説明

車両の車線逸脱警報装置

【課題】自車両が走行している車線の走行区分線を検知することで、自車両の走行環境に応じて走行安全性と頻繁な警報作動の防止との両立を図ることができる車両の車線逸脱警報装置を提供する。
【解決手段】S10の判定の結果、Noの場合、左走行区分線Laが実線で右走行区分線Laが破線か否か判定し、Yesの場合、右側方或いは右斜め後に他車両CBが走行しているか否か判定する。S19の判定の結果、右側方或いは右斜め後に他車両CBが存在しない場合、左走行区分線Laに対して第2判定ラインLd2、右走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1を夫々設定し、S5の車線逸脱判定ステップに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車線逸脱警報装置に関し、特に、自車両が走行する走行車線の区分線の種類に応じて車線逸脱警報の判別タイミングを変更可能にしたものである。
【0002】
従来、自車両の前方を車載カメラで撮像し、コントロールユニットにより、車載カメラで撮像された画像から白線等の車線区分線を検出することで、自車両の走行車線を認識し、その自車両走行車線から自車両が逸脱した、或いは逸脱する可能性が有る場合に警報の出力を行う車線逸脱警報装置は公知である。
【0003】
特許文献1は、車載カメラで撮像された画像から白線等の車線区分線を検出することで、自車両の走行車線を認識し、その自車両走行車線から自車両が逸脱した、或いは逸脱する可能性が有る場合に警報の出力を行う車両の車線逸脱警報装置が提案されている。特許文献1では、逸脱判定ラインを自車両走行車線の中心線に近づける程、車線逸脱警報の出力タイミングを早くすることができ、逸脱判定ラインを自車両走行車線の中心線から遠ざける程、車線逸脱警報の出力タイミングを遅くすることができるため、乗員個体差或いは走行環境等の条件に応じた逸脱警報を行うことができる。
【0004】
特許文献2は、車線区分線の種類をテンプレートを用いて検出するものが提案されている。特許文献2では、外側に位置する車線境界を確実に検出でき、多重車線等区分線の種類に起因する車線境界の誤検出を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−346395号公報
【特許文献2】特開2007−52730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車両の車線逸脱警報装置では、逸脱判定ラインを自車両走行車線の中心線に近づける程、車線逸脱警報の判定タイミングを早くすることができ、逸脱判定ラインを自車両走行車線の中心線から遠ざける程、車線逸脱警報の判定タイミングを遅くすることができる。しかしながら、逸脱判定ラインの設定は、自車両走行車線の種類に関係なく、自車両走行車線の中心線に対して左右対称としており、左右の逸脱判定ラインが自車両走行車線の左右両端縁(左右の車線区分線)から同距離離れるように設定されるため、次の問題が生じる。
【0007】
車両が中央分離帯や路肩に隣接する車線を走行する場合、その自車両走行車線から中央分離帯や路肩側への車両逸脱に対して車線逸脱警報を迅速に出力させたいという要望に基づき、逸脱判定ラインを自車両側に設定することができる。しかし、自車両走行車線を含む片側領域の車線数が複数の場合、自車両走行車線から片側領域の他の車線側への車両逸脱に対して車線逸脱警報の判定タイミングが早くすると、運転者の要望外に車線逸脱警報が頻繁に作動するという課題がある。
【0008】
そこで、自車両走行車線から片側領域の他の車線側への車両逸脱に対して車線逸脱警報の判定タイミングを遅くするために、逸脱判定ラインを反自車両側に設定すると、車両が中央分離帯や路肩に隣接する車線を走行する場合、自車両走行車線から中央分離帯や路肩側への車両逸脱に対して車線逸脱警報を迅速に出力させることができないという課題が残る。
【0009】
特許文献2においては、車線区分線の種類を識別することは可能であるが、あくまで外側に位置する実際の車線境界検出に主眼を置いており、複数種類の走行車線を走行するときに発生する前述の課題については一切考慮されていない。つまり、同一走行車線であっても、一側は実線、他側は破線の場合、破線側には隣接車線があるものの、実線側は中央分離帯や路肩があることから、単に外側の車線境界が検出されても走行環境に応じた車線逸脱警報については何ら示唆されていない。
【0010】
本発明の目的は、自車両が走行している車線の走行区分線を検知することで、自車両の走行環境に応じて走行安全性と頻繁な警報作動の防止との両立を図ることができる車両の車線逸脱警報装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両の車線逸脱警報装置は、車両の前方側を撮像する撮像手段によって走行区分線を検知することにより自車両の走行する車線を認識する走行車線認識手段と、車両の進行方向と車速とを検知する進路ベクトル検知手段と、前記走行車線認識手段と進路ベクトル検知手段とによって自車両が走行している車線を逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段と、この逸脱判定手段によって逸脱判定されたときに警報を行う警報手段を有している。
【0012】
請求項1の発明は、走行車線認識手段は、走行区分線が実線か破線かを識別する車線種類識別手段を有し、逸脱判定手段は、車線種類識別手段で識別された走行区分線が破線のとき、第1判定ラインで逸脱判定すると共に、車線種類識別手段で識別された走行区分線が実線のとき、第1判定ラインよりも自車両側に設定された第2判定ラインで逸脱判定することを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明では、車線種類識別手段が自車両の走行区分線が実線か破線かを識別するため、自車両の走行車線の周囲が隣接車線なのか中央分離帯や路肩なのか、所謂走行環境が判定できる。この判定結果に基づいて、逸脱判定手段は、第1判定ラインと第1判定ラインよりも自車両側に設定された第2判定ラインとを用いて逸脱判定することができる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、自車両の隣接車線の側後方側を走行する他車両を検知する側後方車両検知手段を有し、この側後方車両検知手段で他車両を検知したとき、逸脱判定手段は前記車線種類識別手段で識別された走行区分線が破線であっても前記第2判定ラインで逸脱判定することを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、目標車速と一致するように自車両の車速を制御する車速制御手段と、先行車両に対して自車両を追従走行させる追従走行制御手段と、自車両の走行車線が一般道路か高速道路かを判定する道路種別判定手段とを有し、自車両が高速道路を走行中で且つ自車両が走行する走行区分線が実線と判定されたとき、自車両の車速を制限する車速制限手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の車両の車線逸脱警報装置によれば、走行車線認識手段は、走行区分線が実線か破線かを識別する車線種類識別手段を有し、逸脱判定手段は、車線種類識別手段で識別された走行区分線が破線のとき、第1判定ラインで逸脱判定すると共に、車線種類識別手段で識別された走行区分線が実線のとき、第1判定ラインよりも自車両側に設定された第2判定ラインで逸脱判定するため、自車両の走行環境に応じて走行安全性と頻繁な警報作動の防止との両立を図ることができる。
【0017】
つまり、走行区分線の設定は、路肩側等隣接車線がない側は実線、隣接車線がある側は破線とされていることから、車線種類識別手段にて車線種類を識別して走行環境を判定している。この走行環境に基づき、安全性を重視すべき実線側を第1判定ラインよりも自車両側に設定された第2判定ラインで逸脱判定し、運転快適性を重視できる破線側を第1判定ラインで逸脱判定することで、安全性を確保しながら逸脱警報が頻繁に作動することを防止することができる。
【0018】
請求項2の車両の車線逸脱警報装置によれば、自車両の隣接車線の側後方側を走行する他車両を検知する側後方車両検知手段を有し、この側後方車両検知手段で他車両を検知したとき、逸脱判定手段は前記車線種類識別手段で識別された走行区分線が破線であっても前記第2判定ラインで逸脱判定するため、隣接車線がある場合であっても、側後方側を走行する他車両との接触等を確実に回避できる。
【0019】
請求項3の車両の車線逸脱警報装置によれば、目標車速と一致するように自車両の車速を制御する車速制御手段と、先行車両に対して自車両を追従走行させる追従走行制御手段と、自車両の走行車線が一般道路か高速道路かを判定する道路種別判定手段とを有し、自車両が高速道路を走行中で且つ自車両が走行する走行区分線が実線と判定されたとき、自車両の車速を制限する車速制限手段を有するため、追従走行の途中で別の走行車線に進路変更した場合でも、急な加速を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の車両の車線逸脱警報装置は、車両の前方側を撮像する撮像手段によって走行区分線を検知することにより自車両の走行する車線を認識する走行車線認識手段と、車両の進行方向と車速とを検知する進路ベクトル検知手段と、前記走行車線認識手段と進路ベクトル検知手段とによって自車両が走行している車線を逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段と、この逸脱判定手段によって逸脱判定されたときに警報を行う警報手段を有している。
【実施例1】
【0021】
図1、図2に示すように、車両CA(自動車CA)に装備された車線逸脱警報装置1は、前方CCDカメラ2、ミリ波レーダ3、ナビゲーション装置4、右後側方CCDカメラ5、左後側方CCDカメラ6、車速センサ7、舵角センサ8、スピーカ9、ブザー10、ランプ11、ディスプレイ12、エンジン制御ユニット13、ブレーキ制御装置14、ECU15を備え、これら2〜15が図2のように電気的に接続されている。尚、本実施例の車線逸脱警報装置1では、スピーカ9とブザー10とランプ11とディスプレイ12の少なくとも1つを残して省略可能である。
【0022】
図1〜図3に示すように、前方CCDカメラ2とミリ波レーダ3とECU15が、自車両CAの走行車線(以下、自車両走行車線LAという)を認識する走行車線認識手段に相当し、ECU15が、この走行車線認識手段で認識された自車両走行車線LAの幅方向両端縁に沿って逸脱判定ラインLdを設定し、その逸脱判定ラインLd外へ自車両CAが逸脱したか否か判定する逸脱判定手段に相当し、ECU15及びスピーカ9とブザー10とランプ11とディスプレイ12の少なくとも1つが、この逸脱判定手段で逸脱判定された場合に警報の出力を行う逸脱警報手段に相当する。
【0023】
前方CCDカメラ2は、自車両CAの前方を撮像する撮像手段(車載カメラ)であり、例えば、車両CAのフロントガラスの上部後側に前方へ向けて取付けられ、具体的に、自車両CAよりも前方の自車両走行車線LAを区分する白線等の走行区分線Laを撮像可能であり、また、自車両走行車線LAを含む並列する複数車線Lが存在する場合には、自車両CAよりも前方の複数車線Lを区分する白線等の走行区分線Laを撮像可能であり、この前方CCDカメラ2で撮像された画像情報がECU15に供給される。
【0024】
ミリ波レーダ3は、自車両CAの前方の他車両CBを検知するとともに、検知した他車両CBと自車両CAとの相対速度を検知可能なレーダ手段であり、例えば、車両CAのフロントバンパにエンブレム等の後側において前方へ向けて取付けられ、自車両CAよりも前方の自車両走行車線LAを走行する他車両CBについて、また、自車両走行車線LAを含む並列する複数車線Lが存在する場合には、自車両CAよりも前方の複数車線Lの何れかを走行する各他車両CBについて、自車両CAに対する他車両CBの相対位置と相対速度を検知可能であり、このミリ波レーダ3で検知された情報がECU15に供給される。尚、ミリ波レーダ3の代わりに上記機能の有る種々のレーダを採用可能である。
【0025】
左右後側方CCDカメラ5,6は、自車両CAの左右後側方を撮像する撮像手段であり、例えば、車両CAのバンパ両端、或いはトランクリッド両端に後側に向けて取付けられている。自車両CAの後方で、自車両走行車線LAに隣接する車線Lを走行する他車両CBを撮像可能であり、この左右後側方CCDカメラ5,6で撮像された画像情報がECU15に供給される。
【0026】
エンジン制御ユニット13は、エンジンの吸気量を制御するスロットルバルブやエンジンに供給される燃料を制御する燃料噴射弁を含み、自車両CAの車速を所定の目標車速と一致させるようにエンジンを制御している。ブレーキ制御装置14は、エンジン制御ユニット13と連動して作動するもので、自車両CAの車速を所定の目標車速と一致させるためにブレーキを制御するよう構成されている。
【0027】
図2に示すように、ECU15は、コンピュータを備えたコントロールユニットであり、前方CCDカメラ2及び左右後側方CCDカメラ5,6で撮像された画像を解析し、前方CCDカメラ2の画像から車線区分線Laを検出すると共に、左右後側方CCDカメラ5,6の画像から後方から接近する他車両CBを検出する画像解析部16と、自車両走行車線LAを含む片側領域SZの車線数を検知すると共に、検知された車線数が複数の場合、その複数車線Lにおける自車両走行車線LAの位置を検知する走行車線認識部17(走行車線認識手段)とを備えている。
【0028】
走行車線認識部17では、画像解析部16で検出された走行区分線Laから、片側領域SZの車線数が検知され、ここで、片側領域SZに対向車線LBが隣接する場合、片側領域SZと対向車線LBとの境界となる中央分離帯Xを識別できる場合には、その中央分離帯Xに隣接する片側領域SZの走行区分線Laが中央走行区分線Lcとして検知され、片側領域SZの走行区分線Laの数が確定し、片側領域SZの車線数が検知される。
【0029】
但し、画像解析部16で片側領域SZの中央走行区分線Lcを検知できない場合、或いは、片側領域SZの中央走行区分線Lcの検知精度を高めるために、ミリ波レーダ3で検知された自車両CAに対する他車両CBの相対位置と相対速度から、対向車CBが検知され、自車両走行車線LAよりも右側において、例えば、一定時間内に対向車CBの走行を検知できなかった車線Lを片側領域SZの車線Lとし、その車線Lの右側に隣接する車線L(一定時間内に対向車CBの走行を検知できた車線L)を対向車線LBとして、これらの車線Lの境界を中央分離帯Xであると推測し、その中央分離帯Xに隣接する片側領域SZの走行区分線Laを中央走行区分線Lcとして推測する。
【0030】
走行車線認識部17は、片側領域SZの車線数が複数の場合、前方CCDカメラ2で撮像されて画像解析部16で解析された画像から、片側領域SZの複数車線Lにおける自車両走行車線LAの位置が検知される。
【0031】
更に、走行車線認識部17は、車線種類識別部18(車線種類識別手段)によって、前方CCDカメラ2で撮像されて画像解析部16で解析された画像から、片側領域SZの複数車線Lにおける自車両走行車線LAの左右の走行区分線Laが実線か破線か識別する。識別は、解析された走行区分線Laの画像の連続性判定によって行っているが、別途判定用のテンプレートを用いて識別することも可能である。
【0032】
進路ベクトル検知部19(進路ベクトル検知手段)は、車速センサ7及び舵角センサ8からの信号に基づいて自車両CAの進行方向とその車速とを検知している。この進路ベクトル検知部19で検知された進行方向と車速と後述する判定ラインを用いて逸脱判定が行われる。
【0033】
ここで、例えば、図3は、片側領域SZの車線数が3車線であり、他の片側領域を含む全車線数が6車線の道路の平面図を示しており、自車両CAは片側領域SZの追越車線(最も右側の車線L)を走行している。この場合、先ず、画像解析部16で検出された走行区分線Laから全車線数が6車線であり、自車両走行車線LAの左走行区分線Laは破線、右走行区分線Laは実線であることを検知でき、更にミリ波レーダ3で検知された自車両CAに対する他車両CBの相対位置と相対速度から、片側領域SZの中央車線区分線Lcを精度良く検知でき、自車両CAが追越車線を走行していることを検知できる。
【0034】
また、図2に示すように、ECU15は、認識された自車両走行車線LAの幅方向両端縁に沿って逸脱判定ラインLdを設定する逸脱判定ライン設定部21を有し、この逸脱判定ライン設定部21で設定された逸脱判定ラインLd外へ自車両CAが逸脱したか否か判定する逸脱判定部20(逸脱判定手段)と、この逸脱判定部20で逸脱判定された場合に、警報手段としてのスピーカ9とブザー10とランプ11とディスプレイ11の少なくとも1つを制御して逸脱警報を行う。
【0035】
車線逸脱判定部20は、逸脱判定ライン設定部21によって、自車両走行車線LAの左右走行区分線Laの種類に応じた逸脱判定ラインLdが、夫々の走行区分線Laに対して設定される。車線種類識別部18で左走行区分線Laの種類が破線であると検知された場合、走行車線認識部17で検知された自車両走行車線LAの左走行区分線Laの位置に基づいて、逸脱判定ラインLdとして、第1判定ラインLd1を設定する。更に、右走行区分線Laの種類が実線であると検知された場合、走行車線認識部17で検知された自車両走行車線LAの右走行区分線Laの位置に基づいて、第1判定ラインLd1よりも自車両走行車線LAの内側に位置する第2判定ラインLd2を設定する。
【0036】
即ち、車線逸脱判定部20は、逸脱判定ライン設定部21によって、車線種類識別部18で走行区分線Laの種類が破線であると検知された走行区分線Laには、自車両CAから離れた第1判定ラインLd1を設定し、また、走行区分線Laの種類が実線であると検知された走行区分線Laには、第1判定ラインLd1よりも早いタイミングで逸脱判定される第2判定ラインLd2を設定している。
【0037】
車速制御部22(車速制御手段)は、乗員によって予め設定される目標車速に自車両CAの車速を一致させるように構成している。具体的には、車速センサ7で検出された車速と目標車速とを比較し、加速が必要な場合は、エンジン制御ユニット13でエンジンの出力を増加し、減速が必要な場合は、エンジン制御ユニット13でエンジンの出力を減少させると共に、ブレーキ制御装置14を制動動作させる。
【0038】
追従走行制御部23(追従走行制御手段)は、自車両CAの走行車線LAを先行して走行する他車両CBがあり、乗員によってこの先行車両CBに追従走行すると設定された場合、先行車両CBとの間隔を所定距離に保持して自車両CAを走行制御するように構成される。ミリ波レーダ3によって先行車両CBが検知されると共に、先行車両CBとの距離を検知することができるため、先行車両CBが加速した場合は、所定距離を保つようにエンジン制御ユニット13でエンジンの出力を増加し、先行車両CBが減速した場合は、所定距離を保つようにエンジン制御ユニット13でエンジンの出力を減少させると共に、ブレーキ制御装置14を制動動作させる。
【0039】
道路種別判定部24(道路種別判定手段)は、ナビゲーション装置4からの情報に基づき、自車両CAが現在走行している走行車線LAの種別が一般道路か高速道路かを判定するよう構成されている。
【0040】
車速制限部25(車速制限手段)は、所定の条件のとき、自車両CAの車速を制限するもので、具体的には、高速道路を走行中で且つ自車両CAが現在走行している走行車線LAの走行区分線Laの種類が実線であるときに自車両CAの車速を制限するよう構成されている。
【0041】
次に、ECU15が実行する車線逸脱警報処理について、図4及び図5のフローチャート及び図6〜図8に基づいて詳しく説明する。この車線逸脱警報処理を実行する為のプログラムはECU15のコンピュータROM等に格納されている。尚、Si(i=1,2…)は各ステップを示す。
【0042】
図4及び図5に示すように、この車線逸脱警報処理は、車両CAのイグニションスイッチのオンと共に開始され、先ず、自車両走行車線LAの左右の走行区分線Laが認識される(S1)。
【0043】
S1の後、走行車線LAの左右の走行区分線Laが両方共実線か否か判定する(S2)。S2の判定の結果、両方共実線の場合、走行車線LAの種別が高速道路か判定する(S3)。S3の判定の結果、No、所謂一般道路の場合、図6に示すように、左右の走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1よりも早いタイミングで逸脱判定される第2判定ラインLd2を夫々設定する(S4)。尚、図6において、Yは路肩を示している。
【0044】
S4で、左右の走行区分線Laに対して第2判定ラインLd2を夫々設定した後、車線逸脱するか否か判定する(S5)。S5では、自車両CAの車速と舵角に基づき、自車両CAの車幅方向位置の変化率を算出し、現時刻から、自車両CAの左前輪又は右前輪が走行区分線Laに対して予め車線内方に設定される第2判定ラインLd2に到達する時間Tを演算する。この時間Tが所定時間Tよりも短いと判定されたときは、車線逸脱可能性ありと判定する。尚、所定時間Tは、車速や路面摩擦係数μに応じて補正され、車速が高いほど長く、路面摩擦係数μが高いほど短くなるように設定されている。
【0045】
S5の判定の結果、Yes、所謂逸脱可能性ありの場合、スピーカ9とブザー10とランプ11とディスプレイ12の少なくとも1つが制御されて逸脱警報が行われて(S6)、リターンする。S5の判定の結果、Noの場合、警報を行わずにリターンする。
【0046】
S3の判定の結果、Yes、所謂高速道路の場合、追従走行中か否か判定する(S7)。S7の判定の結果、Yesの場合、先行車両CBをロストしたか否か判定する(S8)。S8では、図7に示すように、高速道路を走行中、先行車両CBをロスト、所謂自車両CAがサービスエリアまたは出口に進路変更したかを判定している。
【0047】
S8の判定の結果、Yesの場合、自車両CAはサービスエリアまたは出口に進路変更しているため、車速制限部25によって乗員の予期しない加速を防止して(S9)、S4に移行する。予め乗員が車速制御部22によって、例えば、目標車速を時速80kmに設定すると共に、これと合わせて追従走行制御により、時速70kmで走行する先行車両CBに追従走行しているときに、自車両CAがサービスエリアまたは出口に進路変更すると、先行車両CBをロストし、車速制御部22の作動に起因する乗員の予期しない加速が行われる。S9では、この予期しない加速を防止している。S8の判定の結果、Noの場合、S7にリターンする。
【0048】
S2の判定の結果、Noの場合、左右の走行区分線Laが両方共破線か否か判定する(S10)。S10の判定の結果、Yesの場合、側方或いは斜め後に他車両CBが走行しているか否か判定する(S11)。S11の判定の結果、Noの場合、自車両走行車線LAの左右に隣接車線Lが存在し、且つ後方から接近する他車両CBが存在しないため、左右の走行区分線Laに対して第2判定ラインLd2よりも遅いタイミングで逸脱判定される第1判定ラインLd1を夫々設定し(S12)、S5に移行する。
【0049】
S11の判定の結果、Yesの場合、左右共に後続の他車両CBが存在するか否か判定する(S13)。S13の判定の結果、Yesの場合、図8に示すように、左右の走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1よりも早いタイミングで逸脱判定される第2判定ラインLd2を夫々設定し(S14)、S5に移行する。
【0050】
S13の判定の結果、Noの場合、右側方或いは右斜め後に他車両CBが走行しているか否か判定する(S15)。S15の判定の結果、Yesの場合、左右の走行区分線Laのうち、左走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1、右走行区分線Laに対して第2判定ラインLd2を夫々設定し(S16)、S5に移行する。
【0051】
S15の判定の結果、No、所謂左側方或いは左斜め後に他車両CBが走行しているの場合、左右の走行区分線Laのうち、左走行区分線Laに対して第2判定ラインLd2、右走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1を夫々設定し(S17)、S5に移行する。
【0052】
S10の判定の結果、Noの場合、左走行区分線Laが実線で右走行区分線Laが破線か否か判定する(S18)。S18の判定の結果、Yesの場合、右側方或いは右斜め後に他車両CBが走行しているか否か判定する(S19)。S19の判定の結果、Noの場合、左走行区分線Laに対して第2判定ラインLd2、右走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1を夫々設定し(S20)、S5に移行する。
【0053】
S19の判定の結果、Yesの場合、左右の走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1よりも早いタイミングで逸脱判定される第2判定ラインLd2を夫々設定し(S23)、S5に移行する。
【0054】
S18の判定の結果、Noの場合、左側方或いは左斜め後に他車両CBが走行しているか否か判定する(S21)。S21の判定の結果、Noの場合、左右の走行区分線Laのうち、左走行区分線Laに対して第1判定ラインLd1、右走行区分線Laに対して第2判定ラインLd2を夫々設定し(S22)、S5に移行する。S21の判定の結果、Yesの場合、S23に移行する。
【0055】
以上の構成により、走行区分線Laの設定は、路肩側等隣接車線Lがない側は実線、隣接車線がある側は破線とされていることから、車線種類識別部18にて車線種類を識別して走行環境を判定している。この走行環境に基づき、安全性を重視すべき実線側を第1判定ラインLd1よりも自車両側に設定された第2判定ラインLd2で逸脱判定し、運転快適性を重視できる破線側を第1判定ラインLd1で逸脱判定することで、安全性を確保しながら逸脱警報が頻繁に作動することを防止することができる。
【0056】
また、側後方の他車両CBを検知したとき、逸脱判定部20は車線種類識別部18で識別された走行区分線Laが破線であっても前記第2判定ラインLd2で逸脱判定するため、隣接車線Lがある場合であっても、側後方側を走行する他車両CBとの接触等を確実に回避できる。更に、自車両CAの車速を制限する車速制限部25を有するため、追従走行の途中で別の走行車線Lに進路変更した場合でも、急な加速を防止することができる。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加して実施可能である。例えば、第1判定ラインLd1については、図示では、自車両走行車線LAの車線区分線Laの少し内側を通る配置であるが、車線区分線Laを通る配置としてもよい。また、第2判定ラインLd2についても、第1判定ラインLd1よりも自車両走行車線LAの内側であれば種々の配置としてもよい。尚、本発明の車両の車線逸脱警報装置については、種々の自動車等の車両に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】自動車の前部の斜視図である。
【図2】車線逸脱警報装置のブロック図である。
【図3】道路の具体例を示す平面図である。
【図4】車線逸脱警報処理のフローチャートの一部である。
【図5】車線逸脱警報処理のフローチャートの残部である。
【図6】自車両が片側領域1車線の車線を走行中の説明図である。
【図7】自車両が追従走行の途中で進路変更したときの説明図である。
【図8】自車両が片側領域3車線の中央車線を走行中の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
CA 自車両
CB 他車両
L 車線
LA 自車両走行車線
La 走行区分線
Ld 逸脱判定ライン
Ld1 第1判定ライン
Ld2 第2判定ライン
1 車線逸脱警報装置
2 前方CCDカメラ
3 ミリ波レーダ
4 ナビゲーション装置
5 右後側方CCDカメラ
6 左後側方CCDカメラ
7 車速センサ
8 舵角センサ
9 スピーカ
10 ブザー
11 ランプ
12 ディスプレイ
16 画像解析部
17 走行車線認識部
18 車線種類識別部
19 進路ベクトル検知部
20 逸脱判定部
21 逸脱判定ライン設定部
22 車速制御部
23 追従走行制御部
24 道路種別判定部
25 車速制限部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方側を撮像する撮像手段によって走行区分線を検知することにより自車両の走行する車線を認識する走行車線認識手段と、車両の進行方向と車速とを検知する進路ベクトル検知手段と、前記走行車線認識手段と進路ベクトル検知手段とによって自車両が走行している車線を逸脱するか否かを判定する逸脱判定手段と、この逸脱判定手段によって逸脱判定されたときに警報を行う警報手段を有する車両の車線逸脱警報装置において、
前記走行車線認識手段は、走行区分線が実線か破線かを識別する車線種類識別手段を有し、
前記逸脱判定手段は、前記車線種類識別手段で識別された走行区分線が破線のとき、第1判定ラインで逸脱判定すると共に、前記車線種類識別手段で識別された走行区分線が実線のとき、第1判定ラインよりも自車両側に設定された第2判定ラインで逸脱判定することを特徴とする車両の車線逸脱警報装置。
【請求項2】
自車両の隣接車線の側後方側を走行する他車両を検知する側後方車両検知手段を有し、
この側後方車両検知手段で他車両を検知したとき、前記逸脱判定手段は前記車線種類識別手段で識別された走行区分線が破線であっても前記第2判定ラインで逸脱判定することを特徴とする請求項1に記載の車両の車線逸脱警報装置。
【請求項3】
目標車速と一致するように自車両の車速を制御する車速制御手段と、
先行車両に対して自車両を追従走行させる追従走行制御手段と、
自車両の走行車線が一般道路か高速道路かを判定する道路種別判定手段とを有し、
自車両が高速道路を走行中で且つ自車両が走行する走行区分線が実線と判定されたとき、自車両の車速を制限する車速制限手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の車線逸脱警報装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−49382(P2010−49382A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211414(P2008−211414)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】