説明

車両の制御装置

【課題】タイミングベルトの寿命が近づいた場合に、タイミングベルトの延命を十分に行うことができるとともに、ドライバビリティを向上させることができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】タイミングベルトにかかる負荷を積算して、タイミングベルトの劣化度合いを示す負荷積算値Fnを算出し(ステップS11)、算出した負荷積算値Fnが、第1警告判定値Cba以上であることを条件に(ステップS12でYESと判定)、負荷積算値Fnに応じて、車両の運転状態を変更する(ステップS14、ステップS16、ステップS17)ようになっている。したがって、タイミングベルトの劣化度合いに応じた適切なタイミングベルトの延命処置を行うことができ、タイミングベルトの延命を十分に行うことができるとともに、ドライバビリティを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力を伝達するベルトを備えた車両の制御装置に関し、特に、タイミングベルトに対するフェールセーフを行う車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンを有する車両は、吸排気バルブの開閉と、ピストンの上下動と、のタイミングを適切に計るため所謂タイミングベルトと呼ばれるベルトが用いられている。
【0003】
このようなベルトには、大きな力や偏った力がかかるとともに、経年変化により劣化し、張力が低下してしまうということが知られている。このようにベルトが劣化してしまうと、隙間が大きくなりベルトが磨り減りやすくなってしまったり、吸気バルブと排気バルブの開閉タイミングがずれてしまったりしてしまう。
【0004】
このため、このような車両においては、所定の時期にベルトの交換をさせるようにしている。例えば、車両の走行距離を計測し、この走行距離が所定の距離になった場合、保守点検時期の到来をドライバーに対してウォーニング等の警告表示で知らせるようにしている。
【0005】
また、ベルトの寿命が残り少ないと判断した場合に、交換するように警告する疲労警告システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この疲労警告システムは、エンジンの回転数が所定の基準回転数を超えている時間に基づいて、累積的に疲労度を導出し、導出した累積疲労度が所定の基準疲労度に至った場合に、ベルトの疲労を警告するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−239802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のベルトに関するものにおいては、ベルトの寿命が近いことを警告することのみであり、ベルトが交換されるまでの走行に対して何らメリットを与えるものではなかった。また、ベルトの寿命が近づいた場合に、延命処置を行うにしても、寿命までの余裕が少な過ぎると延命期間が短くなり、また、早過ぎるとドライバビリティを損ねてしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、ベルトの寿命が近づいた場合に、ベルトの延命を十分に行うことができるとともに、ドライバビリティを向上させることができる車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)ドライバーの操作指示および車両の走行状態に応じて前記車両の運転状態を制御する車両の制御装置において、エンジンの出力軸の回転力を伝達するベルトの劣化度合いを取得するベルト劣化状態取得手段と、前記ベルト劣化状態取得手段により取得した前記ベルトの劣化度合いが所定以上であることを条件に、前記ベルトの劣化度合いに応じて、前記車両の運転状態を変更する運転状態制御手段と、を備えたことを特徴とした構成を有している。
【0010】
この構成により、ベルトの劣化度合いが所定以上であることを条件に、ベルトの劣化度合いに応じて、車両の運転状態を変更するので、ベルトの劣化度合いに応じた適切なベルトの延命処置を行うことができ、ベルトの延命を十分に行うことができるとともに、ドライバビリティを向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る車両の制御装置は、上記(1)に記載の車両の制御装置において、(2)前記ベルト劣化状態取得手段は、前記ベルトにかかる負荷を積算して、前記ベルトの劣化度合いを取得し、前記運転状態制御手段は、前記ベルトにかかる負荷の積算値による前記ベルトの劣化度合いに応じて、前記車両の運転状態を変更することを特徴とした構成を有している。
【0012】
この構成により、ベルトにかかる負荷を積算して、この負荷の積算値によってベルトの劣化度合いを判定して、車両の運転状態を変更するので、ベルトの劣化度合いを負荷の積算により容易に求めることができ、簡単な構成でベルトの延命を十分に行うとともに、ドライバビリティを向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る車両の制御装置は、上記(1)または(2)に記載の車両の制御装置において、(3)前記運転状態制御手段は、前記車両の運転状態の制御として可変バルブタイミング制御を有し、前記車両の運転状態を変更する際、前記可変バルブタイミング制御の変更により前記車両の運転状態を変更することを特徴とした構成を有している。
【0014】
この構成により、可変バルブタイミング制御の変更により車両の運転状態を変更するので、構成の複雑さや制御の困難性を伴わずに、ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0015】
さらに、本発明に係る車両の制御装置は、上記(1)から(3)のいずれかに記載の車両の制御装置において、(4)前記運転状態制御手段は、前記車両の運転状態の制御として前記エンジンの制御を有し、前記車両の運転状態を変更する際、前記エンジンの回転数を制御することにより前記車両の運転状態を変更することを特徴とした構成を有している。
【0016】
この構成により、エンジンの回転数を制御することにより車両の運転状態を変更するので、構成の複雑さや制御の困難性を伴わずに、ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0017】
さらに、本発明に係る車両の制御装置は、上記(4)に記載の車両の制御装置において、(5)前記運転状態制御手段は、前記車両の運転状態の制御として変速比の制御を有し、前記車両の運転状態を変更する際、前記エンジンの回転数とともに前記変速比を制御することにより前記車両の運転状態を変更することを特徴とした構成を有している。
【0018】
この構成により、車両の運転状態を変更する際、エンジンの回転数とともに変速比を制御するので、エンジン回転数の変更による車速の増減を、変速比の変更で抑えることができ、ドライバビリティの悪化を防止して、ベルトの延命を行うことができる。
【0019】
さらに、本発明に係る車両の制御装置は、上記(1)から(5)のいずれかに記載の車両の制御装置において、(6)前記運転状態制御手段により取得する報知情報に応じて、前記ベルトの疲労を報知する報知手段を備え、前記運転状態制御手段は、前記ベルトの劣化度合いに応じて前記報知手段に報知させる報知情報を変更することを特徴とした構成を有している。
【0020】
この構成により、ベルトの劣化度合いに応じて異なる報知を行うので、ドライバーに対して報知した情報に応じた適切な対応を行わせることができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ベルトの劣化度合いに応じた適切なベルトの延命処置を行うことができ、ベルトの延命を十分に行うことができるとともに、ドライバビリティを向上させることができる車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態における制御装置を備えた車両の概略ブロック構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるエンジンの概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるエンジンの概略斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるタイミングベルトの疲労度を示すS−N線図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるエンジン回転数におけるタイミングベルトの有効張力を表すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態における警告判定値ごとに設定する制御値を示す警告判定値別制御一覧を示す一覧図である。
【図7】本発明の実施の形態における車両の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施の形態における制御装置を備えた車両の構成について、図1に示す車両の概略ブロック構成図、図2に示すエンジンの概略断面図、および、図3に示すエンジンの概略斜視図を参照して、説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態における車両10は、動力源としてのエンジン20と、エンジン20において発生した動力を伝達するとともに車両10の走行状態等に応じて変速比を変化させるトランスミッション30と、トランスミッション30から伝達された動力を駆動軸としてのドライブシャフト51L、51Rに分配するディファレンシャル機構40と、ドライブシャフト51L、51Rから伝達された動力により回転させられ、車両10を駆動させる駆動輪52L、52Rと、を備えている。
【0025】
また、車両10は、車両10全体を制御するための車両用電子制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100と、トランスミッション30を油圧により制御する油圧制御装置120と、後述するタイミングベルト250(図3参照)の交換時期を報知し、ドライバーに警告を与える警告装置150と、を備えている。さらに、車両10は、クランク角センサ131と、駆動軸回転数センサ132と、アクセル開度センサ133と、フットブレーキセンサ(以下、「FBセンサ」という)134と、スロットル開度センサ135と、吸入空気量センサ136と、吸入空気温度センサ137と、冷却水温センサ138と、吸気カム角センサ139と、排気カム角センサ140と、その他図示しない各種センサを備えている。上記車両10に備えられたそれぞれのセンサは、検出した検出信号を、ECU100に出力するようになっている。
【0026】
エンジン20は、内燃機関によって構成されており、特に本実施の形態においては、ピストン211(図2参照)が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、所謂4サイクルのガソリンエンジンによって構成されているものとして説明する。また、本実施の形態におけるエンジン20は、直列4気筒のガソリンエンジンを採用したものとして説明するが、これに限らず、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、V型12気筒エンジン、水平対向6気筒エンジン等の種々の型式のエンジンを採用することができる。なお、エンジン20の詳細については、後述する。
【0027】
トランスミッション30は、クランクシャフト213を介してエンジン20により出力されたトルクを入力し、車両10の走行状態に応じて変速比を変化させて、ディファレンシャル機構40に出力するようになっている。また、本実施の形態において、トランスミッション30は、無段階に変速比を切り替えることができる無段変速機(以下、CVTという)を備え、後述するように、ECU100に制御され、アクセル開度Acc、車速V、エンジン回転数Ne等によって、変速比が切り替えられるようになっている。
【0028】
ディファレンシャル機構40は、カーブ等を走行する場合に、駆動輪52Lと駆動輪52Rとの回転数の差を許容するものである。ディファレンシャル機構40は、トランスミッション30から入力されたトルクを、ドライブシャフト51L、51Rに分配して、出力するようになっている。なお、ディファレンシャル機構40は、ドライブシャフト51L、51Rを同一回転とし、駆動輪52Lと駆動輪52Rとの回転数の差を許容しないデフロック状態をとることができるものであってもよい。
【0029】
ECU100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)100a、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)100b、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)100c、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)100dおよび入出力インターフェース回路(I/Fと図示)100eを備え、車両10の制御を統括するようになっている。
【0030】
また、後述するように、ECU100は、クランク角センサ131、駆動軸回転数センサ132、アクセル開度センサ133等と接続されている。ECU100は、これらのセンサから出力された検出信号により、エンジン回転数Ne、車速V(車両10の走行速度)、アクセル開度Acc等を検出するようになっている。
【0031】
また、ECU100は、内部時計を有し、時刻を計測することができるようになっている。
さらに、ECU100は、油圧制御装置120を制御し、トランスミッション30の各部の油圧を制御するようになっている。これにより、ECU100は、トランスミッション30の変速比を変化させることができるようになっている。
【0032】
また、ECU100のROM100bには、スロットル開度制御マップ、変速マップ、車両10の諸元値、ベルト寿命判定マップ、回転速度別ベルト張力マップ、車両制御を実行するためのプログラム等が記憶されている。
【0033】
スロットル開度制御マップは、アクセル開度Accに基づいて、スロットル開度θthを求めるためのマップである。また、スロットル開度制御マップは、複数のモードを有し、走行状態、走行路等に応じて、モードを切り替えるようにしてもよい。ECU100は、スロットル開度制御マップにおけるモードの選択を、走行状態、走行路等に応じて、自動で切り替えるようにしてもよいし、ドライバーによる選択に応じて切り替えるようにしてもよい。
【0034】
また、変速マップは、アクセル開度Accに基づいて、車速Vとエンジン回転数Neとに応じて、変速比が設定されたマップである。例えば、ECU100は、この変速マップに基づいて、アクセル開度Accと車速Vとエンジン回転数Neに応じた変速比が、所定の変速比幅以上変わった場合に変速比を切り替えるようする。また、この変速比を切り替える変速比幅は、固定の変速幅ではなく、自由に変更するようにしてもよい。さらに、変速比を切り替える変速幅を設けずに、現在アクセル開度Accと車速Vとエンジン回転数Neとに応じて、その都度変速比を設定するようにしてもよい。
ここで、ECU100は、変速マップに基づいて、アクセル開度Accと車速Vとエンジン回転数Neに応じて決定した変速比となるように、CVTを制御するとともに、上記変速比をRAM100cに記憶しておく。
【0035】
また、車両10の諸元値には、全幅・全高等の車両寸法、車両重量、エンジン総排気量、最小回転半径、車両10のタイヤ径(駆動輪52L、52Rの直径)等が含まれている。
また、ECU100のROM100bに記憶されたベルト寿命判定マップ、回転速度別ベルト張力マップ、車両制御を実行するためのプログラムについては、後述する。
【0036】
油圧制御装置120は、電磁弁としての複数のソレノイドバルブを備え、ECU100によって制御されることにより、各ソレノイドバルブにより油圧回路の切り替えおよび油圧制御が行われ、トランスミッション30の各部を動作させるようになっている。
【0037】
警告装置150は、運転時警告灯および点検時警告灯を備え、ECU100によって制御されることにより、タイミングベルト250が疲労していると判定されたとき、警告灯を発光し、タイミングベルト250の交換を促すようになっている。また、警告装置150は、ECU100により取得する報知情報に応じて、タイミングベルト250の疲労を報知するようになっている。すなわち、警告装置150は、本発明における報知手段を構成している。
【0038】
運転時警告灯は、車両10の運転時にドライバーから認識できる位置に設けられている。運転時警告灯は、後述する第2警告レベルに達した場合に、ECU100によって発光され、タイミングベルト250が疲労していることを報知するようになっている。
点検時警告灯は、車両10の点検時に認識できる位置に設けられている。点検時警告灯は、後述する第1警告レベルに達した場合に、ECU100によって発光され、タイミングベルト250が疲労していることを報知するようになっている。
【0039】
通報装置160は、後述する第1警告レベル〜第3警告レベルに応じた警告を、ECU100によって制御されることにより、ディーラに通報するようになっている。
【0040】
クランク角センサ131は、ECU100によって制御されることにより、クランクシャフト213の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。より詳しくは、クランク角センサ131は、クランクシャフト213に設けられたクランクセンサプレート254(図3参照)によりクランク回転信号を検出し、クランク位置およびクランク角速度の検出を行うようになっている。また、ECU100は、クランク角センサ131から出力された検出信号からクランクシャフト213の回転数を算出し、エンジン回転数Neとして取得するようになっている。
【0041】
駆動軸回転数センサ132は、ECU100によって制御されることにより、ドライブシャフト51L(または51R)の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、駆動軸回転数センサ132から出力された検出信号が表すドライブシャフト51L(または51R)の回転数を、駆動軸回転数Ndとして取得するようになっている。さらに、ECU100は、駆動軸回転数センサ132から取得した駆動軸回転数Ndに基づいて、車速Vを算出するようになっている。
【0042】
アクセル開度センサ133は、ECU100によって制御されることにより、アクセルペダルが踏み込まれた踏み込み量(以下、ストロークという)を検出して、検出したストロークに応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、アクセル開度センサ133から出力された検出信号が表すアクセルペダルのストロークから、アクセル開度Accを算出するようになっている。
【0043】
FBセンサ134は、ECU100によって制御されることにより、フットブレーキペダルが踏み込まれた踏み込み量(以下、ストロークという)を検出して、検出したストロークに応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、FBセンサ134から出力された検出信号が表すフットブレーキペダルのストロークから、フットブレーキ踏力Bfを算出するようになっている。
【0044】
スロットル開度センサ135は、ECU100によって制御されることにより、図示しないスロットルアクチュエータにより駆動されるエンジン20のスロットルバルブ313(図2参照)の開度を検出して、検出した開度に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、スロットル開度センサ135から出力された検出信号が表すスロットルバルブの開度を、スロットル開度θthとして取得するようになっている。
また、ECU100は、スロットル開度制御マップに基づいてアクセル開度Accによりスロットル開度θthを求めるので、スロットル開度センサ135から出力された検出信号を用いずに、上記スロットル開度制御マップにより求めたスロットル開度θthを検出値として代用することもできる。
【0045】
吸入空気量センサ136は、ECU100によって制御されることにより、エンジン20の吸気バルブ223(図2参照)から吸入される空気量を検出して、検出した空気量に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、吸入空気量センサ136から出力された検出信号から、エンジン20の吸入空気量Qarを取得するようになっている。
【0046】
吸入空気温度センサ137は、ECU100によって制御されることにより、エンジン20の吸気バルブ223から吸入される空気の温度を検出して、検出した温度に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、吸入空気温度センサ137から出力された検出信号から、エンジン20の吸入空気温度Tarを取得するようになっている。
【0047】
冷却水温センサ138は、ECU100によって制御されることにより、エンジン20のシリンダブロック210(図2参照)を冷却する冷却水(以下、単にエンジン20の冷却水という)の温度を検出して、検出した温度に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、冷却水温センサ138から出力された検出信号から、エンジン20の冷却水温Twを取得するようになっている。
【0048】
吸気カム角センサ139は、ECU100によって制御されることにより、吸気カムシャフト241(図3参照)の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。より詳しくは、吸気カム角センサ139は、吸気カムシャフト241に設けられた吸気カムセンサプレート255(図3参照)の所定の位置、すなわち、所定の回転角を検出し、吸気カムシャフト241の回転角の検出を行うようになっている。また、ECU100は、吸気カム角センサ139から出力された検出信号により、吸気カムシャフト241の回転角を検出するとともに、吸気カムシャフト241の回転数を、吸気カムシャフト回転数Nciとして取得するようになっている。
【0049】
排気カム角センサ140は、吸気カム角センサ139と同様に、ECU100によって制御されることにより、排気カムシャフト242(図3参照)の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。より詳しくは、排気カム角センサ140は、排気カムシャフト242に設けられた排気カムセンサプレート256(図3参照)の所定の位置、すなわち、所定の回転角を検出し、排気カムシャフト242の回転角の検出を行うようになっている。また、ECU100は、排気カム角センサ140から出力された検出信号により、排気カムシャフト242の回転角を検出するとともに、排気カムシャフト242の回転数を、排気カムシャフト回転数Nceとして取得するようになっている。
【0050】
次に、エンジン20の詳細について、説明する。なお、図2においては、直列に配置された4つの気筒のうちの1つについて説明する。
図2に示すように、エンジン20は、エンジン本体部21を有し、エンジン本体部21は、シリンダブロック210と、シリンダブロック210の上部に固定されたシリンダヘッド220と、オイルパン230と、を備えている。
【0051】
シリンダブロック210には、ピストン211が往復動可能に設けられている。ピストン211は、コネクティングロッド212と連結されている。コネクティングロッド212は、クランクシャフト213と連結されている。そして、ピストン211の往復動は、コネクティングロッド212を介して、クランクシャフト213の回転運動に変換されるようになっている。
【0052】
また、エンジン本体部21においては、シリンダブロック210とシリンダヘッド220とピストン211とによって、燃焼室201が形成されている。
エンジン20は、燃焼室201において燃料と空気との混合気を所望のタイミングで燃焼させることによりピストン211を往復動させ、コネクティングロッド212を介してクランクシャフト213を回転させることにより、トランスミッション30にトルクを出力するようになっている。なお、エンジン20に用いられる燃料は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料や、エタノール等のアルコールとガソリンとを混合したアルコール燃料であってもよい。
【0053】
シリンダヘッド220は、エアクリーナ312を通過して車外から流入した空気を燃焼室201に導入するための吸気管311と、燃焼室201における混合気の燃焼によって発生した排気ガスを触媒コンバータ322に通じさせて車外へ排出するための排気管321と、が連結されている。
【0054】
なお、エアクリーナ312は、例えば、内部に収容した紙または合成繊維の不織布のフィルターにより、吸入空気中の異物を除去するようになっている。チリやホコリといった空気中の異物には硬いものもあり、このような硬い異物が燃焼室201に入り込むと、研磨剤として働いてしまい、シリンダブロック210の内壁面やピストン211を磨耗させる原因ともなり得る。したがって、エアクリーナ312は、これらの異物を除去して、吸入空気を清浄化するようになっている。
【0055】
また、吸気管311には、空気の流量を調整するためのスロットルバルブ313が設けられている。スロットルバルブ313は、薄い円板状の弁体の中央にシャフトを備えて構成されており、このシャフトが図示しないスロットルバルブアクチュエータによって回動させられることによって弁体が回動し、吸気管311における空気の流量を変更するようなっている。
【0056】
また、スロットルバルブ313の開度は、スロットル開度センサ135によって検出され、スロットルバルブ313の開度を表す検出信号がスロットル開度センサ135によってECU100に入力されるようになっている。なお、スロットルバルブ313の開度は、ECU100により、アクセル開度センサ133からのアクセル開度信号Accに基づいて、予め記憶されたスロットル開度制御マップにより求められたスロットル開度θthとなるように制御される。また、ECU100は、運転状態によっては、アクセル開度信号Accにかかわらず、スロットル開度θthを制御することができるようになっている。
【0057】
また、触媒コンバータ322は、一般に、排気ガスに含まれる未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)といった有害物質を効率的に除去することができる三元触媒を備えている。この三元触媒は、好ましくはNOx含有率の高い排気ガスからでも、NOxを効率的に除去する機能を有するものが用いられる。
【0058】
さらに、シリンダヘッド220は、吸気管311と燃焼室201とを連通させる吸気ポート221と、燃焼室201と排気管321とを連通させる排気ポート222と、が形成され、吸気管311から燃焼室201への燃焼用空気の導入を制御するための吸気バルブ223と、燃焼室201から排気管321への排気ガスの排出を制御するための排気バルブ224と、燃料を燃焼室201内へ噴射するためのインジェクタ225と、燃焼室201内の混合気に点火するための点火プラグ226と、が取り付けられている。
【0059】
吸気バルブ223は、上端に後述する吸気カムシャフト241(図3参照)に設けられた吸気カム243が当接されており、吸気カム243の回転により、吸気ポート221と燃焼室201との間を開閉するようになっている。
【0060】
排気バルブ224は、上端に後述する排気カムシャフト242(図3参照)に設けられた排気カム244が当接されており、排気カム244の回転により、燃焼室201と排気ポート222との間を開閉するようになっている。
【0061】
インジェクタ225は、ECU100により制御されるソレノイドコイルおよびニードルバルブを有している。また、インジェクタ225には、所定の圧力で燃料が供給されている。したがって、インジェクタ225は、ECU100によってソレノイドコイルに所望のタイミングで通電されると、ニードルバルブを開いて、燃焼室201に燃料を噴射するようになっている。
【0062】
点火プラグ226は、プラチナやイリジウム合金製の電極を有する公知の点火プラグである。点火プラグ226は、ECU100によって所望のタイミングで上記電極に通電されて放電を発生させることにより、燃焼室201内の混合気に点火するようになっている。
【0063】
さらに、図3に示すように、エンジン20は、シリンダヘッド220の上部に、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242が、回転可能に設けられている。
【0064】
吸気カムシャフト241には、吸気バルブ223の上端に当接する吸気カム243が設けられている。これにより、吸気カムシャフト241が回転すると、吸気カム243により吸気バルブ223が開閉駆動されるようになっている。
【0065】
排気カムシャフト242には、排気バルブ224の上端に当接する排気カム244が設けられている。これにより、排気カムシャフト242が回転すると、排気カム244により排気バルブ224が開閉駆動されるようになっている。
【0066】
吸気カムシャフト241の一端部には、吸気カムシャフト241を吸気カムスプロケット245に対して回転させる吸気側回転位相コントローラ247が設けられている。また、排気カムシャフト242の一端部には、排気カムシャフト242を排気カムスプロケット246に対して回転させる排気側回転位相コントローラ248が設けられている。一方、駆動側回転軸であるクランクシャフト213には、クランクスプロケット249が取り付けられている。
【0067】
なお、吸気側回転位相コントローラ247は、ECU100に制御されることにより、吸気カムシャフト241を吸気カムスプロケット245に対して回転させ、遅角制御および進角制御を行うことができるようになっている。また、排気側回転位相コントローラ248は、ECU100に制御されることにより、排気カムシャフト242を排気カムスプロケット246に対して回転させ、遅角制御および進角制御を行うことができるようになっている。
【0068】
これら吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット249には、タイミングベルト250が巻き掛けられている。これにより、タイミングベルト250によって、クランクスプロケット249の回転が、吸気カムスプロケット245および排気カムスプロケット246に伝達される。すなわち、駆動側回転軸としてのクランクシャフト213の回転が、タイミングベルト250を介して、従動側回転軸としての吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に伝達されることで、これら吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に駆動される吸気バルブ223および排気バルブ224が、クランクシャフト213に同期して吸気ポート221および排気ポート222を開閉するようになっている。
【0069】
また、タイミングベルト250は、テンショナ251およびアイドラプーリ252によって経路が規制されている。さらに、タイミングベルト250は、テンショナ251によって適度なテンションが与えられ、吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット249から外れることが防止されている。
【0070】
上記のように、タイミングベルト250は、エンジン20の出力軸であるクランクシャフト213の回転力を、吸気バルブ223および排気バルブ224を駆動する吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に伝達するようになっている。すなわち、タイミングベルト250は、本発明におけるベルトを構成している。
【0071】
次に、ECU100のROM100bに記憶されたベルト寿命判定マップ、および、回転速度別ベルト張力マップについて、説明する。
まず、本実施の形態におけるタイミングベルト250の寿命について、図4に示すS−N線図を参照して、説明する。
【0072】
タイミングベルト250は、所定の応力(s)で所定回数(n)使用されると、疲労が限界を超え、所定の応力を得ることができなくなる。このような応力(s)と繰り返し回数(n)の関係を表した両対数の線図をS−N線図という。
【0073】
図4は、タイミングベルト250の応力すなわち有効張力(N)と、繰り返し回数(n)と、によってタイミングベルト250の疲労限界を示したS−N線図である。有効張力(N)とは、タイミングベルト250がどれくらいの力で引っ張られているかを示す値であり、繰り返し回数(n)とは、何回すなわち何回転されたかを示すものである。また、破線610は、タイミングベルト250の疲労限界を示す疲労限度線を示すものであり、実線620は、タイミングベルト250の疲労限界に達する前に警告するための警告判定線を示すものである。
【0074】
例えば、タイミングベルト250が有効張力Taでずっと回転していた場合、a回転で疲労限界が来ることを示している。また、タイミングベルト250が有効張力Tbでずっと回転していた場合、b回転で疲労限界が来ることも示している。したがって、タイミングベルト250にかかる有効張力(N)が、TaであったものをTbとすれば、タイミングベルト250の疲労限界は、a回転からb回転まで延長され、(b−a)回転多くすることができる。また、タイミングベルト250にかかる有効張力(N)をTaでa/2回転、Tbでb/2回転させることもできる。
【0075】
ここで、本実施の形態の車両の制御装置は、タイミングベルト250が疲労限界を迎える前に、警告を発するものである。例えば、タイミングベルト250の有効張力Taを基準として、A回転したときに、警告を行うものである。ところが、タイミングベルト250の有効張力Taを基準としている場合に、タイミングベルト250が有効張力Tbで1回転したとすると、タイミングベルト250が有効張力Taで1回転する分の疲労はしていないはずである。
【0076】
そこで、この1回転分を、基準の有効張力Taにおける警告判定回数Aを、タイミングベルト250に実際にかかった有効張力Tbにおける警告判定回数Bで、除算した回転数分(A/B)として、加算することとする。
【0077】
このように、実際にかかった有効張力から、タイミングベルト250の基準張力における回転数に換算するため、タイミングベルト250の警告判定線を示すS−N線図を再現するためのベルト寿命判定マップを、ECU100のROM100bに記憶しておく。
【0078】
次に、本実施の形態におけるタイミングベルト250の有効張力マップについて、説明する。図5に、ECU100のROM100bに記憶された回転速度別ベルト張力マップによって作成される、エンジン回転数Neにおけるタイミングベルト250の有効張力を表すグラフを示す。
【0079】
図5は、横軸にエンジン20の回転速度、すなわち、エンジン回転数Neを示し、縦軸にタイミングベルト250の有効張力を示し、エンジン20の回転速度別のタイミングベルト250の有効張力の変化を示したグラフである。また、ECU100により遅角制御が行われた場合のタイミングベルト250の有効張力の変化も示す。
【0080】
具体的には、遅角制御が行われない場合(図5中では、IN:0°、EX:0°と示す)のタイミングベルト250の有効張力の変化、ECU100により20°の遅角制御が行われた場合(図5中では、IN:20°、EX:0°と示す)のタイミングベルト250の有効張力の変化、および、ECU100により40°の遅角制御が行われた場合(図5中では、IN:40°、EX:0°と示す)のタイミングベルト250の有効張力の変化を示す。
【0081】
このように、タイミングベルト250の有効張力は、エンジン回転数Neによって変化するとともに、遅角制御の量によっても変化する。また、タイミングベルト250の有効張力は、概ねエンジン回転数Neが高くなるほど大きくなり、遅角量が多くなるほど大きくなるようになっている。ただし、タイミングベルト250の有効張力は、特定のエンジン回転数Neでは、増加し、極大値をとるようになっている。
【0082】
したがって、ECU100は、エンジン回転数Ne、または、遅角制御量を変更することにより、タイミングベルト250の有効張力を変更することができる。このように、ECU100は、タイミングベルト250の有効張力を変更して、タイミングベルト250にかかる疲労を抑えることができる。
【0083】
次に、図6に警告判定値別制御一覧を示し、警告判定値ごとに設定する制御値について、説明する。
【0084】
ECU100は、3つの警告レベル、すなわち、警告レベル1、警告レベル2、警告レベル3を有している。ECU100は、タイミングベルト250の疲労度が第1警告判定値Cbaに達した場合には、警告レベル1とする。さらに、ECU100は、タイミングベルト250の疲労度が第2警告判定値Cbbに達した場合には、警告レベル2とし、第3警告判定値Cbcに達した場合には、警告レベル3とする。
【0085】
ここで、第3警告判定値Cbcは、第1警告判定値Cba〜第3警告判定値Cbcの中で最もタイミングベルト250の疲労が激しい場合を判定するものであり、第1警告判定値Cbaは、第1警告判定値Cba〜第3警告判定値Cbcの中で最もタイミングベルト250の疲労が緩い場合を判定するものである。すなわち、第1警告判定値Cba〜第3警告判定値Cbcは、Cba<Cbb<Cbcの関係がある。
【0086】
ECU100は、警告レベル1に達した場合には、VVT制御指令値をAvとし、スロットル開度制御値をAtとする。また、ECU100は、警告レベル1に達した場合には、警告装置150の点検時警告灯を発光させ、タイミングベルト250の寿命までの残りの走行距離を算出し、通報装置160を介してディーラに通報する。
【0087】
さらに、ECU100は、警告レベル2に達した場合には、VVT制御指令値をBvとし、スロットル開度制御値をBtとする。また、ECU100は、警告レベル2に達した場合には、警告装置150の運転時警告灯を発光させ、タイミングベルト250の寿命までの残りの走行距離を算出し、通報装置160を介してディーラに通報する。
【0088】
さらに、ECU100は、警告レベル3に達した場合には、VVT制御指令値をCvとし、スロットル開度制御値をCtとする。また、ECU100は、警告レベル3に達した場合には、警告装置150の運転時警告灯を発光させたまま、タイミングベルト250の寿命であることを、通報装置160を介してディーラに通報する。
【0089】
また、VVT制御指令値Av、Bv、Cvは、Av<Bv<Cvの関係があり、スロットル開度制御値At、Bt、Ctは、At>Bt>Ctの関係がある。すなわち、警告レベルが高くなるほど、タイミングベルト250への負荷が抑えられるように設定されている。なお、上記では、スロットル開度制御値によりスロットル開度θthに制限を設けるようにしたが、車速Vに制限を設けるようにすることもできる。
【0090】
以下、本発明の実施の形態における制御装置を備えた車両10の特徴的な構成について、説明する。
【0091】
ECU100は、タイミングベルト250の劣化度合いを取得するようになっている。また、ECU100は、タイミングベルト250にかかる負荷を積算して、タイミングベルト250の劣化度合いを取得するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明におけるベルト劣化状態取得手段を構成している。
【0092】
さらに、ECU100は、取得したタイミングベルト250の劣化度合いが所定以上であることを条件に、タイミングベルト250の劣化度合いに応じて、車両10の運転状態を変更するようになっている。ここで、上記タイミングベルト250の劣化度合いが所定以上とは、後述する負荷積算値Fnが第1警告判定値Cba以上であることを示すものである。また、ECU100は、タイミングベルト250にかかる負荷積算値Fnによるタイミングベルト250の劣化度合いに応じて、車両10の運転状態を変更するようになっている。
【0093】
また、ECU100は、車両10の運転状態の制御として可変バルブタイミング制御を有し、車両10の運転状態を変更する際、可変バルブタイミング制御の変更により車両10の運転状態を変更するようになっている。
【0094】
また、ECU100は、車両10の運転状態の制御としてエンジン20の制御を有し、車両10の運転状態を変更する際、エンジン20の回転数を制御することにより車両10の運転状態を変更するようになっている。また、ECU100は、車両10の運転状態の制御として変速比の制御を有し、車両10の運転状態を変更する際、エンジン20の回転数とともに変速比を制御することにより車両10の運転状態を変更するようになっている。
【0095】
また、ECU100は、タイミングベルト250の劣化度合いに応じて警告装置150に報知させる報知情報を変更するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における運転状態制御手段を構成している。
【0096】
次に、本実施の形態における車両の制御処理の動作について、図7に示すフローチャートを参照して、説明する。
【0097】
なお、図7に示すフローチャートは、ECU100のCPU100aによって、RAM100cを作業領域として実行される車両の制御処理のプログラムの実行内容を表す。この車両の制御処理のプログラムは、ECU100のROM100bに記憶されている。また、この車両の制御処理は、ECU100のCPU100aによって、イグニッションのオンからオフまでの間に、予め定められた時間間隔で実行されるようになっている。
【0098】
図7に示すように、まず、ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷Fnの積算を行う(ステップS11)。具体的には、まず、ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の有効張力を求める。タイミングベルト250の有効張力は、クランク角センサ131により検出されたエンジン回転数Ne、すなわち、タイミングベルト250の回転速度に基づいて、回転速度別ベルト張力マップを参照して、求める。次に、ECU100のCPU100aは、ベルト寿命判定マップを参照して、上記タイミングベルト250の有効張力における警告判定値となる繰り返し回数Bを求める。そして、ECU100のCPU100aは、基本判定張力Taにおける警告判定値となる繰り返し回数Aを、上記有効張力における繰り返し回数Bで除算した値A/Bを今回の負荷加算分として、前回までの負荷Fn−1に加算し、タイミングベルト250の負荷積算値Fnを算出する。なお、負荷積算値Fnは、タイミングベルト250の初期設置時、および、タイミングベルト250の交換時には、初期化、すなわち、"0"としておく。
【0099】
次いで、ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第1警告判定値Cba以上であるか否かの判定を行う(ステップS12)。ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第1警告判定値Cba以上でない、すなわち、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第1警告判定値Cba未満である場合には(ステップS12でNOと判定)、タイミングベルト250の寿命までまだ余裕があるものとして、本車両の制御処理を終了する。
【0100】
一方、ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第1警告判定値Cba以上である場合には(ステップS12でYESと判定)、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第2警告判定値Cbb以上であるか否かの判定を行う(ステップS13)。
【0101】
ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第2警告判定値Cbb以上でない、すなわち、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第2警告判定値Cbb未満である場合には(ステップS13でNOと判定)、警告レベル1における運転状態制御を行って(ステップS14)、本車両の制御処理を終了する。
【0102】
具体的には、ECU100のCPU100aは、VVT制御指令値をAvとし、スロットル開度制御値をAtとする。また、ECU100のCPU100aは、警告装置150の点検時警告灯を発光させるとともに、現在の走行距離とタイミングベルト250の交換時期走行距離との差分を求め、通報装置160を介して、タイミングベルト250の交換時期走行距離までの残走行距離を、ディーラに通報する。このような制限により、タイミングベルト250の有効張力、および、エンジン回転数Neが制限されるとともに、タイミングベルト250の寿命が近づいていることを、報知することができる。
【0103】
一方、ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第2警告判定値Cbb以上である場合には(ステップS13でYESと判定)、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第3警告判定値Cbc以上であるか否かの判定を行う(ステップS15)。
【0104】
ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第3警告判定値Cbc以上でない、すなわち、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第3警告判定値Cbc未満である場合には(ステップS15でNOと判定)、警告レベル2における運転状態制御を行って(ステップS16)、本車両の制御処理を終了する。
【0105】
具体的には、ECU100のCPU100aは、VVT制御指令値をBvとし、スロットル開度制御値をBtとする。また、ECU100のCPU100aは、警告装置150の運転時警告灯を発光させるとともに、現在の走行距離とタイミングベルト250の交換時期走行距離との差分を求め、通報装置160を介して、タイミングベルト250の交換時期走行距離までの残走行距離を、ディーラに通報する。ここで、VVT制御指令値Bv、および、スロットル開度制御値Btは、VVT制御指令値Av、および、スロットル開度制御値Atよりも、制限が厳しい値である。したがって、タイミングベルト250の有効張力、および、エンジン回転数Neが警告レベル1の場合よりも、厳しく制限される。また、警告装置150の点検時警告灯は、点検時にしか確認ができないが、運転時警告灯は、車両10の運転中に見ることができるので、ドライバーに早期に警告を通知することができる。
【0106】
一方、ECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の負荷積算値Fnが、第3警告判定値Cbc以上である場合には(ステップS15でYESと判定)、警告レベル3における運転状態制御を行って(ステップS17)、本車両の制御処理を終了する。
【0107】
具体的には、ECU100のCPU100aは、VVT制御指令値をCvとし、スロットル開度制御値をCtとする。また、ECU100のCPU100aは、警告装置150の運転時警告灯を発光させるとともに、タイミングベルト250の寿命であることを、通報装置160を介して、ディーラに通報する。ここで、VVT制御指令値Cv、および、スロットル開度制御値Ctは、VVT制御指令値Bv、および、スロットル開度制御値Btよりも、制限が厳しい値である。したがって、タイミングベルト250の有効張力、および、エンジン回転数Neが警告レベル2の場合よりも、厳しく制限される。
【0108】
以上のように、本実施の形態における車両の制御装置は、タイミングベルト250にかかる負荷を積算して、タイミングベルト250の劣化度合いを示す負荷積算値Fnを算出し、算出した負荷積算値Fnが、第1警告判定値Cba以上であることを条件に、負荷積算値Fnに応じて、車両10の運転状態を変更するようになっている。したがって、タイミングベルト250の劣化度合いに応じた適切なタイミングベルト250の延命処置を行うことができ、タイミングベルト250の延命を十分に行うことができるとともに、ドライバビリティを向上させることができる。
【0109】
なお、上述した実施の形態においては、1つのECUを有するものとして説明したが、これに限らず、複数のECUによって構成されるものであってもよい。例えば、エンジン20の燃焼制御を実行するE−ECU、トランスミッション30の変速制御を実行するT−ECU等の複数のECUによって、本実施の形態のECU100が構成されるものであってもよい。この場合、各ECUは、必要な情報を相互に入出力する。
【0110】
また、上述した実施の形態においては、警告レベルとして、第1警告レベル〜第3警告レベルの3段階とするものとして説明したが、これに限らず、その他の複数の段階に分けるものであってもよい。この場合も上述した車両の制御装置と同様の効果が得られる。
【0111】
以上説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、ベルトの劣化度合いに応じた適切なベルトの延命処置を行うことができ、ベルトの延命を十分に行うことができるとともに、ドライバビリティを向上させることができるという効果を有し、タイミングベルトに対するフェールセーフを行う車両の制御装置等として有用である。
【符号の説明】
【0112】
10 車両
20 エンジン
100 ECU(ベルト劣化状態取得手段、運転状態制御手段)
131 クランク角センサ
132 駆動軸回転数センサ
133 アクセル開度センサ
135 スロットル開度センサ
139 吸気カム角センサ
140 排気カム角センサ
150 警告装置(報知手段)
201 燃焼室
210 シリンダブロック
211 ピストン
213 クランクシャフト
220 シリンダヘッド
221 吸気ポート
222 排気ポート
223 吸気バルブ
224 排気バルブ
241 吸気カムシャフト
242 排気カムシャフト
243 吸気カム
244 排気カム
245 吸気カムスプロケット
246 排気カムスプロケット
247 吸気側回転位相コントローラ
248 排気側回転位相コントローラ
249 クランクスプロケット
250 タイミングベルト(ベルト)
251 テンショナ
252 アイドラプーリ
254 クランクセンサプレート
255 吸気カムセンサプレート
256 排気カムセンサプレート
311 吸気管
321 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーの操作指示および車両の走行状態に応じて前記車両の運転状態を制御する車両の制御装置において、
エンジンの出力軸の回転力を伝達するベルトの劣化度合いを取得するベルト劣化状態取得手段と、
前記ベルト劣化状態取得手段により取得した前記ベルトの劣化度合いが所定以上であることを条件に、前記ベルトの劣化度合いに応じて、前記車両の運転状態を変更する運転状態制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記ベルト劣化状態取得手段は、前記ベルトにかかる負荷を積算して、前記ベルトの劣化度合いを取得し、
前記運転状態制御手段は、前記ベルトにかかる負荷の積算値による前記ベルトの劣化度合いに応じて、前記車両の運転状態を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記運転状態制御手段は、前記車両の運転状態の制御として可変バルブタイミング制御を有し、前記車両の運転状態を変更する際、前記可変バルブタイミング制御の変更により前記車両の運転状態を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記運転状態制御手段は、前記車両の運転状態の制御として前記エンジンの制御を有し、前記車両の運転状態を変更する際、前記エンジンの回転数を制御することにより前記車両の運転状態を変更することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記運転状態制御手段は、前記車両の運転状態の制御として変速比の制御を有し、前記車両の運転状態を変更する際、前記エンジンの回転数とともに前記変速比を制御することにより前記車両の運転状態を変更することを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記運転状態制御手段により取得する報知情報に応じて、前記ベルトの疲労を報知する報知手段を備え、
前記運転状態制御手段は、前記ベルトの劣化度合いに応じて前記報知手段に報知させる報知情報を変更することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−241755(P2011−241755A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114350(P2010−114350)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】