説明

車両制御装置

【課題】ゴムタイヤ等の低剛性体からなる車輪を駆動する誘導電動機が複数個接続された車両制御装置において、並列に複数個接続された各誘導電動機に流れる電流アンバランスによる特定電動機の過電流状態を抑制する。
【解決手段】各誘導電動機に流れる電流を用いて、電流アンバランスよる特定電動機の過電流を抑制する如くトルク制御の補正を行う。車輪を駆動する誘導電動機が複数個接続された車両制御装置において、複数個接続された各誘導電動機に流れる電流を検出する検出装置を備え、制御回路に接続し、検出した電流に応じてトルク指令を補正し、特定の誘導電動機の過電流を防ぐことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムタイヤを駆動する誘導電動機を複数個並列接続したものを、パルス幅制御により直流を交流に変換する車両制御装置に係わり、特にゴムタイヤの動荷重半径の差による特定誘導電動機の過電流を抑制する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4、図5は従来のゴムタイヤを駆動する車両制御装置の主回路構成および制御ブロック図の一例である。新交通システム向けの誘導電動機によるシステムにおいて、誘導電動機が複数ある場合は誘導電動機毎に車両制御装置を設置することが一般的である。
以下に図4、図5により概略を説明する。
【0003】
図4において、1は車両制御装置、2は1番目に接続された誘導電動機、3は2番目に接続された誘導電動機、4はn番目に接続された誘導電動機、8はPWM変換器を示す。図5において、12はトルク指令演算器、13は磁束指令演算器、14は電流指令演算器、15はベクトル制御演算器、16はPWM変調演算器であり、これらにより制御回路11が形成される。
【0004】
ノッチ指令・応加重信号・速度情報を用いてトルク指令演算器12によりトルク指令T*、磁束指令演算器により磁束指令φ*を生成、トルク指令T*及び磁束指令φ*を用いて電流指令演算器14によりトルク分電流指令Iq*及び励磁電流分指令Id*を生成、トルク分電流指令Iq*及び励磁電流分指令Id*を用いてベクトル制御演算器15により電圧指令V*を生成、電圧指令V*を用いてPWM変調演算器16によりゲート出力Gを出力している。
【0005】
ゲート出力GをPWM変換器8に入力し、誘導電動機2〜4を駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−292605号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「車両技術」、日本鉄道車輌工業会社、236号、p.42〜57
【非特許文献2】第39回鉄道サイバネ・シンポジウム、論文番号522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし図4に示すようなシステムでは誘導電動機の個数が増えるたび、車両制御装置の個数が増えるため、重量・価格が増加する点がデメリットであった。そのために、車両制御装置を1個にし、誘導電動機を並列接続駆動させることで、前記デメリットを軽減できることになるが、各誘導電動機が駆動するゴムタイヤの動荷重半径の差により、各誘導電動機に流れる電流がアンバランスになり、特定の誘導電動機が過電流になるという課題がある。
【0009】
鉄車輪の場合は車輪径の修正は比較的容易であるが、ゴムタイヤの場合はタイヤを削ることは困難であり、動荷重半径の要因である車輪径の修正は容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は並列接続された各誘導電動機に流れる電流を検出器する検出器を備え、制御回路に接続し、検出した電流に応じてトルク指令を補正し、特定の誘導電動機の過電流を防ぐことを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によれば、ゴムタイヤ等の低剛性体からなる車輪を駆動する誘導電動機が複数個接続された車両制御装置において、
複数個接続された各誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出器を備え、
実効値演算器は、前記電流検出器で検出した電流の実効値を出力し、
制限電流指令演算器は制限電流指令IL*を出力し、
減算トルク指令演算器は、前記制限電流指令IL*と、トルク指令演算器より出力されるトルク指令T*と、電流指令演算器より出力されると励磁電流指令Id*から、減算トルク指令TL*を出力し、
加算器は前記減算トルク指令TL*と前記トルク指令T*を加算することによりトルク指令T**を出力し、
前記トルク指令T**を前記電流指令演算器に入力することで制限電流指令IL*を超えないように過電流制御を実施することを特徴とする車両制御装置。
【0012】
請求項2の発明によれば、ゴムタイヤ等の低剛性体からなる車輪の車輪径管理のために減算トルク指令演算器よりトルク指令補正制御動作中であることをモニタ装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、特定のゴムタイヤの動荷重半径が大きく変わった場合でも、その特定のゴムタイヤを駆動する誘導電動機に流れる電流が過電流にならない効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係るシステム図である。(実施例1)
【図2】本発明の実施例1に係る制御ブロック図である。(実施例1)
【図3】本発明の実施例2に係る制御ブロック図である。(実施例2)
【図4】従来の技術による実施例に係るシステム図である。
【図5】従来の技術による実施例に係る制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1に関わるシステム図、図2は本発明の実施例1に関わる制御ブロック図であって、1〜4、8、11〜16は図4、図5と同様である。
【0017】
図1において、PWM変換器8は、誘導電動機2〜4を並列接続している。5〜7は電流検出器、21は実効値演算器、22は制限電流指令演算器、23は減算トルク指令演算器、24は加算器である。
【0018】
電流検出器5〜7は誘導電動機2〜4に流れる各電流を検出する。実効値演算器21は5〜7で検出した電流の実効値を出力する。制限電流指令演算器22は実効値演算器21で演算した各電流実効値から特定の電動機の過電流を防ぐための制限すべき電流指令IL*を出力する。減算トルク指令演算器23は制限電流指令演算器22で演算した制限電流指令IL*とノッチ指令・応加重信号・速度情報から求まるトルク指令T*及び励磁電流指令Id*から減算すべきトルク指令TL*を出力する。加算器24は減算トルク指令演算器23で出力した減算トルク指令TL*とトルク指令演算器12で出力したトルク指令T*を加算しトルク指令T**を出力する。
【0019】
一般的に誘導電動機実効値電流Irmsと励磁電流指令Id*及びトルク分電流指令Iq*の関係は式1で表され、トルク指令T*と励磁電流指令Id*及びトルク分電流指令Iq*の関係は式2で表される。トルク指令T*を式1と式2を用いて誘導電動機実効値電流Irmsと励磁電流指令Id*で表すと式3となる。
【0020】
【数1】

【数2】

【数3】

【0021】
式3に制限電流指令演算器22で出力した制限電流指令IL*を代入すると式4によって減算トルク指令TL*が出力される。さらに元のトルク指令T*の差分を取ると式5となり、T**が出力される。
【0022】
【数4】

【数5】

【0023】
上式で求めたT**を電流指令演算器14に入力することで制限電流指令IL*を超えないように制御を実施することができ、特定のゴムタイヤを駆動する誘導電動機に流れる電流が過電流にならないようにすることが可能となる。
【実施例2】
【0024】
図3は本発明の実施例2に関わる制御ブロック図であって、システム図は図1を使用する。11〜16、21〜24は図2と同様である。31はモニタ装置である。
【0025】
減算トルク指令演算器23が制御動作中であることをモニタ装置31に出力し、モニタ装置で記録することにより本発明の供する制御を実施中もしくは実施済みであることを外部に知らせることができる
【0026】
モニタ装置に出力された情報を車輪径の管理に用いることができ、大いに役立つ。
【産業上の利用可能性】
【0027】
ゴムタイヤを駆動する誘導電動機を複数一括制御する車両制御装置において、電流を適正な物とし、特定の電動機の過電流を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 車両制御装置
2 誘導電動機
3 誘導電動機
4 誘導電動機
5 電流検出器
6 電流検出器
7 電流検出器
8 PWM変換器
11 制御回路
12 トルク指令演算器
13 磁束指令演算器
14 電流指令演算器
15 ベクトル制御演算器
16 PWM変調演算器
21 実効値演算器
22 制限電流指令演算器
23 減算トルク指令演算器
24 加算器
31 モニタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムタイヤ等の低剛性体からなる車輪を駆動する誘導電動機が複数個接続された車両制御装置において、
複数個接続された各誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出器を備え、
実効値演算器は、前記電流検出器で検出した電流の実効値を出力し、
制限電流指令演算器は制限電流指令IL*を出力し、
減算トルク指令演算器は、前記制限電流指令IL*と、トルク指令演算器より出力されるトルク指令T*と、電流指令演算器より出力されると励磁電流指令Id*から、減算トルク指令TL*を出力し、
加算器は前記減算トルク指令TL*と前記トルク指令T*を加算することによりトルク指令T**を出力し、
前記トルク指令T**を前記電流指令演算器に入力することで制限電流指令IL*を超えないように過電流制御を実施することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
ゴムタイヤ等の低剛性体からなる車輪の車輪径管理のために減算トルク指令演算器よりトルク指令補正制御動作中であることをモニタ装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−120367(P2012−120367A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269288(P2010−269288)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】