説明

車両用ロック装置

【課題】操作が容易であるとともに、より信頼性の高い車両用ロック装置を提供する。
【解決手段】実施例1におけるロック装置本体5は、ハウジング13と、ラッチ15と、ポール17と、レバー19とを備えている。ラッチ15は、第1揺動軸21に対して揺動可能に軸支されており、係止状態においてストライカ9bを係止可能になっている。ポール17は、第2揺動軸23に対して揺動可能に軸支されており、係止片17aを第1位置に位置させることによりラッチ15の揺動を固定可能になっている。レバー19は、第3揺動軸25に対して揺動可能に軸支されており、係止部19aを第3位置に位置させることによりポール17の揺動を固定可能になっている。このロック装置本体5では、ポール17の揺動方向とレバー19の揺動とが同方向となっている。また、載置台27には4本のピン11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両用ロック装置が開示されている。この車両用ロック装置は、ハウジングと、ラッチと、ポールとを備えている。ハウジングには、ストライカを進入させる進入口が形成されている。ラッチは、ハウジングに対して第1揺動軸芯回りで揺動可能に支持されており、進入口内でストライカを係止する係止状態と、進入口内でストライカを解放する解放状態とを切り替え可能になっている。ポールは、ハウジングに対して第2揺動軸芯回りで揺動可能に支持されており、ラッチの揺動を固定可能な第1位置と、ラッチの揺動を解放可能な第2位置とを切り替え可能になっている。このポールには操作ケーブルが取り付けられている。また、ラッチとポールとには、それぞれ互いに係合する係合部が形成されている。さらに、ラッチの一端とポールの一端とは、コイルばねによって連結されている。
【0003】
この車両用ロック装置では、進入口内に進入したストライカによって、ラッチが第1揺動軸芯回りで揺動する。そして、ラッチが係止状態となることで、ストライカがラッチに係止される。さらに、コイルばねの付勢力により、ラッチの揺動に応じてポールが第2揺動軸芯回りで揺動する。そして、ポールが第1位置となることで、ラッチの係合部とポールの係合部とが係合し、係止状態にあるラッチの揺動をポールが固定する。これにより、ストライカが車両用ロック装置に固定された状態となる。
【0004】
一方、車両用ロック装置に固定されたストライカを解放させる場合には、使用者が操作ケーブルを操作する。これにより、第1位置にあるポールが第2位置へ揺動し、ラッチの係合部とポールの係合部との係合が解放される。そして、コイルばねの付勢力によりラッチが揺動し、係止状態から解放状態となる。このため、進入口内においてストライカの固定が解放され、車両用ロック装置によるストライカの固定が解放された状態となる。
【0005】
この車両用ロック装置は、シートバックがシートクッションに対して揺動可能な車両用シートに設けられる。この場合、車両用ロック装置はシートバックに取り付けられ、シートクッションにはストライカが取り付けられる。そして、シートクッションに対し、シートバックを略垂直状態に起立させた状態で、ストライカを車両用ロック装置に固定すれば、車両用シートを使用状態で固定することが可能となる。一方、車両用ロック装置によるストライカの固定を解放することにより、シートバックの揺動が可能となり、シートクッションとシートバックとを略平行状態とさせることで、車両用シートを収納状態とすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−275798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の車両用ロック装置では、ポールのみによってラッチの揺動を固定していることから、ポールが不意に第1状態から第2状態へと揺動してしまえば、ラッチが不意に係止状態から解放状態へと揺動してしまう。すなわち、使用者が意図しないまま、車両用ロック装置によるストライカの固定が解放されてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、操作が容易であるとともに、より信頼性の高い車両用ロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用ロック装置は、ストライカを進入させる進入口が形成されたハウジングと、
該ハウジングに対して第1揺動軸芯回りに揺動可能に支持され、該進入口内で該ストライカを係止する係止状態と該進入口内で該ストライカを解放する解放状態とを切り替え可能なラッチと、
該ハウジングに対して第2揺動軸芯回りに揺動可能に支持され、該ラッチの揺動を固定可能な第1位置と該ラッチの揺動を解放可能な第2位置とを切り替え可能なポールと、
該ポールの揺動を固定又は解放可能なポール固定手段と、
該ポール固定手段による該ポールの揺動の固定を解放するとともに、該ポールを該第1位置から該第2位置へ揺動させるロック解除手段とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
本発明の車両用ロック装置(以下、単にロック装置という。)では、ラッチが第1揺動軸芯回りで揺動し、ラッチが係止状態となることで、ストライカがラッチに係止される。さらに、ポールが第2揺動軸芯回りで揺動し、第1位置となることで、係止状態にあるラッチの揺動が固定される。また、ポール固定手段によって、第1位置にあるポールの揺動が固定される。これにより、ストライカがロック装置に固定された状態となる。このため、このロック装置では、ストライカがロック装置に固定された状態において、ポールが不意に第1位置から第2位置へと揺動し難くなり、係止状態のラッチが不意に解放状態に揺動されるということが効果的に防止される。
【0011】
一方、ロック装置に固定されたストライカを解放させる場合には、ロック解除手段により、ポール固定手段によって固定されているポールの揺動を解放するとともに、第1位置から第2位置へポールを揺動させる。これにより、ポールによって固定されているラッチの揺動を解放することが可能となる。つまり、このロック装置では、容易な操作によってロック装置に固定されたストライカを解放させることが可能となる。
【0012】
したがって、本発明のロック装置によれば、操作が容易であるとともに、より信頼性を高くできる。
【0013】
本発明のロック装置が設けられ得る車両の概念には、乗用自動車だけでなく、フォークリフト等の産業車両や自動搬送車等も含まれる。また、これらの車両には、バッテリに蓄電された電力によって走行し得る電気自動車の他、ガソリンや軽油等の燃料によっても走行し得る車両も含まれる。
【0014】
ポール固定手段は、ハウジングに対して第3揺動軸芯回りに揺動可能に支持され、ポールの揺動を固定可能な第3位置とポールの揺動を解放可能な第4位置とを切り替え可能であり得る。そして、ポールにおける第1位置から第2位置に向かう揺動方向と、ポール固定手段における第3位置から第4位置に向かう揺動方向とは、同方向であることが好ましい(請求項2)。
【0015】
この場合、ポールにおける揺動方向とポール固定手段における揺動方向とが同方向であることから、一方向からロック解除手段の操作を行えば、ポール固定手段とポールとを揺動させることが可能となる。このため、ロック解除手段を簡略化することが可能となる。また、ポール固定手段がラッチやポールと同様に揺動するものであることから、ロック装置の構成を簡略化することも可能となる。
【0016】
ロック解除手段は、ポール固定手段と当接してポール固定手段を第3位置から第4位置に揺動させる第1ピンと、ポールと当接してポールを第1位置から第2位置に揺動させる第2ピンとを有し得る。そして、第1ピン及び第2ピンは同方向に延在していることが好ましい(請求項3)。
【0017】
この場合、第1ピンがポールの揺動を解放可能であり、第2ピンがラッチの揺動を解放可能であるため、ロック解除手段の簡略化を実現できる。
【0018】
本発明のロック装置において、ポール固定手段及びポールは、ポール固定手段と第1ピンとが当接し、ポール固定手段が第4位置に揺動した後で、第2ピンとポールとが当接するように配置されていることが好ましい(請求項4)。この場合、ポール固定手段によるポールの揺動の固定が解放された後、ポールによるラッチの揺動の固定が解放されることとなり、ポールの揺動の解放とラッチ揺動の解放とが順序良く行われることとなる。このため、ロック装置に固定されたストライカを好適に解放することが可能となる。
【0019】
ロック解除手段が上記のように第1ピンと第2ピンとを有する場合、これらの第1ピン及び第2ピンはそれぞれ別体で設けられても良く、一体で設けられても良い。特に、第2ピンは、第1ピンから伸縮可能に設けられていることが好ましい(請求項5)。この場合、第1ピンと第2ピンとを一体化させつつ、第1ピン及び第2ピンについて、それぞれ上記のように機能させることが可能となる。また、ロック解除手段を小型化することも可能となる。
【0020】
ポール固定手段は第4位置から第3位置に向かって付勢され得る。そして、ポール固定手段が第3位置にあるときに、ポールが第1位置から第2位置に向かって揺動すると、ポール固定手段は第3位置に留まるように配置されていることが好ましい(請求項6)。
【0021】
この場合、ポール固定手段は付勢力により第3位置に留まるべく作用する。このため、ポール固定手段によってポールの揺動が固定されている間に、ポールが第1位置から第2位置に向かって揺動しようとすると、ポールは、第3位置に留まるポール固定手段と当接することになる。このため、ポールの揺動が好適に固定されることとなり、ロック装置の信頼性が向上する。このため、ストライカがロック装置に固定された状態において、外的負荷等を受けた場合であっても、ポールやラッチが揺動され難くなり、ロック装置からストライカが不意に解放され難くなっている。
【0022】
また、上記の場合における本発明の車両用ロック装置は、ラッチは係止状態から解放状態に向かって付勢され、ポールは第2位置から第1位置に向かって付勢され得る。さらに、ラッチが解放状態を超えて揺動することを規制し、ポールが第1位置を超えて揺動することを規制し、ポール固定手段が第3位置を超えて揺動することを規制する回り止め手段を備え得る。そして、ラッチ、ポール及びポール固定手段の少なくとも一つは、ハウジング又はラッチ、ポール及びポール固定手段のうちで自己を除くものが回り止め手段とされていることが好ましい(請求項7)。
【0023】
この場合、ラッチ、ポール及びポール固定手段が付勢力によってそれぞれ揺動することとなり、ロック装置によるストライカの係止及びロック装置に固定されたストライカの解放を容易に行うことが可能となる。その一方で、付勢力により、ラッチが解放状態を超えて揺動したり、ポールが第1位置を超えて揺動したり、ポール固定手段が第3位置を超えて揺動したりすると、ストライカを好適に係止及び解放し難くなり、ロック装置の信頼性の低下を招くことになる。そこで、ロック装置に回り止め手段を備えることで、ラッチ、ポール及びポール固定手段における上記のような不必要な揺動を規制することが可能となる。これにより、ロック装置の信頼性を向上させることが可能となる。回り止め手段としては、例えば、ラッチ、ポール及びポール固定手段にそれぞれ当接可能なピン等を採用することができる。
【0024】
ここで、ロック装置において、ラッチ、ポール及びポール固定手段に対し、個々に対応する回り止め手段を単純に設けた場合、部品点数の増加を招き、ロック装置の製造コストが増加することとなる。このため、このロック装置では、ラッチ、ポール及びポール固定手段の少なくとも一つは、ハウジング又はラッチ、ポール及びポール固定手段のうちで自己を除くものを回り止め手段とすることが好ましい。
【0025】
つまり、このロック装置では、ラッチに対しては、ハウジングやポール又はポール固定手段が回り止め手段となり得る。同様に、ポールに対しては、ハウジングやラッチ又はポール固定手段が回り止め手段となり得る。さらに、ポール固定手段に対しては、ハウジングやラッチ又はポールが回り止め手段となり得る。これらにより、このロック装置では、部品点数の増加を抑制することが可能となり、製造コストの増加を抑制することが可能となる。
【0026】
特に、ポールはポール固定手段を回り止め手段とし、ポール固定手段はポールを回り止め手段としていることが好ましい(請求項8)。上記のように、ポールの揺動方向と、ポール固定手段の揺動方向とは同方向であることから、ポールが第2位置から第1位置に向かって付勢される方向と、ポール固定手段が第4位置から第3位置に向かって付勢される方向とが同方向となる。このため、ポール固定手段をポールの回り止め手段とし易く、同様に、ポールをポール固定手段の回り止め手段とし易い。このため、信頼性の高いロック装置を容易に製造することが可能となる。
【0027】
本発明のロック装置において、ハウジングはバッテリユニットに固定され、第1ピン及び第2ピンはバッテリユニットを移動させるための移載装置又は車体に設けられていることが好ましい(請求項9)。
【0028】
今後の電気自動車の本格的な普及に当たっては、モータ等による走行によって蓄電量が減少したバッテリについて、その都度充電を行うだけではなく、移載装置を用いて、蓄電量の減少したバッテリと、充電が完了したバッテリとを交換することで、引き続き車両を走行させることも予定されている。そこで、バッテリをケース内に収納したバッテリユニットと、このバッテリユニットを搭載する車体とを備えた電気自動車が検討されている。本発明のロック装置は、車体とバッテリユニットとを固定するために用いられることが好ましい。
【0029】
この場合、車両に対するバッテリユニットの装着と、車体からのバッテリユニットの取り外しとを好適に行うことが可能となる。また、第1ピン及び第2ピンを移載装置に設けることにより、バッテリユニットの移動だけなく、移載装置によってバッテリユニットの取り外しも行うことが可能となり、バッテリユニットの固定作業及び取り外し作業が容易となる。
【0030】
また、この場合、ポール固定手段により、走行中の飛び石等によって不意にポールが揺動されることが効果的に防止される。このため、走行中にロック装置からストライカが解放され、車体からバッテリユニットが落下すること等が効果的に防止される。
【発明の効果】
【0031】
本発明のロック装置によれば、操作が容易であるとともに、より信頼性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】車体とバッテリユニットとの固定及び取り外しの状態を示す側面図である。
【図2】車体とバッテリユニットとの固定及び取り外しの状態を示す側面図である。
【図3】実施例1のロック装置に係り、バッテリユニット、ロック装置本体、ピン及び載置台における各位置関係を示す斜視図である。
【図4】実施例1のロック装置に係り、ストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図5】実施例1のロック装置に係り、ロック装置本体の要部を示す断面図である。
【図6】実施例1のロック装置に係り、第1ピン及び第2ピンを示す側面図である。図(A)は第1ピン内に第2ピンが収納された状態を示し、図(B)は第1ピンから第2ピンが突出した状態を示している。
【図7】実施例1のロック装置に係り、バッテリユニットの上昇中におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図8】実施例1のロック装置に係り、バッテリユニットの上昇中におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図9】実施例1のロック装置に係り、バッテリユニットの上昇中におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図10】実施例1のロック装置に係り、車体とバッテリユニットとの固定完了時におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図11】実施例1のロック装置に係り、車体とバッテリユニットとの取り外し時におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図12】実施例1のロック装置に係り、バッテリユニットの下降中におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図13】実施例2のロック装置に係り、バッテリユニットの上昇中におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図14】実施例2のロック装置に係り、車体とバッテリユニットとの取り外し時におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【図15】実施例3のロック装置に係り、ロック装置本体を示す断面図である。
【図16】実施例3のロック装置に係り、車体とバッテリユニットとの取り外し時におけるストライカ装置、ロック装置本体及び載置台を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。図1、2に示すように、実施例1〜3のロック装置は、バッテリ搭載ステーション10(以下、ステーション10という。)において、電気自動車1における車体1aとバッテリユニット3との固定及び車体1aからバッテリユニット3の取り外しを行う装置として採用されている。
【0034】
ステーション10は、上床10aと下床10bとを有している。また、ステーション10には、上床10aと下床10bとを連通する連通口10cが形成されている。上床10aには電気自動車1を配置可能になっている。一方、連通口10cの直下となる下床10b上には移載装置7が配置されている。
【0035】
電気自動車1には、車体1aの下方にバッテリユニット3を搭載可能な搭載スペース1bが形成されている。また、車体1aには、車体1aの前後方向に延びる一対のフレーム1cが設けられている。各フレーム1cには、搭載スペース1b内に位置するように、それぞれボルトを介してストライカ装置9が2個ずつ取り付けられている。各フレーム1cに取り付けられたストライカ装置9同士は、後述するストライカ9bが互いに対面している。なお、各フレーム1cに取り付けられるストライカ装置9の個数は、バッテリユニット3の大きさに応じて適宜変更が可能である。また、図1、2では、他方のフレーム1c及びこのフレーム1cに取り付けられた各ストライカ装置9の図示を省略している。
【0036】
(実施例1)
図3に示すように、実施例1のロック装置は、ロック装置本体5と、ピン11とからなる。実施例1の電気自動車1及びステーション10では、4個のロック装置を採用している。各ロック装置本体5はバッテリユニット3に取り付けられている。また、各ピン11は移載装置7の載置台27に取り付けられている。各ピン11がロック解除手段に相当する。
【0037】
また、図4に示すように、ストライカ装置9は、図1に示すフレーム1cに固定されたベースプレート9aと、ベースプレート9aに固定されたストライカ9bとを有している。ベースプレート9aには、フレーム1cにベースプレート9aを固定するための複数のボルト孔9cが形成されている。ストライカ9bは、鋼材に対して複数回の曲げ加工が施されることで形成されており、略U字形状を呈している。このベースプレート9aとストライカ9bとは溶接により一体とされている。
【0038】
図3に示すように、バッテリユニット3は、矩形の箱形状のケース3aと、このケース3a内に収納された詳細を図示しない複数個のバッテリとからなる。また、ケース3aには、図1に示す車体1aと各バッテリとを電気的に接続可能な図示しない接続端子が設けられている。なお、ケース3aの形状は、図1に示す搭載スペース1bの形状に応じて適宜変更が可能である。
【0039】
図4に示すように、ロック装置本体5は、各ストライカ装置9と対応可能なように、図3に示すケース3aにおける長辺側の側面に各々二個ずつ取り付けられている。図4に示すように、このロック装置本体5は、ハウジング13と、ラッチ15と、ポール17と、ポール固定手段としてのレバー19とを備えている。
【0040】
ハウジング13は、図3に示すように、バッテリユニット3のケース3aに固定されている。ハウジング13には、図4に示すように、上端が開き、下方に延びてストライカ9bを進入させる進入口13bが形成されている。また、ハウジング13には、下端からハウジング13内に向かって開けられ、ピン11を挿通させる挿通孔13cが形成されている。挿通孔13cの周囲には、ハウジング13が曲げ加工されることにより、ピン11を案内するガイド部13dが形成されている。さらに、ハウジング13には、三箇所にボルト孔13eが形成されている。ハウジング13は、各ボルト孔13eにそれぞれ挿通された図示しないボルトによりケース3aに固定されている。また、ハウジング13には、第1〜3回り止めピン101〜103が固定されている。これらの第1〜3回り止めピン101〜103が回り止め手段に相当する。以後、説明を容易にするため、図5〜14では第1〜3回り止めピン101〜103の図示を省略する。
【0041】
ハウジング13内には、図5に示すように、第1揺動軸21、第2揺動軸23及び第3揺動軸25がそれぞれ水平方向に突出して設けられている。第1揺動軸21の軸芯が第1揺動軸芯O1であり、第2揺動軸23の軸芯が第2揺動軸芯O2であり、第3揺動軸25の軸芯が第3揺動軸芯O3である。
【0042】
図4に示すように、ラッチ15は、一部に凹部15cが形成されて略U字形状を呈している。そして、凹部15cの上方側が上側爪部15aとされ、凹部15cの下方側が下側爪部15bとされている。凹部15cには、ハウジング13の進入口13b内に進入したストライカ9bが収まるようになっている。さらに、上側爪部15aの近傍には、凹部15cとは逆側に係合面15dが形成されている。
【0043】
ラッチ15は、第1揺動軸21に対して揺動可能に軸支されており、A1方向及びA2方向に揺動することが可能となっている。このラッチ15は、図示しないコイルばねにより、第1揺動軸21を揺動中心としてA1方向からA2方向(反時計回り方向)に向けて付勢されている。ラッチ15はA1方向に揺動することにより、進入口13b内でストライカ9bを係止する係止状態となる。また、ラッチ15はA2方向に揺動することにより、進入口13b内でストライカ9bを解放する解放状態となる。このように、ラッチ15は、第1揺動軸芯O1回りで揺動することにより、係止状態と解放状態とを切り替えることが可能になっている。また、解放状態にあるラッチ15は、第1回り止めピン101と当接することで、解放状態を超えてA2方向に揺動することが規制されている。
【0044】
ポール17には互いに略直交した係止片17aと操作片17bとが形成され、ポール17は略L字形状を呈している。ポール17は、第2揺動軸23に対して揺動可能に軸支されており、B1方向及びB2方向に揺動することが可能となっている。このポール17は、図示しないコイルばねにより、第2揺動軸23を揺動中心としてB2方向からB1方向(時計回り方向)に向けて付勢されている。ポール17がB1方向に揺動することにより、係止片17aはラッチ15の揺動を固定可能な第1位置に移動する。また、ポール17がB2方向に揺動することにより、係止片17aはラッチ15の揺動を解放可能な第2位置に移動する。このように、ポール17は第2揺動軸芯O2回りで揺動することにより、係止片17aの位置を第1位置と第2位置とに切り替えることが可能になっている。また、B1方向に付勢された状態でポール17は第2回り止めピン102と当接し、B1方向を超えて揺動、すなわち、係止片17aが第1位置を超えて移動することが規制されている。
【0045】
レバー19は、一端側に係止部19aが形成され、他端側に操作部19bが形成されている。レバー19は、略中央で第3揺動軸25に対して揺動可能に軸支されており、C1方向及びC2方向に揺動することが可能となっている。このレバー19は、図示しないコイルばねにより、第3揺動軸25を揺動中心としてC2方向からC1方向(時計回り方向)に向けて付勢されている。レバー19がC1方向に揺動することにより、係止部19aはポール17の揺動を固定可能な第3位置に移動する。また、レバー19がC2方向に揺動することにより、係止部19aはポール17の揺動を解放可能な第4位置に移動する。このように、レバー19は、第3揺動軸芯O3回りで揺動することにより、係止部19aの位置を第3位置と第4位置とに切り替えることが可能になっている。また、C1方向に付勢された状態でレバー19は第3回り止めピン103と当接し、C1方向を超えて揺動、すなわち、係止部19aが第3位置を超えて移動することが規制されている。
【0046】
このロック装置本体5において、ポール17の係止片17aにおける第1位置から第2位置に向かう揺動方向と、レバー19の係止部19aにおける第3位置から第4位置に向かう揺動方向とは同方向となっている。すなわち、ポール17におけるB1方向からB2方向への揺動と、レバー19におけるC1方向からC2方向への揺動とは、各第2、3揺動軸芯O2、O3に対して同方向である。
【0047】
また、図5に示すように、バッテリユニット3の荷重によってストライカ9bに上方向の力Fが作用すれば、ラッチ15はA2方向に揺動しようとする。ポール17がラッチ15のA2方向への揺動を解放する場合には、ポール17はA2方向とほぼ直交するB2方向に揺動し、係止片17aが第1位置から第2位置に向かって揺動しなければならない。そして、レバー19がポール17のB2方向への揺動を解放する場合には、レバー19はB2方向とほぼ同方向であるC2方向に揺動しなければならない。換言すれば、レバー19がB2方向とほぼ逆方向であるC1方向に揺動すれば、レバー19は係止部19aがポール17の揺動を固定する第3位置に留まる。こうして、レバー19は、係止部19aが第3位置にあるとき、係止片17aが第1位置から第2位置に向かって揺動しようとすると、係止部19aが第3位置に留まる。
【0048】
図1に示すように、移載装置7は、下床10b上に固定された基部33と、載置台27と、基部33と載置台27との間に設けられた昇降機構36とからなる。また、移載装置7の近傍には制御装置7aが配置されている。
【0049】
昇降機構36は、下部保持部材31と、一対の第1リンク部材35及び第2リンク部材37と、上部保持部材29とからなる。下部保持部材31は基部33上に固定されている。下部保持部材31には水平方向に延びる一対の長孔31aが形成されている。また、上部保持部材29にも水平方向に延びる一対の長孔29aが形成されている。第1、2リンク部材35、37は、互いに同じ長さに形成され、互いの中央部で連結ピン39によって揺動可能に連結されている。第1リンク部材35の下端は、連結軸41bによって下部保持部材31と揺動可能に連結されている。一方、第2リンク部材37の下端は、連結軸41dによって下部保持部材31と揺動可能かつ長孔31a内を摺動可能となっている。また、第2リンク部材37の上端は、連結軸41cによって上部保持部材29と揺動可能に連結されている。一方、第1リンク部材35の上端は、連結軸41aによって上部保持部材29と揺動可能かつ長孔29a内を摺動可能となっている。載置台27は上部保持部材29に固定されている。
【0050】
基部33内には、図示しないモータと、モータによって連結軸41dに動力を伝達可能な図示しないギヤ列とが設けられている。また、モータは制御装置7aと電気的に接続されている。なお、モータに替えて電動直動シリンダや油圧シリンダ等を採用することも可能である。
【0051】
図3に示すように、各ピン11は、載置台27上において、バッテリユニット3のケース3aに固定された各ロック装置5における各挿通孔13cに挿通可能となる位置にそれぞれ固定されている。
【0052】
図6に示すように、各ピン11は、載置台27の表面27aから垂直方向に突出する第1ピン11aと、第1ピン11a内に設けられた第2ピン11bとを有している。これらの第1ピン11a及び第2ピン11bはいずれも上方向に延在している。
【0053】
第2ピン11bは、載置台27内に設けられた図示しないソレノイドにより、第1ピン11aから伸縮可能になっている。ソレノイドは図1に示す制御装置7aに電気的に接続されている。また、図4に示すレバー19及びポール17は、第1ピン11aがレバー19の操作部19bに当接し、レバー19がC2方向に揺動した後で、第2ピン11bが第1ピン11aから突出し、第2ピン11bが操作片17bに当接するように配置されている。このため、レバー19の係止部19aが第3位置から第4位置に揺動した後で、ポール17の係止片17aが第1位置から第2位置に揺動する。なお、ソレノイドに替えて、電動直動シリンダや油圧シリンダ等を採用することも可能である。
【0054】
以上のように構成されたロック装置では、以下のようにして、車体1aとバッテリユニット3との固定を行うとともに、車体1aからバッテリユニット3の取り外しを行う。
【0055】
(バッテリユニット3の固定)
図1に示すように、ステーション10の上床10aの所定の位置に電気自動車1を配置する。この際、搭載スペース1bが連通口10cの直上、すなわち、移載装置7の直上に位置するよう電気自動車1の位置を調整する。この電気自動車1は、搭載スペース1bにバッテリユニット3が搭載されていない。
【0056】
一方、移載装置7の載置台27上には、バッテリユニット3が設けられている。この状態において、バッテリユニット3は、図7に示すように、各第1ピン11aが各ガイド部13dを介して各挿通孔13cにそれぞれ挿通されている。このため、バッテリユニット3は載置台27上において位置決めされている。また、第1ピン11aにより、レバー19の操作部19bが押圧され、コイルばねの付勢力に抗して、レバー19がC2方向に揺動している(同図中の破線矢印参照。)。このため、レバー19の係止部19aが第3位置から第4位置へ移動しており、ポール17は揺動の固定が解放されている。
【0057】
この状態において、制御装置7aにより載置台27を上昇させて、バッテリユニット3を搭載スペース1bに近接させる(同図中の実線矢印参照。)。これにより、相対的にストライカ9bが進入口13b内へ進入する。
【0058】
そして、図8に示すように、ラッチ15の下側爪部15bとストライカ9bとが当接し、ストライカ9bによってラッチ15が押圧される。これにより、コイルばねの付勢力に抗してラッチ15はA1方向に揺動される(同図中の破線矢印参照。)。また、ラッチ15の下側爪部15bにより、ポール17の係止片17aが押圧される。これにより、コイルばねの付勢力に抗してポール17はB2方向に揺動され、係止片17aは第1位置から第2位置へ移動する(同図中の破線矢印参照。)。
【0059】
図2に示すように、バッテリユニット3が搭載スペース1b内に位置すれば、図9に示すように、ポール17はコイルばねの付勢力によりB1方向へ揺動し、係止片17aが第2位置から第1位置へ移動する(同図中の破線矢印参照。)。このため、係止片17aはラッチ15の係止面15cと係合する。こうして、ラッチ15は係止状態となり、凹部15c内においてストライカ9cを係止した状態となる。この際、バッテリユニット3内のバッテリと電気自動車1との間における電気的な接続も同時に行われる。
【0060】
この後、図10に示すように、制御装置7aにより載置台27を下降させる(同図中の実線矢印参照。)。これにより、挿通孔13c内から第1ピン11aが抜かれ、第1ピン11aによるレバー19の操作部19bに対する押圧が解除される。このため、レバー19は、コイルばねの付勢力により、再びC1方向へ揺動し、係止部19aは第4位置から第3位置へ移動する(同図中の破線矢印参照。)。第3位置へ移動した係止部19aはポール17の係止片17aと係合する。これにより、ポール17におけるB2方向への揺動が規制され、係止片17aが第2位置に移動することが規制される。こうして、レバー19によるポール17の固定が完了し、ポール17によるラッチ15の固定が完了する。こうして、ロック装置本体5によるストライカ9bの固定が完了し、搭載スペース1b内へのバッテリユニット3の固定が完了する。
【0061】
(バッテリユニット3の取り外し)
図2に示すように、ステーション10の上床10aの所定の位置に電気自動車1を配置する。この際も、搭載スペース1bが連通口10cの直上、すなわち、移載装置7の直上に位置するように電気自動車1の位置を調整する。この電気自動車1は、搭載スペース1bにバッテリユニット3が搭載されている。
【0062】
一方、移載装置7の載置台27上には、バッテリユニット3が設けられていない。
【0063】
この状態において、図11に示すように、制御装置7aにより載置台27を上昇させる。そして、載置台27上の各第1ピン11aを各挿通孔13cにそれぞれ挿通させつつ、載置台27とバッテリユニット3及び各ロック装置本体5とを当接させる。この際、各第1ピン11が各ガイド部13dによって案内されながら各挿通孔13c内に挿通されるため、バッテリユニット3に対して載置台27の位置決めが行われる。
【0064】
また、第1ピン11aにより、レバー19の操作部19bが押圧され、コイルばねの付勢力に抗してレバー19がC2方向に揺動される(同図中の破線矢印参照。)。このため、レバー19によるポール17の固定が解放される。この状態で、制御装置7aにより第2ピン11bを第1ピン11aから突出させる。
【0065】
第2ピン11bは、ポール17の操作片17bと当接し、操作片17bが第2ピン11bによって押圧される。これにより、コイルばねの付勢力に抗して、ポール17はB2方向に揺動し、係止片17aは第1位置から第2位置へ移動する(同図中の破線矢印参照。)。このため、ラッチ15の係止面15dと係止片17aとの係合が解除され、ポール17によるラッチ15の固定が解除される。
【0066】
そして、図12に示すように、載置台27を下降させてバッテリユニット3を搭載スペース1b内から下方に移動させる(同図中の実線矢印参照。)。これにより、ラッチ15の上側爪部15aがストライカ9bに押圧されるとともに、コイルばねの付勢力によってA2方向に揺動され、ラッチ15が解放状態となる。このため、相対的にストライカ9bが進入口13bから離脱する方向に移動する。こうして、ロック装置本体5によるストライカ9bの固定が解除され、車体1aからのバッテリユニット3の取り外しが完了する。この際、バッテリユニット3内のバッテリと電気自動車1との間における電気的な接続の解除も同時に行われる。
【0067】
バッテリユニット3の取り外しが完了した後、制御装置7aにより第2ピン11bを第1ピン11aに収納させる。これにより、第2ピン11bによる操作片17bへの押圧が解除される。このため、コイルばねの付勢力により、ポール17はB1方向に揺動され、係止片17aは第2位置から第1位置へ移動される。また、取り外しが完了したバッテリユニット3を載置台27から移動させることにより、第1ピン11aによる操作部19bへの押圧も解除される。このため、コイルばねの付勢力により、レバー19はC2方向に揺動され、係止部17aは第4位置から第3位置へ移動される。なお、バッテリユニット3を載置台27から移動させる前に第2ピン11bを第1ピン11a内に収納することで、第2ピン11bの損傷を未然に防止することができる。
【0068】
以上のように、このロック装置では、移載装置7によって、搭載スペース1bまでバッテリユニット3を上昇させるだけで、車体1aにバッテリユニット3を固定することが可能となっている。同様に、移載装置7によって、搭載スペース1bからバッテリユニット3を下降させるだけで、車体1aからバッテリユニット3を取り外すことが可能となっている。これらのため、このロック装置によれば、車体1aに対するバッテリユニット3の固定及び取り外しを容易に行うことが可能となる。
【0069】
そして、このロック装置では、レバー19によって、係止片17aが第1位置にある状態でポール17の揺動が固定される。このため、このロック装置では、ストライカ9bがロック装置本体5に固定された状態、すなわち、車体1aにバッテリユニット3が固定された状態おいて、ポール17が不意にB1方向からb2方向に揺動され難くなり、係止片17aが第1位置から第2位置へと揺動し難くなる。このため、このロック装置によれば、係止状態のラッチ15が不意に解放状態に揺動されるということが効果的に防止される。
【0070】
また、このロック装置では、ポール17におけるB1方向からB2方向への揺動と、レバー19におけるC1方向からC2方向への揺動とが同方向となっている。このため、ロック解除操作として、各ロック装置本体5の下方から各挿通孔13cに各ピン11(第1ピン11a及び第2ピン11b)を挿通させれば、レバー19とポール17とを一度に揺動させることが可能となっている。このため、ロック装置本体5によるストライカ9bの固定の解除を容易に行うことが可能となっている。また、各ピン11を簡略化することも可能となっている。そして、レバー19がラッチ15やポール17と同様に揺動するものであることから、ロック装置本体5の構成を簡略化することも可能となっている。
【0071】
したがって、実施例1のロック装置によれば、操作が容易であるとともに、より信頼性を高くできる。
【0072】
特に、ロック装置本体5では、レバー19がC2方向からC1方向に向かって付勢されている。このため、係止部19aが第3位置にある状態において、係止片17aが第1位置から第2位置に向かって揺動すると、係止部19aは第3位置に留まるようになっている。
【0073】
つまり、レバー19によってポール17の揺動が固定されている間に、係止片17a第1位置から第2位置に向かって揺動しようとすると、係止片17aは、第3位置に留まる係止部19aと当接することになる。このため、ポール17の揺動が好適に固定されることとなり、バッテリユニット3の固定時におけるロック装置の信頼性が向上している。このため、ストライカ9bがロック装置本体5に固定された状態において、飛び石等がハウジング13内に進入した場合であっても、ポール17やラッチ15が飛び石によって揺動され難くなり、ロック装置本体5に固定されたストライカ9bが不意に解放され難くなっている。
【0074】
また、このロック装置では、ロック解除手段としてピン11が採用されており、このピン11は、レバー19と当接してレバー19をC1方向からC2方向に揺動させる第1ピン11aと、ポール17と当接してポール17をB1方向からB2方向に揺動させる第2ピン11bとを有している。そして、第2ピン11bは、第1ピン11aから伸縮可能に設けられている。また、第1ピン11a及び第2ピン11bは同方向に延在して載置台27に設けられている。
【0075】
これらのため、ピン11の簡略化を実現しつつ、ピン11の小型化も実現している。また、載置台27にピン11を設けることにより、移載装置7によるバッテリユニット3の固定作業及び取り外し作業が容易となっている。
【0076】
さらに、このロック装置において、レバー19及びポール17は、操作部19bと第1ピン11aとが当接し、係止部19aが第4位置に揺動した後で、第2ピン11bと操作片17bとが当接するように配置されている。このため、このロック装置では、レバー19によるポール17の揺動の固定が解放された後、ポール17によるラッチ15の揺動の固定が解放されることとなり、ポール17の揺動の解放とラッチ15揺動の解放とが順序良く行われることとなる。このため、このロック装置では、ロック装置本体5に固定されたストライカ9bを好適に解放することが可能となっている。
【0077】
また、このロック装置におけるロック装置本体5において、図4に示す第1回り止めピン101により、ラッチ15が解放状態を超えて揺動することが規制されている。同様に、第2回り止めピン102により、ポール17が第1位置を超えて揺動することが規制されており、第3回り止めピン103により、レバー19が第3位置を超えて揺動することが規制されている。これらのように、第1〜3回り止めピン101〜103により、ラッチ15、ポール17及びレバー19における不必要な揺動が規制されている。このため、このロック装置本体5、ひいては、ロック装置の信頼性が高くなっている。
【0078】
(実施例2)
図13に示すように、実施例2のロック装置では、実施例1のロック装置における各ピン11の構成が変更されている。また、このロック装置では、移載装置7における載置台27に替えて載置台28が設けられている。このロック装置におけるピン11は、第1ピン11cと第2ピン11dとを有しており、これらの第1ピン11c及び第2ピン11dは、互いに隣接した状態で載置台28に設けられている。
【0079】
第2ピン11dは、第1ピン11よりも全長が長く形成されている。また、第2ピン11dは、載置台28内に設けられた図示しないソレノイドにより、載置台28の表面28aから伸縮可能になっている。このソレノイドも図1に示す制御装置7aに電気的に接続されている。
【0080】
また、各ハウジング13における挿通孔13cは、第1ピン11cと第2ピン11dとを隣接させた状態で挿通可能に形成されている。さらに、ガイド部13dは、これらの第1ピン11cと第2ピン11dとを挿通孔13dに案内可能になっている。このロック装置における他の構成は実施例1のロック装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0081】
このロック装置では、実施例1のロック装置と同様の方法によって、車体1aとバッテリユニット3との固定を行うことが可能になっている。一方、車体1aからバッテリユニット3を取り外す場合には、図14に示すように、制御装置7aにより、載置台28を上昇させ、載置台28上の各第1ピン11c及び各第2ピン11dを各挿通孔13cにそれぞれ挿通させつつ、載置台28とバッテリユニット3とを当接させる。
【0082】
これにより、挿通孔13cに挿通された第1ピン11cにより、操作部19bが押圧され、コイルばねの付勢力に抗してレバー19がC2方向に揺動される(同図中の破線矢印参照。)。このため、レバー19によるポール17の揺動の固定が解放される。この状態で、制御装置7aによって、第2ピン11dを第1ピン11cよりも載置台28の表面28上に突出させる。
【0083】
このため、第2ピン11dは操作片17bと当接し、操作片17bが第2ピン11dによって押圧される。これにより、コイルばねの付勢力に抗して、ポール17はB2方向に揺動され、係止片17aは第1位置から第2位置へ移動される(同図中の破線矢印参照。)。こうして、ポール17によるラッチ15の揺動の固定が解除される。以後は、実施例1におけるロック装置と同様の方法により、ロック装置本体5によるストライカ9bの固定が解除され、車体1aからのバッテリユニット3の取り外しが完了する。なお、このロック装置でも、バッテリユニット3を載置台28から移動させる前に、載置台28の表面28a上において、第1ピン11cと同等、又はそれ以下の長さになるまで第2ピン11dを載置台28内に収納する。これにより、第2ピン11bの損傷を未然に防止することができる。このロック装置における他の作用効果は、実施例1のロック装置と同様である。
【0084】
したがって、実施例2のロック装置も、操作が容易であるとともに、より信頼性を高くできる。
【0085】
(実施例3)
図15に示すように、実施例3のロック装置は、実施例1のロック装置におけるロック装置本体5に替えて、ロック装置本体50が採用されている。このロック装置50もバッテリユニット3(図3参照)に取り付けられている。
【0086】
図15に示すように、ロック装置本体50は、実施例1のロック装置におけるロック装置本体5のポール17及びレバー19に替えて、ポール18及びレバー20を備えている。このレバー20がポール固定手段である。また、このロック装置50では、図4に示す第2、3回り止めピン102、103が設けられておらず、図15に示すように、第1回り止めピン101のみがハウジング13に固定されている。また、ハウジング13には張出部13fが形成されている。
【0087】
ポール18には互いに略直交した係止片18aと操作片18bとが形成され、ポール18は略L字形状を呈している。また、このポール18には、係止片18aと操作片18bとの略中間位置に膨出部18cが形成されている。さらに、ポール18には凸部18dが形成されている。
【0088】
ポール18は、第2揺動軸23に対して揺動可能に軸支されており、B1方向及びB2方向に揺動することが可能となっている。このポール18は、図示しないコイルばねにより、B2方向からB1方向に向けて付勢されている。ポール18がB1方向に揺動することにより、係止片18aはラッチ15の揺動を固定可能な第1位置に移動する。また、ポール18がB2方向に揺動することにより、係止片18aはラッチ15の揺動を解放可能な第2位置に移動する。このように、ポール18は第2揺動軸芯O2回りで揺動することにより、係止片18aの位置を第1位置と第2位置とに切り替えることが可能になっている。また、凸部18dは、ポール18がB2方向に揺動した際に張出部13fと当接可能となっている。
【0089】
レバー20は、一端側に係止部20aが形成され、他端側に操作部20bが形成されている。また、レバー20には、係止部20aから操作部20bにかけて、レバー20の略中央を頂点とする円弧部20cが形成されている。
【0090】
レバー20は、略中央で第3揺動軸25に対して揺動可能に軸支されており、C1方向及びC2方向に揺動することが可能となっている。このレバー20は、図示しないコイルばねにより、C2方向からC1方向に向けて付勢されている。レバー20がC1方向に揺動することにより、係止部20aはポール18の揺動を固定可能な第3位置に移動する。また、レバー20がC2方向に揺動することにより、係止部20aはポール18の揺動を解放可能な第4位置に移動する。このように、レバー20は、第3揺動軸芯O3回りで揺動することにより、係止部20aの位置を第3位置と第4位置とに切り替えることが可能になっている。
【0091】
このロック装置本体50においても、ポール18の係止片18aにおける第1位置から第2位置に向かう揺動方向と、レバー20の係止部20aにおける第3位置から第4位置に向かう揺動方向とは同方向となっている。すなわち、ポール18におけるB1方向からB2方向への揺動と、レバー20におけるC1方向からC2方向への揺動とは、各第2、3揺動軸芯O2、O3に対して同方向である。この構成により、図15において第3揺動軸心O3よりも左側に位置する係止部20aは、第2揺動軸心O2より右側に位置するポール18の膨出部18cに近接する方向に付勢されることになる。
【0092】
このため、ポール18がB1方向に向けて付勢された状態で、かつ、レバー20がC1方向に向けて付勢された状態において、膨出部18c(図15において左方向に移動)と係止部20a(図15において右方向に移動)とが当接し、同じく、操作片18bと円弧部20cとが当接する。このロック装置本体50における他の構成の及びこのロック装置の他の構成は、実施例1のロック装置と同様である。
【0093】
このロック装置においても、実施例1のロック装置と同様に車体1aとバッテリユニット3との固定を行うとともに、車体1aからバッテリユニット3の取り外しを行う(図7〜図12参照。)。
【0094】
特に、このロック装置におけるロック装置本体50では、第2ピン11bによって、ポール18の操作片18bが押圧され、コイルばねの付勢力に抗して、ポール18がB2方向に揺動した際、上記のように、ポール18の凸部18dがハウジング13の張出部13fと当接する。これにより、ポール18が必要以上にB2方向に揺動することが規制される。このため、このロック装置では、バッテリユニット3の取り外しを行う際に、ポール18がコイルばねから外れる等の事態を回避でき、バッテリユニット3の取り外しを好適に行うことが可能となっている。
【0095】
また、このロック装置におけるロック装置本体50では、上記のように、膨出部18cと係止部20aとが当接することにより、ポール18はB1方向を超えて揺動、すなわち、係止片18aが第1位置を超えて移動することが規制されている。同様に、操作片18bと円弧部20cとが当接することにより、レバー20はC1方向を超えて揺動、すなわち、係止部20aが第3位置を超えて移動することが規制されている。つまり、このロック装置本体50において、ポール18はレバー20を回り止め手段とするとともに、レバー20はポール18を回り止め手段としている。
【0096】
このため、このロック装置本体50では、第2、3回り止めピン102、103(図4参照)を設けることなく、ポール18及びレバー20における不必要な揺動を規制することが可能となっている。さらに、ポール18の揺動方向と、レバー20の揺動方向とは同方向であることから、レバー20をポール18の回り止め手段とし易くなっており、同様に、ポール18をレバー20の回り止め手段とし易くなっている。これらのため、ロック装置本体50の製造が容易となっており、このロック装置本体50を有するロック装置は、低コストで信頼性が高くなっている。他の作用効果は実施例1のロック装置と同様である。
【0097】
したがって、実施例3のロック装置も、操作が容易であるとともに、より信頼性を高くできる。
【0098】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0099】
例えば、各ロック装置本体5における各ハウジングの下部と載置台27、28とが当接したことを検知し、検知信号を送信可能な検知手段を設け、制御装置7aは、この検知信号に基づいて移載装置7を上昇又は下降させても良い。この場合、取り外されたバッテリユニット3が不意に載置台27、28上に落下することを未然に防止することが可能となる。
【0100】
また、ラッチ15における係止状態及び解放状態を検知し、検知信号を送信可能な検知手段を設け、制御装置7aは、この検知信号に基づいて第2ピン11b、11dを突出又は収納させても良い。この場合、バッテリユニット3の固定作業及び取り外し作業において、誤操作が未然に防止されるようになる。
【0101】
さらに、ケース3aに複数の凹部を形成し、各凹部内に各ロック装置本体5をそれぞれ位置させつつ、各ロック装置本体5とケース3aとを固定させる構成としても良い。この場合、バッテリユニット3から各ロック装置本体5が突出せず、搭載スペース1bを小型化することが可能となる。
【0102】
また、第1回り止めピン101に替えて、ハウジング13をラッチ15の回り止め手段としても良い。この場合、例えば、ハウジング13の形状を一部変形し、解放状態にあるラッチ15とハウジング13とを当接可能とすることで、ハウジング13をラッチ15の回り止め手段とすることができる。また、例えば、解放状態にあるラッチ15と当接可能な凸部等をハウジング13に設けることにより、ハウジング13をラッチ15の回り止め手段とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、車体とバッテリユニットとを固定するロック装置として特に利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1…電気自動車(車両)
3…バッテリユニット
5…ロック装置本体
7…移載装置
9b…ストライカ
11…ピン(ロック解除手段)
11a、11c…第1ピン
11b、11d…第2ピン
13…ハウジング
13b…進入口
15…ラッチ
17…ポール
18…ポール
19…レバー(ポール固定手段)
20…レバー(ポール固定手段)
50…ロック装置本体
101…第1回り止めピン(回り止め手段)
102…第2回り止めピン(回り止め手段)
103…第3回り止めピン(回り止め手段)
O1…第1揺動軸芯
O2…第2揺動軸芯
O3…第3揺動軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカを進入させる進入口が形成されたハウジングと、
該ハウジングに対して第1揺動軸芯回りに揺動可能に支持され、該進入口内で該ストライカを係止する係止状態と該進入口内で該ストライカを解放する解放状態とを切り替え可能なラッチと、
該ハウジングに対して第2揺動軸芯回りに揺動可能に支持され、該ラッチの揺動を固定可能な第1位置と該ラッチの揺動を解放可能な第2位置とを切り替え可能なポールと、
該ポールの揺動を固定又は解放可能なポール固定手段と、
該ポール固定手段による該ポールの揺動の固定を解放するとともに、該ポールを該第1位置から該第2位置へ揺動させるロック解除手段とを備えていることを特徴とする車両用ロック装置。
【請求項2】
前記ポール固定手段は、前記ハウジングに対して第3揺動軸芯回りに揺動可能に支持され、前記ポールの揺動を固定可能な第3位置と該ポールの揺動を解放可能な第4位置とを切り替え可能であり、
前記ポールにおける前記第1位置から前記第2位置に向かう揺動方向と、該ポール固定手段における該第3位置から該第4位置に向かう揺動方向とは、同方向である請求項1記載の車両用ロック装置。
【請求項3】
前記ロック解除手段は、前記ポール固定手段と当接して該ポール固定手段を前記第3位置から前記第4位置に揺動させる第1ピンと、前記ポールと当接して該ポールを前記第1位置から前記第2位置に揺動させる第2ピンとを有し、
該第1ピン及び該第2ピンは同方向に延在している請求項2記載の車両用ロック装置。
【請求項4】
前記ポール固定手段及び前記ポールは、該ポール固定手段と前記第1ピンとが当接し、該ポール固定手段が前記第4位置に揺動した後で、前記第2ピンと該ポールとが当接するように配置されている請求項3記載の車両用ロック装置。
【請求項5】
前記第2ピンは、前記第1ピンから伸縮可能に設けられている請求項4記載の車両用ロック装置。
【請求項6】
前記ポール固定手段は前記第4位置から前記第3位置に向かって付勢されており、該ポール固定手段が該第3位置にあるときに、前記ポールが前記第1位置から前記第2位置に向かって揺動すると、該ポール固定手段は該第3位置に留まるように配置されている請求項2乃至5のいずれか1項記載の車両用ロック装置。
【請求項7】
前記ラッチは前記係止状態から前記解放状態に向かって付勢され、前記ポールは前記第2位置から前記第1位置に向かって付勢され、
該ラッチが該解放状態を超えて揺動することを規制し、該ポールが該第1位置を超えて揺動することを規制し、該ポール固定手段が前記第3位置を超えて揺動することを規制する回り止め手段を備え、
該ラッチ、該ポール及び該ポール固定手段の少なくとも一つは、該ハウジング又は該ラッチ、該ポール及び該ポール固定手段のうちで自己を除くものが該回り止め手段とされている請求項6記載の車両用ロック装置。
【請求項8】
前記ポールは前記ポール固定手段を前記回り止め手段とし、
該ポール固定手段は該ポールを該回り止め手段としている請求項7記載の車両用ロック装置。
【請求項9】
前記ハウジングはバッテリユニットに固定され、前記第1ピン及び前記第2ピンは該バッテリユニットを移動させるための移載装置又は車体に設けられている請求項1乃至8のいずれか1項記載の車両用ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−28324(P2013−28324A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241882(P2011−241882)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】