説明

車両用交流発電機及び車両用発電電動装置

【課題】整流装置の冷却のために別部品を追加することなく、効率的に整流装置を冷却可能な車両用回転電機を提供する。
【解決手段】回転子磁極6が固定されたシャフト9が軸受けにより回転自在に支持された回転子5と、回転子5に取り付けられ回転子5の回転により冷却風を発生させるファン15と、固定子コイル3を有し、回転子5の外周に配置された固定子1と、軸受け及び固定子1を支持するとともに、ファン15によって発生した冷却風の通路を形成するRブラケット11と、回転子5から発生した電力を整流する整流装置25と、固定子コイル3と整流装置25間を電気的に接続する導電体と、導電体の周囲を絶縁部材で形成する結線部品27と、を有し、固定子1の固定子コイル3と整流装置25間に結線部品27を配置した車両用交流発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用交流発電機及び車両用発電電動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における電気負荷に電力を供給するために、車両用交流発電機が内燃機関であるエンジンに搭載されている。車両用交流発電機ではエンジンの回転力をベルト,プーリーを介して回転子を回転させ、固定子巻線に交流電力を発生する。交流発電機のリアブラケットには、発生した交流電力を直流に整流するための整流装置が設置されており、整流された電力をバッテリーなどの蓄電池に供給する。回転子に設けられたファンは整流装置近傍から冷却風を取り込み整流装置の冷却を行う。その後、冷却風は発熱した固定子のエンドコイル部を通過して回転電機外部へと排気される。
【0003】
従来より、冷却風は電子部品を冷却するための冷却フィンと、回転電機側のリアブラケット間から取り込まれ、リアブラケット中心近傍に設けられた通風窓を通過した後、回転電機内のエンドコイル部を通過して、回転電機外部に排気される技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、冷却風を反リアブラケット側から取り入れる構造、すなわち整流装置の冷却フィンを回転軸の近傍に設け、更には外径側から内径側に向かうに従いフィンの突出高さを大きくして、放熱面積を増加させる技術が知られている(例えば特許文献2参照)。本方式では反リアブラケット側のエリアから冷却風を取り入れることが可能で、回転軸と平行な方向からの冷却風の取り入れも可能となる。これについても上記と同様に、取り込まれた冷却風は、リアブラケット中心近傍に設けられた通風窓を通過した後、回転電機内のエンドコイル部を通過して、回転電機外部に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−166538号公報
【特許文献2】特開2003−299313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両の小型化,エンジンルームの小型化が進む中、車両用交流発電機自体にも小型化が要求されている一方で、電気負荷の増大による高出力化、更には車両用交流発電機自体の多機能化,高効率化もまた要求されている。そのような状況の中、特許文献2に記載のように、回転電機の反リアブラケット側から回転軸近傍を通して冷却風を取り入れる構造、特に回転軸と平行な方向から冷却風を取り入れる構造では、整流装置を構成する電子部品の搭載スペースは減少し、リアブラケット投影面上において電子部品が占める割合が増加するため、冷却風用の窓面積が減少してしまう。更には上記したようなエンジン始動の機能も付加することで、回転位置検出装置などの部品も回転軸近傍に配置されることとなり、回転軸と平行な方向から冷却風を取り入れる構造は、さらに厳しいこととなる。そのため、上記したように回転電機の外形側から冷却風を取り入れる構造が考えられるが、冷却風が取り込まれる整流装置とリアブラケット間部は、リアブラケットの排気窓と比較的近接した構造となるため、整流装置並びに固定子のエンドコイル部を通過した温風が再度、整流装置とリアブラケット間から取り入れられることとなる。結果、整流装置部に取り込まれる風の温度が高くなり、効率的に整流装置を冷却できない課題がある。
【0007】
一方で回転電機の高出力により、固定子のエンドコイル部分も発熱量も大きくなる。固定子のエンドコイル部分は比較的大きな発熱量をもつため、その放射熱はリアブラケットの温度を上昇させ、リアブラケットがアルミダイカスト等の放熱性の良い材料で構成される場合には、整流装置とリアブラケット間の冷却風通路、更には、整流装置自体の温度も上昇させてしまうことがあげられる。そこでエンドコイルからの放射熱が引き起こす冷却風通路または整流装置自体の温度上昇に対して、リアブラケットのエンドコイル側もしくは整流装置側に斜熱板等を設けることが考えられるが、部品点数が増加してしまい、コスト増加へと繋がってしまう。
【0008】
本発明の目的は、整流装置の冷却のために別部品を追加することなく、効率的に整流装置を冷却可能な車両用回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転子磁極を有し、回転子磁極が固定された回転軸が2つ以上の軸受けにより回転自在に支持された回転子と、回転子に取り付けられ回転子の回転により冷却風を発生させるファンと、固定子巻線を有し、回転子の外周に配置された固定子と、軸受け及び固定子を支持するとともに、ファンによって発生した冷却風の通路を形成するブラケットと、回転子から発生した電力を整流する整流装置と、固定子巻線と整流装置間を電気的に接続する導電体と、導電体の周囲を絶縁部材で形成する結線部品と、を有し、固定子の固定子巻線と整流装置間に結線部品を配置した車両用交流発電機である。
【0010】
また本発明は、回転子磁極を有し、回転子磁極が固定された回転軸が2つ以上の軸受けにより回転自在に支持された回転子と、回転子に取り付けられ回転子の回転により冷却風を発生させるファンと、固定子巻線を有し、回転子の外周に配置された固定子と、軸受け及び固定子を支持するとともに、ファンによって発生した冷却風の通路を形成するブラケットと、回転子から発生した電力を整流する整流装置と、固定子巻線と整流装置間を電気的に接続する導電体と、導電体の周囲を絶縁部材で形成する結線部品と、回転子の回転位置を検出する磁気検出手段と、を有し、固定子の固定子巻線と整流装置間に結線部品を配置した車両用発電電動装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、整流装置の冷却のために別部品を追加することなく、効率的に整流装置を冷却可能な車両用回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による車両用交流発電機の整流装置である。
【図3】本発明の一実施形態による車両用交流発電機の整流装置の固定子と結線部品が接続された状態の外観である。
【図4】本発明の一実施形態による結線部品の外観図である。
【図5】本発明の一実施形態による結線部品の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態結線部品に対して、固定子コイルと向かい合う面に板状部材を設けた場合の外観である。
【図7】本発明の一実施形態による車両用発電電動装置の全体構成を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による回転子の磁極位置検出装置用の被検出体である磁気部材と磁気部材ホルダーの外観である。
【図9】本発明の一実施形態による磁極位置検出装置の磁気検出手段の鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図9を用いて、本発明の一実施形態による車両用交流発電機並びに車両用発電電動装置について説明する。
【0014】
以下の実施形態は、特に車両の電気的負荷及び蓄電池に電力を供給する車両用交流発電機、更にはエンジン始動の機能も兼ね備えた発電電動装置に関する。整流素子とコイル間を接続する端子台の代わりに、車両用交流発電機の整流装置と固定子のエンドコイル間に、固定子のコイルと整流装置を接続するための導電体を備え、その周囲を熱伝導性の低い絶縁物によって形成される結線部品を介在させることで、エンドコイルの熱が、整流装置に伝わるのを抑える。更には上記結線部品には、整流装置とは逆方向に排気がされるよう結線部品の樹脂部の外周部分には、整流装置とは離れる方向に傾斜が設けてあり、回転子部に設けられたファンが生成する冷却風が、交流発電機のエンドコイル部分を通過しリアブラケット外に排気された後、再び整流装置とリアブラケット間に入り込むのを防ぐことで、整流装置の冷却のために別部品を追加することなく、効率的に整流装置を冷却可能な車両用回転電機を提供する。
【0015】
図1を用いて本実施形態による車両用交流発電機100の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態による車両用交流発電機100の全体構成を示す断面である。図1に示す車両用交流発電機100は、ルンデル型回転子を備えた界磁巻線型回転機である。車両用交流発電機100は、固定子1と回転子5を備えている。固定子1は、固定子コア2(固定子鉄心)と、固定子コイル3(電機子巻線)を備えている。固定子1は回転子5を囲うように円筒状に形成され、固定子コア2は、円筒部とこの円筒部の内周側に、円筒部の中心に向かって突出した磁極部とからなる。固定子コア2は、電磁鋼板や炭素鋼板などの薄い鋼板を重ねるように積上げられ、固定子コア2の外周を数箇所積層方向に溶接して形成されている。薄板の鋼板から、円筒部に相当するリング部と、磁極部に相当する突出部が一体的にプレス打ち抜き成形される。固定子コア2の磁極部は、円筒部の内周に等間隔で形成されている。隣接する磁極部の間には、周方向に等間隔にスロット部が形成される。固定子コア2を形成する鋼板は、帯状の鋼板にスロットと磁極部を打ち抜いたものを、円筒上に形成してもよい。このスロット部に図には示さない絶縁紙4が挿入され、さらに固定子コイル3が挿入されることで、固定子コイル3が磁極部に巻回されている。
【0016】
上記固定子1はアルミニウム製のFブラケット10とRブラケット11間に位置し、通しボルトによって挟む形で固定されている。
【0017】
回転子5は、界磁巻線型回転機のルンデル型回転子である。回転子5は、回転子磁極6と、界磁巻線7を備えている。回転子磁極6は、2対のクロウポール型の磁極である。爪形磁極6Aと爪磁極6Bの爪部が互い違いに対向して回転子磁極6を構成し、その内周側に位置する巻線枠8に界磁巻線7が巻回されて、回転子磁極6に収納されている。回転子磁極6がシャフト9に固定されることで、界磁巻線型回転機のルンデル型回転子5を構成する。界磁巻線7には、ブラシホルダー12に収納されたブラシ13から、スリップリング14を介して電流を供給され、クロウポール型の回転磁極6に磁束を発生させる。スリップリング14からは絶縁被覆を被った2本の電線が出ており、また同様にして界磁巻線7からも絶縁被覆を被った2本の電線を引き出し、界磁ターミナル部17にて接続固定されている。界磁ターミナル部17は界磁線を固定するよう加工がなされた金属板を絶縁性のある樹脂材にて一体成形したものであり、シャフト9に固定されている。
【0018】
回転軸であるシャフト9はプーリー側軸受け18,反プーリー側軸受け19によって支持されている。
【0019】
車両用交流発電機100が車両のエンジンに取り付けられたとき、エンジン軸と回転子5のプーリー21はベルト等の連結部材を介して機械エネルギーの授受を行う。プーリー21はプーリーナット22にてシャフト9に取り付けられている。
【0020】
プーリー側軸受け18の内輪側は、固定子コア2との位置調整を行うスペーサ20を介在させてシャフト9に取り付けられる。またプーリー側軸受け18の外輪側はFブラケット10の中心部に形成された筒状部分に納められ、おさえ板23とおさえ板用ボルト24にて固定されている。反プーリー側軸受け19の内輪側はシャフト9に圧入されており、また外輪側はRブラケット11の中心部に形成された筒状部分に収納される。今回、反プーリー側軸受け19の外周には、部分的にリング状に形成される樹脂成形を施したものを採用している。また回転子磁極6には、車両用交流発電機100の冷却のためにファン15,16が取り付けられており、回転子5の回転とともに、外気を車両用交流発電機100内に取り込むことが可能となっている。
【0021】
またRブラケット11には整流装置25がボルト26にて取り付けられており、また固定子コイル3には、結線部品27が取り付けられている。結線部品27と整流装置25はボルト28にて電気的に接続されている。整流装置25にはアルミベース25Aが取り付けられており、車両交流発電機の外周側からRブラケット11と整流装置5の間をファン15によって取り込まれた冷却風50により冷却される。冷却風50はRブラケット11と整流装置25間から取り込まれ、Rブラケット11の中心近傍に設けられた通気孔を通り、固定子コイル3の周囲を通過した後、Rブラケット周囲に設けられた排気孔を抜けて車両用交流発電機100の外へと排気される。
【0022】
図2は一例として車両用交流発電機100の整流装置部分25の概略図である。整流装置25はU字形状をした樹脂材にて形成されており、4つのエリアに分割されている。4つのエリア中3つのエリア30a,30b,30cは整流部であり、今回三相の車両用交流発電機100を想定していることによる。整流部にはそれぞれのエリア毎に所望の整流素子と基板が配置されており、樹脂材内には導電性のある金属体をインサート成形しており、整流素子と基板の配置後、整流素子との電気的接続を行う。整流素子と基板の電気的接続が終わった後、このエリア30a,30b,30cに絶縁性のある樹脂材を流し込み、整流素子と基板並びに接合部の保護を行う。今回30a,30b,30c内に用いている整流素子はMOSFET(相補型金属酸化膜半導体)を想定している。4つのエリア中1つのエリア30dには、車両用交流発電機100の界磁巻線7に所望の電流を流す界磁駆動回路や、固定子コイル3から発生する出力電力を整流素子として使用するMOS−FETの駆動や、エリア30d近辺に設けられたコネクタ31を通して、CANやLINといった車両側との通信を行うICが組み込まれている。
【0023】
また3つのエリア30a,30b,30cの一画には、それぞれ導電性のある金属体を整流装置25内にインサート成形した端子部32a,32b,32cがむき出しになっており、固定子コイル3と整流装置部分25間との電気的接続を行う。また整流装置部分25には車両側バッテリーとの直流電力入出力部である端子部33が設けられている。この端子部は外部から圧着端子付き電線が接続可能なようなボルト形状をしている。また先にも示したが図2に示す整流装置部分25の片面には円盤状のアルミニウムベース25Aが取り付けられており、回転子5に設けられたファン15の吸気効果により、アルミニウムベース25Aを冷却することで、整流装置25A上に配置してある整流素子や界磁駆動回路部分やIC類を冷却することが可能である。図2において整流装置25上にU字成形された樹脂部の欠損部分には、ブラシホルダー12とブラシ13を配置している。ブラシホルダー12は、アルミニウムベース25A上にボルト34等で固定され、更にブラシホルダー12は電気接続用の端子12a,12bを設け、30d内に設けた界磁駆動回路部との電気的接続を行う。
【0024】
図3に固定子とコイル3と結線部品27が接続された状態を示す。また図4には結線部品27を図3のA方向から見た図を示し、図5には結線部品27をB−B断面にてカットした断面を示す。図3に示す例では固定子コイル3が三相のスター結線であり、出力線である口出し線3a,3b,3cと、中性線である口出し線3d,3e,3fの計6ヶ所の口出し線が突出している。一方、結線部品27は出力線結線用に三相分の導体、40,41,42と、中性線結線用の導体43を持ち、それぞれの導体には三相の出力線結線用にU字状の端子40a,41a,42aと、中性線結線用にU字状の端子43a,43b,43cの端子部を持ち、それぞれの口出し線3aから3fと電気的接続が行えるようになっている。結線部品27は図5の断面図に示すように、結線部品27の周囲を絶縁性のある樹脂29にて形成されており、樹脂29内部には電気的接続を行う導体40,41,42そして43がインサートされている。出力線結線用の導体40,41,42には整流装置25と接続するために、結線部40b,41b,42bが設けられており、図2で示した端子部32a,32b,32cとボルト28にて接続される。
【0025】
図4において出力線結線用の三相分の導体、40,41,42は、樹脂部分29で隠れている部分は点線で示しており、また中性線結線用の導体43は樹脂部品29から出た部分のみを記している。出力線結線を行う導体40,41,42は同一平面上に配置されており、導体40,41,42は中性線結線用導体43とは、樹脂部品29を介在させて配置している。今回の例では固定子コイル3がスター結線であるため、導体43が必要であるが、三相のデルタ結線である場合には、導体43は省略することが可能である。
【0026】
この例では端子と口出し線は端子を加締めた後、ハンダ接続を行うことで電気接続を行う形状となっているが、抵抗溶接等の接合技術を用いても良い。
【0027】
また結線部品27の中央部には、固定用ボルト44がインサート成形されている。これは結線部品27をRブラケット11に固定するために設けられており、このボルト44がRブラケット11に設けられた貫通穴を通過した後、ナットにて固定される。今回このボルトは結線部品27を固定するためのものであり、振動条件等によってはリベット等で代用することも可能であり、更に振動条件が低い場合では、省略することも考えられる。図5に示すように、結線部品27の形状を担う樹脂部分29は、結線部品27の外周部分に傾斜部29Aが設けられている。この傾斜部29Aは固定子コイル3と結線されたとき図1の車両用交流発電機100において、整流装置5とは離れる方向に傾斜する形状となっている。
【0028】
回転子5の回転数が低い場合、ファン15によって取り込まれる冷却風50の風量は比較的少なく、結線部品27が介在しない状態では、固定子コイル3からの銅損熱が熱伝導性のよいアルミニウム製のRブラケット11に伝わり、Rブラケット11と整流装置25間の形成される冷却風の通風路、更には整流装置25のアルミベース25Aと伝わることとなり、固定子コイル3の熱が整流装置5の温度を上げてしまう。特に車両用交流発電機100の構造では、固定子コイル3と整流装置25間の距離が比較的短いため、上記温度上昇への影響は顕著である。
【0029】
また今回、整流装置25内の整流素子はMOS−FETを想定している。現在、車両交流発電機に使用する整流素子は、ダイオードが主流であるが、MOS−FETにすることで、素子自体の抵抗を低く抑えることができ、車両交流発電機の効率向上へと繋がる。またMOS−FETはON−OFF制御が可能であるため、直流電源であるバッテリーから電力を供給し交流変換することで、回転電機を力行動作させることが可能となり、発電電動装置としても使用することが可能となる。
【0030】
一方、MOS−FET自体の耐熱温度がダイオードに比べて低いことがあげられる。よってダイオードでは多少固定子コイル3から熱影響を受けても耐熱性が高いことから素子自体の耐力があったものの、整流素子をMOS−FETにすることで、固定子コイル3からの熱影響を抑制することが必須となる。
【0031】
今回の実施形態では図2に示すとおり固定子コイル3と結線部品27を接続することで、図1に示すよう、比較的熱抵抗の高い樹脂部材で形成される結線部品27はRブラケット11と固定子コイル3間に配置されるようになる。よって結線部品27が固定子コイル3と整流装置間の断熱の役目をし、固定子コイル3からの発熱がRブラケット11に伝わるのを抑制することができ、整流装置5の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0032】
また回転子5の回転数が高い場合、ファン15によって取り込まれる冷却風50の風量は比較的大きくなる。その際、結線部品27の樹脂傾斜部29Aが無い状態では、整流装置25のアルミベース25A及び固定子3を冷却した風50が、再度Rブラケット11と整流装置5間に流入してしまうこととなり、整流装置5を効率的に冷却するのが困難となる。今回の実施形態のように結線部分27に樹脂傾斜部29Aを設けることで、冷却風50が車両交流発電機100から排気される際、整流装置5とは離れる方向に排気されることとなるため、排気された冷却風50が再びRブラケット11と整流装置25間に流入することを抑制することができ、Rブラケット11と整流装置25間に外気と同等温度の冷却風を取り込むことが可能となる。今回の例では冷却風が車両用交流発電機100の外周側からのみRブラケット11と整流装置25の間に取り込まれるようにした。対し、Rブラッケト上の投影面積に対し、配置される部品が少なかったり、搭載部品を軸方向に重ねて配置したりすることで、車両用交流発電機100の軸方向からも冷却風を取り入れる構造にした場合、軸方向にも冷却フィンを形成できるよう整流装置25のアルミベース25Aを鋳物等で形成し、車両交流発電機100の外周側、軸方向から冷却風50を取り入れる構造にした場合でも、同じ効果が得られる。
【0033】
図6には図4の結線部品27に対し、結線部品27の固定子コイル3と向き合う面から見た図を示す。図6では図5まで記載の内容に存在しない板状部材27aが配置されている。図6では内径側から外径側に向けて板状部材が伸びるように配置されており、Rブラケット11の排気窓に合わせて上記板状部材27が設けられることで、よりスムーズな冷却風50の排気を促すこととなる。
【0034】
図7には、本発明の一実施形態による車両用発電電動装置200の全体構成を示す断面を示す。図7の車両用発電電動装置の基本構成は、図1に示す車両用交流発電機100と同じように、ルンデル型回転子を備えた界磁巻線型回転機である。車両用発電電動装置200は、固定子201と回転子205を備え、固定子101は、固定子コア(固定子鉄心)202と、固定子コイル(電機子巻線)203を備えている。固定子201は回転子20を囲うように円筒状に形成され、固定子コア202は、円筒部とこの円筒部の内周側に、円筒部の中心に向かって突出した磁極部とからなる。固定子コア202は、円筒部に相当するリング部と、磁極部に相当する突出部がプレス打ち抜き成形された、薄い鋼板を重ねるように積上げられ、固定子コア202の外周を数箇所積層方向に溶接して形成されている。このスロット部に図には示さない絶縁紙204が挿入され、さらに固定子コイル203が挿入されることで、固定子コイル203が磁極部に巻回されている。上記固定子201はアルミニウム製のFブラケット210とRブラケット211間に位置し、通しボルトによって挟む形で固定されている。
【0035】
回転子205は、界磁巻線型回転機のルンデル型回転子である。回転子205は、回転子磁極206と、界磁巻線207を備えている。回転子磁極206は、2対のクロウポール型の磁極である。爪形磁極206Aと爪磁極206Bの爪部が互い違いに対向して回転子磁極206を構成し、その内周側に巻線枠208に界磁巻線207が巻回されて、回転子磁極206に収納されている。回転子磁極206がシャフト209に固定されることで、界磁巻線型回転機のルンデル型回転子205を構成する。界磁巻線207には、ブラシホルダー212に収納されたブラシ213から、スリップリング214を介して電流を供給され、クロウポール型の回転磁極206に磁束を発生させる。スリップリング214からは絶縁被覆を被った2本の電線が出ており、また同様にして界磁巻線207からも絶縁被覆を被った2本の電線を引き出し、界磁ターミナル部217にて接続固定されている。界磁ターミナル部217は界磁線を固定するよう加工がなされた金属板を絶縁性のある樹脂材にて一体成形したものであり、シャフト209に固定されている。
【0036】
回転軸であるシャフト209はプーリー側軸受け218,反プーリー側軸受け219によって支持されている。
【0037】
車両用発電電動装置200が車両のエンジンに取り付けられたとき、エンジン軸と回転子205のプーリー221はベルト等の連結部材を介して機械エネルギーの授受を行う。プーリー221はプーリーナット222にてシャフト209に取り付けられている。
【0038】
プーリー側軸受け218の内輪側は、固定子コア202との位置調整を行うスペーサ220を介在させてシャフト209に取り付けられる。またプーリー側軸受け218の外輪側はFブラケット210の中心部に形成された筒状部分に納められ、おさえ板223とおさえ板用ボルト224にて固定されている。反プーリー側軸受け219の内輪側はシャフト209に圧入されており、また外輪側はRブラケット211の中心部に形成された筒状部分に収納される。また回転子磁極206には、車両用発電電動装置200の冷却のためにファン215,216が取り付けられており、回転子205の回転とともに、外気を車両用発電電動装置200内に取り込むことが可能となる。
【0039】
またRブラケット211には整流装置225がボルト226にて取り付けられており、また固定子コイル203には、結線部品227が取り付けられている。結線部品227と整流装置225はボルト228にて電気的に接続されている。整流装置225にはアルミベース225Aが取り付けられており、車両用発電電動装置200の外周側からRブラケット211と整流装置205の間をファン215によって取り込まれた冷却風250により冷却される。冷却風250はRブラケット211と整流装置225間から取り込まれ、Rブラケット211の中心近傍に設けられた通気孔を通り、固定子コイル203周囲を通過した後、Rブラケット周囲に設けられた排気孔を抜けて車両用発電電動装置200の外へと排気される。
【0040】
また今回図7に示す車両用発電電動装置200は磁極位置検出用の被検出体である磁気部材300と磁気部材ホルダー301を搭載している。更には磁極位置検出装置用の磁気検出手段302も同時に搭載している。図8には回転子の磁極位置検出装置用の被検出体である磁気部材300と磁気部材ホルダー301を示す。今回磁気部材は永久磁石とし、磁気部材ホルダー301はしぼり加工を施した鋼板で形成されている。磁気部材300である永久磁石は、今回固定子2の磁極が36個で、回転子コア206が12極であることから、周方向に12分割されて交互に着磁されている。また永久磁石の着磁方向は回転軸と同方向としている。磁気部材300は磁気部材ホルダー301内に、接着剤等で固定され、磁気部材ホルダー301がシャフト209に圧入されている。
【0041】
図9に磁極位置検出装置の磁気検出手段302の鳥瞰図を示している。今回の例では磁極位置検出装置の磁気検出手段302の磁気検出部材303は3個のホールICを用いている。3個のホールIC303は、同一円上でかつ等ピッチにて、磁気検出部材用基板304に配置されている。磁気検出部材用基板304は樹脂材を成形したセンサハウジングA305と、センサハウジングB306に収納され、センサハウジングB306に設けられた間口から信号線307を取り出して車両用発電電動装置200上の整流装置部分225に電気的に接続される。信号線307は、磁気検出部材303からの3個の出力信号と電源の+と−の計5個の信号線で構成されている。磁極位置検出装置の磁気検出手段302のセンサハウジングA305とセンサハウジングB306は接着剤等で固定され、センサハウジングA305に設けられたアーム部308によって、Rブラケット211にボルト等で固定される。また磁極309は磁気部材300からの磁束が磁気検出部材303により多く通過するよう、炭素鋼などの磁性体によって形成され、センサハウジングB306に取り付けられている。
【0042】
アイドルストップ機能を備えた車両で本車両用発電電動装置が搭載された車両において、車両がアイドルストップから復帰する際、車両側からのアイドルストップ解除の信号や磁極位置検出装置の磁気検出手段302の信号などから、整流装置225部分に搭載されたMOS駆動用のICは、整流装置内のMOS−FETをON−OFFし、更には界磁駆動回路が界磁巻線207に所望の電流を流すことで、発電電動装置200を力行駆動させ、車両エンジンをスタートさせる。エンジン完爆後には、車両発電電動装置200は発電装置として働くこととなる。今回、磁気検出部材303はホールICを使用したが、磁気抵抗センサや、レゾルバなどを用いても良い。
【0043】
車両交流発電機100と同様、図7に示す結線部品227の外周側には、整流装置225とは離れる方向に傾斜部が設けられた形状となっている。
【0044】
この効果は車両交流発電機100と同様、回転子205の回転数が低い場合、冷却風250の風量は比較的、結線部品227が介在しない状態では、固定子コイル203からの熱が整流装置225の温度上昇を促してしまう。
【0045】
今回の実施形態では図2に示すとおり固定子コイル3と結線部品27を接続することで、結線部品227が固定子コイル203と整流装置225間の断熱の役目をし、固定子コイル203が整流装置225の温度上昇を促すのを抑制することができる。
【0046】
特に本実施例の発電電動装置では、停止状態のエンジンを回転させる力行動作を要するため、固定子コイルには回転数の低い状態で大きな電流を通電する必要があり、固定子コイルからの発熱量はより大きなものとなる。よって結線部品227は固定子コイル203と整流装置間225の断熱に大きく寄与するものとなる。
【0047】
また回転子205の回転数が高い場合、ファン215によって取り込まれる冷却風250の風量は比較的大きくなる。その際、結線部分227に樹脂傾斜部を設けることで、冷却風250が車両用発電電動装置200から排気される際、整流装置225とは離れる方向に排気されることとなるため、排気された冷却風250が再びRブラケット211と整流装置225間に流入することを抑制することができ、Rブラケット211と整流装置225間に外気と同等温度の冷却風を取り込むことが可能となる。
【0048】
今回の車両用発電電装装置200では、冷却風250が車両用発電電装装置200の外周側からのみ取り込まれるようにしたが、車両用交流発電機100に示した同様の事情で、軸方向からも冷却風を取り入れることが可能な場合には軸方向側にも整流装置225のアルミベース225Aを延長し、整流装置225を外周方向,軸方向から冷却できる構造にした場合でも、同じ効果が得られる。
【0049】
また図6のように結線部品227の固定子コイル203と向き合う面に、内径側から外径側に向けて板状部材が伸びるように配置しても、車両交流発電機100と同様の効果が得られる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、整流素子と固定子コイルを接続する部材の代わりに、車両用交流発電機において、固定子コイルと整流装置間を電気的に接続する導体と、その周囲を絶縁材部材で形成する結線部品を、固定子コイルと整流装置間に介在させることで、接続部品が断熱材の役目を果たし、新たな部品の追加無しに、固定子コイルからの発熱が整流装置の温度を上げることを抑制することができる。
【0051】
また接続部品の固定子コイルと向き合う面の外周側に、整流装置とは離れる方向に傾斜部を設けることで、リアブラケットと整流装置間から流入した冷却風が、整流装置,固定子コイルを冷却した後、再度リアブラケットと整流装置間に流入することを抑制することができ、整流装置の効率的な冷却を行うことができる。
【0052】
更には本実施形態では車両用発電電動装置が車両交流発電機に似たような構成である場合に同様に適用できるものである。
【0053】
特に整流素子としてMOS−FETを採用した場合には、MOS−FETの耐熱温度は、通常整流素子として使われているダイオードに比べて低いため、固定子コイルと整流装置間に断熱部材によって形成される接続部品を介在させることは、MOS−FETの温度上昇を抑えるのに有効なものである。
【符号の説明】
【0054】
1 固定子
3 固定子コイル
5 回転子
6 回転子磁極
9 シャフト
11 Rブラケット
15 ファン(リア側)
25 整流装置
27 結線部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子磁極を有し、前記回転子磁極が固定された回転軸が2つ以上の軸受けにより回転自在に支持された回転子と、
前記回転子に取り付けられ回転子の回転により冷却風を発生させるファンと、
固定子巻線を有し、前記回転子の外周に配置された固定子と、
前記軸受け及び前記固定子を支持するとともに、前記ファンによって発生した冷却風の通路を形成するブラケットと、
前記回転子から発生した電力を整流する整流装置と、
前記固定子巻線と前記整流装置間を電気的に接続する導電体と、
前記導電体の周囲を絶縁部材で形成する結線部品と、を有し、
前記固定子の固定子巻線と整流装置間に前記結線部品を配置した車両用交流発電機。
【請求項2】
請求項1記載の車両用交流発電機であって、
前記結線部品を構成する絶縁部材における前記固定子側と向かい合う面の外径側部分に、整流装置とは離れる方向に傾斜が施されている車両用交流発電機。
【請求項3】
請求項2記載の車両用交流発電機であって、
前記固定子側と向かい合う面には絶縁部材で形成される複数の突出した板状部材が、略内径側から外径側へ伸びるように配置されている車両用交流発電機。
【請求項4】
請求項1記載の車両用交流発電機であって、
前記整流装置に組み込まれている整流素子が、MOSFETである車両用交流発電機。
【請求項5】
回転子磁極を有し、前記回転子磁極が固定された回転軸が2つ以上の軸受けにより回転自在に支持された回転子と、
前記回転子に取り付けられ回転子の回転により冷却風を発生させるファンと、
固定子巻線を有し、前記回転子の外周に配置された固定子と、
前記軸受け及び前記固定子を支持するとともに、前記ファンによって発生した冷却風の通路を形成するブラケットと、
前記回転子から発生した電力を整流する整流装置と、
前記固定子巻線と前記整流装置間を電気的に接続する導電体と、
前記導電体の周囲を絶縁部材で形成する結線部品と、
前記回転子の回転位置を検出する磁気検出手段と、を有し、
前記固定子の固定子巻線と整流装置間に前記結線部品を配置した車両用発電電動装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両用発電電動装置であって、
前記結線部品を構成する絶縁部材における前記固定子側と向かい合う面の外径側部分に、整流装置とは離れる方向に傾斜が施されている車両用発電電動装置。
【請求項7】
請求項6記載の車両用発電電動装置において、
前記固定子側と向かい合う面には絶縁部材で形成される複数の突出した板状部材が、略内径側から外径側へ伸びるよう配置されている車両用発電電動装置。
【請求項8】
請求項5記載の車両用交流発電機であって、
前記整流装置に組み込まれている整流素子が、MOSFETである車両用発電電動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239727(P2010−239727A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83984(P2009−83984)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】