説明

車両制御装置及び演算記憶装置

【課題】例えば道路の状態を算出し、その状態の算出結果をその状態に対応する時点に関連付けて記憶し、その記憶された上記時点及び上記状態の算出結果に基づいて車両が制御される場合に、遅れ時間に起因して不正確な情報に基づいて車両が制御されることを抑制可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を記憶し、前記記憶された前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、前記状態の算出結果が得られた第1時点(A)よりも前記状態の算出に要した時間に対応する時点(D)だけ前の第2時点(B)に対応する前記状態として前記状態の算出結果を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び演算記憶装置に関し、特に、道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態に基づいて車両を制御する車両制御装置及びその制御に好適に適用可能な演算記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態に基づいて車両を制御する車両制御装置が知られている。ここで、運転者の情報には、運転指向(スポーツ走行指向か燃費指向かなど)が含まれる。道路の状態には、例えば、車両の走行する位置に関する走行環境パラメータが含まれ、その走行環境パラメータには、例えば、コーナー、交差点、T字路、一時停止、踏み切り、自動車専用道路等の料金所、信号、横断歩道、歩行者、自動車専用道路等の退出路や合流路、車線数の減少する地点、道路幅の狭くなる地点、道路勾配、路面抵抗(路面の粗さ)、見通しなどが含まれる。車両の制御には、サスペンションなどの車両各部の制御、変速制御、車両の駆動力の制御などが含まれる。駆動力の制御には、例えば、自動変速機のダウンシフト、自動ブレーキ、回生ブレーキ、電子制御スロットル閉じ制御、自動変速機のアップシフトを遅らせる制御、排気ブレーキなどが含まれる。以下では、走行環境パラメータに基づいて、車両の駆動力が制御される例について説明する。
【0003】
車両が走行した地点の走行環境パラメータがその地点を走行した時の車両情報等に基づいて算出(推定を含む)されることがある。例えば、車両が走行した地点の車両の加速度等の情報に基づいて、その地点の道路勾配が算出される。その算出された走行環境パラメータ(例えば道路勾配)の情報は、車両の位置情報に関連付けて記憶されることがある。その記憶された走行環境パラメータの情報は、次回その地点を走行したときの車両制御に用いることが提案されている。
【0004】
上記のように車両情報等に基づいて走行環境パラメータが算出される場合に、算出遅れを生ずる場合がある。即ち、車両情報等が得られてからその車両情報等に基づく演算が行われ走行環境パラメータの算出結果が得られるまでには所定の時間を要する場合がある。算出遅れが生じた場合には、走行環境パラメータを算出できた地点と、実際の走行環境パラメータの位置との間にずれが生じてしまうことになる。
【0005】
特開平7−117524号公報(特許文献1)には、区間ごとの勾配を記憶しておき、ある区間の終わりに近づいたときに現在の区間の勾配率と次の区間の勾配率とを考慮してエンジン出力を制御する点が開示されている。この特許文献1の技術によれば、記憶されている勾配が走行により算出されたものである場合、算出による遅れにより正確な位置での勾配情報を得ることができない。
【0006】
特開2000−35117号公報(特許文献2)には、勾配を算出(推定)する上で、精度を向上するため、データ処理の時定数を変更し、走行状況に応じて精度重視、リアルタイム重視と切り換え制御に適用する方法が提案されている。この特許文献2の技術によれば、リアルタイム性が必要な場合にはフィルター時定数を変更して算出しているが、算出による遅れを完全に取り除くことは難しい。
【0007】
上記特許文献1、2の技術では、算出遅れによる位置の誤差をもったまま勾配データが記憶されることから、その勾配データを用いて車両の制御(駆動力制御や変速制御など)が行われる場合に、実際の路面状況と異なる位置で駆動力変化又はダウンシフト等が生じ、運転者に違和感を与えることとなる。
【0008】
【特許文献1】特開平7−117524号公報
【特許文献2】特開2000−35117号公報
【特許文献3】特開平9−242853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば道路の状態を算出し、その状態の算出結果をその状態に対応する時点に関連付けて記憶し、その記憶された上記時点及び上記状態の算出結果に基づいて車両が制御される場合に、遅れ時間に起因して不正確な情報に基づいて車両が制御されることが抑制されることが望まれている。
【0010】
本発明の目的は、例えば道路の状態を算出し、その状態の算出結果をその状態に対応する時点に関連付けて記憶し、その記憶された上記時点及び上記状態の算出結果に基づいて車両が制御される場合に、遅れ時間に起因して不正確な情報が提供されることを抑制可能な演算記憶装置及び遅れ時間に起因して不正確な情報に基づいて車両が制御されることを抑制可能な車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両制御装置は、道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を記憶し、前記記憶された前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、前記状態の算出結果が得られた第1時点よりも前記状態の算出に要した時間に対応する時点だけ前の第2時点に対応する前記状態として前記状態の算出結果を記憶することを特徴としている。
【0012】
本発明の車両制御装置は、道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を前記状態に対応する時点に関連付けて記憶し、前記記憶された前記時点及び前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、前記記憶された前記状態の算出結果を利用しようとする第3時点よりも前記状態の算出に要した時間に対応する時点だけ先の第4時点に対応する前記状態として記憶された前記状態の算出結果を前記第3時点において利用することを特徴としている。
【0013】
本発明の車両制御装置において、前記状態の算出に要した時間に対応する時点は、前記車両の車速と前記状態の算出に要した時間とに基づいて求められることを特徴としている。
【0014】
本発明の車両制御装置は、道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を前記状態に対応する時点に関連付けて記憶し、前記記憶された前記時点及び前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、前記記憶された前記状態の算出結果を利用しようとする第5時点よりも前記記憶された前記状態の算出結果の読み出しに要した時間に対応する時点だけ前の第6時点において前記5時点に対応する前記状態として記憶された前記状態の算出結果の読み出しを開始することを特徴としている。
【0015】
本発明の車両制御装置において、前記状態の算出結果の読み出しに要した時間に対応する時点は、前記車両の車速と前記状態の算出結果の読み出しに要した時間とに基づいて求められることを特徴としている。
【0016】
本発明の演算記憶装置は、道路及び車両の運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を記憶する演算記憶装置であって、前記状態の算出結果が得られた第1時点よりも前記状態の算出に要した時間に対応する時点だけ前の第2時点に対応する前記状態として前記状態の算出結果を記憶することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両制御装置によれば、例えば道路の状態を算出し、その状態の算出結果をその状態に対応する時点に関連付けて記憶し、その記憶された上記時点及び上記状態の算出結果に基づいて車両が制御される場合に、遅れ時間に起因して不正確な情報に基づいて車両が制御されることを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の車両制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1から図3を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、道路の状態が算出され、その算出された道路の状態が位置情報と関連付けて記憶され、その記憶された道路の状態に基づいて車両が制御される車両制御装置に関する。
【0020】
上述したように、道路の状態には、例えば、車両の走行する位置に関する走行環境パラメータが含まれ、その走行環境パラメータには、例えば、コーナー、交差点、T字路、一時停止、踏み切り、自動車専用道路等の料金所、信号、横断歩道、歩行者、自動車専用道路等の退出路や合流路、車線数の減少する地点、道路幅の狭くなる地点、道路勾配、路面抵抗(路面の粗さ)、見通しなどが含まれる。車両の制御には、サスペンションなどの車両各部の制御、変速制御、車両の駆動力の制御などが含まれる。
【0021】
以下では、走行環境パラメータの一例を道路勾配とし、車両制御の一例を車両の駆動力の制御として説明する。
【0022】
車両が走行した地点の道路勾配がその地点を走行した時の車両の加速度等の情報に基づいて算出され、その算出された道路勾配の情報が、車両の位置情報に関連付けて記憶される。ここで、道路勾配が算出される場合に、算出遅れを生ずる場合がある。算出遅れの原因の一例としては、道路勾配が算出される際に、例えば、車両情報等に信号処理(フィルター処理など)が施されたり、過去のデータとの移動平均を求めるなまし処理が行われたりすることなどが挙げられる。算出遅れが生じた場合には、道路勾配の算出結果が得られた地点と、実際の道路勾配の位置(算出しようとする道路勾配の地点)との間にずれが生じてしまうことになる。
【0023】
まず、図7を参照して、算出された道路勾配が実際の位置とずれた位置に関連付けられて記憶される場合について説明する。
【0024】
図7において、符号100は、車両を示す。車両100は、図7において左側から右側に向けて走行している。車両100がB点(時刻Tb)を通過したときに検出された車両情報等に基づいて道路勾配が算出される場合に、算出結果が得られる時刻は、所定の時間が経過した後の時刻Taとなる。時刻Taにおいて、車両100はB点よりも距離Dだけ前方のA点へ到達している。このため、算出された道路勾配はA点における道路勾配として認識される。
【0025】
その結果、道路勾配が実際の位置(B点)とずれた位置(A点)に関連付けられて記憶されることとなる。例えば、B点の道路勾配が0%で、A点の道路勾配が10%である場合に、B点で道路勾配を算出し、A点位置でその算出結果を記憶したとすると、実際の道路勾配と異なったデータを記憶してしまうことになる。このように、車両情報等に基づいて道路勾配が算出され、その道路勾配の情報が位置情報と共に記憶される場合には、道路勾配の算出遅れ等を考慮する必要がある。
【0026】
本実施形態では、道路勾配の算出に要する時間(以下、算出遅れ時間とする、図1の符号Tf参照)が考慮される。算出遅れ時間Tfは、道路勾配の算出方法に基づいて予め定められた値である。計算による遅れ時間である算出遅れ時間Tfには、例えば、計算周期遅れ、又は、フィルターによる遅れ時間が含まれ、プログラムの設計段階で正確に求めることができる。図1において、道路勾配を算出したA点とそのA点での車速Vaを用いて、勾配算出遅れにより進んでしまった距離Dを算出し、B点位置を求める。この位置B点と算出した道路勾配を関連付けて保存することにより、正確に地図位置情報と、勾配情報とを保存することができる。
【0027】
算出された道路勾配は、道路勾配の算出結果が得られた時点Ta(A点)よりも、算出遅れ時間Tfの間の車両100の走行距離Dに相当する分だけ前の時点Tb(B点)の位置情報と関連付けられて記憶される。これにより、算出遅れ時間Tfに起因して、算出した道路勾配の実際の位置Bと、その算出された道路勾配の位置として、その算出された道路勾配と関連付けられて記憶される位置情報との間にずれが生じることが抑制される。
【0028】
図2は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。車両(図示せず)には、エンジン11が設けられている。エンジン11には、トルクコンバータ12を有する自動変速機13が連結されている。エンジン11の駆動力は、トルクコンバータ12を介して自動変速機13に入力され、デファレンシャルギヤ14及びドライブシャフト15を介して駆動輪16に伝達される。自動変速機13は、A/T油圧制御装置17により車両の運転状態に応じて変速比が自動的に制御される。ブレーキ装置18は、ブレーキ油圧制御装置19によって制御されて、車両を制動する。
【0029】
車両には、エンジン11や自動変速機13やブレーキ装置18などを制御する電子制御ユニット(ECU)20が設けられている。ECU20は、エンジン11、自動変速機13(A/T油圧制御装置17)及びブレーキ装置18(ブレーキ油圧制御装置19)の総合的な制御を行う。
【0030】
車両には、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ21が設けられている。アクセルポジションセンサ21により検出されたアクセル開度を示す信号は、ECU20に出力される。エンジン11の吸気管22には、スロットルコントロールバルブ23が設けられている。スロットルコントロールバルブ23は、スロットルアクチュエータ24により開閉可能とされている。ECU20は、スロットルアクチュエータ24にスロットルコントロールバルブ23を動作させる。ECU20は、スロットルコントロールバルブ23によるスロットル開度が、アクセル開度に応じたものとなるようにスロットルアクチュエータ24を制御する。
【0031】
吸気管22には、スロットルコントロールバルブ23をバイパスするバイパス通路25が設けられている。バイパス通路25には、エンジン11のアイドル回転数を制御するためにスロットルコントロールバルブ23の全閉時の吸気量を制御するアイドルスピードコントロールバルブ(ISCバルブ)26が設けられている。スロットルコントロールバルブ23の全閉状態(アイドル状態)及びスロットル開度を検出するアイドルスイッチ付スロットル開度センサ27が設けられている。アイドルスイッチ付スロットル開度センサ27によって検出されたアイドル状態及びスロットル開度のそれぞれを示す信号は、ECU20に出力される。
【0032】
エンジン11には、エンジン回転数(エンジン回転速度)を検出するエンジン回転数センサ28が設けられている。エンジン回転数センサ28により検出されたエンジン回転数を示す信号は、ECU20に出力される。車速センサ29は、車両の車速を検出する。車速センサ29により検出された車速を示す信号は、ECU20に出力される。
【0033】
シフトポジションセンサ30は、運転者が操作するシフトレバーの位置(シフトポジション)を検出する。シフトポジションセンサ30により検出されたシフトポジションを示す信号は、ECU20に出力される。車輪速度センサ31は、車輪の速度を検出する。その検出された車輪の速度を示す信号がECU20に出力される。
【0034】
ブレーキ操作量センサ32は、ブレーキ装置18の操作量を検出する。ブレーキ操作量センサ32により検出されたブレーキ装置18の操作量を示す信号は、ECU20に出力される。ステアリング舵角センサ33は、運転者により操作されるステアリングの舵角を検出する。ステアリング舵角センサ33により検出されたステアリングの舵角を示す信号は、ECU20に出力される。方向指示器スイッチ34は、運転者により操作され、方向指示器(図示せず)により指示される方向を特定するための操作が行われる。方向指示器により指示される方向を示す信号は、ECU20に出力される。
【0035】
運転モード設定スイッチ35は、運転者により操作され、運転モードを設定するための操作が行われる。運転者により、運転モード設定スイッチ35が操作されることで、スポーツ走行指向又は通常走行指向の運転モードが設定され、その設定された運転モードを示す信号がECU20に出力される。車両傾斜角センサ36は、車両の路面に対する傾斜角を検出する。その検出された車両の路面に対する傾斜角を示す信号がECU20に出力される。
【0036】
横Gセンサ37は、車両の横Gを検出し、前後Gセンサ38は、車両の前後Gを検出し、上下Gセンサ39は、車両の上下Gを検出する。横Gセンサ37により検出された横Gを示す信号、前後Gセンサ38により検出された前後Gを示す信号、及び上下Gセンサ39により検出された上下Gを示す信号のそれぞれは、ECU20に出力される。
【0037】
ヨーレートセンサ40は、車両のヨーレートを検出する。ヨーレートセンサ40により検出されたヨーレートを示す信号は、ECU20に出力される。出力軸回転数センサ41は、自動変速機13の出力軸の回転数を検出する。出力軸回転数センサ41により検出された出力軸の回転数を示す信号は、ECU20に出力される。
【0038】
ECU20は、変速マップを有しており、スロットル開度、車速などに基づいて、自動変速機13の変速段を決定し、この決定された変速段を成立させるようにA/T油圧制御装置17を制御することができる。
【0039】
ナビゲーション装置(道路情報記憶装置)50は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、ECU60と、操作部51と、表示部52と、スピーカ53と、位置検出部54と、地図データベース55と、運転履歴記録部56とを備えている。ナビゲーション装置50のECU60は、ECU20と双方向の通信が可能である。
【0040】
ナビゲーション装置50は、運転者に車両の現在地周りの道路情報を知らせて、車両の目的地までの走行経路を誘導する。操作部51には、目的地などの指示データが入力される。表示部52には、現在地周辺の地図情報、現在位置、目的位置、経路などの情報が表示される。スピーカ53からは、案内音声が出力される。
【0041】
ECU60のCPU61は、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種演算処理を行う。ECU60のROM62には、目的地までの経路の検索、経路中の走行案内、特定区間の決定等を行うための各種プログラムが格納されている。
【0042】
位置検出部54は、GPSレシーバ、地磁気センサ、距離センサ、ビーコンセンサ、及びジャイロセンサを備えている。位置検出部54は、自車の位置を検出し、その検出した自車の位置を示すデータをECU60に出力する。
【0043】
地図データベース55には、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、コーナー、登降坂、高速道路など)が記憶されている。地図データベース55は、地図データファイル、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイルを備えている。これら各ファイルには、経路探索を行うとともに、探索した経路に沿って案内図を表示するための各種データが格納されている。本実施形態で算出される道路勾配のデータは、例えば地図データベース55に記憶されることができる。ECU60は、地図データベース55を参照して、必要な情報を読み出す。
【0044】
運転履歴記録部56には、車両が走行した走行路、及び車両が走行路を走行した日時などの情報が記録される。ECU60は、必要に応じて、運転履歴記録部56から運転履歴のデータを読み出す。
【0045】
ECU60は、操作部51から入力された目的地などの指示データ及び位置検出部54により検出された自車位置に基づいて、地図データベース55から必要な地図情報を検索し、その検索により得られた経路の情報を表示部52に表示させる。ECU60は、操作部51から入力された目的地などの指示データが入力されていない場合には、自車位置の周辺の道路情報を表示部52に表示する。
【0046】
車両には、カメラ71と、道路状況検出部72が設けられている。カメラ71は、車両の前方の道路状況を撮像する。道路状況検出部72は、カメラ71により撮像されたに基づいて、車両の前方の道路状況を検出する。道路状況検出部72による検出結果は、ECU20に出力される。
【0047】
次に、図1及び図3を参照して本実施形態の動作について説明する。図1は、車両の走行位置と時間を示す図である。図1において、符号100は、車両を示す。図3は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【0048】
[ステップS101]
まず、ステップS101では、車両100の現在地点B(図1参照)における道路勾配のデータが地図データベース55に記憶されているか否かが判定される。ステップS101の判定の結果、B点における道路勾配のデータが記憶されていないと判定された(ステップS101肯定)場合には、ステップS102へ移行する。一方、ステップS101の判定の結果、B点における道路勾配のデータが記憶されていると判定された(ステップS101否定)場合には、ステップS105へ移行する。
【0049】
[ステップS102]
ステップS102では、B点の道路勾配が算出される。道路勾配は、例えば、車両の状態量(駆動力、車速等)から求められる加速度と、出力軸回転数の変化量から求められる加速度との差に基づいて算出されることができる。ステップS102において道路勾配の算出結果が得られると、ステップS103へ移行する。
【0050】
[ステップS103]
ステップS103では、上記ステップS102にて算出された道路勾配のデータを、その道路勾配の位置であるB点の位置情報と関連付けるための位置情報の補正が行われる。
【0051】
図1のA点は、ステップS102における道路勾配の算出が終了した時点Taにおける車両100の位置を示す。道路勾配が算出される間に、車両100は、B点よりも距離Dだけ前方の地点Aまで進んでいる。ここで、従来技術のように、算出された道路勾配のデータが、算出終了時点Taにおける位置A点と関連付けられて記憶されると、実際の勾配算出対象の位置B点と、道路勾配のデータが関連付けられて記憶された位置情報との間にずれが生じてしまう。そこで、ステップS103において、算出された道路勾配のデータを、正しくB点の位置情報と関連付けるための位置情報の補正が以下の方法により行われる。
【0052】
上記ステップS102において行われた道路勾配の算出に要する時間(算出遅れ時間Tf)は、その算出方法(なまし・フィルターによる遅れ時間など)や計算周期遅れなどに応じて決まる。そのため、算出遅れ時間Tfは、プログラムの設計段階で予め定められた値として記憶されていることができる。
【0053】
道路勾配が算出される間の走行距離(補正距離)Dが求められる。補正距離Dは、道路勾配の算出終了時点Taにおける位置Aにおける車速Vaと、予め記憶された算出遅れ時間Tfに基づいて以下の式により算出される。
D=Va×Tf
【0054】
算出された補正距離Dに基づいて、道路勾配のデータが関連付けられる位置情報が、A点よりも補正距離Dだけ前の地点B点に補正される。ステップS103の次に、ステップS104へ移行する。
【0055】
[ステップS104]
ステップS104では、ステップS102で算出された道路勾配のデータが、ステップS103で補正された地点(B点)の位置情報と関連付けられて地図データベース55に記憶される。ステップS104の次に、本制御フローはリセットされる。
【0056】
[ステップS105]
ステップS105では、出力軸トルクTO、デフのギヤ比iD、タイヤ径等から平坦路を走行したと仮定したときの通常駆動力Foが算出される。ステップS105の次にステップS106が行われる。
【0057】
[ステップS106]
ステップS106では、記憶されている現在位置(B点)の道路勾配のデータが読み込まれると共に、その道路勾配に対応する駆動力補正量αが算出される。ステップS106の次にステップS107が行われる。
【0058】
[ステップS107]
ステップS107では、道路勾配に基づく車両100の駆動力制御を開始する条件(駆動力制御開始条件)が成立しているか否かが判定される。その駆動力制御開始条件は、例えば、記憶されている現在位置(B点)の道路勾配の値が予め定められた所定値以上であることができる。その場合、ステップS107における判定の結果、道路勾配の値が上記所定値以上である場合には、駆動力制御開始条件が成立した(ステップS107肯定)と判定され、ステップS108へ移行する。一方、ステップS107における判定の結果、駆動力制御開始条件が成立していないと判定された(ステップS107否定)場合には、
ステップS110に進む。
【0059】
[ステップS108]
ステップS108では、補正後駆動力Fo+αが設定される。補正後駆動力Fo+αは、上記ステップS105にて求められた通常駆動力Foと、上記ステップS106にて求められた道路勾配に対応する駆動力補正量αの和として算出される。ステップS108の次にステップS109が行われる。
【0060】
[ステップS109]
ステップS109では、道路勾配に基づいて、車両100の駆動力制御が行われる。上記駆動力制御開始条件が成立しているとき(ステップS107肯定)は、ステップS109の車両100の駆動力制御として、例えば、登坂時に上記ステップS108にて道路勾配分だけ駆動力αを追加する制御が行われ、平坦路と同等の操作で(アクセルを踏み増すことなく)登坂路を走行することが可能となる。または、補正後駆動力Fo+αを出力するための最適変速段(変速比)を選択することが可能となる。
【0061】
一方、上記駆動力制御開始条件が成立していないとき(ステップS107否定)は、ステップS109の車両100の駆動力制御として、次に述べるステップS110にて設定された通常駆動力Fo(上記ステップS105参照)で車両が走行するように制御される。
【0062】
[ステップS110]
ステップS110では、上記ステップS105にて算出された通常駆動力Foが設定される。ステップS110の次にステップS109が行われる。
【0063】
本実施形態によれば、道路勾配が算出される(ステップS102)と共に、その算出された道路勾配が位置情報に関連付けて記憶される(ステップS104)場合に、算出遅れ時間Tfに基づいて補正距離Dが求められ、補正距離Dに基づいて道路勾配と関連付けられる位置情報が補正される(ステップS103)。これにより、算出遅れ時間Tfに起因して実際の勾配算出対象の位置(B点)と道路勾配のデータが関連付けられる位置情報との間にずれが生じることが抑制される。その結果、記憶された道路勾配に基づいて、正確な位置で車両100の駆動力の制御が行われることができる。
【0064】
(第2実施形態)
図4及び図5を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
上記第1実施形態では、算出された道路勾配のデータと関連付けられる位置情報が、地図データベース55に記憶される前に補正された。これに代えて、本実施形態では、記憶される前には位置情報の補正は行われず、道路勾配のデータが地図データベース55から読み出される際に位置情報の補正が行われる。即ち、道路勾配情報を利用するときに、道路勾配の算出遅れを考慮する。
【0066】
図4及び図5を参照して、本実施形態の動作について説明する。本実施形態では、上記第1実施形態と異なり、道路勾配の算出遅れの影響を考慮することなく、その道路勾配の算出結果が得られた位置と関連付けられて、その道路勾配の情報が記憶される。そして、道路勾配の情報が利用される時、例えば、道路勾配の情報に基づいて車両の駆動力の制御が行われる際に、その道路勾配情報の利用時点よりも道路勾配の算出遅れの影響分だけ車両の進行方向の先方位置における道路勾配のデータが読み出され(先読み)、その読み出された道路勾配に基づいて車両の駆動力の制御が行われる。
【0067】
図4は、車両の走行位置と時間を示す図である。図4において、符号100は、車両を示す。図5は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【0068】
[ステップS201]
まず、ステップS201において、車両100の現在位置(又は、現在位置と実質的に等しいと考えることの可能な現在位置よりも車両100の進行方向先方の位置。以下、単に現在位置と称する)Hの情報(図4参照)、現在位置Hよりも先方の位置の情報、及びそれらの位置の道路勾配のデータが、地図データベース55から読み出される。ステップS201の次に、ステップS202へ移行する。
【0069】
[ステップS202]
ステップS202では、上記ステップS201にて読み出された現在位置Hの道路勾配のデータが、地図データベース55に予め記憶された道路の設計勾配のデータであるか否かが判定される。ここで、道路の設計勾配データとは、車両100の走行時の状態量(駆動力、車速等)等のデータに基づいて算出された道路勾配のデータではなく、ナビゲーション装置50が有する地図データの一部として予め(車両の実走行によるデータとは無関係に)提供されている道路勾配のデータである。
【0070】
ステップS202における判定の結果、読み出された道路勾配のデータが設計勾配のデータであると判定された(ステップS202肯定)場合には、ステップS203へ移行し、そうでない(ステップS202否定)場合にはステップS205に移行する。
【0071】
[ステップS203]
ステップS203では、道路勾配に基づく車両100の駆動力制御を開始する条件(駆動力制御開始条件)が成立しているか否かが判定される。その駆動力制御開始条件は、例えば、現在位置(H点)の道路勾配の値が予め定められた所定値以上であることができる。その場合、ステップS203における判定の結果、道路勾配の値が上記所定値以上である場合には、駆動力制御開始条件が成立した(ステップS203肯定)と判定され、ステップS204へ移行する。一方、ステップS203における判定の結果、駆動力制御開始条件が成立していないと判定された(ステップS203否定)場合には、本制御フローはリセットされる。
【0072】
このステップS203の判定において、現在位置(H点)の道路勾配としては、上記ステップ202の判定にて肯定的に判定された場合には、上記ステップS201にて読み出された道路勾配のデータ(設計勾配のデータ)がそのまま用いられる。一方、上記ステップS202の判定にて否定的に判定された場合には、現在位置(H点)の道路勾配としては、後述するステップS206にて読み出される補正された位置Gに関連付けられて記憶されている道路勾配のデータ(現在位置Hの道路勾配を示す)が用いられる。
【0073】
[ステップS204]
ステップS204では、道路勾配に基づいて、車両100の駆動力制御が行われる。車両100の駆動力制御として、例えば、登降坂時の駆動力制御として、自動変速機13のダウンシフトが行われる。ステップS204の次に、本制御フローはリセットされる。
【0074】
[ステップS205]
ステップS205では、読み出すべき道路勾配の位置情報の補正が行われる。上記ステップS201にて読み出された現在位置Hの道路勾配のデータが設計勾配のデータではない場合(ステップS202否定)には、上記道路勾配のデータは、車両100の走行時の状態量のデータに基づいて算出され記憶された道路勾配のデータである。上記第1実施形態と異なり、本実施形態では、算出された道路勾配のデータが地図データベース55に記憶される際に、位置情報の補正は行われず、算出結果が得られた地点の位置情報に関連付けられて記憶される。従って、その算出された道路勾配に関連付けられた位置情報には、以下に説明するように、算出遅れ時間Tfに起因する実際の位置からのずれが含まれている。
【0075】
図4において、符号Gは、H点の通過時刻Thから算出遅れ時間Tfだけ経過した時刻Tgにおける車両100の位置を示す。道路勾配が算出される際に、H点において検出された車両情報等に基づいて算出されたH点の道路勾配のデータは、その道路勾配の算出結果が得られるG点の位置情報に関連付けられて地図データベース55に記憶される。
【0076】
そこで、本実施形態では次に説明するように、道路勾配のデータが読み出される際に、位置情報の補正が行われた上で道路勾配のデータが読み出される。
【0077】
ステップS205では、算出遅れ時間Tfの間に車両100が走行する距離(補正距離)D2が求められる。補正距離D2は、H点における車速Vhと算出遅れ時間Tfに基づいて以下の式により算出される。
D2=Vh×Tf
算出された補正距離D2に基づいて、位置情報の補正が行われる。地図データベース55において道路勾配が読み出される対象の位置は、H点よりも補正距離D2だけ先方のG点に補正される。次に、ステップS206へ移行する。
【0078】
[ステップS206]
ステップS206では、上記ステップS205で補正された位置(G点)の位置情報に関連付けられた道路勾配のデータが地図データベース55から読み出される。上記のように、地図データベース55において、上記ステップS205で補正された位置(G点)の位置情報に関連付けられた道路勾配のデータは、現在位置Hの道路勾配のデータである。ステップS206の次に、上記ステップS203に移行する。
【0079】
本実施形態によれば、利用しようとする道路勾配のデータが、車両100の走行時の状態量のデータに基づいて算出されたデータである(ステップS202否定)場合には、算出遅れに対応する分だけ位置情報の補正が行われた(ステップS205)上で、その補正された位置情報に関連付けられた道路勾配のデータが読み出される(ステップS206)。これにより、算出遅れ時間Tfに起因して生じる、道路勾配データが実際に対応する位置と、道路勾配のデータに関連付けられた位置情報との間のずれが抑制される。
【0080】
(第3実施形態)
図6を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0081】
上記各実施形態では、算出遅れ時間Tfに起因する位置情報のずれが補正された。本実施形態では、これに加えて、またはこれに代えて、以下に図6を参照して説明するように、道路勾配のデータの読み出し時における遅れ時間(以下、読み出し遅れ時間Tkとする)に起因する位置情報のずれが補正される。
【0082】
以下においては、地図データベース55には、算出された道路勾配のデータが正しい位置情報に関連付けられて記憶されているとする(例えば上記第1実施形態)。図6は、車両の走行位置と時間を示す図である。図6において、符号100は、車両を示す。N点(時刻Tn)にてN点の道路勾配に基づいて車両制御が行われようとしているとする。
【0083】
道路勾配のデータが読み出される場合に、データの読み出しには所定の時間(読み出し遅れ時間Tk)を要する。このため、N点(時刻Tn)の道路勾配に基づいて車両制御が行われるべく、N点においてN点の道路勾配データの読み出しを開始した場合に、読み出しが完了するのは、時刻Tnから読み出し遅れ時間Tkが経過した時刻Tmとなる。読み出しが行われている間に車両100はN点よりも距離D3だけ前方のM点に到達している。この場合、N点の道路勾配のデータは、M点になるまで取得できず、N点にてN点の道路勾配に基づく車両制御が実現できないこととなる。
【0084】
そこで、本実施形態では、データの読み出し時に読み出し遅れ時間Tkが発生することを見越してデータの先読みが行われる。読み出し遅れ時間Tkは、データベースの構造やCPUの能力等に基づいて予め分かっている。N点における道路勾配のデータが読み出される際に、読み出し遅れ時間Tkの間の車両100の走行距離(補正距離)D3’が求められ、その求められた補正距離D3’だけN点よりも手前の地点O点において、N点の道路勾配のデータの読み出しが開始される。
【0085】
補正距離D3’は、少なくともN点に到達する時刻Tnよりも前の時刻における車両100の車速Vnに基づいて、以下の式により算出される。
D3’=Vo×Tk
算出された補正距離D3’に基づいて、N点の道路勾配のデータの読み出しが開始される地点が、N点よりも補正距離D3’だけ手前のO点に設定される。これにより、N点に到達する時点で遅れなくN点の道路勾配のデータが取得できる。
【0086】
なお、本実施形態の適用対象は、地図データベース55から読み出されるデータが、車両100の走行中に算出され記憶されたデータである場合には限定されない。例えば、地図データベース55に予め記憶されている道路設計勾配のデータが読み出される場合についても本実施形態は好適に適用される。
【0087】
(第1〜第3実施形態の第1変形例)
上記各実施形態では、車両走行時の車両の状態両党の車両情報に基づいて算出され記憶される道路の状態(走行環境パラメータ)が道路勾配である場合について説明したが、道路の状態は道路勾配には限定されない。車両情報等に基づいて算出されると共に位置情報に関連付けて記憶される道路の状態であれば、上記各実施形態は好適に適用されることができる。
【0088】
例えば、道路の状態(走行環境パラメータ)の例として、上記第1実施形態において、道路勾配に代えて路面μ(路面の凹凸を含む)に基づいて車両100の駆動力の制御が行われる場合について図3を参照して説明する。
【0089】
この場合、ステップS102においては、上記第1実施形態と異なり、公知の路面μの算出方法により路面μが算出される。また、ステップS107では、上記第1実施形態と異なり、路面μのデータに基づく車両100の駆動力制御を開始する条件が成立しているか否かが判定される。上記判定は、例えば、路面μの値が予め定められたしきい値以下であるか否かによることができる。
【0090】
ステップS109では、上記第1実施形態と異なり、路面μに基づく車両100の駆動力の制御が行われる。駆動力制御の手段については、上記第1実施形態と同様であることができる。
【0091】
(第1〜第3実施形態の第2変形例)
上記各実施形態では、道路の状態(走行環境パラメータ)に基づいて行われる制御が車両100の駆動力の制御である場合について説明したが、道路の状態に基づいて行われる制御は、駆動力の制御には限定されない。例えば、路面μ(路面の凹凸を含む)等の走行環境パラメータに基づいて、その減衰力が制御されるサスペンション装置の制御や変速制御等においても上記各実施形態は好適に適用されることができる。
【0092】
(第1〜第3実施形態の第3変形例)
上記各実施形態では、車両走行時の車両情報に基づいて算出され、位置情報に関連付けて記憶される情報が道路の状態である場合について説明したが、これに代えて、運転者の運転指向が推定され、推定された運転指向のデータが位置情報に関連付けて記憶される場合についても上記各実施形態が適用されることができる。
【0093】
例えば、運転者の運転状態(車両100の操作量)及び車両100の走行状態に基づいて、運転者の運転指向(スポーツ走行指向か通常走行指向か)が推定され、推定された運転指向に基づいて車両100が制御されることがある。この場合、運転指向の推定結果が位置情報と関連付けて記憶され、記憶された運転指向に基づいて車両100が制御される場合がある。この場合に、道路上の特定の地点において運転者の運転指向が変化するような環境の変化が存在することがある。以下、図4を参照して説明する。
【0094】
例えば、道路上のある地点(H点)においてそれまで狭かった視界が開けるような場合がある。この場合、その視界が開けるH点において運転者の運転指向が通常走行指向からスポーツ走行指向へ変化することがある。運転者の運転指向が変化してから、運転指向の推定演算が完了するまでには遅れ時間(算出遅れ時間Tfに相当)が存在する。このため、運転者の運転指向が変化するH点と、運転指向の推定結果が得られるG点との間に位置のずれ(D2)が生じる。このような場合に、上記各実施形態が適用されることにより、運転指向が変化する位置(H点)と、運転志向の推定結果が関連付けられる位置との間のずれが抑制されることが可能である。
【0095】
例えば、上記第1実施形態において、運転者の運転指向に基づいて車両100の駆動力の制御が行われる場合について図3を参照して説明する。この場合、ステップS102においては、上記第1実施形態と異なり、公知の運転指向の推定方法により運転者の運転指向が推定される。
【0096】
ステップS107では、上記第1実施形態と異なり、運転指向のデータに基づく車両100の駆動力制御を開始する条件が成立しているか否かが判定される。上記判定は、例えば、前方の道路状況、車間距離、前方の障害、路面μ、及び道路勾配等の情報に基づいて行われることができる。ステップS109では、上記第1実施形態と異なり、運転指向に基づいて車両100の駆動力の制御が行われる。駆動力制御の手段としては、上記第1実施形態と同様であることができる。その他の動作については、上記第1実施形態と同様である事ができる。
【0097】
上記の記載から少なくとも以下の技術事項が開示される。
【0098】
道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を記憶し、前記記憶された前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、
前記状態の算出結果が得られた第1時点(図1のA点)よりも前記状態の算出に要した時間(Tf)に対応する時点(D)だけ前の第2時点(B点)に対応する前記状態として前記状態の算出結果を記憶する
ことを特徴とする車両制御装置。
【0099】
道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を前記状態に対応する時点に関連付けて記憶し、前記記憶された前記時点及び前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、
前記記憶された前記状態の算出結果を利用しようとする第3時点(図4のH点)よりも前記状態の算出に要した時間(Tf)に対応する時点(D2)だけ先の第4時点(G点)に対応する前記状態として記憶された前記状態の算出結果を前記第3時点において利用する
ことを特徴とする車両制御装置。
【0100】
道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を前記状態に対応する時点に関連付けて記憶し、前記記憶された前記時点及び前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、
前記記憶された前記状態の算出結果を利用しようとする第5時点(図6のN点)よりも前記記憶された前記状態の算出結果の読み出しに要した時間(Tk)に対応する時点(D3’)だけ前の第6時点(O点)において前記5時点に対応する前記状態として記憶された前記状態の算出結果の読み出しを開始する
ことを特徴とする車両制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の車両制御装置の第1実施形態の制御内容を説明するための図である。
【図2】本発明の車両制御装置の第1実施形態に係る装置の概略構成図である。
【図3】本発明の車両制御装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の車両制御装置の第2実施形態の制御内容を説明するための図である。
【図5】本発明の車両制御装置の第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の車両制御装置の第3実施形態の制御内容を説明するための図である。
【図7】算出された道路勾配の算出対象の位置と道路勾配のデータに関連付けられる位置との間のずれを説明するための図である。
【符号の説明】
【0102】
11 エンジン
12 トルクコンバータ
13 自動変速機
14 デファレンシャルギヤ
15 ドライブシャフト
16 駆動輪
17 A/T油圧制御装置
18 ブレーキ装置
19 ブレーキ油圧制御装置
20 ECU
21 アクセルポジションセンサ
22 吸気管
23 スロットルコントロールバルブ
24 スロットルアクチュエータ
25 バイパス通路
26 アイドルスピードコントロールバルブ
27 アイドルスイッチ付スロットル開度センサ
28 エンジン回転数センサ
29 車速センサ
30 シフトポジションセンサ
31 車輪速度センサ
32 ブレーキ操作量センサ
33 ステアリング舵角センサ
34 方向指示器スイッチ
35 運転モード設定スイッチ
36 車両傾斜角センサ
37 横Gセンサ
38 前後Gセンサ
39 上下Gセンサ
40 ヨーレートセンサ
41 出力軸回転数センサ
50 ナビゲーション装置
51 操作部
52 表示部
53 スピーカ
54 位置検出部
55 地図データベース
56 運転履歴記録部
60 ECU
61 CPU
62 ROM
100 車両
A 道路勾配の算出終了時の車両位置
B 道路勾配の算出開始時の車両位置
D 補正距離
D2 補正距離
D3’ 補正距離
Tf 算出遅れ時間
Tk 読み出し遅れ時間
Va 車速
Vh 車速
Vo 車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を記憶し、前記記憶された前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、
前記状態の算出結果が得られた第1時点よりも前記状態の算出に要した時間に対応する時点だけ前の第2時点に対応する前記状態として前記状態の算出結果を記憶する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を前記状態に対応する時点に関連付けて記憶し、前記記憶された前記時点及び前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、
前記記憶された前記状態の算出結果を利用しようとする第3時点よりも前記状態の算出に要した時間に対応する時点だけ先の第4時点に対応する前記状態として記憶された前記状態の算出結果を前記第3時点において利用する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両制御装置において、
前記状態の算出に要した時間に対応する時点は、前記車両の車速と前記状態の算出に要した時間とに基づいて求められる
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
道路及び運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を前記状態に対応する時点に関連付けて記憶し、前記記憶された前記時点及び前記状態の算出結果に基づいて車両を制御する車両制御装置であって、
前記記憶された前記状態の算出結果を利用しようとする第5時点よりも前記記憶された前記状態の算出結果の読み出しに要した時間に対応する時点だけ前の第6時点において前記第5時点に対応する前記状態として記憶された前記状態の算出結果の読み出しを開始する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両制御装置において、
前記状態の算出結果の読み出しに要した時間に対応する時点は、前記車両の車速と前記状態の算出結果の読み出しに要した時間とに基づいて求められる
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
道路及び車両の運転者の少なくともいずれか一方の状態を算出し、前記状態の算出結果を記憶する演算記憶装置であって、
前記状態の算出結果が得られた第1時点よりも前記状態の算出に要した時間に対応する時点だけ前の第2時点に対応する前記状態として前記状態の算出結果を記憶する
ことを特徴とする演算記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179195(P2008−179195A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12609(P2007−12609)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】