説明

車両用背景画像収集装置

【課題】車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集すること。
【解決手段】車両周辺を定期的に撮像する撮像手段(10)と、前記撮像手段が撮像した各撮像タイミング又はサンプリングされた各撮像タイミングについて、撮像画像を車両の移動径路と対応付けて記憶手段に記憶させる背景画像記憶制御手段(52)と、前記背景画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に当該撮像画像を前記記憶手段から削除する不要画像削除手段(56)と、を備える車両用背景画像収集装置(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を収集する車両用背景画像収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラやレーダー装置等において認識された障害物との衝突を回避するように、又は衝突時の衝撃を和らげるように種々の車両制御を行なう制御システムが、PCS(Pre-crush Safety System)等の名称で知られている。
【0003】
車載カメラを用いて障害物や道路の陥没等、車両が回避すべき物体を認識する際に困難を伴うのが、撮像画像の所定領域に存在する障害物等を、当該領域に当然に存在するもの(道路に描画された白線等)と判別して認識を行なうことである。係る判別のために、白線等以外に何も写っていない背景画像を予め用意し、撮像画像と比較すると好適である。
【0004】
これに関連し、検知領域の画像を撮像する監視カメラと、その監視カメラにて撮像された画像データに基づいて検知領域内の車両の有無を検知する画像処理ユニットを備え、監視カメラにて順次撮像される画像データを濃淡投影処理にて画像処理し、現時点の投影処理データとその前の投影処理データとの差分値の最大値を求めるとともに、車両検出をしていないときの投影差分最大値の移動平均処理を行って背景データを求め、それら投影処理データの差分最大値と背景データに基づいて車両の有無を判定する走行車両検知システムについての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−185537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、監視車線において、車両を検知していないときの投影差分最大値に対して移動平均を求めることにより背景データを求める旨が記載されている(段落「0028」)。しかしながら、当該システムは、固定カメラによって車両を検知することを想定したものであり、必ずしもそのまま車載装置に適用可能な技術ではない。車両の走行軌跡は、基本的に同一車線を走行している場合であっても障害物を回避したりする行動によってブレが生じるため、径路上の各地点における背景画像として用いるのに適さない画像を撮像する場合があるからである。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することが可能な車両用背景画像収集装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
車両周辺を定期的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した各撮像タイミング又はサンプリングされた各撮像タイミングについて、撮像画像を車両の移動径路と対応付けて記憶手段に記憶させる背景画像記憶制御手段と、
前記背景画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に当該撮像画像を前記記憶手段から削除する不要画像削除手段と、
を備える車両用背景画像収集装置である。
【0008】
この本発明の第1の態様によれば、背景画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に当該撮像画像を前記記憶手段から削除するため、対応する車両の移動経路が正常であると判定された撮像画像のみが記憶手段に残されることとなる。従って、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することができる。また、不要となった撮像画像を削除するため、記憶手段の使用領域を節約することができる。しかも、何度も繰り返し不要画像削除処理を行なうことで、背景画像として不適切な画像が混入する可能性を低減することができ、精度の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の第1の態様において、
前記不要画像削除手段は、前記撮像画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が、基準径路記憶手段に記憶された基準径路と乖離していない場合に該車両の移動径路が正常であると判定し、前記基準径路と乖離している場合に該車両の移動径路が正常でないと判定する手段であるものとしてもよい。
【0010】
この場合、
前記記憶手段に記憶された車両の移動径路のうち類似する移動径路を抽出し、該抽出した移動径路に基づいて前記基準径路を生成して前記基準径路記憶手段に記憶させる基準径路生成手段を備えるものとしてもよい。
【0011】
更にこの場合、
前記基準径路生成手段は、道路形状記憶手段に記憶された道路形状を参照して前記基準径路を生成する手段である、
また、本発明の第1の態様において、
車両挙動を検出する車両挙動検出手段を備え、
前記不要画像削除手段は、前記車両挙動検出手段により検出された車両挙動に基づいて、車両の移動径路が正常であるか否かを判定する手段であるものとしてもよい。
【0012】
また、本発明の第1の態様において、
運転者の運転操作量を検出する運転操作量検出手段を備え、
前記不要画像削除手段は、前記運転操作量検出手段により検出された運転操作量に基づいて、車両の移動径路正常であるか否かを判定する手段であるものとしてもよい。
【0013】
本発明の第2の態様は、
車両周辺を定期的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した各撮像タイミング又はサンプリングされた各撮像タイミングについて、撮像画像を車両の移動径路と対応付けて記憶手段に記憶させる撮像画像記憶制御手段と、
前記撮像画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路のうち類似する移動径路を抽出し、該抽出した移動径路に基づいて前記基準径路を生成して前記基準径路記憶手段に記憶させる基準径路生成手段と、
前記撮像画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が、前記基準径路記憶手段に記憶された基準径路と乖離していない場合に、該車両の移動径路に付随する撮像画像を背景画像として背景画像記憶手段に記憶させる背景画像記憶制御手段と、
を備え、前記撮像画像記憶制御が記憶手段に記憶させた情報を、前記背景画像記憶制御手段の処理に拘わらず残存させることを特徴とする、車両用背景画像収集装置である。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が基準径路と乖離していない場合に、この車両の移動径路に対応する撮像画像を背景画像として背景画像記憶手段に記憶させるため、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することができる。また、背景画像として採用されなかった撮像画像を削除せずに残存させるため、後に、採用されなかった撮像画像に対応する車両の移動径路が基準径路の一部とされたような場合に、当該撮像画像を背景画像として採用する途を残すことができる。
【0015】
本発明の第2の態様において、
前記基準径路生成手段は、道路形状記憶手段に記憶された道路形状を参照して前記基準径路を生成する手段であるものとしてもよい。
【0016】
また、本発明の第2の態様において、
車両挙動を検出する車両挙動検出手段を備え、
前記背景画像記憶制御手段は、前記車両挙動検出手段により検出された車両挙動に基づいて、車両の移動径路が正常であるか否かを判定する手段であるものとしてもよい。
【0017】
また、本発明の第2の態様において、
運転者の運転操作量を検出する運転操作量検出手段を備え、
前記背景画像記憶制御手段は、前記運転操作量検出手段により検出された運転操作量に基づいて、車両の移動径路が正常であるか否かを判定する手段であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することが可能な車両用背景画像収集装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0020】
<第1実施例>
以下、本発明の第1実施例に係る車両用背景画像収集装置1について説明する。本実施例の車両用背景画像収集装置1は、車両に搭載される装置であって、各撮像位置に関して障害物の位置等を検知するための基準画像となる背景画像を収集するための装置である。なお、これに限らず、本発明は所定の移動径路を周回移動する移動ロボット等に適用されてもよい。
【0021】
[構成]
図1は、第1実施例に係る車両用背景画像収集装置1の全体構成の一例を示す図である。車両用背景画像収集装置1は、車載カメラ10と、記憶装置20と、車速センサー30と、ナビゲーション装置40と、ECU(Electronic Control Unit)50と、を備える。
【0022】
車載カメラ10は、例えば、ウインドシールド中央上部に配設されたCCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を利用したカメラであり、車両前方を撮像領域とし、数[ms]毎に繰り返し撮像を行なう。図2は、車載カメラ10のハードウエア構成の一例を示す図である。カメラ10は、例えば、撮像レンズ12と、イメージセンサー14と、電子制御部16と、を備える。以下、カメラ20がCCDカメラであるものとして説明する。
【0023】
イメージセンサー14は、例えばインターライン型イメージセンサーであり、光電変換を行なう受光素子であるフォトダイオードと、これに対応するCCDとをそれぞれ2次元平面状に配列し、フォトダイオードとCCDの間にアナログスイッチとして機能するトランスファゲートを有する。各フォトダイオードの前側(撮像レンズ12側)には、集光のためのマイクロレンズが取り付けられている。なお、こうした構造は、あくまでイメージセンサー14の機能を簡易に説明するために模式的に例示したものであり、機能性向上等のための如何なる設計変更も許容される。また、インターライン型イメージセンサーに限らず、CCD自体が受光素子として機能するフルフレームトランスファ型やフレームトランスファ型のイメージセンサーを用いてもよい。
【0024】
電子制御部16は、例えば、マイクロコンピューターや電子回路等が用いられ、イメージセンサー14が有するトランスファゲートの開閉タイミングを制御することによりカメラ10のシャッタースピードや撮像周期(例えば、1秒間に数十回程度)を調節する。そして、電子制御部16は、イメージセンサー14の出力回路から出力されるデータに対して所定のゲインによる増幅等を行なって、入力画像データとしてECU50に出力する。
【0025】
記憶装置20は、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、CDドライブ、フラッシュメモリ等の記憶装置、或いはこれらの組み合わせである。記憶装置20の記憶媒体には、背景画像情報22及び基準径路情報24が記憶される。
【0026】
車速センサー30は、例えば、車両の各車輪に取り付けられた車輪速センサーとスキッドコントロールコンピューターからなり、車輪速センサーが出力する車輪速パルス信号をスキッドコントロールコンピューターが車速矩形波パルス信号(車速信号)に変換してECU50に出力する。なお、係る情報通信は、専用通信線を用いて行なわれてもよいが、複数の制御装置が情報を参照可能な多重通信線に情報が出力される態様であってもよい。
【0027】
ナビゲーション装置40は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機42と、地図データ45を格納した記憶装置44と、ディスプレイ装置や音声入出力装置を含む入出力装置46と、ナビゲーション制御用コンピューター48と、を備える。地図データ45は、例えば交差点等を示すノードと、ノードを接続するリンクとにより道路形状を表現したものであり、各リンクに付随して車線数や道路曲率、道路幅員等の情報が記憶されている。ナビゲーション制御用コンピューター48は、GPS受信機42が受信したGPS衛星からの電波に含まれる信号に基づく演算により、車両の現在位置(緯度、経度、高度)を特定する。そして、地図データ45を参照して入出力装置46に対して入力された目的地に至るまでの推奨径路を生成し、ナビゲーション表示や音声案内を行なうように入出力装置46を制御する。ナビゲーション制御用コンピューター48が特定した車両の現在位置は、ECU50に出力される。
【0028】
ECU50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の記憶装置やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。また、ECU50は、ROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、背景画像記憶制御部52と、基準径路生成部54と、不要画像削除部56と、を備える。なお、これらの機能ブロックが明確に別のプログラムに基づくものである必要はなく、同一プログラムの中に各機能ブロックを実現する複数の部分が含まれていてもよい。
【0029】
[背景画像記憶処理]
背景画像記憶制御部52は、車載カメラ10が撮像した各撮像タイミング又はサンプリングされた各撮像タイミングについて、撮像画像を車両の移動径路と対応付けて背景画像情報22として記憶装置20に記憶させる。なお、「車両の移動径路と対応付けて記憶させる」とは、撮像画像と車両の現在位置とが対応付けられたデータセットを、撮像順に並べて記憶させることを意味する。また、「サンプリングされた各撮像タイミング」とは、車載カメラ10が1秒間に数十回程度撮像する各撮像タイミングから、所定走行距離毎、或いは所定時間毎にサンプリングした撮像タイミングをいう。以下の説明では、車両が1[m]走行する度に、車載カメラ10が撮像した画像を抽出し、その画像が撮像されたタイミングについて、上記の判定を行なうものとする。車両の走行距離は、車速センサー30の出力を積分すること、又は出力パルス数をカウントすることにより把握することができる。
【0030】
[基準径路生成処理]
基準径路生成部54は、上記撮像画像と移動径路が対応付けられたデータがある程度蓄積された所定のタイミングで、記憶装置20に記憶された車両の移動径路(前述の如く、車両の現在位置が撮像順に並べられたものをいう)のうち類似する移動径路を抽出し、抽出した移動径路に基づいて基準径路を生成して基準径路情報24として記憶手段20に記憶させる。具体的には、複数の移動径路の平均を求めたり、高頻度に発生する移動径路を基準径路とする等の手法により、基準径路を生成する。また、サンプル数が十分でない場合や、特異な径路が出現した等の場合は、地図データ45に含まれるリンク毎の形状(曲率やリンク長等)を参照して、基準径路を生成してもよい。
【0031】
このようにして生成される基準径路は、その道路を走行した際に通過した標準的ないし平均的な径路をいい、特段の障害物回避行動等を行なわずに走行した径路を意味する。
【0032】
[不要画像削除処理]
不要画像削除部56は、背景画像情報22において各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に当該撮像画像を背景画像情報22から削除する。
【0033】
より具体的には、各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路(現在位置)が、基準径路記憶手段に記憶された基準径路と乖離していない場合に車両の移動径路が正常であると判定し、基準径路と乖離している場合に車両の移動径路が正常でないと判定する。
【0034】
例えば、ある撮像タイミングにおいて基準径路との車線幅方向の乖離が所定値以下である場合に、その撮像タイミングにおいて車両の移動径路が基準径路から乖離していないと判定する(図3参照)。
【0035】
また、ある撮像タイミングにおいてその前後の移動径路(例えば数[m]前から数[m]後までの車両の現在位置を抽出したもの)の、当該位置における基準径路との類似度を所定の評価量で評価して、車両の移動径路が基準径路から乖離しているか否かを判定してもよい(図4参照)。
【0036】
これらの処理によって、車両が障害物の回避走行を行なった際等、特殊な径路を走行した際に撮像した画像は削除され、車両がその道路における標準的ないし平均的な径路を走行している過程で撮像された画像のみが背景画像情報22として記憶装置20に残されることとなる。従って、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することができる。なお、背景画像の利用態様については後述する。
【0037】
また、これに限らず、ヨーレートセンサーの出力及び車速から導出される車両の移動径路と、基準径路とを比較して判定を行なってもよい。すなわち、曲率が大きくない道路において湾曲した径路を走行した場合、その付近で障害物の回避、路側設備の利用等が行なわれたと判断し、その付近で撮像された撮像画像を背景画像から除外する。
【0038】
また、同様の理由により、ステアリング操舵角センサーやブレーキ踏量センサー等、運転者の運転操作量を検出するセンサー類の出力に基づいて、車両の移動径路が基準径路と乖離しているか否かを判定するものとしてもよい。
【0039】
本実施例の車両用背景画像収集装置1によれば、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することができる。また、不要となった撮像画像を削除するため、記憶装置20の使用領域を節約することができる。しかも、何度も繰り返し不要画像削除処理を行なうことで、背景画像として不適切な画像が混入する可能性を低減することができ、精度の向上を図ることができる。
【0040】
<第2実施例>
以下、本発明の第2実施例に係る車両用背景画像収集装置2について説明する。本実施例の車両用背景画像収集装置2は、車両に搭載される装置であって、各撮像位置に関して障害物の位置等を検知するための基準画像となる背景画像を収集するための装置である。なお、これに限らず、本発明は所定の移動径路を周回移動する移動ロボット等に適用されてもよい。
【0041】
[構成]
図5は、第2実施例に係る車両用背景画像収集装置2の全体構成の一例を示す図である。本実施例において、記憶装置20の記憶媒体には、撮像画像情報21、背景画像情報22及び基準径路情報24が記憶される。また、本実施例のECU50は、背景画像記憶制御部52に代えて撮像画像記憶制御部53を、不要画像削除部56に代えて背景画像記憶制御部57(第1実施例の背景画像記憶制御部52とは機能が異なる)をそれぞれ備える点で第1実施例と異なる。
【0042】
[撮像画像記憶処理]
撮像画像記憶制御部53は、背景画像記憶制御部52と同様の処理を行なうが、背景画像情報22としてではなく、撮像画像情報21として記憶装置20の記憶媒体に記憶させる。
【0043】
[基準径路生成処理]については第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
[背景画像記憶処理]
本実施例における背景画像記憶制御部57は、撮像画像情報21において各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が基準径路情報24に含まれる基準径路と乖離していない場合に、この車両の移動径路に付随する撮像画像を背景画像情報22として記憶装置20に記憶させる。なお、基準径路との乖離の定義については第1実施例において図3や図4に即して説明したものと同様であってよい。
【0045】
また、本実施例では、背景画像記憶処理を行なう際に、背景画像として採用されなかった撮像画像を削除せず、撮像画像情報21の一部として残存させる。
【0046】
これらの処理によって、車両が障害物の回避走行を行なった際等、特殊な径路を走行した際に撮像した画像は背景画像として採用されないこととなり、車両がその道路における標準的ないし平均的な径路を走行している過程で撮像された画像のみが背景画像情報22として記憶装置20に記憶されることとなる。従って、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することができる。なお、背景画像の利用態様については後述する。
【0047】
また、第1実施例と同様、ヨーレートセンサーの出力及び車速から導出される車両の移動径路と、基準径路とを比較して判定を行なってもよい。すなわち、曲率が大きくない道路において湾曲した径路を走行した場合、その付近で障害物の回避、路側設備の利用等が行なわれたと判断し、その付近で撮像された撮像画像を背景画像から除外する。また、ステアリング操舵角センサーやブレーキ踏量センサー等、運転者の運転操作量を検出するセンサー類の出力に基づいて、車両の移動径路が基準径路と乖離しているか否かを判定するものとしてもよい。
【0048】
本実施例の車両用背景画像収集装置2によれば、車両における障害物検知を行なう際の基準となる背景画像を適切に収集することができる。また、背景画像として採用されなかった撮像画像を削除せずに残存させるため、後に、採用されなかった撮像画像に対応する車両の移動径路が基準径路の一部とされたような場合に、当該撮像画像を背景画像として採用する途を残すことができる。
【0049】
なお、背景画像記憶処理を行なうタイミングではなく、記憶装置20の記憶容量の問題が生じた際等の所望のタイミングで、撮像画像情報21を圧縮、一部削除等しても構わない。
【0050】
<背景画像の利用態様>
以下、背景画像の利用態様の一例について述べる。背景画像は、SOBELフィルター等を適用することにより、隣接画素との輝度差や画素値差が大きいエッジ点が抽出された背景エッジ画像に変換され、その中から道路区画線等の輪郭を示す一連のエッジ点が抽出される。そして、車載カメラ10が車両の走行に応じて撮像する撮像画像も同様にエッジ画像に変換され、変換後のエッジ画像から道路区画線等の輪郭を示すエッジ点が削除されることにより、歩行者や車両等の障害物の輪郭を示すエッジ点が抽出されることとなる。
【0051】
この抽出されたエッジ点で画成される画像上の位置領域を2次元平面上の位置に変換すると、障害物との距離や相対速度が算出可能となる。そして、算出された障害物との距離や相対速度を用いて、種々の衝突安全制御が行なわれる。
【0052】
衝突安全制御は、例えば、障害物との距離や相対速度等に対して所定の閾値を適用することにより衝突可能性を判定し、その判定結果に応じて、音声や表示による警報制御、ブレーキペダルの操作量に対する制動力のブースト率を高める制御、操舵比を大きくする制御、シートベルトを自動的に巻き上げ、適切な力で乗員をシートに拘束する制御、自動的に制動力を出力する制御等を行なう。なお、実施例に係るECU50は、係る衝突安全制御を行なう制御装置に統合されてもよい。
【0053】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施例に係る車両用背景画像収集装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】車載カメラ10のハードウエア構成の一例を示す図である。
【図3】車両の移動径路が基準径路から乖離しているか否かを判定する様子を示す図である。
【図4】車両の移動径路が基準径路から乖離しているか否かを判定する他の様子を示す図である。
【図5】第2実施例に係る車両用背景画像収集装置2の全体構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両用背景画像収集装置
10 車載カメラ
12 撮像レンズ
14 イメージセンサー
16 電子制御部
20 記憶装置
21 撮像画像情報
22 背景画像情報
24 基準径路情報
30 車速センサー
40 ナビゲーション装置
42 GPS受信機
44 記憶装置
45 地図データ
46 入出力装置
48 ナビゲーション制御用コンピューター
50 ECU
52、57 背景画像記憶制御部
53 撮像画像記憶制御部
54 基準径路生成部
56 不要画像削除部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺を定期的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した各撮像タイミング又はサンプリングされた各撮像タイミングについて、撮像画像を車両の移動径路と対応付けて記憶手段に記憶させる背景画像記憶制御手段と、
前記背景画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に当該撮像画像を前記記憶手段から削除する不要画像削除手段と、
を備える車両用背景画像収集装置。
【請求項2】
前記不要画像削除手段は、前記撮像画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が、基準径路記憶手段に記憶された基準径路と乖離していない場合に該車両の移動径路が正常であると判定し、前記基準径路と乖離している場合に該車両の移動径路が正常でないと判定する手段である、
請求項1に記載の車両用背景画像収集装置。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶された車両の移動径路のうち類似する移動径路を抽出し、該抽出した移動径路に基づいて前記基準径路を生成して前記基準径路記憶手段に記憶させる基準径路生成手段を備える、
請求項2に記載の車両用背景画像収集装置。
【請求項4】
前記基準径路生成手段は、道路形状記憶手段に記憶された道路形状を参照して前記基準径路を生成する手段である、
請求項3に記載の車両用背景画像収集装置。
【請求項5】
車両挙動を検出する車両挙動検出手段を備え、
前記不要画像削除手段は、前記車両挙動検出手段により検出された車両挙動に基づいて、車両の移動径路が正常であるか否かを判定する手段である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用背景画像収集装置。
【請求項6】
運転者の運転操作量を検出する運転操作量検出手段を備え、
前記不要画像削除手段は、前記運転操作量検出手段により検出された運転操作量に基づいて、車両の移動径路正常であるか否かを判定する手段である、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用背景画像収集装置。
【請求項7】
車両周辺を定期的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した各撮像タイミング又はサンプリングされた各撮像タイミングについて、撮像画像を車両の移動径路と対応付けて記憶手段に記憶させる撮像画像記憶制御手段と、
前記撮像画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路のうち類似する移動径路を抽出し、該抽出した移動径路に基づいて前記基準径路を生成して前記基準径路記憶手段に記憶させる基準径路生成手段と、
前記撮像画像記憶手段に記憶された各撮像画像に対応付けられている車両の移動径路が、前記基準径路記憶手段に記憶された基準径路と乖離していない場合に、該車両の移動径路に対応する撮像画像を背景画像として背景画像記憶手段に記憶させる背景画像記憶制御手段と、
を備え、前記撮像画像記憶制御が記憶手段に記憶させた情報を、前記背景画像記憶制御手段の処理に拘わらず残存させることを特徴とする、車両用背景画像収集装置。
【請求項8】
前記基準径路生成手段は、道路形状記憶手段に記憶された道路形状を参照して前記基準径路を生成する手段である、
請求項7に記載の車両用背景画像収集装置。
【請求項9】
車両挙動を検出する車両挙動検出手段を備え、
前記背景画像記憶制御手段は、前記車両挙動検出手段により検出された車両挙動に基づいて、車両の移動径路が正常であるか否かを判定する手段である、
請求項7又は8に記載の車両用背景画像収集装置。
【請求項10】
運転者の運転操作量を検出する運転操作量検出手段を備え、
前記背景画像記憶制御手段は、前記運転操作量検出手段により検出された運転操作量に基づいて、車両の移動径路が正常であるか否かを判定する手段である、
請求項7ないし9のいずれか1項に記載の車両用背景画像収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−210401(P2009−210401A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53273(P2008−53273)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】