形成され、トレンチ21の内部が完全に外部から絶縁される。上面絶縁層形成工程は、必須ではなく、用途に応じて適宜設けられる工程である。
【0076】
例えば、第2の成長膜50が、半導体膜や導体膜である場合には、外部配線とのショート等の不具合発生を予防する観点から、第2の成長膜50の上に、絶縁層31を形成するようにしてもよい。絶縁層31は、化学気相成長法等により絶縁成長膜を形成してもよいし、加熱して熱酸化膜を形成するようにしてもよい。
【0077】
図4Hは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の研磨工程の一例を示した図である。研磨工程においては、キャップ基板10を裏面側から研磨して薄板化し、第1の成長膜40を露出させる。これにより、トレンチ21が貫通トレンチ20となり、貫通トレンチ21の内側と外側(左右)の領域の電気的接続が切断される。
【0078】
研磨工程において、第1の成長膜40の膜界面41は、貫通トレンチ20の下方の開口部から露出し、膜界面41から気体等が流通し易くなるが、第2の成長膜50の横断部55が存在するため、キャップ基板10の表面側と裏面側の気密性は保たれる。
【0079】
図4Iは、実施例1に係る貫通電極100の製造方法の下面絶縁層形成工程の一例を示した図である。下面絶縁層形成工程においては、露出した第1の成長膜40の表面に、絶縁層32が形成される。下面絶縁層形成工程は、上面絶縁層形成工程と同様に、必須ではなく、必要に応じて設けられてよい工程である。
【0080】
絶縁層32は、上面の絶縁層31と同様に、化学気相成長等による成長膜であってもよいし、加熱により形成される熱酸化膜であってもよい。
【0081】
下面絶縁層形成工程の終了により、実施例1に係る貫通電極100が完成する。なお、上面絶縁層形成工程及び下面絶縁層形成工程を設けない場合には、図4Fに示した第2のエッチバック工程から、図4Hに示した研磨工程に進むことにより、研磨工程が終了した段階で実施例1に係る貫通電極100が完成することになる。
【0082】
このように、実施例1に係る貫通電極100の製造方法によれば、成膜とエッチバックを2回繰り返すという簡素な工程により、気密性の高い貫通電極100を容易に製造することができる。
【0083】
図5は、本発明の実施例1に係る微小構造体150の断面構成の一例を示した図である。
図5において、実施例1に係る微小構造体150は、微小構造体素子基板140と、構造体141と、電極142、143と、酸化膜144、145と、封止領域146と、貫通電極100とを有する。
【0084】
微小構造体素子基板140は、微小な構造体141が形成された基板であり、微小構造体150の支持体として機能する。微小構造体素子基板140は、種々の材料からなる基板が用いられてよいが、例えば、シリコン基板等の半導体基板が用いられてよい。微小構造体素子基板140にシリコン基板等の半導体基板が用いられる場合には、半導体の微細加工技術を用いて、構造体141や電極142、143を微小構造体基板140上に形成することができる。特に、微小構造体素子基板140、構造体141、電極142、143及び酸化膜144、145が、SOI(Silicon On Insulator)基板から形成される場合には、MEMS技術を用いて微小構造体150を形成することができる。
【0085】
構造体141は、本実施例に係る微小構造体150が、センサとして種々の物理量の検出又はアクチュエータとして機械的な駆動を行う部分である。
【0086】
電極142、143は、微小構造体素子基板140側の電極であり、微小構造体150の外部と電気的接続を行うために用いられる。例えば、微小構造体150がセンサとして構成されている場合には、電極142、143が、構造体141で検出した物理量を電気信号として出力する際に用いられる。
【0087】
酸化膜144、145は、電極142、143と微小構造体素子基板140とを絶縁するために用いられる。微小構造素子基板140は、電気的な動作は行わず、構造体141や電極142、143等の微小構造体素子基板140の表面に形成された構成要素の支持体として機能するので、不要な電気的導通は行わないように構成されている。
【0088】
貫通電極100は、図1において説明した構成と同様であるが、図1とは上下が逆に用いられており、更に、表面に絶縁層120と、配線層130とが形成されている点で、図1とは異なっている。また、キャップ基板10の中央の電極領域11だけでなく、キャップ領域10の左側の領域も電極領域13として用いられている点で、図1の貫通電極100とは異なっている。更に、キャップ基板10の表面に、ザグリ110が形成されている点で、図1に示した貫通電極100と異なっている。
【0089】
ザグリ110は、構造体141との接触を避けるために設けられた段加工である。構造体141は、機械的な動作を行うので、キャップ基板10の内面と接触しないように配置する必要がある。一方、構造体141は、図5には示されていない箇所で、電極142、143と接続されており、外部との電気的接続が行われているが、そのため、電極領域11、13は、電極142、143と接触可能に配置される必要がある。よって、電極142、143と対向する電極領域11、13については、キャップ基板10の元々の厚さを残し、構造体141と対向する領域については、キャップ基板10を薄板化し、構造体141と接触しない構造に加工している。
【0090】
微小構造体150の電極142、143は、所定の位置に形成されているので、貫通電極100の電極領域11、13は、キャップ基板10内の該当する所定位置に形成される。一方、貫通電極100の電極領域11、13は、外部から微小構造体150に電力を供給するとともに、微小構造体150からの出力信号を外部に取り出すために微小構造体150の外部との電気的接続を行う必要がある。貫通電極100の電極領域11、13と外部との電気的接続を行うためには、例えば、電極領域11、13に接続される新たな配線層130及び絶縁層120を設けるようにしてもよい。配線層130は、上述のように、貫通電極100と外部との電気的接続を行えるように、貫通電極100の電極部11に接触して設けられ、絶縁膜130は、それ以外の導通な不要な部分が接触しないように、電極部11以外のキャップ基板10の表面を覆っている。
【0091】
なお、図5においては、電極部13と配線層130との導通が図られていないが、紙面と垂直ないずれかの場所に、絶縁層120が存在しない箇所を設け、その上を配線層130で覆うようにすれば、電極部13と外部との電気的接続を行うことができる。よって、図5に図示しないいずれかの箇所に、電極部13と外部との電気的接続を図る部分が設けられている。
【0092】
但し、絶縁層120、配線層130の形成は、貫通電極100の取り出し位置の変更が必要でなければ、省略することもできる。例えば、貫通電極100の電極領域11、13を、外部のIC(Integrated Circuit、集積回路)基板のパッドに直接接合するようにしてもよい。よって、貫通電極100の表面の絶縁層120、配線層130は、必要に応じて設けるようにしてよい。
【0093】
また、キャップ基板10と、微小構造体150の電極142、143との接合は、基板同士の直接接合法を用いるようにしてもよい。例えば、接合面にプラズマを照射して活性化して接合面にOH基を形成して接合を行うようにしてもよい。また、基板表面の異物、自然酸化膜を除去し、ダングリングボンドを形成し、接合する方式を用いるようにしてもよい。
【0094】
なお、キャップ基板10、微小構造体素子基板140とも、シリコン基板、熱酸化膜、ポリシリコン膜だけで形成可能なので、接合工程及びその後の工程でも、比較的高温のプロセスを利用することが可能であり、プロセス選択の幅を広くすることができる。また、接合部に共晶材料、その他金属、導電性接着剤等を介するようにしてもよい。
【0095】
このように、貫通電極100の電極領域11、13と微小構造体素子基板140の電極142、143が、物理的に接合され、電気的に接続される方式であれば、種々の接合方式を用いることができる。
【0096】
貫通電極100の電極領域11、13と微小構造体素子基板140上の電極142、143との接合により、キャップ基板10と微小構造体基板140との間に空間が形成され、封止領域146として封止される。封止領域146は、キャップ基板10と微小構造体150との接合の際に真空とされ、真空封止される場合がある。例えば、微小構造体150が、加速度センサとして構成された場合には、封止領域146は真空とされる。この場合、本実施例に係る微小構造体150は、貫通電極100の絶縁部70を形成する貫通トレンチ20内に、両側面の間を横断し、第1の成長膜40の膜界面41と第2の成長膜50の膜界面51を遮蔽する横断部55を有するので、封止領域146の気密性を確実に保つことができる。このように、本実施例に係る微小構造体150は、封止領域146の気密性を担保し、微小構造体150の本来の検出能力又は駆動能力を安定して維持することができる。
【0097】
また、図4Hにおいて説明した研磨工程は、図4Fに示した状態で微小基板構造体基板140への接合を行い、接合後に行うようにしてもよい。つまり、微小構造体が最終的な製造目的物である場合には、トレンチ21を貫通させて貫通トレンチ20としてから貫通電極100を搭載するのではなく、絶縁部70の加工が終了した段階で微小構造体基板140に搭載し、その後に研磨工程を行い、貫通電極100及び微小構造体150を同時に両方完成させるようにしてもよい。
【0098】
このように、実施例1に係る貫通電極100の製造方法における研磨工程は、微小構造体150の製造方法の一部に組み込んで行うこともできる。これにより、微小構造体150が最終製造物である場合には、用途に応じて最も効率的な製造方法を選択することができる。
【0099】
実施例1に係る微小構造体150及びその製造方法によれば、構造体141が収容される封止領域146の気密性を高めることができ、センサとしての検出精度又はアクチュエータとしての駆動精度を高めることができる。
【0100】
なお、以後の実施例において、貫通電極の平面構成と、微小構造体への適用の内容については具体的に説明しないが、総て実施例1と同様に適用することができる。
【0101】
また、以後の実施例において、貫通電極の電極部の上に絶縁層が形成された状態で貫通電極が示される場合があるが、絶縁層は、貫通電極の使用前にエッチングにより除去すればよいので、その点については、説明を省略するものとする。
【実施例2】
【0102】
図6は、本発明の実施例2に係る貫通電極101の断面構成の一例を示した図である。実施例2において、実施例1に係る貫通電極100と同様の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0103】
図6において、実施例2に係る貫通電極101は、キャップ基板10に貫通トレンチ22が形成され、貫通トレンチ22の内面に絶縁層30が形成されている。また、貫通トレンチ22の底面側の開口部を塞ぐように第1の成長膜40が充填され、第1の成長膜40の上に第2の成長膜50が形成されており、全体で絶縁部71を構成している。そして、第2の成長膜50は、貫通トレンチ22の両側面を横断する横断部55を有する点で、実施例1に係る貫通電極100と共通する。一方、実施例2に係る貫通電極101は、貫通トレンチ22の形状が、実施例1に係る貫通電極100と異なっている。
【0104】
実施例2に係る貫通電極101は、貫通トレンチ22の両側面が傾斜を有し、先端に向かうにつれて開口幅が小さくなるテーパ形状に構成されている。このように、貫通トレンチ22の側面形状を、テーパ形状に構成してもよい。
【0105】
貫通トレンチ22の形状がテーパ形状の場合においても、第2の成長膜55には横断部55が存在するので、絶縁部71の気密性を高く維持することができる。なお、図6においては、貫通トレンチ22が深くなるにつれて溝幅が細くなるテーパ形状をしているが、深くなるにつれて溝幅が広くなる逆の傾斜のテーパ形状であってもよい。
【0106】
このように、貫通トレンチ22の形状が種々の形状であっても、第2の成長膜50の横断部55が貫通トレンチ22の内部に存在すれば、気密性の高い貫通電極101を実現することができる。
【0107】
図7は、本発明の実施例2に係る貫通電極101の製造途中段階の一例を示した図である。図7において、テーパ形状を有するトレンチ23がキャップ基板10に形成され、トレンチ23の内面に絶縁層30が形成されている。そして、横断部45を有する第1の成長膜40がトレンチ23の底部から充填され、第1の成長膜40の上に、横断部55を有する第2の成長膜50が充填されている。第2の成長膜50は、キャップ基板10の表面にも形成されている。
【0108】
図7に示す状態から、キャップ基板10の表面にある第2の成長膜50をエッチバックし、キャップ基板10の表面と同一平面の位置まで除去する。第2の成長膜50の横断部55は、貫通トレンチ23内に存在するので、第2の成長膜50の横断部55は、第2の成長膜50がエッチバックされても残ることになる。
【0109】
また、キャップ基板10の底面は、研磨ラインP2まで研磨され、第1の成長膜40の横断部45は除去される。これにより、第1の成長膜40の膜界面41は底面に露出されるが、第2の成長膜50の横断部55が存在するため、高い気密性を実現することができる。
【0110】
なお、図7においては、トレンチ23の形状は、最深部の先端が尖った形状となっているが、底面部を有し、断面形状が台形となるような形状に構成されてもよい。トレンチ23の形状は、用途に応じて種々変化させることができる。
【0111】
なお、実施例2に係る貫通電極101の製造方法は、トレンチ22の形状が異なる点以外は、図4A〜図4Iにおいて説明した実施例1に係る貫通電極101の製造方法と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0112】
実施例2に係る貫通電極101及びその製造方法によれば、垂直形状のトレンチ20以外の種々のトレンチ22の形状を有する貫通電極101とすることができ、用途に応じた形状を採用しつつ貫通電極101の気密性を高めることができる。
【実施例3】
【0113】
図8は、本発明の実施例3に係る貫通電極102の一例を示した断面構成図である。実施例3において、実施例1及び実施例2と同様の構成要素については、同一の参照番号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0114】
図8において、実施例3に係る貫通電極102は、キャップ基板10と、貫通トレンチ20と、絶縁層30と、第1の成長膜40と、第2の成長膜50と、第3の成長膜60とを備える。第3の成長膜60を備える点が、実施例1及び実施例2に係る貫通電極100、101と異なっている。
【0115】
一方、実施例3に係る貫通電極102の絶縁部72は、貫通トレンチ20の内面に絶縁層30が形成され、第1の成長膜40、第2の成長膜50が順次下方から充填されている点は、実施例1に係る貫通電極100と同様である。よって、第1の成長膜40は、膜界面41が底面から露出しているが、第2の成長膜50には、トレンチ30の両側面を横断する横断部55を有している。第2の成長膜50の第1の成長膜40と反対側、つまり第2の成長膜50の上には、第3の成長膜60が充填されているが、トレンチ20の両側面を横断する横断部65がトレンチ20内に存在する。よって、第3の成長膜60の横断部65においても、絶縁部72の深さ方向の気体等の流通を妨げる働きをする。このように、横断部55、65が存在する成長膜50、60を多段構成にすることにより、より気密性を高くすることができる。
【0116】
このように、成長膜40、50、60を3段に積層させて充填し、より気密性を高める構成としてもよい。
【0117】
なお、実施例1に係る貫通電極100においては、第2の成長膜50がトレンチ20の上面を塞いでいたが、実施例3に係る貫通電極においては、第3の成長膜60がトレンチ20の上面を塞ぐ構成となる。
【0118】
また、実施例3に係る貫通電極102においては、貫通トレンチ20は、実施例1と同様に、キャップ基板10の表面に垂直な側面を有する垂直形状の貫通トレンチ20として構成した例が示されている。しかしながら、実施例2に説明したような、テーパ形状のトレンチ22に構成してもよいし、その他、用途に応じて種々の形状に構成してよい。
【0119】
図9は、実施例3に係る貫通電極102の製造途中段階の一例を示した断面構成図である。実施例3に係る貫通電極102において、トレンチ21の内面及びキャップ基板10の表面を覆うように絶縁層30が形成され、トレンチ21の底面を含む領域を充填するように第1の成長膜40が形成されている。そして、第1の成長膜40の上に第2の成長膜50が形成されており、第2の成長膜50の底面が第1の成長膜40の内側に密着して接触する状態となっている。また、第2の成長膜50の上には、第3の成長膜60が形成されており、第3の成長膜60の底面が第2の成長膜50の内側に密着して接触する状態となっている。
【0120】
図9に示した状態から、第3の成長膜60をエッチバックして、キャップ基板10の表面と同一面までエッチング除去し、底面からは研磨ラインP3まで研磨除去することにより、図8に示した貫通電極102に構成することができる。
【0121】
次に、図10A〜図10Iを用いて、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の一例について説明する。図10A〜図10Iは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の各工程の一例を示した図である。
【0122】
図10Aは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法のトレンチ形成工程の一例を示した図である。トレンチ形成工程においては、トレンチ20が形成される。なお、トレンチ形成工程は、実施例1の図4Aと同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0123】
図10Bは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の絶縁層形成工程の一例を示した図である。絶縁層形成工程においては、トレンチ21の内面に絶縁層30が形成される。なお、絶縁層形成工程は、実施例1の図4Bと同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0124】
図10Cは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第1の成長膜形成工程の一例を示した図である。第1の成長膜形成工程においては、トレンチ21を充填するように第1の成長膜40が形成される。第1の成長膜形成工程は、実施例1の図4Cと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0125】
図10Dは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第1のエッチバック工程の一例を示した図である。第1のエッチバック工程においては、第1の成長膜40の不要部分がエッチバックされて除去される。実施例3に係る貫通電極102の製造方法においては、トレンチ21内に3つの成長膜を充填するので、第1のエッチバック工程においては、残り2つの成長膜を充填できるスペースを空けるように、実施例1の場合よりも下方までエッチバックを行うようにしてよい。
【0126】
なお、エッチバックの方法や、用いられる材料自体は、実施例1の図4Dで説明した内容と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0127】
図10Eは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第2の成長膜形成工程の一例を示した図である。第2の成長膜形成工程においては、エッチバックされた第1の成長膜40の上に、トレンチ21の残りのスペースを充填するように第2の成長膜が形成される。第2の成長膜形成工程は、実施例1の図4Eと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0128】
図10Fは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第2のエッチバック工程の一例を示した図である。第2のエッチバック工程においては、第2の成長膜50が、トレンチ21の内部までエッチバックされる。第2のエッチバック工程においては、第3の成長膜60をトレンチ21内に充填できるスペースを空けるようにエッチングが行われるが、第2の成長膜50の横断部55が除去されない範囲でエッチングを行う。これにより、第2の成長膜50の横断部55をトレンチ21内に確実に残すことができ、絶縁部72の気密性を確実に高めることができる。
【0129】
図10Gは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第3の成長膜形成工程の一例を示した図である。第3の成長膜形成工程においては、トレンチ21の第2の成長膜40上の空間を充填するように第3の充填膜60が形成される。これにより、第3の充填膜60の横断部65が、トレンチ21内に形成される。
【0130】
また、第3の充填膜60は、第1の充填膜40及び第2の充填膜50と同様に、導電性を問わず、ポリシリコン膜等の半導体膜、タングステン等の導体膜、SiO膜等の絶縁体膜等を用途に応じて用いることができる。トレンチ21の内面に形成された絶縁層30で絶縁部72の絶縁性は担保されているからである。
【0131】
第3の充填膜60は、第1の充填膜40及び第2の充填膜50に関わらず、任意の膜を用いることができるが、熱膨張率を一定にするために、第1の充填膜40及び第2の充填膜50と同一の材料で成膜することが好ましい。
【0132】
第3の充填膜60の形成方法は、化学気相成長法、エピタキシャル成長法等、種々の成長方法を用いることができるが、例えば、化学気相成長法を用いるようにしてもよい。なお、成膜の方法自体は、実施例1の図4C、図4Eと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0133】
図10Hは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の第3のエッチバック工程の一例を示した図である。第3のエッチバック工程においては、第3の成長膜60が表面からエッチバックされ、キャップ基板10の表面と同一面まで除去される。これにより、トレンチ21の内部に成長膜40、50、60が充填されるとともに、第3の成長膜60がトレンチ21の上面の開口部を塞いだ状態となる。第3の成長膜60の横断部65は、トレンチ21内に存在し、気密性の向上に寄与することができる。
【0134】
図10Iは、実施例3に係る貫通電極102の製造方法の研磨工程の一例を示した図である。研磨工程においては、キャップ基板10の裏面側、つまりトレンチ21が形成されていない側から研磨が行われ、キャップ基板10が薄板化され、トレンチ21が貫通して貫通トレンチ20となる。これにより、絶縁部72の内側と外側とで、キャップ基板10が絶縁分離された状態となる。
【0135】
研磨工程において、第1の成長膜40の横断部45(図10H参照)は除去され、膜界面41がキャップ基板10の底面側から露出するが、第2の成長膜50の横断部55と第3の成長膜60の横断部65が多段で貫通トレンチ20内に存在するので、2重で気体等の流通を遮蔽し、一層高い気密度を実現することができる。
【0136】
このように、実施例3に係る貫通基板102及びその製造方法によれば、多段で貫通トレンチ20内に成長膜50、60の横断部55、65を設けることにより、極めて高い気密性を実現することができる。
【0137】
なお、実施例3においては、成長膜40,50、60を3段階とする多段の例を挙げて説明したが、より高い気密性が必要な場合には、図10Eに示した成長膜形成工程と図10Fに示したエッチバック工程を複数回繰り返し、4段以上の所望の段数の成長膜40、50、60を有する貫通基板102を構成することができる。
【実施例4】
【0138】
図11は、本発明の実施例4に係る貫通電極103の一例を示した断面構成図である。図11において、実施例4に係る貫通電極103は、キャップ基板10と、貫通トレンチ26と、絶縁層30と、第1の成長膜40と、第2の成長膜50とを備える。また、貫通トレンチ26と、絶縁層30と、第1の成長膜40と、第2の成長膜50で、絶縁部73を構成する。
【0139】
実施例4に係る貫通電極103は、貫通トレンチ26が、溝幅の広いトレンチ24と、溝幅の狭いトレンチ25とが連なって段差を有する形状に構成されている点で、実施例1乃至実施例3に係る貫通電極100、101、102と異なっている。また、溝幅の広いトレンチ24の内面は、側面及び底面の双方とも、絶縁層33で覆われているが、かかる絶縁層33が、溝幅の狭いトレンチ25を充填している点で、実施例1乃至実施例3と異なっている。
【0140】
溝幅の広いトレンチ24は、熱酸化膜では充填が困難であり、成長膜で充填することが必要な通常の溝幅を有するトレンチであり、実施例1乃至実施例3において説明した貫通トレンチ20、22と同程度の溝幅を有する。溝幅は、例えば、5〜20μm程度の溝幅であってもよい。
【0141】
溝幅の狭いトレンチ25は、キャップ基板10を加熱することにより形成される熱酸化膜で充填できる程度の溝幅を有するトレンチである。溝幅は、例えば、サブミクロン〜2μm程度の大きさに構成されてもよい。
【0142】
溝幅の広いトレンチ24は、キャップ基板10を貫通しないように、表面から所定深さまで形成され、溝幅の狭いトレンチ25は、溝幅の広いトレンチ24の底面から、キャップ基板10の裏面を貫通するように形成されている。平面的には、溝幅の広いトレンチ24が、溝幅の狭いトレンチ25を包含するような形状となる。
【0143】
第1の成長膜40は、材料や成膜方法は、実施例1乃至実施例3において説明した内容と同様であるが、溝幅の広いトレンチ24の両側面を底面に沿って横断する横断部45が残っている点で、実施例1乃至実施例3に係る貫通電極100、101、102と異なっている。また、第2の成長膜50についても、実施例1乃至実施例3の場合と同様に、横断部55は存在している。よって、成長膜は第1の成長膜40と第2の成長膜50の2段の多段構造であるが、横断部45、55については、双方の成長膜40、50に関して残存し、2段の横断部45、55が貫通トレンチ26内に存在する構成となっている。
【0144】
このように、溝幅の狭いトレンチ25を溝幅の広いトレンチ24の下方に形成し、溝幅の狭いトレンチ25には、熱酸化膜による絶縁層33を充填して密封構造とし、これにより貫通トレンチ26の一方の開口部を塞ぎ、溝幅の広いトレンチ24内の第1の成長膜40及び第2の成長膜50については、総て横断部45、55を残す構成としてもよい。絶縁層33にも、熱酸化膜の膜界面34が存在し、ここで気体が流通し易くなるが、横断部45、55が多段に形成されるので、高い気密性を実現することができる。
【0145】
図12は、実施例4に係る貫通電極103の製造途中段階の一例を示した断面構成図である。図12において、キャップ基板10に、溝幅の広いトレンチ24と、溝幅の狭いトレンチ27が連続的に形成されている。溝幅の広いトレンチ24の底面から、溝幅の狭いトレンチ25が更に深く延びるような段差形状となっている。熱酸化膜である絶縁層33は、溝幅の広いトレンチ25の側面及び底面を覆うとともに、溝幅の狭いトレンチ27を充填している。第1の成長膜40は、溝幅の広いトレンチ25の底面から、溝幅の広いトレンチ25の内部の所定高さまで充填されている。その上には、第2の成長膜50が、溝幅の広いトレンチ24の上方の開口部と、キャップ基板10の表面を覆うように形成されている。
【0146】
この状態から、キャップ基板10の表面と同一面まで第2の成長膜50をエッチバックし、キャップ基板10を裏面から研磨し、研磨ラインP4まで薄板化することにより、図11に示した貫通電極103が完成することになる。
【0147】
このように、実施例4に係る貫通電極によれば、貫通トレンチ26内の成長膜40、50の横断部45、55を総て残存させ、少ない成長膜で気密性の高い貫通電極103とすることができる。
【0148】
次に、図13A〜図13Cを用いて、実施例4に係る貫通電極103の製造方法について説明する。なお、図11及び図12と同様の構成要素については、同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0149】
図13Aは、実施例4に係る貫通電極103の製造方法の第1のトレンチ形成工程の一例を示した図である。第1のトレンチ形成工程においては、キャップ基板10の表面に、溝幅の狭いトレンチ27が形成される。溝幅の狭いトレンチ27の形成は、トレンチ27の溝幅の開口を有するマスク80を用いて、ドライエッチングにより行うようにしてよい。
【0150】
図13Bは、実施例4に係る貫通電極103の製造方法の第2のトレンチ形成工程の一例を示した図である。第2のトレンチ形成工程においては、溝幅の狭いトレンチ27を包含するように、溝幅の広いトレンチ24が形成される。溝幅の広いトレンチ24は、溝幅の狭いトレンチ27の形成に用いたマスク80よりも開口幅の広いマスク90を用いて、溝幅の狭いトレンチ27を開口で包含するよう配置して、ドライエッチングにより形成してよい。
【0151】
図13Cは、実施例4に係る貫通電極103の製造方法の絶縁層形成工程の一例を示した図である。絶縁層形成工程においては、キャップ基板10が加熱され、トレンチ28を含むキャップ基板10の表面に、熱酸化膜の絶縁層33が形成される。このとき、溝幅の広いトレンチ24の表面は、絶縁層33の薄膜で被覆された状態となるが、溝幅の狭いトレンチ27は、絶縁層33で充填される。ここで、溝幅の狭いトレンチ27には、絶縁層33の膜界面34が形成され、この部分については、成長膜の場合と同様に、気体が流通し易い状態となる。
【0152】
図13Cの状態は、形状的に考えると、キャップ基板10に、溝幅の広いトレンチ24のみが形成された状態である。よって、以後の工程は、実施例1に係る貫通基板100の製造方法で説明した図4A〜図4Fの工程を、そのまま適用することができる。つまり、第1の成長膜形成工程、第1のエッチバック工程及び第2の成長膜形成工程を経ることにより、図12と同じ状態とすることができる。
【0153】
図12の状態となったら、第2のエッチバック工程により第2の成長膜50をエッチバックし、研磨工程を行うことにより、図11の貫通電極103を製造することができる。
【0154】
このように、実施例4に係る貫通電極103の製造方法においては、トレンチ28の形成工程と、研磨工程が異なるが、それ以外は、実施例1に係る貫通電極100の製造方法を利用し、比較的簡素な工程で、気密性の高い貫通電極103を製造することができる。
【0155】
なお、実施例4においては、成長膜を2段とする例を挙げて説明したが、実施例3と組み合わせて、成長膜を3段以上として構成してもよい。実施例4に係る貫通電極103の構成であれば、貫通トレンチ26内の総ての成長膜の横断部を残すことができるので、更に気密性を高めることができる。
【実施例5】
【0156】
図14は、本発明の実施例5に係る貫通電極104の一例の断面構成図である。なお、実施例5において、実施例1と同様の構成要素については、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0157】
実施例5に係る貫通電極104は、キャップ基板10と、貫通トレンチ20と、第1の成長膜42と、第2の成長膜50とを備える。また、貫通トレンチ20と、第1の成長膜42と、第2の成長膜52は、絶縁部74を構成する。
【0158】
実施例5に係る貫通電極104は、貫通トレンチ20の形状は、実施例1に係る貫通電極100と共通している。
【0159】
一方、実施例5に係る貫通電極104は、貫通トレンチ20の内表面に絶縁層30が形成されておらず、第1の成長膜42及び第2の成長膜52が絶縁膜である点で、実施例1に係る貫通電極と異なっている。つまり、実施例5に係る貫通電極104においては、貫通トレンチ20の表面の絶縁層30ではなく、貫通トレンチ20に充填された第1の成長膜42及び第2の成長膜52で、貫通電極104の絶縁部74の絶縁性を担保する。なお、第1の成長膜42及び第2の成長膜52に用いられる絶縁膜としては、例えば、SiO膜であってもよい。
【0160】
このように、第1の成長膜42及び第2の成長膜52を絶縁膜とし、貫通トレンチ20の側面には何も膜を形成しない構成としてもよい。より簡素な構成で、貫通電極104を構成することができる。
【0161】
第2の成長膜52に横断部56が存在し、高い気密性を実現できるのは、実施例1に係る貫通電極100と同様である。
【0162】
なお、実施例5に係る貫通電極104の製造方法は、実施例1の図4A〜図4Iにおいて説明した貫通電極100の製造方法において、図4Aのトレンチ形成工程を行った後、図4Bの絶縁層形成工程を行わずに、図4Cの第1の成長膜形成工程以降を行うようにしればよい。
【0163】
実施例5に係る貫通電極104及びその製造方法によれば、簡素な構成及び工程で、気密性の高い貫通電極104を構成することができる。
【実施例6】
【0164】
図15は、本発明の実施例6に係る貫通電極105の一例を示した断面構成図である。実施例6に係る貫通電極105は、キャップ基板10と、貫通トレンチ22と、第1の成長膜42と、第2の成長膜52とを備える。また、貫通トレンチ22と、第1の成長膜42と、第2の成長膜52とで、絶縁部75を構成する。
【0165】
実施例6に係る貫通電極105は、貫通トレンチ22の形状は、実施例2に係る貫通電極101と同様に、テーパ形状を有する点で共通するが、絶縁層30が貫通トレンチ22の内表面に形成されておらず、第1の成長膜42及び第2の成長膜52がSiO膜等の絶縁膜で構成されている点で、実施例2に係る貫通電極101と異なっている。
【0166】
このように、テーパ形状の貫通トレンチ22を有する貫通電極105においても、絶縁部75の絶縁性を、第1の成長膜42及び第2の成長膜52で担保するようにしてよい。第2の成長膜52に横断部56が形成去れている点は、実施例5と同様であり、優れた気密性を担保できる。
【0167】
なお、実施例6に係る貫通電極105の製造方法は、実施例5において説明した貫通電極104の製造方法において、トレンチ21の形状をテーパ形状のトレンチ23に変更すればよい。
【0168】
また、テーパ形状を、下方にゆくにつれて広くなる逆テーパ形状としてもよいことも、実施例2に係る貫通電極101と同様である。
【0169】
実施例6に係る貫通電極105によれば、貫通トレンチ22がテーパ形状を有する場合においても、貫通トレンチ22の内部に直接絶縁材料からなる第1の成長膜42及び第2の成長膜52を形成することにより、簡素な構成及び工程で絶縁部75の絶縁性を担保することができる。また、第2の成長膜52は、貫通とレンチ22の両側面間を、第1の成長膜42上で横断する横断部56を有するので、他の実施例と同様に、貫通電極105の気密性を高めることができる。
【実施例7】
【0170】
図16は、本発明の実施例7に係る貫通電極106の一例の断面構成を示した図である。図16において、実施例7に係る貫通電極106は、キャップ基板10と、貫通トレンチ20と、第1の成長膜42と、第2の成長膜52と、第3の成長膜63とを備える。また、貫通トレンチ20と、第1の成長膜42と、第2の成長膜52と、第3の成長膜63は、絶縁部76を構成する。
【0171】
実施例7に係る貫通電極106は、第1の成長膜42及び第2の成長膜52のみならず、第3の成長膜63も備える点で、実施例3に係る貫通電極102と共通するが、貫通トレンチ20の内面に絶縁層30が形成されていない点で異なっている。実施例7に係る貫通電極106においては、第1の成長膜42、第2の成長膜52及び第3の成長膜62には、絶縁膜を用いるようにする。これにより、絶縁層30が存在しなくても、絶縁部76の絶縁性を担保することができる。
【0172】
また、第2の成長膜52は、第1の成長膜42の上面上に、貫通トレンチ20の両側面間を横断する横断部56を備え、第3の成長膜62も、第2の成長膜52の上面上に、両側面間を横断する横断部66を多段で備えている。これにより、貫通電極106の絶縁部76の気密性を一層高めることができる。
【0173】
なお、実施例7に係る貫通電極105の製造方法は、実施例3の図10A〜図10Iに示した貫通電極102の製造方法において、図10Aのトレンチ形成工程を行った後、図10Bの絶縁層形成工程を行わずに、直接図10Cの第1の成長膜形成工程を行うようにすればよい。これにより、工程数を1つ減らしつつ、気密性の高い貫通電極106を製造することができる。
【0174】
また、図16において、成長膜42、52、62が3つの例を挙げて説明したが、更に多くの成長膜を積層し、横断部56、66の数を増やして、気密性を高める構成としてもよい。
【0175】
実施例7に係る貫通電極106によれば、工程数を減少させつつ、横断部55、66を多段で設けることができ、高い気密性を実現することができる。
【0176】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。特に、必要に応じて、各実施例同士は組み合わせることができ、例えば、実施例2と実施例3を組み合わせて、テーパ形状の貫通トレンチ22に、3段以上の多段で成長膜40、50、60を形成し、横断部55、65を複数段設けるような態様とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、気密性を要する貫通電極全般に利用することができ、例えば、センサやアクチュエータとして構成されるMEMS等の微小構造体に利用することができる。
【符号の説明】
【0178】
10 キャップ基板
11、13 電極領域
12 周辺領域
20、22、25、26 貫通トレンチ
21、23、24、27、28 トレンチ
30、31、32、33、120 絶縁層
40、42 第1の成長膜
41、51 膜界面
45、55、65 横断部
50、52 第2の成長膜
60、62 第3の成長膜
70〜76 絶縁部
80、90 マスク
100〜106 貫通電極
110 ザグリ
130 配線
140 微小構造体素子基板
141 構造体
142、143 電極
144、145 酸化膜
146 封止領域
150 微小構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する基板の所定領域を貫通トレンチで囲み、周囲から絶縁分離した貫通電極において、
前記貫通トレンチ内の深さ方向における所定部分を塞ぐように充填された第1の成長膜と、
前記貫通トレンチの両側面の間を横断する横断部を含み、該横断部の底面部が前記第1の成長膜の内側に接触するように充填された第2の成長膜と、を有することを特徴とする貫通電極。
【請求項2】
前記貫通トレンチの内面には、絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の貫通電極。
【請求項3】
前記所定部分は、前記貫通トレンチの開口部の一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通電極。
【請求項4】
前記第2の成長膜は、前記貫通トレンチの開口部の他方を塞ぐように充填されていることを特徴とする請求項3に記載の貫通電極。
【請求項5】
前記第1の成長膜及び前記第2の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の貫通電極。
【請求項6】
前記第2の成長膜の、前記第1の成長膜と反対側には、前記貫通トレンチの両側面の間を横断する横断部を含み、該横断部の底面部が前記第2の成長膜に接触するように第3の成長膜が充填されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の貫通電極。
【請求項7】
前記第3の成長膜は、前記貫通トレンチの開口部の他方を塞ぐように充填されていることを特徴とする請求項6に記載の貫通電極。
【請求項8】
前記第1の成長膜、前記第2の成長膜及び前記第3の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする請求項6又は7に記載の貫通電極。
【請求項9】
前記貫通トレンチは、側面が前記基板の表面に対して垂直に形成されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の貫通電極。
【請求項10】
前記貫通トレンチは、側面がテーパ形状を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の貫通電極。
【請求項11】
前記貫通トレンチは、前記基板の表面から所定深さまで形成された第1の溝幅を有する第1のトレンチと、該第1のトレンチの底面から前記基板の裏面までを貫通し、前記第1の溝幅よりも狭い第2の溝幅を有する第2のトレンチを有し、
前記所定部分は、前記第1のトレンチの底面であり、
前記第2のトレンチは、絶縁層で充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通電極。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の貫通電極と、
表面に電極が形成された微小構造体素子基板とを有し、
前記貫通電極と、前記微小構造体素子基板の前記電極が接合されたことを特徴とする微小構造体。
【請求項13】
導電性を有する基板の所定領域を、貫通トレンチにより周囲から絶縁分離した貫通電極の製造方法であって、
導電性を有する基板に、トレンチを形成するトレンチ形成工程と、
前記トレンチを充填するように、第1の成長膜を形成する第1の成長膜形成工程と、
該第1の成長膜を、前記トレンチの内部までエッチバックする第1のエッチバック工程と、
前記第1の成長膜の上に、前記トレンチを充填するように、第2の成長膜を形成する第2の成長膜形成工程と、
前記第2の成長膜の不要部分を、前記トレンチの両側面を横断する横断部を除去しない範囲でエッチバックにより除去する第2のエッチバック工程と、を含むことを特徴とする貫通電極の製造方法。
【請求項14】
前記第2のエッチバック工程は、前記第2の成長膜を前記基板の表面と同一面までエッチバックすることを特徴とする請求項13に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項15】
前記第1の成長膜及び前記第2の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする請求項13又は14に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項16】
前記第2のエッチバック工程は、前記第2の成長膜を前記トレンチの内部までエッチバックし、
前記第2のエッチバック工程の後に、前記第2の成長膜の上に前記トレンチを充填するように第3の成長膜を形成する工程と、該第3の成長膜の不要部分を、前記トレンチの両側面を横断する横断部を除去しない範囲でエッチバックにより除去する第3のエッチバック工程と、を更に有することを特徴とする請求項13に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項17】
前記第3のエッチバック工程は、前記基板の表面と同一面までエッチバックすることを特徴とする請求項16に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項18】
前記第1の成長膜、前記第2の成長膜及び前記第3の成長膜は、絶縁膜であることを特徴とする請求項16又は17に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項19】
前記トレンチ形成工程と前記第1の成長膜形成工程との間に、前記基板を加熱して前記トレンチの表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を更に有することを特徴とする請求項11乃至16にいずれか一項に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項20】
前記トレンチを、前記基板の表面に対して側面が垂直になるように形成することを特徴とする請求項13乃至19のいずれか一項に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項21】
前記トレンチを、側面がテーパ形状になるように形成することを特徴とする請求項13乃至19のいずれか一項に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項22】
前記トレンチ形成工程は、第1の溝幅を有する第1のトレンチを形成する工程と、
該第1のトレンチを包含する前記第1の溝幅よりも広い第2の溝幅を有する第2のトレンチを形成する工程とを含み、
前記トレンチ工程と前記第1の成長膜工程との間に、前記第1のトレンチを充填するとともに、前記第2のトレンチの内面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を有し、
前記第2のトレンチに対して前記第1の成長膜形成工程以後の工程を行うことを特徴とする請求項13に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項23】
表面に電極が形成された微小構造体素子基板を用意する工程と、
請求項13乃至22のいずれか一項に記載された貫通電極の製造方法により製造された貫通電極を、前記微小構造体素子基板の前記電極に接合する工程と、を含むことを特徴とする微小構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate

【図4G】
image rotate

【図4H】
image rotate

【図4I】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate

【図10E】
image rotate

【図10F】
image rotate

【図10G】
image rotate

【図10H】
image rotate

【図10I】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−255436(P2011−255436A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130258(P2010−130258)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】