説明

走行装置及びその制御方法

【課題】 障害物の回避を良好に行うことができるようにする。
【解決手段】 各距離センサ301〜304、301s〜304sの出力が距離計測器320に供給され、この計測器320で計測された距離Ld、Ldsと、旋回レバー310からのレバー角度の信号が中央制御装置330に供給される。そして中央制御装置330では、ジャイロセンサ、加速度センサ等の姿勢センサ回路340の出力信号と共に演算によりモータ駆動制御信号が形成される。この駆動信号がモータ制御装置351、352に供給されてモータ361、362が駆動され、これらの駆動力が減速機371、372を介してタイヤ381、382に伝達される。また、モータ361、362には二次電池電源回路390からの電源電圧が供給されると共に、これらのモータ361、362で発生される回生電力が回生コンデンサ391に蓄えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人間を搭乗させて二輪で走行する乗り物に使用して好適な走行装置及びその制御方法に関する。詳しくは、例えば減速時や下り坂を走行する際に発生する回生エネルギを効率の良く充電して、良好な走行を実現できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
例えば人間を搭乗させて二輪で走行する乗り物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6288505号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、人間を搭乗させて二輪で走行する乗り物として、本願出願人は先に以下に述べるような走行装置を提案(特願2003−168224号)した。
【0005】
先ず、本願出願人が提案した同軸二輪車の一実施形態の外観斜視図を図26に示す。図26に示す同軸二輪車1において、車輪軸2の両端には一対の車輪3(右車輪3R及び左車輪3L)が止着されている。この車輪3は、柔軟な特性を有するゴム材で形成されており、その内部には空気や窒素ガス等が充填される。このガス圧を調整して車輪3の柔軟性を調整することにより、機体の振動を吸収し、路面の凹凸による振動や段差による衝撃を低減することができる。
【0006】
また、車輪軸2には、例えば人間が立ち姿勢で搭乗するための板状体の下に後述する制御装置等が格納される略直方体形状の筐体が接合されたベース4が、車輪軸2回りに傾動可能に支持されている。なお、以下の説明においては、両輪を結ぶ車輪軸2の中間点をX−Y−Z座標系の原点Oと仮定し、この原点Oを通りベース4の主面と平行で且つ車輪軸2に垂直な方向をX軸又はロール軸、原点Oを通る車輪軸方向をY軸又はピッチ軸、原点Oを通りベース4の主面と垂直な方向をZ軸又はヨー軸と定義する。また、同軸二輪車1の前方をX軸の正方向、左方をY軸の正方向、上方をZ軸の正方向とそれぞれ定義する。
【0007】
ベース4には、図27に示すように、正逆回転可能なモータ10(10R及び10L)が装着されており、モータ10に隣接して、モータ10の回転位置を検出するためのロータリエンコーダ11(11R及び11L)が設けられている。また、モータ10と車輪3との間には、歯車又はタイミングベルトによる減速器12(12R及び12L)が介在されており、モータ10の回転がこの減速器12及びジョイント(図示せず)を介して車輪3に伝達される。
【0008】
さらに、ベース4には、ベース4のピッチ軸、ヨー軸回りの角速度ωp、ωyawを検出するためのジャイロセンサ13のほか、X、Y、Z軸方向のリニア加速度Ax、Ay、Az及びピッチ軸、ロール軸、ヨー軸回りの角加速度αp、αr、αyawを検出するための加速度センサ14や、ベース4上の負荷重量を検出するための圧力センサ15等の各種センサが内蔵されている。
【0009】
このうち、圧力センサ15は、図28のAの平面図及び図28のBの側面図に示すようにベース4の板状体を構成する支持台4aと可動台4bとの間の四隅に設けられており、この4つの圧力センサ151、152、153、154のセンサ信号から、ベース4上の負荷の重心座標(Xg、Yg)とその負荷重量Wgとを検出することができる。
【0010】
すなわち、圧力センサ151〜154のセンサ信号がそれぞれPS1、PS2、PS3、PS4であり、無荷重状態で圧力センサ151〜154にかかる自重がW0である場合、負荷重量Wgは、以下の式(1)のように求められる。
【0011】
【数1】

【0012】
また、圧力センサ151、152、153、154の座標が、それぞれ(Xps,Yps)、(−Xps,Yps)、(―Xps,―Yps)、(Xps,―Yps)である場合に、重心座標(Xg,Yg)は、以下の式(2)のように求められる。
【0013】
【数2】

【0014】
この式(2)において、W14は無荷重状態で圧力センサ151、154にかかる自重を示し、W23は無荷重状態で圧力センサ152、153にかかる自重を示し、W12は無荷重状態で圧力センサ151、152にかかる自重を示し、W34は無荷重状態で圧力センサ153、154にかかる自重を示す。
【0015】
このようにして、圧力センサ15によりベース4上の負荷による負荷荷重トルクT1が計算できるため、モータ10にその反作用のモーメントを与えることにより、ベース4上でバランスを保ち、姿勢を安定化することが可能となる。
【0016】
さらにまた、ベース4の下部筐体には、マイクロコンピュータからなる制御装置16が搭載されており、この制御装置16に各種センサ信号、検出信号が入力される。制御装置16は、これらの入力信号に基づいて、後述するようにベース4のピッチ軸角度、ヨー軸角度を適切な値に保ちながら、機体を前進・後退・旋回させるモータトルクを発生するように制御する。
【0017】
また、この同軸二輪車1は、図29に示すように、車輪軸2回りに傾動可能とされるベース4の重量中心Mが車輪軸2よりも下方に位置するように構成されている。これにより、停止時にも機体の重心位置が最も安定な位置に保たれ、転倒しにくくなる。なお、この図29ではベース4の上面の高さが車輪軸2よりも高くなっているが、ベース4の上面が車輪軸2より低くなっていても構わない。
【0018】
ここで、ベース4上で姿勢を保つための制御概念について説明する。図30に示すように、ベース4上の負荷、例えば人間の体重による負荷荷重トルクT1に対して、同じモーメントを発生するようにモータトルクTmを制御すると、ベース4はシーソーのように支点を中心にバランスを保つ。このバランスを保つ支点に相当する点、すなわち車輪軸2回りの回転モーメントがゼロとなる点をZMP(Zero Moment Point)と呼ぶ。このZMPが車輪3の路面との接地点に一致するとき、或いは路面との接地面内にあるとき、バランスが保たれてベース4上で姿勢を保つことができる。
【0019】
この同軸二輪車1に体重Whの人間が搭乗した場合、図31に示すように、人間の傾き角θに応じてベース4の重量中心Mが車輪軸2を中心に傾く。このとき、車輪軸2がバランスをとるための車輪軸トルクT0は以下の式(3)で表され、姿勢を保つためのモータトルクTmは減速器12の減速比をN:1としてT0/Nで表される。
【0020】
【数3】

【0021】
このようにして、上述の同軸二輪車1では、上述の如くベース4の重量中心Mが車輪軸2よりも下方に位置するように構成されているため、式(3)のように、人間の体重Whによるモーメントとベース4の重量Wmによるモーメントとの差分を車輪軸トルクT0として加えるのみでよく、比較的小さいモータトルクでバランスを保つことができる。
【0022】
さらに、ベース4上で姿勢を保つための力学モデルについて、図32に示すX−Z座標系を用いて詳細に説明する。ここで図32では簡単のため、車輪3は1つであるものとして説明する。また、車輪3、ベース4、及びベース4上の人間をそれぞれリンクとみなし、その重心位置座標をそれぞれ(x0,z0)、(x1,z1)、(x2,z2)とする。さらに、各リンクの質量をそれぞれm0、m1、m2とし、慣性モーメントをI0、I1、I2とする。
【0023】
定義した点Ω(σ,φ)回りの第iリンク(i=0,1,2)の各運動量は、重心位置座標を(xi,zi)とすると、以下の式(4)で表される。ここで、式(4)においてx、zの上に付されている1つの点は、x、zの1階微分であることを示している。
【0024】
【数4】

【0025】
したがって、全リンクの慣性力によるモーメントは、以下の式(5)で表される。ここで、式(5)においてx、zの上に付されている2つの点は、x、zの2階微分であることを示している。また、全リンクの重力によるモーメントは、重力加速度をgとして以下の式(6)で表される。
【0026】
【数5】

【0027】
この慣性力によるモーメントと重力によるモーメントとの和により、式(7)に示すように、点Ω(σ,φ)回りのモーメントMΩが与えられる。
【0028】
【数6】

【0029】
質量m0である車輪3の重力によるモーメントを除けば、点Ω(σ,φ)を原点にとることで、上述のモーメントMΩは車輪軸2回りのモーメントMaとなる。この車輪軸2回りのモーメントMaは、以下の式(8)で表される。
【0030】
【数7】

【0031】
このモーメントMaを用いて上述のモーメントMΩを表せば、x0=0であるとき、すなわち車輪3の重心位置が車輪軸2上にあるとき、以下の式(9)で与えられる。
【0032】
【数8】

【0033】
ここで、ZMPはモーメントMΩが0である床面上の点と定義される。そこで、車輪軸2の高さをh、ZMPの座標を(σzmp,−h)として式(7)に代入すると、以下の式(10)のようになる。この式(10)をσzmpについて解くことで、ZMPをリンク位置、加速度及び質量により表すことができる。
【0034】
【数9】

【0035】
また、上述した式(9)にZMPの座標(σzmp,−h)を代入すると、以下の式(11)のようになる。なお、この式(11)は、車輪軸2回りのモーメントのつり合いの式を示す。
【0036】
【数10】

【0037】
ここで、ZMPに作用する力を図33に図示する。図33において、FNは床反力、FTは転がり摩擦力、FはFNとFTとの合成ベクトルを表す。なお、床反力FNは実際には車輪3の接地面全体に分布するが、図33ではZMPに集約するものとして表している。この図から車輪軸2回りのモーメントのつり合いの式を表すと、以下の式(12)のようになる。
【0038】
【数11】

【0039】
なお、この式(12)に、以下の式(13)〜(15)を代入すると、上述した式(11)と同じものになる。
【0040】
【数12】

【0041】
ベース4上の姿勢が安定するには、式(12)においてσzmp=0となればよい。すなわち、車輪軸トルクT0=−FT*hが成立すれば姿勢を保つことができる。したがって、T0=FT=0を満たす以下の式(16)に示す状態変数を制御することにより、姿勢を安定させることができる。
【0042】
【数13】

【0043】
このとき、x0、x1は、機構構造により一意に定まるが、m2、I2、x2、z2は、人間であるため不定値である。このm2、I2、x2、z2によるベース4上でのモーメントMtは、以下の式(17)で与えられる。但し、ベース4は、図34のように水平に保たれるものとする。
【0044】
【数14】

【0045】
ここで、負荷が人間である場合には角速度ω2が十分に小さいため、ω2≒0と近似すると、式(18)においてx2とその2階微分値をゼロにするときモーメントMtがゼロになる。x2とその2階微分値をゼロにすることは、ベース4上での負荷荷重トルクT1がゼロとなるようにx0及びx1を制御することと等価と考えてよい。また、この負荷荷重トルクT1によるモーメントMtは、力F2でベース4上の作用点(xf,L)に作用することと等価である。したがって、このxfをゼロにするx0、x1を与えることができればT1=0となり、姿勢を安定に保つ条件を満足することができる。
【0046】
図34に示すように、ベース4上のジャイロセンサ信号をフィードバック制御してモータトルクTmを与えることによりx0=x1を保つように制御されているとき、xf=x0となるようにモータトルクTmを制御することで姿勢を安定に保つことができる。
【0047】
具体的には、誤差Ef=xf−x0とするとき、Ef>0であればx0を正の方向に変位させるためにモータトルクTmを負として機体を前進させ、Ef<0であればx0を負の方向に変位させるためにモータトルクTmを正として機体を後退させることで、誤差Efをゼロに収束させることができる。すなわち、A0を正の定数として、Tm=−A0*EfとなるモータトルクTmを与えることでEfをゼロに収束させ、姿勢を安定に保つことができるようになる。
【0048】
実際には、例えば図35のようにベース4がピッチ軸回りに角度θ0だけ傾いた場合、体重Mの人間によりT1(=Mτ×L)の負荷荷重トルクが発生するため、その負荷荷重トルクT1と逆方向の車輪軸トルクT0を与えるようにモータトルクTmを制御することで、ZMPを車輪3の接地点と一致させ、姿勢を安定に保つことができるようになる。
【0049】
ここで、ベース4上に人間が搭乗した場合、個人差はあるものの通常1〜2秒の周期で姿勢を保つために足裏に作用させる力を変動させているため、人間の体重による負荷荷重トルクT1は不確定に変化する。したがって、リアルタイムにバランスがとれるようなトルクをモータ10に加算し、負荷変動に対してベース4の角度を一定に保つ必要がある。
【0050】
そこで、上述の同軸二輪車1は、このような負荷変動をリアルタイムに相殺するために、制御装置16内に図36に示すような制御機構を有している。図36において、減算器20では、姿勢指令であるベース角度指令θrefとジャイロセンサ13及び加速度センサ14によって検出した現在のベース角度θ0との偏差がとられ、この偏差が姿勢制御器21に供給される。姿勢制御器21は、このベース角度指令θrefと現在のベース角度θ0とからモータトルク電流値Tgyr[A]を計算する。
【0051】
また、調整器22では、圧力センサ15のセンサ信号PS1、PS2、PS3、PS4を用いて負荷荷重トルクT1を推定し、これを相殺するための推定負荷荷重トルク電流値T1′/Km[A]を計算する。ここでKmはモータ定数[Nm/A]である。負荷の重心座標が(Xg、Yg)であり、負荷重量がWgである場合、推定負荷荷重トルクT1′は、以下の式(18)のように与えられる。
【0052】
【数15】

【0053】
そして減算器23では、モータトルク電流値Tgyrと推定負荷荷重トルク電流値T1′/Kmとの偏差がとられ、この偏差がモータ電流I[A]としてモータ24に与えられる。モータ24はこのモータ電流Iによって回転することによりモータトルクTmを発生し、加算器25では、このモータトルクTmと負荷荷重トルクT1とが加算されてベース26に伝えられる。
【0054】
このように、負荷荷重トルクT1を相殺するためのモータトルクTmをモータ24に加算することにより、停止時においては負荷変動に対してベース角度を一定に保つことができる。
【0055】
以上の制御機構により姿勢安定制御を行うことができるが、この状態で走行するには、さらに走行制御のための制御機構が必要となる。そこで、上述の同軸二輪車1は、実際には姿勢安定制御のためのモータトルクと走行制御のためのモータトルクとを独立して求める二輪構造の制御機構を有している。
【0056】
このような二輪構造の制御機構の物理モデルを図37に示す。なお、この図37においても、簡単のため、車輪3は1つであるものとして説明する。図37に示すように、ベース4にはジャイロセンサ13、加速度センサ14、圧力センサ15等の各種センサが内蔵されており、その下部にはモータステータ30、ロータリエンコーダ31、モータロータ32が存在し、モータロータ32の回転は減速器33及びジョイント34を介して車輪3に伝達される。
【0057】
姿勢制御/調整器40は、姿勢指令であるベース角度指令θref、ジャイロセンサ13及び加速度センサ14によって検出した現在のベース角度θ0、及び圧力センサ15のセンサ信号PS1、PS2、PS3、PS4から、上述したモータトルクTgyr及び推定負荷荷重トルクT1′を計算する。また、モータ制御器41は、走行指令であるモータロータ32の回転位置指令Prefとロータリエンコーダ31によって検出したモータロータ32の現在の回転位置θrとから、走行のためのモータトルクを計算する。
【0058】
そして、加算器42において、モータトルクTgyr及び推定負荷荷重トルクT1′と走行のためのモータトルクとが加算され、この加算値がモータロータ32に供給される。
【0059】
ここで、上述したベース角度指令θrefとは、搭乗者が安定に乗ることができるように、X軸方向の加速度Axに応じて設定されるベース角度の目標値である。具体的には、X軸加速度Axがゼロのときベース4が水平になるように、X軸加速度Axが正のときベース4を前方に傾けるように、X軸加速度Axが負のときベース4を後方に傾けるように、それぞれ設定される。
【0060】
そこで、例えばX軸加速度Axが正の場合、図38に示すように、慣性力と重力との合成ベクトルの方向にZMPが位置するようにベース4を傾けると、搭乗者は姿勢を安定に保つことができる。なお、このベース角度指令θrefは、X軸加速度Axに比例して変化する。
【0061】
制御機構のブロック図を図39に示す。減算器50では、姿勢指令であるベース角度指令θrefとジャイロセンサ13(及び加速度センサ14)によって検出した現在のベース角度θ0との偏差がとられ、この偏差が姿勢制御器51に供給される。姿勢制御器51は、このベース角度指令θrefと現在のベース角度θ0とからモータトルクTgyrを計算し、このモータトルクTgyrを加算器54に供給する。
【0062】
一方、減算器52では、走行指令であるモータロータ57の回転位置指令Prefとロータリエンコーダ58によって検出したモータロータ57の現在の回転位置θrとの偏差がとられ、この偏差がモータ制御器53に供給される。モータ制御器53は、この回転位置指令Prefと現在の回転位置θrとから、走行のためのモータトルクを計算し、このモータトルクを加算器54に供給する。
【0063】
また、ベース4に負荷荷重トルクT1が加えられると、圧力センサ15のセンサ信号PS1、PS2、PS3、PS4が調整器55に供給され、調整器55は、このセンサ信号に基づいて上述した推定負荷荷重トルクT1′を計算する。
【0064】
加算器54では、姿勢制御器51からのモータトルクTgyrとモータ制御器53からのモータトルクとが加算され、減算器56では、この加算値から推定負荷荷重トルクT1′が減算される。これが最終的なモータトルクTmとなり、モータロータ57に与えられる。加算器59では、このモータトルクTmの反作用力と負荷荷重トルクT1とが加算され、この加算値がモータステータ/ベース60に与えられる。
【0065】
モータロータ57は、モータトルクTmに応じて回転制御される。このモータロータ57の回転位置θrは、減速比N:1の減速器61によって1/Nに変換され車輪3に伝達される。すなわち、車輪3の回転位置θwは、モータロータ57の回転位置θrの1/Nである。ロータリエンコーダ58は、このモータロータ57の回転位置θrを検出し、検出信号を減算器52に供給する。
【0066】
一方、モータステータ/ベース60には、上述したように、モータトルクTmの反作用力と負荷荷重トルクT1との加算値が加わるが、それらが相互に打ち消されるため、モータステータ/ベース60の傾動は抑えられる。
【0067】
図40は、図39に示したブロック図における処理を、ラプラス演算子を用いて数学モデルとして表現したものである。上述の如く、姿勢制御器51には、ベース角度指令θrefと現在のベース角度θ0との偏差が与えられ、モータ制御器53には、モータロータ57の回転位置指令Prefと現在の回転位置θrとの偏差が与えられる。この姿勢制御器51及びモータ制御器53では、例えばPID(比例・積分・微分)演算を行うフィードバック制御により各モータトルクが計算される。
【0068】
すなわち、Kp0、Kp1が比例ゲインとなり、Ki0、Ki1が積分ゲインとなり、Kd0、Kd1が微分ゲインとなる。これらの制御ゲインによって、モータが姿勢指令θref及び走行指令Prefに対して応答する追従性が変化する。例えば、モータロータ57は、比例ゲインKp0,Kp1を小さくすると、ゆっくりとした追従遅れをもって動くようになり、比例ゲインKp0、Kp1を大きくすると、高速に追従するようになる。このように、制御ゲインを変化させることにより、姿勢指令θref、走行指令Prefと、実際の動きの誤差の大きさや応答時間とを調整することが可能となる。
【0069】
また、モータロータ57には、姿勢制御器51からのモータトルクとモータ制御器53からのモータトルクとの加算値から推定負荷荷重トルクT1′が減算されたモータトルクTmが与えられ、回転角度θrだけ回転する。ここで、Jrはモータロータ57のイナーシャ(inertia)であり、Drはモータロータ57の粘性抵抗(ダンパ係数)である。
【0070】
一方、モータステータ/ベース60には、上述の如くモータトルクTmの反作用力と負荷荷重トルクT1との加算値が加わるが、それらが相互に打ち消されるため傾動が抑えられる。ここで、Jはモータステータ/ベース60のイナーシャであり、Dはモータステータ/ベース60の粘性抵抗(ダンパ係数)である。
【0071】
この図40に示した数学モデルは、より詳細には例えば図41に示すようになる。図41に示すように、姿勢制御器70は、ベース角度指令θrefと現在のベース角度θ0との偏差に対してPID制御を行うことで姿勢制御のためのモータトルクTgyrを生成し、モータ制御器71は、モータ10の回転位置指令Prefと現在の回転位置θrとの偏差に対してPID制御を行うことで走行制御のためのモータトルクを生成する。
【0072】
また、調整器72は、圧力センサ15のセンサ信号から推定負荷荷重トルクT1′を生成する。加算器73ではこれらの各トルクが加算され、得られたモータトルクTmがモータ10に与えられる。モータ10は、このモータトルクTmにより回転駆動され、その回転が減速比16:1の減速器74によって1/16に変換され車輪3に伝達される。
【0073】
以上、図37乃至図41では、簡単のため車輪3が1つであるものとして説明したが、左右2つの車輪3R,3Lを有する実際の同軸二輪車1では、例えば図39における姿勢制御器51が左右の車輪3R,3Lで共通に用いられる一方で、モータ制御器53が左右独立に設けられる。
【0074】
この場合の制御機構のブロック図を図42に示す。ジャイロセンサ13からのセンサ値ωpは例えば通過帯域が0.1〜50Hzであるバンドパスフィルタ(BPF)80を介して角度算出器82に送られ、加速度センサ14からのセンサ値αpは例えば遮断周波数が0.1Hzのローパスフィルタ(LPF)81を介して角度算出器82に送られる。角度算出器82では、これらのセンサ値に基づいて現在のベース角度θ0が算出される。
【0075】
また、減算器83では、姿勢指令であるベース角度指令θrefと現在のベース角度θ0との偏差がとられ、この偏差が姿勢制御器84に供給される。姿勢制御器84は、このベース角度指令θrefと現在のベース角度θ0とから、上述したモータトルクTgyrを計算する。
【0076】
一方、減算器85Rでは、右車輪3R用の走行指令であるモータロータ92Rの回転位置指令Prefrとロータリエンコーダ93Rによって検出したモータロータ92Rの現在の回転位置θrとの偏差がとられ、この偏差が位置比例制御器86Rに供給される。位置比例制御器86Rは、この偏差に対して位置比例(P)制御を行い、比例制御結果を減算器87Rに供給する。
【0077】
また、微分器88Rは、ロータリエンコーダ93Rから供給されたモータロータ92Rの回転位置θrを微分し、微分結果を減算器87Rに供給する。そして減算器87Rでは、位置比例制御器86Rからの比例制御結果と微分器88Rからの微分結果との偏差がとられ、この偏差が速度比例制御器89Rに供給される。速度比例制御器89Rは、この偏差に対して速度比例(P)制御を行い、比例制御結果を加算器90Rに供給する。
【0078】
加算器90Rでは、この比例制御結果とモータトルクTgyrと調整器94において圧力センサ15のセンサ信号PS1、PS2、PS3、PS4から求めた推定負荷荷重トルクT1′とが加算され、加算値が電流制御アンプ91Rに供給される。電流制御アンプ91Rは、この加算値に基づいてモータ電流を生成し、モータロータ92Rを駆動する。このモータロータ92Rの回転位置は、減算器85Rと共に微分器88Rに供給される。左車輪3Lについても同様であるため、説明を省略する。
【0079】
このように、上述の同軸二輪車1では、左右の車輪3R,3Lで共通な姿勢安定制御用の制御機構と、左右独立な走行制御用の制御機構とを有し、それらが独立した制御を行うため、姿勢安定制御と走行制御とを安定して両立することができる。
【0080】
次に、上述の同軸二輪車1における速度制御について説明する。
【0081】
上述したように、上述の同軸二輪車1では、ベース4の四隅に設けられた4つの圧力センサ151〜154のセンサ信号PS1、PS2、PS3、PS4からベース4上の負荷の重心座標(Xg,Yg)とその負荷重量Wgとを検出し、負荷荷重トルクT1を求めているが、さらに、この重心座標(Xg,Yg)を走行する方向、速度の制御指令として用いる。具体的には、負荷重量Wgが所定の値以上である場合に、重心位置のX座標Xgに基づき速度指令Vxを変化させる。
【0082】
その様子を図43に示す。ここで図43において、X3からX1までの範囲は停止領域であり、この範囲内では指令走行速度をゼロとする。この停止領域は、車輪3の路面との接地面のX座標範囲とすることが好ましい。この場合、例えば負荷重量Wgが大きいときや車輪3のガス圧が低いときには車輪3の路面との接地面積が大きくなるため、停止領域の範囲も大きくなる。このように停止領域(不感帯)を設けることで、搭乗者の意図しない僅かな重心移動によって機体が前進・後退することを防止することができる。
【0083】
X座標がX1以上になると、前進最大速度SfMAX に達するまで、X座標の大きさに応じて指令速度が増加する。また、X座標がX2以上になると強制的に減速停止し、再び停止領域内で姿勢を安定させるまで停止する。このように、強制的に減速停止する領域を設けることで、最大速度で走行している際の搭乗者の安全性を確保することができる。
【0084】
同様に、X座標がX3以下になると、後退最大速度SbMAXに達するまで、X座標の大きさに応じて指令速度が増加する。なお、この後退最大速度SbMAXは、前進最大速度SfMAXよりも小さいことが好ましい。また、X座標がX4以下になると強制的に減速停止し、再び停止領域内で姿勢を安定させるまで停止する。
【0085】
X座標がX1からX2まで、或いはX3からX4までの間では、そのX座標Xgに応じて、例えば以下の式(19)により、モータ10Rの回転位置指令Prefrとモータ10Lの回転位置指令Preflとが生成される。ここで、式(19)において、G0は正の一定ゲインであり、例えば負荷重量Wgに応じて可変にすることができる。
【0086】
【数16】

【0087】
なお、時刻t=0での速度指令がVx0であり、時刻t=t1での速度指令がVx1である場合、加速度を連続的に変化させ、機構的な共振振動を生じさせないように走行することが好ましい。この場合、Vx1に到達するまでの時間をΔtとすると、時刻t(0≦t≦t1)での走行速度指令Vref(t)は、例えば以下の式(20)により算出することができる。
【0088】
【数17】

【0089】
このとき、モータ10の回転位置指令Pref(t)は、式(20)の走行速度指令Vref(t)を積分した値となり、以下の式(21)に示すような5次関数で与えられる。ここで、式(21)において、Pref0は時刻t=0での回転位置指令である。
【0090】
【数18】

【0091】
また、前進・後退させるのみでなく、負荷重量Wgが所定の値以上である場合、重心位置のY座標Ygに基づき、例えば図44に示すように旋回速度指令Vrを変化させることもできる。ここで図44において、−Y1からY1までの範囲は停止領域であり、この範囲内では指令旋回速度をゼロとする。
【0092】
なお、この停止領域は、原点O近傍で任意に設定することができる。このように停止領域(不感帯)を設けることで、搭乗者の意図しない僅かな重心移動によって機体が旋回することを防止することができる。Y座標がY1以上になると、右回り最大速度CWMAXに達するまで、Y座標の大きさに応じて指令旋回速度が増加する。同様に、Y座標が−Y1以下になると、左回り最大速度CCWMAXに達するまで、Y座標の大きさに応じて指令旋回速度が増加する。
【0093】
Y座標がY1以上又は−Y1以下では、そのY座標Ygに応じて、モータ10Rの回転位置指令Rrefrとモータ10Lの回転位置指令Rreflとが生成される。走行速度がゼロである場合、モータ10Rの回転位置指令Rrefrとモータ10Lの回転位置指令Rreflとは、例えば以下の式(22)に示すような逆位相指令となる。ここで、式(22)において、G1は正の一定ゲインであり、例えば負荷重量Wgに応じて可変にすることができる。
【0094】
【数19】

【0095】
一方、走行速度がゼロでない場合、モータ10Rの回転位置指令Rrefrとモータ10Lの回転位置指令Rreflとは、例えば以下の式(23),(24)に示すような同位相指令となる。ここで、式(23),(24)において、G2は正の一定ゲインであり、例えば負荷重量Wgに応じて可変にすることができる。
【0096】
【数20】

【0097】
ここで、不整地路面等の凹凸を有する路面や傾斜路面を走行する場合には、左右のモータ10R,10Lの回転位置指令で与えられる目標方向に走行することが困難になり、目標方向と実際の走行方向とにずれが生じる虞がある。また、左右の車輪3R,3Lのガス圧の違いにより車輪3の有効直径が異なる場合にも、同様に目標方向と実際の走行方向とにずれが生じる虞がある。
【0098】
そこで、上述の同軸二輪車1では、ヨー軸回りの角速度ωyawを検出するジャイロセンサ13により実際の走行方向を検出し、左右のモータ10R,10Lの回転速度を独立に制御することで、目標方向と実際の走行方向とのずれを解消する。
【0099】
一例として、図45のAに示すように右車輪3Rよりも左車輪3Lの方の有効直径が短く、図45のBに示すように、直進する際にヨー軸回りのジャイロセンサ信号としてωyaw1[rad/sec]が検出される場合について説明する。このような場合、回転速度指令Vrefr,Vreflの加算平均をVref0としたとき、以下の式(25)、(26)に示すように、左右のモータ10R、10Lに与える回転速度指令Vrefr,Vreflを補正することにより、機体を直進させることができる。ここで、式(25)、(26)において、K0は正の定数である。
【0100】
【数21】

【0101】
また、図45のCに示すように目標方向としてDref[rad/sec]が与えられている場合には、以下の式(27)、(28)に示すように左右の車輪に回転速度指令Vrefr、Vreflを与える。
【0102】
【数22】

【0103】
このようにして得られた回転速度指令Vrefr、Vreflは、それぞれ以下の式(29)、(30)により車輪の回転位置指令Prefr、Preflに変換される。ここで、式(29)、(30)において、kはサンプリング回数を表す整数であり、Pref(k)はkサンプリングでの回転位置指令を示す。
【0104】
【数23】

【0105】
同様に、旋回する場合についても、左右の車輪3R、3Lのガス圧の違いや路面状況の違いなどから、旋回速度にずれが生じる虞がある。この場合にも、ヨー軸回りの角速度ωyawを検出するジャイロセンサ13により実際の旋回速度を検出し、左右のモータ10R、10Lの回転速度を独立に制御することで、目標となる旋回速度と実際の旋回速度とのずれを解消することができる。
【0106】
一例として、右車輪3Rよりも左車輪3Lの方の有効直径が短く、旋回する際にヨー軸回りのジャイロセンサ信号としてωyaw2[rad/sec]が検出されている場合について説明する。右車輪3Rの回転位置指令Rrefr及び左車輪3Lの回転位置指令Rreflを微分した信号をそれぞれVrefr、Vreflとすると、旋回速度の誤差ωerrは以下の式(31)で表される。
【0107】
【数24】

【0108】
この場合、以下の式(32)、(33)に示すように、左右のモータ10R、10Lに与える回転位置指令Rrefr、Rreflを補正することにより、機体を目標通りに旋回させることができる。ここで、式(32)、(33)において、G3は正の一定ゲインであり、例えば負荷重量Wgに応じて可変にすることができる。
【0109】
【数25】

【0110】
このように、上述の同軸二輪車1では、ヨー軸回りの角速度ωyawを検出するジャイロセンサ13により実際の走行方向、旋回速度を検出し、左右のモータ10R、10Lの回転速度を独立に制御することで、目標方向(旋回速度)と走行方向(旋回速度)とのずれを解消することができる。
【0111】
さらにこのような同軸二輪車1のソフトウェア構成を、図46を用いて説明する。図46に示すように、最下位層のハードウェア・レイヤ150から順に、カーネル・レイヤ151、オンボディ・レイヤ152、ネットワーク・レイヤ153、そして最上位層のアプリケーション・レイヤ154という階層構造で構成される。
【0112】
ハードウェア・レイヤ150は、回路の階層であり、例えばモータ制御回路、中央制御回路、センサ回路の制御回路等が含まれる。カーネル・レイヤ151は、モータサーボ演算や姿勢制御演算、走行制御演算、或いはリアルタイム走行目標値演算等の各種演算を行う階層である。このハードウェア・レイヤ150及びカーネル・レイヤ151において、基本的な姿勢安定制御と走行制御とが実現される。オンボディ・レイヤ152は、走行目標値演算、障害物回避軌道の生成等を行う階層である。
【0113】
これらの各階層は、それぞれ異なるサンプリングの制御周期で実行され、上位階層ほどその周期は長くなる。例えば最下位層のハードウェア・レイヤ150では、その制御周期が0.1msecと短い周期であるのに対して、カーネル・レイヤ151では1msec、オンボディ・レイヤ152では10msecと長い周期になっている。
【0114】
続いて、同軸二輪車1における回路の全体構成について説明する。図47に示すように、センサ回路200には、圧力センサ151〜154からのセンサ信号PS1,PS2,PS3,PS4が供給される。センサ回路200は、このセンサ信号のほか、ピッチ軸回り及びヨー軸回りの角速度を検出するジャイロセンサ13からのセンサ信号ωp,ωyawと、X,Y,Z軸方向のリニア加速度及びピッチ軸,ロール軸,ヨー軸回りの角加速度を検出する加速度センサ14からのセンサ信号Ax,Ay,Az,αp,αr,αyawとを合わせて、制御装置16に供給する。
【0115】
制御装置16は、これらのセンサ信号に基づいて、上述したようにモータトルクTgyrや、走行指令であるモータロータの回転位置指令Prefを生成し、これらを左右のモータドライバ203R,203Lに供給する。モータドライバ203R,203Lは、このモータトルクTgyr、モータロータの回転位置指令Pref等に基づいて、例えば200Wのモータ10R,10Lを駆動するための最適なモータ電流を算出し、モータ10R,10Lに供給する。このモータ10R,10Lの回転位置は、ロータエンコーダ11R,11Lによって求められ、モータドライバ203R,203Lにフィードバックされる。
【0116】
サーボオン/パワースイッチ204は、制御装置16及び電源スイッチ205と接続されており、電源スイッチ205からの信号は電源管理回路206に供給される。この電源管理回路206は、バッテリ207と接続されており、制御装置16、音声処理回路201及び画像処理回路202に24Vの制御用電源を供給するほか、モータドライバ203R,203Lにモータ電源を供給する。電源管理回路206には、モータドライバ203R,203Lを介してモータ10R,10Lの回生電力が供給され、電源管理回路206は、この回生電力を用いてバッテリ207を充電する。
【0117】
図47に示した全体構成の詳しい内部構成を、図48を用いて説明する。図48に示すように、センサ回路200には、圧力センサ151〜154からのセンサ信号PS1,PS2,PS3,PS4、ジャイロセンサ131,132からのセンサ信号ωp,ωyaw、加速度センサ14からのセンサ信号Ax,Ay,Az,αp,αr,αyawが供給される。センサ回路200は、圧力センサ15からのセンサ信号PS1,PS2,PS3,PS4を例えば10mv/Nの圧力ゲインでゲイン調整し、さらに図示しないアナログ−デジタル変換器を介してデジタル信号に変換した後、制御装置16の重心演算部210に供給する。
【0118】
また、センサ回路200は、ジャイロセンサ131,132からのセンサ信号ωp,ωyawを例えば1.6V/(rad/sec)の姿勢ゲインでゲイン調整すると共に、加速度センサ14からのセンサ信号Ax,Ay,Az,αp,αr,αyawを例えば1.6V/(rad/sec2)の姿勢ゲインでゲイン調整し、さらに図示しないアナログ−デジタル変換器を介してデジタル信号に変換した後、信号前処理部211に供給する。この信号前処理部211は、入力された信号に対してデジタルフィルタを施したり、オフセット調整や姿勢位置すなわちベース角度θ0の算出をしたりする前処理を行う。
【0119】
重心演算部210は、圧力センサ151〜154からのセンサ信号PS1,PS2,PS3,PS4に基づいて前述したようにベース4上の負荷の重心位置座標(Xg、Yg)とその負荷重量Wgとを計算し、この重心位置座標(Xg、Yg)及び負荷重量Wgの情報を走行指令算出器212に供給すると共に、重心位置のY座標Yg及び負荷重量Wgの情報を旋回指令発生器215に供給する。
【0120】
走行指令算出器212は、例えば図43に示したような重心位置X座標−走行速度特性に基づき速度指令Vxを生成し、回転速度指令発生器213は、この速度指令Vxに基づいて前述した5次関数演算を行うことにより、回転速度指令Vref(t)を生成する。回転速度指令発生器213は、回転位置指令Pref(t)を回転位置指令発生器214、旋回指令発生器215、及び姿勢指令発生器216に供給する。
【0121】
旋回指令発生器215は、重心演算部210から供給された重心位置のY座標Yg及び負荷重量Wg、信号前処理部211から供給されたヨー軸回りの回転角速度ωyaw、及び回転速度指令発生器213から供給された回転速度指令Vref(t)に基づいて旋回する際の位相指令、例えばYg*G1を生成し、この位相指令を回転位置指令発生器214に供給する。
【0122】
回転位置指令発生器214は、回転速度指令発生器213から供給された回転速度指令Vref(t)を積分して回転位置指令Pref(t)を生成し、左右のモータドライバに回転位置指令Prefr(t),Prefl(t)を供給する。この際、回転位置指令発生器214は、旋回指令発生器215からの位相指令を考慮して回転位置指令Prefr(t),Prefl(t)を生成する。
【0123】
姿勢指令発生器216は、回転速度指令発生器213から供給された回転速度指令Vref(t)に基づき、図38を用いて説明したように姿勢指令であるベース角度指令θrefを計算し、このベース角度指令θrefを減算器217に供給する。減算器217では、このベース角度指令θrefから信号前処理部211で求められた現在のベース角度θ0が減算され、偏差が姿勢制御器218に供給される。姿勢制御器218は、この偏差を元にしてPID制御を行い、モータトルクTgyrを求める。
【0124】
なお、PID制御を行う際には、ベース4上の負荷重量Wgに応じてPIゲインを変更するようにしてもよい。具体的には、負荷重量Wgが大きくなると比例ゲインを大きくし、積分ゲインを小さくすることが好ましい。姿勢制御部218は、このモータトルクTgyrを左右のモータドライバ203R,203Lに供給する。
【0125】
右車輪3R用のモータドライバ203Rにおいて、減算器230Rでは、モータ10R用の走行指令である回転位置指令Prefrとロータリエンコーダ11Rによって検出したモータ10Rの現在の回転位置θrとの偏差がとられ、この偏差が位置比例制御器231Rに供給される。位置比例制御器231Rは、この偏差に対して位置比例(P)制御を行い、比例制御結果を減算器232Rに供給する。また、微分器233Rは、ロータリエンコーダ11Rから供給されたモータ10Rの回転位置θrを微分し、微分結果を減算器232Rに供給する。
【0126】
そして減算器232Rでは、位置比例制御器231Rからの比例制御結果と微分器233Rからの微分結果との偏差がとられ、この偏差が速度比例・積分制御器234Rに供給される。速度比例・積分制御器234Rは、この偏差に対して速度比例・積分(PI)制御を行い、比例・積分制御結果を加算器235Rに供給する。加算器235Rでは、この比例・積分制御結果とモータトルクTgyrとが加算され、加算値が電流制御アンプ236Rに供給される。
【0127】
電流制御アンプ236Rは、この加算値に基づいてモータ電流を生成し、例えば200Wのモータ10Rを駆動する。このモータ10Rの回転位置は、減算器230Rと共に微分器233Rに供給される。左車輪3Lについても同様であるため、説明を省略する。
【0128】
電源管理回路206は、例えば24Vのバッテリ207と接続されており、制御装置16に24V,1Aの制御用電源を供給するほか、モータドライバ203R,203Lにそれぞれ24V,30Aのモータ電源を供給する。電源管理回路206には、モータドライバ203R,203Lを介してモータ10R,10Lの回生電力が供給され、電源管理回路206は、この回生電力を用いてバッテリ207を充電する。
【0129】
以上説明したように、本願発明者が先に提案した同軸二輪車1では、ジャイロセンサ13及び加速度センサ14を用いてベース4の角度制御を行うモータトルクTgyrと、圧力センサ15を用いて負荷荷重トルクを相殺するモータトルクT1'とを生成する、左右の車輪3R,3Lで共通な姿勢制御器と、圧力センサ15を用いて走行制御を行うモータトルクを生成する、左右独立なモータ制御器とを設け、それらが独立した制御を行うため、姿勢安定制御と走行制御とを安定して両立することができる。
【0130】
また、本願発明者が先に提案した同軸二輪車1では、ベース4上の負荷の重心座標に応じて走行制御を行うが、車輪3の路面との接地面のX座標範囲、Y座標範囲に停止領域(不感帯)を設けているため、搭乗者の意図しない僅かな重心移動によって機体が前進・後退・旋回することを防止することができる。
【0131】
さらに、本願発明者が先に提案した同軸二輪車1では、ヨー軸回りの角速度ωyawを検出するジャイロセンサ13により実際の走行方向、旋回速度を検出し、左右のモータ10R,10Lの回転速度を独立に制御することで、目標方向(旋回速度)と走行方向(旋回速度)とのずれを解消することができる。
このような同軸二輪車による走行装置を、本願出願人は先に提案した。
【0132】
ところで、上述の走行装置のように搭乗者の姿勢により前進・後進する制御方法では、進行方向に障害物がある場合には、人が姿勢を変化させて障害物を回避することになる。しかしながら不意な事象の発生に対して、人の反応には応答に遅れが生じる恐れがある。このため不意なる障害物があった場合に、人の反応が応答しきれないことにより生じる問題を解決するために、前もって種々の手立てを講じる必要があった。
【0133】
一方、このように人の姿勢によるバランスの制御では、例えば凹凸路面や坂道で走行するときに障害物がある場合、この障害物を回避するには高速に人が姿勢を調整するなどの高度なスキルが要求されていた。さらに従来の乗り物は、障害物を回避するため足元を見ながら走行する必要があり、高速になると視線は遠い視野範囲となるため足元の障害物に応答することが困難であった。
【0134】
また、従来の車両で複数の台数で走行するとき、相互に衝突を回避しようとすると搭乗者は全方位に注意を払う必要が生じ、搭乗者は操縦姿勢の運動を常に行う必要があった。さらに、従来の発明では、旋回は操作レバーと体重移動による走行であるため、走行方向が逆になると旋回方向感覚が逆になり、意図と反する方向に旋回する問題があり、特に狭い路地などの走行を容易に行うことができない問題があった。
【0135】
この発明はこのような問題点に鑑みて成されたものであって、本発明の目的は、走行中の障害物の回避や、狭い路地等での走行が良好に行われるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0136】
このため本発明においては、距離センサを用いて障害物を検出し、距離センサからの距離信号によりブレーキ制動または旋回を行う設定により障害物の衝突を回避するようにしたものであって、これによれば、走行中の障害物の回避や、狭い路地等での走行も良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0137】
請求項1の発明によれば、複数の車輪を独立に駆動する手段と、複数の車輪を連結する筐体とを有し、筐体には搭乗者の重心の移動を検出する手段が設けられて、検出された重心の移動の情報に従って複数の車輪の回転数をそれぞれ設定して走行を行う走行装置であって、重心位置の前後の移動に応じて走行の加減速が行われ、重心位置の左右の移動に応じて旋回走行が行われると共に、筐体の前後または左右に距離センサを実装し、距離センサからの距離信号によりブレーキ制動または旋回を行う設定により障害物の衝突を回避する制御手段を有することにより、障害物の回避を良好に行うことができるものである。
【0138】
また、請求項2の発明によれば、複数の車輪は回転軸が一直線上に配置された二輪からなり、複数の車輪の回転数の設定には筐体を水平に保つ要素を含むことによって、安定な走行を行うことができるものである。
【0139】
請求項3の発明によれば、距離センサを筐体の4隅または全周囲に実装し、周囲の障害物の距離を測定することによって、前後の障害物の回避や、狭い路地等での走行も良好に行うことができるものである。
【0140】
請求項4の発明によれば、距離センサにより筐体の走行方向に障害物が検出されたときは、重心位置が速度を停止する方向となるように筐体に傾斜を与える設定で、複数の車輪の回転数を制御することによって、搭乗者の運動が良好に制御され、安定した制動を行うことができるものである。
【0141】
請求項5の発明によれば筐体に、複数の車輪の側面の障害物の距離を検出する手段を設けることによって、特に狭い路地等でも良好な走行を行うことができるものである。
【0142】
請求項6の発明によれば、複数の車輪の側面に障害物が検出されたときは、旋回を行う設定により複数の車輪の回転数を制御することによって、特に狭い路地等での安定な走行を可能にすることができるものである。
【0143】
請求項7の発明によれば、車輪のホイールの所定部に開口を設け、車輪の回転に同期したタイミングで複数の車輪の側面の障害物の距離を検出することによって、側面方向の障害物の検出を良好に行うことができるものである。
【0144】
さらに請求項8の発明によれば、複数の車輪を独立に駆動すると共に、複数の車輪を連結する筐体を有し、筐体には搭乗者の重心の移動を検出する手段が設けられて、検出された重心の移動の情報に従って複数の車輪の回転数をそれぞれ設定して走行を行う走行装置の制御方法であって、重心位置の前後の移動に応じて走行の加減速を行い、重心位置の左右の移動に応じて旋回走行を行うと共に、筐体の前後または左右に距離センサが実装され、距離センサからの距離信号によりブレーキ制動または旋回を行う設定をして障害物の衝突を回避することにより、障害物の回避を良好に行うことができるものである。
【0145】
また、請求項9の発明によれば、複数の車輪は回転軸が一直線上に配置された二輪からなり、複数の車輪の回転数の設定には筐体を水平に保つ要素を含むことによって、安定な走行を行うことができるものである。
【0146】
請求項10の発明によれば、距離センサが筐体の4隅または全周囲に実装され、周囲の障害物の距離を測定することによって、前後の障害物の回避や、狭い路地等での走行も良好に行うことができるものである。
【0147】
請求項11の発明によれば、距離センサにより筐体の走行方向に障害物が検出されたときは、重心位置が速度を停止する方向となるように筐体に傾斜を与える設定で、複数の車輪の回転数を制御することによって、搭乗者の運動が良好に制御され、安定した制動を行うことができるものである。
【0148】
請求項12の発明によれば、複数の車輪の側面の障害物の距離を検出する手段を有することによって、特に狭い路地等でも良好な走行を行うことができるものである。
【0149】
請求項13の発明によれば、複数の車輪の側面に障害物が検出されたときは、旋回を行う設定により複数の車輪の回転数を制御することによって、特に狭い路地等での安定な走行を可能にすることができるものである。
【0150】
請求項14の発明によれば、車輪のホイールの所定部に開口を設け、車輪の回転に同期したタイミングで複数の車輪の側面の障害物の距離を検出することによって、側面方向の障害物の検出を良好に行うことができるものである。
【0151】
これによって、本発明では、走行方向に障害物が検出されると本体の姿勢を変化させることにより、搭乗者の姿勢を変化させて搭乗者が走行方向の速度を落として障害物との衝突を回避することになる。従って、搭乗者は足元に注意を払わずとも遠方を見ながら安全に走行をすることができるようになる。
【0152】
さらには、複数台で隣接して走行するような場合にも、相互の距離を検出して衝突を回避することが可能になる。従って、このように多数が近傍で走行するときに搭乗者は衝突回避の姿勢調整の煩わしさを無くすことができるようになる。
【0153】
こうして、本発明によれば、長時間の走行をしても衝突回避等の制御を人のスキルによらずに行うことにより、疲労せずに長時間の走行をすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0154】
以下、図面を参照して本発明を説明するに、図1には、本発明による走行装置及びその制御方法を適用した同軸二輪車の一実施形態の構成を示す。
【0155】
すなわち図1に示すように、本発明による走行装置は、独立した車輪構造(車輪は2輪でも3輪以上でもよい)で、テーブルにジャイロセンサ、加速度センサを組込んだ機構による姿勢の制御により走行する車両本体を有し、この本体に実装した距離センサ301〜304、301s〜304sにより、障害物との距離Ldを測定し、距離Ldと走行速度の大きさにより本体の姿勢を変化させることにより搭乗者の姿勢を変えて、走行速度を落として障害物との衝突を回避する。さらに、図2には旋回レバー310の具体例を示し、図3には平衡に配置された2輪で走行する搬送車の具体構造を示す。
【0156】
また、図4には装置の機構構成図を示す。ここで、各距離センサ301〜304、301s〜304sの出力が距離計測器320に供給され、この計測器320で計測された距離Ld、Ldsと、旋回レバー310からのレバー角度の信号が中央制御装置330に供給される。そして中央制御装置330では、ジャイロセンサ、加速度センサ等の姿勢センサ回路340の出力信号と共に演算によりモータ駆動制御信号が形成される。この駆動信号がモータ制御装置351、352に供給されてモータ361、362が駆動され、これらの駆動力が減速機371、372を介してタイヤ381、382に伝達される。
【0157】
また、モータ361、362には二次電池電源回路390からの電源電圧が供給されると共に、これらのモータ361、362で発生される回生電力が回生コンデンサ391に蓄えられる。
【0158】
さらに、図5には制御システム構成図を示す。この図5においても、各距離センサ301〜304、301s〜304sで計測された距離Ld、Ldsと、旋回レバー310からのレバー角度の信号と、ジャイロセンサ、加速度センサ等の姿勢センサ回路340の出力信号が中央制御装置330に供給されて、モータ駆動制御信号が形成され、モータ制御装置351、352を通じてモータ361、362に供給される。また、モータ361、362には二次電池電源回路390からの電源電圧が供給されると共に、これらのモータ361、362で発生される回生電力が回生コンデンサ391に蓄えられる。
【0159】
従って上述の構成を用いることによって、解決しようとする課題の欄で述べた姿勢制御の処理と共に、本発明の障害物を検出したときの処理を実現することができる。そこで、図6には、一輪車の制御構造を示す。この構造図の概略は上述の図37と同等であるが、この図6では、さらに距離センサ301〜304、301s〜304sと、ブレーキ姿勢指令発生器400が追加されたものである。そして、距離センサ301〜304、301s〜304Sで得られた障害物の情報に基づいてテーブル姿勢指令が姿勢制御装置40に供給されることによって、制動を行う姿勢制御が実施される。
【0160】
さらに図7には、上述の中央制御装置330における走行方向の障害物の制動制御システムブロックの内部構成を示す。図7において、距離センサ301〜304は、例えば超音波距離センサで構成される。ここでは送信機305、306から送信された超音波が障害物で反射され、それぞれ距離センサ301〜304に対応する受信機で受信される。さらにこれらの受信信号が距離計測器320に供給されることによって、距離センサ301〜304と障害物との距離Ld1〜Ld4が測定される。そしてこれらの測定値がブレーキ姿勢指令発生器331に供給される。
【0161】
また、旋回レバー310に対応するポテンショメータから旋回速度指令が旋回指令発生器332に供給される。さらに加速度センサ、ジャイロセンサなどの姿勢センサ回路340からのセンサ信号が信号前処理回路333に供給され、デジタルフィルタ処理やオフセット調整、姿勢位置算出などが行われる。そしてこれらの処理により算出された旋回角速度が旋回指令発生器332に供給され、上述の旋回速度指令と共に演算されて位相指令が算出される。この位相指令がモータトルク指令発生器334に供給され、算出された回転トルク指令が、モータ制御装置351、352となるトルク制御ドライバに供給される。
【0162】
これらのトルク制御ドライバ(モータ制御装置351、352)からの信号がモータ361、362に供給されて、所定の走行を行うための駆動が行われる。さらに、これらのモータ361、362の回転角度が磁気センサ411、412で検出され、これらの検出信号が走行速度算出器335に供給される。そしてこの走行速度算出器335では、信号前処理回路333からのピッチ角速度信号と共に走行速度の算出が行われ、算出された走行速度信号がブレーキ姿勢指令発生器331に供給される。これによりブレーキ姿勢指令発生器331では、姿勢指令信号が形成される。
【0163】
さらに、この姿勢指令信号が加算器336に供給され、信号前処理回路333からのテーブル角度信号が減算される。これにより姿勢角度偏差信号が算出され、この姿勢角度偏差信号が姿勢制御器337に供給されて姿勢制御トルク指令信号に変換される。そして、この姿勢制御トルク指令信号がモータトルク指令発生器334に供給されることによって、走行速度に応じた所定のテーブル角度となるように、トルク制御ドライバ(モータ制御装置351、352)を通じてモータ361、362の駆動が制御される。
【0164】
そしてこの装置において、ブレーキ制動を行うための傾き角の制御は以下のようにして行われる。すなわち、一定速度で走行しているとき、ブレーキ作用により速度を減速するには慣性力の作用力に応じてテーブル角度を、例えば上述の図36のような関係となるよう制御することにより、人は急停止による加速度による慣性力を路面に伝えてバランスを保ち姿勢を維持できる。これがブレーキ制動の原理である。
【0165】
そこで、人がブレーキ制動するときには下式を満足するようテーブル角度を制御すればよい。この場合に、傾き角θ0と人の質量mh、人の重量Wh、加速度Axとするとき関係は下式となる。ここで重力加速度をgとし、タイヤは路面に対し滑らないこととする。
tan(θ0)=mh×Ax/Wh=Ax/g
【0166】
つまり加速度Axが検出されればテーブル角度θ0は定まる。ここで装置に実装される加速度センサから加速度Axが計測されるのでΘ0は式により算出される。さらに、加速度Axは車軸中心に実装された加速度センサにより検出された信号A0から傾きθ0からX方向の成分となる。
Ax=A0×COS(θ0)
【0167】
従って、ブレーキは距離センサにより本体と障害物間が一定の距離以下になると、上式により傾きθ0の指令を発生して、搭乗者を障害物に衝突しないよう図35のようにテーブルを傾けて搭乗車の身体の姿勢を制動姿勢にして走行速度を減衰していく。なお、二輪車両の場合、各車輪のテーブルの姿勢センサは共通となる。上記モデルでタイヤに連結したモータ制御は各車輪で独立した制御装置により制御される。
【0168】
そこで、さらに障害物と本体間の距離センサ信号によるブレーキ制御方法について説明する。すなわち図7の構成において、走行中に前方に障害物が距離Ld(Ld1,Ld2,Ld3,Ld4)を検出したとき、車両が衝突を回避するために姿勢制御を下式より制御して搭乗者を安全に停止する。ここで走行状態は、本体の車輪に実装しているモータの回転角度センサ信号θrと本体のジャイロセンサのピッチ角速度ωpから本体の走行方向と走行速度V0[m/sec]が検出される。
【0169】
一方、回転センサ信号θr[rad]、ピッチ角速度ωp[rad/sec]、1秒間に変化する回転センサ信号θm[rad]の変化量をΔθr[rad/sec]と検出されるとき、タイヤ半径Rt[m]での走行速度V0[m/sec]は
V0 =2π×Rt×(Δθr − ωp) [m/sec] (101)
で算出される。こうして算出された走行速度V0に応じて障害物との距離Ldから姿勢角度を変化させて本体を静止する。具体的には下式により制御することができる。
【0170】
すなわち前進走行している状態:V0>0であるときは、障害物が距離Ldの前方にある場合、本体前方が上側に傾くように指令を発生する。すると人は後方に姿勢変化させられるため図36のZMPの原理により車両の走行速度と反対の回転モーメント力が作用し車両を停止することができる。
【0171】
すなわち走行速度V0と前方の障害物との距離Ldfと本体のテーブル傾き角度指令θrefは下式の関係となる。
Θref = (V0/Ldf)× Kb :Kbは正の定数 (102)
このときLdf=(Ld1+Ld2)/2またはLd1,Ld2の小さいほうの値で、Ldfがある一定値以下になるとき、Lfdは一定値Ld0として式(102)を演算する。
【0172】
また、後進走行している状態:V0<0であるときは、障害物が距離Ldの後方にある場合、本体前方が下側に傾くように指令を発生する。すると人は前方に姿勢変化させられるため図36のZMPの原理により車両の走行速度と反対の回転モーメント力が作用し車両を停止することができる。
【0173】
すなわち走行速度V0と後方の障害物との距離Ldfと本体のテーブル傾き角度指令θrefは下式の関係となる。
Θref = (V0/Ldr)× Kb :Kbは正の定数 (103)
このときLdr=(Ld3+Ld4)/2またはLd3,Ld4の小さいほうの値で、Ldrがある一定値以下になるとき、Lfrは一定値Ld0として式(103)を演算する。
【0174】
さらに静止している状態:V0=0であるときは、障害物が距離Ldで前方または後方にある場合、本体の姿勢に変化はない。すなわちV0=0より
Θref = 0 (104)
となる。以上のようにして、障害物と本体間の距離センサ信号によるブレーキ制御を行うことができる。
【0175】
さらに、図8には障害物検出回路の構成を示す。この図8において、距離計測器320内には距離測定回路321が設けられ、この距離測定回路321で発生されるパルス信号がパルス送信回路322を通じて送信機305に供給され、例えば40kHzの超音波が送信される。そして前方障害物500で反射された超音波が受信機301、302で受信され、受信信号がパルス受信回路323、324でパルス信号に変換されて距離測定回路321に供給される。
【0176】
これにより、距離測定回路321では、音波の反射する時間T1,T2[sec]を計測して下式演算により距離Ld1,Ld2[m]を算出される。
Ld1=√((T1×As)2−Ls2) [m] (105)
Ld2=√((T2×As) 2−Ls2) [m] (106)
【0177】
ここで、20℃での音波の速度は 331.5+(0.6×20)=143.5 [m/SEC]であるので上式の係数Asの値は
As=143.5/ 2=71.75 [m/SEC]
となる。
【0178】
このようにして、式(105)、(106)により、距離Ld1、Ld2を計測することができる。同様に、後方のセンサの距離センサからの算出された距離をLd3,Ld4も算出される。
Ld3=√((T3×As)2−Ls2) [m] (107)
Ld4=√((T4×As) 2−Ls2) [m] (108)
【0179】
そして、これらの四箇所の距離(Ld1,Ld2,Ld3,Ld4)を
Ld=(Ld1,Ld2,Ld3,Ld4)
とする。
【0180】
また、図9には前方及び後方の両方に障害物が存在する場合を示す。ここで、前方後方に共に障害物があるときは、旋回して距離Ld(Ld1,Ld2,Ld3,Ld4)が最も大きい旋回位置になるよう制御される。このように配置することにより、前方と後方の障害物を広いエリアで検出することができるようになる。また距離Ld1とLd2に差が有る場合、障害物から遠のく方法に旋回することにより衝突を回避することもできる。
【0181】
同様に、後方の距離Ld2とLd3に差が有る場合、障害物から遠のく方法に旋回することにより衝突を回避することもできる。ここで距離Ld1とLd2またはLs3とLs4の検出信号により、旋回して前方障害物500及び後方障害物501を回避するには、例えば図7において、距離計測器320からの信号を旋回指令発生器332に供給し、後述する側面の距離信号Lds1、Lds2、Lds3、Lds4と同等に扱うことにより実現することができる。
【0182】
そこで図10にはタイヤ側面の障害物検出器の実装図を示す。この図10において、モータ回転角度をエンコーダから検出できるので、モータの回転角度からホイールの中空穴36a〜36hの位置とセンサの位置関係が算出される。あるいはホイールの穴を検出する近接センサ37を本体に取り付けてホイール穴位置を検出してもよい。
【0183】
こうして検出されたホイール穴位置から、図11に示すように送信信号と受信信号の送信・受信タイミングを、穴位置に同期して送信・受信することにより、回転中でもタイヤ側面にある障害物の距離がホイールに干渉することなく測定できる。なお、図10では中空穴がホイールに8個の場合であるが、送信器Rs(Ls)と受信器1s(3),2s(4s)の3箇所の中空穴がある構造でもよい。
【0184】
さらに図12には、中空穴の角度θhが送信器と受信器の位置にあるときに送信器から超音波を送信し、受信器で受信することによりホイールに干渉することなくホイール側の障害物の距離を時刻Ts1(3),Ts2(4)で測定するタイミングを示す。こうしてホイールが回転しているときもホイール回転角θhに同期して超音波を送受信することにより障害物を走行中に測定することができる。なお、図11において()内の数値は左側のタイヤの信号を意味する。
【0185】
こうして、例えば図13に示すような回路構成を用いて、タイヤ側面の障害物の距離Ldsを検出して旋回指令を調整するよう制御すると、図14に示すように側面の障害物を回避して走行することができる。なお、図13の回路構成は、図7の回路構成において、側面の距離センサからの障害物との距離信号を旋回指令発生器332に供給しているものであり、上述のブレーキ制御の場合と同様に障害物までの距離の検出と、回避の制御が行われる。
【0186】
そしてこの場合に、タイヤ側面の障害物の回避する制御方法は以下のようになる。ここで、タイヤ側面の障害物の距離Ldsを検出し側面の障害物を図14のように回避して走行するには、図13にあるように旋回指令REFyawを調整する旋回指令発生器により旋回量を調整する。以下に旋回指令発生器の詳細を説明する。
【0187】
すなわち、タイヤ側面の障害物の距離Ldsは式(105)、(106)で説明したように送信器Rs、Lsと受信器1s、2s、3s、4sの距離Lssと送信パルス信号と受信パルス信号の反射時間Tsから式(105)、(106)により同様にLdsは算出される。受信器1s、2sは右側タイヤ、受信器3s、4sは左側タイヤの受信器、送信器Rsは右側、送信器Lsは左側に実装する。
【0188】
ここで受信器1s、2s、3s、4sの検出信号を(Ts1,Ts2,Ts3,Ts4)、それぞれの障害物との距離(Lds1,Lds2,Lds3,Lds4)を以下に定義する。
Lds=(Lds1,Lds2,Lds3,Lds4)
Ts=(Ts1,Ts2,Ts3,Ts4)
【0189】
従って右タイヤの距離センサ信号(Ts1,Ts2)であるとき、その障害物との距離(Lds1,Lds2)は下式となる。
Lds1=√((Ts1×As) 2−Lss2) [m] (109)
Lds2=√((Ts2×As)2−Lss2) [m] (110)
【0190】
同様にして左タイヤ側の距離センサ信号(Ts3,Ts4)であるとき、その障害物との距離(Lds3,Lds4)は下式となる。
Lds3=√((Ts3×As)2−Lss2) [m] (111)
Lds4=√((Ts4×As)2−Lss2) [m] (112)
【0191】
こうしてタイヤ側面の障害物との距離Ldsから図13旋回指令発生器により本体の旋回量を調整して図14のように側面の障害物を回避して走行する。なお、図13の旋回指令発生器332は、搭乗者からの旋回レバー310を通じた旋回速度指令REFyawと、左右タイヤ側面の障害物距離Lds(Lds1,Lds2,Lds3,Lds4)信号から関数fyaw(REFyaw,Lds)により本体旋回速度指令ωrefyawを算出する演算器であり、この演算器のωrefyawは後述する式により算出される。
【0192】
以下の説明で、 (Lds1,Lds2)min、(Lds3,Lds4)minは括弧内の数値で最も小さい値、Ldsf0は側面障害物回避距離の指定値と定義する。また、係数K0,K1,K2,G1,C0は正の定数とする。そして、(Lds1,Lds2)min <(Lds3,Lds4)min、かつ (Lds1,Lds2)min<Ldsf0であるとき:右タイヤ側に障害物を検出した場合、図15に示すように左旋回指令を与える。なお、Ldsf0は許容された障害物との距離の値である。このとき障害物との距離(Lds1,Lds2)により旋回指令ωrefyawを調整する。
Lω0 = Lds2 ‐ Lds1 (113)
Lω1 = Ldsf0−(Lds2 ,Lds1)min (114)
ωrefyaw=fyaw(REFyaw,Lds)=REFyaw+Lω0×K0+Lω1×K1 (115)
【0193】
また、 (Lds1,Lds2)min>(Lds3,Lds4)minかつ(Lds3,Lds4)min<Ldsf0であるとき:左タイヤ側に障害物を検出した場合、右旋回指令を与える。すなわち上式(115)と同様に障害物との距離(Lds3,Lds4)により旋回指令ωrefyawを調整する。
Lω0 = −(Lds4 ‐ Lds3) (116)
Lω1 = −(Ldsf0 −(Lds4 ,Lds3)min) (117)
ωrefyaw=fyaw(REFyaw,Lds)=REFyaw+Lω0×K0+Lω1×K1 (118)
【0194】
さらに、(Lds1,Lds2)min=(Lds3,Lds4)minかつ(Lds1,Lds2,Lds3,Lds4)min<Ldsf0であるとき:左右タイヤ側に障害物がある場合、障害物回避する旋回指令を与える。
また、図17に示すように、Lds1= (Lds1,Lds2)minかつLds3=(Lds3,Lds4)min、またはLds2=(Lds1,Lds2)minかつLds4=(Lds3,Lds4)minであるときは、
ωrefyaw=fyaw(REFyaw,Lds) = 0 (119)
とする。
【0195】
あるいは図16に示すように、Lds1=(Lds1,Lds2)minかつLds4= (Lds3,Lds4)minであるとき:右前方と左後方に障害物がある場合、左旋回指令を与える。
ωrefyaw=fyaw(REFyaw,Lds)=REFyaw+K2/(Lds1+C0) (120)
また、Lds2=(Lds1,Lds2)minかつLds3=(Lds3,Lds4)minであるとき:左前方と右後方に障害物がある場合、右旋回指令を与える。
ωrefyaw=fyaw(REFyaw,Lds)=REFyaw−K2/(Lds3+C0) (121)
さらに上記の以外のとき
ωrefyaw=fyaw(REFyaw,Lds) = REFyaw (122)
【0196】
こうして求めた旋回速度指令ωrefyawにより、左右のタイヤ位相指令Prefxを式(123)で算出し、図13に示すように、左右のモータトルク指令(Tref1(t),Tref2(t))をモータに与え旋回させる。
Prefx = (ωrefyaw-ωyaw)×G1 (123)
このようにして側面にある障害物に対し、本体を旋回させ追突を図14から図17に示すように回避することができる。
【0197】
さらに以下には、上記の処理動作についてフローチャートを用いて説明する。すなわち図18には電源投入時の中央処理装置のフローチャートを示す。このフローチャートはいわゆるメインルーチンであって、動作がスタートされるとステップS1でイニシャライズが行われ、ステップS2でサーボゲイン設定が行われ、ステップS3でタイマ割り込み許可が行われる。そしてステップS4でインジケータの表示が行われて、以後はこのステップS4が繰り返されている。
【0198】
次に、図19には姿勢センサ回路のフローチャートを示す。このフローチャートはタイマ割り込みルーチンであって、姿勢センサ回路にタイマ割り込みが入ると、ステップS11でジャイロセンサの角速度信号がAD変換され、重力加速度センサ信号がAD変換される。そしてステップS12で中央制御装置へセンサデータSIOが送信される。これらの処理が終るとメインルーチンへリターンされる。
【0199】
さらに、図20には姿勢センサの信号前処理のフローチャートを示す。このフローチャートはタイマ割り込みルーチンであって、信号前処理回路にタイマ割り込みが入ると、ステップS21で姿勢センサ回路からのセンサデータSIOが受信され、ステップS22で角速度、加速度データのデジタルフィルタ演算が行われる。さらにステップS23で姿勢センサデータから車体角度と角速度が算出され、ステップS24で算出された値がメモリに書き込まれる。これらの処理が終るとメインルーチンへリターンされる。
【0200】
また、図21には走行速度検出器のフローチャートを示す。このフローチャートはタイマ割り込みルーチンであって、走行速度検出器にタイマ割り込みが入ると、ステップS31でモータトルク制御ドライバからの回転角度位置データと、センサデータSIOが受信され、ステップS32で姿勢センサ回路からピッチ軸角速度が読み込まれる。さらにステップS33で走行速度V0が算出され、ステップS34で算出された値がメモリに書き込まれる。これらの処理が終るとメインルーチンへリターンされる。
【0201】
さらに、図22には距離センサ回路のフローチャートを示す。このフローチャートはタイマ割り込みルーチンであって、距離センサ回路にタイマ割り込みが入ると、ステップS40で車体前後発信器から超音波パルス信号が発振される。そしてステップS41で車両前後受信器での信号受信時間の計測が行われる。さらにステップS42で車両前後障害物の距離が算出され、ステップS43で算出された値がメモリに書き込まれる。
【0202】
また、ステップS44で中央制御装置からタイヤホイール角度が入力され、ステップS45で発信器がホイール穴位置にあるか否か判断される。ここでホイール穴位置でないとき(NO)はメインルーチンへリターンされる。
【0203】
これに対してステップS45で発信器がホイール穴位置であるとき(YES)は、ステップS45でタイヤサイド発信器から超音波パルス信号が発振される。そしてステップS46でタイヤサイド受信器での信号受信時間の計測が行われる。さらにステップS47でタイヤサイド障害物の距離が算出され、ステップS48で算出された値がメモリに書き込まれる。これらの処理が終るとメインルーチンへリターンされる。
【0204】
さらに図23には、旋回指令発生器の障害物回避走行運転指令発生のフローチャートを示す。このフローチャートもタイマ割り込みルーチンであって、旋回指令発生器にタイマ割り込みが入ると、ステップS50で旋回レバー回路から旋回速度指令が読み込まれる。またステップS51でメモリから車両角速度が読み込まれる。さらにステップS52で距離センサ回路から障害物距離データが受信される。
【0205】
そして、ステップS53で前方障害物距離判定での距離(Ld1,Ld2)が危険距離以下になったか否かが判断され、以下のとき(YES)はさらにステップS54で後方障害物距離判定での距離(Ld3,Ld4)が危険距離以下になったか否かが判断される。そして、ここでも以下のとき(YES)は、ステップS55で側面障害物距離判定での距離(Lds1,Lds2,Lds3,Lds4)が危険距離以下になったか否かが判断され、ここで以下でないとき(NO)はステップS56で操作レバーによる旋回指令が採用される。
【0206】
さらにステップS57でブレーキ姿勢指令発生器での前後障害物を回避する指令が生成され、車体速度に応じて車体傾き指令が変化される。また、ステップS54で後方障害物距離判定での距離(Ld3,Ld4)が危険距離以下になっていないとき(NO)と、ステップS55で側面障害物距離判定での距離(Lds1,Lds2,Lds3,Lds4)が危険距離以下になったとき(YES)は、直接ステップS57でブレーキ姿勢指令発生器での前後障害物を回避する指令が生成され、車体速度に応じて車体傾き指令が変化される。
【0207】
また、ステップS53で前方障害物距離判定での距離(Ld1,Ld2)が危険距離以下になっていないとき(NO)は、ステップS58で後方障害物距離判定での距離(Ld3,Ld4)が危険距離以下になったか否かが判断される。そして以下になっているとき(YES)は、ステップS57でブレーキ姿勢指令発生器での前後障害物を回避する指令が生成され、車体速度に応じて車体傾き指令が変化される。
【0208】
これに対して、ステップS58で後方障害物距離判定での距離(Ld3,Ld4)が危険距離以下になっていないとき(NO)は、さらにステップS59で側面障害物距離判定での距離(Lds1,Lds2,Lds3,Lds4)が危険距離以下になったか否かが判断され、このステップS59で以下になっているとき(YES)は、ステップS60でタイヤ側面障害物回避旋回指令が演算される。また、ステップS59で危険距離以下になっていないとき(NO)は、ステップS61で操作レバーによる旋回指令が採用される。
【0209】
さらにステップS57、S60、S61の処理が終了した後は、ステップS62で位相指令及び姿勢指令の値がメモリに書き込まれてメインルーチンへリターンされる。このようにして、旋回指令発生器での障害物回避走行運転指令の発生が行われる。
【0210】
また、図24には姿勢制御のフローチャートを示す。このフローチャートもタイマ割り込みルーチンであって、姿勢制御にタイマ割り込みが入ると、ステップS71でメモリから車両角度、位相指令、姿勢指令の値が読み込まれる。そしてステップS72で姿勢角度偏差が算出され、ステップS73で姿勢制御器での姿勢制御トルク指令の算出が行われる。さらにステップS74でモータトルク指令の算出が行われ、ステップS75でトルク制御ドライバへトルク指令が送信される。これらの処理が終るとメインルーチンへリターンされる。
【0211】
さらに、図25にはトルク制御ドライバのフローチャートを示す。このフローチャートもタイマ割り込みルーチンであって、トルク制御ドライバにタイマ割り込みが入ると、ステップS81で中央制御装置からトルク指令が受信される。そしてステップS82でモータ電流変換が行われ、ステップS83でモータ361、362の駆動電流が制御される。さらにステップS84でモータ磁気センサによるモータ回転角度位置が検出され、ステップS85で中央制御装置へモータ回転角度位置が送信される。これらの処理が終るとメインルーチンへリターンされる。
【0212】
こうして上述の走行装置によれば、複数の車輪を独立に駆動する手段と、複数の車輪を連結する筐体とを有し、筐体には搭乗者の重心の移動を検出する手段が設けられて、検出された重心の移動の情報に従って複数の車輪の回転数をそれぞれ設定して走行を行う走行装置であって、重心位置の前後の移動に応じて走行の加減速が行われ、重心位置の左右の移動に応じて旋回走行が行われると共に、筐体の前後または左右に距離センサを実装し、距離センサからの距離信号によりブレーキ制動または旋回を行う設定により障害物の衝突を回避する制御手段を有することにより、障害物の回避を良好に行うことができる。
【0213】
また、上述の走行装置の制御方法によれば、複数の車輪を独立に駆動すると共に、複数の車輪を連結する筐体を有し、筐体には搭乗者の重心の移動を検出する手段が設けられて、検出された重心の移動の情報に従って複数の車輪の回転数をそれぞれ設定して走行を行う走行装置の制御方法であって、重心位置の前後の移動に応じて走行の加減速を行い、重心位置の左右の移動に応じて旋回走行を行うと共に、筐体の前後または左右に距離センサが実装され、距離センサからの距離信号によりブレーキ制動または旋回を行う設定をして障害物の衝突を回避することにより、障害物の回避を良好に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0214】
なお、本発明は、重力中心が車輪の軸以下にある自律走行する車両で、姿勢センサ信号をフィードバックする姿勢制御装置により機体を安定に自律する車両に人が搭乗して体重の重心を変化させて車両を前進、後進、旋回する装置、また二足自律ロボットの装置で、ブレーキやアクセルの機構を持たない移動車両、またはロボットにも適応される。さらに本発明は、上述の説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱することなく種々の変形が可能とされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明による走行装置及びその制御方法を適用した同軸二輪車の一実施形態の構成図である。
【図2】旋回レバー310の具体例の構成図である。
【図3】平衡に配置された2輪で走行する搬送車の具体構造を示す構成図である。
【図4】本発明による走行装置の機構構成図である。
【図5】本発明による走行装置の制御システム構成図である。
【図6】一輪車の制御構造を示す構成図である。
【図7】中央制御装置の制動制御システムブロック図である。
【図8】障害物検出回路の構成を示す構成図である。
【図9】前方及び後方の両方に障害物が存在する場合を示す構成図である。
【図10】タイヤ側面の障害物検出器の実装図である。
【図11】送信信号と受信信号の送信・受信タイミングを示す図である。
【図12】送信信号と受信信号の送信・受信タイミングを示す図である。
【図13】タイヤ側面の障害物を検出して旋回指令を調整する回路の構成図である。
【図14】回避走行の様子を示す線図である。
【図15】左旋回指令を与える様子を示す線図である。
【図16】右前方と左後方に障害物がある場合に左旋回指令を与える様子を示す線図である。
【図17】左右タイヤ側に障害物がある場合に障害物回避する旋回指令を与える様子を示す線図である。
【図18】電源投入時の中央処理装置のフローチャート図である。
【図19】姿勢センサ回路のフローチャート図である。
【図20】姿勢センサの信号前処理のフローチャート図である。
【図21】走行速度検出器のフローチャート図である。
【図22】距離センサ回路のフローチャート図である。
【図23】障害物回避走行運転指令発生のフローチャート図である。
【図24】姿勢制御のフローチャート図である。
【図25】トルク制御ドライバのフローチャート図である。
【図26】本願発明者が先に提案した同軸二輪車の実施形態を示す外観斜視図である。
【図27】同軸二輪車のベースを説明するための側断面図である。
【図28】同軸二輪車のべースに設けられた圧力センサを示す図であり、同図(A)は平面図を示し、同図(B)は側面図を示す。
【図29】同軸二輪車の重量中心と車輪軸との位置関係を示す図である。
【図30】負荷荷重トルクとモータトルクとのつり合いを説明する図である。
【図31】人間が搭乗した場合の姿勢制御を説明する図である。
【図32】ベース上で姿勢を保つための力学モデルを説明する図である。
【図33】ベース上で姿勢を保つための力学モデルを説明する図である。
【図34】ベース上で姿勢を保つための力学モデルを説明する図である。
【図35】同軸二輪車における力学モデルを説明する図である。
【図36】姿勢安定制御のための制御機構を示す図である。
【図37】車輪が1つである場合における姿勢安定制御及び走行制御のための制御機構を示す図である。
【図38】同軸二輪車における姿勢指令を説明する図である。
【図39】車輪が1つである場合における姿勢安定制御及び走行制御のための制御機構を示すブロック図である。
【図40】図39に示すブロック図を数学モデルとして示す図である。
【図41】図40に示す数学モデルの詳細な具体例を示す図である。
【図42】車輪が2つである場合における姿勢安定制御及び走行制御のための制御機構を示すブロック図である。
【図43】前進・後退する場合の走行速度制御を説明する図である。
【図44】旋回する場合の走行速度制御を説明する図である。
【図45】直進する際にヨー軸回りのジャイロセンサ信号が検出される場合の制御方法を説明する図である。
【図46】同軸二輪車のソフトウェア構成を説明する図である。
【図47】同軸二輪車1における各回路の全体構成を説明する図である。
【図48】図47に示す全体構成の詳しい内部構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0216】
301〜304,301s〜304s…距離センサ、310…旋回レバー、320…距離計測器、330…中央制御装置、340…姿勢センサ回路、351,352…モータ制御装置、361,362…モータ、371,372…減速機、381,382…タイヤ、390…二次電池電源回路、391…回生コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪を独立に駆動する手段と、前記複数の車輪を連結する筐体とを有し、前記筐体には搭乗者の重心の移動を検出する手段が設けられて、前記検出された重心の移動の情報に従って前記複数の車輪の回転数をそれぞれ設定して走行を行う走行装置であって、
前記重心位置の前後の移動に応じて走行の加減速が行われ、
前記重心位置の左右の移動に応じて旋回走行が行われると共に、
前記筐体の前後または左右に距離センサを実装し、前記距離センサからの距離信号によりブレーキ制動または旋回を行う設定により障害物の衝突を回避する制御手段を有する
ことを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記複数の車輪は回転軸が一直線上に配置された二輪からなり、
前記複数の車輪の回転数の設定には前記筐体を水平に保つ要素を含む
ことを特徴とする請求項1記載の走行装置。
【請求項3】
前記距離センサを前記筐体の4隅または全周囲に実装し、周囲の前記障害物の距離を測定する
ことを特徴とする請求項1記載の走行装置。
【請求項4】
前記距離センサにより前記筐体の走行方向に前記障害物が検出されたときは、前記重心位置が前記速度を停止する方向となるように前記筐体に傾斜を与える設定で、前記複数の車輪の回転数を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の走行装置。
【請求項5】
前記複数の車輪の側面の前記障害物の距離を検出する手段を設ける
ことを特徴とする請求項1記載の走行装置。
【請求項6】
前記複数の車輪の側面に前記障害物が検出されたときは、旋回を行う設定により前記複数の車輪の回転数を制御する
ことを特徴とする請求項5記載の走行装置。
【請求項7】
前記車輪のホイールの所定部に開口を設け、前記車輪の回転に同期したタイミングで前記複数の車輪の側面の前記障害物の距離を検出する
ことを特徴とする請求項5記載の走行装置。
【請求項8】
複数の車輪を独立に駆動すると共に、前記複数の車輪を連結する筐体を有し、前記筐体には搭乗者の重心の移動を検出する手段が設けられて、前記検出された重心の移動の情報に従って前記複数の車輪の回転数をそれぞれ設定して走行を行う走行装置の制御方法であって、
前記重心位置の前後の移動に応じて走行の加減速を行い、
前記重心位置の左右の移動に応じて旋回走行を行うと共に、
前記筐体の前後または左右に距離センサが実装され、前記距離センサからの距離信号によりブレーキ制動または旋回を行う設定をして障害物の衝突を回避する
ことを特徴とする走行装置の制御方法。
【請求項9】
前記複数の車輪は回転軸が一直線上に配置された二輪からなり、
前記複数の車輪の回転数の設定には前記筐体を水平に保つ要素を含む
ことを特徴とする請求項8記載の走行装置の制御方法。
【請求項10】
前記距離センサが前記筐体の4隅または全周囲に実装され、周囲の前記障害物の距離を測定する
ことを特徴とする請求項8記載の走行装置の制御方法。
【請求項11】
前記距離センサにより前記筐体の走行方向に前記障害物が検出されたときは、前記重心位置が前記速度を停止する方向となるように前記筐体に傾斜を与える設定で、前記複数の車輪の回転数を制御する
ことを特徴とする請求項8記載の走行装置の制御方法。
【請求項12】
前記複数の車輪の側面の前記障害物の距離を検出する手段を有する
ことを特徴とする請求項8記載の走行装置の制御方法。
【請求項13】
前記複数の車輪の側面に前記障害物が検出されたときは、旋回を行う設定により前記複数の車輪の回転数を制御する
ことを特徴とする請求項12記載の走行装置の制御方法。
【請求項14】
前記車輪のホイールの所定部に開口を設け、前記車輪の回転に同期したタイミングで前記複数の車輪の側面の前記障害物の距離を検出する
ことを特徴とする請求項12記載の走行装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【公開番号】特開2006−160082(P2006−160082A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354421(P2004−354421)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】