説明

車両の電源装置

【課題】センサ故障発生時であっても可能な限り走行性能を維持した状態で退避走行をすることが可能な車両の電源装置を提供する。
【解決手段】制御装置30は、電圧センサ13の出力が使用不可となる故障を検出した場合には、接続部40Sを非接続状態とし、かつ電圧コンバータ12Sを電圧非変換状態に制御して電圧コンバータ12Sの接続部40S側端子に正極母線PL2の電圧を出力させ、電圧センサ13の出力に代えて電圧センサ21Sの出力に基づいて正極母線PL2の電圧制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の電源装置に関し、特に複数の蓄電装置と複数の電圧コンバータとを備える車両の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002−10502号公報(特許文献1)は、複数の蓄電池の充電と放電を同時に行なう蓄電池用充放電装置を開示する。この蓄電池用充放電装置は、交流電源を整流する充電用整流回路と,この充電用整流回路と逆並列に蓄電池の電気量を上記交流電源に回生する回生用整流回路と、上記充電用整流回路の出力に出力を制御するスイッチング素子を有する昇降圧コンバータと、上記昇降圧コンバータの出力を平滑する平滑コンデンサと、上記平滑コンデンサの両端電圧を検出する第1電圧検出器と,上記蓄電池の蓄電池電圧を検出する第2電圧検出器とを含む。そして、上記第1電圧検出器の検出信号が上記第2電圧検出器の検出信号になるように、上記昇降圧コンバータを制御するものである。
【0003】
このように昇降圧コンバータを制御することにより、蓄電池ごとに放電開始時の突入電流を制限する大容量の限流抵抗を設けることも、また限流抵抗と開閉手段を設ける必要もなくなる。
【特許文献1】特開2002−10502号公報
【特許文献2】特開2006−325322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境に配慮した車両として、モータで車輪を駆動する電気自動車、燃料電池自動車や、モータとエンジンとを動力源として併用するハイブリッド自動車が注目されている。このような車両において、蓄電池等の電圧源を昇降圧コンバータで昇圧してモータ駆動用のインバータに供給することも行なわれている。
【0005】
また、このような車両においては、燃費と動力性能の両立や無補給走行距離の伸長のため、複数の蓄電装置を搭載することが検討されている。車両の電源装置においても、複数の蓄電装置を搭載する場合には、放電開始時の突入電流を制限する大容量の限流抵抗を設けることも必要であり、また限流抵抗と開閉手段を蓄電装置ごとに設ける必要もある。
【0006】
上記の特開2002−10502号公報(特許文献1)は、商用電源である三相交流電源に接続される装置であって、蓄電池の充放電テストを行なう装置に関するものである。このような試験設備であれば、たとえば、充放電テストを実行するために電圧を測定する電圧センサに故障が生じた場合、装置を停止して修理すればよい。
【0007】
しかし、車両の場合には、センサ故障が生じても、走行が可能であれば故障の修理可能な場所まで車両が自力で走行できる方が好ましい。また、そのような退避走行中であっても、たとえば、追い越し等をしなければならない場合もあるので、蓄電池の電圧を昇圧して高性能で走行できる方が好ましい。したがって、車両の電源装置であれば、センサ故障が生じても可能な限りシステムを起動させ、性能を維持する必要がある。
【0008】
この発明の目的は、センサ故障発生時であっても可能な限り走行性能を維持した状態で退避走行をすることが可能な車両の電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、要約すると、車両の電源装置であって、第1の蓄電装置と、モータを駆動するインバータに給電を行なう電源ラインと、第1の蓄電装置と電源ラインとの間に設けられ、電圧変換を行なう第1の電圧コンバータと、第2の蓄電装置と、第2の蓄電装置と電源ラインとの間に設けられ、電圧変換を行なう第2の電圧コンバータと、第2の蓄電装置と第2の電圧コンバータとの間に設けられ、電気的な接続状態の切換えを行なう接続部と、電源ラインの電圧を検出する第1の電圧センサと、第2の電圧コンバータの接続部側端子の電圧を検出する第2の電圧センサと、第1、第2の電圧コンバータおよび接続部の制御を行なう制御装置とを備える。制御装置は、第1の電圧センサの出力が使用不可となる故障を検出した場合には、接続部を非接続状態とし、かつ第2の電圧コンバータを電圧非変換状態に制御して第2の電圧コンバータの接続部側端子に電源ラインの電圧を出力させ、第1の電圧センサの出力に代えて第2の電圧センサの出力に基づいて電源ラインの電圧制御を行なう。
【0010】
好ましくは、電源ラインは、正極母線と、負極母線とを含む。車両の電源装置は、正極母線と負極母線との間に接続される平滑コンデンサをさらに含む。制御装置は、電源ラインの電圧制御の一つとして、平滑コンデンサに対するプリチャージ制御を行なう。
【0011】
より好ましくは、車両の電源装置は、第1の蓄電装置と第1の電圧コンバータとの間に設けられ、電気的な接続状態を第1の接続状態、第1の接続状態よりも抵抗の高い第2の接続状態および非接続状態の間で切換えを行なうマスター接続部をさらに備える。制御装置は、プリチャージ制御において、車両起動指示に応じてマスター接続部を遮断状態から第2の接続状態に切換えて平滑コンデンサに対するプリチャージを開始させ、その後、第2の電圧センサの出力に基づいてマスター接続部を第2の接続状態から第1の接続状態に切換える。
【0012】
好ましくは、制御装置は、電源ラインの電圧制御の一つとして、第1の電圧コンバータに対する電圧制御を行なう。
【0013】
より好ましくは、制御装置は、第1の電圧センサの出力が使用可能である場合には、第1の電圧センサの出力に基づいて第1の電圧コンバータを電圧制御するとともに、接続部を接続状態とし第2の電圧コンバータを通過する電流が目標電流となるように第2の電圧コンバータを電流制御する。
【0014】
好ましくは、第1の電圧センサと、第2の電圧センサとは、測定可能入力電圧範囲が等しい。
【0015】
より好ましくは、車両の電源装置は、第1の蓄電装置と第1の電圧コンバータとの間に設けられ、電気的な接続状態の切換えを行なうマスター接続部と、第1の電圧コンバータのマスター接続部側端子の電圧を検出する第3の電圧センサとをさらに備える。第1、第2の電圧センサの測定可能な上限電圧は、第3の電圧センサの測定可能な上限電圧よりも高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センサ故障発生時であっても可能な限り走行性能を維持した状態で退避走行をすることが可能となる。
【0017】
また、一旦電源システムを停止させた後にも起動させることが可能となり、退避走行を中断した後にも再開させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付してそれらについての説明は繰返さない。
【0019】
[車両の全体構成]
図1は、蓄電装置として2つのバッテリを搭載する車両100の構成を示す回路図である。
【0020】
図1を参照して、車両100は、マスター電源部と、スレーブ電源部と、マスター電源部およびスレーブ電源部からの電圧を平滑化させる平滑用コンデンサCHと、平滑用コンデンサCHの端子関の電圧を検出する電圧センサ13と、インバータ14,22と、エンジン4と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構3と、車輪2と、制御装置30とを含む。
【0021】
マスター電源部は、蓄電用のバッテリBMと、バッテリBMの切り離しおよび接続を行なう接続部40Mと、接続部40Mを介してバッテリBMに接続される電圧コンバータ12Mおよび平滑用コンデンサCLMと、平滑用コンデンサCLMの端子関電圧を検出する電圧センサ21Mと、バッテリBMの端子間の電圧VBMを測定する電圧センサ10Mと、バッテリBMに流れる電流IBMを検知する電流センサ11Mとを含む。バッテリBMとしては、たとえば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池を用いることができる。
【0022】
スレーブ電源部は、蓄電用のバッテリBSと、バッテリBSの切り離しおよび接続を行なう接続部40Sと、接続部40Sを介してバッテリBSに接続される電圧コンバータ12Sおよび平滑用コンデンサCLSと、平滑用コンデンサCLSの端子関電圧を検出する電圧センサ21Sと、バッテリBSの端子間の電圧VBSを測定する電圧センサ10Sと、バッテリBSに流れる電流IBSを検知する電流センサ11Sとを含む。バッテリBSとしては、たとえば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池を用いることができる。電圧コンバータ12Sを設けているので、バッテリBSは、電圧や容量等の特性がバッテリBMとは異なるバッテリを使用することもできる。
【0023】
平滑用コンデンサCLMは、正極母線PL1Mと負極母線SL間に接続される。電圧センサ21Mは、平滑用コンデンサCLMの両端間の電圧VLMを検知して制御装置30に対して出力する。電圧コンバータ12Mは、平滑用コンデンサCLMの端子間電圧を昇圧する。
【0024】
平滑用コンデンサCLSは、正極母線PL1Sと負極母線SL間に接続される。電圧センサ21Sは、平滑用コンデンサCLSの両端間の電圧VLSを検知して制御装置30に対して出力する。電圧コンバータ12Sは、平滑用コンデンサCLSの端子間電圧を昇圧する。
【0025】
平滑用コンデンサCHは、電圧コンバータ12M,12Sによって昇圧された電圧を平滑化する。電圧センサ13は、平滑用コンデンサCHの端子間電圧VHを検知して制御装置30に出力する。
【0026】
インバータ14は、電圧コンバータ12Sまたは12Mから与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータジェネレータMG1に出力する。インバータ22は、電圧コンバータ12Sまたは12Mから与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータジェネレータMG2に出力する。
【0027】
動力分割機構3は、エンジン4とモータジェネレータMG1,MG2に結合されてこれらの間で動力を分配する機構である。たとえば動力分割機構としてはサンギヤ、プラネタリキャリヤ、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。この3つの回転軸がエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2の各回転軸にそれぞれ接続され、3つの回転軸のうち2つの回転が決定されると他の1軸の回転は強制的に定まる。なおモータジェネレータMG2の回転軸は、図示しない減速ギヤや差動ギヤによって車輪2に結合されている。また動力分割機構3の内部にモータジェネレータMG2の回転軸に対する減速機をさらに組み込んでもよい。
【0028】
接続部40Mは正極母線PL1Mと負極母線SLに接続されている。接続部40Mは、バッテリBMの負極と負極母線SLとの間に接続されるシステムメインリレーSMR3Mと、バッテリBMの正極と正極母線PL1Mとの間に接続されるシステムメインリレーSMR2Mと、システムメインリレーSMR2Mと並列接続される直列に接続されたシステムメインリレーSMR1Mおよび限流抵抗RMとを含む。システムメインリレーSMR1M〜SMR3Mは、制御装置30から与えられる制御信号CONTに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0029】
接続部40Sは正極母線PL1Sと負極母線SLに接続されている。接続部40Sは、バッテリBSの負極と負極母線SLとの間に接続されるシステムメインリレーSMR3Sと、バッテリBSの正極と正極母線PL1Sとの間に接続されるシステムメインリレーSMR2Sと、システムメインリレーSMR2Sと並列接続される直列に接続されたシステムメインリレーSMR1Sおよび限流抵抗RSとを含む。システムメインリレーSMR1S〜SMR3Sは、制御装置30から与えられる制御信号CONTに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0030】
電圧コンバータ12Mは、一方端が正極母線PL1Mに接続されるリアクトルL1Mと、正極母線PL2と負極母線SLとの間に直列に接続されるIGBT素子Q1M,Q2Mと、IGBT素子Q1M,Q2Mにそれぞれ並列に接続されるダイオードD1M,D2Mとを含む。
【0031】
リアクトルL1Mの他方端はIGBT素子Q1MのエミッタおよびIGBT素子Q2Mのコレクタに接続される。ダイオードD1MのカソードはIGBT素子Q1Mのコレクタと接続され、ダイオードD1MのアノードはIGBT素子Q1Mのエミッタと接続される。ダイオードD2MのカソードはIGBT素子Q2Mのコレクタと接続され、ダイオードD2MのアノードはIGBT素子Q2Mのエミッタと接続される。
【0032】
電圧コンバータ12Sは、一方端が正極母線PL1Sに接続されるリアクトルL1Sと、正極母線PL2と負極母線SLとの間に直列に接続されるIGBT素子Q1S,Q2Sと、IGBT素子Q1S,Q2Sにそれぞれ並列に接続されるダイオードD1S,D2Sとを含む。
【0033】
リアクトルL1Sの他方端はIGBT素子Q1SのエミッタおよびIGBT素子Q2Sのコレクタに接続される。ダイオードD1SのカソードはIGBT素子Q1Sのコレクタと接続され、ダイオードD1SのアノードはIGBT素子Q1Sのエミッタと接続される。ダイオードD2SのカソードはIGBT素子Q2Sのコレクタと接続され、ダイオードD2SのアノードはIGBT素子Q2Sのエミッタと接続される。
【0034】
インバータ14は、電圧コンバータ12Mおよび12Sから昇圧された電圧を受けて、たとえばエンジン4を始動させるために、モータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ14は、エンジン4から伝達される機械的動力によってモータジェネレータMG1で発電された電力を電圧コンバータ12Mおよび12Sに戻す。このとき電圧コンバータ12Mおよび12Sは、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0035】
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含む。U相アーム15,V相アーム16,およびW相アーム17は、正極母線PL2と負極母線SLとの間に並列に接続される。
【0036】
U相アーム15は、正極母線PL2と負極母線SLとの間に直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続される。
【0037】
V相アーム16は、正極母線PL2と負極母線SLとの間に直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはIGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはIGBT素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはIGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはIGBT素子Q6のエミッタと接続される。
【0038】
W相アーム17は、正極母線PL2と負極母線SLとの間に直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはIGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはIGBT素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはIGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはIGBT素子Q8のエミッタと接続される。
【0039】
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG1の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG1は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中点に共に接続されている。そして、U相コイルの他方端がIGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がIGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がIGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
【0040】
電流センサ24は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置30へ出力する。
【0041】
インバータ22は、正極母線PL2と負極母線SLに接続されている。インバータ22は車輪2を駆動するモータジェネレータMG2に対して電圧コンバータ12Mおよび12Sの出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ22は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を電圧コンバータ12Mおよび12Sに戻す。このとき電圧コンバータ12Mおよび12Sは、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。インバータ22の内部の構成は、図示しないがインバータ14と同様であり、詳細な説明は繰返さない。
【0042】
電流センサ25は、モータジェネレータMG2に流れる電流をモータ電流値MCRT2として検出し、モータ電流値MCRT2を制御装置30へ出力する。
【0043】
制御装置30は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VBM,VBS,VH、電流IBM,IBSの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。そして制御装置30は、電圧コンバータ12Mに対して昇圧指示と降圧指示とを行なう制御信号M−CPWMおよび動作禁止を指示する信号M−CSDNを出力する。また制御装置30は、電圧コンバータ12Sに対して昇圧指示と降圧指示とを行なう制御信号S−CPWMおよび動作禁止を指示する信号S−CSDNを出力する。
【0044】
さらに、制御装置30は、インバータ14に対して電圧コンバータ12M,12Sの出力である直流電圧を、モータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して電圧コンバータ12M,12S側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0045】
同様に制御装置30は、インバータ22に対してモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に直流電圧を変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して電圧コンバータ12M,12S側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。
【0046】
車両100は、正極母線PL1Mと負極母線SLとに接続されるエアコン56と、補機用DC−DCコンバータ52と、補機用DC−DCコンバータによって充電される補機バッテリ54とをさらに含む。
【0047】
制御装置30やその他の補機には、補機バッテリ54から電源が供給される。
[実施の形態1]
図1に示した車両では、コンデンサCHは、車両起動時には放電されている場合が多い。このような状態でシステムメインリレーを導通されると過大な突入電流が流れてリレーの溶着が発生したり、電力素子が破壊されたりする恐れがある。このため、コンデンサCHに対する充電当初は、システムメインリレーを抵抗が高い接続状態にして電流制限を行ない、充電がある程度完了したらシステムメインリレーを抵抗が低い状態に接続し直す。このような充電をプリチャージと呼ぶ。
【0048】
しかし、電圧センサ13で検出される電圧VHが使用不可である場合には、コンデンサへの充電の完了判定ができないので、システムメインリレーの切換えが行なえず、システムを起動することができない。このため、本実施の形態では、電圧センサ13の出力値が使用できないばあいでも、他の電圧センサ21Sの検出値を用いてプリチャージを行なわせる。
【0049】
図2は、実施の形態1で実行される車両の電源装置の制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、車両の走行制御のメインルーチンから一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとに呼び出されて実行される。
【0050】
図1、図2を参照して、まず、ステップS1で運転者がキーやボタンを操作することによりシステム起動信号IGONによる起動指示が与えられたか否かが判断される。起動指示が与えられていなければステップS15に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。一方ステップS1において起動指示が与えられたことが検出された場合には、その後ステップS2において、電圧VHを検出する電圧センサ13の故障の有無が判断される。
【0051】
ここで電圧センサ13の故障とは、制御装置30側でセンサの検出電圧VHが使用できないと判断されることを意味する。
【0052】
たとえば、制御装置30が、モータジェネレータ用ECU(Electric Control Unit)とハイブリッドシステム用ECUといったように複数のECUで実現される場合には、ECU間の通信異常やセンサ値を受けるECUの故障などもステップS2でVH故障として検出される。
【0053】
さらに、電圧センサ13に繋がれる図示しないセンサ用の電源系の異常や、電圧センサ13自体の結線異常(接地や電源への短絡)等もステップS2でVH故障として検出される。
【0054】
ステップS2でVH故障と判断されない場合(ステップS2でNO)には、ステップS3に処理が進む。ステップS3では電圧センサ13で検出された電圧VHを電圧コンバータ12Mの電圧制御を行なうためのVH変数に代入される。このVH変数は、コンデンサCHのプリチャージ判定にも使用される。
【0055】
そしてステップS4では、システムメインリレーSMR1M,SMR3M,SMR1S,SMR3Sの状態がオフ状態からオン状態に変更される。するとコンデンサCLM,CLSとコンデンサCHに充電(プリチャージ)が行なわれ、電圧VHが上昇する。この上昇を電圧センサ13の出力によって制御装置30が監視し、ステップS5でプリチャージが完了したか否かが判断される。電圧VHがしきい値VH1に到達したらステップS5においてプリチャージが完了したと判断されステップS6に処理が進む。
【0056】
ステップS6では、システムメインリレーSMR2M,SMR2Sがオフ状態からオン状態に設定され、つづいてステップS7でシステムメインリレーSMR1M,SMR1Sがオン状態からオフ状態に設定が変更される。
【0057】
ステップS2でVH故障と判断された場合(ステップS2でYES)には、ステップS3〜S7の処理の代わりにステップS8〜S13の処理が実行される。
【0058】
ステップS8では、スレーブ側の電圧コンバータ12Sが上アームON状態に設定される。上アームON状態は、IGBT素子Q1Sがオン状態に固定され、IGBT素子Q2Sがオフ状態に固定された状態である。電圧コンバータ12Sが上アームON状態に設定されると、正極母線PL2の電圧と正極母線PL1Sの電圧とが等しくなる。
【0059】
起動信号IGONによる起動指示が与えられた直後は、接続部40M,40Sは、いずれもオフ状態となっており、バッテリBSの電圧は、正極母線PL1Sに与えられていない。したがって、接続部40Sをオフ状態としたまま接続部40Mをオン状態とすれば、正極母線PL2の電圧が電圧センサ21Sで検出している電圧VLSと等しくなる。したがって電圧VLSをコンデンサCHのプリチャージ判定や電圧コンバータ12Mの電圧制御に使用することが可能となる。
【0060】
そこで、ステップS8で電圧コンバータ12Sの状態を上アームON状態に固定した後に、ステップS9において、電圧センサ21Sの検出する電圧VLSが電圧コンバータ12Mの電圧制御を行なうためのVH変数に代入される。このVH変数は、コンデンサCHのプリチャージ判定にも使用される。
【0061】
そしてステップS10では、システムメインリレーSMR1M,SMR3Mの状態がオフ状態からオン状態に変更される。するとコンデンサCLMとコンデンサCHに充電(プリチャージ)が行なわれ、電圧VLSが上昇する。この上昇を電圧センサ21Sの出力によって制御装置30が監視し、ステップS11でプリチャージが完了したか否かが判断される。電圧VLSがしきい値VH1に到達したらステップS11においてプリチャージが完了したと判断されステップS12に処理が進む。
【0062】
ステップS12では、システムメインリレーSMR2Mの状態がオフ状態からオン状態に変更され、つづいてステップS13でシステムメインリレーSMR1Mの状態がオン状態からオフ状態に変更される。
【0063】
なお、このとき、システムメインリレーSMR1S,SMR2S,SMR3Sの状態は、いずれもオフ状態である。
【0064】
ステップS7またはステップS13の処理が終了すると、システム起動完了しステップS14においてReadyON状態(車両として走行可能な状態)となり、その後ステップS15において、制御は走行制御のメインルーチンに移される。
【0065】
図3は、VH正常時すなわち図2のステップS3〜S7の処理を経てシステム起動が完了した場合を示した動作波形図である。
【0066】
図2、図3を参照して、時刻t1で起動信号IGONによる起動指示が入力されると、時刻t1〜t3の間に車両の電源装置の自己診断が実行される。この間の時刻t2においてVH正常と診断されると(ステップS2でNO)、電圧センサ13の出力から得られた電圧値がVH変数に代入され、プリチャージ判定に使用される。
【0067】
そして、時刻t3において、システムメインリレーSMR1M,SMR3M,SMR1S,SMR3Sの状態がオフ状態からオン状態に変更される。するとコンデンサCLM,CLSとコンデンサCHに充電(プリチャージ)が行なわれ、電圧VHが上昇する。時刻t3〜t4において、電圧センサ13の出力に基づいて電圧VHの上昇を制御装置30が監視している。
【0068】
時刻t4では、電圧VHがしきい値VH1に到達し、プリチャージが完了したと判断され(ステップS5でYES)、時刻t5において、システムメインリレーSMR2M,SMR2Sがオフ状態からオン状態に設定され、つづいて時刻t6においてシステムメインリレーSMR1M,SMR1Sがオン状態からオフ状態に設定が変更され、システム起動が完了しReadyON状態となる。
【0069】
ReadyON状態となった時刻t6以降は、シャットダウン信号M−CSDN,S−CSDNによってIGBTのオンオフスイッチングが禁止されていたのが解除され、電圧コンバータ12M,12Sの昇圧が許可される。
【0070】
図4は、VH異常時すなわち図2のステップS8〜S13の処理を経てシステム起動が完了した場合を示した動作波形図である。
【0071】
図2、図4を参照して、時刻t1で起動信号IGONによる起動指示が入力されると、時刻t1〜t3の間に車両の電源装置の自己診断が実行される。この間の時刻t2においてVH故障と診断されると(ステップS2でYES)、スレーブ側の電圧コンバータ12Sの状態は、シャットダウン状態が解除され、上アームON固定状態に設定される。そして、電圧センサ13の出力に代えて電圧センサ21Sから得られた電圧値VLSがVH変数に代入され、プリチャージ判定に使用される。
【0072】
そして、時刻t3において、システムメインリレーSMR1M,SMR3Mの状態がオフ状態からオン状態に変更される。するとコンデンサCLMとコンデンサCHに充電(プリチャージ)が行なわれ、電圧VLSが上昇する。時刻t3〜t4において電圧VLSの上昇を電圧センサ21Sの出力を確認することによって制御装置30が監視している。
【0073】
時刻t4では、電圧VLSがしきい値VH1に到達し、プリチャージが完了したと判断され(ステップS11でYES)、時刻t5において、システムメインリレーSMR2Mの状態がオフ状態からオン状態に変更され、つづいて時刻t6においてシステムメインリレーSMR1Mの状態がオン状態からオフ状態に変更され、システム起動が完了しReadyON状態となる。
【0074】
ReadyON状態となった時刻t6以降は、シャットダウン信号M−CSDNによってIGBTのオンオフスイッチングが禁止されていたのが解除され、電圧コンバータ12Mの昇圧が許可される。なお、スレーブ側については、システムメインリレーSMR1S,SMR2S,SMR3Sはオフ状態であり、電圧コンバータ12Sは上アームON状態に固定されたまま、マスター側のバッテリBM、電圧コンバータ12Mのみによってインバータ14,22に対する電源電圧の供給が行われる。
【0075】
このように、実施の形態1によれば、車両起動時にVH故障が検出された場合に、電圧コンバータ12Mの機能を停止させずにすみ、車両の走行性能を可能な限り維持しながら、故障を修理する場所まで自力で車両を移動させることが可能である。
【0076】
また、一旦電源システムを停止させた後にも起動させることが可能となり、退避走行を中断した後にも再開させることができる。
【0077】
[実施の形態2]
実施の形態1では、車両起動時の自己診断時に電圧センサ異常が検出された場合のプリチャージ制御やその後の昇圧制御について説明した。加えて電圧センサ異常は車両起動完了後(ReadyON状態)において検出される場合も考えられる。
【0078】
ReadyON状態となった後には、図1に示した車両では、モータの回転数やアクセルペダル位置等に基づいて決定される要求駆動力に応じて電圧VHを制御する。このために、制御装置30は、電圧センサ13で検出されるVHに基づいて電圧コンバータ12Mの制御を行なう。また、スレーブ側の電源部をマスター側と併用するときは、リアクトルL1Sに流れる電流を検出して電圧コンバータ12Sを電流制御し、電圧VHを検出してマスター側の電圧コンバータ12Mで電圧制御を行なう。
【0079】
このように電圧センサ13で検出される電圧VHは、電圧コンバータの目標電圧と実際の出力電圧とを一致させるフィードバック制御を実行するために重要である。しかし、この電圧センサ13で検出される値が使用できないと判断される場合がある。この場合には、電圧コンバータ12Mを上アームON状態(IGBT素子Q1Mを導通させ、IGBT素子Q2Mを非導通とした状態)に制御し、バッテリBMの電圧をそのまま正極母線PL2に出力させればよい。そして、バッテリBSは、接続部40Sによってシステムから切り離しておけばよい。このようにすることで、とりあえずの退避走行は可能である。
【0080】
しかし、電圧VHを昇圧しないでバッテリBMの電圧そのままとすると、モータジェネレータMG2の回転が高速になって逆起電力が上昇すると制御が困難になるので、高速走行ができなくなり走行性能が落ちる。このため、本実施の形態では、電圧センサ13の出力値が使用できないばあいでも、他の電圧センサ21Sの検出値を用いて電圧コンバータ12Mに昇圧を行なわせる。
【0081】
図5は、実施の形態2で実行される故障検出時の処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、車両の走行制御のメインルーチンから一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとに呼び出されて実行される。
【0082】
図1、図5を参照して、まず、ステップS51において、車両の状態が、車両起動が完了している状態(ReadyON状態)か否かが確認される。ここでのReadyON状態は、システムが正常状態で、マスター側のシステムメインリレーSMR2M,SMR3Mおよびスレーブ側のシステムメインリレーSMR2S,SMR3Sが接続されており、車両として走行可能状態であることを示す。
【0083】
ステップS51において、ReadyON状態でないと判断された場合には、ステップS57に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。一方、ステップS51において、ReadyON状態であると判断された場合には、ステップS52に処理が進む。
【0084】
ステップS52では、実施の形態1のステップS2で実行される故障検出と同じ内容が実行され、加えてさらに、電圧センサ13の機能異常がチェックされる。機能異常には、たとえばオフセット異常、特性異常、高圧電源線異常が含まれる。
【0085】
オフセット異常は、電圧センサ13が電圧VHを正しく変換しない異常である。この場合、一旦電圧コンバータで電圧VHを昇圧後、昇圧機能を停止させ平滑用コンデンサをディスチャージする操作を行なっても電圧センサ13で検出している電圧VHが低下しないといった現象により異常検出可能である。特性異常は、電圧センサ13の断線やゲインずれの異常である。高圧電源線異常は、電圧センサ13のゼロ固着等であり、コンデンサCHをプリチャージしても電圧が上昇しない。
【0086】
ステップS52において、VH故障が検出されない場合には、ステップS57に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。一方、ステップS52において、VH故障が検出された場合には、ステップS53に処理が進む。
【0087】
ステップS53では、マスター側電圧コンバータ12Mとスレーブ側の電圧コンバータ12Sとにそれぞれ信号M−CSDN,S−CSDNによってゲート遮断指示が与えられる。また、モータ(モータジェネレータMG2)用インバータ22および発電機(モータジェネレータMG1)用インバータ14のIGBT素子もゲート遮断状態に制御される。そして、ステップS54においてスレーブ電圧コンバータ12S側のシステムメインリレーSMR2S、SMR3Sの状態がON状態からOFF状態に変更される。
【0088】
そしてステップS55において、マスター側電圧コンバータ12Mは信号M−CSDNによってゲート遮断指示が解除され昇圧が許可されるとともに、スレーブ側電圧コンバータ12Sは信号S−CSDNによってゲート遮断指示が解除されるとともに上アームON状態に制御される。また、モータ(モータジェネレータMG2)用インバータ22および発電機(モータジェネレータMG1)用インバータ14のIGBT素子もゲート許可状態に制御される。
【0089】
この状態では、電圧センサ21Sの検出する電圧値VLSは、電圧センサ13が検出するはずであった電圧VHとほぼ等しいので、ステップS56において、電圧値VLSがVH変数に代入される。これにより、電圧コンバータ12Mは出力側の電圧をフィードバック制御することが可能となるので、昇圧動作を再開させることができる。その後ステップS57において、制御は走行制御のメインルーチンに移される。
【0090】
ここで、電圧センサ21Sを電圧センサ13の代わりに使用する場合に注意すべき点について説明する。
【0091】
図6は、低圧系の電圧センサの出力特性を示した図である。
図7は、高圧系の電圧センサの出力特性を示した図である。
【0092】
図6、図7に示した電圧センサの出力電圧は、ECUの内部でアナログデジタル変換される。たとえば、CPUに内蔵されたA/Dコンバータでこの変換がおこなわれる。A/Dコンバータの入力レンジは、0〜5V程度である。この入力レンジを10ビット以上の分解能でA/D変換が実行され、CPUで電圧値が認識される。
【0093】
図6に示すように、低圧系センサつまり電圧コンバータで昇圧される前の電圧を検出するセンサは、バッテリ電圧の範囲に多少の余裕をみた入力電圧範囲が0〜330V程度でよい。したがって、電圧VLMを検出する電圧センサ21Mと、電圧VLSを検出する電圧センサ21Sは、正常動作を実行する限りは、図6のような特性でよい。
【0094】
そして、昇圧された電圧VHを検出する電圧センサ13は、入力電圧が0〜800Vの範囲を検出可能にしておく必要がある。
【0095】
しかし、実施の形態2においては、電圧センサ21Sは電圧センサ13が故障した場合に、電圧コンバータ12Mで昇圧された電圧を検出する必要がある。したがって、実施の形態2においては、少なくとも電圧センサ21Sは電圧センサ13と同じ図7に示す特性を有する必要がある。そして、その出力をうけるA/Dコンバータで変換されたデジタル値を検出電圧に変換する際も、図7に基づいて電圧に変更する必要がある。
【0096】
なお、電圧センサ21Mについては、図6の特性のままでもよいが、図7の特性のものを使用してもよい。
【0097】
図8は、実施の形態1または2のReadyON状態となった後のVH正常時の電圧コンバータの制御について説明するための図である。
【0098】
図8を参照して、VH正常時では、負荷の使用する電流に合わせてその全部または一部である目標電流I*を供給するようにスレーブ側電圧コンバータ12Sでは電流制御が実行される。このとき接続部40Sは接続状態とされバッテリBSから電流I*に対応する電力が供給されるように制御が行われる。
【0099】
そして、負荷に与えられる電圧が変動しないように、電圧VHが検出されこれが目標電圧VH*に一致するようにマスター側電圧コンバータ12Mでは電圧制御が実行される。
【0100】
図9は、実施の形態1または2のReadyON状態となった後のVH故障時の電圧コンバータの制御について説明するための図である。
【0101】
図9を参照して、VH故障時では、スレーブ側電圧コンバータ12Sは上アームON状態に制御され、接続部40Sはオフ状態に設定されるので、電圧VLSが電圧VHと等しくなる。そこで電圧VLSを目標電圧VH*に一致させるようにマスター側電圧コンバータ12Mでは電圧制御が実行される。
【0102】
このようにすることにより、負荷に高電圧を供給することができるので車両の走行性能を低下させずに済む。
【0103】
最後に、以上説明した実施の形態1,2について、図1等を参照しながら総括的に説明する。本願実施の形態の車両の電源装置は、第1の蓄電装置(バッテリBM)と、モータを駆動するインバータ14,22に給電を行なう電源ライン(正極母線PL2)と、第1の蓄電装置と電源ラインとの間に設けられ、電圧変換を行なう第1の電圧コンバータ12Mと、第2の蓄電装置(バッテリBS)と、第2の蓄電装置と電源ラインとの間に設けられ、電圧変換を行なう第2の電圧コンバータ12Sと、第2の蓄電装置と第2の電圧コンバータとの間に設けられ、電気的な接続状態の切換えを行なう接続部40Sと、電源ラインの電圧を検出する第1の電圧センサ13と、第2の電圧コンバータ12Sの接続部側端子の電圧を検出する第2の電圧センサ21Sと、第1、第2の電圧コンバータおよび接続部の制御を行なう制御装置30とを備える。制御装置30は、第1の電圧センサ13の出力が使用不可となる故障を検出した場合には、接続部40Sを非接続状態とし、かつ第2の電圧コンバータ12Sを電圧非変換状態に制御して第2の電圧コンバータ12Sの接続部40S側端子に電源ライン(正極母線PL2)の電圧を出力させ、第1の電圧センサ13の出力に代えて第2の電圧センサ21Sの出力に基づいて電源ラインの電圧制御を行なう。
【0104】
好ましくは、電源ラインは、正極母線PL2と、負極母線SLとを含む。車両の電源装置は、正極母線PL2と負極母線SLとの間に接続される平滑コンデンサCHをさらに含む。制御装置30は、電源ラインの電圧制御の一つとして、平滑コンデンサCHに対するプリチャージ制御を行なう。
【0105】
より好ましくは、車両の電源装置は、第1の蓄電装置(バッテリBM)と第1の電圧コンバータ12Mとの間に設けられ、電気的な接続状態を第1の接続状態(SMR2Mで接続)、第1の接続状態よりも抵抗の高い第2の接続状態(SMR1Mで接続)および非接続状態の間で切換えを行なうマスター接続部40Mをさらに備える。制御装置30は、プリチャージ制御において、車両起動指示に応じてマスター接続部40Mを遮断状態から第2の接続状態に切換えて平滑コンデンサCHに対するプリチャージを開始させ、その後、第2の電圧センサ21Sの出力に基づいてマスター接続部40Mを第2の接続状態から第1の接続状態に切換える。
【0106】
好ましくは、制御装置30は、電源ラインの電圧制御の一つとして、第1の電圧コンバータ12Mに対する電圧制御を行なう。
【0107】
より好ましくは、制御装置30は、第1の電圧センサ13の出力が使用可能である場合には、第1の電圧センサ13の出力に基づいて第1の電圧コンバータ12Mを電圧制御するとともに、接続部40Sを接続状態とし第2の電圧コンバータ12Sを通過する電流が目標電流となるように第2の電圧コンバータ12Sを電流制御する。
【0108】
好ましくは、第1の電圧センサ13と、第2の電圧センサ21Sとは、測定可能入力電圧範囲が等しい。
【0109】
より好ましくは、車両の電源装置は、第1の蓄電装置(バッテリBM)と第1の電圧コンバータ12Mとの間に設けられ、電気的な接続状態の切換えを行なうマスター接続部40Mと、第1の電圧コンバータ12Mのマスター接続部側端子の電圧を検出する第3の電圧センサ21Mとをさらに備える。第1、第2の電圧センサ13,21Sの測定可能な上限電圧は、第3の電圧センサ21Mの測定可能な上限電圧よりも高い。
【0110】
このような構成および制御とすることで、インバータに高電圧を供給することができるので車両の走行性能を低下させずに済む。また車両の電源システムを停止させた後にも、退避走行を再開させることが可能となる。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】蓄電装置として2つのバッテリを搭載する車両100の構成を示す回路図である。
【図2】実施の形態1で実行される車両の電源装置の制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】VH正常時すなわち図2のステップS3〜S7の処理を経てシステム起動が完了した場合を示した動作波形図である。
【図4】VH異常時すなわち図2のステップS8〜S13の処理を経てシステム起動が完了した場合を示した動作波形図である。
【図5】実施の形態2で実行される故障検出時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】低圧系の電圧センサの出力特性を示した図である。
【図7】高圧系の電圧センサの出力特性を示した図である。
【図8】実施の形態1または2のReadyON状態となった後のVH正常時の電圧コンバータの制御について説明するための図である。
【図9】実施の形態1または2のReadyON状態となった後のVH故障時の電圧コンバータの制御について説明するための図である。
【符号の説明】
【0113】
2 車輪、3 動力分割機構、4 エンジン、10M,10S,13,21M,21S 電圧センサ、11M,11S,24,25 電流センサ、12M,12S 電圧コンバータ、14,22 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、30 制御装置、40M,40S 接続部、52 補機用DC/DCコンバータ、54 補機バッテリ、56 エアコン、100 車両、BM,BS バッテリ、CH,CLM,CLS 平滑用コンデンサ、D1M,D2M,D1S,D2S,D3〜D8 ダイオード、L1M,L1S リアクトル、MG1,MG2 モータジェネレータ、PL1M,PL1S,PL2 正極母線、Q1M,Q2M,Q1S,Q2S,Q3〜Q8 IGBT素子、RM,RS 限流抵抗、SL 負極母線、SMR1M,SMR2M,SMR3M,SMR1S,SMR2S,SMR3S システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の蓄電装置と、
モータを駆動するインバータに給電を行なう電源ラインと、
前記第1の蓄電装置と前記電源ラインとの間に設けられ、電圧変換を行なう第1の電圧コンバータと、
第2の蓄電装置と、
前記第2の蓄電装置と前記電源ラインとの間に設けられ、電圧変換を行なう第2の電圧コンバータと、
前記第2の蓄電装置と前記第2の電圧コンバータとの間に設けられ、電気的な接続状態の切換えを行なう接続部と、
前記電源ラインの電圧を検出する第1の電圧センサと、
前記第2の電圧コンバータの前記接続部側端子の電圧を検出する第2の電圧センサと、
前記第1、第2の電圧コンバータおよび前記接続部の制御を行なう制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1の電圧センサの出力が使用不可となる故障を検出した場合には、前記接続部を非接続状態とし、かつ前記第2の電圧コンバータを電圧非変換状態に制御して前記第2の電圧コンバータの前記接続部側端子に前記電源ラインの電圧を出力させ、前記第1の電圧センサの出力に代えて前記第2の電圧センサの出力に基づいて前記電源ラインの電圧制御を行なう、車両の電源装置。
【請求項2】
前記電源ラインは、
正極母線と、
負極母線とを含み、
車両の電源装置は、
前記正極母線と前記負極母線との間に接続される平滑コンデンサをさらに含み、
前記制御装置は、前記電源ラインの電圧制御の一つとして、前記平滑コンデンサに対するプリチャージ制御を行なう、請求項1に記載の車両の電源装置。
【請求項3】
前記第1の蓄電装置と前記第1の電圧コンバータとの間に設けられ、電気的な接続状態を第1の接続状態、前記第1の接続状態よりも抵抗の高い第2の接続状態および非接続状態の間で切換えを行なうマスター接続部をさらに備え、
前記制御装置は、前記プリチャージ制御において、車両起動指示に応じて前記マスター接続部を遮断状態から前記第2の接続状態に切換えて前記平滑コンデンサに対するプリチャージを開始させ、その後、前記第2の電圧センサの出力に基づいて前記マスター接続部を前記第2の接続状態から前記第1の接続状態に切換える、請求項2に記載の車両の電源装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記電源ラインの電圧制御の一つとして、前記第1の電圧コンバータに対する電圧制御を行なう、請求項1に記載の車両の電源装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1の電圧センサの出力が使用可能である場合には、前記第1の電圧センサの出力に基づいて前記第1の電圧コンバータを電圧制御するとともに、前記接続部を接続状態とし前記第2の電圧コンバータを通過する電流が目標電流となるように前記第2の電圧コンバータを電流制御する、請求項4に記載の車両の電源装置。
【請求項6】
前記第1の電圧センサと、前記第2の電圧センサとは、測定可能入力電圧範囲が等しい、請求項1に記載の車両の電源装置。
【請求項7】
前記第1の蓄電装置と前記第1の電圧コンバータとの間に設けられ、電気的な接続状態の切換えを行なうマスター接続部と、
前記第1の電圧コンバータの前記マスター接続部側端子の電圧を検出する第3の電圧センサとをさらに備え、
前記第1、第2の電圧センサの測定可能な上限電圧は、前記第3の電圧センサの測定可能な上限電圧よりも高い、請求項6に記載の車両の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−148139(P2009−148139A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325892(P2007−325892)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】