説明

走行支援装置

【課題】乗員が通常よりも疲労している場合でも、安全に目的地まで到達可能な走行支援装置を提供する。
【解決手段】車両の現在位置を検出する位置検出手段と、道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、道路地図データ上の地点を目的地として設定する目的地設定手段と、車両の乗員の生体情報を取得する生体情報取得手段と、生体情報に基づいて、乗員の体調状態を推定演算する体調状態推定演算手段と、乗員の体調状態が予め定められた体調不良状態であるか否かを判定する体調状態判定手段と、現在位置から設定された目的地までの案内経路を、乗員の体調状態が体調不良状態であるか否かに基づいて、道路地図上にて検索・設定する案内経路検索設定手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する走行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、出発地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車載用ナビゲーション装置は、ユーザの効率的で安全な運転に貢献している。
【0003】
例えば、運転者の行動の傾向や性格に合わせた適切な経路案内サービスを行うナビゲーション装置およびナビゲーション方法が考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を検出するアルコール検出器やハンドル角検出器から情報を取得し、これらの情報とナビゲーション装置が認識できる現在位置情報や車両の運動情報とから、運転者が危険な運転状態であるか否かを判定し、危険な運転状態であると判定すると、安全に停車できる場所までの経路を探索し、探索した経路を自動的に案内するナビゲーション装置が考案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2008−58193号公報
【特許文献2】特開2005−24507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
運転者が疲労している場合、通り慣れた経路や、危険箇所の少ない経路、道幅が比較的広く通行やすれ違いに支障がない(例えば側溝に脱輪しない)経路を走行したい傾向が通常時よりも高くなる。
【0007】
しかし、特許文献1では、運転者の行動の傾向や性格には対応しているが、運転者の疲労の度合いにはしていない。
【0008】
また、特許文献2では、運転者が安全に停車できる場所まで経路案内を行うのみであり、目的地まで到達することはできない。また、安全に停車できる場所が付近に存在しない場合、目的地まで走行してしまうこともある。さらに、飲酒運転のような運転を停止せざるを得ない状況のみを想定していて、運転者が運転はできるが通常よりも疲労している状況は想定されていない。
【0009】
上記問題を背景として、本発明の課題は、乗員が通常よりも疲労している場合でも、安全に目的地まで到達可能な走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記課題を解決するための走行支援装置は、車両の現在位置を検出する位置検出手段と、道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、道路地図データ上の地点を目的地として設定する目的地設定手段と、車両の乗員の生体情報を取得する生体情報取得手段と、生体情報に基づいて、乗員の体調状態を推定演算する体調状態推定演算手段と、乗員の体調状態が予め定められた体調不良状態であるか否かを判定する体調状態判定手段と、現在位置から設定された目的地までの案内経路を、乗員の体調状態が体調不良状態であるか否かに基づいて、道路地図上にて検索・設定する案内経路検索設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
従来技術では、飲酒運転や居眠り運転のような危険な運転状態のみが対象で、「少し疲れている」程度の乗員は対象にならず、最寄りの安全な場所までの経路案内を行うことしかできなかったが、上記構成によって、運転に支障はないが体調状態が通常よりも悪い乗員が、より安全に目的地まで到達することが可能となる。
【0012】
また、本発明の走行支援装置における体調状態推定演算手段は、取得した生体情報に基づいて、乗員の疲労度を算出する疲労度算出手段を含み、体調状態判定手段は、疲労度が予め定められた疲労度閾値を下回る場合に体調不良状態であると判定するように構成される。
【0013】
疲労状態では、交感神経系の緊張が高まり、副交感神経系の活動が低下することが報告されており、自律神経系の解析は極めて重要な検査の1つである。自律神経系の解析には、心電図のRR間隔(RRI:R波の間隔)の解析や、脈波、速度脈波、加速度脈波を用いた心拍変動解析が有効であることが良く知られている。交感神経系成分(LF)と副交感神経系成分(HF)の比(LF/HF値)は通常1〜1.5程度であるのに対して、疲労状態ではLF/HF値が増加することが知られている(非特許文献1参照)。また、RRIの変化率がストレスの指標となることが知られている(非特許文献2参照)。心電,脈波,脳波等の生体情報から、精神的ストレスを解析する研究が行われている(非特許文献3参照)。この研究においては、生体情報から疲労やストレスの状態を把握することを目標の1つとしている。また、RRIを用いた疲労度判定方法及び疲労度判定装置およびその装置を用いた作業の適正化システムが考案されている(特許文献3参照)。本発明の構成では、例えば生体情報として、これらの技術を用いて、「RRIを用いて疲労度を判定し、その疲労度に応じて目的地までの最適な経路案内を行う」という、従来技術にはない作用・効果を得ることができる。
【0014】
【非特許文献1】疲労科学研究所のホームページ,URL:http://www.fatigue.co.jp/1721.html,平成20年6月16日検索
【非特許文献2】「心拍間隔指標を用いた長距離運転時のストレス計測実験」(土川 他,土木学会第57回年次学術講演会資料),URL:http://www.db.shibaura-it.ac.jp/~iwakura/ronbun/gakkai/200209-nenko_tutikawa.pdf,平成20年6月16日検索
【非特許文献3】「精神的ストレス作業の定量解析」,名護屋 他,東京電機大学大学院工学研究科 平成16年度 博士・修士論文発表会資料(http://www.d.dendai.ac.jp/GuraduateSchool/2004-Final-Presentaion/MasterTheses/03gmd16.pdf),平成20年6月19日検索
【特許文献3】特開平10−165380号公報
【0015】
また、本発明の走行支援装置は、乗員の乗車を検出する乗車検出手段と、乗員の乗車を検出してからの経過時間を計測する経過時間計測手段と、を備え、疲労度算出手段は、経過時間が予め定められた時間閾値を下回るときには、疲労度を予め定められた値とするように構成される。
【0016】
例えばRRIやLF/HF値に基づいて疲労度を判定する場合、一律の基準値を用いて不特定多数の乗員の体調状態を判定することは難しい。また、前回乗車した乗員の生体情報を用いたとしても、体調と生体情報との関係は人によって異なるので、精確な判定を行うことはできない。上記構成によって、不特定多数の乗員が乗車する車両においても、疲労していて体調不良状態であるか否かを判定することが可能となる。
【0017】
また、本発明の走行支援装置は、乗員を特定する乗員特定手段と、特定した乗員と、取得した該乗員の生体情報とを関連付けて記憶する生体情報記憶手段と、を備え、疲労度算出手段は、乗員を特定したときには、該特定した乗員に関連付けて記憶された生体情報を読み出して基準生体情報として用い、基準生体情報と取得した生体情報との比較により、疲労度を算出するように構成される。
【0018】
上記構成によって、例えば、その車両をよく利用する乗員の生体情報を記憶しておけば、より精確に疲労していて体調不良状態であるか否かを判定することが可能となる。
【0019】
また、本発明の走行支援装置における生体情報記憶手段は、生体情報を取得した日時を記憶し、日時情報を取得する日時情報取得手段を備え、疲労度算出手段は、乗員が乗車した日時に一致あるいは該日時から予め定められた範囲内にある生体情報を基準生体情報として用い、該基準生体情報と取得した生体情報との比較により、疲労度を算出するように構成される。
【0020】
同じ乗員でも、体調状態は走行時間帯によって変化する。上記構成によって、走行時間帯に応じた基準生体情報を用いることで、より精確に体調不良状態であるか否かを判定することが可能となる。
【0021】
また、本発明の走行支援装置は、取得した生体情報の内容と基準生体情報の内容とに基づいて得られる代表値を新たな基準生体情報として更新する基準生体情報更新手段を備えるように構成される。
【0022】
例えば、最初に取得した生体情報が体調不良を示すものであった場合、基準生体情報に用いることは適当ではない。それ以降の乗車時に取得した生体情報が前回の乗車時よりも良好なものであれば、この生体情報を基準生体情報として用いなければ、精確な体調不良判定を行うことはできない。上記構成によって、より適切な基準生体情報を記憶することができるとともに、より精確に体調不良状態であるか否かを判定することが可能となる。
【0023】
また、本発明の走行支援装置における基準生体情報更新手段は、取得した生体情報の内容と基準生体情報の内容との平均値を代表値とするように構成される。
【0024】
例えば、常に最新の良好な生体情報を基準生体情報として更新すると、基準体調情報の内容(値)の変動が大きくなり、精確な疲労度を算出することが難しくなる。つまり、疲労度の変動幅も大きくなるので、経路検索にも影響し、案内経路が目まぐるしく変化してしまうこともある。上記構成によって、比較的簡易な方法で、代表値を求めることができるとともに、基準生体情報の変動幅を抑えて疲労度を精確に算出することができる。また、案内経路が目まぐるしく変化してしまうことも防止できる。
【0025】
また、本発明の走行支援装置における道路地図データ記憶手段は、道路毎の通行難易度を記憶し、案内経路検索設定手段は、乗員の体調状態が体調不良状態であると判定されたとき、通行難易度のより低い道路を走行する案内経路を検索・設定するように構成される。
【0026】
通行難易度の高い道路としては、事故多発道路,渋滞道路,踏切,すれ違いが困難な幅員の狭い道路,急カーブの連続する道路,スクールゾーン等が挙げられ、通常の平坦な道路よりも注意を必要とするので、体調不良時には走行を回避したいと考えることが多い。上記構成によって、通行難易度の比較的高い道路を回避して、体調状態に応じて最適な案内経路が検索・設定され、より安全に目的地まで到達することができる。
【0027】
また、本発明の走行支援装置における道路地図データ記憶手段は、ノード情報と、ノード間を接続するリンクのリンク情報と、リンク間の接続情報と、これらノード情報,リンク情報,リンク間の接続情報に対応して設定されるコスト値を含み、コスト値には、通行難易度が反映されない第1コスト値と、通行難易度が反映された第2コスト値とが設定され、案内経路検索設定手段は、ノード情報,リンク情報,リンク間の接続情報に基づき、ダイクストラ法あるいはそれに準ずる検索手法を用いた経路計算コストの算出を行い、算出した経路計算コストが小さくなるリンクの接続によって、案内経路を検索・設定するものであって、体調状態判定手段によって、乗員の体調状態が体調不良状態でないと判定されたときには、第1コスト値を用いて案内経路を検索・設定し、体調状態判定手段によって、乗員の体調状態が体調不良状態であると判定されたときには、第2コスト値を用いて案内経路を検索・設定するように構成される。
【0028】
車両用ナビゲーション装置においては、一般的にダイクストラ法を用いて案内経路を検索・設定している。上記構成によって、案内経路に設定してほしくない道路、すなわち通行難易度の高い道路のコスト値を高くしておけば、案内経路に含まれることはなく、その道路を通行することを回避できる。また、予め体調不良状態に用いるコスト値を用意しておくことで、案内経路を検索・設定するための時間の増大を抑制することが可能となる。
【0029】
また、本発明の走行支援装置における第2コスト値は、リンク毎あるいはノード毎に、疲労度が反映された値が設定されるように構成される。
【0030】
上記構成によって、乗員の疲労の度合いに応じて最適な案内経路を検索・設定することができる。
【0031】
また、本発明の走行支援装置における通行難易度は、リンク毎あるいはノード毎に、通行時間帯に応じて設定されるように構成される。
【0032】
道路によっては、通行時間帯によって通行難易度(事故や渋滞の発生率、スクールゾーンなど)が異なる場合もあり、通行難易度を一律に設定できない場合もある。上記構成によって、乗員の疲労の度合いに加え、通行時間帯に応じて最適な案内経路を検索・設定することができる。
【0033】
また、本発明の走行支援装置は、案内経路を音声メッセージにより案内する音声経路案内手段と、体調状態判定手段によって、乗員の体調状態が体調不良状態でないと判定されたときには、音声経路案内手段による案内を抑制する音声経路案内抑制手段と、を備えるように構成される。
【0034】
上記構成によって、体調が良好な運転者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。一方、体調不良時には、十分に音声経路案内を行って、運転者に注意を喚起することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の走行支援装置を、図面を参照しながら説明する。図1に走行支援装置300のシステム構成図を示す。走行支援装置300は、疲労度演算装置200と車載用ナビゲーション装置100(図1では「ナビ」と表記)とを含んで構成される。
【0036】
図1のように、疲労度演算装置200は、生体信号計測装置201,カメラ202,画像処理部203,操作スイッチ205,およびこれらが接続された制御部210を含んで構成される。
【0037】
生体信号計測装置201は、例えば、車両のハンドルの運転者把握位置に取り付けられ(特許文献3参照)、心電あるいは心拍から心室の緊張波であるR波を検知し、その結果を制御部210に送る。心拍を基に自律神経系の活動レベルとその2つの部門である交感神経系と副交感神経系のバランスの測定分析を行う製品として、米国BIOCOM社製のハートリズムスキャナが知られている(非特許文献1の商品紹介ページ参照)。なお、生体信号計測装置201が本発明の生体情報取得手段,検知手段に相当する。
【0038】
生体信号計測装置201は、心電あるいは心拍の他に、以下のようにして乗員の生体情報を取得してもよい。この生体情報の検出結果から乗員の状態を推定する方法については、例えば特開2006−282111号公報等により周知であり、以下、概略を説明するに留める。
・赤外線センサ:例えば赤外線サーモグラフィを用いて、運転者の顔部分から放射される赤外線を捉え、その赤外線の量を温度データに変換することにより熱画像として表示して体温の測定を行う。
・顔カメラ(後述のカメラ202でもよい):車室内に設置され、着座した運転者の顔の表情を撮影する。また、視線方向から運転者の注意力レベルを判定することができる。
・マイクロフォン:運転者の声を検出する。例えば、声の大小から体調を判定する。
・感圧センサ:ハンドルやシフトレバーの、運転者による把握位置に取り付けられ、運転者の握り力や、握ったり放したりの繰り返し頻度などを検出する。
・脈拍センサ:脈拍を反映した血液流(脈波)を反射検知する反射式光センサ等で構成され、ハンドルの運転者把握位置に取り付けられる。脈波からもR波の検知が可能である(社団法人 人間生活工学研究センターの人間感覚データベースのページ参照,URL http://www.hql.jp/project/workdb1998/c5/c5_i_03.htm)。
・体温センサ:ハンドルの運転者把握位置に取り付けられた温度センサからなる。
・脳波センサ:乗員の頭部に着けて頭部皮膚の電位の変化を検出する。
【0039】
例えば、顔カメラにより撮影した顔の全体(または部分:例えば目や口)の画像を、種々の心理状態あるいは体調状態における、例えばメモリ212に記憶されたマスタ画像と比較することで、乗員が病気のときや疲れている場合、あるいは注意力が散漫になっているなどを判定することができる。また、乗員に固有のマスタ画像を使用するのではなく、顔の輪郭,目(あるいはアイリス),口および鼻の位置や形状を、全ての乗員に共通の顔面特徴量として抽出し、その特徴量を、種々の体調状態において予め測定・記憶されている標準特徴量と比較して、同様の判定を行うことができる。
【0040】
顔カメラにより撮影した乗員の動画像(例えば、小刻みに動いたりする、顔をしかめたりするなど)や、感圧センサの検知状態(例えば頻繁にハンドルから手を離したりする)などの情報に基づき、体の動作から運転者の体調状態を判断することができる。
【0041】
体温は、ハンドルに取り付けた体温センサや、赤外線サーモグラフィなどの体温検出部により検出・特定できる。病気のときや疲れている場合、あるいは注意力が散漫になっている場合、などは体温が高く表れ、逆に、落ち着いているときは、体温は低めに表れる。また、緊張や興奮は、脈拍センサが検出する心拍数が高くなることで検出できる。
【0042】
高体温が精神状態および体調状態のいずれによるものかを判別するには、顔の表情(顔カメラ)や、体の動き(顔カメラ,感圧センサ)など、体温以外の体状態情報と組み合わせることが有効である。また、体調不良の場合は定常的に体温が高いのに対し、緊張や興奮あるいは感情的になった場合の体温上昇は一時的なものなので、時間に応じた体温変化傾向を分析することで判別できる場合もある。なお、乗員の平熱を予めメモリ212に登録しておき、その平熱からの温度シフト(特に高温側)を体温検出部により測定することで、より微妙な体温変化ひいてはそれによる体調の変化等も検出することが可能となる。
【0043】
また、非特許文献1にあるように、脳波の周波数によって乗員の状態を判別できる。例えば、4〜8Hzのθ波が発生しているときは眠気がありボンヤリしている状態にあるので、疲労していると判定することができる。
【0044】
カメラ202は、例えば周知のCCDやCMOS等の撮像素子を用い、車室内の乗員を撮影可能なように1台または複数台設置される。カメラ202で撮影された画像は、画像処理部203へ送られる。画像処理部203は、公知のパターン認識などの技術によって画像の解析を行う画像処理回路を含んで構成される。画像処理部203では、例えば、カメラ202により撮影された画像に一般的な2値化処理を施すことにより、ピクセル毎のデジタル多値画像データに変換する。そして、得られた多値画像データから、一般的な画像処理手法を用いて乗員の顔画像のような所望の画像部分を抽出する。なお、カメラ202が本発明の乗車検出手段に相当する。また、画像処理部203が本発明の乗員特定手段に相当する。
【0045】
操作スイッチ205は、例えば周知のメカニカルスイッチとして構成され、乗員を特定する際に用いられる。なお、操作スイッチ205が本発明の乗員特定手段に相当する。
【0046】
制御部210は、疲労度演算部211、および疲労度演算部211に接続されるメモリ212,通信IC213を含んで構成される。なお、制御部210が本発明の体調状態推定演算手段,疲労度算出手段,経過時間計測手段,乗員特定手段,基準体調情報更新手段に相当する。
【0047】
疲労度演算部211は、周知のCPU211a,ROM211b,RAM211cを含むマイクロコンピュータとして構成され、CPU211aがROM211bに記憶された制御プログラム211pを実行することで、疲労度演算装置200としての機能を実現する。
【0048】
メモリ212は、EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、疲労度演算装置200の動作に必要なデータを記憶する。また、メモリ212には、乗員の生体情報も記憶される(図4参照,詳細は後述)。なお、メモリ212が本発明の生体情報記憶手段に相当する。
【0049】
通信IC213は、車載用ナビゲーション装置100とのデータ通信を行うための通信インターフェース回路を含むように構成される。なお、通信IC213が本発明の日時情報取得手段に相当する。
【0050】
図2に、車載用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称)100の構成を示すブロック図を示す。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行う音声合成回路24,スピーカ15,メモリ9,表示器10,送受信機13,ハードディスク装置(HDD)21,LAN(Local Area Network) I/F(インターフェース)26,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12等を備えている。
【0051】
位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ3,車両の走行距離を検出する距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサ(図示せず)や各転動輪の車輪センサ例えば車速センサ23等を用いてもよい。なお、位置検出器1が本発明の位置検出手段に相当する。
【0052】
操作スイッチ群7は、例えば表示器10と一体になったタッチパネル22もしくはメカニカルなスイッチが用いられる。その他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、マイク31および音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、マイク31から入力された音声信号を、音声認識ユニット30において周知の隠れマルコフモデル等の音声認識技術により処理を行い、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。これら本発明の目的地設定手段に相当する、操作スイッチ群7,リモコン端末12,タッチパネル22,およびマイク31により、種々の指示を入力することが可能である。
【0053】
送受信機13は、例えば道路に沿って設けられた送信機(図示せず)から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム,登録商標)センタ14から道路交通情報を受信、あるいはFM多重放送を受信するための装置である。また、送受信機13を用いてインターネット等の外部ネットワークに接続可能な構成としてもよい。
【0054】
制御回路8は、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84,A/D変換部86,描画部87,時計IC88,およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行う。また、HDD21へのデータの読み書きの制御はCPU81によって行われる。また、CPU81からHDD21に対してデータの読み書きの制御ができなくなった場合のために、ROM82にナビゲーション装置100として必要最低限の動作を行うためのプログラムを記憶しておいてもよい。なお、制御回路8が本発明の体調状態判定手段,案内経路検索設定手段に相当する。
【0055】
A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0056】
描画部87は、HDD21等に記憶された道路地図データ21m(後述),表示用のデータや表示色のデータから表示器10に表示させるための表示画面データを生成する。
【0057】
時計IC88はリアルタイムクロックICとも呼ばれ、CPU81からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。CPU81は時計IC88から日時情報を取得する。また、GPS受信機5で受信したGPS信号に含まれる日時情報を用いてもよい。また、CPU81に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を生成してもよい。
【0058】
HDD21には、ナビプログラム21pの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む地図データベースである道路地図データ21mが記憶される。道路地図データ21mは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標,距離,所要時間,道幅,車線数,制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標,右左折車線数,接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。なお、ハードディスク装置21が本発明の道路地図データ記憶手段に相当する。
【0059】
ダイクストラ法では、これらのリンク情報,ノード情報,リンク間接続情報を用いて、現在地から各ノードに至るまでの経路評価値(経路計算コスト)を算出し、目的地までの全ての経路評価値の計算が終了した段階で、総評価値が最小となるリンクを接続して目的地までの経路を設定している。この場合の評価値は、道路長・道路種別・道路幅員・車線数・交差点での右左折・信号機の有無などに応じて設定されている。例えば、道路幅員が広いほど評価値が低く、車線数が多いほど評価値が低い。
【0060】
各リンクでの経路計算コストの計算は、例えば次式を用いて行われる。経路計算コスト=リンク長×道路幅員係数×道路種別係数×渋滞度。ここで、道路幅員係数とは道路幅に応じて設定される係数であり、道路種別係数とは有料道路等の道路種別に応じて設定される係数である。そして、渋滞度とは、例えばVICSセンタ14から受信した道路交通情報に含まれる渋滞情報に基づく、その道路の渋滞度合に応じて設定される係数である。
【0061】
また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータ21uとして記憶される。また、ナビゲーション装置100の動作に必要なデータや各種情報はデータベース21dとしても記憶される。
【0062】
ナビプログラム21p,道路地図データ21m,ユーザデータ21u,およびデータベース21dは、地図データ入力器6を介して記憶媒体20からそのデータの追加・更新を行うことが可能である。記憶媒体20は、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、外部ネットワークを介してデータをダウンロードする構成を用いてもよい。
【0063】
メモリ9はEEPROMやフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、メモリ9は、ナビゲーション装置100がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。また、メモリ9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをメモリ9とHDD21に分けて記憶してもよい。
【0064】
表示器10は周知のカラー液晶表示器で構成され、ドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行うための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、周知のアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路8(描画部87)から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示器10として有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)表示器,プラズマ表示器を用いてもよい。
【0065】
スピーカ15は周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によってメモリ9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データが音声合成回路24においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき必要に応じて繋ぎ合わせる録音編集方式、文字入力情報からそれに対応する音声を合成するテキスト合成方式などがある。
【0066】
車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。
【0067】
LAN I/F26は、車内LAN27を介して、疲労度演算装置200や他の車載機器,センサとのデータの遣り取りを行うための通信インターフェース回路である。また、LAN I/F26を介して車速センサ23からのデータ取り込みを行ってもよい。
【0068】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、ユーザが操作スイッチ群7,タッチパネル22,リモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示器10上に表示されるメニュー(図示せず)から目的地経路を表示器10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0069】
すなわち、まず、ユーザは目的地を検索する。目的地の検索方法は、例えば、地図上の任意の地点を指定する方法,目的地の所在する地域から検索する方法,目的地の電話番号から検索する方法,五十音表から目的地の名称を入力して検索する方法,あるいはユーザがよく利用する施設としてメモリ9に記憶されているものから検索する方法などがある。目的地が設定されると、位置検出器1により車両の現在位置が求められ、例えば上述のダイクストラ法等の手法を用いて、該現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示器10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザに適切な経路を案内する。また、表示器10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行う。
【0070】
図3を用いて、疲労度演算装置200において実行される疲労度演算処理について説明する。なお、本処理は制御プログラム211pに含まれ、制御プログラム211pの他の処理とともに繰り返し実行される。また、本処理は、乗車した全ての乗員(座席単位でもよい)について行う。
【0071】
まず、以下のうちの少なくとも1つを用いて乗車した乗員の判別(特定)を行う(S11)。
・カメラ202で撮影された画像を画像処理部203で上述の画像処理を行ったものと、メモリ212に記憶されている乗員の生体情報に含まれる顔画像データ(図4参照)とを比較して類似度(%)を求め、類似度が予め定められた値を上回るものを乗員として特定する。
・操作スイッチ205の操作により、乗員を特定する。例えば、操作スイッチ205が[1],[2],[3]の3個のスイッチで構成されているとき、これらスイッチの番号に対応して乗員の生体情報がメモリ212に記憶されている(図4参照)。[1]のスイッチが押下されたときには、乗員番号1の乗員として特定される。
【0072】
次に、通信IC213を介して、ナビゲーション装置100(ナビ)から時刻情報(日時情報)を取得する(S12)。
【0073】
次に、生体信号計測装置201の、心電あるいは心拍検知データからR波を検出し、R波とR波の間隔であるRRIを求め、これを生体情報とする(S13)。
【0074】
ステップS11において乗員が特定できた場合(S14:Yes)、メモリ212(図4参照)の該当する乗員番号の生体情報から、運転開始直後の生体情報を基準生体情報として読み出して、ステップS13で取得した生体情報と比較して疲労度を算出する(S15)。このとき、ステップS13で生体情報を取得した現在日時が含まれる時間帯(早朝,朝,昼,夜,深夜、あるいは午前,午後等のように区分される)と同じ時間帯に記憶された生体情報を読み出す。同一時間帯のものがない場合は、生体情報を取得した現在日時に近い時間帯に記憶された生体情報を読み出す。
【0075】
一方、乗員が特定できなかった場合(S14:No)、乗員検知(乗車)後、所定の時間(時間閾値)が経過しているか否かを判定する。乗員検知は、カメラ202の撮影した画像に基づいて行うことができる。時間閾値を経過している場合(S20:Yes)、ステップS18の処理を行う(後述)。一方、時間閾値を経過していない場合(S20:No)、疲労度をデフォルト値0(疲労なし)とする(S21)。
【0076】
ステップS11では、乗員を特定できなくても乗員が着座している座席は特定できるので、疲労度と座席の位置を関連付けておく。
【0077】
疲労度は、例えば非特許文献2のように、RRIの変化率あるいはLF/HF値に基づいて算出する。例えば、疲労度は、RRIの変化率あるいはLF/HF値に基づいて、1〜5の5段階に区分され、疲労度が5のときが最も疲れている状態である。また、疲労度のデフォルト値を、「疲労なし」を表す0とする。
【0078】
例えば、RRIの変化率を用いる場合、以下のように疲労度を定めてもよい。
・疲労度0:変化率<70%
・疲労度1:70%≦変化率<75%
・疲労度2:75%≦変化率<80%
・疲労度3:80%≦変化率<85%
・疲労度4:85%≦変化率<90%
・疲労度5:90%≦変化率
【0079】
同様に、LF/HF値を用いる場合、以下のように疲労度を定めてもよい。
・疲労度0:LF/HF値<2
・疲労度1:2≦LF/HF値<4
・疲労度2:4≦LF/HF値<6
・疲労度3:6≦LF/HF値<8
・疲労度4:8≦LF/HF値<10
・疲労度5:10≦LF/HF値
【0080】
また、生体信号計測装置201の心電・心拍以外の検出手段から乗員の生体情報を取得して、上述のように体調の変化を検出し、その変化量あるいは変化率に基づいて疲労度を算出してもよい。
【0081】
なお、運転開始直後であるか否か、あるいは運転終了時(後述)であるか否かの判定は、例えば、カメラ202により乗員の着座を検出したときを運転開始直後とし、乗員がその座席から離れた(降車した)ときを運転終了時とする。あるいは、操作スイッチ205に含まれる「運転スイッチ」をOFF状態→ON状態に操作されたときをと運転開始直後であると判定し、「運転スイッチ」をON状態→OFF状態に操作されたときを運転終了時であると判定してもよい。また、ナビゲーション装置100から目的地に到着した旨の情報を取得したときに、運転終了時であると判定してもよい。また、周知のイグニッションスイッチ(図示せず)の状態を監視して、イグニッションスイッチがOFF状態→ON状態に遷移したときを運転開始直後とし、ON状態→OFF状態に遷移したときを運転終了時としてもよい。
【0082】
次に、上記で算出した疲労度と座席の位置のデータを、通信IC213を介してナビゲーション装置100へ送信する(S16)。その後、該当する乗員番号と関連付けて、運転開始直後に取得した生体情報を、メモリ212に記憶する(S17)。運転者の疲労度のデータのみをナビゲーション装置100へ送信するようにしてもよい。
【0083】
次に、上述のような方法で運転終了時か否かを判定する。運転終了と判定されなかった場合(S18:No)、乗車検知後所定の時間が経過したか否かを判定する。時間閾値を経過している場合(S22:Yes)、生体信号計測装置201から生体情報(心電・心拍)を取得し、その生体情報に基づいて上述のように疲労度を算出し(S24)、その疲労度をナビゲーション装置100へ送信する(S25)。以降、ステップS18へ戻り、疲労度の算出,算出した疲労度のナビゲーション装置100への送信を、疲労度算出タイミングが到来する毎に運転終了(S18:Yes)まで繰り返す。
【0084】
一方、所定時間を経過していない場合(S22:No)、運転者が特定された場合には、生体信号計測装置201から生体情報(心電・心拍)を取得し、その生体情報に基づいて上述のように疲労度を算出し、運転者が特定されない場合には、疲労度をデフォルト値(0:疲労なし)として(S23)、その疲労度をナビゲーション装置100へ送信する(S25)。
【0085】
一方、運転終了と判定された場合(S18:Yes)、その直前に取得した生体情報を、該当する乗員番号(1,2,...,なし)と関連付けて、運転終了時の生体情報としてメモリ212に記憶する(S19)。
【0086】
運転開始直後の生体情報および運転終了時の生体情報のメモリ212への記憶は、以下のいずれかの方法を用いて行う。
・既に同じ時間帯の生体情報が記憶されているかどうかによらず追記していく。
・既に同じ時間帯の生体情報が記憶されている場合、平均値を求めて更新記憶する。
・既に同じ時間帯の生体情報が記憶されている場合、より体調状態が良好である(例えばRRIが大きい)ものに置き換えて記憶する。
【0087】
上述の処理で、乗員が特定できなかった場合、乗員検知(乗車)後の最初に取得した生体情報を基準生体情報として用い、以降に算出された生体情報と比較してもよい。すなわち、ステップS13において、運転開始直後からの生体情報の取得回数をカウントしRAM211cに記憶する。そして、乗員が特定できなかった場合(S14:No)、ステップS20では、生体情報の取得回数が1を上回っているか否かを判定する。取得回数が1を上回らない場合すなわち乗員検知後の最初に生体情報を取得した場合(S20:No)、これを乗員番号「なし」の運転開始直後の生体情報としてメモリ212に記憶し、上述の例と同様に疲労度をデフォルト値とする(S21)。一方、疲労度の算出回数が1を上回っている場合(S20:Yes)、ステップS15において、メモリ212から、運転開始直後に算出された、乗員番号「なし」の生体情報を基準生体情報として読み出して、上記で取得した生体情報と比較して疲労度を算出する。あるいは、疲労度をデフォルト値とする。
【0088】
図4に、メモリ212における生体情報の記憶内容の一例を示す。乗員番号に対応して、上述の運転開始直後の生体情報と運転開始終了後の生体情報が、これらの記憶日時とともに記憶されている。生体情報は、R波の間隔であるRRIが記憶されているが、LF/HF値や生体信号計測装置201の心電・心拍以外の検出手段からの検出データを記憶してもよい。また、カメラ202で乗員を特定した場合には、乗員の顔画像データも記憶される。さらに、生体情報を記憶した際の走行経路をナビゲーション装置100から取得して記憶してもよい。
【0089】
図4の例では、乗員番号1の乗員はカメラ202により特定できる(スイッチ[1]を押下してもよい)。また、乗員番号2の乗員はカメラ202により特定されず、スイッチ[2]を押下することにより特定される。この後、乗員番号2の乗員はカメラ202により撮影され、撮影された画像がメモリ212に記憶されるようにしてもよい。この他に、運転開始直後の生体情報と運転終了時の生体情報とのうち、より疲労していない(例えばR波の間隔であるRRIが大きい)ものを基準生体情報として記憶してもよい。
【0090】
図5を用いて、ナビゲーション装置100における経路案内処理について説明する。なお、本処理はナビプログラム21pに含まれ、ナビプログラム21pの他の処理とともに繰り返し実行される。まず、上述したように、操作スイッチ群7,タッチパネル22,リモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、目的地を検索・決定する(S31)。
【0091】
次に、VICSセンタ14等から目的地周辺等の交通状況を受信する(S32)。続いて、疲労度演算装置200から、乗員の疲労度に関する情報を取得する(S33)。
【0092】
次に、乗員が疲労しているか否かを判定する。ナビゲーション装置100のメモリ9には、疲労度閾値(1〜5のいずれかの値)が予め設定されている。乗員が設定を変更することも可能である。取得した疲労度が疲労度閾値を上回ったときに乗員が疲労していると判定する。
【0093】
乗員の疲労判定では、疲労度は座席に関連付けられているので、基本的には運転者の疲労度を用いて判定を行う。どの座席の乗員の疲労度を優先するかは、ナビゲーション装置100において設定可能としてもよい。例えば、VIPが利用する車両の場合は、後部左側の座席の乗員の疲労度を用いて疲労判定を行う。また、複数の乗員の疲労度を取得した場合には、疲労度の最も高いものを用いて疲労度閾値と比較してもよい。
【0094】
乗員が疲労していると判定されない場合(S34:No)、目的地までの案内経路検索のために、上述した通常の評価値(第1コスト値)を使用する(S35)。一方。乗員が疲労していると判定された場合(S34:Yes)、目的地までの案内経路探索のために、通行難易度のより低い道路を走行するような案内経路を検索するために、通行難易度の高い箇所については、疲労度を反映した評価値(第2コスト値)を使用する(S38)。
【0095】
そして、上記で定められたコスト値を用いて案内経路を検索し、検索された案内経路を表示器10の表示画面上に表示して経路案内を行う(S36)。第1コスト値を用いて経路案内を行う場合、音声案内の頻度を抑制してもよい。例えば、交差点への接近案内は50m以内に接近したときのみ行う。一方、第2コスト値を用いる場合は、通常どおり音声案内を行う。
【0096】
目的地に到着するまでは(S37:No)、上述のステップS32〜S36,S38の処理を繰り返し、乗員の疲労度の変化に応じて最適な案内経路を検索して、経路案内を行う。目的地に到着したら(S37:Yes)、本処理を終了する。
【0097】
図6に、第1,第2コスト値の設定例を示す。図6の例では、通行難易度の高い箇所(ノードあるいはリンクに相当)を抜粋して示している。通行難易度の高い箇所には、踏切や急カーブのような、運転により注意を払わなければならない地点・地域が含まれる。また、ノード情報あるいはリンク情報には、過去に交通事故が発生したかどうかの情報も含まれている。
【0098】
第1,第2コスト値は一律の値とせずに、通行難易度の高い箇所の種別毎に異なる値としてもよい。例えば急カーブ地点の場合、急カーブが連続している地点は、連続していない地点よりもコスト値を高くしてもよい。交通事故発生地点の場合、発生した事故の規模や件数に応じてコスト値を変えてもよい。また、時間帯によってコスト値を変えてもよい。
【0099】
第2コスト値は、図6のように、疲労度に応じて異なる値としてもよいし、疲労度によらず一律の値としてもよい。無論、通行難易度の高い箇所の種別毎に異なる値としてもよい。
【0100】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】走行支援装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図3】疲労度演算装置における疲労度演算処理を説明するフロー図。
【図4】疲労度演算装置のメモリにおける生体情報の記憶内容の一例を示す図。
【図5】車載用ナビゲーション装置における経路案内処理を説明するフロー図。
【図6】第1,第2コスト値の設定例を示す図。
【符号の説明】
【0102】
1 位置検出器(位置検出手段)
7 操作スイッチ群(目的地設定手段)
8 制御回路(体調状態判定手段,案内経路検索設定手段)
21 ハードディスク装置(HDD,道路地図データ記憶手段)
21m 道路地図データ
22 タッチパネル(目的地設定手段)
26 LAN I/F
31 マイク(目的地設定手段)
88 時計IC
100 車載用ナビゲーション装置
200 疲労度演算装置
201 生体信号計測装置(生体情報取得手段,検知手段)
202 カメラ(乗車検出手段)
203 画像処理部(乗員特定手段)
205 操作スイッチ(乗員特定手段)
210 制御部(体調状態推定演算手段,疲労度算出手段,経過時間計測手段,基準生体情報更新手段)
212 メモリ(生体情報記憶手段)
213 通信IC(日時情報取得手段)
300 走行支援装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、
前記道路地図データ上の地点を目的地として設定する目的地設定手段と、
前記車両の乗員の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報に基づいて、前記乗員の体調状態を推定演算する体調状態推定演算手段と、
前記乗員の体調状態が予め定められた体調不良状態であるか否かを判定する体調状態判定手段と、
前記現在位置から設定された前記目的地までの案内経路を、前記乗員の体調状態が前記体調不良状態であるか否かに基づいて、前記道路地図上にて検索・設定する案内経路検索設定手段と、
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記体調状態推定演算手段は、取得した生体情報に基づいて、前記乗員の疲労度を算出する疲労度算出手段を含み、
前記体調状態判定手段は、前記疲労度が予め定められた疲労度閾値を下回る場合に体調不良状態であると判定する請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記乗員の乗車を検出する乗車検出手段と、
前記乗員の乗車を検出してからの経過時間を計測する経過時間計測手段と、
を備え、
前記疲労度算出手段は、前記経過時間が予め定められた時間閾値を下回るときには、前記疲労度を予め定められた値とする請求項2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記乗員を特定する乗員特定手段と、
特定した前記乗員と、取得した該乗員の生体情報とを関連付けて記憶する生体情報記憶手段と、
を備え、
前記疲労度算出手段は、前記乗員を特定したときには、該特定した乗員に関連付けて記憶された生体情報を読み出して基準生体情報として用い、前記基準生体情報と取得した生体情報との比較により、前記疲労度を算出する請求項2または請求項3に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記生体情報記憶手段は、前記生体情報を取得した日時を記憶し、
日時情報を取得する日時情報取得手段を備え、
前記疲労度算出手段は、前記乗員が乗車した日時に一致あるいは該日時から予め定められた範囲内にある前記生体情報を前記基準生体情報として用い、該基準生体情報と取得した生体情報との比較により、前記疲労度を算出する請求項4に記載の走行支援装置。
【請求項6】
取得した前記生体情報の内容と前記基準生体情報の内容とに基づいて得られる代表値を新たな前記基準生体情報として更新する基準生体情報更新手段を備える請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項7】
前記基準生体情報更新手段は、取得した前記生体情報の内容と前記基準生体情報の内容との平均値を前記代表値とする請求項6に記載の走行支援装置。
【請求項8】
道路地図データ記憶手段は、道路毎の通行難易度を記憶し、
前記案内経路検索設定手段は、前記乗員の体調状態が前記体調不良状態であると判定されたとき、前記通行難易度のより低い道路を走行する前記案内経路を検索・設定する請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項9】
道路地図データ記憶手段は、ノード情報と、前記ノード間を接続するリンクのリンク情報と、前記リンク間の接続情報と、これらノード情報,リンク情報,リンク間の接続情報に対応して設定されるコスト値を含み、
前記コスト値には、前記通行難易度が反映されない第1コスト値と、前記通行難易度が反映された第2コスト値とが設定され、
前記案内経路検索設定手段は、前記ノード情報,リンク情報,リンク間の接続情報に基づき、ダイクストラ法あるいはそれに準ずる検索手法を用いた経路計算コストの算出を行い、算出した経路計算コストが小さくなるリンクの接続によって、前記案内経路を検索・設定するものであって、
前記体調状態判定手段によって、前記乗員の体調状態が前記体調不良状態でないと判定されたときには、前記第1コスト値を用いて前記案内経路を検索・設定し、
前記体調状態判定手段によって、前記乗員の体調状態が前記体調不良状態であると判定されたときには、前記第2コスト値を用いて前記案内経路を検索・設定する請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項10】
前記第2コスト値は、前記リンク毎あるいは前記ノード毎に、前記疲労度が反映された値が設定される請求項9に記載の走行支援装置。
【請求項11】
前記通行難易度は、前記リンク毎あるいは前記ノード毎に、通行時間帯に応じて設定される請求項9または請求項10に記載の走行支援装置。
【請求項12】
前記案内経路を音声メッセージにより案内する音声経路案内手段と、
前記体調状態判定手段によって、前記乗員の体調状態が前記体調不良状態でないと判定されたときには、前記音声経路案内手段による案内を抑制する音声経路案内抑制手段と、
を備える請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−8268(P2010−8268A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168813(P2008−168813)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】