説明

走行安定二輪車

【課題】二輪車の軽快性を損なうことなく、転倒防止機能を高めた、前後に幼児2人を乗せた3人乗りにも供する安全性の高い走行安定二輪車を提供する。
【解決手段】後輪部に左右独立のトレーリングアーム141とストラット150を備えたトレーリングアーム式懸架装置に補助輪RRを設け、該トレーリングアーム141の回転軸をチエンステイ110の下部であり、側面視で後輪タイヤの外径線の外、かつ前側に設け、トレーリングアーム141を略水平に配置し、前記ストラット150の上部を、前記チエンステイ110及び後フォーク120に取付け、下部を前記トレーリングアーム141に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪に左右独立のトレーリングアームとストラットからなるトレーリング式の懸架装置に補助輪を設けた二輪車であり、二輪車の軽快性を損なうことなく、転倒防止機能を高めた、前後に幼児2人を乗せた3人乗りにも供する安全性の高い走行安定二輪車(以下「二輪車」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車は、軽量安価で機動性が高く、買い物や、母親等による幼稚園児の送迎等に使用されているが、自転車の定員は、安全性の観点から道路交通法に基き都道府県公安委員会規則で、運転する大人のほかに幼児用座席に6歳未満の幼児1人の同乗が認められている。東京都などでは、更に幼児1人を背負って運転することも認められているが、定員に違反した場合には道交法違反で2万円以下の罰金または科料の対象となっている。
【0003】
しかし、実際には多くの母親等が幼稚園児の送迎や買い物等において3人乗りをするケースも多く、少子社会の育児支援や、女性の社会進出の観点等、幼児2人の同乗まで認めるべきとの社会的要請も少なくないことから、警視庁で検討がなされ、3人乗りをしても安定した構造の自転車であれば母親の前後に2人を乗せることも容認する方向で検討することになり、同庁は自転車産業振興協会等の関係団体に材質や構造、価格の面から3人乗り自転車の普及の可能性について検討を要請する等、3人乗りをしても安定した構造の自転車の開発が急がれることとなった。
【0004】
下記特許文献1には、後輪の左右に後輪と並列に配置された補助輪を備え、該左右の補助輪は、前端が3角状枠体に枢支され後端側が上下しうるトレーリングアームの後端部に回転自在に軸支され、該トレーリングアームを、前記補助輪が下向きに移動する回動の向きに付勢する左右独立した付勢手段と、前記トレーリングアームの左右それぞれの回動を固定するアームロック手段とを具え、該アームロック手段の操作により、前記トレーリングアームの回動を固定し補助輪の上下動を固定する自転車が示されている。
【特許文献1】特開2007−145318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、3輪自転車は重量が重く、構造が複雑で値段が高くなり、都市部等の狭い道路には不向きで二輪車の有する軽快性がなく、かつ大きな駐輪スペースが必要となって、従来の駐輪スペースでは対応できないという問題がある。
【0006】
図10は、上記特許文献1に記載の従来例に係る補助輪付き二輪車の側面図であり、図11は図10に記載の補助輪付き二輪車の補助輪部の拡大斜視図である。
【0007】
図10、11に示されるように、この補助輪付き二輪車500は、可動式の大きな3角状の枠体510を備え、この3角状の枠体510とトレーリングアーム520の間にストラット550を設け、かつトレーリングアーム520にはディスクロータ530を、3角状の枠体510にはキャリパー540を備え、またハンドルレバー560部には、ディスクロータ530の回動を固定して、補助輪RRの上下動を固定するための2連式係合部が設けられている。
【0008】
そのため、構造が複雑で高価となり、また転倒防止のための補助輪の上下動の固定と、その固定の解除をハンドルレバー560でタイミングを失することなく的確に行うのは難しいと考えられる。また補助輪による転倒防止機能を高めるためには、補助輪RRの前後位置は後輪RWの位置より前方に配置するのが好ましいが、3角状の枠体510を設けているため、トレーリングアーム520の長さが制約を受け短いため、補助輪RRを後輪RWより前方に配置することは、トレーリングアーム520の長さがさらに短くなり困難であると考えられる。またトレーリングアーム520の支軸560の上下位置が高く、トレーリングアームの前後傾斜が大きく、ストラット550の取付け位置も、支軸560に近かいので、ストラット550の負荷が大きくなりストラット550が大型となることが考えられる。
【0009】
本発明は、係る問題点に鑑みて、鋭意研究・検討の結果なされたものであり、簡単な構造にして、二輪車の軽快性を損なうことなく、転倒防止機能を高め、前後に幼児2人を乗せた3人乗りにも供する安全性の高い二輪車の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1の発明は、後輪部に左右独立のトレーリングアームとストラットを備えたトレーリングアーム式懸架装置に補助輪を設けた二輪車において、該トレーリングアームを回動自在に支持するための支軸がチエンステイの下部であり、側面視で後輪タイヤの外径線の外、かつ前側に設けられ、該トレーリングアームが略水平に配置され、前記ストラットの上部が、前記チエンステイまたは、チエンステイ及び後フォークに取付けされ、下部が前記トレーリングアームに取付けされていることを特徴とする二輪車である。
【0011】
ストラットの上部のチエンステイと後フォークへの固定は、補強ブラケットを設け、そのブラケットにストラットの上部を取付ける小ブラケットを設けてもよいし、前記補強ブラケットに替えていわゆるエンドプレートを大型化してストラットの上部を取付けるようにしてもよい。
【0012】
補助輪のトレッド(左右間隔)は従来の自転車のペダルの外端間隔からハンドルバーの外端間隔の範囲に納めればよい。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記左右のトレーリングアームは、その後端部外側に、補助輪を回転自在に支持する車軸が左右方向に交差して固定され、該車軸の前部かつ外側にストラットの下部を取付けするブラケットが取付けられ、前記トレーリングアームの前端部には、該トレーリングアームを回動自在に支持するためのアームカラーが左右方向に貫通し、該トレーリングアームの内側の縦壁より張出すようにして固定され、一方、左右のチエンステイの下面に直接または支持部材を介して円筒が固定され、該円筒内に、左右端から中央に向かって拡径する段付きの支軸が嵌挿され、該支軸の左右方向中央部に位置する最大径部において、該支軸は前記円筒に対して固定され、前記アームカラーの内側端部が、前記円筒の端部の内径部とオーバラップするように組付けされ、前記アームカラーと前記支軸の小径部との摺接寸法を大きく確保したことを特徴とする二輪車である。
【0014】
トレーリングアームの前端部の左右外幅は走行時のペダルと干渉しないように小さく抑えながらトレーリングアーム特に支軸部(アームカラー部)の強度・剛性を確保し、またトレーリングアームの地上高さを確保する。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記補助輪のホイール端における荷重―タワミ特性が上向きの最大ストロークの略1/2を超える範囲において非線形に立上がり、前記上向きの全移動量が静的な転倒限界角相当量と同等、好ましくはやや小であることを特徴とする二輪車である。
【0016】
補助輪の上向きの移動量が小さいとき、即ち転倒の恐れのない傾斜角の小さいときは、バネ定数を小さくして、二輪走行に必要な傾斜が拘束されないようにし、傾斜角の大きいときは、上向きの荷重―タワミ特性を非線形に立上げて転倒を防止する。
【0017】
非線形特性はコイルスプイングの密着によるものに限られず、前記外筒の内部または外部において、該外筒と同軸にバンパーラバーを設けて非線形特性を出してもよい。また走行抵抗が減少するように、直進(直立)走行時に、補助輪が浮上り接地しないようにしてもよい。
【0018】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記補助輪のホイール端における荷重―タワミ特性が上向きの移動量の略全域に亘って線形であり、前記上向きの全移動量が静的な転倒限界角相当量と同等、或はそれ以上であることを特徴とする二輪車である。
【0019】
第3の発明に対して、傾斜走行を重視したものである。また第3の発明と同様走行抵抗が減少するように、直進(直立)走行時に補助輪が浮上り接地しないようにしてもよい。
【0020】
第5の発明は、第3または第4の発明において、前記補助輪のホイール端における、減衰力特性が線形型であり、上向きの減衰力が下向きの減衰力より大きく、好ましくは2倍以上であることを特徴とする二輪車である。
【0021】
減衰力特性を線形型とし、上下方向の速度の大きいときの減衰力が頭打ちすることなく、かつ下向きの減衰力に対して、上向きの減衰力を大きくして、減衰力を転倒防止に機能させる。
【0022】
第6の発明は、第1乃至第5の発明において、左右のスタンドアームの略中央部から左右方向外側に延び、かつ側面視前方に略J字状に延びたフックまたはフォーク付きのスタンドを備え、前記二輪車を該スタンドにより直立させると、前記フックまたはフォークが、前記左右のトレーリングアームの後端部において左右方向に交差し内側に延びる支持ロッドまたは前記補助輪の車軸を押下げまたは前記後輪と補助輪が接地した直進走行状態のままで固定し、前記左右の補助輪の上向き移動を固定して、該補助輪が前記二輪車の転倒防止に寄与することを特徴とする二輪車である。
【0023】
スタンドアームを折曲げて、スタンドにより二輪車を直立させたとき、スタンドアームは接地しないで、補助輪のみが接地するようにしてもよいし、補助輪と後輪の両方が接地するようにしてもよい。なお上記支持ロッドまたは補助輪の車軸が挿入されるフォークの挿入幅は支持ロッドまたは補助輪の車軸の挿入が容易なように挿入口部において広くするのは言うまでもない。
【0024】
第7の発明は、第1乃至第6の発明において、第2ケースとの接合面部に、レバー操作により一の端面が多段の段付きカムの作用面と近接または離間するように回動するハンドルレバーが取付けられた第1ケースと、前記接合面に、直交するように略中央部にガイド孔の設けられた第2ケースと、該第2ケースのガイド孔に嵌挿され該ガイド孔の軸方向に摺動し、前記第2ケース内側に位置する端部に前記多段の段付きのカムが固定されたロッドと、前記第2ケースの外側に位置する前記ロッドの他端部に固定された操作ボタンと、該操作ボタンと前記第2ケースの外壁との間に設けられ、前記カムを前記ハンドルレバーの一の端面と離間させるスプリングを備え、前記ハンドルレバーをグリップ操作しながら、前記操作ボタンをプッシュ操作し、その後前記ハンドルレバーのグリップ操作を解除すれば、前記ハンドルレバーの一の端面と前記カムの作用面とが係合して、前記前輪及び/または後輪の制動状態が維持され、その後再度前記ハンドルレバーをグリップ操作すれば前記係合が外れて、該前輪及び/または後輪の制動状態が解除されることを特徴とする二輪車である。
【0025】
第8の発明は、第1乃至第6の発明において、前記ストラットは、エンドキャップによってその上下端部が密閉された円筒からなる外筒と、該外筒の内部において、該外筒の内面を軸方向に摺動し、エンドキャップによってその上下端部が密閉された円筒からなる内筒と、該内筒の軸芯部に配置され、下端部が該円筒の上端部のエンドキャップに固定され、上端側が前記外筒の上側のエンドキャップを貫通し、上端部に第1のマウント部品が取付けられる第1ロッドと、前記内筒内部に配置され、該内筒の内面を軸方向に摺動するピストンと、該内筒の軸芯に配置され上端部に前記ピストンが固定され、下端側が、前記内筒の下側のエンドキャップを貫通し、該エンドキャップの下側に位置する外筒の下側のエンドキャップに固定され、下端部に第2のマウント部品が取付けられる第2のロッドと、前記外筒の内部かつ下端部で、前記外筒の下側のエンドキャップと前記内筒の下側のエンドキャップとの間に形成される第1空気室内に格納され、前記ストラットの負荷を支持するコイルスプリングと、前記外筒の内部かつ上端部で、前記外筒の上側のエンドキャップの間に形成される第2空気室内に取付けられ前記ストラットの伸長量を制限するバンパーラバーと、前記ピストンによって前記内筒内を上下に区分して形成された2つのオイル室を有し、前記ストラットの伸縮によって、該2つのオイル室の間を該ピストンに設けられたオリフィスを介し減衰オイルが移動して、所定の減衰力が得られることを特徴とする走行安定二輪である。
【0026】
第1空気室と第2空気室を連通することによって、ストラットの伸縮による第1空気室及び第2空気室の負圧時におけるダストの吸込みを防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明は、後輪部に左右独立のトレーリングアームとストラットを備えたトレーリングアーム式懸架装置に補助輪を設けた二輪車において、該トレーリングアームを回動自在に支持するための支軸がチエンステイの下部であり、側面視で後輪タイヤの外径線の外、かつ前側に設けられ、該トレーリングアームが略水平に配置され、前記ストラットの上部が、前記チエンステイまたは、チエンステイ及び後フォークに取付けされ、下部が前記トレーリングアームに取付けされていることを特徴とする二輪車であるから、従来の二輪車の形態を損なうことなく、転倒防止機能を向上することができる。
【0028】
また、全体の大きさ(全長・全高・全幅)、重量が従来の二輪車と略同一で、駐輪時等の取扱いや駐輪スペースが従来の二輪車と略同じであり、現行法規が定める普通自転車のサイズ(長さ190cm、幅60cm)に適合させることができる。補助輪の左右間隔(トレッド)を、左右のペダルの外端間隔と同等にすれば、狭い通路を容易に走行でき、ハンドルバーの外端間隔と同等にすれば、より高い転倒防止機能が得られる。
【0029】
また、本発明は、いわゆる自転車に限定されるものではなく、電動自転車、原動機付き自転車等の二輪車に広く適用される。
【0030】
第2の発明は、第1の発明において、前記左右のトレーリングアームは、その後端部外側に、補助輪を回転自在に支持する車軸が左右方向に交差して固定され、該車軸の前部かつ外側にストラットの下部を取付けするブラケットが取付けられ、前記トレーリングアームの前端部には、該トレーリングアームを回動自在に支持するためのアームカラーが左右方向に貫通し、該トレーリングアームの内側の縦壁より張出すようにして固定され、一方、左右のチエンステイの下面に直接または支持部材を介して円筒が固定され、該円筒内に、左右端から中央に向かって拡径する段付きの支軸が嵌挿され、該支軸の左右方向中央部に位置する最大径部において、該支軸は前記円筒に対して固定され、前記アームカラーの内側端部が、前記円筒の端部の内径部とオーバラップするように組付けされ、前記アームカラーと前記支軸の小径部との摺接寸法を大きく確保したことを特徴とする二輪車であり、車軸の前部でトレーリングアームの外側にストラットの下部を取付けるブラケットが設けられているので、補助輪からの上下荷重とストラットの反力によりトレーリングアームに加わる捩じりモーメントを小さくしてトレーリングアームを小型化できる。またトレーリングアームのアームカラーの左右方向の寸法を大きく確保しているので、ペダルとトレーリングアームの前端部との干渉を避けながら、補助輪の左右方向の入力荷重によって、トレーリングアームのアームカラー部(支軸部)に加わる曲げモーメントに対して充分な強度・剛性を有する。
【0031】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記補助輪のホイール端における荷重―タワミ特性が上向きの全移動量の略1/2を超える範囲において非線形に立上り、前記上向きの全移動量が静的な転倒限界角相当量と同等、好ましくはやや小であることを特徴とする二輪車であるから、乗り心地が損なわれることがなく転倒防止機能を高めることができるという効果がある。また直進(直立)走行時に、補助輪が浮上り接地しないようにすれば、走行抵抗が減少するという効果が得られる。
【0032】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記補助輪のホイール端における荷重―タワミ特性が上向きの移動量の略全域に亘って線形であり、前記上向きの全移動量が静的な転倒限界角相当量と同等、或はそれ以上であることを特徴とする二輪車であるから、傾斜走行が損なわれることなく、二輪車の軽快性が維持される。また第3の発明と同様、直進(直立)走行時に、補助輪が浮上り接地しないようにすれば、走行抵抗が減少するという効果が得られる。
【0033】
第5の発明は、第3または第4の発明において、前記補助輪のホイール端における、減衰力特性が線形型であり、上向きの減衰力が下向きの減衰力より大きく、好ましくは2倍以上であることを特徴とする二輪車であるから、減衰力を転倒防止に有効に機能させ、転倒防止機能を高めることができるという効果がある。
【0034】
第6の発明は、第1乃至第5の発明において、左右のスタンドアームの略中央部から左右方向外側に延び、かつ側面視前方に略J字状に延びたフックまたはフォーク付きのスタンドを備え、前記二輪車を該スタンドにより直立させると、前記フックまたはフォークが、前記左右のトレーリングアームの後端部において左右方向に交差し内側に延びる支持ロッドまたは前記補助輪の車軸を押下げまたは前記後輪と補助輪が接地した直進走行状態のままで固定し、前記左右の補助輪の上向き移動を固定して、該補助輪が前記二輪車の転倒防止に寄与することを特徴とする二輪車であるから、スタンドアームの接地幅より左右間隔の広い左右の補助輪が接地して二輪車の転倒防止に寄与するので、幼児を補助椅子に乗せた二輪車の転倒事故が防止されるという効果がある。またスタンダアームの形状を変更して、二輪車を直立させたときスタンドアームが接地しないようにしても同様の効果が得られる。
【0035】
第7の発明は、第1乃至第6の発明において、ハンドルバー部に前輪及び/または後輪用の駐車ブレーキ操作装置を備え、前記前輪及び/または後輪の制動状態を維持することができることを特徴とする二輪車であるから、二輪車をスタンドで直立させたとき補助輪のみが接地するようにした場合は、前輪の制動力により、補助輪と後輪の両方または補助輪とスタンドが接地するようにした場合は、前輪の制動力とスタンドの制動機能によって、二輪車の移動を固定して、転倒事故を防止できるという効果がある。
【0036】
第8の発明は、第1乃至第6の発明において、前記ストラットは、エンドキャップによってその上下端部が密閉された円筒からなる外筒と、該外筒の内部において、該外筒の内面を軸方向に摺動し、エンドキャップによってその上下端部が密閉された円筒からなる内筒と、該内筒の軸芯部に配置され、下端部が該円筒の上端部のエンドキャップに固定され、上端側が前記外筒の上側のエンドキャップを貫通し、上端部に第1のマウント部品が取付けられる第1ロッドと、前記内筒内部に配置され、該内筒の内面を軸方向に摺動するピストンと、該内筒の軸芯に配置され上端部に前記ピストンが固定され、下端側が、前記内筒の下側のエンドキャップを貫通し、該エンドキャップの下側に位置する外筒の下側のエンドキャップに固定され、下端部に第2のマウント部品が取付けられる第2のロッドと、前記外筒の内部かつ下端部で、前記外筒の下側のエンドキャップと前記内筒の下側のエンドキャップとの間に形成される第1空気室内に格納され、前記ストラットの負荷を支持するコイルスプリングと、前記外筒の内部かつ上端部で、前記外筒の上側のエンドキャップの間に形成される第2空気室内に取付けられ前記ストラットの伸長量を制限するバンパーラバーと、前記ピストンによって前記内筒内を上下に区分して形成された2つのオイル室を有し、前記ストラットの伸縮によって、該2つのオイル室の間を該ピストンに設けられたオリフィスを介し減衰オイルが移動して、所定の減衰力が得られることを特徴とする走行安定二輪であるから、荷重―タワミ特性が線形、非線形のいずれにも対応可能で、減衰機能付きの簡単、小型のストラットが得られるという効果がある。
【0037】
なお、出願人は、特願2008―137887により、ハンドル軸の上部で、メインフレームやヘッドチューブ等のハンドル操作時の非可動部に補助椅子や荷物籠を設け、ハンドル軸の前方からハンドル軸回りに前輪を操舵し、低速走行時のふら付きを防止した二輪車を出願しているが、これと前記第1乃至第8の発明を組合わせることにより、前後に幼児2人を乗せる3人乗りに供する、安全性の高い二輪車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図に基いて、本発明の実施形態について説明する。なお、図面は、公知部分、発明の要旨に直接関係のない部分、記載することにより反って煩雑となって不明瞭となる部分については、省略乃至簡略化している。
【0039】
本発明の実施形態は、従来の二輪車に対し後半分に特徴があり、前半分はハンドルレバー部を除き従来の二輪車と同じである。
【0040】
図1は、本発明の実施形態に係る二輪車の側面図であり、図2は、図1の後輪及び補助輪部の説明図であり、図3は、図2に係る平面図、図4は、図2に係る右側面図であり、実施形態に係る二輪車の後面を図示したものである。
【0041】
図1乃至4において、110はチエンステイ、120は後フォーク、116はペダル、114はチエン、160はスタンドであり、従来の自転車と変わりはない。
【0042】
141は断面矩形の角型鋼管製の左右一対からなるトレーリングアーム、RRは補助輪、150はチエンステイ110及び後フォーク120とトレーリングアーム141との間に配置され補助輪RRの上向き荷重を支持するストラットである。
【0043】
トレーリングアーム141は、側面視で前部と略中央部の2箇所で折曲げられ、平面視で略ハの字状をなし、前端部には二輪車のフレーム側に回動自在に軸支するためのアームカラー1415が設けられている(詳細、後述)。
【0044】
そして、トレーリングアーム141の後部には車軸1412が左右方向に貫通してトレーリングアーム141の左右の縦壁に溶接固定され、車軸1412に補助輪RRが回転自在に軸支されている。
【0045】
115は、トレーリングアーム141の前端部をチエンステイ110側に軸支するための円筒であり、チエンステイ110の下面に3枚のプレート1131、1132、1133からなる支持部材113を介して溶接固定されている。
【0046】
1411は中央に車軸1412が貫通する孔の設けられた碗状の補強板であり、孔の周囲は車軸1412と、外周部はトレーリングアーム141の外側の縦壁に溶接されている。1414はストラット150の下側を支持するための鋼板製のプレス成形されたブラケットであり、トレーリングアーム141の外側の縦壁に溶接されている。
【0047】
1413は、トレーリングアーム141を貫通し、左右方向内側に突き出し、トレーリングアーム141の左右の縦壁に溶接固定された丸棒鋼製の支持ロッド(詳細、後述)である。
【0048】
121はストラット150の上側を支持するための鋼板製のプレス成形されたブラケットであり、チエンステイ110と後フォーク120に溶接固定された鋼板製のプレス成形された断面コの字状の補助ブラケット122の外側面に溶接固定されている。トレーリングアーム141の前・後端部は開放端としているが、樹脂製等のエンドキャップを取付けてもよいし、金属製プレートを溶接して閉鎖構造としてもよい。
【0049】
補助輪RRは、空気入りタイヤとスポークホイールとからなり、平軸受け、ころ軸受け、玉軸受け等のいずれかを介して車軸1412に回転自在に軸支されている。補助輪RRは外径を大きくすると、重くコスト高となり、小さくすると地上高が小さくなるので、後輪RWの1/2程度にするのが好ましい。なお、車軸1412は地上高を大きくするためのトレーリングアームの下面に固定してもよい。
【0050】
車軸1412の前後位置は、補助輪RRと、スタンドアーム161、ロックプレート162操作用のロッド1621等のスタンド操作部品との間隙を確保してスタンド160の操作性を損なうことのないように後輪RWの軸芯より前方に配置している。なお、トレーリングアーム141の前端部の支軸142の位置は側面視で、後輪の外径より外かつ前側に配置し、トレーリングアーム141の長さを長くしているので、補助輪RRの車軸1412の前後位置は図1、2に示した位置よりさらに前方に移すことが可能である。
【0051】
111は後輪RWの軸芯部に取付けられた鋼板製のプレス成形されたエンドプレートであり、従来の自転車のエンドプレートと変わりはない。162は鋼板製のプレス成形されたロックプレートであり、支軸1613によりスタンドアーム161に回動自在に軸支され、エンドプレート111のハンガー片1111とロックプレート162のハンガー片1622の間にハンガースプリング112が張設され、ロックプレート162を前方に倒したときに、従来の自転車と同様にスタンド160が直立状態に拘束される。
【0052】
本実施の形態においては、補助輪RRが後輪RWの外側に平行に配置しているために、補助輪RRによって、ロックプレート162の操作が、制約されるためロックプレート162の外面にロッド1621を設けて、ロックプレート162の操作が、補助輪RRによって制約されることを排除している。なおストラット150の上側の支持のために補助ブラケット122を設けているが、これに替えてエンドプレート111を大型化してそれに支持するようにしてもよい。
【0053】
1611はスタンドアーム161の側面から左右方向外側に延び、さらに側面視で前方に略J字状に延び、スタンドアーム161の上下の略中央部に溶接固定されたフックであり、二輪車を、スタンドにより直立させるときトレーリングアーム141の支持ロッド1413を押下げて、補助輪の上向き移動を固定する。
【0054】
1614はフック1611の下面に設けられた円弧状の窪みであり、フック1611と支持ロッド1413の係合時に節度感を付与し、小さい前後力による不容易な係合の離脱を阻止するものである。
【0055】
二輪車を駐車する手順は、従来の自転車と同様であり、スタンドを押下げ(踏み下げ)、スタンドアーム161を接地させ上記の節度感の得られるところまで、後荷台フレーム124部を後方に持上げるようにして、二輪車を直立させる。そしてロックプレート162をロッド1621を押下げてロックする。これによりフック1611が、支持ロッド1413を押下げて、スタンドアームの接地面と同じ位置まで補助輪RRが下方に移動し、上向き移動を固定されるので、スタンドアーム161の接地幅より広い左右の補助輪RRによって有効に転倒防止が図られる。
【0056】
また、スタンドアームの形状を変更し(図2、161’)、二輪車を直立させた時、スタンドアームが接地することなく、支持ロッド1413を押下げまたは押下げることなく補助輪と後輪が接地した直進走行状態のまま補助輪の上向き移動を固定し、補助輪RRのみが接地するようにしてもよいし、補助輪と後輪の両方が接地するようにしてもよい。
【0057】
なお、図1、2、4において、GLは二輪車の通常の直立静止時の前後輪の接地面、GL′はスタンドにより直立させたときの補助輪及びスタンドアームの接地面を示している。また、図2に示した2点鎖線はスタンド160を跳ね上げた状態を示している。
【0058】
図5は、本発明の実施形態に係るトレーリングアームの支軸部の断面図である。図5において、142は左右端にネジ部が形成され中央に向かって拡径する2段の段付きの丸鋼棒製の支軸であり、中央部がボルト1426、バネ座金1427、ナット1428により円筒115に固定されている。
【0059】
1415はトレーリングアーム141をチエンステイ110側に回転自在に軸支するための鋼管製のアームカラーであり、トレーリングアーム141の内外の縦壁を貫通し、トレーリングアーム141の内外縦壁に溶接されている。
【0060】
そして、円筒115の左右端部にOリング1425が組付けられ、支軸142の左右の小径部が、アームカラー1415の内径部に嵌挿され、アームカラー1415の内側端部と内筒115の端部とがオーバラップし、そのオーバラップ部にOリング1425によるシールが形成され、アームカラー1415の内側端面が支軸142の段付き部と当接し、平座金1421、バネ座金1423、ナット1422を使用して、アームカラー141は支軸142に回動自在に締付け固定されている。
【0061】
操作時のペダル116とトレーリングアーム141の前端部との干渉を避けるため、左右のトレーリングアーム141の前端部の左右外幅間隔を小さくしているが、アームカラー1415の左右方向(摺接)寸法を大きくして、補助輪RRの左右方向の荷重によりアームカラー1415部に加わるモーメント(上下軸回りのモーメント)に充分耐え得るようにしている。なお、アームカラー1415に設けた溝1416を使用してダストカバー1424が装着されている。
【0062】
図6は、本発明の実施形態に係るストラットの断面図であり、(A)は圧縮時、(B)は伸張時を示している。
【0063】
図6において、151は丸鋼管製の外筒である。1513、1514はそれ上下のエンドキャップであり、外筒151の上下の端部に複数のビスで固定されている。
【0064】
156はストラットの伸長時のストロークを制限するためのバンパーラバーであり、1515はOリング1516を組込んだエンドワッシャーである。エンドワッシャー1515とバンパーラバー156はいずれも上側のエンドキャップ1513と外筒151の端部間に組込まれている。
【0065】
153は外筒151の内部に嵌挿され、外筒151内で上下方向に摺動する丸鋼管製の内筒であり、1531、1532は上下のエンドキャップであり、内筒153の上下の端部に加締め付けされ気密が保持されている。
【0066】
155はオリフィス1553、1554が設けられたピストン、154は丸棒鋼製のロッドであり、上端部にピストン155が固定され、下側はエンドキャップ1532を貫通し、エンドキャップ1532の下側に位置する外筒151のエンドキャップ1514にスナップリング1541を使用して固定されている。1534はOリングであり、ロッド154とエンドキャップ1532間の気密を保持している。ロッド154の下端部には、ストラット150をトレーリングアーム141のブラッケト1414に取付けるためのマウント部品158が装着されている。
【0067】
ストラット150をトレーリングアーム141に取付けるためのマウント部品158は、ブラケット1414の上側に位置するマウントラバー1581とその上下のワッシャー1582、1583と、下側に位置するマウントラバー1581とその上下のワッシャー1583、1584と、間座1585、バネ座金1587、ナット1586である。
【0068】
1551は、減衰力を制御する減衰バルブであり、複数枚の薄板金属板から構成されている。
【0069】
152は丸棒鋼製のロッドであり、下端に内筒153の上側のエンドキャップ1531が固定され、Oリング1533が組込まれ気密が保持されている。ロッド152の上端側はエンドキャップ1513を貫通して、上端部にストラット150をブラケット121に取付けるためのマウント部品159が装着されている。これらのマウント部品159は、間座1585を不要とする外は、上記のストラット150をトレーリングアーム141側に取付けるためマウント部品と同様の構成である。
【0070】
1511はストラット150の伸縮時に内筒154内に出入するロッド152の体積の変動分を吸収するためのガス室であり、1552は減衰オイルとガスの混合を防止するためのフリーピストンである。ストラット150の圧縮時は、ガス室1511は圧縮され伸長時は膨張する。
【0071】
157は補助輪RRの荷重を支持するコイルスプリングであり、外筒151に対して、内筒153を上方に離間させて、補助輪RRの上下方向のバネ特性を定めている。
【0072】
ストラット150が圧縮されて所定の値に達するとコイルスプリング157が部分的に密着して荷重―タワミ特性は非線形となり、更に圧縮量が増加すると、コイルスプリングは全域に亘り完全に密着して、補助輪の上方移動は制限される。
【0073】
また、ストラット150の伸縮動作において、外筒151に固定されたピストン155を基準にすると、内筒153が上下し、伸長時には、減衰オイルが、オリフィス1553と、減衰バルブ1551が油圧で変形し開孔したオリフィス1554を通って、第1オイル室1512から第2オイル室1517に移動して減衰力が発生する。一方圧縮時には、減衰オイルが、オリフィス1553のみを通って第2オイル室1517から第1オイル室1512に移動して伸長時より大きな減衰力が発生する。
【0074】
補助輪RRの荷重が減少して、補助輪RRが下方に移動すると、図(B)に示すように、ストラット150が伸長し、内筒153が上方に移動し、エンドキャップ1531が、バンパーラバー156と当接し、バンパーラバー156が圧縮変形し、バンパーラバー156の荷重―タワミ特性が立上って、補助輪RRの下方移動は制限される。
【0075】
なお、ストラット150の伸縮により、第1空気室1518、第2空気室1519は、減圧時にダストを吸い込むため、外筒151に沿わして連通管を設けるか、または内筒と外筒の間に通気溝を設けている(不図示)。
【0076】
また、本実施の形態においては、ストラット150の圧縮量はコイルスプリング157の全域に亘る密着で制限されるようにしているが、コイルスプリング157の内径部に伸長側のバンパーラバー156と同様のバンパーラバーを設けて、ストラット150の圧縮量(即ち、補助輪の上向き移動量)を調整してもよい。また図(B)において2点鎖線で示したバンパーラバーBRを設けて、補助輪RRの荷重―タワミ特性を非線形としてもよい。
【0077】
図7は本発明の実施の形態に係る補助輪の荷重―タワミ特性の説明図であり、非線形の場合を例示している。
【0078】
図7おいて、Hは補助輪の上向き最大移動量であり、コイルスプリング157が全域に亘り完全に密着した状態で定まる移動量である。Iは荷重―タワミ特性の線形範囲である。H−Iの領域が荷重―タワミ特性の非線形領域であり、コイルスプリングの部分的な密着によりこの領域に進入し、密着部分が増加するにつれて、荷重―タワミ特性は立上る。Kは補助輪の下向き最大移動量、Gはバンパーラバー156による非線形領域であり、移動量δ=0は二輪車の直立状態を示し、Lはバンパーラバー156を取外して、補助輪RRの荷重Wを0とした時の補助輪RRの下向き移動量、Wは直立時の補助輪荷重、Jはスタンドによる補助輪RRの押下げ量(下向き移動量)、ΔWはその押下げに要する押上げ力である。移動量(タワミ)δ、荷重Wはいずれも補助輪RRのホイール端における値を示している
ストラット150のコイルスプリング157のバネ定数を大きくすると、補助輪RRが負担する上下荷重が大きくなり、転倒防止の観点からは好ましい。
【0079】
しかし、二輪車は運転操作者が傾斜角を意識または無意識に感じ取って、ハンドルを操作し、重力と遠心力との合力の向きと、二輪車の傾斜角とのバランスを取りながら傾斜走行をするものであるから、この傾斜を抑え込むことは、二輪車の傾斜走行が阻害される。また補助輪の荷重負担を大きくすると、転がり抵抗が大きくなり、二輪車の軽快性が損なわれる。また後輪駆動時または制動時のスリップも懸念される。
【0080】
本実施形態の1例として、補助輪のトレッド(左右間隔)を500mmとすると、前後に2人の幼児を乗せた3人乗り時の静的な転倒限界傾斜角θは概算で約12度、そのときの補助輪の上向き最大移動量Hは約54mmである。また線形範囲Iを補助輪の上向き最大移動量Hの1/2とすると、Iは約27mmで、このときの相当傾斜角は約6度である。
【0081】
この相当傾斜角6度をより大きくして、より大きな傾斜が容易な傾斜走行を望む場合には、線形範囲Iを上方最大移動量Hの2/3程度に増加させてもよいし、トレッドTを600mmの範囲内において拡大し、さらに線形範囲Iも上向き最大移動量Hの2/3程度まで拡大するとよい。
【0082】
スタンド160による補助輪RRの押下げ量Jは10〜20mmとすればよい。
【0083】
図8は、本発明の実施の形態に係る補助輪の他の荷重―タワミ特性の説明図であり、線形の場合の2例を示している。図8において、荷重―タワミ特性線Aは図7に示したものに対してコイルスプリングの密着による非線形領域をなくして線形領域を広げ、静的な転倒限界傾斜角相当の移動量Hを超えたところで、バンパーラバー(図6に示したバンパーラバーBR)で上向き移動を制限している。荷重―タワミ特性線Bは、荷重―タワミ特性線Aに対して、直立時に補助輪RRをFだけ浮上らせたものであり、その他は荷重―タワミ特性線Aと同じである。
【0084】
荷重―タワミ特性線A、Bとも、図7に示したコイルスプリングの密着による非線形領域を有するものに対して、傾斜走行を重視したものであり、荷重―タワミ特性線Bは、直進走行時に補助輪RRを浮上らせて、転がり抵抗を軽減し、二輪車の軽快性をより重視している。
【0085】
図9は、本発明の実施形態に係る駐車ブレーキ装置のハンドルレバー部の説明図であり、(A)は側面図、(B)は図AのX―X断面図である。
【0086】
図9において、171は内側のケース、172は外側のケースであり、ビス1721、1722でハンドルバー178に固定され、ケース172にハンドルレバー173がピン1731で回動自在に軸支されている。
【0087】
174は多段に拡径した段付きのカムであり、カムの作用面1741にはハンドルレバー173と係合したときにその係合が不用意に外れないように緩傾斜が設けられている。175はロッドであり、ケース171のガイド孔1711に摺動可能に嵌挿されて、ケース171の内側に位置するロッド175の端部にカム174が固定され、ケース171の外側に位置するロッド175の他端部に操作ボタン176が固定されている。177は操作ボタン176のリターン用のコイルスプリングである。
【0088】
ハンドルレバー173をグリップ操作すると、ブレーキ用の策線が引張られて前輪に制動力が発生する。ハンドルレバー173をグリップ操作した状態で、操作ボタン176をプッシュすれば、カム174が軸方向に移動して、ハンドルレバー173の端面(係合面)1732とカムの緩傾斜の付けられたカム面1741とが係合し、操作ボタン176をプッシュした状態で、ハンドルレバー173のグリップ力を解除すれば、ハンドルレバー173は、カム174によって拘束され、制動力が維持される。ハンドルレバーの端面1732にもカム面1741に対応する緩傾斜が設けられているので、ハンドルレバーの端面1732とカム面1741との係合が不用意に解除されることはない。また、ハンドルレバー173をグリップ操作すれば、スプリング177の伸長力によって、ハンドルレバーの端面1732とカム面1741との係合が解除され、操作ボタン176は元の位置に戻り、制動力は解除される。
【0089】
ハンドルレバーの端面1732は、ブレーキの策線の調整具合、或いはブレーキシューの摩耗状態に応じて多段のカム174の内のいずれかの作用面1741と係合し、所定の制動力が確保される。
【0090】
なお、駐車ブレーキ操作装置はハンドルバーの左右いずれの側に設けてもよい。前輪用と後輪用を左右別々に設けてもよいし、左右の片方のみで、前・後輪の両用としてもよい。
【0091】
二輪車をスタンドで直立させたとき、スタンドアームが接地することなく、補助輪と後輪が接地するようにしたときは、前輪のみならず後輪の駐車ブレーキの制動力によっても二輪車の前後移動を固定して転倒事故の防止を図ることができる。
【0092】
表1は、スタンドを使用して、二輪車を直立に駐車したときの補助輪、後輪及びスタンドの接地状況と、その時の駐車ブレーキの使用区分を示したものである。
【0093】
ケース1は、補助輪RRを押下げて補助輪上向き移動を固定し、補助輪RRとスタンドアーム161の両方を接地させ、駐車ブレーキは前輪及び/またはスタンドのブレーキ機能を使用するものである。ケース2は、ケース1において、スタンドアームが浮上がる程度に補助輪を押下げて、補助輪のみを接地させて上向き移動を固定し、駐車ブレーキは前輪を使用するものである。
【0094】
ケース3は、スタンドアーム161の形状を変更して、スタンド160で二輪車を直立させた時に、スタンドアーム161が接地しないようにし、補助輪RRを押下げないで補助輪RRと後輪RWが接地した直進走行状態のまま補助輪RRの上向き移動を固定し、駐車ブレーキは前輪及び/または後輪を使用するものである。ケース4はケース3において、補助輪RRを押下げて後輪が浮上った状態で、補助輪RRの上向き移動を固定し、駐車ブレーキは前輪を使用するものである。
【0095】
上記の通り、本実施の形態においては、トレーリングアーム141の支軸142がチエンステイ110の下部であり、側面視で後輪タイヤRWの外径線の外、かつ前側に設けられ、該トレーリングアーム141が略水平に配置され、その後端部に補助輪RRを回転自在に取付け、ストラット150の上部をチエンステイ110及び後フォーク120に取付け、下部をトレーリングアーム141の外側に取付けた二輪車であるから、従来の自転車の基本構造を変更することなく、転倒防止機能を得ることができ、二輪車の軽快性を損なうことがない。また現行法規が定める普通自転車のサイズに適合する走行安定自転車を提供できる。
【0096】
また、アームカラー1415部とストラットの下部の取付け部と補助輪RRが平面視で略一直線上に配置されているので、トレーリングアーム141に加わる捩じりモーメントを小さく、トレーリングアーム141を小型化できる。またペダル116とトレーリングアーム141前端部との干渉を避けながら、アームカラー1415の左右(摺接)寸法を大きくしているので、アームカラー1415部に加わる曲げモーメント(上下軸回りの曲げモーメント)に対し、充分な強度・剛性を備えている。
【0097】
また、補助輪の荷重―タワミ特性を、タワミの小さいときはバネ定数を小さくロール剛性を小さくして、従来の二輪車と同様の傾斜走行を可能とし、一方上向きの最大移動量を、静的な最大転倒角相当量とし、その1/2または2/3を超えた領域でバネ定数を増加させ、荷重―タワミ特性を立上げているので、補助輪が有効に転倒防止に機能し、乗心地が損なわれることがない。また、二輪車の軽快性を重視する場合には、荷重―タワミ特性の線形領域を広くして、傾斜走行を損なわれないようにし、また直進走行時に補助輪を浮かせて転がり抵抗の増加を防止することもできる。
【0098】
また、ストラット150の減衰力特性を線形型とし、圧縮側の減衰力が、伸長側の減衰力より大きく好ましくは2倍以上にしているので、減衰力によっても、転倒防止機能が高められている。
【0099】
また、二輪車をスタンド160により直立させると、スタンドア−ム161のフック1611が支持ロッド1413を押下げ、補助輪RRまたは補助輪RRとスタンドアーム161の両方が接地し、補助輪RRまたは補助輪RRとスタンドアーム161の両方が有効に二輪車の転倒防止に機能する。また、スタンドアーム161の形状を変更して、接地しないようにしたときは、スタンドア−ム161のフック1611が支持ロッド1413を押下げまたは押下げないで補助輪RRと後輪RWが接地した直進走行状態のまま補助輪RRの上向き移動を固定し、補助輪の上向き移動を固定するので補助輪または補助輪と後輪の両方が接地して二輪車の転倒防止に機能する。
【0100】
また、駐車ブレーキは従来と同様のスタンド160による駐車時のブレーキ機能の外、ハンドルレバー173と操作ボタン176の操作により、前輪及び/または後輪の制動状態を維持できるので、二輪車の直立時の前後移動による事故防止を図ることができる。
【0101】
なお、本実施形態は、いわゆる自転車に限定されるものではなく、電動自転車、原動機付き自転車、自動二輪車等の二輪車に広く適用できる。
【0102】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態に係る二輪車の側面図である。
【図2】図1の後輪及び補助輪部の説明図である。
【図3】図2に係る平面図である。
【図4】図2に係る側面図であり、実施形態に係る二輪車の後面を図示したものである。
【図5】本発明の実施形態に係るトレーリングアームの支軸部の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るストラットの断面図であり、(A)は圧縮時、(B)は伸長時を示している。
【図7】本発明の実施形態に係る補助輪の荷重―タワミ特性の説明図であり、ホイール端の値を示している。
【図8】本発明の実施の形態に係る補助輪の他の荷重―タワミ特性の説明図であり、線形の場合の2例を示している。
【図9】本発明の実施形態に係る駐車ブレーキ装置のハンドルレバー部の説明図であり、(A)は側面図、(B)は図AのX―X断面図である。
【図10】従来例に係る補助輪付き二輪車の側面図である。
【図11】図10の補助輪付き二輪車の補助輪部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0104】
100・・・二輪車
101・・・メインフレーム
102・・・リヤチューブ
110・・・チエンステイ
111・・・エンドプレート
1111・・・ハンガー片
1112・・・チエンテンショナー
112・・・ハンガースプリング
113・・・支持部材
1131・・・プレート
1132・・・プレート
1133・・・プレート
114・・・チエン
115・・・円筒
116・・・ペダル
117・・・車軸(後輪)
120・・・後フォーク
121・・・ブラケット(ストラット上側)
122・・・補助ブラケット
123・・・後荷台ステイ
124・・・後荷台フレーム
130・・サドル
131・・・サドルポスト
140・・・補助輪取付け装置
141・・・トレーリングアーム
1411・・・補助板
1412・・・車軸(補助輪)
1413・・・支持ロッド
1414・・・ブラケット(ストラット下側)
1415・・・アームカラー
142・・・支軸
1421・・・平座金
1422・・・ナット
1423・・・バネ座金
1424・・・ダストカバー
1425・・・Oリング
1426・・・ボルト
1427・・・バネ座金
1428・・・ナット
150・・・ストラット
151・・・外筒
1511・・・ガス室
1512・・・第1オイル室
1513・・・エンドキャップ(上側)
1514・・・エンドキャップ(下側)
1515・・・エンドワッシャー
1516・・・Oリング
1517・・・第2オイル室
1518・・・第1空気室
1519・・・第2空気室
152・・・ロッド(外筒)
153・・・内筒
1531・・・エンドキャップ(上側)
1532・・・エンドキャップ(下側)
1533・・・Oリング
1534・・・Oリング
154・・・ロッド(内筒)
1541・・・スナップリング
155・・・ピストン
1551・・・減衰バルブ
1552・・・フリーピストン
1553・・・オリフィス
1554・・・オリフィス
156・・・バンパーラバー
157・・・コイルスプリング
158・・・マウント部品(第2のマウント部品)
1581・・・マウントラバー
1582・・・ワッシャー
1583・・・ワッシャー
1584・・・ワッシャー
1585・・・間座
1586・・・ナット
1587・・・バネ座金
159・・・マウント部品(第1のマウント部品)
160・・・スタンド
161,161’・・・スタンドアーム
1611・・・フック
1612・・・支軸(スタンドアーム)
1613・・・支軸(ロックプレート)
1614・・・ 窪み
162・・・ロックプレート
1621・・・ロッド(ロックプレート)
1622・・・ハンガー片
163・・・スプリング(スタンドロック)
170・・・駐車ブレーキ操作装置
171・・・ケース(第2ケース、内側)
1711・・・孔
172・・・レバーケース(第1ケース、外側)
1721・・・ビス
1722・・・ビス
173・・・ハンドルレバー
1731・・・ピン(加締め)
1732・・・端面(係合面)
174・・・カム(段付き)
1741・・作用面
175・・・ロッド
176・・・操作ボタン(プッシュボタン)
177・・・スプリング
178・・・ハンドルバー
FW・・・前輪
RW・・・後輪
RR・・・補助輪



【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪部に左右独立のトレーリングアームとストラットを備えたトレーリングアーム式懸架装置に補助輪を設けた二輪車において、
該トレーリングアームを回動自在に支持するための支軸がチエンステイの下部であり、側面視で後輪タイヤの外径線の外、かつ前側に設けられ、該トレーリングアームが略水平に配置され、
前記ストラットの上部が、前記チエンステイまたは、チエンステイ及び後フォークに取付けされ、下部が前記トレーリングアームに取付けされていることを特徴とする走行安定二輪車(以下「二輪車」という。)
【請求項2】
前記左右のトレーリングアームは、その後端部外側に、補助輪を回転自在に支持する車軸が左右方向に交差して固定され、
該車軸の前部かつ外側にストラットの下部を取付けするブラケットが取付けられ、前記トレーリングアームの前端部には、該トレーリングアームを回動自在に支持するためのアームカラーが左右方向に貫通し、該トレーリングアームの内側の縦壁より張出すようにして固定され、
一方、左右のチエンステイの下面に直接または支持部材を介して円筒が固定され、該円筒内に、左右端から中央に向かって拡径する段付きの支軸が嵌挿され、該支軸の左右方向中央部に位置する最大径部において、該支軸は前記円筒に対して固定され、
前記アームカラーの内側端部が、前記円筒の端部の内径部とオーバラップするように組付けされ、前記アームカラーと前記支軸の小径部との摺接寸法を大きく確保したことを特徴とする請求項1に記載の二輪車。
【請求項3】
前記補助輪のホイール端における荷重―タワミ特性が上向きの全移動量の略1/2を超える範囲において非線形に立上がり、
前記上向きの全移動量が、静的な転倒限界角相当量と同等、好ましくはやや小であることを特徴とする請求項1または2に記載の二輪車。
【請求項4】
前記補助輪のホイール端における荷重―タワミ特性が上向きの移動量の略全域に亘って線形であり、前記上向きの全移動量が静的な転倒限界角相当量と同等、或はそれ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の二輪車。
【請求項5】
前記補助輪のホイール端における、減衰特性が線形型であり、上向きの減衰力が下向きの減衰力より大きく、好ましくは2倍以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の二輪車。
【請求項6】
左右のスタンドアームの略中央部から左右方向外側に延び、かつ側面視前方に略J字状に延びたフックまたはフォーク付きのスタンドを備え、
前記二輪車を該スタンドにより直立させると、
前記フックまたはフォークが、前記左右のトレーリングアームの後端部において左右方向に交差し内側に延びる支持ロッドまたは前記補助輪の車軸を押下げまたは押下げないで前記後輪と補助輪が接地した直進走行状態のままで固定し、前記左右の補助輪の上向き移動を固定して、
該補助輪が前記二輪車の転倒防止に寄与することを特徴とする請求項1乃至5に記載の二輪車。
【請求項7】
第2ケースとの接合面部に、レバー操作により一の端面が多段の段付きカムの作用面と近接または離間するように回動するハンドルレバーが取付けられた第1ケースと、
前記接合面に、直交するように略中央部にガイド孔の設けられた第2ケースと、
該第2ケースのガイド孔に嵌挿され該ガイド孔の軸方向に摺動し、前記第2ケース内側に位置する端部に前記多段の段付きのカムが固定されたロッドと、
前記第2ケースの外側に位置する前記ロッドの他端部に固定された操作ボタンと、
該操作ボタンと前記第2ケースの外壁との間に設けられ、前記カムを前記ハンドルレバーの一の端面と離間させるスプリングを備え、
前記ハンドルレバーをグリップ操作しながら、前記操作ボタンをプッシュ操作し、その後前記ハンドルレバーのグリップ操作を解除すれば、前記ハンドルレバーの一の端面と前記カムの作用面とが係合して、前記前輪及び/または後輪の制動状態が維持され、その後再度前記ハンドルレバーをグリップ操作すれば前記係合が外れて、該前輪及び/または後輪の制動状態が解除されることを特徴とする請求項1乃至6に記載の二輪車。
【請求項8】
前記ストラットは、エンドキャップによってその上下端部が密閉された円筒からなる外筒と、
該外筒の内部において、該外筒の内面を軸方向に摺動し、エンドキャップによってその上下端部が密閉された円筒からなる内筒と、
該内筒の軸芯部に配置され、下端部が該円筒の上端部のエンドキャップに固定され、上端側が前記外筒の上側のエンドキャップを貫通し、上端部に第1のマウント部品が取付けられる第1ロッドと、
前記内筒内部に配置され、該内筒の内面を軸方向に摺動するピストンと、
該内筒の軸芯に配置され上端部に前記ピストンが固定され、下端側が、前記内筒の下側のエンドキャップを貫通し、該エンドキャップの下側に位置する外筒の下側のエンドキャップに固定され、下端部に第2のマウント部品が取付けられる第2のロッドと、
前記外筒の内部かつ下端部で、前記外筒の下側のエンドキャップと前記内筒の下側のエンドキャップとの間に形成され第1空気室内に格納され、前記ストラットの負荷を支持するコイルスプリングと、
前記外筒の内部かつ上端部で、前記外筒の上側のエンドキャップの間に形成される第2空気室内に取付けられ前記ストラットの伸長量を制限するバンパーラバーと、
前記ピストンによって前記内筒内を上下に区分して形成された2つのオイル室を有し、前記ストラットの伸縮によって、該2つのオイル室の間を該ピストンに設けられたオリフィスを介し減衰オイルが移動して、所定の減衰力が得られることを特徴とする請求項1乃至7に記載の二輪車。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−42747(P2010−42747A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207561(P2008−207561)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【特許番号】特許第4268215号(P4268215)
【特許公報発行日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(308018039)
【Fターム(参考)】