説明

車両の走行制御装置

【課題】クルーズコントロール装置において、セットスイッチのオン操作直後に、乗員に対し、走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを抑制する。
【解決手段】車両の走行速度を検出する車速センサ6と、セットスイッチ3dと、車両走行時におけるセットスイッチ3dのオン操作時に、車速センサ6により検出されたオン操作時の走行速度を車両の目標速度として設定する目標速度設定部15aと、車速センサ6により検出される走行速度を目標速度に維持するように車両を加減速させる加減速制御部15bとを備えている車両の走行制御装置である。車両の走行速度を表示する速度計11と、該速度計11を制御する速度表示制御部17aとをさらに備えている。速度表示制御部17aは、セットスイッチ3dのオン操作時から所定時間を経過するまでの間、目標速度を車両の走行速度として速度計11に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行速度を目標速度に維持するように制御する車両の走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行速度を設定した目標速度に維持するようにした走行制御装置(クルーズコントロール装置)が知られている。この種の装置では、通常、車両の乗員により操作されるセットスイッチが設けられており、このセットスイッチを乗員がオン操作すると、そのオン操作時の車両の走行速度が目標速度に設定されるとともに、車両の実際の走行速度がその目標速度に維持されるように、スロットル弁の開度等が制御(加減速制御)される。
【0003】
このような走行制御装置は、乗員の利便性の向上を目的として種々のものが提案されており、例えば、特許文献1には、設定した目標速度が、車両が走行している走行路の制限車速を超えている場合に、速度超過情報を乗員に伝達するようにした走行制御装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−321354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、クルーズコントロール装置では、セットスイッチのオン操作時の車両の走行速度を目標速度に設定し、車両の走行速度を該目標速度に維持するように定速走行制御が行われるが、乗員によるオン操作から定速走行制御により車両の走行速度が目標速度に維持されるまでに僅かにタイムラグが生じることから、車両が走行している走行路の路面状態によっては、該オン操作直後に車両の走行速度が目標速度よりも速くなることや、目標速度よりも遅くなることがある。特に、登坂路や降坂路では、このようなセットスイッチのオン操作直後の車両の加減速が生じやすくなる。すなわち、登坂路では乗員によるアクセル操作等がなければ走行速度が低下することから、セットスイッチのオン操作直後の車両の減速が生じやすくなり、また降坂路では乗員によるブレーキ操作等がなければ走行速度が上昇することから、該オン操作直後の車両の加速が生じやすくなる。
【0005】
このように、セットスイッチのオン操作直後に車両の実際の走行速度が変動すると、インストルメントパネル等に設けられた速度計に表示される速度が変動することから、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えるおそれがある。
【0006】
この問題を解決するために、セットスイッチのオン操作から車両の走行速度が目標速度に維持されるまでのタイムラグをなくし、該オン操作と同時に車両の走行速度が変動しないように維持し続ける制御を行うことが考えられるが、様々な路面状態に対応させてこのような制御を行うことは困難である。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の走行速度を目標速度に維持するように制御する車両の走行制御装置において、セットスイッチのオン操作直後に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、車両の走行速度を検出する走行速度検出手段と、上記車両の乗員により操作されるスイッチ手段と、車両走行時における上記スイッチ手段のオン操作時に、上記走行速度検出手段により検出された該オン操作時の走行速度を上記車両の目標速度として設定する目標速度設定手段と、上記走行速度検出手段により検出される走行速度を上記目標速度に維持するように上記車両を加減速させる加減速制御手段とを備えている車両の走行制御装置であって、上記車両の走行速度を表示する速度表示手段と、上記オン操作時から所定時間経過するまでの間、上記目標速度を上記車両の走行速度として表示するように上記速度表示手段を制御する速度表示制御手段とをさらに備えていることを特徴とするものである。
【0009】
このように、車両走行時におけるスイッチ手段のオン操作時に、該オン操作時の車両の走行速度を目標速度とし、該オン操作時から所定時間を経過するまでの間、この目標速度を車両の走行速度として速度表示手段により表示することから、スイッチ手段のオン操作直後に車両の加速又は減速が生じても、所定時間を経過するまでは速度表示手段により表示される車両の走行速度が変動しない。したがって、スイッチ手段のオン操作時に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを抑制することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記車両が走行している走行路の傾斜状態を検出する傾斜状態検出手段をさらに備え、上記速度表示制御手段は、上記傾斜状態検出手段により上記走行路の傾斜状態が検出されたときにのみ上記速度表示手段の制御を行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
このように、速度表示制御手段は、傾斜状態検出手段により走行路の傾斜状態が検出されたときにのみ速度表示手段の制御を行うので、登坂路や降坂路に比べて速度表示制御手段による制御の必要性が低い平坦な走行路における制御の機会を少なくできる。また、特にスイッチ手段のオン操作直後に車両の減速又は加速が生じやすい登坂路や降坂路において、所定時間を経過するまでは速度表示手段により表示される車両の走行速度が変動しないので、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、道路勾配情報を含む道路地図情報を記憶する道路地図情報記憶手段を有するナビゲーションシステムをさらに備え、上記傾斜状態検出手段は、上記道路地図情報記憶手段に記憶された道路勾配情報に基づいて、上記走行路の傾斜状態を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、ナビゲーションシステムを搭載している車両では、道路地図情報を有効に用いることができる。
【0014】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記車両の傾斜状態を検出する傾斜センサをさらに備え、上記傾斜状態検出手段は、上記傾斜センサにより検出される上記車両の傾斜状態に基づいて、上記走行路の傾斜状態を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
このように、傾斜センサを用いて走行路の傾斜状態を検出することにより、車両が現在走行している走行路の傾斜状態を正確に検出することができる。したがって、スイッチ手段のオン操作直後に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを確実に抑制することができる。
【0016】
第5の発明は、上記第2〜4のいずれか1つの発明において、上記傾斜状態検出手段により検出された傾斜状態に基づいて、上記所定時間を変更する所定時間変更手段をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0017】
このように、傾斜状態検出手段により検出された傾斜状態に基づいて、所定時間を変更することから、傾斜の大きい走行路では所定時間が長くなるので、オン操作から所定時間を経過するまでの間で、車両の走行速度と目標速度とが一致しやすくなる。これにより、スイッチ手段のオン操作直後に車両の加速又は減速が生じやすく、且つ走行速度が目標速度と一致するのに時間を要する傾斜の大きい登坂路や降坂路においても、所定時間経過後に速度表示手段により表示される車両の走行速度が変動し難くなる。したがって、スイッチ手段のオン操作直後に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることをより一層抑制することができる。
【0018】
第6の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記所定時間を上記車両の走行速度が上記目標速度に一致するまでの時間に設定する所定時間設定手段をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0019】
このように、所定時間を車両の走行速度が目標速度に一致するまでの時間に設定することから、速度表示手段により表示される車両の走行速度が変動しないので、スイッチ手段のオン操作直後に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スイッチ手段のオン操作時の走行速度を該車両の目標速度とし、該オン操作時から所定時間を経過するまでの間、この目標速度を車両の走行速度として表示することから、スイッチ手段のオン操作直後に車両の加速又は減速が生じても、所定時間を経過するまでは表示手段により表示される車両の走行速度が変動しないので、乗員に対し、定速走行にも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る走行制御装置を搭載した車両(本実施形態では自動車である)Wの概略構成を示す。同図において、符号1はインストルメントパネル21に設けられたメータユニット(速度表示手段)であり、符号3はステアリングホイール22に設けられた、車両Wの乗員(ドライバ)により操作されるスイッチ操作部である。スイッチ操作部3は、PCM(パワートレインコントロールモジュール)15(図4参照)に接続されていて、乗員からの指示をPCM15に入力するようになっている。また、メータユニット1は、ACCコントローラ17(図4参照)に接続されていて、PCM15からの指示を受けたACCコントローラ17により表示制御が行われるようになっている。
【0023】
上記車両Wには、該車両Wと先行車両(図示せず)との間の車間距離を計測するレーダ等からなる車間距離センサ5が配設されており、この車間距離センサ5は、検出した先行車情報(車間距離、車両Wに対する先行車の相対速度及び角度位置など)をACCコントローラ17に入力するようになっている。
【0024】
また、上記車両Wには、該車両Wの実際の走行速度を検出する車速センサ(走行速度検出手段)6、アクセルペダルを踏み込まれたことを検出するアクセルセンサ7、ブレーキペダルを踏み込まれたことを検出するブレーキセンサ8等が設けられており、これら各センサからの検出情報が上記PCM15に入力されるようになっている。
【0025】
図1において、符号9はスロットルやブレーキ等からなるオートアクチュエータであり、このオートアクチュエータ9は、PCM15内の加減速制御部15b(図4参照)によって、その作動が制御される。
【0026】
上記メータユニット1には、図2に示すように、車両Wの走行速度を表示する速度表示手段としてのアナログ式の速度計11、エンジン回転数を示す回転計12、走行制御装置による制御の状態を表示するための表示部13などが設けられている。
【0027】
上記表示部13は、目標速度インジケータ13aと目標車間距離インジケータ13bとを有しており、車間距離センサ5により検出された車間距離、乗員が設定した目標速度及び目標車間距離が表示されるようになっている。
【0028】
上記スイッチ操作部3は、図3に示すように、上記ステアリングホイール22における3つのスポーク部22aのうち、運転席から見て右側のスポーク部22aに設けられていて、上下左右に並ぶ4つの操作スイッチ3a,3b,3c,3dで構成されている。図3において、符号3aは後述するACC機能(クルーズシステム)を作動(オン)状態又は非作動(オフ)状態にするメインスイッチであり、符号3bは走行制御装置による制御をキャンセルするキャンセルスイッチであり、符号3cは車両Wと先行車両との間の車間距離を設定するための目標車間距離設定スイッチであり、符号3dは車両Wの目標速度を設定するための目標速度設定スイッチ(スイッチ手段)である。
【0029】
上記目標速度設定スイッチ3dは、乗員側に突出するレバーを上側(図3の「RES/+」と記載されている側)又は下側(図3の「SET/−」と記載されている側)に倒すことで操作されるようになっている。そして、メインスイッチ3aの操作によりクルーズシステムがオン状態とされた後、乗員が最初に目標速度設定スイッチ3dのレバーを下側に倒す操作(オン操作)を行うと、定速走行モード(オートクルーズモード)に設定されるとともに、該操作時に上記車速センサ6により検出された実際の走行速度が、車両Wの目標速度に設定される。この設定後に、目標速度設定スイッチ3dのレバーを上側に倒す操作を1回行うと、目標速度が所定速度だけアップする一方、下側に倒す操作を1回行うと、目標速度が所定速度だけダウンするようになっている。すなわち、本実施形態では、目標速度設定スイッチ3dは、セットスイッチの機能(定速走行モード設定機能、及び目標速度設定機能)と目標速度変更スイッチの機能とを兼ね備えている。以下、セットスイッチの機能としての操作するときの目標速度設定スイッチ3dをセットスイッチ3dと称する。
【0030】
本実施形態の走行制御装置は、車両Wの前方に先行車両が存在しないときには、セットスイッチ3dの操作により定速走行モードに設定されて、車両Wの実際の走行速度を乗員が設定した目標速度に一致させる一方、車両Wの前方に先行車両が存在するときには、先行車両に追従する追従走行モードに設定されて、車間距離センサ5により検出される先行車両との間の車間距離を上記目標車間距離設定スイッチ3cにより乗員が設定した目標車間距離に一致させるACC(Adaptive Cruise Control)機能を有している。
【0031】
走行制御装置は、図4に示すように、エンジンコントローラであるPCM15と追従走行モード時の制御を行うACCコントローラ17とを備えており、PCM15とACCコントローラ17とは、互いに情報の入出力を行って、PCM15からACCコントローラ17へは、操作部3における各操作スイッチ3a,3b,3c,3dの操作情報等が出力され、ACCコントローラ17からPCM15へは、追従走行モード時の減速又は加速指示の情報が出力される。なお、ACCコントローラ17の機能をPCM15に持たせて、PCM15が追従走行モード時の制御を行うようにすることも可能である。以下、車両Wの前方に先行車両が存在しない定速走行モード時の制御について説明する。
【0032】
車両走行時に、メインスイッチ3aが車両Wの乗員によりオン操作されると、該オン操作情報がPCM15に入力され、クルーズシステムが作動状態となる。そして、クルーズシステムが作動しているときに、セットスイッチ3dが乗員によりオン操作される(下側に倒される)と、定速走行モードに設定されるとともに、このオン操作情報がPCM15内の目標速度設定部15aに入力される。また、車速センサ6が該オン操作時における車両Wの実際の走行速度(例えば80km/h)を検出し、該走行速度が目標速度設定部15aに入力される。
【0033】
目標速度設定部(目標速度設定手段)15aは、セットスイッチ3dのオン操作情報が入力されると(オン操作時に)、車速センサ6により検出された該オン操作時の走行速度(80km/h)を車両Wの目標速度として設定する。この目標速度は、PCM15内の加減速制御部15bに入力されるとともに、ACCコントローラ17に入力される。
【0034】
加減速制御部(加減速制御手段)15bは、車速センサ6により検出される車両Wの実際の走行速度を目標速度に維持するように車両Wを加減速させる。より具体的には、加減速制御部15bは、セットスイッチ3dのオン操作直後に車両Wの走行速度が目標速度よりも速くなったり、又は遅くなったりしたときに、車両Wの走行速度と目標速度との偏差が0へ収束するようにオートアクチュエータ9を作動させる。
【0035】
一方、ACCコントローラ17に目標速度が入力されると、表示部13の目標速度インジケータ13aに目標速度が表示されるとともに、ACCコントローラ17内の速度表示制御部(速度表示制御手段)17aが、セットスイッチ3dのオン操作時から所定時間を経過するまでの間、目標速度を車両Wの走行速度として表示するように該速度計11を制御する。より具体的には、速度表示制御部17aは、速度計11に指針コントロール指示情報を出力し、速度計11が目標速度を車両Wの走行速度として表示するように、速度計11の指示値を目標速度に固定するとともに、ACCコントローラ17内のタイマ(図示せず)を作動させ、タイマが作動してから事前に入力されていた所定時間(例えば5sec)が経過すると、速度計11の指示値の固定を解除するように構成されている。すなわち、速度表示制御部17aは、目標速度が80km/hのときには、セットスイッチ3dのオン操作時から所定時間である5secが経過するまでの間は、車速センサ6により検出される車両Wの実際の走行速度が79km/hや81km/hになっても、目標速度である80km/hが表示されるように速度計11の指示値を固定するようになっている。
【0036】
そして、速度計11は、所定時間が経過して速度表示制御部17aにより指示値の固定が解除されると、車速センサ6により検出された、車両Wの実際の走行速度を表示する。これにより、セットスイッチ3dのオン操作時から所定時間を経過するまでの間は、表示部13の目標速度インジケータ13aに表示される目標速度と、速度計11に表示される車両Wの走行速度とが一致することになる。また、該オン操作時から所定時間を経過すると、速度計11には車両Wの実際の走行速度が表示されるが、加減速制御部15bの加減速制御により実際の走行速度と目標速度が一致している場合には、目標速度と同じ速度が表示されることになる。したがって、セットスイッチ3dのオン操作直後に車両Wの走行速度が変動しても、該走行速度の変動が速度計11を介して乗員に伝わるのを抑えることができる。
【0037】
−走行制御装置の処理動作−
ここで、走行制御装置の処理動作について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
先ず、ステップSA1では、クルーズシステムがオン状態であるか否かを判定し、このステップSA1の判定がNOであるときは、ステップSA1の動作を繰り返す。一方、ステップSA1の判定がYESであるときは、ステップSA2に進む。
【0039】
次のステップSA2では、上記セットスイッチ3dがオン操作されたか否か、すなわち、定速走行モードに設定されたか否かを判定する。このステップSA2の判定がNOであるときは、ステップSA2の動作を繰り返す。一方、ステップSA2の判定がYESであるときは、ステップSA3に進む。
【0040】
そして、ステップSA3では、上記目標速度設定部15aが、上記車速センサ6により検出されたステップSA2のオン操作時の車両Wの走行速度を、車両Wの目標速度として設定し、しかる後にステップSA4に進む。
【0041】
次のステップSA4では、上記加減速制御部15bが、車両Wの実際の走行速度を目標速度に維持するようにスロットル開度等を制御する加減速制御を開始する。
【0042】
次のステップSA5では、上記速度表示制御部17aが、目標速度を車両Wの走行速度として表示するように上記速度計11の指示値を目標速度に固定し、しかる後にステップSA6に進む。
【0043】
次のステップSA6では、上記ACCコントローラ17内のタイマが作動し、しかる後にステップSA7に進む。そして、ステップSA7では、オン操作時(タイマ作動)から所定時間が経過したか否かを判定し、このステップSA7の判定がNOであるときは、ステップSA7の動作を繰り返す。一方、ステップSA7の判定がYESであるとき、すなわち、所定時間を経過したときは、ステップSA8に進む。
【0044】
次のステップSA8では、速度表示制御部17aが、速度計11の指示値の固定を解除し、しかる後に処理動作を終了する。なお、図5のフローチャートではステップSA4からステップSA6までの動作を順序立てて説明したが、これらの動作はほぼ同時に実行される。
【0045】
−効果−
本実施形態によれば、車両走行時におけるセットスイッチ3dのオン操作時に、該オン操作時の走行速度を車両Wの目標速度とし、該オン操作時から所定時間を経過するまでの間、この目標速度を車両Wの走行速度として速度計11により表示することから、セットスイッチ3dのオン操作直後に車両Wの加速又は減速が生じても、所定時間を経過するまでは速度計11により表示される車両Wの走行速度が変動しない。したがって、セットスイッチ3dのオン操作時に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを抑制することができる。
【0046】
(実施形態2)
本実施形態は、ナビゲーション装置31、傾斜状態検出部15c及び所定時間変更部15dを備えている点、並びに上記速度表示制御部17aの構成が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
【0047】
図6に示すように、走行制御装置は、ナビゲーション装置(ナビゲーションシステム)31を備えており、PCM15は、目標速度設定部15a、加減速制御部15bに加え、傾斜状態検出部(傾斜状態検出手段)15cと所定時間変更部(所定時間変更手段)15dとを有している。ナビゲーション装置31は、車両Wの現在位置を検出するGPSセンサ31aと道路勾配情報を含む道路地図情報を記憶するDVD−ROM(道路地図情報記憶手段)31bとを有しており、これらGPSセンサ31a及びDVD−ROM31bは、PCM15に接続されていて、それぞれの情報をPCM15に入力するようになっている。そして、ナビゲーション装置31は、GPSセンサ31aにより検出された車両Wの現在位置情報と、DVD−ROM31bに記憶された道路地図情報とに基づいて、ナビゲーションを行うようになっている。
【0048】
上記傾斜状態検出部15cは、DVD−ROM31bに記憶された道路勾配情報に基づいて、車両Wが走行している走行路の傾斜状態を検出するように構成されている。具体的には、傾斜状態検出部15cは、道路勾配情報から得た、車両Wが現在走行している走行路の傾斜が所定値以上(例えば、勾配が1%以上)のときは傾斜状態を検出するように構成されている。傾斜状態検出部15cにより走行路の傾斜状態が検出されると、この傾斜状態の検出結果情報は、上記所定時間変更部15dに入力される。
【0049】
所定時間変更部15dは、傾斜状態検出部15cにより検出された傾斜状態に基づいて、速度計11の指示値を目標速度に固定する所定時間を変更するように構成されている。具体的には、所定時間変更部15dは、走行路が登坂路(登り勾配)であるか、又は降坂路(降り勾配)であるかに拘わらず、走行路の勾配の絶対値が大きくなるほど上記所定時間を長くするように構成されており、例えば、走行路の勾配が2%のときは上記所定時間を5secから15secに変更し、また走行路の勾配が1.5%のときは上記所定時間を5secから10secに変更するようになっている。このように検出された傾斜状態に基づいて所定時間を変更するのは、登坂路や降坂路では傾斜(勾配)が大きいほど、走行速度の変動が大きくなり、この変動した走行速度が目標速度に戻るのに時間を要するからであり、これにより、傾斜(勾配)の大きい走行路では所定時間が長く変更されるので、オン操作時から所定時間を経過するまでの間(所定時間内)で、車両Wの走行速度と目標速度とを一致しやすくなる。
【0050】
所定時間変更部15dにより変更された所定時間は、上記速度表示制御部17aに入力される。そして、速度表示制御部17aは、上記セットスイッチ3dのオン操作時から変更された所定時間(例えば15sec)を経過するまでの間、目標速度を車両Wの走行速度として表示するように速度計11を制御する。
【0051】
一方、傾斜状態検出部15cにより走行路の傾斜状態が検出されないとき(例えば、勾配が1%未満のとき)は、傾斜状態の非検出結果情報が速度表示制御部17aに入力されるが、本実施形態では、速度表示制御部17aは、傾斜状態検出部15cにより走行路の傾斜状態が検出されたときにのみ速度計11の制御を行うように構成されていることから、速度計11の指示値は目標速度に固定されず、車速センサ6により検出された、車両Wの実際の走行速度が速度計11に表示される。
【0052】
−走行制御装置の処理動作−
ここで、走行制御装置の処理動作について、図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、図7中のステップSB1〜SB4については図5中のステップSA1〜SA4と同様である。
【0053】
ステップSB5では、上記DVD−ROM31bに記憶された道路勾配情報に基づいて、車両Wが現在走行している走行路の傾斜が所定値以上であるか否かを判定し、このステップSB5の判定がNOであるとき、すなわち、現在走行中の走行路の傾斜が所定値未満であるときは、処理動作を終了する。一方、ステップSB5の判定がYESであるときは、ステップSB6に進む。
【0054】
次のステップSB6では、上記速度表示制御部17aが、目標速度を車両Wの走行速度として表示するように速度計11の指示値を目標速度に固定し、しかる後にステップSB7に進む。
【0055】
次のステップSB7では、上記所定時間変更部15dが、傾斜状態検出部15cにより検出された走行路の傾斜状態(勾配の絶対値)に基づいて、所定時間を変更し、しかる後にステップSB8に進む。そして、ステップSB8では、タイマが作動し、しかる後にステップSB9に進む。
【0056】
次のステップSB9では、オン操作時(タイマ作動)からステップSB7で変更された所定時間が経過したか否かを判定し、このステップSB9の判定がNOであるときは、上記所定時間が経過するまでステップSB9の動作を繰り返す。一方、ステップSB9の判定がYESであるとき、すなわち、オン操作時から上記所定時間が経過したときは、ステップSB10に進む。
【0057】
次のステップSB10では、上記速度表示制御部17aが速度計11の指示値の固定を解除し、しかる後に処理動作を終了する。
【0058】
−効果−
本実施形態によれば、速度表示制御部17aは、傾斜状態検出部15cにより走行路の傾斜状態が検出されたときにのみ速度計11の制御を行うので、登坂路や降坂路に比べて速度表示制御部17aによる制御の必要性が低い平坦な走行路における制御の機会を少なくできる。
【0059】
また、特にセットスイッチ3dのオン操作直後に車両Wの減速又は加速が生じやすい登坂路や降坂路において、所定時間を経過するまでは速度計11により表示される車両Wの走行速度が変動しないので、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを抑制することができる。
【0060】
さらに、傾斜状態検出部15cは、ナビゲーション装置31の道路地図情報記憶部に記憶された道路勾配情報に基づいて、走行路の傾斜状態を検出するように構成されていることから、ナビゲーション装置31を搭載している車両Wでは、道路地図情報を有効に用いることができる。
【0061】
また、傾斜状態検出部15cにより検出された傾斜状態に基づいて、所定時間を変更することから、傾斜の大きい走行路では所定時間が長くなるので、オン操作時から所定時間を経過するまでの間(所定時間内)で、車両Wの走行速度と目標速度とが一致しやすくなる。これにより、セットスイッチ3dのオン操作直後に車両Wの加速又は減速が生じやすく、且つ走行速度が目標速度に戻るのに特に時間を要する傾斜の大きい登坂路や降坂路においても、所定時間経過後に速度計11により表示される車両Wの走行速度が変動し難くなる。したがって、セットスイッチ3dのオン操作直後に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることをより一層抑制することができる。
【0062】
(実施形態3)
本実施形態は、ナビゲーション装置31に代えて傾斜センサ39を備えている点、及び所定時間変更部15dに代えて所定時間設定部15eを備えている点が実施形態2と異なるものである。以下、実施形態1及び2と異なる点について説明する。
【0063】
図8に示すように、走行制御装置は、傾斜センサ39を備えており、PCM15は、目標速度設定部15a、加減速制御部15b、傾斜状態検出部15cに加え、所定時間設定部(所定時間設定手段)15eを有している。
【0064】
上記傾斜センサ(チルトセンサ)39は、車両Wの傾きを感知し、該車両Wの傾斜状態を検出するようになっている。そして、上記傾斜状態検出部15cは、傾斜センサ39により検出される車両Wの傾斜状態に基づいて、走行路の傾斜状態を検出するように構成されている。傾斜状態検出部15cにより走行路の傾斜状態が検出されると、傾斜状態の検出結果情報が上記速度表示制御部17aに入力される。そして、速度表示制御部17aは傾斜状態検出部15cにより走行路の傾斜状態が検出されたときにのみ速度計11の制御を行うようになっている。なお、上記傾斜センサ39に代えて、車両W前方の走行路の勾配を直接計測するレーダ等を有する傾斜センサ39を用いてもよい。
【0065】
上記所定時間設定部15eは、速度計11の指示値を目標速度に固定する所定時間を車両Wの走行速度が目標速度に一致するまでの時間に設定するように構成されている。具体的には、所定時間設定部15eは、目標速度設定部15aにより設定された目標速度と、車速センサ6により検出される車両Wの実際の走行速度との偏差が0へ収束したか否かを判定し、目標速度と実際の走行速度とが一致するまでの時間を所定時間として設定するようになっている。すなわち、本実施形態では、上記各実施形態とは異なり、所定時間の経過を条件として、速度計11の指示値の固定が解除されるのではなく、加減速制御部15bにより実際の走行速度と目標速度が一致することを条件として、速度計11の指示値の固定が解除されるようになっている。したがって、セットスイッチ3dのオン操作時からタイマを作動させる必要がなく、所定時間設定部15eにより設定された所定時間が速度表示制御部17aに入力されると、速度計11の指示値の固定が解除される。
【0066】
−走行制御装置の処理動作−
ここで、走行制御装置の処理動作について、図9のフローチャートに基づいて説明する。なお、図9中のステップSC1〜SC6については図7中のステップSB1〜SB6と同様である。
【0067】
ステップSC7では、上記車速センサ6で検出される車両Wの走行速度と目標速度との偏差が0へ収束したか否か、すなわち、車両Wの走行速度が目標速度に一致したか否かを判定し、このステップSC7の判定がNOであるときは、車両Wの走行速度が目標速度に一致するまでステップSC7の動作が繰り返される。一方、ステップSC7の判定がYESであるとき、すなわち、車両Wの走行速度が目標速度に一致したときは、ステップSC8に進む。
【0068】
次のステップSC8では、上記速度表示制御部17aが速度計11の指示値の固定を解除し、しかる後に処理動作を終了する。
【0069】
−効果−
本実施形態によれば、傾斜センサ39を用いて走行路の傾斜状態を検出することにより、車両Wが現在走行している走行路の傾斜状態を正確に検出することができる。したがって、セットスイッチ3dのオン操作直後に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることを確実に抑制することができる。
【0070】
また、所定時間を車両Wの走行速度が目標速度に一致するまでの時間に設定することから、速度計11により表示される車両Wの走行速度が変動しないので、セットスイッチ3dのオン操作直後に、乗員に対し、定速走行を開始したにも拘わらず走行速度が目標速度に維持されていないという違和感を与えることをより確実に抑制することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、速度計11としてアナログ表示式のものを用いたが、これに限らず、例えばデジタル表示式の速度計を用いてもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、上下左右に並ぶ4つの操作スイッチ3a,3b,3c,3dで構成されているスイッチ操作部3を、ステアリングホイール22のスポーク部22aに設けたが、スイッチ操作部3の形状や位置は、これに限定されない。
【0073】
さらに、上記実施形態2では、ナビゲーション装置31と所定時間変更部15dとを組み合わせ、上記実施形態3では、傾斜センサ39と、所定時間設定部15eとを組み合わせたが、傾斜状態検出部15cと所定時間変更部15d及び所定時間設定部15eとの組み合わせはこれに限定されない。
【0074】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0075】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、車両の走行速度を目標速度に維持するように制御する車両の走行制御装置等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る走行制御装置を搭載した車両の概略構成を示す図である。
【図2】車両のインストルメントパネルに設けられたメータユニットの拡大図である。
【図3】車両のステアリングホイールの構成図である。
【図4】走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】走行制御装置における処理動作を示すフローチャートである。
【図6】走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】走行制御装置における処理動作を示すフローチャートである。
【図8】走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】走行制御装置における処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
3d 目標速度設定スイッチ(セットスイッチ)(スイッチ手段)
6 車速センサ(走行速度検出手段)
9 オートアクチュエータ(加減速制御手段)
11 速度計(速度表示手段)
15a 目標速度設定部(目標速度設定手段)
15b 加減速制御部(加減速制御手段)
15c 傾斜状態検出部(傾斜状態検出手段)
15d 所定時間変更部(所定時間変更手段)
15e 所定時間設定部(所定時間設定手段)
17a 速度表示制御部(速度表示制御手段)
31 ナビゲーション装置(ナビゲーションシステム)
31b DVD−ROM(道路地図情報記憶手段)
39 傾斜センサ
W 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行速度を検出する走行速度検出手段と、
上記車両の乗員により操作されるスイッチ手段と、
車両走行時における上記スイッチ手段のオン操作時に、上記走行速度検出手段により検出された該オン操作時の走行速度を上記車両の目標速度として設定する目標速度設定手段と、
上記走行速度検出手段により検出される走行速度を上記目標速度に維持するように上記車両を加減速させる加減速制御手段とを備えている車両の走行制御装置であって、
上記車両の走行速度を表示する速度表示手段と、
上記オン操作時から所定時間経過するまでの間、上記目標速度を上記車両の走行速度として表示するように上記速度表示手段を制御する速度表示制御手段とをさらに備えていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の走行制御装置において、
上記車両が走行している走行路の傾斜状態を検出する傾斜状態検出手段をさらに備え、
上記速度表示制御手段は、上記傾斜状態検出手段により上記走行路の傾斜状態が検出されたときにのみ上記速度表示手段の制御を行うように構成されていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両の走行制御装置において、
道路勾配情報を含む道路地図情報を記憶する道路地図情報記憶手段を有するナビゲーションシステムをさらに備え、
上記傾斜状態検出手段は、上記道路地図情報記憶手段に記憶された道路勾配情報に基づいて、上記走行路の傾斜状態を検出するように構成されていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項4】
請求項2記載の車両の走行制御装置において、
上記車両の傾斜状態を検出する傾斜センサをさらに備え、
上記傾斜状態検出手段は、上記傾斜センサにより検出される上記車両の傾斜状態に基づいて、上記走行路の傾斜状態を検出するように構成されていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載の車両の走行制御装置において、
上記傾斜状態検出手段により検出された傾斜状態に基づいて、上記所定時間を変更する所定時間変更手段をさらに備えていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の走行制御装置において、
上記所定時間を上記車両の走行速度が上記目標速度に一致するまでの時間に設定する所定時間設定手段をさらに備えていることを特徴とする車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−184454(P2009−184454A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25019(P2008−25019)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】